JP5941706B2 - 不活性ガスの製造方法 - Google Patents
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Description
このような不活性ガスの製造方法として、一般に、大気の深冷分離方式、圧縮空気の減圧吸着方式、膜分離方式、燃焼方式、触媒を用いた排ガス中の酸素減少方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1では、蒸気発生の増減に伴うボイラ燃焼量の負荷変動は、排ガス流量の変化や、排気温度の変化や、反応前酸素濃度の変化が予測される。このような負荷変動に対応した温度制御が必要である。さらに、排ガスと燃焼ガスを反応させるためには混合したガスを触媒の活性温度まで上げる必要があり、この活性温度が不足すると、上述した減酸素の効果が安定しないという問題があり、その活性温度を上昇させるための加熱エネルギーにかかるコストも大きくなることから、その点で改善の余地があった。
本発明に係る不活性ガスの製造方法は、酸素を含むガスと燃料ガスとからなる混合体に燃焼触媒部を通過させて不活性ガスを製造する不活性ガスの製造方法であって、燃焼触媒部を通過した第1混合体と、燃焼触媒部に到達する前の混合体または酸素を含むガスからなる第2混合体とを熱交換装置に通過せることで、第1混合体と第2混合体とのそれぞれの熱を交換させ、酸素を含むガスの酸素濃度水準に応じて、燃料ガスの流量演算値を段階的に補正するように制御され、制御のみによって不活性ガス中の残留可燃物濃度を減少させることを特徴としている。
また、燃焼触媒部に通過させる前の未反応の第2混合体を触媒の活性温度に上昇させることが可能となる。なお、熱交換により第2混合体が活性温度に満たない場合には、さらに第2混合体を加熱する必要があるが、前記熱交換前の温度よりは上昇しているので、加熱エネルギーを低減することができる。
つまり、第2混合体の冷却媒体は、第1混合体自体であり、自己完結型の熱バランスを保つ構成となり、熱効率に優れた製造方法を実現することができる。
また、この場合には、酸素を含むガスの酸素濃度水準に応じて、燃料ガスの流量演算値を段階的に補正するように制御されるので、燃料ガスのロスを少なくすることができ、さらに製造される不活性ガス中の残留可燃物濃度を極めて小さくすることができるという効果を奏する。
そして、複数の燃焼触媒部を順次通過させる場合であっても、燃焼触媒部で高温になった混合体を熱交換装置によって触媒の活性温度まで低下させることが可能となるので、次の燃焼触媒部の通過中に高温により触媒を溶かしてしまうといった不具合を防止することができる。
図1に示すように、本実施の形態の不活性ガスの製造装置1は、図示されないボイラーや加熱炉等から大気中に放散されている排ガスGを供給する排ガス供給部10と、燃料ガスKを供給する燃料ガス供給部20と、排ガスGおよび燃料ガスKからなる混合体Wに脱酸・脱硝処理を施す複数段の脱酸・脱硝処理部30、40、50と、を備えて概略構成されている。
ここで、排ガスGは、例えば2〜4%の酸素を含むとともに、窒素、水蒸気、二酸化炭素、窒素化合物よりなる原料ガスであり、その酸素濃度は空気よりも低くなっている。
また、排ガス供給部10と燃料ガス供給部20には、排ガス供給部10から供給される排ガスGの条件に応じて燃料ガスKの供給量を制御する燃料制御部60が設けられている。
そして、貯留タンク12内に吸引された排ガスGは、複数段で設けられる脱酸・脱硝処理部のうち最も上流側に位置する第1脱酸・脱硝処理部30へ供給される。
ここで、第1触媒槽33は、白金−パラジウム(Pt−Pd)からなるハニカム触媒を有しているので、混合体Wの低温活性化と耐熱性を向上させることができる。
第1熱交換装置34は、第1触媒槽33で脱酸・脱硝処理されたときに温度上昇し、熱交換装置に流通する混合体W1の反応熱の一部を回収し、その熱を排ガスGに伝達してそのガス温度を上昇させつつ、混合体W1の温度を例えば400℃の活性温度まで下げるものである。つまり、混合体W1の冷却媒体は、第1熱交換装置34を通過する排ガスG自体であり、自己完結型の熱バランスを保っている。そして、混合体W1は、第2脱酸・脱硝処理部40へ送られることになる。
ここで、第2触媒槽42は、白金−パラジウム(Pt−Pd)からなるハニカム触媒を有しているので、第1触媒槽33と同様に混合体Wの低温活性化と耐熱性を向上させることができる。
第2熱交換装置43は、第2触媒槽42で脱酸・脱硝処理されたときに温度上昇し、熱交換装置に流通する混合体W2の反応熱の一部を回収し、その熱を混合体W1に伝達してそのガス温度を上昇させつつ、混合体W2の温度を例えば400℃の活性温度まで下げるものである。つまり、混合体W2の冷却媒体は、第2熱交換装置43を通過する混合体W1自体であり、自己完結型の熱バランスを保っている。そして、混合体W2は、第3脱酸・脱硝処理部50へ送られることになる。
第3触媒槽51の上流側には、燃料ガス供給部20の第3供給分岐路23Cが接続される燃料ガス供給点P3を有している。
ここで、最終段をなす第3触媒槽51では、とくに脱硝効果の高い白金−ロジウム(Pt−Rh)からなるハニカム触媒を有しているので、脱酸効果を向上させることができる。
また、このとき貯留タンク12の入口において、例えば±0.6%の幅にハンチングする酸素濃度は、貯留タンク12の出口で±0.04%未満に減衰される。そして、減衰後の酸素濃度は燃料ガスKの演算制御に安定化をもたらすため、酸素濃度の乱れによる演算遅れが無くなり、適正な燃料流量を供給することができる。
具体的には、演算器61において、排ガスGの流量と酸素濃度に対して適正な燃料流量を演算し出力する。燃料ガスKの流量は、温度補正後の排ガス湿り流量に排ガスG中から検出された酸素の出力濃度を乗じ、さらに酸化反応に必要な燃料のモル比率(ガス区分13Aの都市ガス=0.444)と任意で決められる燃料ガスKの余裕係数を乗じることで算出される。
また、第1熱交換装置34では、第1脱酸・脱硝処理部30に通過させる前の未反応の排ガスGを触媒の活性温度に上昇させることが可能となる。なお、熱交換により排ガスGが活性温度に満たない場合には、さらに排ガスGを電気ヒータ31によって加熱する必要があるが、第1熱交換装置34を通過した排ガスGの温度は前記熱交換前の温度よりは上昇しているので、加熱エネルギーを低減することができる。
つまり、排ガスGの冷却媒体は、混合体W1自体であり、自己完結型の熱バランスを保つ構成となり、熱効率に優れた製造方法を実現することができる。
なお、第2熱交換装置43による熱交換作用は、上述した第1熱交換装置34と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
また、第3触媒槽51を通過して製造された不活性ガスNにおいては、酸素(O2)の濃度が10ppm以下、窒素(N2)の濃度が99.999%となっている。
具体的には、各触媒槽33、42、51における反応熱による昇温は、120℃/1%O 2相当である。例えば、排ガスG中の酸素濃度が4%存在し、触媒槽33、42、51の入口温度が400℃の場合に酸化反応処理をしたとき、出口温度は880℃となり、触媒の耐熱温度650℃を上回るため、使用に耐えないこととなる。これに対して、酸化反応熱を分散化するようにして、触媒槽33、42、51、および熱交換装置34、43をそれぞれ複数配置することで、貴金属のシンタリング防止や熱劣化によるセラミック担体細孔表面積の減少を防止し、触媒寿命を延ばすことが可能となる。
例えば、最終的な不活性ガスNは、この後にガス圧縮してゴム製品の加硫やシール用に用いることができ、或いは冷凍機や吸着式のドライヤーによる脱水処理を経て無酸化熱処理炉やパージガスとして使用することができる。
一方、不活性ガスNの純度をあまり必要としない用途においては、第1触媒槽33で脱酸・脱硝処理された混合体Wを第1分岐供給弁71から取り出して、不活性ガスNを供給することができる。この場合、酸素及び窒素酸化物の濃度は、例えば排ガスG中に含まれる50%まで除去されている。さらに、第2触媒槽42で脱酸・脱硝処理された混合体Wを第2分岐供給弁72から取り出して、不活性ガスNを供給することができる。この場合、例えば酸素濃度が100ppm未満、窒素酸化物濃度が10ppm未満にまで除去されており、酸素濃度の要求レベルに応じて供給することができる。
本実施の形態による燃料ガスKの流量制御は、2つの外的変化(酸素濃度の変化および不活性ガスNの需要変動)に対応して、同時にかつ瞬時に燃料ガスKを加減する制御を行うことができる。すなわち、燃料ガスKの流量制御は、排ガス酸素分析計からの出力値を基に演算しているが、分析計には数十秒の応答遅れがある。演算し、流量制御された燃料流量は、応答遅れ前の酸素濃度を基準にしている。したがって、分析計の応答時間より短い周期で酸素濃度が変化している場合には、燃料流量制御が実際の酸素濃度に合った燃料流量ではない。そのため、酸素濃度の均一化が必要であり、排ガスGの滞留と撹拌処理を行う貯留タンク12を通過させ、その結果、入口で±0.6%の変動幅は、出口において±0.04%にまで均一化することができ、これにより酸素濃度に等しい燃料流量を制御することができる。
本実施例では、上記実施の形態の不活性ガスの製造装置を製作し、この装置によって製造された不活性ガスの酸素濃度、窒素化合物の濃度、残留メタンの濃度を確認した。
実施例では、ボイラより煙突へ放散されている排ガスの一部を排ガスダクト(上記の排ガス流路11)の分岐弁より誘引した。この排ガスは、排ガス処理流量が60m3N/h(湿り)、温度は150℃、酸素濃度は3%、窒素酸化物は80ppm(酸素5%換算値)、二酸化炭素は8%、水分は15%、残りが窒素で構成されたものである。燃料ガスとしては、0.8m3N/hの都市ガスを使用した。また、前処理触媒槽には、銅を担持した粒状の脱硫触媒(空間速度SV=20000−h)使用し、第1触媒槽には、白金−パラジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600−h)を使用し、第2触媒槽には白金−パラジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600−h)を使用し、第3触媒槽には白金−ロジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600−h)を使用した。
その結果、不活性ガスの酸素濃度が2ppm、窒素酸化物は1ppmとなり、残留メタン濃度0.1%となった。
なお、酸素濃度の測定には、1ppmまでを計測することが可能な燃料電池方式の微量酸素分析計を使用し、窒素酸化物の測定には、1ppmまで計測することが可能な非分散型赤外線式の燃焼排ガス分析計と0.2ppmまで検知することが可能な窒素酸化物検知管を使用した。
また、本実施の形態では、脱酸・脱硝処理部30、40、50、すなわち触媒槽33、42、51(燃焼触媒部)を3つ(3段)設けたが、この数量に制限されることはなく、2つ以上であれば適宜変更してもよい。
さらにまた、複数の燃焼触媒部が有する触媒の材質は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよく、また、これらの燃焼触媒部が有する触媒の材質を互いに異ならせてもよい。
また、本実施の形態では電気ヒータ31を設ける構成としているが、この電気ヒータ31を省略することも可能である。
そして、本実施の形態では、第1触媒槽33および第2触媒槽42の上流側に前処理触媒槽32、41を設けているが、前処理触媒槽を設けなくてもよい。
10 排ガス供給部
12 貯留タンク
20 燃料ガス供給部
21 レシオレギュレター(レシオコントロール弁)
30 第1脱酸・脱硝処理部
31 電気ヒータ
32 前処理触媒槽
33 第1触媒槽(燃焼触媒部)
34 第1熱交換装置
35 ヒータ温度制御装置
36 第1温度制御装置
40 第2脱酸・脱硝処理部
41 前処理触媒槽
42 第2触媒槽(燃焼触媒部)
43 第2熱交換装置
50 第3脱酸・脱硝処理部
51 第3触媒槽(燃焼触媒部)
52 冷却器
60 燃料制御部
61 演算器
80 第1迂回配管
81 第2迂回配管
G 排ガス
H 高温不活性ガス
K 燃料ガス
N 不活性ガス
W、W0、W1、W2 混合体
Claims (7)
- 酸素を含むガスと燃料ガスとからなる混合体に燃焼触媒部を通過させて不活性ガスを製造する不活性ガスの製造方法であって、
前記燃焼触媒部を通過した第1混合体と、前記燃焼触媒部に到達する前の混合体または前記酸素を含むガスからなる第2混合体と、を熱交換装置に通過せることで、前記第1混合体と前記第2混合体とのそれぞれの熱を交換させ、
前記酸素を含むガスの酸素濃度水準に応じて、前記燃料ガスの流量演算値を段階的に補正するように制御され、
該制御のみによって前記不活性ガス中の残留可燃物濃度を減少させることを特徴とする不活性ガスの製造方法。 - 前記燃焼触媒部は複数設けられ、
前記第1混合体を通過経路に戻して次の燃焼触媒部に通過させ、複数の前記燃焼触媒部を通過させて複数回にわたって脱酸・脱硝処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の不活性ガスの製造方法。 - 前記複数の燃焼触媒部のうち前段には低温活性および耐熱性に優れた白金−パラジウムを担持したハニカム触媒が配設され、後段には脱硝効果の高い白金−ロジウムを担持したハニカム触媒が配設されていることを特徴とする請求項2に記載の不活性ガスの製造方法。
- 前記熱交換装置の周囲に沿って配され、前記第2混合体を流通させるバイパス経路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
- 前記熱交換装置を通過した前記第2混合体の温度が触媒の活性温度より低い場合には、ヒータにより加熱されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
- 前記燃料ガスの供給量は、レシオコントロール弁により、不活性ガス需要量の負荷変動に対する瞬時適正流量によって制御されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
- 前記燃料ガスが供給される燃料ガス供給部と、脱酸・脱硝処理が行われる触媒槽との間に、燃料ガスの付臭剤中に含まれる有機硫黄分を吸着・除去する銅を担持した触媒を配設した前処理触媒槽を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
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