本発明は、重りの落下運動により搬送の対象である被搬送物(以下「ワーク」ともいう。)を搬送する動作部が設けられた搬送用ワイヤを送ることで動作部を移動させる構成を複数組備え、複数の重りを連動させて順番に落下させることで、複数の動作部をそれぞれ所定の方向に移動させ、ワークを所定の経路で搬送するものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[搬送装置の構成]
本実施形態の搬送装置1は、自動車の製造工場において、所定の製造ラインで使用される部品が入れられる部品箱をワークとし、AGV(Automatic Guided Vehicle)により搬送されてきた空の状態の部品箱をAGVから搬出し、部品が入れられて実の状態となった部品箱をAGVに搬入する搬送装置としての適用例である。ここで、AGVとは、工場や倉庫等においてコンピュータ制御等によって目標走行経路上を自動的に走行する無人搬送車である。
図1に示すように、本実施形態の搬送装置1は、複数の搬送ユニット2を備える。図1に示す例では、搬送装置1は、4組の搬送ユニット2を備える。これらの搬送ユニット2は、互いに略同じ構成を備える。
搬送ユニット2は、ワークに接触した状態で移動することでワークを搬送する動作部3を有する。動作部3は、例えば、ワークを押し出して搬送するプッシャーや、ワークを引き入れて搬送するプラー等である。つまり、搬送ユニット2は、プッシャーやプラー等の動作部3を移動させることでワークを搬送する構成である。搬送ユニット2は、重りの落下運動を利用して動作部3を往復動作させる。
搬送ユニット2は、ワークを移動させる動作部3を往復動作させる搬送部2aと、搬送部2aにおいて動作部3を往復動作させるべく重りを昇降動作させる重り昇降部2bとを有する。本実施形態の搬送装置1において、4組の搬送ユニット2は、各搬送ユニット2が有する重り昇降部2bを並列させた状態で設けられる(図1参照)。
以下の説明では、4組の搬送ユニット2の各搬送ユニット2を他の搬送ユニット2と区別する場合は、便宜上、横並びとなる4組の重り昇降部2bの端(図1において左端)から順に、第1搬送ユニット2A、第2搬送ユニット2B、第3搬送ユニット2C、第4搬送ユニット2Dとする。
図1および図2に示すように、搬送ユニット2は、搬送用ワイヤ10と、第1の重りである大ウエイト11と、大ウエイト11よりも軽い第2の重りである小ウエイト12とを有する。
(搬送用ワイヤ10について)
搬送用ワイヤ10は、滑車等にかけられて所定の経路に沿って引き回され、その一部に動作部3を支持する。つまり、所定の経路に沿って配された搬送用ワイヤ10が送られることで、動作部3が移動する。そして、搬送用ワイヤ10が所定の方向に送られることで、動作部3が、ワークを搬送する方向に移動し、搬送用ワイヤ10がその所定の方向とは逆方向に送られることで、動作部3が戻る方向に移動する。このように、搬送用ワイヤ10の正逆方向の送り動作により、動作部3が往復動作する。
図1および図2に示すように、搬送用ワイヤ10は、搬送装置1において所定の位置に配置される上滑車部13、大ウエイト側下滑車部14、小ウエイト側下滑車部15、および搬送側滑車部16に巻回されることで、所定の経路に沿って移動するように配される。ここで、搬送用ワイヤ10が配される所定の経路は、鉛直方向に沿う大ウエイト側経路部10aおよび小ウエイト側経路部10b、ならびに動作部3が設けられ動作部3の移動方向に沿う搬送経路部10cを含む。本実施形態では、大ウエイト側経路部10aが第1の鉛直経路部に相当し、小ウエイト側経路部10bが第2の鉛直経路部に相当する。
搬送用ワイヤ10のうち、大ウエイト側経路部10aおよび小ウエイト側経路部10bは、搬送ユニット2を構成する重り昇降部2bに設けられる。また、搬送用ワイヤ10のうち、搬送経路部10cは、搬送ユニット2を構成する搬送部2aに設けられる。
大ウエイト側経路部10aおよび小ウエイト側経路部10bは、搬送装置1において鉛直方向の上側に設けられる第1の滑車部である上滑車部13にかけられた部分から両側に垂下する部分であり、互いに平行な鉛直方向の経路部である。
本実施形態では、図2に示すように、上滑車部13は、大ウエイト側経路部10a側に位置する滑車13aと、小ウエイト側経路部10b側に位置する滑車13bとを有する。これら2つの滑車13a、13bは、互いに同じ高さに位置し、回転軸の方向を互いに平行とする。このように2つの滑車13a、13bが設けられた上滑車部13に対して上側から搬送用ワイヤ10がかけられた状態で、一方の滑車13aの片側から垂下する部分が、大ウエイト側経路部10aとなり、他方の滑車13bの片側から垂下する部分が、小ウエイト側経路部10bとなる。なお、2つの滑車13a、13b間において、搬送用ワイヤ10は、水平方向に配された状態となる。
また、搬送装置1においては、搬送用ワイヤ10のうち大ウエイト側経路部10aの下側に位置する第2の滑車部である大ウエイト側下滑車部14と、搬送用ワイヤ10のうち小ウエイト側経路部10bの下側に位置する第3の滑車部である小ウエイト側下滑車部15とが設けられている。大ウエイト側経路部10aおよび小ウエイト側経路部10bの各経路部において縦方向(鉛直方向)に配される搬送用ワイヤ10は、それぞれ、大ウエイト側下滑車部14または小ウエイト側下滑車部15にかかることで方向転換し、横方向(水平方向)に配される。
大ウエイト側下滑車部14および小ウエイト側下滑車部15の各滑車部から横方向に配された搬送用ワイヤ10は、搬送装置1において所定の位置に配置された第4の滑車部である搬送側滑車部16にかけられる。大ウエイト側下滑車部14、小ウエイト側下滑車部15、および搬送側滑車部16は、それぞれ一または複数の滑車14a、15a、16aにより構成される(図2参照)。
このように、本実施形態では、搬送用ワイヤ10は、上側に配置される上滑車部13、下側に配置される大ウエイト側下滑車部14および小ウエイト側下滑車部15、ならびに所定の位置に配置される搬送側滑車部16に巻回され、全体としてループ状に引き回され、所定の経路に沿って移動するように配される。そして、搬送用ワイヤ10のうち、上滑車部13と大ウエイト側下滑車部14との間の部分が、大ウエイト側経路部10aとなり、上滑車部13と小ウエイト側下滑車部15との間の部分が、小ウエイト側経路部10bとなる。また、搬送用ワイヤ10のうち、大ウエイト側下滑車部14および小ウエイト側下滑車部15と搬送側滑車部16との間の部分が、搬送経路部10cとなる。この搬送経路部10cの部分は、動作部3が設けられる部分であり、動作部3の移動方向に沿う部分である。
このように所定の経路に沿ってループ状に配された搬送用ワイヤ10は、大ウエイト側経路部10aの部分が下向きに移動する送り方向、つまり小ウエイト側経路部10bの部分が上向きに移動する送り方向を、搬送方向(図2中、白抜き矢印で示す方向)とする。すなわち、搬送用ワイヤ10が搬送方向に送られることで、動作部3は、ワークを搬送する方向に移動する。
一方、搬送用ワイヤ10は、搬送方向とは逆方向の送り方向を、戻し方向(図2中、黒矢印で示す方向)とする。すなわち、搬送用ワイヤ10の戻し方向は、大ウエイト側経路部10aの部分が上向きに移動する送り方向であり、小ウエイト側経路部10bが下向きに移動する送り方向である。所定の待機位置からワークを搬送することで移動した状態の動作部3は、搬送用ワイヤ10が戻し方向に送られることで、ワークを搬送する前の待機位置に戻る。
図2に示す例においては、動作部3は、搬送用ワイヤ10の搬送経路部10cにおいて、大ウエイト側下滑車部14と搬送側滑車部16との間に配される部分に設けられている。このため、搬送用ワイヤ10が搬送方向に送られることで、動作部3は、大ウエイト側下滑車部14側から搬送側滑車部16に近付く方向に移動する。つまり、大ウエイト側下滑車部14側から搬送側滑車部16側に向かう方向(図2において右方向)が、動作部3がワークを移動させる方向となる。なお、図2には、図1に示す4組の搬送ユニット2のうち、第4搬送ユニット2Dを例示している。
一方、例えば図1に示す第2搬送ユニット2Bのように、搬送用ワイヤ10の搬送経路部10cにおいて、動作部3が、小ウエイト側下滑車部15と搬送側滑車部16との間に配される部分に設けられた場合、搬送用ワイヤ10が搬送方向に送られることで、動作部3は、搬送側滑車部16側から小ウエイト側下滑車部15に近付く方向に移動する。つまりこの場合、搬送側滑車部16側から小ウエイト側下滑車部15側に向かう方向(図1、図2において左方向)が、動作部3がワークを移動させる方向となる。
このように、搬送用ワイヤ10の送り方向と動作部3の移動方向との関係については、搬送経路部10cにおいて動作部3を設ける位置、具体的には動作部3をどの滑車部間に位置させるかにより適宜設定される。なお、動作部3を移動させる搬送用ワイヤ10が巻回される各滑車部における滑車の数や相対的な位置関係や各滑車の回転軸方向の向き等は、特に限定されず、適宜の構成を採用することができる。また、搬送用ワイヤ10が有する各経路部、特に搬送経路部10cの部分が引き回される滑車部については、ワークの搬送経路等によって適宜の構成が採用される。
(大ウエイト11について)
搬送用ワイヤ10の搬送方向への送り移動は、大ウエイト11の落下運動にともなって行われる。図2および図3に示すように、大ウエイト11は、全体として略円筒状の外形を有し、その筒軸方向が鉛直方向となる姿勢で、大ウエイト側経路部10aにおいて搬送用ワイヤ10を貫通させた状態で設けられる。
大ウエイト11は、その略筒状の外形における中心軸部分(筒軸部分)に、搬送用ワイヤ10を貫通させる貫通孔11aを有する(図3参照)。貫通孔11aは、大ウエイト11を搬送用ワイヤ10に対して鉛直方向に自由に移動させる程度の大きさ(孔径)を有する。
大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10に対して大ウエイト側経路部10aにて係合した状態で落下することで、搬送用ワイヤ10を所定の経路に沿って動作部3がワークを搬送する方向に移動する搬送方向に送る。これにより、大ウエイト11は、動作部3を所定の待機位置から移動させる。ここで、搬送用ワイヤ10について所定の経路とは、上述したように、上滑車部13、大ウエイト側下滑車部14、小ウエイト側下滑車部15、および搬送側滑車部16によって搬送用ワイヤ10が引き回されることで形成されるループ状の経路である。
大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10の大ウエイト側経路部10aに設けられた係合部17により係止されることで、搬送用ワイヤ10に対して係合した状態となる。つまり、搬送用ワイヤ10は、大ウエイト側経路部10aに、大ウエイト11が係合する係合部17を有する。
係合部17は、大ウエイト側経路部10aにおいて大ウエイト11の下方となる位置に設けられる。係合部17は、搬送用ワイヤ10に対して所定の位置で固定された係合部材17aにより構成される。
係合部材17aは、搬送用ワイヤ10を部分的に拡径させる部材である。係合部材17aは、略筒状の外形を有し、その筒軸方向が鉛直方向となる姿勢で、中心軸部分に搬送用ワイヤ10の大ウエイト側経路部10aを貫通させた状態で、搬送用ワイヤ10に固定される。本実施形態では、係合部材17aは、上下方向に沿う中心軸が通る平面で2分割される分割構造を有し、これらの分割要素が搬送用ワイヤ10を挟んだ状態でボルト等の固定部材17cによって互いに固定されることで、係合部材17aが搬送用ワイヤ10に固定される。ただし、係合部材17aを搬送用ワイヤ10に固定するための構造は、特に限定されない。
係合部材17aは、大ウエイト11が搬送用ワイヤ10を貫通させる貫通孔11aの内径よりも大きい外径を有し、上側から落下してくる大ウエイト11を搬送用ワイヤ10に対して係止する。本実施形態では、係合部材17aは、搬送用ワイヤ10に固定された状態で上側となる部分に、上方に向けて縮径する円錐状のテーパ部17bを有する(図3参照)。係合部材17aにおいては、このテーパ部17bの中心線に沿う位置に、搬送用ワイヤ10が貫通する。したがって、係合部材17aは、上側から落下してくる大ウエイト11に対して、テーパ部17bの先端(上端)を貫通孔11aの下端開口部に位置させた態様で係合した状態となる。
以上のように、大ウエイト11は、大ウエイト側経路部10aにおいて、貫通孔11aに搬送用ワイヤ10を貫通させ、係合部17以外の部分(係合部17より上方の位置)では搬送用ワイヤ10との関係において自由に(無関係に)鉛直方向に移動可能であり、落下運動の途中で、係合部17に係合する。そして、大ウエイト11は、係合部17に係合してからの落下運動により、大ウエイト側経路部10aにおいて係合部17を押し下げ、搬送用ワイヤ10を搬送方向に送る。
つまり、大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10には固定されておらず、落下運動の途中で係合部17によって搬送用ワイヤ10に係合することで、落下運動による下降動作を搬送用ワイヤ10に伝達し、搬送用ワイヤ10を搬送方向に送る。これにより、動作部3が、ワークを搬送する方向に移動する。
図2に示すように、大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10の大ウエイト側経路部10aにおいて、鉛直方向について搬送装置1における所定の待機位置A1を上昇端とし、この待機位置A1から、下降端となる所定の停止位置A2までの範囲で落下運動する。つまり、待機位置A1から停止位置A2までの範囲B1が、大ウエイト11の全動作ストロークとなる。なお、図2においては、大ウエイト11の下端の位置を、大ウエイト11の高さ位置(鉛直方向の位置)としている。また、大ウエイト11の停止位置A2は、大ウエイト側経路部10aの下端において、大ウエイト11により押し下げられる係合部材17aの下方への移動が規制された状態における大ウエイト11の高さ位置である。
大ウエイト11が待機位置A1にある状態で、係合部17を構成する係合部材17aは、大ウエイト11の下方において大ウエイト11に対して所定の距離B2を隔てて位置する。つまり、大ウエイト11は、待機位置A1から距離B2を落下した係合開始位置A3から係合部17によって搬送用ワイヤ10に係合し、搬送用ワイヤ10に係合した状態で、残りの動作ストロークである、係合開始位置A3から停止位置A2までの距離B3を落下運動する。この搬送用ワイヤ10に係合した状態で大ウエイト11が移動する距離B3(=B1−B2)が、大ウエイト11が搬送用ワイヤ10に作用して搬送用ワイヤ10を搬送方向に送り移動させる作用ストロークとなる。言い換えると、大ウエイト11の作用ストローク(距離B3)が、大ウエイト11の落下運動による搬送用ワイヤ10の搬送方向の送り量となり、動作部3を動作させるために移動する搬送用ワイヤ10の動作ストロークとなる。
一方、大ウエイト11が待機位置A1から係合開始位置A3までの距離B2を落下する間は、大ウエイト11が落下運動を開始してから搬送用ワイヤ10に係合するまでの遅延時間となる。したがって、待機位置A1から係合開始位置A3までの距離B2の動作ストロークの長さにより、つまり大ウエイト側経路部10aにおいて係合部17を設ける位置により、大ウエイト11の落下運動による動作部3の動作の開始タイミングが調整される。以下では、待機位置A1から係合開始位置A3までの搬送用ワイヤ10の動作ストローク(距離B2)を「遅延ストローク」とする。
以上のような構成においては、大ウエイト11は、待機位置A1から、係合開始位置A3までの遅延ストロークを経た後、係合部17によって搬送用ワイヤ10に係合する。この遅延ストロークの間、大ウエイト11は、貫通孔11aに貫通させる搬送用ワイヤ10に作用することなく落下運動する。
そして、係合開始位置A3にて搬送用ワイヤ10に係合した状態の大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10に係合した状態で、停止位置A2まで落下運動を続ける。これにより、大ウエイト11は、係合開始位置A3から停止位置A2までの作用ストローク(距離B3)の移動距離分、大ウエイト側経路部10aに固定された係合部17を押し下げることで搬送用ワイヤ10に作用し、搬送用ワイヤ10を搬送方向に送り移動させる。
(小ウエイト12について)
小ウエイト12は、落下運動することにより、所定の待機位置からワークを搬送することで移動した状態の動作部3を待機位置まで戻す。つまり、小ウエイト12は、大ウエイト11の落下運動によって搬送方向に送られた搬送用ワイヤ10を、搬送方向とは逆方向の戻し方向に送り移動させ、動作部3を待機位置に戻す。
小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10において、小ウエイト側経路部10bに設けられる。小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10に固定された状態で設けられる。つまり、小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10が搬送方向または戻し方向に送られることで、小ウエイト側経路部10bにおいて搬送用ワイヤ10と一体的に昇降する。
図2および図3に示すように、小ウエイト12は、略筒状の外形を有し、その筒軸方向が鉛直方向となる姿勢で、中心軸(筒軸)が搬送用ワイヤ10に沿うように、搬送用ワイヤ10に固定される。小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10を貫通させた状態で搬送用ワイヤ10に固定されることで、搬送用ワイヤ10に固定された状態で支持される。
具体的には、図4に示すように、小ウエイト12は、その略筒状の外形における中心軸部分(筒軸部分)に、搬送用ワイヤ10を貫通させる貫通孔12aを有する。小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10に固定された状態で設けられる固定部材12Xおよび係合部材12Yにより、搬送用ワイヤ10に固定される。
固定部材12Xは、例えば円板状等の板状の部材であり、搬送用ワイヤ10において、小ウエイト12の貫通孔12a内の部分に設けられる。図4に示す例では、固定部材12Xは、小ウエイト12の下側に設けられている。具体的には、小ウエイト12は、略円筒状の本体部分12dと、本体部分12dの上下に設けられる鍔部12b、12cとを有し、固定部材12Xは、本体部分12dの下端部であって、下側の鍔部12cに面する位置に設けられている。
固定部材12Xは、小ウエイト12において搬送用ワイヤ10を貫通させる貫通孔12aに対する拡径部材である。つまり、固定部材12Xは、貫通孔12aの孔径よりも大きい外径を有し、平面視(小ウエイト12の筒軸方向視)で貫通孔12aの範囲を含むように設けられる。固定部材12Xは、小ウエイト12の内部において貫通孔12aを形成する部分の所定の位置に係合した状態で設けられる。以上のように、固定部材12Xは、搬送用ワイヤ10および小ウエイト12の両者に対して固定される。
係合部材12Yは、上述したように大ウエイト11が係合する係合部17を構成する係合部材17aと同様の部材である。すなわち、係合部材12Yは、搬送用ワイヤ10を部分的に拡径させる部材であり、略筒状の外形を有し、その筒軸方向が鉛直方向となる姿勢で、中心軸部分に搬送用ワイヤ10の小ウエイト側経路部10bを貫通させた状態で、搬送用ワイヤ10に固定される。
係合部材12Yは、小ウエイト12の貫通孔12aの内径よりも大きい外径を有し、小ウエイト12の下側に位置し、小ウエイト12を搬送用ワイヤ10に対して係止する。また、係合部材12Yは、搬送用ワイヤ10に固定された状態で上側となる部分に、上方に向けて縮径する円錐状のテーパ部12Yaを有する。係合部材12Yにおいては、このテーパ部12Yaの中心線に沿う位置に、搬送用ワイヤ10が貫通する。したがって、係合部材12Yは、その上側に位置する小ウエイト12に対して、テーパ部12Yaの先端(上端)を貫通孔12aの下端開口部に位置させた態様で係合した状態となる。
図4に示す例では、貫通孔12aの下端部に、係合部材12Yのテーパ部12Yaに対応して、下側にかけて孔径が広がる拡径部12eが設けられている。係合部材12Yは、そのテーパ部12Yaを貫通孔12aの拡径部12eに嵌合させた状態で、小ウエイト12に係合する。
このように、小ウエイト12は、固定部材12Xおよび係合部材12Yにより、搬送用ワイヤ10に対して固定され位置決めされた状態で設けられる。なお、小ウエイト12を搬送用ワイヤ10に固定するための構成は、本実施形態に限定されない。例えば、小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10を貫通させることなく、分断された搬送用ワイヤ10間を連結するように設けられることで、搬送用ワイヤ10に固定された状態で支持されてもよい。
このように搬送用ワイヤ10に固定される小ウエイト12の落下運動による搬送用ワイヤ10の戻し方向の送り移動は、上述したように落下運動によって搬送用ワイヤ10を搬送方向に送り移動させて停止位置A2にある大ウエイト11が引き上げられることにともなって行われる。具体的には次のとおりである。
上記のとおり搬送用ワイヤ10に固定された状態で設けられる小ウエイト12は、係合部17によって搬送用ワイヤ10に係合した状態の大ウエイト11の落下運動による搬送用ワイヤ10の搬送方向の送り移動にともなって、引き上げられて上昇する。つまり、小ウエイト12よりも重い大ウエイト11は、搬送用ワイヤ10に係合した状態での落下運動により、小ウエイト12に作用する重力によって搬送用ワイヤ10に対して戻し方向に作用する力に抗して、搬送用ワイヤ10を搬送方向に送る。
ここで、大ウエイト11による搬送用ワイヤ10の搬送方向の送り動作にともなって上昇する小ウエイト12は、上述した大ウエイト11の作用ストローク(図2、距離B3参照)と同じストローク分、上昇する。言い換えると、大ウエイト11が係合部17により搬送用ワイヤ10に係合した状態で落下することで搬送用ワイヤ10を搬送方向に送り移動させる距離、つまり大ウエイト11の作用ストロークが、小ウエイト12の動作ストローク(距離B4)となる(図2参照)。
そして、係合部17によって搬送用ワイヤ10に作用する大ウエイト11の荷重が解除されることで、搬送用ワイヤ10は、小ウエイト12に作用する重力により、つまり小ウエイト12の落下運動によって、戻し方向に送られる。ここで戻し方向に送られる搬送用ワイヤ10は、落下運動する小ウエイト12がその下降端となる所定の停止位置に達するまで送り移動させられる。ここで、図2に示すように、小ウエイト12の停止位置A4は、小ウエイト側経路部10bの下端において、小ウエイト12の下側に位置する係合部材12Yの下方への移動が規制された状態における小ウエイト12の高さ位置である。
小ウエイト12が停止位置A4にある状態においては、係合部17が、待機位置A1の大ウエイト11に対して遅延ストロークを隔てた位置(以下、「初期位置」とする。)に存在する。つまり、初期位置にある係合部17よりも上方に大ウエイト11が位置する状態では、搬送用ワイヤ10は、小ウエイト12がその停止位置A4に位置する状態となる。なお、本実施形態では、小ウエイト12の停止位置A4は、大ウエイト11の停止位置A2と略同じ高さ位置である(図2参照)。
したがって、上述したように大ウエイト11の作用ストローク(距離B3)と同じ距離を動作ストローク(距離4B)とする小ウエイト12については、その上昇端位置A5は、大ウエイト11の係合開始位置A3と同じ高さ位置となる。つまり、大ウエイト11が停止位置A2に位置する状態で、小ウエイト12は、大ウエイト11の係合開始位置A3と同じ高さ位置の上昇端位置A5に位置する。
このように、小ウエイト12の落下運動による搬送用ワイヤ10の戻し方向の送り移動は、停止位置A2にある大ウエイト11が引き上げられ、係合部17による搬送用ワイヤ10に対する大ウエイト11の荷重の作用が解除されることで行われる。なお、停止位置A2まで落下した状態の大ウエイト11の引上げ動作については後述する。
以上のように、小ウエイト12は、搬送用ワイヤ10に対して小ウエイト側経路部10bに設けられ、落下することで、大ウエイト11の落下運動により搬送方向に送られた搬送用ワイヤ10を所定の経路に沿って搬送方向とは逆の戻し方向に送り、動作部3を待機位置に戻す。
大ウエイト11および小ウエイト12の各重りの重さは、例えば、大ウエイト11が5.0kg、小ウエイト12が2.5kg等として設定される。この場合、搬送用ワイヤ10の重さや各滑車部における抵抗等を無視し、各重りの重さのみに着目すると、大ウエイト11の落下運動によって搬送用ワイヤ10を搬送方向に送る力は、5.0[kg]−2.5[kg]=2.5[kg]の物体に作用する力(2.5×9.8[N])に相当する。また、小ウエイト12の落下運動によって搬送用ワイヤ10を戻し方向に送る力は、2.5[kg]の小ウエイト12に作用する力(2.5×9.8[N])となる。
本実施形態の搬送装置1において、搬送ユニット2の重り昇降部2bに設けられる大ウエイト11および小ウエイト12は、それぞれ鉛直方向に配されたパイプ18内に収容された状態で設けられ、パイプ18内を昇降する。パイプ18は、大ウエイト11および小ウエイト12の各重りの動作ストロークの全体を含むように設けられる。
パイプ18は、円筒状の部材であり、筒状の大ウエイト11または小ウエイト12を同心配置させた状態で収容する。したがって、パイプ18内においては、搬送用ワイヤ10は、パイプ18の中心軸に沿って鉛直方向に配される態様となる。また、パイプ18は、例えば、透明樹脂等により透明の部材として構成されたものである。
パイプ18は、底部19により下端が塞がれた有底の筒体である。底部19は、大ウエイト側経路部10aまたは小ウエイト側経路部10bに配される搬送用ワイヤ10を貫通させるとともに搬送用ワイヤ10の送り動作を許容する孔部(図示略)を有する。
パイプ18における底部19は、大ウエイト11および小ウエイト12の各重りについての停止位置を規定する。大ウエイト11については、底部19の上面側に係合部材17aが接触することで、大ウエイト11の下方への移動が規制される。同様に、小ウエイト12については、底部19の上面側に係合部材12Yが接触することで、小ウエイト12の下方への移動が規制される。
ここで、底部19の上面においては、係合部材17aまたは係合部材12Yに対応する位置に、ゴム板19Xが設けられている(図2、図4参照)。ゴム板19Xは、対応する係合部材17aまたは係合部材12Yと略同径の円板状の部材である。ゴム板19Xは、例えば、1.5mm程度の板厚を有する。ゴム板19Xは、大ウエイト側経路部10aまたは小ウエイト側経路部10bに配される搬送用ワイヤ10を貫通させるとともに搬送用ワイヤ10の送り動作を許容する孔部(図示略)を有する。
このように底部19上にゴム板19Xが設けられることで、大ウエイト11については、大ウエイト11の落下によって係合部材17aがゴム板19Xに衝突し、小ウエイト12については、小ウエイト12の落下によって係合部材12Yがゴム板19Xに衝突する。ゴム板19Xは、大ウエイト11または小ウエイト12の落下運動による係合部材17aまたは係合部材12Yと底部19との衝突の衝撃を緩和するための部材であり、その衝突による衝突音を無くす、あるいは小さくするための部材である。
そして、上記のとおり底部19により規定される各ウエイト11、12の停止位置は、ウエイト11については、底部19の上面からゴム板19Xの厚さおよび係合部材17aの高さ分上方の高さ位置が、大ウエイト11の停止位置A2となる(図2参照)。また、小ウエイト12についても同様に、底部19の上面から19Xの厚さおよび係合部材12Yの高さ分上方の高さ位置が、小ウエイト12の停止位置となる。ここで、底部19の上面との関係において大ウエイト11または小ウエイト12の停止位置を規定する係合部材17aまたは係合部材12Yの高さは、これらの係合部材のテーパ部17b、12Yaが大ウエイト11の貫通孔11aまたは小ウエイト12の貫通孔12aに嵌り込んだ部分を除いた寸法である。
パイプ18内に収容された大ウエイト11および小ウエイト12は、例えば、パイプ18の内周面(以下「パイプ内周面」とする。)18aに対して若干の隙間を有し、落下運動および上昇移動を妨げられることがない状態で、パイプ内に収容される。パイプ18内に収容された大ウエイト11および小ウエイト12が有する構成について、具体的に説明する。
図3および図5に示すように、大ウエイト11は、略円筒状の外形における上端部と下端部に、鍔部11b、11cを有する。鍔部11b、11cは、互いに略同じ外径を有する部分であり、大ウエイト11における拡径部分を構成する。
そして、大ウエイト11は、鍔部11b、11cの外周端とパイプ内周面18aとの間に、若干の隙間S1を有した状態で設けられる(図5参照)。この隙間S1の大きさは、鍔部11b、11cとパイプ内周面18aとの間において、十分な量の空気が上下方向に流れる程度の大きさを有する。言い換えると、鍔部11b、11cの外周端とパイプ内周面18aとの間の隙間S1は、大ウエイト11の落下運動および上昇移動を妨げないように十分な量の空気を通過させる程度の大きさを有する。
図5に示すように、大ウエイト11は、下側の鍔部11cのさらに下側に、弁部材としての弁シート11Sを有する。弁シート11Sは、大ウエイト11の鍔部11cと略同径のシート状ないし薄板状の円形状の部材である。詳細には、弁シート11Sは、上述したようにパイプ内周面18aとの間に隙間S1を有する鍔部11cよりもわずかに大径であり、パイプ18の内径と略同一の外径を有し、パイプ内周面18aに対して略接触ないし接触可能な大きさを有する。
弁シート11Sは、下側の鍔部11cの下面に対して貼り付けられたり、他の部材が用いられたりすることで、鍔部11cの下側において固定された状態で設けられる。図5に示す例では、弁シート11Sは、円板状の固定部材11Tによって、鍔部11cの下面側に固定される。つまり、弁シート11Sは、鍔部11cと固定部材11Tとによって挟まれた状態で設けられる。固定部材11Tは、弁シート11Sを貫通するボルト等の固定具によって、鍔部11cに固定される。
弁シート11Sおよび固定部材11Tは、搬送用ワイヤ10を貫通させるとともに搬送用ワイヤ10の送り動作を許容する孔部11Sa、11Taを有する。これらの孔部11Sa、11Taは、大ウエイト11の貫通孔11aを形成する。図5に示す例では、貫通孔11aの下端部、つまり固定部材11Tの孔部11Taに、係合部材17aのテーパ部17bに対応して、下側にかけて孔径が広がる拡径部11Tbが設けられている。係合部材17aは、そのテーパ部17bを貫通孔11aの拡径部11Tbに嵌合させた状態で、大ウエイト11に係合する。
固定部材11Tは、互いに略同径の鍔部11cおよび弁シート11Sよりも小さい外径を有し、これらに対して同心配置された状態で設けられる。また、弁シート11Sは、鍔部11cに対して同心配置された状態で設けられる。これらのことから、弁シート11Sは、その周縁部分に、鍔部11cおよび固定部材11Tに挟まれていない解放部11Sbを有する。解放部11Sbは、弁シート11Sにおいて全周にわたって存在する円環状の領域部分となる。
弁シート11Sの素材としては、弁シート11Sがパイプ内周面18aに接触することから、パイプ内周面18aが傷つきにくくなる柔らかいものが好ましい。具体的には、弁シート11Sの素材は、例えば、布、ゴム、樹脂等である。また、弁シート11Sは、その素材や板厚等により、大ウエイト11の昇降に伴う空気抵抗によって変形するように構成される。具体的には、例えば図5に示すように、弁シート11Sは、大ウエイト11が停止している状態において、鍔部11cと固定部材11Tとにより挟まれた部分に対して解放部11Sbが自重により下がる程度の変形性を有する。
このように大ウエイト11に設けられる弁シート11Sは、大ウエイト11の昇降にともなって、鍔部11b、11cとパイプ内周面18aとの隙間S1を開閉する弁体として機能する。すなわち、弁シート11Sは、パイプ18内に収容された大ウエイト11が下降している状態で、パイプ内周面18aと大ウエイト11との間の隙間S1を閉ざし、大ウエイト11が上昇している状態で、隙間S1を開放する。
大ウエイト11の昇降にともなう弁シート11Sの動作について、図6を用いて説明する。図6(a)に示すように、大ウエイト11が下降動作、つまり落下運動をしている状態では(矢印O1参照)、弁シート11Sが下側から空気抵抗(矢印Q1参照)を受けることで、大ウエイト11の停止状態では自重によって下がった状態となる解放部11Sb(図5参照)が上昇する。これにより、弁シート11Sが鍔部11cの下面に沿って全体的に略水平に沿った状態となり、解放部11Sbによって鍔部11cとパイプ内周面18aとの間の隙間S1が下側から塞がれた状態となる。ここで、弁シート11Sは、解放部11Sbにより、パイプ内周面18aに対して略接触ないし接触した状態で、鍔部11cの外側の隙間S1を塞ぐ。なお、図6(a)では、大ウエイト11の落下運動に関し、大ウエイト11が係合部材17aによって搬送用ワイヤ10に係合した状態となる作用ストロークにおける下降状態を示している。
一方、図6(b)に示すように、大ウエイト11が上昇動作している状態では(矢印O2参照)、上下の鍔部11b、11cとパイプ内周面18aとの間の隙間S1を空気が通り抜け(矢印Q2参照)、弁シート11Sの解放部11Sbが、上側から鍔部11cとパイプ内周面18aとの間の隙間S1を通り抜ける空気の抵抗を受ける。これにより、解放部11Sbが自重により下がった状態よりもさらに下がるように弁シート11Sが変形し、鍔部11cとパイプ内周面18aとの間の隙間S1が開かれた状態となる。
このように、弁シート11Sは、大ウエイト11の下降状態においては、鍔部11cとパイプ内周面18aとの間の隙間S1を塞ぎ(図6(a)参照)、大ウエイト11の上昇状態においては、同隙間S1を開放する(同図(b)参照)。大ウエイト11が弁シート11Sを有することで、大ウエイト11が下降するときよりも上昇するときの方が、大ウエイト11が受ける空気抵抗が少なくなる。
以上のように大ウエイト11が弁部材としての弁シート11Sを有する構成によれば、大ウエイト11の下降動作(落下運動)に関しては、下降速度を低減することができる。これにより、係合部材17aと底部19との衝突を緩衝することができる。また、大ウエイト11の下降速度の低減により、動作部3の移動速度を低減することができるので、安全性を向上することができる。また、大ウエイト11の上昇動作に関しては、大ウエイト11の上昇速度を維持することができる。
なお、本実施形態では、弁シート11Sは、大ウエイト11に設けられているが、パイプ18内に収容された小ウエイト12に設けられてもよい。弁シート11Sが小ウエイト12に設けられる場合は、図4に示すように小ウエイト12が大ウエイト11と同様に上端部および下端部に有する鍔部12b、12cのうち、下側の鍔部12cの下側に、弁シートが設けられる。
また、図5に示すように、大ウエイト11は、ローラ部材としての樹脂ローラ11Rを有する。樹脂ローラ11Rは、大ウエイト11において、略円筒状の本体部分11dの外周面から一部が突出してパイプ内周面18aに接触するように、支持軸11Raにより回転自在に支持された状態で設けられる。
樹脂ローラ11Rは、上記のとおりパイプ内周面18aに接触することで、大ウエイト11の昇降動作にともなって回転するように設けられる。樹脂ローラ11Rを支持する支持軸11Raは、水平面に沿う方向を回転軸方向として、樹脂ローラ11Rを支持する。
本実施形態では、図5に示すように、大ウエイト11は、上下2段に樹脂ローラ11Rを有する。そして、上下各段において、樹脂ローラ11Rは、例えば、本体部分11dの周方向に沿って所定の間隔を隔てて4個設けられる。この場合、大ウエイト11は、計8個の樹脂ローラ11Rを有することになる。なお、大ウエイト11において樹脂ローラ11Rを設ける数や配置位置等は特に限定されない。
このように、本実施形態の大ウエイト11は、パイプ内周面18aに接触した状態で回転自在に設けられ、大ウエイト11の昇降動作にともなって回転する樹脂ローラ11Rを有する。したがって、図6(a)に示すような大ウエイト11の下降動作においては、各樹脂ローラ11Rは、パイプ内周面18aに接触した状態で上向きに転がる方向(矢印R1参照)に回転し、同図(b)に示すような大ウエイト11の上昇動作においては、各樹脂ローラ11Rは、パイプ内周面18aに接触した状態で下向きに転がる方向(矢印R2参照)に回転する。
以上のように大ウエイト11がローラ部材としての樹脂ローラ11Rを有する構成によれば、大ウエイト11の鍔部11b、11cがパイプ内周面18aに接触することを防止することができ、大ウエイト11の鍔部11b、11cによってパイプ内周面18aが削り取られることを防止することができる。また、大ウエイト11の昇降動作における大ウエイト11とパイプ内周面18aとの間の摩擦抵抗を低減することができる。
なお、本実施形態では、樹脂ローラ11Rは、大ウエイト11に設けられているが、パイプ18内に収容された小ウエイト12に設けられてもよい。樹脂ローラ11Rが小ウエイト12に設けられる場合は、小ウエイト12の本体部分12dに対して、直接的にあるいはステー等の所定の支持部材等を介して間接的に、樹脂ローラが設けられる。
また、図5に示すように、大ウエイト11は、貫通孔11a内に閉塞部材11Uを有する。閉塞部材11Uは、貫通孔11a内において、搬送用ワイヤ10を貫通させ、大ウエイト11の本体部分11dに対して固定された状態で設けられるとともに、搬送用ワイヤ10に対して相対移動可能に設けられる。閉塞部材11Uは、大ウエイト11の昇降にともない、本体部分11dと一体的に、搬送用ワイヤ10に対して相対移動する。
閉塞部材11Uは、本体部分11dにおける貫通孔11aに嵌った状態で搬送用ワイヤ10を貫通させるように円筒状の外形を有する。そして、閉塞部材11Uは、その円筒状の外形における外周面が貫通孔11aを形成する内周面に対して固定されるとともに、円筒状の外形における中心軸部分に有する挿通孔11Uaに、搬送用ワイヤ10を挿通させる。
このように大ウエイト11に設けられる閉塞部材11Uは、大ウエイト11の貫通孔11aを塞ぐことで、大ウエイト11の昇降動作にともなって貫通孔11a内を通過する空気の流れを規制する。つまり、閉塞部材11Uは、大ウエイト11の昇降動作において貫通孔11aに対する空気漏れ止め用の部材として機能する。閉塞部材11Uは、大ウエイト11の昇降動作のうち特に大ウエイト11の下降時において、上述した弁シート11Sとともに、パイプ18内における大ウエイト11の下側の空間に対する密閉度を高くする。
閉塞部材11Uの素材としては、閉塞部材11Uが挿通孔11Uaに搬送用ワイヤ10を貫通させた状態で搬送用ワイヤ10に対して相対移動することから、搬送用ワイヤ10との間の摩擦係数が低くなるものが好ましい。具体的には、閉塞部材11Uの素材は、例えばテフロン(登録商標)樹脂等が挙げられる。
以上のように、大ウエイト11が閉塞部材11Uを有する構成によれば、大ウエイト11の昇降動作に関し、その移動速度を低減することができる。これにより、動作部3の移動速度を低減させることができて安全性の向上が図れ、また、係合部材17aと底部19との衝突の衝撃を緩和することができる。
なお、図5に示す例では、閉塞部材11Uは、大ウエイト11の本体部分11dにおいて、貫通孔11aの下端部の一部分を占めるように設けられているが、これに限定されない。閉塞部材11Uは、例えば、大ウエイト11の貫通孔11aにおいて上下方向に全体的に設けられたり、複数箇所に設けられたりしてもよい。
また、本実施形態では、閉塞部材11Uは、大ウエイト11に設けられているが、パイプ18内に収容された小ウエイト12に設けられてもよい。閉塞部材11Uが小ウエイト12に設けられる場合は、図4に示すように、小ウエイト12の貫通孔12a内に、閉塞部材が設けられる。
また、図4に示すように、小ウエイト12は、その上下の鍔部12b、12cの周縁部に、被覆シート12Sを有する。被覆シート12Sは、略円板状の鍔部12b、12cの周縁部を全周にわたって覆うように設けられる。被覆シート12Sは、例えば鍔部12b、12cに貼り付けられること等によって固定される。
被覆シート12Sは、小ウエイト12の鍔部12b、12cがパイプ内周面18aに直接接触することを防ぐ。このため、被覆シート12Sは、鍔部12b、12cにおいて、少なくとも、パイプ内周面18aに接触することになる範囲を覆うように設けられる。本実施形態では、被覆シート12Sは、鍔部12b、12cの周縁部に沿って円環状に設けられる。
被覆シート12Sは、パイプ内周面18aに対する傷防止シートとして機能する。このため、被覆シート12Sの素材としては、パイプ内周面18aに対して傷つきにくい柔らかいものが用いられる。具体的には、被覆シート12Sの素材は、例えば、布、ゴム、樹脂等である。
以上のように小ウエイト12が鍔部12b、12cにおいて被覆シート12Sを有する構成によれば、小ウエイト12がパイプ内周面18aに接触することによってパイプ内周面18aに傷が入ることを防止することができ、また、小ウエイト12の昇降動作における小ウエイト12とパイプ内周面18aとの間の摩擦抵抗を低減することができる。
なお、本実施形態では、被覆シート12Sは、小ウエイト12に設けられているが、パイプ18内に収容された大ウエイト11に設けられてもよい。被覆シート12Sが大ウエイト11に設けられる場合は、大ウエイト11の上下の鍔部11b、11cの周縁部に、被覆シートが設けられる。
続いて、パイプ18の好ましい構成について説明する。パイプ18の下端部は、上記のとおりパイプ18の下端を塞ぐ底部19により略密閉されている。このため、上述したようにパイプ内周面18aとの間に若干の隙間を有した状態で設けられる大ウエイト11は、パイプ18内を下降することで、パイプ18内の空気を圧縮するとともに、その圧縮される空気の抵抗を受ける。このように大ウエイト11が受けるパイプ18内の空気の抵抗の大きさは、大ウエイト11の落下速度に影響する。
そこで、図7に示すように、パイプ18の下端部には、パイプ18から排出される空気の排出量を調整するための流量調整弁20が設けられている。具体的には、図7に示すように、底部19には、パイプ18の内部空間とパイプ18の外部とを連通する排気通路19aが設けられている。排気通路19aの一端側は、底部19の上面に開口することで、パイプ18の内部空間に臨む。一方、排気通路19aの他端側は、底部19の側面側に開口し、パイプ18の周壁に形成された開口部を介してパイプ18の外部に臨む。この排気通路19aによる、パイプ18の外部に対する開口部に、流量調整弁20が接続される。
このような構成においては、パイプ18内において大ウエイト11が落下することで、大ウエイト11の下側に存在する空気は、圧縮されるとともに排気通路19a内に流入して流量調整弁20に導かれ、流量調整弁20を通過して排出される。なお、図7における矢印は、空気の流れを模式的に示している。また、図7では、便宜上、係合部17等の構成の一部の図示を省略している。
流量調整弁20は、配管20bの中途部に設けられ、配管20bの一端側が、パイプ18の外部に対する開口部に接続される。すなわち、配管20bのうち、パイプ18に接続される上流側の部分が、パイプ18から排出される空気の流入を受ける配管部分となり、パイプ18に接続される側と反対側である下流側の部分が、流量調整弁20により調整された流量の空気を排出させる配管部分となる。
流量調整弁20の下流側の配管部分には、流量調整弁20により調整された流量の空気を外部に排出させる排気口部20cが設けられている。排気口部20cは、配管20bに連通して外部に開口する開口部を構成する。
流量調整弁20は、通過させる空気の流調を調整するための操作部20aを有する。操作部20aは、回転操作されることにより、流量調整弁20における空気の流量を調整する。つまり、流量調整弁20においては、操作部20aが回動することにより、空気の流路面積(流路の大きさ)が変化し、通過する空気の流量が変化する。なお、流量調整弁20の構造については、操作部20a等の所定の操作部の操作によって、通過する空気の流量が調整される構造であれば、特に限定されない。
このように、パイプ18においては、底部19に設けられた排気通路19aにより、大ウエイト11の落下にともない、パイプ18内の空気を外部に排出させるとともに、排気通路19aに接続された流量調整弁20により、パイプ18から排出される空気の流調が調整される。流量調整弁20において流量が減少するように調整されると、パイプ18から排出される空気の量が減少することから、落下する大ウエイト11が受ける空気の抵抗が大きくなり、大ウエイト11の速度が低下する。一方、流量調整弁20において流量が増加するように調整されると、パイプ18から排出される空気の量が増加することから、落下する大ウエイト11が受ける空気の抵抗が小さくなり、大ウエイト11の速度が上昇する。
このように、パイプ18において排気通路19aに接続された流量調整弁20は、パイプ18内に収容された大ウエイト11の落下にともなってパイプ18内から排出する空気の排出量を調整する落下速度調整部として機能する。流量調整弁20による速度の調整については、大ウエイト11によるパイプ18内の空間に対する密閉度が高いほど、より高い精度での調整が可能となる。このようにパイプ18内において大ウエイト11による密閉度を高めて落下速度の細かい調整を行う観点からは、上述したような弁シート11Sを設ける構成や閉塞部材11Uを設ける構成が好ましい(図5参照)。つまり、これらの構成を設けることで、パイプ18内における大ウエイト11による密閉度を高めることができ、大ウエイト11の落下速度についてより細かな調整が可能となる。
以上のような構成によれば、パイプ18内を落下する大ウエイト11の落下速度を調整することができる。これにより、大ウエイト11の落下運動にともなって動作する動作部3の動作速度を調整することが可能となり、ワークの搬送速度を調整することが可能となる。結果として、ワークの搬送速度の面から、ワークの種類や搬送現場の状況に即したワークの搬送が可能となる。
なお、図示は省略するが、小ウエイト12を収容するパイプ18についても同様に、流量調整弁20を設けてもよい。かかる構成によれば、ワークを搬送した後に動作部3が元の位置に戻る際の動作速度を調整することが可能となる。
以上のような構成を備える搬送ユニット2に関し、搬送装置1が備える4組の搬送ユニット2は、各搬送ユニット2が有する大ウエイト11の落下運動を連動させて、4個の大ウエイト11を所定の順序で順番に落下させる。本実施形態の搬送装置1においては、図1および図8に示すように、第1〜4搬送ユニット2A〜2Dのそれぞれが有する大ウエイト11を第1大ウエイト11A、第2大ウエイト11B、第3大ウエイト11C、第4大ウエイト11Dとした場合、第1〜第4大ウエイト11A〜Dの順に連動して落下する。
すなわち、図8に示すように、4個の第1〜第4大ウエイト11A〜11Dがいずれも待機位置A1(図2参照)で保持されている状態から、1番目に、第1大ウエイト11Aが落下し(矢印C1参照)、第1大ウエイト11Aの落下運動の終了を契機として、第2大ウエイト11Bの保持状態が解除され、第2大ウエイト11Bが落下運動を開始する(矢印C2参照)。同様にして、第2大ウエイト11Bの落下運動の終了にともなって、第3大ウエイト11Cが落下運動を開始し(矢印C3参照)、第3大ウエイト11Cの落下運動の終了にともなって、第4大ウエイト11Dが落下運動を開始する(矢印C4参照)。
このような4個の大ウエイト11の連動した落下運動は、搬送装置1において4組の搬送ユニット2が備える保持解除機構により実現される。この保持解除機構は、各搬送ユニット2にて大ウエイト11を所定の待機位置で保持するとともに、1つの搬送ユニット2における大ウエイト11の落下運動により起動して他の1つの搬送ユニット2における大ウエイト11の待機位置における保持状態を解除して大ウエイト11の落下を開始させる機構である。
こうした保持解除機構に関し、本実施形態の搬送装置1においては、「1つの搬送ユニット2」に対する「他の1つの搬送ユニット2」は、並列して設けられる4組の搬送ユニット2において一方の隣に(図1においては右隣り)に位置する搬送ユニット2に相当する。例えば、第1搬送ユニット2Aに対する「他の1つの搬送ユニット2」は、この搬送ユニット2の隣に位置する第2搬送ユニット2Bとなる。また、大ウエイト11についての「所定の待機位置」は、大ウエイト11が係合部17の上方において落下を待機する位置であり、本実施形態の搬送装置1においては、上述したように大ウエイト11の動作ストロークの上昇端となる待機位置A1(図2参照)である。
(保持解除機構について)
本実施形態の搬送装置1が備える保持解除機構の具体例について、図9、図10、および図11を用いて説明する。図9および図10に示すように、保持解除機構は、待機位置(図2、待機位置A1参照)にある大ウエイト11を保持する保持部21と、保持部21による大ウエイト11の保持を解除させる解除部22とを有する。保持部21と解除部22とは、連結シャフト23により連結され、互いに連動する。
保持部21は、待機位置にある大ウエイト11の上端部の側方に設けられる。本実施形態では、大ウエイト11はパイプ18内に収容された状態で設けられるため、保持部21は、パイプ18の外側に設けられ、パイプ18の周壁を介して大ウエイト11に作用する。このため、パイプ18の周壁には、パイプ18の外側からの大ウエイト11に対する保持部21の作用を許容する開口部(図示略)が設けられる。
図11に示すように、保持部21は、連結シャフト23の上端部に設けられた第1軸支部24に回転可能に支持された係止体25と、同じく第1軸支部24にその一端部が回転可能に支持された支持アーム26とを有する。なお、第1軸支部24は、連結シャフト23の上端部を構成する上側連結部23aに設けられる。
係止体25は、全体として長細い板状の部材であり、その長手方向の中途部が、板面に垂直な方向を軸方向とする第1軸支部24において回動可能に軸支される。詳細には、係止体25は、図11に示すように、第1軸支部24による支持位置よりも大ウエイト11側と反対側(図11において左側)の部分における中途部分、および第1軸支部24が位置する部分を角部とする略Z字状のクランク形状を有する。
係止体25は、第1軸支部24による支持位置よりも大ウエイト11側(図11において右側)の部分を、大ウエイト11を係止する係止片部25aとする。また、係止体25は、第1軸支部24による支持位置よりも大ウエイト11側と反対側(図11において左側)の部分、つまり係止片部25aの部分を除いた略V字状をなす部分を、保持解除機構により大ウエイト11が保持された状態(以下「保持状態」という。)において係止体25の回動を規制する支持片部25bとする。
係止体25は、保持状態において、係止片部25aの先端を、大ウエイト11における上側の鍔部11bの周縁部下側に係止させる。すなわち、大ウエイト11における拡径部分である鍔部11bは、大ウエイト11における略円筒状の本体部分11dに対して全周にわたって径方向に突出する部分であり、この鍔部11bの本体部分11dからの突出部分の下側面に係止片部25aの先端部が接触した状態で、係止体25が大ウエイト11に係止される。
ここで、大ウエイト11において、本体部分11dの上端部、つまり鍔部11bの下側の部分に、上側にかけて縮径するテーパ部11eが設けられている。これにより、係止体25の係止片部25aの先端部が接触する、鍔部11bの本体部分11dからの突出量が確保され、係止片部25aを大ウエイト11に係止させやすくなる。
支持アーム26は、直線状の板状の部材であり、その長手方向の一端部が、第1軸支部24において回動可能に軸支される。また、支持アーム26の長手方向の他端部は、板面に垂直な方向を軸方向とする第2軸支部27において回動可能に軸支される。
第2軸支部27は、第1軸支部24に対して、大ウエイト11側と反対側(図11において左側)に位置する。また、第2軸支部27は、上述したように第1軸支部24に軸支される係止体25の支持片部25bの下側に位置し、第1軸支部24を中心に回動する係止体25に当接するように設けられる。
本実施形態の保持解除機構において、連結シャフト23の上端の上側連結部23a、係止体25の中途部、支持アーム26の一端部が支持される第1軸支部24は、移動可能な軸支部である。これに対し、支持アーム26の他端部が支持される第2軸支部27は、固定された軸支部である。したがって、第1軸支部24と第2軸支部27との相対的な位置関係は、第1軸支部24が移動することにより変化する。
以上のような構成を有する保持部21において、図11(a)に示すように、保持状態では、係止片部25aを大ウエイト11に係止させた係止体25は、大ウエイト11に作用する重力の分力により、第1軸支部24を中心に、支持片部25b側が下がる方向(図11(a)において左回り(矢印D1参照)、以下「左回り」とする。)に回転する力を受ける。これに対し、係止体25の左回りの回転は、支持片部25bが第2軸支部27に接触することで規制される。
このように、保持状態においては、第2軸支部27によって回転が規制された状態の係止体25により、大ウエイト11が係止されて待機位置に保持される。係止体25の回転が規制された状態は、第1軸支部24が、係止体25の係止片部25aの先端部(符号E1参照)と、第2軸支部27(符号E2参照)とを結ぶ直線F1よりも内側(下側)に位置することで維持される。
保持解除機構においては、係止片部25aの先端部が力点E1、第2軸支部27が支点E2、第1軸支部24が作用点E3にそれぞれ相当する。そして、作用点E3である第1軸支部24の位置が、力点E1と支点E2とを結ぶ直線F1よりも少しでも内側に入ることで、係止体25が支持アーム26との関係において突っ張って止まった状態となり、かかる状態の係止体25により大ウエイト11が保持される。なお、保持状態において、力点E1は作用点E3よりも上側に位置し、支点E2は作用点E3よりも下側に位置することから、直線F1は、力点E1側から支点E2側にかけて下る直線となる。
図11(a)に示す保持状態から、同図(b)に示すように、第1軸支部24の位置(作用点E3)が力点E1と支点E2とを結ぶ直線F1よりも外側(上側)に入ると、係止体25が、第1軸支部24を中心に、係止片部25aが下がる方向(図11(b)において右回り(矢印D2参照))に回転し、大ウエイト11の保持が解除される。
このように、保持解除機構の保持部21においては、トグル式のリンク機構が採用されている。このため、小さい力と動作により、保持状態の解除が可能となる。
このような保持部21における保持状態の解除動作、つまり直線F1よりも内側にある第1軸支部24を直線F1の外側に移動させる動作が、連結シャフト23の押し上げ動作によって行われる。すなわち、連結シャフト23が押し上げられることにより、上側連結部23aに設けられた第1軸支部24が上昇し、直線F1の内側に位置する第1軸支部24が直線F1の外側に入る。こうした連結シャフト23の押し上げ動作が、保持解除機構を構成する解除部22によって行われる。
図9および図10に示すように、解除部22は、パイプ18の下方に設けられる。解除部22は、回動可能に設けられる直線状の支持回動体28と、支持回動体28の長手方向の一端部(図9において左側の端部)に回動可能に連結されるトリガー棒29とを有する。また、支持回動体28の長手方向の他端部(図9において右側の端部)には、連結シャフト23の下端部が回動可能に連結される。なお、連結シャフト23は、その下端部を構成する下側連結部23bを、支持回動体28の他端部に回動可能に連結させる。
支持回動体28は、その長手方向の中央部に設けられた支点28aにより支持された状態で設けられ、支点28aを中心にシーソーのごとく回動する。トリガー棒29は、全体として棒状の部材であり、その下端部が、支持回動体28の一端部に連結される。トリガー棒29は、その下端部を構成する連結部29aを、支持回動体28の一端部に回動可能に連結させる。
解除部22は、パイプ18内における大ウエイト11の落下動作を用いて、連結シャフト23を押し上げる。解除部22は、トリガー棒29により、パイプ18内における大ウエイト11の落下動作を受ける。このため、トリガー棒29は、パイプ18の下端に設けられた底部19を上下方向に貫通し、上側の部分をパイプ18内に突出させた状態で設けられる。底部19には、トリガー棒29を貫通させる貫通孔(図示略)が設けられている。この底部19に設けられた貫通孔は、トリガー棒29の上下動作を許容する。以上のような構成を有する解除部22は、パイプ18内における大ウエイト11の落下動作を、連結シャフト23の上昇動作に変換する。
以上のような構成を備える本実施形態の保持解除機構は、次のように動作する。図9に示すように、各大ウエイト11が待機位置に保持された状態では、各大ウエイト11は、直線F1の内側に第1軸支部24を位置させた状態の保持部21により、待機位置に保持される(図11(a)参照)。この状態では、解除部22を構成する支持回動体28は、連結シャフト23が連結された側が下がった姿勢(図9において右下がりの姿勢)にある。
図10に示すように、パイプ18内を落下してきた大ウエイト11(11X)により(矢印G1参照)、解除部22を構成するトリガー棒29が押し下げられる(矢印G2参照)。これにともない、支持回動体28が、支点28aを中心に、支持回動体28の連結シャフト23の下側連結部23bが連結された側が上がる方向(図11において左回り)に回動する(矢印G3参照)。これにより、連結シャフト23が押し上げられる(矢印G4参照)。
ここで、上述したように大ウエイト11は係合部17を構成する係合部材17aを押し下げながら落下するため、大ウエイト11は、底部19に対してゴム板19Xおよび係合部材17aを間に介した状態で着地する。したがって、大ウエイト11は、落下した状態で、底部19の上面に対してゴム板19Xおよび係合部材17aの高さ分、上方の位置で停止する。こうした大ウエイト11の落下位置が加味され、トリガー棒29のパイプ18内における突出長さ等が設定される。
上記のとおり連結シャフト23が押し上げられることで、保持部21において第1軸支部24が直線F1よりも外側に移動し、係止体25が、保持状態を解除する方向に回動する(矢印G5参照)。これにより、トリガー棒29を押し下げた大ウエイト11Xの隣に位置する大ウエイト11(11Y)の保持が解除され、大ウエイト11Yが落下運動を開始する(矢印G6参照)。
以上のように大ウエイト11の落下動作を用いて連動動作を行う保持解除機構により、本実施形態の搬送装置1は、4組の搬送ユニット2にて各搬送ユニット2での大ウエイト11の落下を互いに連動させ、各搬送ユニット2の大ウエイト11を順番に落下させる。
すなわち、第1大ウエイト11Aを収容するパイプ18の下方に位置する解除部22は、第1大ウエイト11Aの落下によって動作し、第2搬送ユニット2Bにおいて第2大ウエイト11Bを保持する保持部21による保持を解除する。同様にして、第2大ウエイト11Bを収容するパイプ18の下方に位置する解除部22は、第2大ウエイト11Bの落下によって動作し、第3搬送ユニット2Cにおいて第3大ウエイト11Cを保持する保持部21による保持を解除する。また、第3大ウエイト11Cを収容するパイプ18の下方に位置する解除部22は、第3大ウエイト11Cの落下によって動作し、第4搬送ユニット2Dにおいて第4大ウエイト11Dを保持する保持部21による保持を解除する。
なお、解除部22は、大ウエイト11によりトリガー棒29が押し下げられた状態から、大ウエイト11が引き上げられて上昇すると、支持回動体28が自動的に元の状態に戻るように構成されている。具体的には、例えば、解除部22において、トリガー棒29が大ウエイト11による押し下げから解放されると、支持回動体28がトリガー棒29側を上昇させる方向に回動するように、バネ等の付勢部によって支持回動体28が付勢されている。
また、上述したような保持解除機構による連動動作に関し、最初に落下する第1大ウエイト11Aは、保持部21により保持され、この保持部21と連動する解除部22に相当する構成により、保持の解除が行われる。この第1大ウエイト11Aの保持を解除する解除部22に相当する構成は、例えば、図9に示すような解除部22において、トリガー棒29の代わりに、支持回動体28を、連結シャフト23が連結される側が上昇する方向に回動させるための構成が設けられる。かかる構成は、例えば、支持回動体28の端部に接続されるワイヤや棒等である。
本実施形態では、最初に落下する第1大ウエイト11Aを落下させる契機となる支持回動体28の回動動作は、後述するようにAGVの動作が用いられることにより行われる。ただし、この支持回動体28の回動動作は、搬送装置1の設置現場における他の機械要素の動作が用いられて行われたり、作業者の手動操作により行われたりしてもよい。
(大ウエイト11の引上げ動作について)
次に、落下した大ウエイト11を引き上げるための構成について説明する。本実施形態の搬送装置1において、落下した大ウエイト11の引上げ動作は、大ウエイト11に一端が接続された戻し用ワイヤ31の送り動作により行われる。
このため、図1に示すように、大ウエイト11には、大ウエイト11を落下した状態から引き上げるための戻し用ワイヤ31の一端が接続されている。具体的には、図2および図3に示すように、戻し用ワイヤ31の一端は、大ウエイト11の上面部に設けられた接続用突起32に接続される。接続用突起32は、大ウエイト11の上面に立設された柱状の本体部32aと、本体部32aの上端部に設けられた円環状の接続部32bとを有する(図3参照)。戻し用ワイヤ31の一端部は、接続用突起32の接続部32bに締結される。
上述したように、本実施形態の搬送装置1が備える4個の大ウエイト11は、保持解除機構による連動動作によって順に落下する。そこで、搬送装置1においては、大ウエイト11の引上げ動作として、落下した状態の4個の大ウエイト11を同時に引き上げる動作が行われる。そして、この4個の大ウエイト11の同時引上げの動作が、各大ウエイト11の接続用突起32に接続された合計4本の戻し用ワイヤ31の送り動作によって行われる。
図1および図12に示すように、戻し用ワイヤ31は、各搬送ユニット2におけるパイプ18の上方に配置される戻し用第1滑車部33と、この戻し用第1滑車部33と略同じ高さに配置される戻し用第2滑車部34とに巻回された状態で配される。本実施形態では、1箇所に設けられた戻し用第2滑車部34が、4本の戻し用ワイヤ31で共用される(図1参照)。ただし、戻し用第2滑車部34は、戻し用ワイヤ31ごとに設けられてもよい。なお、図12では、便宜上、1つの大ウエイト11と戻し用ワイヤ31との関係を示している。
図12に示すように、戻し用ワイヤ31は、戻し用第1滑車部33から垂下して大ウエイト11を支持する第1経路部31aと、戻し用第1滑車部33および戻し用第2滑車部34間に配される第2経路部31bと、戻し用第2滑車部34から垂下する第3経路部31cとを有する。戻し用第1滑車部33および戻し用第2滑車部34の各滑車部は、それぞれ一または複数の滑車33a、34aにより構成される。
そして、戻し用ワイヤ31においては、大ウエイト11に接続される側と反対側となる他端、つまり第3経路部31cの下端に、係止部35が設けられている。戻し用ワイヤ31の送り方向のうち、一方の垂下部分である第3経路部31cが下がる送り方向は、他方の垂下部分である第1経路部31aが上がる送り方向となる。したがって、係止部35が下降するように戻し用ワイヤ31が送られることで、大ウエイト11が戻し用ワイヤ31により引っ張られて上昇する。
本実施形態では、係止部35は、戻し用ワイヤ31の端部に接続された棒状ないし細長い柱状の係止体35aにより構成される。係止体35aは、略筒状の外形を有し、その筒軸方向が鉛直方向となる姿勢で、中心軸(筒軸)が戻し用ワイヤ31に沿うように、戻し用ワイヤ31の端部に固定される。
このように、戻し用ワイヤ31は、大ウエイト11が接続される側を一端とした場合の他端に係止部35を有し、この係止部35が下降することで大ウエイト11が上昇するように配される。
そして、落下した状態の4個の大ウエイト11の引上げ動作として、4組の搬送ユニット2が有する各大ウエイト11に接続された戻し用ワイヤ31の係止部35を同時に下降させることで、4組の搬送ユニット2が有する全ての大ウエイト11を、落下した状態から同時に引き上げて待機位置に戻すことが行われる。具体的には次のとおりである。
上述のとおり4本の戻し用ワイヤ31は1箇所の戻し用第2滑車部34を共用することから、4本の戻し用ワイヤ31の各第3経路部31cは、1箇所の戻し用第2滑車部34から垂下する(図1参照)。このため、4本の戻し用ワイヤ31に接続された合計4個の係止体35aは、戻し用第2滑車部34の下方において1箇所のまとまった位置に存在する。
このようにまとまった位置に存在する4個の係止体35aを押し下げるため、搬送装置1は、押下体36を有する。押下体36は、4個の係止体35aの上方において、戻し用ワイヤ31の第3経路部31cが配される方向に沿って上下方向(鉛直方向)に移動可能に支持された状態で設けられる。
押下体36は、押下体支持ワイヤ37によって支持された状態で設けられる。押下体36は、押下体支持ワイヤ37の送り動作により、上下方向に移動する。押下体36は、押下体支持ワイヤ37に固定され、押下体支持ワイヤ37が送られることで、押下体支持ワイヤ37と一体的に昇降する。
押下体36は、略円板状の部材であり、その中心軸方向が鉛直方向となる姿勢で、中心軸が鉛直方向に配される押下体支持ワイヤ37に沿うように、押下体支持ワイヤ37に固定される。押下体36は、押下体支持ワイヤ37を貫通させた状態で押下体支持ワイヤ37に固定されたり、分断された押下体支持ワイヤ37間を連結するように設けられたりすることで、押下体支持ワイヤ37に固定された状態で支持される。
押下体36は、下降することで、4個の係止体35aを押し下げる。このため、押下体36は、平面視において、戻し用ワイヤ31に支持された4個の係止体35aのそれぞれが押下体36に対して少なくとも一部を重ねることができるような形状・大きさを有する。言い換えると、押下体36は、4個の係止体35aとの関係において、押下体支持ワイヤ37の垂下方向に沿う下降動作のみによって4個の係止体35aを押し下げることができるように構成される。
また、押下体36は、4本の戻し用ワイヤ31の第3経路部31cを貫通させた状態で設けられる。つまり、押下体36を上下方向に貫通した戻し用ワイヤ31の下側の端部に、係止部35が設けられる。このため、押下体36には、各戻し用ワイヤ31をそれぞれ貫通させる孔部(図示略)が4箇所に設けられている。この押下体36に設けられる孔部は、押下体36を戻し用ワイヤ31に対して鉛直方向に自由に(無関係に)移動させる程度に大きく、係止体35aの外径よりも小さい孔径を有する。
押下体36を支持する押下体支持ワイヤ37は、押下体36の上方に設けられる押下体用滑車部38に巻回された状態で配される。本実施形態では、図12に示すように、押下体用滑車部38は、2つの滑車38a、38bを有する。これら2つの滑車38a、38bは、互いに同じ高さに位置し、回転軸の方向を互いに平行とする。
押下体支持ワイヤ37において、押下体用滑車部38の一側、詳細には滑車38aの一側から垂下する経路部(図12参照)に、押下体36が設けられる。一方、押下体支持ワイヤ37において、押下体用滑車部38の他側、詳細には滑車38bの一側から垂下する経路部(図12参照)に、押下体戻しウエイト39が設けられる。押下体戻しウエイト39は、押下体支持ワイヤ37の押下体用滑車部38の他側から垂下する経路部において、押下体支持ワイヤ37の下端に接続された状態で設けられる。
押下体戻しウエイト39は、押下体36よりも重く、押下体支持ワイヤ37に外力が作用していない状態では、重力によって下降することで、押下体支持ワイヤ37を送り、押下体36を上昇させる。このように押下体戻しウエイト39が下降することによって上昇する押下体36は、その移動ストロークにおける上昇端である所定の待機位置に位置する。
また、図12に示すように、係止部35を構成する係止体35a、および押下体36は、これらを支持する戻し用ワイヤ31および押下体支持ワイヤ37の一部とともに、鉛直方向に配されたパイプ40内に収容される。パイプ40は、大ウエイト11を収容するパイプ18と同様、例えば透明樹脂等により構成されたものであり、係止体35aおよび押下体36の移動ストロークの全体を含むように設けられる。同様にして、押下体戻しウエイト39は、これを支持する押下体支持ワイヤ37の一部とともに、パイプ41内に収容される。
以上のような構成において、次のようにして、大ウエイト11の引上げ動作が行われる。4個の大ウエイト11が落下運動を完了した時点においては、押下体36は、所定の待機位置に位置し、その押下体36の下側に、4個の係止体35aが位置する。この状態から、押下体36を支持する押下体支持ワイヤ37が、押下体36の下側の部分から下向きに引っ張られる。これにより、押下体支持ワイヤ37が、押下体36が下降する方向(図12中、白抜き矢印で示す方向)に送られる。
押下体36は、押下体支持ワイヤ37が引っ張られることによる下降動作において、4個の係止体35aに当接して4本の戻し用ワイヤ31に係合し、4個の係止体35aを同時に押し下げる。4個の係止体35aが押し下げられることで、各係止体35aに接続された戻し用ワイヤ31が、係止体35aが下降する方向、つまり大ウエイト11が上昇する方向(図12中、白抜き矢印で示す方向)に送られる。これにより、4個の大ウエイト11が同時に引き上げられる。
このように押下体36により係止体35aを押し下げて大ウエイト11を引き上げるための押下体支持ワイヤ37の引っ張り動作は、大ウエイト11が待機位置(図2、待機位置A1参照)まで上昇して保持解除機構の保持部21により保持されるまで行われる。本実施形態では、こうした大ウエイト11を引き上げるための押下体支持ワイヤ37の引っ張り動作は、後述するようにAGVの動作が用いられることにより行われる。ただし、この押下体支持ワイヤ37の引っ張り動作は、搬送装置1の設置現場における他の機械要素の動作が用いられて行われたり、作業者の手動操作により行われたりしてもよい。
4個の大ウエイト11が引き上げられた後、押下体36を下降させる押下体支持ワイヤ37の引っ張りが解除される。押下体支持ワイヤ37の引っ張りが解除されると、上述したように押下体戻しウエイト39が重力によって下降し、押下体支持ワイヤ37が、押下体36が上昇する方向(図12中、黒矢印で示す方向)に送られ、押下体36が待機位置に戻る。ここで、押下体36により押し下げられた4本の係止体35aは、引き上げられた大ウエイト11が保持部21によって保持されることから、戻し用ワイヤ31は送られず、押下体36の戻りにかかわらず、押し下げられた位置に保持される。
以上のような一連の動作が、落下した状態の4個の大ウエイト11の引上げ動作として行われる。
(搬送装置の適用例)
続いて、本実施形態の搬送装置1の具体的な適用例について説明する。図13に、本実施形態の搬送装置1の具体的な適用例の態様(平面図)を示す。本実施形態の搬送装置1は、自動車の製造工場の所定の製造ラインで使用される部品箱をワークとし、所定の経路に沿って走行してワークを移載するAGVにより搬送されてきた空の状態の部品箱をAGVから搬出し、実の状態となった部品箱をAGVに搬入する搬送装置である。
図13に示すように、本実施形態の搬送装置1は、AGV100の走行経路沿いに設けられる。具体的には、搬送装置1は、AGV100の走行経路沿いの所定の箇所に設けられた搬送機構50に組み込まれた状態で設けられる。すなわち、本適用例の搬送装置1は、AGV100に対して設けられる構成であって、搬送機構50とともに、AGV100の動きに連動して動作する搬送システムを構成する。なお、図13において、AGV100は、下向きに移動する(矢印H1参照)。
図13に示すように、搬送機構50は、平面視において、AGV100の進行方向に対して直交する方向(図13における左右方向、以下「左右方向」とする。)を長手方向とし、第1搬送部51、第2搬送部52、および第3搬送部53を有する。
第1搬送部51は、搬送機構50において、長手方向の一側となるAGV側(図13において右側)の部分を構成する搬送部である。第1搬送部51は、転動可能に設けられた多数のボール51aを有するボールコンベアである。多数のボール51aは、例えば行列状等、2次元的に配列され、第1搬送部51の搬送面を構成する。第1搬送部51においては、搬送面上に載置されたワーク101は、搬送面に沿う方向の力を受けることで、その力の方向に応じた任意の方向に搬送される。
第2搬送部52は、搬送機構50において、長手方向のうち第1搬送部51以外の残りの部分であって、AGVの進行方向の後側(図13において上側、以下「上手側」という。)の部分を構成する搬送部である。第2搬送部52は、回転可能に設けられた多数のローラ52aを有するローラコンベアである。各ローラ52aは、その回転軸方向をAGV100の進行方向に沿う方向(図13において上下方向、以下「AGV経路方向」という。)に沿わせる筒状のローラである。多数のローラ52aにより、第2搬送部52の搬送面が構成される。
第3搬送部53は、搬送機構50において、長手方向のうち第1搬送部51以外の残りの部分であって、AGVの進行方向の前側(図13において下側、以下「下手側」という。)の部分を構成する搬送部である。第3搬送部53は、回転可能に設けられた多数のローラ53aを有するローラコンベアである。各ローラ53aは、その回転軸方向をAGV経路方向に沿わせる筒状のローラである。多数のローラ53aにより、第3搬送部53の搬送面が構成される。
このように、搬送機構50において、第2搬送部52および第3搬送部53は、いずれも搬送方向を左右方向に沿わせるローラコンベアであり、AGV経路方向に2段に構成される。そして、これらの第2搬送部52および第3搬送部53に対するAGV側に、ボールコンベアとして構成される第1搬送部51が設けられる。つまり、第1搬送部51は、AGV経路方向について、第2搬送部52および第3搬送部53それぞれに対して搬送面が連続するような範囲で設けられる。
また、図13に示すように、本実施形態の搬送システムにおいては、搬送機構50における左右方向についてAGV側と反対側(以下「反AGV側」という。)であって、第3搬送部53の下手側に、搬送装置1の各搬送ユニット2を構成する重り昇降部2bが配置される。図13に示す例では、4組の重り昇降部2bは、左右方向に並んだ状態で配置されている。
以上のような構成の搬送機構50においては、AGV100により搬送されてきた空の状態のワーク101(以下「空箱101A」とする。)が、搬送装置1によって、AGV100から搬送機構50に搬出される。また、搬送機構50に搬出された空箱101Aは、作業者等によって部品が入れられることで、実の状態のワーク101(以下「実箱101B」とする。)となり、搬送装置1によって搬送機構50からAGV100に搬入される。このように空箱101Aの状態でAGV100から搬出され、実箱101BとなってAGV100に搬入されるワーク101は、搬送システムにおいて、具体的には次のような搬送経路を経る。
図13に示すように、AGV100から搬送機構50への空箱101Aの搬出に際しては、AGV100は、載せた状態の空箱101Aが搬送機構50のAGV側に位置するように、搬送機構50の側方に停車する。なお、本実施形態では、AGV100における車体の前端部に、空箱101Aが搭載される。
そして、図14(a)に示すように、AGV100上の空箱101Aは、反AGV側に搬送され(矢印J1参照)、第1搬送部51の上手側の部分を介して、同図(b)に示すように、第2搬送部52へと搬送され(矢印J2参照)、第2搬送部52により反AGV側に搬送される。空箱101Aは、第2搬送部52において所定の位置まで搬送された後、作業者やロボット等により他の場所に運ばれ、部品が入れられることで、実箱101Bとなる。
一方、実箱101Bは、上記のとおり部品が入れられた場所から、作業者やロボット等により運ばれ、第3搬送部53の反AGV側の端部に載せられる。第3搬送部53の反AGV側の端部に載せられた実箱101Bは、図15(a)に示すように、第3搬送部53上を、所定の位置までAGV側に送られる(矢印K1参照)。図15(b)に示すように、第3搬送部53において所定の位置までAGV側に送られた実箱101Bは、さらにAGV側に搬送され、第1搬送部51の下手側の部分まで搬送される(矢印K2参照)。
第1搬送部51の下手側の部分に搬送された実箱101Bは、図16(a)に示すように、第1搬送部51上を上手側に向けて搬送され、第1搬送部51の上手側の部分、つまり第1搬送部51においてAGV100から空箱101Aが搬出される位置まで搬送される(矢印K3参照)。そして、第1搬送部51の上手側の部分に搬送された実箱101Bは、図16(b)に示すように、AGV側に搬送され、AGV100に搬入される(矢印K4参照)。ここで、AGV100に搬入される実箱101Bは、AGV100から搬出された空箱101Aの搭載位置に載せられる。
以上のように、AGV100から搬出される空箱101A、およびAGV100に搬入される実箱101Bは、それぞれ所定の搬送経路を経る。なお、図14〜図16では、空箱101Aおよび実箱101Bそれぞれの搬送経路を説明するため、便宜上、いずれか一方のワーク101のみを示しているが、本実施形態の搬送システムにおいては、複数の空箱101Aおよび実箱101Bが搬送機構50上に載った状態で、AGV100からの空箱101Aの搬出、および実箱101BのAGV100への搬入が、連続的に行われる。つまり、上述したような搬送経路を経る空箱101Aおよび実箱101Bの搬送が、互いに干渉しないように所定のタイミングで同時的に行われる。
上述したような空箱101Aおよび実箱101Bの搬送経路において、所定の経路部分におけるワーク101の搬送が、本実施形態の搬送装置1が備える4組の搬送ユニット2により行われる。つまり、所定の経路部分におけるワーク101の搬送が、各搬送ユニット2において重りの落下運動を利用して往復動作する動作部3の動作により行われる。具体的には、搬送装置1により、次の4つの動作による搬送が行われる。
第1の動作は、第3搬送部53において所定の位置までAGV側に送られた実箱101Bを、第1搬送部51の下手側の部分まで搬送する動作である(図15(b)、矢印K2参照)。以下では、この第1の動作を、「実箱押出し動作」とする。
第2の動作は、AGV100上の空箱101Aを、第1搬送部51の上手側の部分に搬出するとともに、第1搬送部51から第2搬送部52における所定の位置まで搬送する動作である(図14(a)、矢印J1、同図(b)、矢印J2参照)。以下では、この第2の動作を、「空箱搬出動作」とする。
第3の動作は、実箱押出し動作により第1搬送部51の下手側の部分まで搬送された実箱101Bを、第1搬送部51の上手側の部分まで横送りする動作である(図16(a)、矢印K3参照)。以下では、この第3の動作を、「横送りシフト動作」とする。
第4の動作は、横送りシフト動作により第1搬送部51の上手側の部分まで搬送された実箱101Bを、AGV100に搬入する動作である(図16(b)、矢印K4参照)。以下では、この第4の動作を、「実箱搬入動作」とする。
図1および図13に示すように、本実施形態の搬送装置1においては、実箱押出し動作は、第1搬送ユニット2Aが有する動作部3により行われる。つまり、本実施形態では、第1搬送ユニット2Aが有する動作部3は、第3搬送部53から第1搬送部51へと実箱101Bを押し出すためのプッシャーである。以下では、第1搬送ユニット2Aが有する動作部3を「実箱押出しプッシャー3A」とする。
実箱押出しプッシャー3Aは、図13に示すように、第3搬送部53におけるAGV側の部分に設けられる。詳細には、実箱押出しプッシャー3Aは、直線状の部材であり、その長手方向が左右方向に沿うように、第3搬送部53において短手方向(AGV経路方向)の略中央位置に設けられる。このため、第3搬送部53のAGV側の一部においては、ローラ53aが、その回転軸方向に分断された態様で2段にローラ列が構成されており、2段のローラ列の間に、実箱押出しプッシャー3Aが設けられる。
図14〜図16に示すように、実箱押出しプッシャー3Aは、ワーク101(実箱101B)の搬送方向に対する後側(図14において左側)の端部に、ワーク101に接触する押圧面を有する押圧部3aを備える。実箱押出しプッシャー3Aは、反AGV側からAGV側に移動することで、押圧部3aにより第3搬送部53上の実箱101Bを反AGV側から押し、実箱101Bを第3搬送部53から第1搬送部51へと搬送する。
このように、実箱押出しプッシャー3Aは、反AGV側からAGV側に向かう方向の直線的な水平移動を、搬送方向の移動とする。そして、実箱押出し動作としての実箱101Bの搬送を終えた実箱押出しプッシャー3Aは、所定のタイミングで、搬送方向とは反対方向に移動し、元の位置に戻される。このように動作する実箱押出しプッシャー3Aは、実箱押出し動作として必要な所定の動作範囲(動作ストローク)で往復動作できるように設けられる。
また、図1および図13に示すように、本実施形態の搬送装置1においては、空箱搬出動作は、第2搬送ユニット2Bが有する動作部3により行われる。つまり、本実施形態では、第2搬送ユニット2Bが有する動作部3は、AGV100上に載せられた空箱101Aを第1搬送部51を介して第2搬送部52に引き入れて搬出するためのプラーである。以下では、第2搬送ユニット2Bが有する動作部3を「空箱搬出プラー3B」とする。
空箱搬出プラー3Bは、図13に示すように、搬送機構50におけるAGV側の部分に設けられる。詳細には、空箱搬出プラー3Bは、略直線状の部材であり、その長手方向が左右方向に沿うように、搬送機構50においてAGV経路方向の略中央位置に設けられる。空箱搬出プラー3Bは、第2搬送部52と第3搬送部53との間の境界に沿って配され、往復動作の過程の一部で、第1搬送部51の上方(搬送面上)を介して、搬送機構50のAGV側から突出するように設けられる。
図14〜図16に示すように、空箱搬出プラー3Bは、ワーク101(空箱101A)の搬送方向に対する後側(図14において右側)の端部に、ワーク101に接触する面を有する係止部3bを有する。係止部3bは、左右方向に沿って略直線状に構成される空箱搬出プラー3Bにおいて、AGV経路方向の上手側に向けて略直角に設けられる部分である。このように係止部3bを有する空箱搬出プラー3Bは、平面視で略L字状に構成される。空箱搬出プラー3Bは、少なくとも係止部3bの部分が第1搬送部51および第2搬送部52それぞれの搬送面の上方を水平方向に移動するように設けられる。
空箱搬出プラー3Bは、AGV側から反AGV側に移動することで、係止部3bによりAGV100上の空箱101Aを反AGV側に引き入れ、空箱101AをAGV100から第1搬送部51上を介して第2搬送部52へと搬送する。このため、空箱搬出プラー3Bは、空箱101Aを引き入れる前の状態では、AGV100上の空箱101Aの前を横切って、係止部3bを、空箱101Aの後側(図14において右側)に位置させる。
このように、空箱搬出プラー3Bは、AGV側から反AGV側に向かう方向の直線的な水平移動を、搬送方向の移動とする。そして、空箱搬出動作としての空箱101Aの搬送を終えた空箱搬出プラー3Bは、所定のタイミングで、搬送方向とは反対方向に移動し、元の位置に戻される。このように動作する空箱搬出プラー3Bは、空箱搬出動作として必要な所定の動作範囲(動作ストローク)で往復動作できるように設けられる。
また、図1および図13に示すように、本実施形態の搬送装置1においては、横送りシフト動作は、第3搬送ユニット2Cが有する動作部3により行われる。つまり、本実施形態では、第3搬送ユニット2Cが有する動作部3は、実箱押出しプッシャー3Aにより搬送された第1搬送部51の下手側の部分上の実箱101Bを、第1搬送部51の上手側の部分まで横送りするためのシフターである。以下では、第3搬送ユニット2Cが有する動作部3を「横送りシフター3C」とする。
横送りシフター3Cは、図13に示すように、第1搬送部51における下手側の部分に設けられる。横送りシフター3Cは、第1搬送部51の搬送面の上方を水平方向に移動するように設けられる。
図14〜図16に示すように、横送りシフター3Cは、ワーク101に接触する押圧面を有する押圧部3cを備える。押圧部3cは、左右方向に沿う棒状ないし板状の部分であり、実箱101Bに対して下手側の側面に接触する。横送りシフター3Cは、押圧部3cが第3搬送部53の下手側から第2搬送部52の下手側まで移動するように、下手側から上手側に移動することで、押圧部3cにより第1搬送部51上の実箱101Bを下手側から押し、実箱101Bを第1搬送部51の下手側から上手側へと搬送する。
このように、横送りシフター3Cは、下手側から上手側に向かう方向の直線的な水平移動を、搬送方向の移動とする。そして、横送りシフト動作としての実箱101Bの搬送を終えた横送りシフター3Cは、所定のタイミングで、搬送方向とは反対方向に移動し、元の位置に戻される。このように動作する横送りシフター3Cは、横送りシフト動作として必要な所定の動作範囲(動作ストローク)で往復動作できるように設けられる。
また、図1および図13に示すように、本実施形態の搬送装置1においては、実箱搬入動作は、第4搬送ユニット2Dが有する動作部3により行われる。つまり、本実施形態では、第4搬送ユニット2Dが有する動作部3は、横送りシフター3Cにより搬送された第1搬送部51の上手側の部分上の実箱101Bを、AGV100上へと搬出するためのプッシャーである。以下では、第4搬送ユニット2Dが有する動作部3を「実箱搬入プッシャー3D」とする。
実箱搬入プッシャー3Dは、図13に示すように、第2搬送部52におけるAGV側の部分に設けられる。詳細には、実箱搬入プッシャー3Dは、左右方向に沿う直線状の部分と、この直線状の部分のAGV側の端部から略直角に設けられる直線状の部分とを有し、平面視で略L字状に構成される。そして、実箱搬入プッシャー3Dは、左右方向に沿う直線状の部分を、第2搬送部52の上手側の位置に沿わせた状態で設けられる。
図14〜図16に示すように、実箱搬入プッシャー3Dにおいては、上記のとおり左右方向に沿う直線状の部分から略直角に設けられる直線状の部分が、ワーク101に接触する押圧面を有する押圧部3dとなる。実箱搬入プッシャー3Dは、押圧部3dをAGV側に位置させた状態で設けられる。
実箱搬入プッシャー3Dは、少なくとも押圧部3dの部分が第2搬送部52および第1搬送部51それぞれの搬送面の上方を水平方向に移動するように設けられる。実箱搬入プッシャー3Dは、押圧部3dが第2搬送部52のAGV側の端部から第1搬送部51のAGV側まで移動するように、反AGV側からAGV側に移動することで、押圧部3dにより第1搬送部51上の実箱101Bを反AGV側から押し、実箱101Bを第1搬送部51の上手側の部分からAGV100上へと搬送する。
このように、実箱搬入プッシャー3Dは、反AGV側からAGV側に向かう方向の直線的な水平移動を、搬送方向の移動とする。そして、実箱搬出動作としての実箱101Bの搬送を終えた実箱搬入プッシャー3Dは、所定のタイミングで、搬送方向とは反対方向に移動し、元の位置に戻される。このように動作する実箱搬入プッシャー3Dは、実箱搬出動作として必要な所定の動作範囲(動作ストローク)で往復動作できるように設けられる。
以上のように、各搬送ユニット2が有する動作部3の動作により行われる実箱押出し動作、空箱搬出動作、横送りシフト動作、および実箱搬入動作の4つの動作については、ワーク101の搬送距離、つまりワーク101を移動させるストロークが互いに異なる。こうしたワーク101の搬送距離の違いは、搬送ユニット2の重り昇降部2bにおける作用ストローク(図2参照)の違いとして表れる。
そこで、本実施形態の搬送装置1においては、待機位置A1から係合開始位置A3までの遅延ストローク(図2参照)の調整により、各搬送ユニット2における大ウエイト11の作用ストロークの長さが調整される。ここで、遅延ストロークは、上述したように、大ウエイト11の落下運動による動作部3の動作の開始タイミングを調整するための係合部17を設ける位置により規定される。
図2および図17に示すように、本実施形態の搬送装置1においては、4組の搬送ユニット2が有する全ての大ウエイト11の待機位置A1の高さ、および4個の大ウエイト11の落下による動作ストローク(大ウエイト動作ストローク)は互いに同じである。すなわち、図17に示すように、大ウエイト11の動作ストロークの上昇端となる位置であって、大ウエイト11が保持部21によって保持される位置である待機位置A1は、4個の大ウエイト11で共通の高さ位置である。このように同じ高さ位置にある4個の大ウエイト11の待機位置A1に対して、大ウエイト11の停止位置A2も、4個の大ウエイト11で共通の高さ位置である。したがって、4個の大ウエイト11の動作ストロークは互いに等しく、しかも動作範囲も互いに同じ高さ範囲である。
このように4個の大ウエイト11が互いに同じ高さ範囲を往復動作する構成において、搬送ユニット2ごとの作用ストロークの調整のため、各搬送ユニット2における大ウエイト11の遅延ストロークが調整される。つまり、各搬送ユニット2において、遅延ストロークを規定する係合部17(係合部材17a)を設ける高さ位置が、各搬送ユニット2が有する動作部3の搬送距離等に対応して調整される。
このように、本実施形態の搬送装置1においては、係合部17は、搬送用ワイヤ10に対して、大ウエイト11の落下運動による搬送用ワイヤ10の送り量について、動作部3の動作ストロークに応じた送り量が得られる高さ位置に設けられている。
具体的には、図17に示すように、本実施形態の搬送装置1では、第1搬送ユニット2Aの第1大ウエイト11Aについての遅延ストロークL1を規定する係合部17の高さ位置(係合開始位置A3)は、実箱押出しプッシャー3Aの動作ストロークに応じた送り量が得られるように設定される。
同様にして、第2大ウエイト11Bについての遅延ストロークL2を規定する係合部17の高さ位置は、空箱搬出プラー3Bの動作ストロークに応じた送り量が得られるように設定される。また、第3大ウエイト11Cについての遅延ストロークL3を規定する係合部17の高さ位置は、横送りシフター3Cの動作ストロークに応じた送り量が得られるように設定される。また、第4大ウエイト11Dについての遅延ストロークL4を規定する係合部17の高さ位置は、実箱搬入プッシャー3Dの動作ストロークに応じた送り量が得られるように設定される。
そして、本実施形態の搬送装置1では、図17に示すように、4個の大ウエイト11の遅延ストロークL1〜L4は、L4>L1>L3>L2の関係となっている。ただし、この遅延ストロークの大小関係は、本実施形態の搬送装置1における一例であり、各搬送ユニット2における大ウエイト11の遅延ストロークの大きさは、各搬送ユニット2の動作部3についての所望の動作範囲等に応じて適宜設定される。なお、4組の搬送ユニット2の重り昇降部2bは、大ウエイト11の遅延ストロークの大きさ、つまり係合部17の高さ位置以外の構成については同じように構成される。
また、搬送装置1においては、搬送ユニット2が有する動作部3は、搬送用ワイヤ10の搬送経路部10cに対して、搬送用ワイヤ10がかけられる動滑車を介して設けられてもよい。本実施形態の搬送装置1においては、図1および図18に示すように、4個の動作部3のうち、実箱押出しプッシャー3Aおよび横送りシフター3Cが、それぞれ動滑車43を介して設けられている。
動滑車43は、滑車台44に設けられた2つの滑車45、46を有する。2つの滑車45、46は、例えば、滑車台44に対して、回転軸の方向が互いに平行となるように設けられる。動滑車43上に、実箱押出しプッシャー3Aまたは横送りシフター3Cが設けられる。
本実施形態では、図1および図18に示すように、搬送用ワイヤ10の搬送経路部10cにおいて、実箱押出しプッシャー3Aおよび横送りシフター3Cは、それぞれ大ウエイト側下滑車部14と搬送側滑車部16との間に配される部分に設けられる。そこで、搬送経路部10cの搬送用ワイヤ10において、大ウエイト側下滑車部14と搬送側滑車部16との間に配される部分が分断され、その分断されたワイヤ部分の間にて、動滑車43が搬送用ワイヤ10の巻回を受ける。
具体的には、搬送用ワイヤ10の搬送経路部10cにおいて、分断された一方のワイヤ部分が、大ウエイト側下滑車部14の滑車14aと、動滑車43の一方の滑車45とに巻回された状態で配される。滑車45に巻回されて滑車14a側と反対側に配されるワイヤ部分の端部は、滑車14aと動滑車43との間における所定の位置に設けられる留め部47にて留められる。また、同じく搬送経路部10cにおいて、分断された他方のワイヤ部分が、搬送側滑車部16の滑車16aと、動滑車43の他方の滑車46とに巻回された状態で配される。滑車46に巻回されて滑車16a側と反対側に配されるワイヤ部分の端部は、滑車16aと動滑車43との間における所定の位置に設けられる留め部48にて留められる。
以上のように動滑車43を介して設けられた実箱押出しプッシャー3Aおよび横送りシフター3Cは、それぞれ動滑車43とともに一体的に所定のストロークで往復動作する。なお、本実施形態では、実箱押出しプッシャー3Aおよび横送りシフター3Cが動滑車43を介して設けられているが、動作部3について必要な動作ストロークや必要な力等に応じて、適宜他の動作部3について動滑車43が設けられてもよい。この際、動作部3が、例えば空箱搬出プラー3Bのように、搬送経路部10cにおいて小ウエイト側下滑車部15と搬送側滑車部16との間に配される部分に設けられる場合、かかる部分が分断され、その分断されたワイヤ部分の間にて、動滑車が搬送用ワイヤ10の巻回を受ける。また、本実施形態では、動滑車43は、2個の滑車45、46を有する構成であるが、3個以上の滑車を有する構成であってもよい。
(搬送装置とAGVとの連動構成について)
本実施形態の搬送システムにおける搬送装置1とAGV100との連動構成について説明する。本実施形態の搬送システムにおいて、搬送装置1は、4組の搬送ユニット2が有する4個の大ウエイト11のうち、最初に落下する第1大ウエイト11Aの保持部21による保持状態の解除を、AGV100の動力を用いて行う。このため、本実施形態の搬送システムは、搬送装置1とAGV100との連動構成として、4個の大ウエイト11のうち、最初に落下する第1大ウエイト11Aを落下させる契機となる支持回動体28の回動動作を、AGV100の動作を用いて行うための機構を備える。以下では、この機構を「連動トリガー機構」という。
上述したように、保持解除機構による4個の大ウエイト11の連動動作において、最初に落下する第1大ウエイト11Aは、保持部21により保持され、この保持部21と連動する解除部22に相当する構成により、保持の解除が行われる。この第1大ウエイト11Aの保持を解除する解除部22に相当する構成は、具体的には、図19に示す解除部22Aのような構成となる。
図19に示すように、最初に落下する第1大ウエイト11Aの保持を解除するための解除部22Aは、他の大ウエイト11に対して設けられる解除部22が有する構成において、トリガー棒29の代わりに、トリガー用ワイヤ60が連結されたものである。なお、解除部22Aが有する構成のうち解除部22と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
トリガー用ワイヤ60は、支持回動体28を引っ張ることで、連結シャフト23が連結される側が上昇する方向に支持回動体28を回動させるための構成である。図19に示すように、トリガー用ワイヤ60の一端側は、支持回動体28において支点28aに対して連結シャフト23が連結される側と反対側(図19において左側)の端部に連結される。トリガー用ワイヤ60の一端側は、支持回動体28の端部に設けられた例えば突起状の部分等の締結部28bに締結されることで、支持回動体28に連結される。
このように、連動トリガー機構は、搬送装置1側に設けられる構成として、解除部22Aを有する。そして、連動トリガー機構は、搬送システムにおいて、解除部22Aと連動する構成であってAGV100の動作を受けるトリガー部61を有する。
図20に示すように、トリガー部61は、回動可能に設けられる直線状の支持回動体62と、支持回動体62の長手方向の一側の端部に回転自在に設けられる接触ローラ63とを有する。支持回動体62は、その長手方向の略中央部が支持軸64により支持された状態で設けられ、この支持軸64による支持部分を支点として、シーソーのごとく回動する。例えば、支持回動体62が矩形板状の外形を有するものである場合、支持軸64は、支持回動体62の板面を貫通する方向を回動軸方向として、支持回動体62を支持する。支持軸64は、例えば床面等の所定の支持面に固定された状態で立設される。
接触ローラ63は、略円板状の外形を有し、支持回動体62の長手方向に略直交する方向を回転軸方向として支持回動体62の一側の端部に設けられる支持軸63aにより、回転自在に支持される。例えば、支持回動体62が矩形板状の外形を有するものである場合、接触ローラ63は、支持回動体62の板面に直交する方向を回転軸方向として設けられる。
また、支持回動体62の長手方向の接触ローラ63側と反対側の端部には、上述したように解除部22Aにおいて一端が支持回動体28に連結されるトリガー用ワイヤ60の他端側が連結される。トリガー用ワイヤ60の他端側は、支持回動体62の端部に設けられた突起状の締結ピン62aに締結されることで、支持回動体62に連結される。
このような構成を有するトリガー部61は、前進するAGV100に接触ローラ63を接触させることでAGV100からの作用を受け、支持回動体62を、締結ピン62bにより連結されたトリガー用ワイヤ60を引っ張る方向に回動させる。このため、図20に示すように、AGV100においては、所定の経路を前進することで接触ローラ63に接触してトリガー部61に干渉する当接部102が設けられている。当接部102は、例えば、AGV100においてワーク101(空箱101A)が搭載される上面部に対して下側の部分、つまりAGV100の車体の裏側に設けられる部分であり、接触ローラ63に接触する接触面102aを有する。なお、当接部102が設けられる位置や当接部102の形状等については特に限定されない。
図13に示すように、本適用例の搬送システムでは、トリガー部61は、AGV100の走行経路沿いにおいて、反AGV側(図13において左側)であって、搬送機構50の第1搬送部51に対して上手側となる所定の位置に設けられる。トリガー部61は、支持回動体62がAGV100によって接触ローラ63を介して押されることで、トリガー部61を引っ張る方向に支持回動体62が回動するように設けられる。本実施形態では、トリガー部61は、接触ローラ63側がAGV側となるように、つまりトリガー用ワイヤ60が連結される側が反AGV側となるように設けられる。
上述したように一端側が支持回動体28に連結されるとともに他端側が支持回動体62に連結されるトリガー用ワイヤ60は、支持回動体28と支持回動体62とを互いに連結し、これらを連動させる。そして、トリガー用ワイヤ60は、トリガー部61において支持回動体62によって引っ張られることが、解除部22Aにおいて締結部28b側が下がる方向に支持回動体28が回動するように支持回動体28を引っ張る作用として伝達されるように、適宜配置された滑車やローラ等を経て所定の経路で送り移動可能に配される。トリガー用ワイヤ60は、例えば、図13に示すようにトリガー部61が設けられる位置から、AGV経路方向に沿って搬送機構50側に配され、搬送機構50近傍を通過して、搬送装置1の第1搬送ユニット2Aを構成する重り昇降部2bの下側の位置まで配される。
以上のように互いに連動する解除部22Aおよびトリガー部61を有する連動トリガー機構は、次のように動作する。図13および図20に示すように、AGV100がAGV経路方向に沿って上手側から下手側に向けて走行することで(矢印H1参照)、当接部102が接触ローラ63に当接し、トリガー部61がAGV100の作用を受ける。
これにより、接触ローラ63がAGV100に押され、支持回動体62が回動し(図20、矢印M1参照)、支持回動体62によりトリガー用ワイヤ60が引っ張られる(同図、矢印M2参照)。ここで、接触ローラ63は、AGV100との間の接触抵抗等により適宜回転する。
トリガー用ワイヤ60が支持回動体62により引っ張られることで、解除部22Aにおいて、支持回動体28がトリガー用ワイヤ60の締結部28b側から下向きに引っ張られる(図19、矢印M3参照)。これにより、支持回動体28が、支点28aを中心に、支持回動体28の連結シャフト23の下側連結部23bが連結された側が上がる方向に回動し(矢印M4参照)、連結シャフト23が押し上げられる。
連結シャフト23が押し上げられることで、上述したように、保持部21において係止体25が保持状態を解除する方向に回動し(図10、矢印G5参照)、第1大ウエイト11Aの保持が解除され、第1大ウエイト11Aが落下運動を開始する(同図、矢印G6参照)。第1大ウエイト11Aが落下運動を開始した後は、上述したように、保持解除機構により、残りの3つの大ウエイト11が順番に落下運動する。なお、トリガー部61においては、AGV100が所定の位置を過ぎることで、接触ローラ63に対する押圧作用が解除され、トリガー用ワイヤ60の引っ張り状態が解除される。
以上のような連動トリガー機構による第1大ウエイト11Aの保持状態の解除は、AGV100が搬送機構50の側方における停車位置に達する前の所定のタイミングで行われる。つまり、この所定のタイミングで第1大ウエイト11Aの保持状態の解除が行われるように、AGV100の移動速度等に応じて、トリガー部61を設ける位置やAGV100において当接部102を設ける位置等により、AGV100がトリガー部61に作用するタイミングが調整される。
また、本実施形態の搬送システムは、搬送装置1とAGV100との連動構成として、上述したような4個の大ウエイト11の引上げ動作を、AGV100の動作を用いて行うための構成を備える。すなわち、本実施形態の搬送システムにおいて、搬送装置1は、4個の大ウエイト11を待機位置に戻すための大ウエイト11の引上げを、AGV100の動力を用いて行う。
上述したように、大ウエイト11の引上げは、押下体36により4個の大ウエイト11のそれぞれに接続された係止体35aを押し下げるための押下体支持ワイヤ37の引っ張り動作により行われる(図12参照)。この押下体支持ワイヤ37の引っ張り動作が、AGV100の動作と連動して行われる。
そこで、本実施形態の搬送システムは、図13、図21、図22に示すように、前進するAGV100に同期して移動することで押下体支持ワイヤ37を引っ張る同期部70を備える。同期部70には、押下体36の下側にて垂下する部分から引き回された押下体支持ワイヤ37の一方の端部が接続される。つまり、押下体支持ワイヤ37の一端部側は、押下体36を介して押下体戻しウエイト39に接続され、押下体支持ワイヤ37の他端部側は、同期部70に接続される。同期部70は、AGV経路方向に沿って直線状に敷設されるレール71により、AGV経路方向に平行に直線移動するように設けられる。
図21に示すように、押下体支持ワイヤ37は、同期部70がAGV100と同期してAGV経路方向に沿って上手側から下手側に移動することによる押下体支持ワイヤ37の引っ張りが、押下体36を下向きに引っ張る作用として伝達されるように、適宜配置された滑車等に巻回されて所定の経路で送り移動可能に配される。図21においては、押下体支持ワイヤ37が巻回される滑車部として、押下体36を収容するパイプ40の下方の位置に設けられた滑車部72aと、この滑車部72aを経由したワイヤをAGV経路方向に沿わせる2箇所の滑車部72b、72cとが示されている。
図22に示すように、同期部70は、レール71に沿って移動する移動台73と、移動台73に設けられ、AGV100に当接する接触ローラ74を支持するローラアーム75とを有する。同期部70は、ローラアーム75をAGV100に当接させた状態で、前進するAGV100と同期して並走する。
移動台73は、レール71上をスライド移動する部分であり、レール71を左右方向の両側から挟む移動片部73aと、左右の移動片部73aの間に架設されるローラ76とを有する。ローラ76は、平面視でレール71の延設方向に直交する方向(図22において左右方向)を回転軸方向とし、レール71に対して上側から接触した状態で、移動台73のレール71に沿う移動にともなって回転する。図22に示す例では、ローラ76は、移動台73において、上手側(図22において上側)および下手側(同図において下側)のそれぞれに計2箇所設けられている。
移動台73の後端側(上手側、図22において上側)に、押下体支持ワイヤ37の一端が連結される。本実施形態では、押下体支持ワイヤ37の一端は、移動台73の後端側に設けられたリング状の係止部73bに締結されることで、移動台73に連結される。
ローラアーム75は、平面視で略矩形状の外形を有する部材であり、移動台73に対して、左右方向のうちAGV側の移動片部73aから延設されるステー77を介して設けられる。ステー77は、移動台73のAGV側の側面から突出する突片状の部分であり、このステー77の先端部に、ローラアーム75の長手方向の一側の端部が連結される。
ローラアーム75は、ステー77に対する連結部分において、鉛直方向(図22において紙面に垂直な方向)を回動軸方向とする支持部75aにより回動可能に支持される。一方、ローラアーム75の長手方向の他側の端部に、接触ローラ74が支持される。接触ローラ74は、鉛直方向を回転軸方向とするローラ支持部75bにより回転自在に支持される。
移動台73とローラアーム75との間には、第1リンク片78および第2リンク片79からなるリンク機構80が架設される。第1リンク片78および第2リンク片79は、いずれもアーム状の部材であり、互いの一端部同士が連結支持部81において相対的に回動可能に支持された状態で互いに連結される。
リンク機構80の一端部、つまり第1リンク片78の他端部は、移動台73のAGV側の移動片部73aに対して、移動台側支持部82において回動可能に支持される。また、リンク機構80の他端部、つまり第2リンク片79の他端部は、ローラアーム75に対して、支持部75aの近傍の位置に設けられるローラアーム側支持部83において回動可能に支持される。リンク機構80についての連結支持部81、移動台側支持部82、およびローラアーム側支持部83は、いずれも鉛直方向を回動軸方向とする。
リンク機構80は、連結支持部81を作用点、移動台側支持部82を支点、ローラアーム側支持部83を力点とするトグル式の機構である。このため、図22(a)に示すように、リンク機構80は、平面視において、連結支持部81が、移動台側支持部82とローラアーム側支持部83とを結ぶ直線よりも内側(図22(a)において下側)に位置することで、略直線状に突っ張った状態となる(矢印N1参照)。かかる状態のリンク機構80により、支持部75aを中心とするローラアーム75の回動(図22(a)において右回りの回動)が規制される。ここで、ローラアーム75の回動を規制するため、リンク機構80においては、第1リンク片78および第2リンク片79の少なくともいずれかについて、連結支持部81が内側に移動する方向のリンク機構80の屈曲にともなう回動が規制される。
このようにリンク機構80によってローラアーム75の回動が規制された状態において、同期部70は、前進するAGV100の動作を受ける。具体的には、図22(a)に示すように、ローラアーム75は、リンク機構80によって回動が規制された状態において、長手方向が左右方向に沿う姿勢となり、先端部に支持する接触ローラ74を、レール71側からAGV側に突き出した態様となる。
このような姿勢でローラアーム75の回動が規制された状態の同期部70に対し、前進するAGV100が、上手側から接触ローラ74に接触する(矢印N2参照)。ここで、AGV100は、車体の前端面103を接触ローラ74に接触させる。このようにしてAGV100の前進動作を受ける同期部70は、接触ローラ74を介してAGV100に押圧される方向のローラアーム75の回動がリンク機構80によって規制された状態にあることから、移動台73の部分によって、レール71に沿ってAGV100と同期して下手側に移動する(矢印N3参照)。
このように前進するAGV100と同期して同期部70が移動することで、同期部70に接続された押下体支持ワイヤ37が引っ張られ、4個の大ウエイト11が同時に引き上げられる(図21中、白抜き矢印参照)。そして、AGV100と同期した状態での同期部70の移動により引き上げられる4個の大ウエイト11が待機位置に戻った後の所定のタイミングで、AGV100と同期部70との同期が解除される。このAGV100と同期部70との同期の解除は、次のようにして行われる。
上述したようにトグル式の構造によってローラアーム75の回動を規制するリンク機構80においては、連結支持部81が、移動台側支持部82とローラアーム側支持部83とを結ぶ直線の外側(図22(b)において上側)に移動することで、直線状の態様で突っ張っていた状態のリンク機構80が連結支持部81の部分から屈曲した態様となる。これにより、支持部75aを支点とするローラアーム75の回動(図22(b)において右回りの回動)が許容される。
回動が許容されたローラアーム75は、接触ローラ74を介してAGV100に押されることで支持部75aを中心として回動し、前進するAGV100からの作用を受け止める状態から解放される。つまり、同期状態では前進するAGV100からの作用を接触ローラ74を介して受ける部分であるローラアーム75が、前進するAGV100に押されて回動することで逃げ、AGV100と同期部70とが同期した状態が解除される。
このようなAGV100と同期部70との同期状態の解除を行うため、レール71に、解除ストッパ84が設けられている。解除ストッパ84は、レール71上における所定の位置において固定された状態で設けられる。
図22(a)、(b)に示すように、解除ストッパ84は、固定される部分である基部84aと、基部84aからAGV側に突出する突出部84bとを有する。解除ストッパ84は、突出部84bにおいて、AGV経路方向の上手側を向く当接面84cを有する。当接面84cは、同期部70に対する相対的な近接移動により、リンク機構80の連結支持部81の部分に接触するように設けられる。
以上のような構成において、図22(a)に示すように、AGV100と同期部70とが同期した状態でレール71に沿って下手側に移動し、同期部70が解除ストッパ84に達すると、図22(b)に示すように、解除ストッパ84の当接面84c(同図(a)参照)がリンク機構80の連結支持部81の部分に当接する。これにより、上述したように、連結支持部81が内側から外側に移動し、突っ張った状態のリンク機構80が屈曲した状態となり、接触ローラ74を介して押されるローラアーム75の回動をともなって(矢印N4参照)、AGV100と同期部70との同期状態が解除される。
また、解除ストッパ84は、レール71上において、AGV100との同期が解除された状態の同期部70の移動を停止させるストッパとしても機能する。解除ストッパ84は、基部84aに、同期部70の移動台73の部分を接触させることで、同期部70を停止させる。
AGV100と同期部70との同期状態が解除されると、AGV100は、解除ストッパ84を通り過ぎ、所定の経路上をそのまま前進する(図22(b)、矢印N5参照)。また、AGV100と同期部70との同期状態が解除されると、上述したように押下体36を所定の待機位置に戻すための押下体戻しウエイト39が下降することにより、押下体支持ワイヤ37が引っ張られ、同期部70が、上手側に移動し、AGV100を待機する位置に戻る(図21、黒矢印、図22(b)、矢印N6参照)。
(搬送システムのその他の構成)
本実施形態の搬送システムは、AGV100の動作を利用して、搬送機構50の一部を駆動させる。このため、本実施形態の搬送システムは、AGV100と搬送機構50との連動構成を備える。
図13に示すように、搬送機構50は、第3搬送部53の反AGV側において、搬送装置1の動作部3の作用が及ばない搬送部分を有する。つまり、この搬送部分は、第3搬送部53における動作部3の動作範囲外の部分である。
このような第3搬送部53における動作部3の作用が及ばない搬送部分は、上述したような搬送機構50上におけるワーク101の搬送経路において、他の場所から搬送機構50に運ばれてきた実箱101Bが載せられる位置を含む。すなわち、第3搬送部53の反AGV側の端部に載せられた実箱101Bは、動作部3としての実箱押出しプッシャー3Aの作用が得られる位置まで搬送され(図15(a)、矢印K1参照)、その後、実箱押出しプッシャー3Aにより、第1搬送部51の下手側の部分まで搬送される(同図(b)、矢印K2参照)。かかる搬送経路の前段部分(図15(a)、矢印K1参照)が、動作部3の作用が及ばない搬送部分となる。
そこで、本実施形態の搬送システムにおいては、AGV100と搬送機構50との連動構成として、上記のような動作部3の作用が及ばない搬送部分に配設されたローラ53aを、AGV100の動作を利用して駆動させるための連動機構が備えられる。以下では、かかる連動機構を「搬送部駆動機構」という。
搬送部駆動機構について、図13および図23を用いて説明する。図13および図23に示すように、搬送部駆動機構は、平面視でAGV経路方向に直交する左右方向を回転軸方向とするローラとしてのゴム車輪85を有し、このゴム車輪85により、前進するAGV100の動作を受ける。ゴム車輪85は、所定の走行経路をAGV100の上面104に接触するように設けられ、上面104に対して上側から接触した状態で、AGV100の前進にともなって回転する。
ゴム車輪85の回転駆動力は、カップリング87aを含む連動軸部87により、ギアボックス88を介して、回転軸部89に伝達される。連動軸部87は、その軸方向が略左右方向となるように設けられる。これに対し、回転軸部89は、ギアボックス88からAGV経路方向に沿って下手側に向かって延設される。つまり、ギアボックス88により、ゴム車輪85の回転駆動力を伝達する回転軸の回転軸方向が、左右方向に沿う方向からAGV経路方向に沿う方向に変換される。なお、回転軸部89は、例えば軸方向に所定の間隔を隔てて適宜配設される複数の支持部89aにより床面等の所定の支持面に対して支持される。
回転軸部89の回転動力は、スプロケットやチェーン等を介して、第3搬送部53における一部のローラ53aに伝達される。ここで回転動力が伝達される一部のローラ53aには、上記のような動作部3の作用が及ばない搬送部分に配設されたローラ53aが含まれる。
図23に示す例では、回転軸部89の回転動力は、回転軸部89の下手側の端部に設けられたスプロケット90aと、このスプロケット90aに対して反AGV側であって第3搬送部53の下方に配置されたスプロケット90bと、これらのスプロケット90a、90bに巻回されるチェーン90cとにより、スプロケット90bが固定された回転軸90dに伝達される。
回転軸90dの回転動力は、この回転軸90dによってスプロケット90bと同軸に支持されたスプロケット90eと、スプロケット90eの上方であって第3搬送部53のローラ53aの下側において左右方向に所定の方向を隔てて配される2個のスプロケット90f、90gと、3個のスプロケット90e、90f、90gに巻回されるチェーン90hとにより、スプロケット90f、90gがそれぞれ固定された回転軸90j、90kに伝達される。
回転軸90j、90kに伝達された回転動力は、回転軸90j、90kのそれぞれに設けられた車輪90m、90nを介して、第3搬送部53において搬送部駆動機構により回転させる対象となるローラ53aのうち一部のローラ53aに伝達される。この一部のローラ53aに伝達された回転動力は、ベルト91によって、第3搬送部53において動作部3の作用が及ばない搬送部分に配設された他のローラ53aに伝達される。ベルト91は、図13および図23に示すように、互いに隣り合うローラ53a間に巻回された状態で設けられる。
このような構成の搬送部駆動機構により、第3搬送部53における所定の搬送部分、つまり動作部3の作用が及ばない搬送部分において、AGV100の動力が回転動力として伝達されてローラ53aが駆動するコンベアが構成される。なお、本実施形態では、搬送部駆動機構は、AGV100の走行経路沿いにおいて反AGV側(図13において左側)に設けられる。また、搬送部駆動機構を構成するゴム車輪85は、上述した連動トリガー機構を構成するトリガー部61よりもAGV経路方向において上手側に設けられる(図13参照)。
以上のような搬送部駆動機構によれば、他の場所から運ばれてきて第3搬送部53の反AGV側の端部に載せられた実箱101Bが、前進するAGV100の動力により、第3搬送部53において実箱押出しプッシャー3Aの作用が得られる位置まで自動的に搬送される。これにより、例えば、作業者によって第3搬送部53に実箱101Bが運ばれる場合、実箱101Bの載置場所を、自動的に動作する動作部3(実箱押出しプッシャー3A)の動作範囲から離すことが可能となり、安全性を向上することができる。さらに、第3搬送部53において自動的に搬送される経路を延ばすことができるので、その分、作業者等の移動距離を短くすることができ、作業性の向上を図ることができる。
また、本実施形態の搬送システムにおいては、所定の経路に沿って走行してくるAGV100の動力を用いて、AGV100上の空箱101Aを、搬送機構50に搬出されるに際して適した場所・姿勢にするための連動機構が設けられている。
図13および図24に示すように、空箱101Aは、AGV100の上面104上において、移動可能なテーブル92上に載置された状態で搬送されてくる。テーブル92は、脚部等を介して下側に設けられた車輪92aにより、左右方向に移動可能に構成される。車輪92aは、テーブル92において、その移動方向となる左右方向の両側に設けられる。このように空箱101Aを載せた状態のテーブル92が、AGV100の走行経路沿いに設けられたガイドローラ機構93により、AGV100の動力が用いられて、AGV100上を移動する。
図13および図24に示すように、ガイドローラ機構93は、AGV100の走行経路沿いにおいて、AGV100に対してトリガー部61等が設けられる側と反対側(図13において右側)に設けられる。以下では、左右方向において、AGV100に対してトリガー部61が設けられる側、つまり搬送機構50が位置する側(図13において左側)を「搬送機構側」とし、その反対側、つまりガイドローラ機構93が設けられる側(図13において右側)を「反搬送機構側」とする。ガイドローラ機構93は、AGV100上のテーブル92を、左右方向において、反搬送機構側から搬送機構側へと移動させる。
ガイドローラ機構93は、鉛直方向を軸方向とする支持軸94と、支持軸94に支持される第1ローラアーム95および第2ローラアーム96とを有する。支持軸94は、所定の経路上を走行するAGV100が干渉しない位置において、例えば床面等の所定の支持面に固定された状態で立設される。
第1ローラアーム95および第2ローラアーム96は、それぞれ支持軸94に一端側が支持されたアーム95a、96aと、アーム95a、96aの他端側に回転自在に支持されたローラ95b、96bとを有する。第1ローラアーム95は、ローラ95bをAGV100の前端面103に接触させることで、前進するAGV100の作用を受ける。第2ローラアーム96は、ローラ96bをテーブル92の反搬送機構側の側面92bに接触させることで、AGV100の車体上に載置されたテーブル92を押して移動させる。これらのことから、支持軸94において、第1ローラアーム95は、AGV100の車体に干渉する高さ位置に設けられ、第2ローラアーム96は、第1ローラアーム95の上方であって、AGV100の車体とは干渉せずに、テーブル92の高さに応じた高さ位置に設けられる。
第1ローラアーム95と第2ローラアーム96とは、支持軸94の軸回りの相対的な位置関係を維持した状態で、支持軸94の軸方向を回動軸方向として一体的に回動する。本実施形態では、第1ローラアーム95と第2ローラアーム96とは、支持軸94の軸回りにおいて略90°をなす位置関係で設けられる。
図24(a)に示すように、AGV100上において空箱101Aが載せられるテーブル92は、ガイドローラ機構93による作用を受ける前の状態において、空箱101Aを載せる載置面92cを、前下がりの斜面、つまり搬送機構側が下がる斜面とする。具体的には、載置面92cは、テーブル92において平板状の本体部92dの上側の板面として設けられ、本体部92dの下側に、前後の車輪92aが設けられる。そして、テーブル92の移動方向について前側(搬送機構側)の車輪92aを支持する脚部が後側(反搬送機構側)の車輪92aを支持する脚部よりも短くされることや、前側の車輪92aの外径が後側の車輪92aの外径よりも小さくされること等により、本体部92dが前下がりに傾斜し、載置面92cが前下がりの斜面となる。
また、AGV100の上面104には、ガイドローラ機構93により押されて搬送機構側に移動するテーブル92がのぼるスロープ97が設けられている。スロープ97は、テーブル92の移動方向について前上がりに、つまり搬送機構側が上がる向きに傾斜する。スロープ97は、テーブル92が有する車輪92aのうちの前側の車輪92aをのぼらせる。このため、スロープ97は、テーブル92の前側の車輪92aに対応する位置に設けられる。本実施形態では、スロープ97は、テーブル92の前側の車輪92aに対応して、AGV経路方向について所定の間隔を隔てた2箇所の位置に設けられている。
図24(b)に示すように、テーブル92は、前側の車輪92aをスロープ97にのぼらせることで、空箱101Aを載せる載置面92cを略水平とする。すなわち、テーブル92は、上述したように載置面92cを前下がりの斜面とした状態から、前側の車輪92aがスロープ97をのぼることで、載置面92cを略水平とした状態となる。
以上のような構成において、図24(a)に示すように、ガイドローラ機構93は、AGV100の作用を受ける前は、第1ローラアーム95を略左右方向に沿わせた状態、言い換えると第2ローラアーム96を略AGV経路方向に沿わせた状態で、AGV100を待機する。この待機状態のガイドローラ機構93に対して、テーブル92上に空箱101Aを載せたAGV100が近付き(矢印P1参照)、前端面103が第1ローラアーム95のローラ95bに接触する。
図24(b)に示すように、第1ローラアーム95に接触したAGV100がさらに前進することで(矢印P2参照)、第1ローラアーム95が押されてAGV経路方向に沿う状態となるとともに(矢印P3参照)、第1ローラアーム95と一体的に回動する第2ローラアーム96がローラ96bをテーブル92の側面92bに当接させてテーブル92を押す(矢印P4参照)。テーブル92により押されたテーブル92が反搬送機構側から搬送機構側に移動し(矢印P5参照)、前側の車輪92aがスロープ97をのぼる(矢印P6参照)。
これにより、空箱101Aを載せたテーブル92が、AGV100上における所定の位置で、載置面92cを略水平とした状態となる。かかる状態が、AGV100上の空箱101Aについての、AGV100から搬送機構50への搬出に際しての待機状態となる。つまり、この待機状態の空箱101Aが、空箱搬出プラー3Bによって搬送機構50に引き入れられる。なお、ガイドローラ機構93は、例えば、バネ等の付勢部材によってテーブル92を押す際とは反対の回転方向に付勢されることにより、AGV100の作用から解放されることで元の待機状態に戻るように構成される。
以上のような連動機構によれば、AGV100の走行にともなって、AGV100上において、自動的に、空箱101Aを搬送機構50への搬出に際して好適な状態にすることが可能となる。
また、本実施形態の搬送システムにおいては、上述したように小ウエイト12の落下運動によって元の待機位置に戻る4つの動作部3に関し、空箱搬出プラー3Bは、他の3つの動作部3よりも遅いタイミングで待機位置に戻る。これは、待機位置にある状態で搬送機構50からAGV側に突出してAGV100と干渉する位置に存在する空箱搬出プラー3Bについては(図13参照)、空箱搬出プラー3BがAGV100に干渉することを避けるため、空箱搬出プラー3Bが待機位置に戻るタイミングを遅らせる必要があるからである。
このように空箱搬出プラー3Bが待機位置に戻るタイミングを遅らせるため、落下することで空箱搬出プラー3Bを待機位置に戻す第2搬送ユニット2Bの小ウエイト12は、落下する前の状態、つまり上昇端位置A5(図2参照)に位置する状態で、大ウエイト11を待機位置A1で保持する保持部21と同様の保持機構により保持される。そして、この第2搬送ユニット2Bの小ウエイト12を保持する保持機構の保持解除動作が、AGV100の走行経路沿いに設けられたローラアーム98により、AGV100の動作が用いられて行われる。
ここで、上述したように、小ウエイト12の上昇端位置A5は、大ウエイト11の係合開始位置A3と同じ位置であり、この係合開始位置A3は、大ウエイト11の待機位置A1よりも低い位置である。このため、空箱搬出プラー3Bを待機位置に戻す第2搬送ユニット2Bの小ウエイト12(以下「第2用小ウエイト12B」ともいう。)を上昇端位置A5で保持するための保持機構については、上昇端位置A5に位置する小ウエイト12を保持することができるように設ける必要がある。
しかしながら、標準化の観点から、第2用小ウエイト12Bを保持するための保持機構は、大ウエイト11を保持する他の保持部21との関係において、同じ高さ位置に設けることが好ましい。つまり、第2用小ウエイト12Bを保持する保持機構のみを他の保持部21とは異なる位置(上昇端位置A5の小ウエイト12に対応する、相対的に低い位置)に設けることとすると、第2用小ウエイト12Bを保持する保持機構の高さ位置を他の保持部21の高さ位置と変える必要や、パイプ18の長さを変える必要等が生じ、標準化の観点から好ましくない。
そこで、図25に示すように、第2用小ウエイト12Bを、大ウエイト11を待機位置A1で保持する保持部21と同様の保持機構としての保持部21Bで保持する構成を採用するに際し、本体部分12dを、他の小ウエイト12よりも上下方向に長く構成する。すなわち、図25に示す構成においては、大ウエイト11の待機位置A1よりも低い上昇端位置A5に位置する第2用小ウエイト12Bが、大ウエイト11を待機位置A1で保持する他の保持部21と同じ高さ位置に設けられる保持部21Bによる保持作用を受けるため、本体部分12dが上下方向に延ばされることで、保持部21Bによる保持作用を受ける上側の鍔部12bの位置が調整される。
このような構成は、第2用小ウエイト12Bにおいて、下側の鍔部12cの位置を高さ位置の基準とした場合、他の小ウエイト12の本体部分12dの長さに対して、本体部分12dを上側に延長させる延長部12fを有する構成と言うことができる。すなわち、図25に示すように、小ウエイト12を上下方向に延ばした構成においては、第2用小ウエイト12B以外の他の小ウエイト12の本体部分12dの上下方向の長さをU1とした場合、延長部12fを有する第2用小ウエイト12Bの本体部分12dの上下方向の長さは、長さU1に延長部12fの上下方向の長さU2を加えた寸法(U1+U2)となる。
このような小ウエイト12の延長構成においては、本体部分12dの上下方向の長さの延長にともなって第2用小ウエイト12Bとしての重さが他の小ウエイト12に対してなるべく重くならないように、本体部分12dの材質として、比較的軽い材質が用いられる。具体的には、第2用小ウエイト12Bの本体部分12dの材質としては、例えばアクリル樹脂等の樹脂材料が好適に用いられる。
このように小ウエイト12を上下方向に延長し、第2用小ウエイト12Bを保持する保持部21Bを、大ウエイト11を保持する他の保持部21と同じ高さ位置に設けることで、標準化の観点から好ましい構成を実現することができる。つまり、第2用小ウエイト12Bを保持する保持部21Bの高さ位置を他の保持部21の高さ位置と変えたり、パイプ18の長さを変えたりする必要がなくなり、大ウエイト11を保持する保持部21と第2用小ウエイト12Bを保持する保持部21Bとで、パイプ18等との関係において共通の位置および構成を採用することができる。また、大ウエイト11の作用ストロークを変更した場合であっても、小ウエイト12の本体部分12dの上下長さの調整によって対応でき、また、本体部分12dの上下長さの異なる小ウエイト12は容易に作製できることから、大ウエイト11の作用ストロークの変更への対応が容易である。
なお、第2用小ウエイト12Bを保持する保持部21Bの構成は、大ウエイト11を保持する保持部21と同じ構成であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
また、第2用小ウエイト12Bを保持する保持部21Bについては、第2用小ウエイト12Bの構成として他の小ウエイト12と同じ構成(上下に延長しない構成)を採用するとともに、保持部21Bを、上昇端位置A5に位置する第2用小ウエイト12Bに合わせて、他の保持部21よりも低い高さ位置に設ける構成であってもよい。つまり、第2用小ウエイト12Bの上昇端位置A5での保持に際しては、第2用小ウエイト12Bを他の小ウエイト12と同じ構成としながら、保持部21Bの高さ位置の調整により対応してもよい。
以上のように保持部21Bによって保持される第2用小ウエイト12Bに関し、その保持解除動作は、次のようにして、AGV100の動作が用いられて行われる。図13に示すように、ローラアーム98は、AGV100の走行経路沿いにおいて、解除ストッパ84の下手側の位置にて、例えば床面等の所定の支持面に固定された状態で立設される支持軸98aにより回動可能に支持された状態で設けられる。ローラアーム98は、その先端にローラ98bを回転自在に支持し、このローラ98bを介してAGV100の動作を受けて回動する。ローラアーム98には、ワイヤ99の一端が接続されており、ローラアーム98は、AGV100の動作を受けて回動することで、ワイヤ99を引っ張る。
ワイヤ99の他端は、上記のとおり第2搬送ユニット2Bの小ウエイト12を保持する保持部21Bに接続される。つまり、この保持部21Bは、ワイヤ99による引っ張り動作により、係止体25に相当する部材を回動させ(図11参照)、小ウエイト12の保持を解除する。ここでは、例えば、図19に示す解除部22Aと同様の構成が用いられ、この構成において、トリガー用ワイヤ60と同様にして支持回動体28にワイヤ99が連結され、保持部21Bを作動させる構成が実現される。このような構成により、空箱搬出プラー3Bを待機位置に戻す小ウエイト12は、他の3つの動作部3を待機位置に戻す小ウエイト12の落下タイミングよりも後のタイミングで落下を開始する。これにより、空箱搬出プラー3Bが待機位置に戻るタイミングが調整され、空箱搬出プラー3BがAGV100に干渉することを避けることができる。
[搬送装置の動作]
以上説明したような構成を備える本実施形態の搬送装置1を含む搬送システムの一連の動作フローについて説明する。なお、以下に説明する動作フローは、複数のAGV100が所定の走行経路上を所定の間隔で循環的に走行する環境において、本実施形態の搬送システムに対して1台のAGV100が上流側から下流側に通り過ぎることにより自動的に行われる1サイクルの動作についてのものである。つまり、1台のAGV100が搬送システムを通過するたびに、以下に説明する一連の動作が行われる。
本実施形態の搬送システムの、AGV100の到着を待機する待機状態において、搬送装置1の4個の大ウエイト11は、保持解除機構の保持部21により保持され(図9等参照)、待機位置(図2、待機位置A1参照)にある。また、搬送システムの待機状態では、搬送機構50を構成する第3搬送部53の反AGV側に、他の場所から作業者等により運ばれてきた実箱101Bが載っている。
搬送システムの待機状態において、まず、走行してきたAGV100により、搬送部駆動機構が作動し、第3搬送部53上に載せられた実箱101Bが、実箱押出しプッシャー3Aによる作用が得られる位置まで搬送される(図15(a)、矢印K1参照)。すなわち、搬送部駆動機構を構成するゴム車輪85が、進行するAGV100によって回転させられ、このゴム車輪85の回転動力が上述したような連動軸部87等を含む所定の伝達機構を介して伝達され、第3搬送部53の一部のローラ53aが回転駆動し、実箱101BがAGV側に送られる(図13、図23参照)。
次に、AGV100の走行と連動して行われるガイドローラ機構93によるAGV100上のテーブル92の移動(図24参照)が行われる。続いて、前進するAGV100により、連動トリガー機構を構成するトリガー部61が作動し(図20参照)、これに連動して解除部22Aが作動し、保持部21による第1大ウエイト11Aの待機位置での保持が解除され、第1大ウエイト11Aが落下運動を開始する。第1大ウエイト11Aの落下運動によれば、上記のとおり搬送部駆動機構により送られた実箱101Bについて、実箱押出しプッシャー3Aにより、実箱押出し動作が行われる(図15(b)、矢印K2参照)。
第1大ウエイト11Aが落下することで、保持解除機構により、第2大ウエイト11Bが落下運動を開始する。つまり、第1大ウエイト11Aの落下により、第1大ウエイト11Aの下方に設けられた解除部22が作動し、保持部21による第2大ウエイト11Bの待機位置での保持が解除され、第2大ウエイト11Bが落下運動を開始する。第2大ウエイト11Bの落下運動によれば、空箱搬出プラー3Bにより、AGV100上の空箱101Aについて、空箱搬出動作が行われる(図14(a)、矢印J1、同図(b)、矢印J2参照)。
なお、AGV100によりトリガー部61が作動してから、空箱搬出プラー3Bによる空箱搬出動作が行われるまでの間において、搬送機構50の側方におけるAGV100の停車が行われる。
第2大ウエイト11Bが落下することで、保持解除機構により、第3大ウエイト11Cが落下運動を開始する。第3大ウエイト11Cの落下運動によれば、実箱押出し動作によって第1搬送部51の下手側の部分に送られた実箱101Bについて、横送りシフター3Cにより、横送りシフト動作が行われる(図16(a)、矢印K3参照)。
第3大ウエイト11Cが落下することで、保持解除機構により、第4大ウエイト11Dが落下運動を開始する。第4大ウエイト11Dの落下運動によれば、横送りシフト動作によって第1搬送部51の上手側の部分に送られた実箱101Bについて、実箱搬入プッシャー3Dにより、実箱搬入動作が行われる(図16(b)、矢印K4参照)。
実箱搬入動作によって、実箱101BがAGV100に搬入されると、AGV100が、自動制御によって発進する。その後、AGV100が同期部70に作用し(図22(a)参照)、同期部70がAGV100と同期してAGV経路方向の下手側に移動することで、上記のとおり順番に落下した4個の大ウエイト11の引上げ動作が行われる。
4個の大ウエイト11が同時に待機位置に戻り、大ウエイト11の引上げ動作が完了した後の所定のタイミングで、AGV100に同期して移動する同期部70が解除ストッパ84に衝突することで、AGV100と同期部70との同期が解除される(図22(b)参照)。これにより、押下体戻しウエイト39が下降して、押下体36および同期部70が元の位置に戻る(図21参照)。
また、大ウエイト11の引上げ動作にともない、各搬送ユニット2の小ウエイト12が下降し、空箱搬出プラー3B以外の3つの動作部3が元の待機位置に戻る。その後、AGV100がローラアーム98に到達することで、空箱搬出プラー3Bを待機位置に戻すための小ウエイト12の保持部21Bによる保持状態が解除され、空箱101Aを搬送した状態で残っていた空箱搬出プラー3Bが、待機位置に戻る。これにより、本実施形態の搬送システムにおける一連の動作フローが終了し、搬送システムは、次のAGV100の到着を待機する状態となる。
以上説明した本実施形態の搬送装置1によれば、以下のような効果が得られる。すなわち、安価で簡素な構成が実現でき、高い安全性が得られるとともに、スペース面での制約が小さく、ワーク101を複数の異なる方向に搬送する構成を容易に実現することができる。
本実施形態の搬送装置1においては、ワークを移動させる駆動部分の動力源にエアシリンダ機構を用いたり、駆動部分の動作を電気制御したりする必要がなく、エアや電気が不要である。このため、安価で簡素な構成を実現することができる。エアレスや電気レスの構成は、省エネルギーの要請が高まっている近年の趨勢において、非常に有用である。
また、ワーク101を移動させる駆動部分の動力源として、大ウエイト11等の重りの落下運動を利用する構成を採用することから、ワーク101を搬送するための推力が必要以上に大きくなることを防止することができ、安全装置等の安全を確保するための構成を簡略化ないし省くことができる。
また、本実施形態の搬送装置1は、複数の搬送ユニット2を備えることで、プッシャーやプラー等の動作部3を移動させることでワークを搬送する構成を多段的に構成し、省スペース化を図りながら、複数の異なる方向にワークを搬送することができる。これにより、複雑な搬送経路にも容易に対応することができ、高い汎用性を得ることができる。この点、本実施形態の搬送装置1は、4組の搬送ユニット2を備えるが、ワークの搬送経路に応じて搬送ユニット2の数を適宜変更することで、適用範囲を広げることができる。また、各搬送ユニット2の動作部3の動作についても、本実施形態のような直線的な動作に限らず、曲線的な動作であってもよい。
また、本実施形態の搬送装置1は、所定の順番で落下した4個の大ウエイト11を同時に引き上げて待機位置に戻す構成を採用する。かかる構成によれば、複数の重りの昇降動作による搬送動作の時間を短縮することができ、タクトタイムを短縮することができる。
また、本実施形態の搬送装置1は、4組の搬送ユニット2において、大ウエイト11の動作ストロークを共通にするとともに、大ウエイト11が搬送用ワイヤ10に係合する係合部17を設けることによって、各動作部3の動作範囲に応じた遅延ストロークを設ける構成を採用する。かかる構成によれば、複数の搬送ユニット2について、重り昇降部2bの高さを均等にして構成の均一化を図ることができるとともに、各動作部3に必要な動作範囲に応じた大ウエイト11の作用ストロークを確保することができる。
また、本実施形態の搬送装置1は、大ウエイト11および小ウエイト12をパイプ18内に収容する構成を採用する。かかる構成によれば、昇降動作する大ウエイト11および小ウエイト12がそれぞれパイプ18によって覆われることから、各重りが作業者や他の機械等と干渉することを防止することができ、高い安全性を得ることができる。また、パイプ18によって大ウエイト11および小ウエイト12の昇降動作がガイドされることから、各重りの確実な昇降動作、つまり搬送装置1による確実な搬送動作を確保することができる。
また、パイプ18を透明にすることにより、パイプ18内の重り(大ウエイト11または小ウエイト12)を外部から視認することができる。これにより、パイプ18内の重りの動作を容易に確認することができ、例えば、パイプ18内の重りの動作に不具合が生じた場合、その不具合を容易に発見することができる等、搬送ユニット2のメンテナンスが容易となる。なお、本実施形態の搬送装置1においては、大ウエイト11および小ウエイト12の両方がパイプ18に収容されているが、いずれか一方の重りだけがパイプ18に収容される構成であってもよい。
また、本実施形態の搬送装置1は、パイプ18によって大ウエイト11および小ウエイト12を収容する構成において、重りの落下にともなってパイプ18内から排出する空気の排出量を調整する落下速度調整部を備える構成を採用する。かかる構成によれば、大ウエイト11または小ウエイト12の落下速度を調整することにより、例えば、パイプ18内の重りの落下速度を緩和することにより、安全性を高めることができる。また、動作部3の動作速度を調整することが可能となり、ワーク101の搬送速度を調整することが可能となる。
また、本実施形態の搬送装置1は、パイプ18によって大ウエイト11および小ウエイト12を収容する構成において、重りに弁部材としての弁シート11Sを設ける構成を採用する。かかる構成によれば、落下運動する重りの下降速度を低減することができるので、重りとパイプ18の底部19との衝突を緩衝することができ、また、動作部3の移動速度が低減することによる安全性の向上を図ることができる。
また、本実施形態の搬送装置1は、パイプ18によって大ウエイト11および小ウエイト12を収容する構成において、重りにローラ部材としての樹脂ローラ11Rを設ける構成を採用する。かかる構成によれば、重りがパイプ内周面18aに接触することを防止することができ、重りの接触によってパイプ内周面18aが削り取られることを防止することができる。また、昇降動作する重りとパイプ内周面18aとの間の摩擦抵抗を低減することができる。
また、本実施形態の搬送装置1は、搬送用ワイヤ10に設けられる動作部3について、実箱押出しプッシャー3Aおよび横送りシフター3Cを、動滑車43を介して設ける構成を採用する。かかる構成によれば、大ウエイト11に作用する重力の約2倍の力を動作部3に作用させることができ、大ウエイト11を低重量にすることによっても動作部3について必要な推力を確保することが可能となる。これにより、大ウエイト11を小さくすることができ、装置のコンパクト化が可能となる。
また、本実施形態の搬送装置1は、搬送機構50を含む搬送システムにおいて、AGV100の走行動作を利用して、最初に落下する第1大ウエイト11Aの保持の解除、および4個の大ウエイト11の引上げ動作を行う構成を採用する。かかる構成によれば、動力源として既存のAGVの設備を利用することができ、エアレスや電気レスの構成を実現するに際し、既存設備の有効利用が可能となる。
以上説明した本発明の実施の形態においては、本発明に係る搬送装置を、部品箱を自動的にAGVに供給するための搬送装置に適用した場合を例に説明したが、本発明に係る搬送装置は、搬送ユニットの数や各搬送ユニットが有する動作部の移動経路等を適宜変更することで、種々の物品の搬送に適用することができる。