本発明は、ゴム層(A)と、ゴム層(A)上に積層されたフッ素樹脂層(B)と、を備える積層体であって、ゴム層(A)は、加硫用ゴム組成物から形成される層であり、加硫用ゴム組成物は、アクリルゴム(a1)、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(a2)、並びに、ジチオカルバミン酸鉄(a4)を含有し、フッ素樹脂層(B)は、フッ素ポリマー組成物から形成される層であり、フッ素ポリマー組成物は、クロロトリフルオロエチレンに由来する共重合単位を有するフッ素ポリマー(b1)を含有することを特徴とする積層体である。
本発明の積層体は、加硫用ゴム組成物が上記特定の構成、特に、ジチオカルバミン酸鉄(a4)を使用することにより、アクリルゴムとフッ素樹脂とが強固に直接接着するものである。
以下、本発明の積層体を構成する各成分について説明する。
本発明の積層体は、ゴム層(A)と、ゴム層(A)上に積層されたフッ素樹脂層(B)と、を備えることを特徴とする。
以下、各層について説明する。
(A)ゴム層
ゴム層(A)は、加硫用ゴム組成物から形成される層である。
加硫用ゴム組成物は、必須成分としてアクリルゴム(a1)、化合物(a2)、及び、ジチオカルバミン酸鉄(a4)を含有する。
(a1)アクリルゴム
アクリルゴム(a1)は、アクリル酸エステルに基づく重合単位からなる重合体である。アクリルゴム(a1)は、1種のアクリル酸エステルに基づく重合単位からなる単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル酸エステルに基づく重合単位からなる共重合体でもよいし、1種又は2種以上のアクリル酸エステルに基づく重合単位と、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位とからなる共重合体であってもよい。
アクリルゴム(a1)は、アクリル酸エステルの種類、重合単位の量を選択することにより、アクリルゴム組成物の常態物性、耐寒性、耐油性等を調整することができる。
アクリル酸エステルは、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、又は、炭素数1〜12のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルであることが好ましい。
アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート等が挙げられる。
アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−(n−プロポキシ)エチルアクリレート、2−(n−ブトキシ)エチルアクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピルアクリレート、2−(n−ブトキシ)プロピルアクリレート等が挙げられる。
これらのアクリル酸エステルに基づく重合単位の量を調整することで、得られる加硫用ゴム組成物、該加硫用ゴム組成物から得られる積層体の耐寒性や耐油性を調整することができる。
例えば、n−ブチルアクリレートの共重合比率を多くすると耐寒性を向上させることができる。また、エチルアクリレートの共重合比率を多くすると耐油性を向上させることができる。
アクリルゴム(a1)は、アクリル酸エステルに基づく重合単位、及び、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体であることも好ましい。
アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、架橋部位含有モノマー(但し、酢酸ビニルは除く)、及び、エチレンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。メタクリル酸エステルは、例えば、炭素数2〜14のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、又は、炭素数2〜14のアルコキシアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
酢酸ビニルは、加硫用ゴム組成物が熱老化した際に、その分子間を架橋させて加硫用ゴム組成物の伸び等の機械的特性を維持させるために用いられる。酢酸ビニルの配合量を調整することにより、得られる加硫用ゴム組成物の分子間架橋を調整することができる。
アクリルゴム組成物は、熱や紫外線等の影響によりその主鎖が切断し、引張強さや破断伸びといった機械的特性が低下してしまうことがある。そこで、架橋反応を起こしやすいカルボキシル基を有する酢酸ビニルをアクリルゴム(a1)の主鎖に共重合させておくと、アクリルゴム(a1)の主鎖が切断してしまった際に、酢酸ビニルに基づく重合単位中のカルボキシル基が架橋部位となって、切断した分子間を再度架橋させることができる。
酢酸ビニルに基づく重合単位は、アクリルゴム(a1)を構成する全重合単位に対して、15質量%以下であることが好ましい。酢酸ビニルに基づく重合単位の含有量がこの範囲であれば、アクリルゴム組成物の耐熱老化性を維持しつつ、その機械的特性の低下を抑制することができる。
架橋部位含有モノマーは、必要に応じてアクリルゴムに共重合させるものであり、分子間架橋を進めて、得られるアクリルゴムの硬度や伸び特性を調整するためのものである。
架橋部位含有モノマーとしては、活性塩素基、エポキシ基、カルボキシル基、及び、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く)からなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体が好ましい。
架橋部位含有モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、2−クロロエチルビニルエーテル、2−クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート等の活性塩素基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基を含有する単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
上記水酸基は、フェノール性水酸基が好ましく、フェノール性水酸基を有する架橋部位含有モノマーとしては、α−メチル−o−ヒドロキシスチレン、o−カビコール、p,m−ヒドロキシ安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、オイゲノール、イソオイゲノール、p−イソプロペニルフェノール、o,m,p−アリルフェノール、2,2−(o,m,p−ヒドロキシフェニル−4−ビニルアセチル)プロパン等が挙げられる。
活性塩素基を有する架橋部位含有モノマーとしては、o,m,p−ヒドロキシスチレン、2−クロロエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニル、クロロメチルスチレン、アリルクロライド等が挙げられる。
架橋部位含有モノマーに基づく重合単位は、アクリルゴム(a1)を構成する全重合単位に対して、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。架橋部位含有モノマーに基づく重合単位をこの範囲で使用すると効率的に架橋することができ、ゴム弾性を失うことがなく、得られる積層体の強度も優れる。架橋部位含有モノマーに基づく重合単位が10質量%を超えると、得られた加硫物が硬化してゴム弾性を失うおそれがある。
アクリルゴム(a1)は、全重合単位に対して、アクリル酸エステルに基づく重合単位が、40〜95質量%であり、活性塩素基及び水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するモノマーに基づく重合単位が、1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルに基づく重合単位が、50〜90質量%であり、活性塩素基及び水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するモノマーに基づく重合単位が、2〜10質量%である。
アクリルゴム(a1)がエチレンに基づく重合単位を有する場合、エチレンに基づく重合単位は、アクリルゴム(a1)を構成する全重合単位に対して、50質量%以下であることが好ましい。エチレンを共重合させることによって、強度を著しく向上させたアクリルゴムが得られる。
アクリルゴム(a1)には、本発明の目的を損なわない範囲でこれらのモノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合させることもできる。共重合可能な他のモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、メチルビニルケトンのようなアルキルビニルケトン;ビニルエチルエーテル、アリルメチルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル;アクリルアミド、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピオン酸ビニル等のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
アクリルゴム(a1)は、上記の単量体を乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知の方法により共重合することにより得られる。
アクリルゴム(a1)は、たとえば下記の重合方法によってえられるラテックスを、通常の塩析操作によって、ポリマーを凝析させた後、水洗、乾燥させて製造される。塩析剤としては、食塩等を用いることができる。
2リットルビーカーに、アニオン性乳化剤、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩5.0gを脱イオン水1250gに溶解し、それにアクリルゴム(a1)を構成するモノマー混合物を総量で300gを加え、小型ミキサーを用いて乳化する。つぎに、2リットル還流冷却管付重合容器内に、前記モノマー乳化液を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温する。これに過硫酸アンモニウムの10%水溶液10gを添加して重合を開始させる。重合開始後、重合容器内の温度を初期の70℃から80℃まで上昇させ、80〜82℃の範囲で2時間、維持して重合反応を完結させる。
加硫用ゴム組成物は、更に、加硫剤(a9)を含むものであってもよい。加硫剤(a9)は、アクリルゴム(a1)の種類等によって適切に選択すればよく、一般的にアクリルゴムの加硫に用いられる加硫剤を用いることができる。アクリルゴム(a1)の種類等によって、加硫剤(a9)は使用しなくてもよい。
加硫剤(a9)の添加量は、特に限定されないが、アクリルゴム(a1)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部が好ましい。上記範囲の添加量であることによって、充分な加硫処理が行える。加硫剤(a9)の量が0.5質量部以下では加硫用ゴム組成物が加硫不足となり、得られるゴム層(A)の引張強度や破断時伸び等の機械的特性が低下するおそれがある。また、5.0質量部を超えると、得られる加硫物が硬化してしまい弾性を失ってしまうおそれがある。
加硫剤(a9)としては、硫黄加硫系加硫剤、ポリアミン加硫系加硫剤、ポリオール加硫系加硫剤、パーオキサイド加硫系加硫剤、イミダゾール加硫系加硫剤、トリアジン加硫系加硫剤、オキサゾール加硫系加硫剤、チアゾール加硫系加硫剤、及び、過酸化物系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。アクリルゴム(a1)が架橋部位含有モノマーに基づく重合単位を含むものである場合、その架橋部位含有モノマーに応じて、適切な加硫剤を選択すればよい。
ポリアミン化合物としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4−3−アミノフェノキシ)フェニルサルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン等の芳香族ポリアミン化合物、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン化合物等が挙げられる。
グアニジン系化合物としては、グアニジン、テトラメチルグアニジン、ジブチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン等が挙げられる。
架橋部位含有モノマーがエポキシ基を有する単量体である場合、架橋剤はイミダゾール化合物が好ましい。イミダゾール化合物としては、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチル−5−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール・トリメリット酸塩、1−アミノエチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシル−イミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1)’〕エチル−s−トリアジン・イソシアヌール酸付加物、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ−(シアノエトキシメチル)イミダゾール、N−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)尿素、N,N’−ビス−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)尿素、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−アジボイルジアミド、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−ドデカンジオイルジアミド、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−エイコサンジオイルジアミド、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1)’〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’〕−エチル−s−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロライド等が挙げられる。
架橋部位含有モノマーがエポキシ基を有する単量体である場合、加硫促進剤としては、エポキシ樹脂用の硬化剤、例えば熱分解アンモニウム塩、有機酸、酸無水物、アミン類、硫黄及び硫黄化合物等を用いることができる。
上記加硫用ゴム組成物では、加硫剤を使用せずに、加硫促進剤を使用して加硫することができる。加硫促進剤としては、第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩を用いることもできる。第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムクロライド、1,6−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7−セチルピリジウムサルフェート、トリメチルベンジルアンモニウムベンゾエート等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド、トリシクロヘキシルベンジルホスホニウムクロライド、トリシクロヘキシルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5(DBN)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。化合物(a2)を含むことによって、加硫用ゴム組成物の加硫特性を改善できる。
DBU塩及びDBN塩としては、DBU又はDBNの炭酸塩、長鎖脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、オルトフタル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、フェノール塩、フェノール樹脂塩、ナフトエ酸塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、フェノールノボラック樹脂塩等があげられ、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド(DBU−B)、ナフトエ酸塩、オルトフタル酸塩、フェノール塩、及び、ギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
より具体的には、化合物(a2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のナフトエ酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
化合物(a2)としては、より好ましくは、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。また、特に好ましくは、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライドである。
化合物(a2)としては、上記化合物を2種以上併用してもよい。
化合物(a2)は、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは、1.0質量部以上である。化合物(a2)が少なすぎると接着力が充分でないおそれがある。
化合物(a2)は、アクリルゴム(a1)100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることが更に好ましく、2.0質量部以下であることが特に好ましい。
加硫用ゴム組成物は、酸化マグネシウム(a3)を含むことが好ましい形態の一つである。本発明の特定の構造を有する積層体は、酸化マグネシウム(a3)を含むことによってより優れた接着性を有するものとなる。
酸化マグネシウム(a3)の配合量は、例えば、接着性、ゴム物性の点から、アクリルゴム(a1)100質量部に対して3〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、特に好ましくは5〜10質量部である。
加硫用ゴム組成物はまた、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0〜20質量部の酸化マグネシウム(a3)を含有することも好ましい形態の一つである。
従来、フッ素ゴムとアクリルゴムとを接着させるためには、ゴム層を形成するための加硫用ゴム組成物に酸化マグネシウムを添加することが必要と考えられていた。
しかしながら、本発明の積層体は、加硫用ゴム組成物が化合物(a2)及びジチオカルバミン酸鉄(a4)を含有することによって、加硫用ゴム組成物中の酸化マグネシウムの含有量が少ない又は加硫用ゴム組成物が酸化マグネシウムを含有しない場合であっても、強固に接着した加硫積層体が得られる。
酸化マグネシウム(a3)の含有量が20質量部を超えると、流動性、分散性、耐酸性が低下するおそれがある。酸化マグネシウム(a3)の含有量は、0〜15質量部がより好ましく、特に好ましくは0〜10質量部である。
加硫用ゴム組成物は更に、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0〜5質量部の酸化マグネシウム(a3)を含有することが好ましい。本発明者等が鋭意検討したところ、酸化マグネシウム(a3)の含有量を、未加硫アクリルゴム(a1)100質量部に対して5質量部以下とすることによって、特に優れた耐酸性を有する加硫積層体が得られることが見出された。
耐酸性がより優れる観点から、酸化マグネシウム(a3)の含有量は、5質量部未満であることがより好ましく、3質量部以下であることが更に好ましく、3質量部未満であることが特に好ましく、酸化マグネシウム(a3)を含有しないことが最も好ましい。
加硫用ゴム組成物は、ジチオカルバミン酸鉄(a4)を含む。加硫用ゴム組成物が、上記化合物(a2)に加えて、更に、ジチオカルバミン酸鉄(a4)を含むことにより、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)との接着が強固な積層体が得られる。
ジチオカルバミン酸鉄(a4)としては、ジメチルジチオカルバメートの鉄塩(FeMDC)、ジエチルジチオカルバメートの鉄塩、ジイソプロピルジチオカルバメートの鉄塩、ジブチルジチオカルバメートの鉄塩、ジベンジルジチオカルバメートの鉄塩、ピペラジンジチオカルバメートの鉄塩等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸鉄(a4)の配合量は、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0.1〜7.0質量部が好ましく、0.3〜5.0質量部がより好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0質量部である。
ジチオカルバミン酸鉄(a4)の配合量が少なすぎると、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)とが充分に接着しないおそれがある。また、加硫ゴム物性が悪くなる傾向がある。ジチオカルバミン酸鉄(a4)が多すぎると未加硫物性が悪くなる傾向がみられる。
加硫用ゴム組成物は、ジチオカルバミン酸鉄(a4)以外のカルバミン酸金属塩を含んでいてもよい。ジチオカルバミン酸鉄(a4)以外のカルバミン酸金属塩としては、ジメチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnBDC)、エチルフェニルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEPDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバメートの亜鉛塩、ジベンジルジチオカルバメートの亜鉛塩等のジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバメートの銅塩(CuMDC)等のジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaMDC)、ジエチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaEDC)、ジブチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaBDC)、ジエチルジチオカルバメートのテルリウム塩(TeEDC)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併用して用いられる。
ジチオカルバミン酸鉄(a4)以外のカルバミン酸金属塩の配合量は特に限定されないが、例えば、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0.5〜3.0質量部が好ましい。
加硫用ゴム組成物は、更に、ジチオカルバミン酸亜鉛、及び、ジチオカルバミン酸銅からなる群より選択される少なくとも1種のジチオカルバミン酸塩(a5)を含むことが好ましい。ジチオカルバミン酸鉄(a4)に加えて、更に、上記ジチオカルバミン酸塩(a5)を併用することによって、ジチオカルバミン酸鉄(a4)の含有量が少ない場合であっても、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)との接着が強固な積層体が得られる。
ジチオカルバミン酸亜鉛、及び、ジチオカルバミン酸銅からなる群より選択される少なくとも1種のジチオカルバミン酸塩(a5)の配合量は特に限定されないが、例えば、アクリルゴム(a1)100質量部に対して0.5〜3.0質量部が好ましい。
加硫用ゴム組成物は、更に受酸剤を含んでもよい。受酸剤の例としては、周期表第(II)族金属の酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第(IV)族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、及び下記一般式(1):
MgxZnyAlz(OH)2(x+y)+3z−2CO3・wH2O (1)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す。)で示される合成ハイドロタルサイト類、及び一般式(2):
〔Al2Li(OH)6〕nX・mH2O (2)
(式中Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数である。)で示されるLi−Al系包接化合物が挙げられる。
受酸剤の具体的な例としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
さらに、一般式(1)で示される合成ハイドロタルサイト類については、例えば、Mg3ZnAl2 (OH)12CO3・wH2O等を挙げることができる。また、一般式(1)に含まれる下記一般式(3):
MgxAly(OH)2x+3y−2CO3・wH2O (3)
(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の整数を表す)で表される化合物であってもよい。更に具体的に例示すれば、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg4Al2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg3Al2(OH)10CO3・1.7H2O等を挙げることができる。
さらに、一般式(2)で示されるLi−Al系包接化合物については、〔Al2Li(OH)6〕2CO3・H2O等が挙げられる。
また、Li−Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等が挙げられる。また、これらの受酸剤は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
加硫用ゴム組成物は、ゴム層(A)にアクリルゴム(a1)とは別の特性を付与するために、更に、他の樹脂を含有してもよい。樹脂としては、たとえばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂、スチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、塩素化ポリスチレン、クロロスルホン化ポリスチレンエチレ等が挙げられる。この場合、樹脂の配合量は、アクリルゴム(a1)100質量部に対し1〜50質量部が好ましい。
また本発明においては、目的又は必要に応じて、一般の加硫用ゴム組成物に配合する通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、滑剤等の各種添加剤を配合することができる。また、前記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種又は2種以上配合してもよい。ただし、これらの添加剤は、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
充填剤としては、塩基性シリカ、酸性シリカ、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤等があげられる。
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックス等の石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のポリグリコール;ワセリン、パラフィン等の脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤等があげられる。
可塑剤としては、たとえばエポキシ樹脂、フタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、たとえば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、たとえばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩等があげられる。
加硫用ゴム組成物は、アクリルゴム(a1)、化合物(a2)、並びに、ジチオカルバミン酸鉄(a4)、さらに要すれば酸化マグネシウム(a3)等のその他の添加剤を混練することにより調製される。
混練は、たとえば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いて行うことができる。
つぎに、本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)について説明する。
(B)フッ素樹脂層
フッ素樹脂層(B)は、フッ素ポリマー組成物から形成される層である。
フッ素ポリマー組成物は、少なくともクロロトリフルオロエチレンに由来する共重合単位を有するフッ素ポリマー(b1)を含有する。
フッ素ポリマー(b1)としては、燃料バリア性の観点から、フッ素樹脂であることが好ましく、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びCTFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFEに由来する共重合単位(CTFE単位)と、テトラフルオロエチレン(TFE)、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル、へキサフルオロイソブテン、式:
CH2=CX1(CF2)nX2
(式中、X1はH又はF、X2はH、F又はCl、nは1〜10の整数である)
で示される単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、及び、塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことが好ましい。また、CTFE共重合体としては、パーハロ重合体であることがより好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFE単位と、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことがより好ましく、実質的にこれらの共重合単位のみからなることが更に好ましい。また、燃料低透過の観点から、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等のCH結合を有するモノマーを含まないことが好ましい。パーハロポリマーはアクリルゴムとの接着が通常困難であるが、本発明の構成によれば、フッ素樹脂層がパーハロポリマーからなる層であっても、フッ素樹脂層とゴム層との層間の接着は強固である。
CTFE共重合体は、全単量体単位の10〜90モル%のCTFE単位を有することが好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFE単位、TFE単位及びこれらと共重合可能な単量体(α)に由来する単量体(α)単位を含むものが特に好ましい。
「CTFE単位」及び「TFE単位」は、CTFE共重合体の分子構造上、それぞれ、CTFEに由来する部分(−CFCl−CF2−)、TFEに由来する部分(−CF2−CF2−)であり、前記「単量体(α)単位」は、同様に、CTFE系共重合体の分子構造上、単量体(α)が付加してなる部分である。
単量体(α)としては、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、エチレン(Et)、ビニリデンフルオライド(VdF)、CF2=CF−ORf1(式中、Rf1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、CX3X4=CX5(CF2)nX6(式中、X3、X4及びX5は同一もしくは異なって、水素原子又はフッ素原子;X6は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子;nは、1〜10の整数)で表されるビニル単量体、CF2=CF−OCH2−Rf2(式中、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等があげられ、なかでも、PAVE、上記ビニル単量体、及び、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf2が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
CTFE共重合体における、CTFE単位とTFE単位との比率は、CTFE単位が15〜90モル%に対し、TFE単位が85〜10モル%であり、より好ましくは、CTFE単位が20〜90モル%であり、TFE単位が80〜10モル%である。また、CTFE単位15〜25モル%と、TFE単位85〜75モル%とから構成されるものも好ましい。
CTFE共重合体は、CTFE単位とTFE単位との合計が90〜99.9モル%であり、単量体(α)単位が0.1〜10モル%であるものが好ましい。単量体(α)単位が0.1モル%未満であると、成形性、耐環境応力割れ性及び耐燃料クラック性に劣りやすく、10モル%を超えると、燃料低透過性、耐熱性、機械的特性に劣る傾向にある。
フッ素ポリマー(b1)は、PCTFE又はCTFE−TFE−PAVE共重合体であることが最も好ましい。上記CTFE−TFE−PAVE共重合体とは、実質的にCTFE、TFE及びPAVEのみからなる共重合体である。PCTFE及びCTFE−TFE−PAVE共重合体は、主鎖を構成する炭素原子に直接結合した水素原子が存在せず、脱フッ化水素化反応が進行しない。従って、脱弗化水素化反応によってフッ素ポリマー中に形成される不飽和結合を利用した従来の接着性改善方法は適用できない。
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等があげられ、なかでもPMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
PAVE単位は、全単量体単位の0.5モル%以上であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましい。
CTFE単位等の構成単位は、19F−NMR分析を行うことにより得られる値である。
フッ素ポリマー(b1)は、ポリマーの主鎖末端及び/又は側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。前記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(−C(=O)O−)、酸無水物結合(−C(=O)O−C(=O)−)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルバモイル基(NH2−C(=O)−)、カルバモイルオキシ基(NH2−C(=O)O−)、ウレイド基(NH2−C(=O)−NH−)、オキサモイル基(NH2−C(=O)−C(=O)−)等、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基等においては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基等の炭化水素基で置換されていてもよい。
反応性官能基は、導入が容易である点、フッ素ポリマー(b1)が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
フッ素ポリマー(b1)は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。前記重合において、温度、圧力等の各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、フッ素ポリマー(b1)の組成や量に応じて適宜設定することができる。
フッ素ポリマー(b1)の融点は特に限定されないが、160〜270℃であることが好ましい。
またフッ素ポリマー(b1)の分子量は、得られる積層体が良好な機械特性や燃料低透過性等を発現できるような範囲であることが好ましい。たとえば、メルトフローレート(MFR)を分子量の指標とする場合、フッ素ポリマー一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度におけるMFRは、0.5〜100g/10分であることが好ましい。より好ましくは、2〜50g/10分であり、更に好ましくは、5〜35g/10分である。
フッ素ポリマー(b1)の融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、例えば、297℃、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定することができる。
本発明においてフッ素樹脂層(B)は、これらのフッ素ポリマー(b1)を1種含有するものであってもよいし、2種以上含有するものであってもよい。
本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)は、積層体を燃料周りの材料として使用する場合、燃料透過係数が1.0g・mm/m2/day以下であることが好ましく、0.6g・mm/m2/day以下であることがより好ましく、0.4g・mm/m2/day以下であることが更に好ましい。
燃料透過係数は、イソオクタン、トルエン及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した燃料透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを組み入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。
本発明において、フッ素ポリマー(b1)が特定の反応性官能基を末端に有するものであると、ゴム層(A)との接着性が向上する。したがって、耐衝撃性や強度に優れた積層体を提供できる。
なお、フッ素ポリマー(b1)がパーハロポリマーである場合、耐薬品性及び燃料低透過性がより優れたものとなる。パーハロポリマーとは、重合体の主鎖を構成する炭素原子の全部にハロゲン原子が結合している重合体である。
フッ素樹脂層(B)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物等の種々の充填剤を配合したものであってもよい。
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等があげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレススチール等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等があげられる。
表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキ等があげられる。
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
導電性フィラーを配合してなるフッ素ポリマー組成物の体積抵抗率は、1×100〜1×109Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×102Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×108Ω・cmである。
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を積層することにより製造できる。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層されていてもよいし、ゴム層(A)の両側にフッ素樹脂層(B)が積層されていてもよい。また、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層されていてもよい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)の積層は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着等の手段で積層する方法、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法、ゴム層(A)にフッ素樹脂層(B)を塗布する方法のいずれでもよい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着等の手段で積層する方法では、フッ素ポリマーの成形方法と加硫用ゴム組成物のそれぞれ単独での成形方法が採用できる。
ゴム層(A)の成形は、加硫用ゴム組成物を加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、塗装法等により、シート状、チューブ状等の各種形状の成形体とすることができる。
フッ素樹脂層(B)は、加熱圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、塗装(粉体塗装を含む)等の方法により成形できる。成形には通常用いられるフッ素ポリマーの成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置等が使用でき、シート状、チューブ状等、各種形状の積層体を製造することが可能である。これらのうち、生産性が優れている点から、溶融押出成形法が好ましい。
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法としては、ゴム層(A)を形成する加硫用ゴム組成物及びフッ素樹脂層(B)を形成するフッ素ポリマー(b1)を用いて、多層圧縮成形法、多層トランスファー成形法、多層押出成形法、多層射出成形法、ダブリング法等の方法により成形と同時に積層する方法があげられる。この方法では、未加硫成形体であるゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを同時に積層できるため、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを密着させる工程が特に必要ではなく、また、後の加硫工程において強固な接着を得るのに好適である。
本発明の積層体は、未加硫のゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との積層体であってもよいが、さらにこの未加硫積層体を加硫することにより、強固な層間接着力が得られる。
すなわち本発明は、本発明の未加硫積層体を加硫処理して得られ、ゴム層(A)が加硫したゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着されている積層体(以下「加硫積層体」ともいう。)にも関する。
加硫処理は、従来公知の加硫用ゴム組成物の加硫方法と条件が採用できる。たとえば、未加硫積層体を長時間加硫する方法、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理を行い(加硫も生じている)、ついで長時間かけて加硫を行う方法がある。これらのうち、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理を行い、ついで長時間かけて加硫を行う方法が、前処理でゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との密着性が容易に得られ、また、前処理で既にゴム層(A)が加硫しており形状が安定化しているので、その後の加硫における積層体の保持方法をさまざまに選択することができるので好適である。
加硫処理の条件は特に制限されるものではなく、通常の条件で行うことができるが、160〜170℃で、10分〜80分、スチーム、プレス、オーブン、エアーバス、赤外線、マイクロウェーブ、被鉛加硫等を用いて処理を行うことが好ましい。より好ましくは、160℃で、20〜45分かけて行う。
得られる加硫積層体では加硫ゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着しており、強固な層間接着力が生じている。
本発明の積層体(未加硫積層体及び加硫積層体)は、ゴム層(A、A1。以下、ゴム層(A)を代表とする)とフッ素樹脂層(B)の2層構造でもよいし、(A)−(B)−(A)又は(B)−(A)−(B)といった3層構造でもよい。さらに、ゴム層(A)及びフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が接着された3層以上の多層構造であってもよく、(A)−(B)−(C)の3層構造であることも好ましい形態の一つである。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層され、かつ他方にゴム層(A)及びフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよいし、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層され、さらにその両側もしくは片側にフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよい。
ポリマー層(C)としては、ゴム層(A)以外のゴム層(C1)でもよい。また、(A)−(B)−(A)の(A)層の外側の片側もしくは両側に(C)層を有してもよい。
ゴム層(C1)の材料としては、アクリルゴム以外のゴムがあげられ、フッ素ゴムでも非フッ素ゴムでもよい。耐燃料性や燃料バリア性の観点からはフッ素ゴムが好ましく、耐寒性が良好な点や、コスト面で優れていることからは、非フッ素ゴムが好ましい。
非フッ素ゴムの具体例としては、たとえばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)又はその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム等があげられる。
非フッ素ゴムとしては、耐熱性、耐油性、耐候性、押出成形性が良好な点から、ジエン系のゴムであることが好ましい。より好ましくは、NBR又はHNBRである。ポリマー層(C)は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素化物からなることが好ましい。
なお、ゴム層(C1)を形成する未加硫ゴム組成物中にも、加硫剤や、その他の配合剤を配合してもよい。
つぎに本発明の積層体の層構造について説明する。
(1)ゴム層(A)−フッ素樹脂層(B)の2層構造
基本構造であり、上述したとおり、従来、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)を積層させるには、層間(フッ素樹脂層−ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したり等と工程が複雑になりがちであったが、そのような複雑な工程を組まずに、加硫することにより加硫接着が起こり化学的に強固な接着が得られる。
(2)ゴム層−フッ素樹脂層(B)−ゴム層の3層構造
(A)−(B)−(A)及び(A)−(B)−(C1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管等の接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
(A)−(B)−(C1)の3層構造としては、ゴム層(C1)として、NBR又はHNBRからなる層であることが好ましい。
また、燃料配管を(A)−(B)−(C1)型構造とし、ゴム層(C1)としてフッ素ゴム層を設け、ゴム層(C1)を配管の内層にすることにより、耐薬品性、燃料低透過性が向上する。
(3)樹脂層−ゴム層(A)−樹脂層の3層構造
(B)−(A)−(B)の3層構造で、内外層の樹脂層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
(4)フッ素樹脂層(B)−ゴム層(A)−ゴム層(C1)の3層構造
(5)4層構造以上
(2)〜(4)の3層構造に加えて、さらに任意のゴム層(A)又は(C1)、樹脂層(B)を目的に応じて積層してもよい。また、金属箔等の層を設けてもよいし、ゴム層(C)とフッ素樹脂層(B)との層間以外には接着剤層を介在させてもよい。
またさらに、ポリマー層(C)と積層してライニング体とすることもできる。
なお、各層の厚さ、形状等は、使用目的、使用形態等によって適宜選定すればよい。
また、耐圧向上の目的で、補強糸等の補強層を適宜設けてもよい。
本発明の積層体、特に加硫積層体は、燃料低透過性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性、耐侯性、耐オゾン性に優れており、また、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系等、駆動系のトランスミッション系等、シャーシのステアリング系、ブレーキ系等、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型及び接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等)等のシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線等として好適な特性を備えている。
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケット等のガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケット等のシール、コントロールホース等のホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材等。
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシール等のシャフトシール等。
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシール等。
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケット等や、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホース等。
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブ等、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース等の燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウント等、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リング等、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類等、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホース等、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラム等。中でも、燃料ホース及び燃料タンクのインタンクホースとして好適である。
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキン等、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホース等、BPTのダイヤフラム等、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート等、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシール等。
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホース等、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類等。
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホース等。
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホース等、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラム等、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)等、キャリパーシール、ブーツ類等。
基本電装品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシース等、ハーネス外装部品のチューブ等。
制御系電装品の、各種センサー線の被覆材料等。
装備電装品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレード等。
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機等の輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器及び食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、OA機器、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレード等への用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片等が食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
これらの中でも、特に上記積層体は、チューブ又はホースとして好適に用いられる。すなわち、上記積層体は、チューブ又はホースでもあることが好ましい。チューブの中でも、耐熱性、燃料低透過性の点で自動車用の燃料配管チューブ又はホースとして好適に利用できる。
本発明における前記積層体からなる燃料配管は通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例において使用するフッ素樹脂及びその測定方法について記載する。
(1)融点
セイコー型DSC装置を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
(2)MFR(Melt Flow Rate)
メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、297℃、5kg加重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
(3)単層の燃料透過係数の測定
フッ素樹脂(1)の樹脂ペレットを、それぞれ、直径120mmの金型に入れ、300℃に加熱したプレス機にセットし、約2.9MPaの圧力で溶融プレスして、厚さ0.15mmのシートを得た。CE10(イソオクタンとトルエンとの容量比50:50の混合物にエタノール10容量%を混合した燃料)を18mL投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の透過係数測定用カップに得られたシートを入れ、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積及びシートの厚さから燃料透過係数(g・mm/m2/day)を算出した。
以下、実施例及び比較例中のフッ素樹脂は、下記表1に示すものである。
(加硫用ゴム組成物1〜13)
下記表2に示す材料を、40℃に温調した8インチオープンロールを用いて混練することにより、約3mm厚みのシート状の加硫用ゴム組成物1〜13を得た。なお、表2の配合量を示す各数値は質量部を表す。
また、加硫用ゴム組成物1〜13に対して、キュラストメーターII型(型番:JSRキュラストメーター、JSR社製)を用いて、160℃にて最大トルク値(MH)と最小トルク値(ML)を測定し、誘導時間(T10)及び最適加硫時間(T90)を求めた。測定結果を表2に示す。なお、T90は、{(MH)−(ML)}×0.9+ML、T10は、{(MH)−(ML)}×0.1+MLとなる時間であり、MH及びMLは、JIS K 6300−2に準じて測定した値である。
(実施例1〜11、比較例1〜2)
厚さ約3mmの表2に示す加硫用ゴム組成物のシートと、表1に示す厚みのフッ素樹脂シートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10〜15mmの樹脂フィルム(厚さ10μmの離形フィルム)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み2mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、170℃で15分間プレスすることにより、シート状の積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、離形フィルムを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(架橋ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
(接着評価)
○…積層体の界面でゴム層あるいはフッ素樹脂層が材料破壊し、界面で剥離するのが不可能であった。
×…積層体の界面で比較的容易に剥離した。
表2中に示す材料は以下の通りである。
ニポールAR31:アクリルゴム(ACM)、日本ゼオン社製
ステアリン酸50S:ステアリン酸、新日本理化社製
シーストSO:カーボンブラック(FEFブラック)、東海カーボン社製
ノクセラーPZ:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製
ノクセラーTTFE:ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、大内新興化学工業社製
ノクセラーBZ:ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製
ノクセラーTTCU:ジメチルジチオカルバミン酸銅、大内新興化学工業社製
ノクセラーTTTE:ジエチルジチオカルバミン酸テルル、大内新興化学工業社製
ノクセラーPX:N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製
キョーワマグ♯150:MgO、協和化学社製
カープレックス1120:塩基性シリカ、DSLジャパン社製
DBU−B:DBUベンジルクロライド塩、和光純薬工業社製
スコノック7:無水フタル酸、大内新興化学工業社製