JP5938949B2 - 調質圧延装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板の湿式調質圧延や2回圧延などに代表される、圧延剤をワークロールや鋼板に供給しながら軽圧下の圧延を行う、湿式の調質圧延装置に関する。
鋼板に硬度等の所定の性能および表面状態を形成するために行う軽度の圧延、いわゆる調質圧延としては、圧延剤(調圧剤/圧延油)を用いる湿式の調質圧延(ウエット式調質圧延)と、圧延剤を使用しないで圧延を行う乾式の調質圧延(ドライ式調質圧延)との2種類が有る。
周知のように、調質圧延や、ぶりき原板を製造するために20%程度の圧下率を付与する2回圧延法など、40%以下程度の軽圧下圧延で湿式の圧延を行う場合(以下、総称して『湿式の調質圧延』とも言う)には、圧延を行うワークロールの入り側において、ワークロールおよび/または鋼板に、潤滑機能を有する圧延剤を供給して、圧延を行う。
湿式の調質圧延では、圧延剤を用いることで、乾式の調質圧延と比較して大きな伸び率を得ることができ、圧延剤を供給して、所定の伸び、圧下率などを付与して、所望の鋼板を製造している。
このような湿式の調質圧延は、乾式の調質圧延に比して大きな伸び率が得られる事に加え、圧延剤でロールを洗浄することで、異物がロール表面に着くことで発生する押し込み疵などを防止することができるため、広く利用されている。
しかしながら、その反面、湿式の調質圧延では、特許文献1等に示されるように、圧延剤を用いることで、圧延機内部では圧延剤が飛散し、圧延後の鋼板に滴下し、汚れとして鋼板の表面品質の低下や、表面欠陥検出装置での誤認識を生じさせることがある。
また、2回圧延の場合、滴下した圧延剤が後段のワークロールで圧延されて、オイルピットムラとなり、鋼板の表面品質を著しく低下させ、歩留の低下を招いていた。
このような調質圧延を施された鋼板の表面欠陥の1つとして、モトリングが知られている。モトリングとは、鋼板の表面に現れる楕円状や長円状の模様の欠陥である。
ここで、特許文献2には、鋼板の下面に発生するモトリングの一因として、鋼板の下面に付着した圧延剤が滴下して、下側バックアップロールに付着し、この圧延剤が下側バックアップロールから下側ワークロールに転写され、さらに鋼板の下面に転写されて、モトリングとなることが記載されている。
これに対して、特許文献2では、下側バックアップロールに洗浄水を噴射して、下側のバックアップロールに付着した余剰の圧延剤を除去することにより、モトリングの発生を抑制することを提案している。
さらに、特許文献2では、この洗浄水による下側バックアップロールの冷却がワークロールに重畳されて、ワークロールが過冷却となることを防止するために、洗浄水を温度制御することも、提案している。特許文献2では、この下側バックアップロールの洗浄水の温度制御により、モトリングの発生を抑制しつつ、ワークロールの過冷却に起因するチャタリング現象や耳波現象(鋼板端部が長手方向に波打つ現象)の発生も抑制している。
特開平7−290123号公報 特開2006−75895号公報
特許文献2で提案されている方法によれば、鋼板下面のモトリングの発生を抑制し、さらに、洗浄水によるワークロールの過冷却に起因するチャタリング現象や耳波現象の発生も、抑制できる。
しかしながら、下側バックアップロールの洗浄だけで、鋼板の下面に生じるモトリングを十分に抑制するためには、非常に多くの洗浄水が必要になる。
しかも、前述のように、下側バックアップロールの洗浄によるワークロールの過冷却を防止するためには、下側バックアップロールを洗浄する洗浄水の温度制御が必要になる。そのため、実施に当たっては、多量の洗浄水の温度制御のための設備の追加が必要になり、さらに、この多量の洗浄水の温度制御のためにランニングコストが増大するという難点も有る。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、大掛かりな設備を必要とせず、簡易な構成で、鋼板の下面に生じるモトリングを抑制でき、さらに、モトリングの抑制等を目的として、洗浄水で下側ワークロールを洗浄する場合でも、必要な洗浄水の量を低減できる調質圧延装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の調質圧延装置は、ワークロールおよび鋼板の少なくとも一方に圧延剤を供給しつつ、一対のワークロール間に鋼板を通して鋼板の調質圧延を行う調質圧延装置であって、前記ワークロールに接触して圧延を補助する、個々のワークロールに対応して設けられるバックアップロールと、前記鋼板の入り側において、下側のバックアップロールの上部を覆う飛散防止カバーとを有し、かつ、前記鋼板の搬送方向において、前記飛散防止カバーの下流側端部が、下側の前記ワークロールの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、下流側に位置することを特徴とする、調質圧延装置を提供する。
このような本発明の調質圧延装置において、前記飛散防止カバーが、前記鋼板の幅方向において、前記下側のバックアップロールの全域を覆うのが好ましい。
また、前記飛散防止カバーが、前記下側のバックアップロールの周面に応じて屈折あるいは湾曲する板状であるのが好ましい。
また、前記鋼板の搬送方向において、前記飛散防止カバーの上流側端部が、前記下側のバックアップロールの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、上流側に位置するのが好ましい。
さらに、洗浄液によって下側の前記バックアップロールを洗浄する洗浄装置を有するのが好ましい。
本発明の調質圧延装置によれば、湿式の調質圧延装置において、鋼板の入り側に、下側バックアップロールの上部を覆う飛散防止カバーを設けたので、下側ワークロールから飛散した圧延剤が、下側バックアップロールに付着することを防止できる。
そのため、本発明によれば、下側バックアップロールに付着する余剰の圧延剤の量を低減して、この圧延剤に起因して鋼板の下面に発生するモトリングを、抑制できる。また、下側バックアップロールに付着する圧延剤の量も抑制できるので、下側バックアップロールの洗浄を行う際にも、必要な洗浄水の量を低減でき、洗浄水の温度制御を行う際にも、そのコストを低減できる。
従って、本発明によれば、湿式の調質圧延を含む鋼板の製造において、鋼板下面のモトリングに起因する品質不良による歩留り低下を抑制し、さらに、品質不良製品を修復する救済工程にかかるコストも低減でき、かつ、下側バックアップロールの洗浄を行う際におけるランニングコストも低減できる。
しかも、本発明は、下側バックアップロールを覆う飛散防止カバーを設けただけの簡易かつ安価な構成で、このような優れた効果を実現できる。
本発明の調質圧延装置の一例を概念的に示す図であって、(A)はワークロールの回転軸方向から見た図、(B)はワークロールの入り側から見た図である。 図1(A)の部分拡大図である。
以下、本発明の調質圧延装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明の調質圧延装置の一例を、概念的に示す。
なお、図1において、(A)は、この調質圧延装置をワークロールの回転軸方向から見た概念図であり、(B)は、この調質圧延装置をワークロールの入り側(鋼板搬送方向の上流側)から見た概念図である。
図1に示す調質圧延装置10は、鋼板Sの湿式調質圧延を行う装置であって、上側ワークロール12aおよび下側ワークロール12bと、上側バックアップロール14aおよび下側バックアップロール14bと、圧延剤供給装置16aおよび16bと、洗浄装置18aおよび18bと、コブルガード20と、本発明の特徴的な部材である飛散防止カバー24とを有して構成される。
なお、図1(B)においては、図面を簡略化して、本発明の調質圧延装置10の構造を明確に示すために、圧延剤供給装置16aおよび16b、洗浄装置18aおよび18b、ならびに、コブルガード20は、省略している。
また、本発明の調質圧延装置は、鋼板Sの湿式調質圧延以外にも、40%程度以下の軽圧下で行う冷間圧延、例えば、ブリキ原板製造のための20%程度の圧下率を付与する2回圧延の内の1回などを行う装置であってもよい。
なお、図1に示す調質圧延装置10において、鋼板Sの搬送方向は、図1(A)中に矢印xで示す方向である。すなわち、上側ワークロール12aおよび下側ワークロール12bの入り側から見た図1(B)では、鋼板Sの搬送方向は、紙面の手前側から奥手側に向かう方向である。
調質圧延装置10は、本発明の特徴部分である飛散防止カバー24を有する以外は、基本的に、公知の湿式の調質圧延装置と同様のものである。
従って、上側ワークロール12aおよび下側ワークロール12bは、鋼板および/または自身に圧延剤を供給された状態で、鋼板Sを挟持搬送することで調質圧延する、湿式の調質圧延装置に用いられる公知のワークロール(圧延ロール)である。
また、通常の調質圧延装置と同様、図示例の調質圧延装置10においても、ワークロールに接触(押圧)して、ワークロールと平行な回転軸で回転し、ワークロールを支えて圧延を補助する、バックアップロールが設けられる。
図示例においては、上側ワークロール12aには、上側バックアップロール14aが、下側ワークロール12bには、下側バックアップロール14bが、それぞれ、設けられている。
圧延剤供給装置16aは、圧延剤(調圧剤/圧延油/調質圧延液)を、鋼板Sの上面および/または上側ワークロール12aに供給するものである。他方、圧延剤供給装置16bは、同じく圧延剤を、鋼板Sの下面および/または下側ワークロール12bに供給するものである。
洗浄装置18aは、バックアップロール14aに温水等の洗浄液を噴射して、バックアップロール14aに付着した圧延剤や異物の除去等、バックアップロール14aの洗浄を行うものである。洗浄装置18bも、同様に、バックアップロール14bに温水等の洗浄液を噴射して、バックアップロール14bの洗浄を行うものである。
調質圧延装置10において、これらの圧延剤供給装置および洗浄装置も、調質圧延装置に用いられる公知のものである。
なお、洗浄液は、バックアップロールの冷却液すなわちワークロールの冷却液(温度調節手段)を兼ねてもよい。さらに、前述の特許文献2に示されるように、洗浄装置18bあるいはさらに洗浄装置18aは、対応するバックアップロールに噴射する洗浄液の温度調節手段を有していてもよい。
コブルガード20は、圧延中に鋼板Sが破断した場合に、鋼板Sがワークロールに巻き付くのを防止するためのものであり、上述の各部材と同様に、調質圧延装置に用いられる公知のものである。
なお、コブルガード20は、上側バックアップロール14aの洗浄液が、圧延後の鋼板Sや上側ワークロール12aに付着することを防止する機能を有してもよい。
飛散防止カバー24は、本発明の特徴的な部材である。
図2に、図1の鋼板Sの下側の拡大図を示す。なお、図2においては、本発明の調質圧延装置の構成を明確に示すために、両圧延剤供給装置、洗浄装置18bおよびコブルガード20は、省略している。
飛散防止カバー24は、調質圧延装置10において、鋼板Sの入り側(圧延位置よりも、鋼板Sの搬送方向の上流側)において、下側バックアップロール14bに対面して、下側バックアップロール14bの上(少なくとも上部)を覆って配置される、鋼板製の板状部材である。
図示例においては、飛散防止カバー24は、鋼板を2箇所で屈折して、下側バックアップロール14bの周面に対応する形状に加工されている。
図2に概念的に示すように、飛散防止カバー24は、矢印xで示す鋼板Sの搬送方向の下流側(以下、この方向を『下流』、逆方向を『上流』とする)の端部24aが、図中に破線aで示す、下側ワークロール12aの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、下流側に位置している。
また、図1(B)に示すように、飛散防止カバー24は、鋼板Sの幅方向(以下、単に『幅方向』とも言う)のサイズが、下側バックアップロール14bよりも長尺であり、下側バックアップロール14bを、幅方向の全域で覆う。
本発明の調質圧延装置10は、このような飛散防止カバー24を有することにより、調質圧延された鋼板Sの下面でのモトリングの発生を、大幅に抑制することができる。
前述のように、湿式の調質圧延を施された鋼板の表面欠陥の1つとして、モトリングが知られている。
また、特許文献2に示されるように、鋼板の下面にモトリングが発生する要因の1つとして、圧延された鋼板から滴下して、下側バックアップロールに付着する圧延剤が知られている。すなわち、下側バックアップロールに滴下した圧延剤が、下側バックアップロールから下側ワークロールに転写され、此処から、鋼板の下面に転写/押圧されることにより、鋼板下面にモトリングが発生する。
この鋼板の下面のモトリング発生を抑制するために、特許文献2では、前述のように、下側バックアップロールを洗浄水で洗浄すること、および、チャタリング等の原因となるワークロールの過冷却を防止するために、下側バックアップロールの洗浄水を温度調節することを提案している。
ここで、下側バックアップロール14bに付着する圧延剤は、特許文献2に示される、圧延後の鋼板Sの下面から滴下した圧延剤のみではない。すなわち、本発明者の検討によれば、図2に示すように、下側ワークロール12bに付着した余剰の圧延剤も、下側ワークロール12bの遠心力等によって、下側ワークロール12bから剥がれて飛散し、液滴Dとなって落下して、下側バックアップロール14bに付着し、下側ワークロール12b〜鋼板S下面に転写されて、鋼板Sの下面のモトリングの原因となる。
そのため、鋼板の下面から滴下した圧延剤や下側ワークロール12bから飛散して滴下した圧延剤など、下側バックアップロール14bに付着した余剰な圧延剤を十分に除去するためには、多量の洗浄水が必要になる。また、下側ワークロール12bの過冷却を防止するために、洗浄水の温度制御を行う際には、多量の洗浄水に対応する性能を有する高コストの装置が必要になり、さらに、多量の洗浄水の温度制御によってランニングコストも高くなる。
これに対し、本発明の調質圧延装置10は、鋼板Sの入り側において、下側バックアップロール14bに対面して上部を覆う飛散防止カバー24を有する。
そのため、遠心力等によって下側ワークロール12bから剥がれて飛散した圧延剤の液滴Dは、下側バックアップロール14bに向けて落下しても、図2に示すように、飛散防止カバー24に付着する。従って、下側ワークロール12bから剥がれて飛散した圧延剤の液滴Dが、下側バックアップロール14bに付着するのを防止できる。
すなわち、本発明によれば、鋼板Sの下面に発生するモトリングの原因となる、下側バックアップロール14bに付着する圧延剤の液滴量を低減して、鋼板Sの下面でのモトリング発生を抑制できる。
また、下側バックアップロール14bに付着する圧延剤の液滴を低減できるので、下側バックアップロール14bの洗浄を行う場合でも、洗浄水の使用量を抑制できる。加えて、下側バックアップロール14bの洗浄水の量を抑制できるので、洗浄水の温度制御を行う際にも、温度調整装置のコストおよび下側バックアップロール14bの洗浄にかかるランニングコストを、低減することができる。言い換えれば、本発明によれば、下側バックアップロール14bの洗浄に起因する圧延の不安定化を抑制することができる。
しかも、本発明によれば、このような優れた効果を、下側バックアップロール14bの上を覆う飛散防止カバー24を設けただけの、簡易かつ安価な構成で、実現できる。
本発明において、飛散防止カバー24の形成材料は、図示例の鋼板に限定はされず、貫通孔を有さず、かつ、圧延剤が通過しない材料であれば、各種の物が利用可能である。
一例として、図示例の鋼板を始め、各種の金属材料製の板材、セラミックス製の板材、プラスチック製の板材等が例示される。
飛散防止カバー24の形状にも、特に限定はないが、下側バックアップロール14bに圧延剤の液滴が滴らないような形状が必要である。
本発明において、飛散防止カバー24の下流側の端部24aは、図2中に破線aで示す、下側ワークロール12aの上流側端部に接する鉛直方向の線(以下、単に『破線a』とも言う)よりも、下流側に位置する。
飛散防止カバー24の下流側の端部24aが、破線aよりも上流側に位置すると、下側ワークロール12bから飛散した圧延剤の液滴Dが、下側バックアップロール14bに付着することを、十分に防止することができない。
ここで、圧延剤は、下側ワークロール12bの上流側部分にかけられ、余分な圧延剤が下側ワークロール12bの上流側部分から下に滴る。そのため、この飛散防止カバー24の下流側の端部24aは、下側ワークロール12bと下側バックアップロール14bとの接点に近いほど、良好にバックアップロール14bへの圧延剤の付着を防止できる。
しかしながら、その反面、飛散防止カバー24の下流側の端部24aは、下側ワークロール12bと下側バックアップロール14bとの接点に近いほど、飛散防止カバー24と、下側ワークロール12bおよび下側バックアップロール14bとが接触して、ロールを損傷する危険性が高くなる。
従って、調質圧延装置10においては、装置構成やライン速度(鋼板Sの搬送速度)等に応じて、飛散防止カバー24が、下側ワークロール12bおよび下側バックアップロール14bに接触しない範囲で、下流側の端部24aが、最大限、下側ワークロール12bと下側バックアップロール14bとの接点に近くなるように、飛散防止カバー24を配置するのが好ましい。本発明者の検討によれば、下側ワークロール12bと下側バックアップロール14bとの接点と、飛散防止カバー24の下流側の端部24aとの距離は、200mm以下とするのが好ましい。
図示例においては、好ましい態様として、飛散防止カバー24の上流側の端部24bが、図2中に破線bで示す、バックアップロール14bの上流側端部に接する鉛直方向の線(以下、単に『破線b』とも言う)よりも、上流側に位置する。
飛散防止カバー24の上流側の端部24bが、破線bより上流側に位置することにより、下側ワークロール12bから飛散した圧延剤の液滴Dが、下側バックアップロール14bに付着することを、より、確実に防止することができる。
図示例において、飛散防止カバー24は、好ましい態様として、幅方向のサイズが、下側バックアップロール14bよりも長尺で、かつ、幅方向に、下側バックアップロール14bの全域を覆うように配置される。
このような構成を有することにより、下側バックアップロール14bの幅方向全域に対して、下側ワークロール12bから飛散した圧延剤の液滴Dが、下側バックアップロール14bに付着することを、防止できる。
しかしながら、本発明は、このように、飛散防止カバー24が、下側バックアップロール14bの幅方向の全域を覆う構成に限定はされない。
例えば、調質圧延装置10の構成や飛散防止カバー24の剛性等に応じて、飛散防止カバー24の幅方向のサイズが、下側バックアップロール14bよりも小さく(短尺で)、下側バックアップロール14bの端部近傍に、飛散防止カバー24に覆われていない領域が存在してもよい。
図示例の調質圧延装置10においては、好ましい態様として、飛散防止カバー24は、板状で、下側バックアップロール14bの周面に応じて屈折することにより、下側バックアップロール14bとの対面領域に応じた形状を有する。あるいは、屈折ではなく、板材を下側バックアップロール14bの周面に応じて湾曲させることにより、飛散防止カバー24を、下側バックアップロール14bとの対面領域に応じた形状としてもよい。
このような構成を有することにより、飛散防止カバー24を、対面する下側バックアップロール14bに近接して配置して、調質圧延装置10内における飛散防止カバー24の占有スペースを小さくできる。
また、調質圧延装置10内のスペースを考慮すると、飛散防止カバー24は、下側バックアップロール14bに接触しない、可能な範囲で、下側バックアップロール14bに近接して配置するのが好ましい。本発明者の検討によれば、飛散防止カバー24と、下側バックアップロール14bとの距離は、30mm以下とするのが好ましい。
本発明の調質圧延装置10において、飛散防止カバー24の設置方法には、特に限定はなく、不要に移動することなく板状物(ブロック状物)を固定できる公知の設置方法が、各種、利用可能である。
一例として、下側バックアップロール14bのチョック(回転軸を軸支する部材)を利用して、チョックに公知の板状物の固定部材を取付け、この固定部材に、飛散防止カバー24を固定する方法が、例示される。
このような本発明の調質圧延装置10は、使用する圧延剤、圧延条件や設備等が同じであれば、基本的に、調質圧延のライン速度が早い方が、好適に、鋼板S下面でのモトリング発生の抑制効果が得られる。
一例として、飛散防止カバー24を設けた図示例のような調質圧延装置10において、直径520mmのワークロールおよび直径1300mmのバックアップロールを用い、圧延剤として一般的な圧延油を用いて、厚さ0.16mmのブリキ原板を圧下率20%で調質圧延した際には、ライン速度650mpm以上で、良好なモトリングの抑制効果を得ることができた。
以上、本発明の調質圧延装置について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
各種の圧延鋼板やブリキ原板の製造ライン等に、好適に利用可能である。
10 調質圧延装置
12a 上側ワークロール
12b 下側ワークロール
14a 上側バックアップロール
14b 下側バックアップロール
16a,16b 圧延剤供給装置
18a,18b 洗浄装置
20 コブルガード
24 飛散防止カバー

Claims (5)

  1. ワークロールおよび鋼板の少なくとも一方に圧延剤を供給しつつ、一対のワークロール間に鋼板を通して鋼板の調質圧延を行う調質圧延装置であって、
    前記ワークロールに接触して圧延を補助する、個々のワークロールに対応して設けられるバックアップロールと、前記鋼板の入り側において、下側のバックアップロールの周面に沿って下側の前記バックアップロールの上部を覆う飛散防止カバーとを有し、
    かつ、前記鋼板の搬送方向において、前記飛散防止カバーの下流側端部が、下側の前記ワークロールの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、下流側に位置することを特徴とする調質圧延装置。
  2. ワークロールおよび鋼板の少なくとも一方に圧延剤を供給しつつ、一対のワークロール間に鋼板を通して鋼板の調質圧延を行う調質圧延装置であって、
    前記ワークロールに接触して圧延を補助する、個々のワークロールに対応して設けられるバックアップロールと、前記鋼板の入り側において、下側のバックアップロールの上部を覆う飛散防止カバーとを有し、
    かつ、前記鋼板の搬送方向において、前記飛散防止カバーの下流側端部が、下側の前記ワークロールの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、下流側に位置し、
    前記飛散防止カバーが、前記下側のバックアップロールの周面に応じて屈折あるいは湾曲する板状であることを特徴とする調質圧延装置。
  3. 前記飛散防止カバーが、前記鋼板の幅方向において、前記下側のバックアップロールの全域を覆う請求項1または2に記載の調質圧延装置。
  4. 前記鋼板の搬送方向において、
    前記飛散防止カバーの下流側端部が、下側の前記バックアップロールと下側の前記ワークロールの間であって、それらの両者の接点近傍に位置し、
    前記飛散防止カバーの上流側端部が、前記下側のバックアップロールの上流側端部に接する鉛直方向の線よりも、上流側に位置する請求項1〜3のいずれかに記載の調質圧延装置。
  5. 洗浄液によって下側の前記バックアップロールを洗浄する洗浄装置を有する請求項1〜4のいずれかに記載の調質圧延装置。
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