JP5938759B2 - 電子デバイス用バリアフィルムとその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子デバイス用バリアフィルムとその製造方法に関する。
電子デバイス用のフレキシブル基板として、デバイス外部から浸入した酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制する性能であるバリア性能を有するバリア層を樹脂フィルム上に形成したバリアフィルムが用いられている。これらのバリアフィルムは、従来、主に食品等の包装に用いられていたが、近年では、電子デバイスに用いられるようになり、バリア性能の飛躍的な向上が求められている。例えば、フレキシブルディスプレイに好適と言われている、全固体型の発光素子である有機発光ダイオード(OLED)の場合に必要とされるバリア性能は、透湿率(WVTR)で、10−6(g/m/day)と一般に言われている。
このような状況で、OLED等に適用可能な高い性能を満たすためのバリアフィルムが各社から提案されている。例えば、米国バイテックス(Vitex)社のサイト(「http://www.vitexsys.com/barix_how_made.html」を参照)には、バイテックス社が開発した、樹脂層とアルミナ層の交互積層構造を有するバリア層が開示されている。バイテックス社によれば、このバリア層はOLEDに適用可能な高い性能を有するとしている。また、2008年2月20日の三菱樹脂株式会社の新聞発表(「http://www.mpi.co.jp/info/360/index.html」を参照)によれば、WVTRが0.05(g/m/day)のバリアフィルムが上市されている。
これら2つの技術を始め、多くの高性能バリアフィルムは、真空プロセスを用いて作製されている。真空プロセスを伴う場合、巨大な真空チャンバが必要となるため、設備投資額が大きく、また、真空装置の維持に過大なランニングコストが必要となり、製造コストが高くなってしまう。また、一般に、真空プロセスによるバリア層の成膜法は、膜のステップカバレッジが悪いため、フィルム基板上の異物が原因でピンホール等の欠陥が生じやすい、という問題があった。
一方、湿式プロセスによる成膜法は、上記真空プロセスの問題を回避でき、低コストでピンホール等の欠陥の少ない膜(バリア層)を樹脂フィルム上に形成することができる。湿式プロセスでバリア性の高い金属酸化物の膜を形成する方法としては、ゾル−ゲル法等がある。また、ガス透過性がほとんどない粘土の粒子を用いてバリア層を形成するのも効果的である。これらの手法を用いた湿式プロセスによるバリア層の形成技術として、例えば、特許文献1〜3に記載された技術がある。
特許文献1には、粘土からなる自立フィルム上に、ゾル−ゲル法等を用いて無機層を形成したバリアフィルムが開示されている。
また、特許文献2には、ゾル−ゲル材料と粘土粒子との混合物からなるバリア層が開示されている。
さらに、特許文献3には、粘度粒子と樹脂とを交互吸着法によって積層したバリア層が開示されている。
特開2007−22075号公報 特開2003−41153号公報 米国特許出願公開第2002−0417316号明細書
Journal of Membrane Science, 38 (1988) 161−174
しかし、特許文献1の技術では、粘土フィルムを粘度の分散液を静置して形成しているが、このような方法で形成された粘土フィルムは、他の膜との密着性が低い。また、粘土フィルム中の粘土粒子同士の結合も非常に弱く、例えば、水分が無機層を通って粘土層中に浸入すると、容易に粘土粒子間に水分子が入り込み、粘土層が膨潤し、バリア性能が著しく低下する。この問題を解決するためには、無機層の透湿率を低くすることが有効であるが、そのためには無機層を高温で焼成する必要がある。この焼成の際、一般に、焼成温度を100〜500℃とすることが必要であり、バリア層の形成工程が複雑になる、という問題があった。
また、特許文献2の技術では、粘土粒子を高濃度に分散させることが、バリア性能を高める上で重要である。粘土のような層状化合物をバリア層中に分散させた場合、どの程度バリア性能を高めることができるかについては、非特許文献1で試算されている。非特許文献1の計算方法によれば、例えば、1μmの直径で1nmの厚みを有する粘土粒子を用いた場合、混合するゾルl−ゲル材料のWVTRを3桁以上下げるためには、約20体積%の粘土をゾル−ゲル膜中に分散させる必要がある。一般に、粘土のような非常に扁平な形状である粒子を分散した溶液はチキソトロピー性を示し、静置時の粘度が非常に高くなる。20体積%もの粘土を溶液中に分散させるのは、このような粘度の高さのため、事実上は困難である。仮に、分散できたとしても、溶液の粘度が高いため、膜状に塗布するのは非常に困難である、という問題があった。
さらに、特許文献3の技術では、樹脂フィルム上に直接、粘土粒子と樹脂とを交互吸着法を用いて積層している。一般に、樹脂フィルム表面を均一かつ高密度に帯電処理するのは困難である。そのため、特に、積層数が少ない段階では、粘土粒子や樹脂を高密度に吸着することができない。このため、高いバリア性能を発揮するためには、積層数を大幅に多くする必要があり、工程が複雑になる、という問題があった。また、特許文献3の技術では、交互吸着された積層構造と、樹脂フィルムとの密着性が低い。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルム上にバリア層が形成された電子デバイス用バリアフィルムにおいて、従来よりも高いバリア性能を有し、層間の密着力に優れ、且つ、樹脂フィルム上の異物による欠陥を低減できる膜を得るとともに、このような膜を簡易な工程で形成可能とすることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、正電荷又は負電荷に帯電可能な無機板状粒子からなる板状粒子層と、無機板状粒子と反対の電荷に帯電可能なバインダ粒子からなるバインダ層と、を吸着法により交互に積層した交互積層膜を樹脂フィルム上に形成するとともに、交互積層膜と樹脂フィルムとの間に、表面に水酸基を多く有する無機系の吸着層を形成することにより、従来よりも高いバリア性能を有し、層間の密着力に優れ、且つ、樹脂フィルム上の異物による欠陥を低減できる膜が得られ、さらには、この膜を簡易な工程で形成できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のある観点によれば、樹脂フィルムと、正電荷又は負電荷に帯電可能で、且つ、前記樹脂フィルムの表面よりも親水性の高い無機系材料からなる吸着層と、正電荷又は負電荷に帯電可能な無機板状粒子からなる少なくとも1層の板状粒子層と、前記無機板状粒子と反対の電荷に帯電可能なバインダ粒子からなる少なくとも1層のバインダ層と、が交互に積層された交互積層膜と、が順次積層され、前記無機系材料は、前記無機板状粒子又は前記バインダ粒子と反対の電荷に帯電可能である、電子デバイス用バリアフィルムが提供される。
ここで、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記無機系材料が、金属、金属化合物、又は、前記金属若しくは前記金属化合物に有機物を複合させた材料であることが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記吸着層が、前記無機系材料として少なくとも金属酸化物を含むことが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記金属酸化物が、シリカまたはアルミナであることが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記吸着層の膜厚が、0.1μm以上であることが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記交互積層膜の膜厚が、50nm以下であることが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記交互積層膜に含まれる前記無機板状粒子の体積分率が、50%以上であることが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムにおいて、前記無機板状粒子が、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物及び層状複水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記交互積層膜の上層として、前記交互積層膜よりも表面粗さが小さな平滑化層がさらに積層されていてもよい。
また、本発明の別の観点によれば、樹脂フィルム上に、正電荷又は負電荷に帯電可能な無機系材料からなる吸着層を形成する工程と、前記吸着層の表面を正電荷又は負電荷に帯電させる工程と、前記吸着層上に、前記無機系材料と反対の電荷に帯電可能な無機板状粒子からなる少なくとも1層の板状粒子層と、前記無機板状粒子と反対の電荷に帯電可能なバインダ粒子からなる少なくとも1層のバインダ層と、を吸着法により交互に積層し、交互積層膜を形成する工程と、を含む、電子デバイス用バリアフィルムの製造方法が提供される。
ここで、前記電子デバイス用バリアフィルムの製造方法において、前記吸着層を塗布法により形成することが好ましい。
また、前記電子デバイス用バリアフィルムの製造方法において、前記吸着層として、シリコンアルコキシド化合物又はシラザン化合物を用いて、シリカ膜又はシリカ−有機複合膜を形成することが好ましい。
本発明によれば、樹脂フィルム上にバリア層が形成された電子デバイス用バリアフィルムにおいて、正電荷又は負電荷に帯電可能な無機板状粒子からなる板状粒子層と、無機板状粒子と反対の電荷に帯電可能なバインダ粒子からなるバインダ層と、を吸着法により交互に積層した交互積層膜を樹脂フィルム上に形成するとともに、交互積層膜と樹脂フィルムとの間に、表面に水酸基を多く有する無機系の吸着層を形成することにより、従来よりも高いバリア性能を有し、層間の密着力に優れ、且つ、樹脂フィルム上の異物による欠陥を低減できる膜を得ることができるとともに、このような膜を簡易な工程で形成することが可能となる。
本発明の好適な実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの構成を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 同実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルムの製造方法の各工程の一例を示す説明図である。 実施例2、5及び、比較例1で作製したサンプルをAFMで観察した結果を示す画像である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(電子デバイス用バリアフィルム100の構成)
まず、図1を参照しながら、本発明の好適な実施形態に係る電子デバイス用バリアフィルム100(以下、単に「バリアフィルム100」と記載する。)の構成について説明する。図1は、本発明の好適な実施形態に係るバリアフィルム100の構成を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係るバリアフィルム100は、FPD(Flat Panel Display)や照明等の発光素子などの基板として用いられるものであって、樹脂フィルム110と、吸着層120と、交互積層膜130とを有する。より詳細には、バリアフィルム100は、樹脂フィルム110上に、吸着層120と交互積層膜130とが順次積層された構造を有している。また、交互積層膜130は、後述する板状粒子層131(131a、131b、131c、131d)とバインダ層133(133a、133b、133c)とが各1層以上ずつ交互に積層された膜である。すなわち、交互積層膜130は、少なくとも1層の板状粒子層131と少なくとも1層のバインダ層133とからなり、板状粒子層131とバインダ層133とが交互に積層された構造を有している。
このように、本実施形態に係るバリアフィルム100では、樹脂フィルム110上に、吸着層120を介して、板状粒子層131とバインダ層133とが各1層以上積層されており、各層は静電気力により密着している。より詳細には、バリアフィルム100では、吸着層120を構成する無機系材料が正又は負(図1の例では正)に帯電し、板状粒子層131を構成する無機板状粒子が無機系材料と反対の電荷(図1の例では負)に帯電し、さらには、バインダ層133を構成するバインダ粒子が無機板状粒子と反対の電荷(図1の例では正)に帯電することにより、各層が強固な密着力で積層されている。また、バリアフィルム100では、必要に応じて、交互積層膜130上に、交互積層膜130よりも表面粗さが小さな表面を有する平滑化層140(図2Fを参照)がさらに積層されていてもよい。以下、樹脂フィルム110、吸着層120、板状粒子層131、バインダ層133及び平滑化層140の構成について詳細に説明する。
<樹脂フィルム110>
樹脂フィルム110は、バリアフィルム100の基材として用いられる樹脂製のフィルムである。この樹脂フィルム100としては、特に限定はされず、既知の樹脂をフィルム状に成形したものを用いることができるが、ここで用いられる樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
<吸着層120>
吸着層120は、正電荷又は負電荷に帯電可能で、且つ、樹脂フィルム110の表面よりも親水性の高い無機系材料からなり、樹脂フィルム110の表面を直接帯電処理するよりも、強力かつ均一に帯電処理を行うために設けられる層である。このような観点から、吸着層120を構成する無機系材料は、交互積層膜130のうち吸着層120と隣接する層の構成成分、すなわち、板状粒子層131を構成する無機板状粒子又はバインダ層133を構成するバインダ粒子と反対の電荷に帯電可能な材料である。
上記無機系材料として使用可能な材料としては、正電荷又は負電荷に帯電可能で、且つ、樹脂フィルム110の表面よりも親水性の高い材料であれば特に限定はされないが、例えば、金属、金属化合物、又は、これらの金属若しくは金属化合物に少量の有機物を複合させた材料が挙げられる。このような無機系材料の具体例としては、Al、Cr、Si、Cu、Ti、Mo、Ta、W、Au等、これら金属の合金、又は、これら金属や合金の化合物が挙げられ、さらには、これら金属(合金を含む。)や金属化合物に、所望の親水性を損なわない程度の有機物が混合された複合材料であってもよい。以上の無機系材料からなる膜の表面は、一般に、大気中で水酸基(−OH基)を有していることから、帯電処理を強力かつ均一に行うことができる。また、バリアフィルム100が表示装置や太陽電池等に用いられる場合には、バリア層に透明性が求められることが多い。従って、バリアフィルム100をこのような用途で用いる場合には、上記無機系材料として、特に透明性に優れるシリカやアルミナ等の金属の酸化物を用いることが好適である。
また、樹脂フィルム110の表面に異物が付着している場合があり、このような場合には、異物の接触による交互積層膜130の欠陥を防止するために、樹脂フィルム110上に交互積層膜130を形成する前に樹脂フィルム110を洗浄し、樹脂フィルム110の表面に付着した異物を除去する必要がある。しかし、樹脂フィルム110の洗浄により、異物を完全に除去することは、困難である。具体的には、概ね0.1μm以下の大きさの異物を除去することは困難である。ここで、交互積層膜130の膜厚は、100nm以下であるので、樹脂フィルム110の表面に付着した異物は、交互積層膜130にピンホール等の欠陥を生じさせる原因となる。この問題を解決するため、本実施形態では、吸着層120で樹脂フィルム110の表面の異物を包埋するように、吸着層120を設けることができる。異物を包埋するためには、吸着層120を湿式成膜法で形成することが有効である。また、異物をより効果的に包埋するためには、吸着層120の膜厚を0.1μm以上とすることが好ましく0.2μm以上とすることが更に好ましい。ただし、吸着層120は無機系材料からなり、比較的硬く、線膨張係数が小さい膜であるため、膜厚を厚くし過ぎるとクラックが発生しやすくなる。このようなクラックの発生を防止する観点から、吸着層120の膜厚は、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。
また、吸着層120は、無機系材料で形成するために、一般に、樹脂等の有機物に比べ、単位膜厚当たりのガス透過率が低い。特に、吸着層120のガス透過率を樹脂フィルム110よりも低くすると、バリアフィルム100のガス透過性をより一層改善することができるため、好ましい。さらに、交互積層膜130のバインダ層133が樹脂で形成される場合、吸着層120の透湿率を0.1g/m/day以下にすると、バインダ層130の水分による膨潤を抑制することができる。
<板状粒子層131>
板状粒子層131は、正電荷又は負電荷、より詳細には、バインダ層133を構成するバインダ粒子と(板状粒子層131が吸着層120と隣接する場合には、吸着層120を構成する無機系材料とも)反対の電荷に帯電可能な無機板状粒子からなり、樹脂フィルム110を通過してバリア層へ浸入した水蒸気や酸素等のガスの透過を抑制するバリア性能を発揮させるために設けられる層である。
板状粒子層131の材料として用いられる無機板状粒子は、非常に扁平な形状をしており、一般に平面方向の直径が10nm〜10μmであり、厚みが1nm〜100nmである。無機板状粒子は、金属酸化物等の無機物からなるシート状の粒子であり、このシート状の粒子が1枚又は複数枚重なった構造となっている。なお、無機板状粒子の平面方向の直径とは、各粒子の円相当径(粒子の平面方向の形状を円としたときの直径)を算術平均した値であり、無機板状粒子の厚みとは、各粒子の厚みを算術平均した値である。無機平板状化合物粒子の平面方向の直径及び厚みは、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)、レーザー散乱式粒度分布計によって測定することができる。
上記無機板状粒子は、水蒸気や酸素等のガスをほとんど透過しないため、バリアフィルム100を構成する層として、これらの無機板状粒子を他の層に対して水平に配置することにより、バリアフィルム100は、高いバリア性能を得ることができる。また、このように無機板状粒子を配置することにより、交互積層膜130中の無機板状粒子の体積分率を50%以上とし、これにより、バリアフィルム100が高いバリア性能を有することができる。
ここで、板状粒子層131は、このような無機板状粒子として、例えば、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物、及び層状複水酸化物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。板状粒子層131は、上述した無機板状粒子のうち、いずれか1種の化合物だけで構成されていても良く、あるいは、同じ電荷を有する2種以上の化合物で構成されていても良い。
上記粘土鉱物としては、天然粘土であってもよいし、合成粘土であってもよく、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種を使用することができる。また、このような粘土鉱物は、シート状構造を有し、例えば、シリケート四面体シート単独、又は、シリケート四面体シートとアルミニウム、マグネシウムもしくは鉄の八面体シートとが積層した結晶構造を有する無機高分子化合物である。
上記リン酸塩系誘導体型化合物としては、例えば、リン酸ジルコニウムを挙げることができる。リン酸ジルコニウムは、ジルコニウム原子の面が網目上に形成され、層状(シート状)の形状となっている。ジルコニウムの原子面の上下にはリン酸基が存在し、Zr(PO2n 2−の形で層状結晶本体は負に帯電している。また、各層間にはイオン交換可能な水素イオンが位置している。
上記層状複水酸化物(LDH)としては、例えば、以下の一般式(1)であらわされる化合物を使用することができる。
[M2+ 1−x3+ (OH)x+[Bn− x/n・yHO]x− ・・・(1)
(式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、Bn−はアニオン、nはアニオンの価数、xは0<x<0.4の実数、yは0より大きい実数である。)
すなわち、層状複水酸化物は、正に帯電したブルーサイト様の基本層([M2+ 1−x3+ (OH)x+)の層間に、アニオン及び層間水からなる負に帯電した中間層(Bn− x/n・yHO]x−)を内包する層状(シート状)構造の化合物である。層状結晶本体は正に帯電しており、結晶全体では電気的中性を保っている。2価金属としては、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等が知られており、3価金属化合物としては、Al、Fe、Cr、Co、In等が知られている。また、アニオンとしては、OH、F、Cl、NO 、SO 2−、CO 2−、Fe(CN) 4−、CHCOO、V1028 6−、C1225SO 等のアニオンが知られている。
以上のような層状構造を有する無機板状粒子は、粉体の状態では粒子同士が凝集し、大きな粒径となっているため、凝集している粒子を剥離(Exfoliate)し、水溶液中に分散させる必要がある。より詳細に説明すると、上記無機板状粒子の凝集体は、正または負に帯電した複数の無機板状粒子同士が、無機板状粒子と逆の電荷に帯電した層間イオン(例えばナトリウムイオン)を介して積層された層状化合物である。このように積層されている各粒子を剥離(層分離)するためには、無機板状粒子間に層間イオンよりも粒径の大きな粒子、例えば水分子、カルシウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等の粒子を挿入すればよい。具体的な手法の一例を挙げると、例えば、層状化合物を水に投入し、攪拌することにより、凝集している各粒子を剥離することができる。
無機板状粒子を剥離するためには、層状化合物の持つ電荷の密度に依存する。剥離しやすい無機板状粒子として、モンモリロナイトやリン酸ジルコニウムが挙げられる。従って、剥離のしやすさという観点からは、無機板状粒子として、モンモリロナイトやリン酸ジルコニウムを使用することが好ましい。
<バインダ層133>
バインダ層133は、板状粒子層131を構成する無機板状粒子と(バインダ層133が吸着層120と隣接する場合には、吸着層120を構成する無機系材料とも)反対の電荷に帯電可能なバインダ粒子からなり、無機板状粒子同士、又は、無機板状粒子と吸着層120とを結着させるために設けられる層である。
バインダ層133を構成するバインダ粒子としては、例えば、高分子電解質イオン、金属イオン、金属化合物イオン、上述した無機板状粒子等が挙げられる。バインダ層133は、上述したバインダ粒子のうち、いずれか1種の物質だけで構成されていても良く、あるいは、同じ電荷を有する2種以上の物質で構成されていても良い。
高分子電解質イオンとしては、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩及びポリアクリルアミドの窒素原子にプロトンが配位結合した高分子電解質イオン等が挙げられる。また、金属イオンとしては、例えば、Al、Mg、K、及び多価遷移金属等のイオンが挙げられる。多価遷移金属としては、Fe、Co、及びMn等が挙げられる。また、金属化合物イオンとしては、金属のオキソ酸イオン、例えば、VO 、MoO 2−、WO 2−、TiO2+等が挙げられる。無機板状粒子は、上述した無機板状粒子の凝集体を剥離することで得られるものである。すなわち、板状粒子層131が粘土鉱物から得られる無機板状粒子で構成される場合、バインダ層133は、層状複水酸化物から得られる無機板状粒子で構成される。逆に、板状粒子層131が層状複水酸化物から得られる無機板状粒子で構成される場合、バインダ層133は、粘土鉱物から得られる無機板状粒子で構成される。
<交互積層膜130の膜厚>
また、バリアフィルム100によれば、交互積層膜130の膜厚を50nm以下とすることができる。本実施形態に係るバリアフィルム100では、交互積層膜130の膜厚が50nm以下と非常に薄くても、高いガスバリア性を有することができる。
<平滑化層140>
バリアフィルム100には、交互積層膜130上に、交互積層膜130の表面よりも表面粗さが小さい平滑化層140が設けられていても良い。一般的に、ディスプレイなどの表示素子に用いる基板の表面粗さが大きくなると、大きな光散乱のために一つ一つの画素(ピクセル)の外まで光が散乱してにじみが生じるため好ましくない。そこで、バリアフィルム100を発光素子の基板として用いる場合には、平滑化層140を設けることにより、バリアフィルム100の表面(最表面)の表面粗さをより小さくすることができ、光の散乱によるにじみを抑制することができる。また、OLEDは、素子の膜厚が100nmのオーダーと非常に薄いため、基板の表面粗さが大きくなると、陽極と陰極の短絡等、素子の特性に悪影響が生じることが知られている。そこで、バリアフィルム100をOLEDの基板として用いる場合には、平滑化層140を設けることにより、そのような悪影響を抑制することができる。平滑化層140の形成材料、及び、形成方法としては、バインダ層140と同様のものを用いることができる。また、平滑化層140の膜厚は、交互積層膜130の表面の表面粗さの1倍〜10倍程度が好ましい。具体的には、平滑化層140の膜厚は、1nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることが更に好ましい。
<各層が積層されていることの確認方法>
なお、樹脂フィルム110上に、バリア層として、吸着層120、板状粒子層131、バインダ層133及び平滑化層140が積層されていることは、例えば、バリア層が形成されたバリアフィルム100の原子間力顕微鏡写真(AFM)により確認することができる。
(バリアフィルム100の製造方法)
以上、本実施形態に係るバリアフィルム100の構成について詳細に説明したが、続いて、図2A〜図2Fを参照しながら、上述した構成を有するバリアフィルム100の製造方法について説明する。図2A〜図2Fは、本実施形態に係るバリアフィルム100の製造方法の各工程の一例を示す説明図である。
<吸着層120の形成工程>
まず、図2Aに示すように、樹脂フィルム110上に、無機系材料からなる吸着層120を形成する。樹脂フィルム110や吸着層120を構成する無機系材料の詳細については、上述した通りである。
より詳細には、吸着層120の形成工程では、樹脂フィルム110を所定の方法で洗浄して可能な限りの異物等を除去した後、吸着層120形成用の材料、すなわち、上述した無機系材料を用いて、吸着層120を形成する。このときの樹脂フィルム110の洗浄方法としては公知の方法を用いることができる。無機系材料を用いて形成された膜の表面は、一般に、大気中で水酸基を有しており、後に行う帯電処理を強力かつ均一に行うことができる。
吸着層120の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸着法、スパッタ法、化学気相蒸着(CVD)法、塗布法、鍍金法、液相析出法等を用いることができる。本実施形態では、これらの方法のうち、特に、湿式成膜法である、塗布法、鍍金法、液相析出法等を用いることが好適である。後述する交互積層膜130が湿式成膜法で形成されることから、吸着層120の形成を、交互積層膜130と同様に湿式成膜法で行うことにより、バリア層の形成工程を全て、湿式成膜法で行うことができるためである。また、湿式成膜法は、蒸着法、スパッタ法、CVD法等の真空成膜法に比べ、装置が簡便で、かつ、ロールツーロールの製造方法に向いていることから、低コストでバリア層を形成することができる。塗布法で吸着層120を形成する場合の具体的な方法としては、例えば、ゾル−ゲル法やシラザン法等がある。
ゾル−ゲル法は、金属アルコキシドを基板上に塗布し、金属アルコキシドを加水分解及び脱水縮合することで、金属酸化物膜を形成する手法である。金属アルコキシドは、一般式:(OR)、M(OR1)R2x−n、(R,R1,R2:H、アルキル基等の置換基、M:Ti,Al,Zr等の金属、x:金属の価数)で表される。金属アルコキシドの代表的なものとしては、例えば、Si(OCで表されるシリコンのアルコキシドや、テトラエトキシシラン(TEOS:Tetraethoxysilane)等が挙げられる。TEOSを用いた場合には、ゾル−ゲル法によりシリカからなる吸着層120を形成することができる。TEOSのエトキシ基のうち1〜3個を、アルキル基で置換したものを用いて、ゾル−ゲル法により吸着層120を形成することもできる。この場合には、吸着層120は、シリカ同士が結合して形成されたシリカネットワーク中にアルキル基が分散した構造となる。
シラザン法は、シラザン化合物を基板上に塗布し、加熱によって酸化ケイ素や窒化ケイ素に転化する手法である。シラザン化合物は、一般式:−(R1R2−Si−NH)−、(R1,R2:H、アルキル基等の置換基)で表される。このようなシラザン化合物としては、例えば、−(SiHNH)−で表されるパーハイドロポリシラザン(PHPS:PerHydroPolySilazane)を用いることができる。具体的には、PHPSのH基1〜2個をアルキル基等で置換したものを用いて、シラザン法により吸着層120を形成することができる。この場合、吸着層120は、シリカ同士が結合して形成されたシリカネットワーク中にアルキル基が分散した構造となる。
ここで、樹脂フィルム110の洗浄において、表面に付着した異物の除去を完全に行うのは、事実上不可能である。そして、樹脂フィルム110上に残留した異物は、上述したように、交互積層膜130に欠陥を発生させる原因となる。このような欠陥の発生を防止するため、吸着層120により異物を包埋することが有効であるが、このためには、吸着層120を湿式成膜法で形成することや、吸着層120の膜厚を、0.1μm以上とすることが好ましい。吸着層120の膜厚は、吸着層120の形成に用いる無機系材料の量を調整することにより制御することができる。
また、吸着層120は、無機系材料で形成されるため、一般に、樹脂等の有機物に比べ、単位膜厚あたりのガス透過率が低い。特に、吸着層120のガス透過率を、樹脂フィルム110よりも低くすると、バリアフィルム100のガス透過性をより改善できるため、好ましい。さらに、交互積層膜130のバインダ層133が樹脂等の吸湿性を有する材料で形成される場合、吸着層120の透湿率を0.1g/m/day以下にすると、バインダ層133の水分による膨潤を抑制することができる。
<帯電処理工程>
次に、図2Bに示すように、吸着層120の表面を正電荷又は負電荷に帯電させる帯電処理を行う。このときの帯電処理の方法としては、例えば、コロナ処理やUV/O処理などの物理的処理、(電子線(EB)処理、または、シランカップリング剤等の薬液を用いた化学的処理を用いることができる。例えば、吸着層120の表面をコロナ処理すると、その表面を負に帯電させることができる。また、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いると、吸着層120の表面を正に帯電させることができる。無機系材料からなる吸着層120の表面は、一般に、その表面に水酸基が存在しており、コロナ処理やUV/O処理を行うことで、水酸基がイオン化して負の電荷を有するようになることで、強力かつ均一に吸着層120の表面を負に帯電させることができる。また、アミノ基を有するシランカップリング剤で吸着層120の表面を帯電処理する場合には、このシランカップリング剤が吸着層120の表面の水酸基と結合する結果、アミノ基がイオン化して正の電荷を有するようになることで、強力かつ均一に吸着層120の表面を正に帯電することができる。
<交互積層膜130の積層順序について>
吸着層120の表面の電荷の正負と、板状粒子層131及びバインダ層133の帯電電荷によって、板状粒子層131を先に形成するか、バインダ層133を先に形成するかが選択される。例えば、吸着層120の表面が正に、板状粒子層が負にそれぞれ帯電している場合は、板状粒子層131を始めに積層する。以下の説明では、板状粒子層131を先に形成する場合を例に挙げて説明するが、バインダ層133を先に形成する場合も勿論あり得る。
<板状粒子層131の形成工程>
上述したようにして吸着層120の表面を正又は負(図2Bでは正)に帯電させた後、図2Cに示すように、吸着層120上に板状粒子層131を吸着法によって形成する。吸着法は、表面が帯電した基板を、基板と逆の電荷に帯電した粒子を分散させた溶液に浸漬し、クーロン力で基板表面に粒子を吸着させ、薄膜を形成する手法である。
板状粒子層131の形成に用いる無機板状粒子は、粉体の状態では粒子同士が凝集し、大きな粒径となっているため、凝集している粒子を剥離し、水溶液中に分散させる必要がある。
より詳細には、板状粒子層131の材料となる無機板状粒子を水溶液中に分散し、板状粒子層131形成用の溶液を作製する。溶液中の無機板状粒子の濃度は、0.01g/L〜10g/Lが好適であり、0.1g/L〜1g/Lが更に好適である。無機板状粒子の濃度が低すぎると、樹脂フィルム110表面に形成された吸着層120への無機板状粒子の吸着が不十分となるおそれがある。一方、無機板状粒子の濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなってしまうため、吸着層120が形成された樹脂フィルム110を浸漬して均一な膜を形成することが困難となる。板状粒子層131形成用の溶液は、少なくとも水と無機板状粒子とからなるが、無機板状粒子の溶液中での分散性を高めるための分散剤や、無機板状粒子の剥離を促進するためのインタカレート剤をさらに含んでいても良い。
作製した板状粒子層131形成用の溶液に、無機板状粒子と逆の電荷に帯電させた吸着層120が形成された樹脂フィルム110を浸漬すると、クーロン力により無機板状粒子が吸着層120の表面に吸着され、第1層目の板状粒子層131(図2Cの例では、板状粒子層131a)が形成される。
<バインダ層133の形成工程>
次に、図2Dに示すように、無機板状粒子と逆の電荷に帯電可能なバインダ粒子を用いて、板状粒子層131上に、バインダ層133を形成する。
バインダ層133は、板状粒子層131と同様に、吸着法によって形成する。本実施形態では、吸着層120が形成された樹脂フィルム110(以下、「フィルム基板」と記載する。)、又は、最表面に板状粒子層131が形成された樹脂フィルム110(以下、「中間フィルム」と記載する。)を、フィルム基板若しくは中間フィルムの表面電荷と逆の電荷に帯電したバインダ層133形成用の溶液、すなわち、バインダ粒子の水溶液または分散液に浸漬する。これにより、フィルム基板または中間フィルムの表面にバインダ粒子が吸着し、フィルム基板または中間フィルム(図2Dの例では、板状粒子層131aが最表面に形成された樹脂フィルム110)の表面に第1のバインダ層133(図2Dの例では、バインダ層133a)が形成される。このとき、バインダ粒子として無機板状粒子を使用した場合、この無機板状粒子は、フィルム基板または中間フィルムの表面と平行になるように吸着する。
バインダ粒子の水溶液または分散液は、水に各種の水溶性化合物または上述した無機板状粒子を溶解または分散させることで得られる。ここで、バインダ粒子である水溶性化合物または無機板状粒子の濃度は、100nmol/L〜1mol/Lが好適で、1μmol/L〜100μmol/Lが更に好適である。バインダ粒子の濃度が低すぎると、フィルム基板または中間フィルムへのバインダ粒子の吸着が不十分となるおそれがある。一方、バインダ粒子の濃度が高すぎると、バインダ粒子の水溶液または分散液の粘度が高くなってしまうため、フィルム基板または中間フィルムを浸漬して均一な膜を形成することが困難となる。バインダ粒子の水溶液または分散液は、少なくとも水とバインダ粒子とからなるが、バインダ粒子として無機板状粒子を用いた場合、無機板状粒子の分散性を高めるための分散剤や、無機板状粒子の剥離(層分離)を促進するためのインタカレート剤をさらに含んでいても良い。
なお、バインダ粒子として高分子電解質イオンを用いる場合、水溶性化合物としては、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩(PolyAllylAmine Hydrochloricacid Salt)やポリアクリル酸等のイオン性ポリマーが挙げられる。また、バインダ粒子として金属イオンを用いる場合、水溶性化合物としては、金属の硫酸塩、塩化物、水酸化物、例えば、AlK(SO、AlNH(SO、MgCl、Mg(NO、KOH、KSO、KCl、FeK(SO、CoCl、Co(NO、MnCl、Mn(NO、NiCl、Ni(NO、CuCl、Cu(NO、ZnCl、Zn(NO等が挙げられる。バインダ粒子として金属化合物イオンを用いる場合、水溶性化合物としては、オキソ酸のナトリウム塩やアンモニウム塩等、例えば、NaVO、(NHMoO、(NHWO、TiOSO等が挙げられる。
以上のようにして作製したバインダ層133形成用の溶液に、フィルム基板または中間フィルムを浸漬すると、クーロン力によりバインダ粒子が吸着層120または板状粒子層131の表面に吸着され、第1層目のバインダ層133(図2Dの例では、バインダ層133a)が形成される。
<交互積層膜130の形成工程>
次に、図2Eに示すように、上述した板状粒子層131の形成工程とバインダ層133の形成工程を繰り返し実施することで、吸着層120上に板状粒子層131及びバインダ層133を交互に積層していき、板状粒子層131とバインダ層133とからなる交互吸着構造を所定の層数だけ形成する。その結果、吸着層120上に、1層以上の板状粒子層131(図2Eの例では、板状粒子層131a、131b、131c、131d)と1層以上のバインダ層133(図2Eの例では、板状粒子層133a、133b、133c)とが吸着法により交互に積層された交互積層膜130が形成され、本実施形態に係るバリアフィルム100を得ることができる。
<平滑化層140の形成工程>
また、本実施形態では、さらに、必要に応じて、図2Fに示すように、上述のようにして形成された交互積層膜130上に、交互積層膜130の表面よりも表面粗さが小さい平滑化層140を形成しても良い。平滑化層140の材料、及び、形成方法は、バインダ層140と同様のものを用いることができる。これにより、最表面に平滑化層140が形成されたバリアフィルム200を得ることができる。
(バリアフィルム100におけるバリア機構)
次に、再び図1を参照しながら、上述した構成を有するバリアフィルム100におけるバリア機構、すなわち、バリアフィルム100の外部から浸入した酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制する機構について説明する。なお、図1では、樹脂フィルム110上のバリア層として吸着層120及び交互積層膜130が設けられ、交互積層膜130が、4層の板状粒子層131a、131b、131c、131dと、3層のバインダ層133a、133b、133cとからなり、且つ、吸着層120と板状粒子層131aとが隣接する構造を例に挙げて説明する。
樹脂フィルム110を通ってバリア層に浸入した水蒸気や酸素等のガスは、板状粒子層131を構成するシート状の無機板状粒子を通過できないため、図1に示すような透過経路W、W、W、Wを通って拡散し、バリア層を通過する。すなわち、図1に示すように、ガスの透過経路は、下記の4通りに分類することができる。そして、これら4通りの透過経路を通過したガスの透過量を合計したものが、バリアフィルム100のガス透過量Wtotalとなる。
まず、透過経路Wは、板状粒子層131の無機板状粒子が存在していない部分である空隙部分101とバインダ層133とを通過し、全体として蛇行するようにしてバリアフィルム100を透過する経路である。透過経路Wのガス透過率は、非特許文献1によると、交互積層膜130中に含まれる板状粒子の体積分率の−2乗にほぼ比例し、板状粒子の形状のアスペクト比の−2乗にほぼ比例し、バインダ層単体のガス透過率にほぼ比例する。
また、透過経路Wは、板状粒子層131の空隙部分101とバインダ層133とを通過し、全体としてほぼ直線的にバリアフィルム100を透過する経路である。また、透過経路Wは、吸着層120と、交互積層膜に発生したピンホール等の欠陥103を通過する経路である。透過経路Wは、吸着層120に発生したピンホール等の欠陥105と、交互積層膜130の欠陥103とを通過する経路である。
バリアフィルム100のガス透過率Tを小さくするためには、W、W、W、Wを透過するガス透過率T、T、T、Tをそれぞれ小さくする必要がある。ガス透過率は、透過長さ、透過断面積、透過する材料のガス透過率の積となる。つまり、欠陥105と欠陥103を少なくすれば、透過経路WとWの透過断面積が小さくなり、T及びTを小さくすることができる。
以下、同様に、吸着層120のガス透過率Taを小さくすれば、T、T、T、Tを小さくすることができる。同様に、吸着層120の膜厚Da(膜厚は、例えばエリプソメーター、AFM等により測定できる。)を大きくすれば、T、T、Tを小さくすることができる。
板状粒子層131において、無機板状粒子の吸着量を多くすれば、透過経路Wを少なくすることができ、Tを小さくすることができる。同時に、交互積層膜130中に含まれる板状粒子層131の体積分率が大きくなり、透過経路Wがより大きく蛇行し、透過経路の長さLが大きくなり、Tを小さくすることができる。
なお、交互積層膜130の交互吸着数(互いに隣接する1層の板状粒子層131と1層のバリア層133とからなるユニットの数)を増やすと、板状粒子層131において無機板状粒子の吸着量を増やすのと同じ効果が得られるのは、明らかである。
バインダ層133の膜厚Db(例えば、各バインダ層133a、133b、133cの膜厚を算術平均した値。膜厚は、例えばエリプソメーター、AFM等により測定できる。)を小さくすれば、透過経路Wの断面積が小さくなり、Tを小さくすることができる。
上述した特許文献3に開示された技術では、粘土粒子の吸着量が少ない。よって、T、Tが大きくなる。また、吸着層がないため、基板上の異物を十分に覆うことができず、交互吸着層の欠陥が多く発生する。その結果、T、Tが大きくなる。したがって、バリアフィルム100は、特許文献3に開示された技術よりも、ガス透過率を低減(即ちバリア性能を向上)させることができる。さらに、バリアフィルム100は、交互吸着数(互いに隣接する1層の板状粒子層131と1層のバリア層133とからなるユニットの数)を従来よりも大幅に減らすことができるので、工程が簡便になる。さらに、吸着層120は、上述したように無機系材料で形成されるため、そのガス透過率Taは非常に小さい値となるため、T、T、T、Tを小さくすることができる。
また、本実施形態では、バインダ層133が吸着法によって形成されるため、特許文献2に開示された技術に比べ、バインダ層133の膜厚Dbが非常に小さくなる。例えば、特許文献2の実施例2では、3μmのゾルゲル材料中に膨潤性合成雲母からなる無機板状粒子を10質量%分散させている。この特許文献2の実施例2では、算術平均的な無機板状粒子間の間隔は300nm程度と見積もられる。これに対し、本実施形態によるバインダ層133の膜厚は、1nm以下と見積もられるため、2桁以上Dbが小さいことになる。よって、Tを小さくすることができ、バリアフィルム100は、特許文献2に開示された技術よりも高いバリア性能を得ることができる。
また、バリアフィルム100では、水分に弱い(即ち、水分によって膨潤する)無機板状粒子の凝集体をそのまま板状粒子層131に用いるのではなく、無機板状粒子の凝集体を層分離することで無機板状粒子を剥離し、この剥離した無機板状粒子を用いて板状粒子層131が設けられている。具体的には、本実施形態では、無機板状粒子の凝集体を水に投入して撹拌することで凝集体を層分離させる。そして、この結果剥離された無機板状粒子を静電吸着法により樹脂フィルム110またはバインダ層133に吸着させることで、板状粒子層131を形成する。これにより、本実施形態に係るバリアフィルム100は、水分等のガスが板状粒子層131の内部に侵入して板状粒子層131を無限膨潤することを防止することができる。また、バリアフィルム100は、無機板状粒子がクーロン力により他の層に吸着しているので、板状粒子層131と他の層との間の密着性が高い。従って、バリアフィルム100は、特許文献1に開示された技術よりもバリア性能を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、バリアフィルム100に、表面に水酸基を多く有する無機系材料からなる吸着層120を設けているため、無機板状粒子をより高密度に吸着することができる。この結果、無機板状粒子が存在しない空隙部101並びに欠陥103の数及び面積を低減することができ、透過経路W、透過経路Wと透過経路Wを通過するガスの透過率を低減することができることから、従来のバリアフィルムに比べ、格段に高いバリア性能を有することができる。言い換えれば、バリアフィルム100は、従来のバリアフィルムと同等のバリア性能を、より少ない交互積層膜130を構成する層の積層数で達成することができる。
また、吸着層120の透湿率を0.1g/m/day以下とすることにより、交互積層膜130のバインダ層133の膨潤を抑制することができる。その結果、吸着層120の膜厚Dbを小さいまま保つことができ、透過経路Wと透過経路Wを通過するガスの透過率を低減することができる。
また、本実施形態に係るバリアフィルム100によれば、吸着層120の形成により、樹脂フィルム110上の異物を包埋することで、この異物の影響を軽減でき、異物と交互積層膜130との接触による交互積層膜130の欠陥の発生を低減させることができる。すなわち、交互積層膜130に発生したピンホール等の欠陥103を通過する透過経路Wと透過経路Wの数及び面積が小さくなり、透過するガスの量を少なくすることができる。この効果は、吸着層120の膜厚が厚いほど、または、吸着層120を湿式成膜法で形成した場合に、より顕著となる。
さらに、バリアフィルム100は、無機系材料からなる吸着層120を形成するため、吸着層120にある程度のバリア性能を期待することができる。交互積層膜130に欠陥103があった場合、従来のバリアフィルムの構造では、ガスは透過経路Wを通過することとなるが、本実施形態では、交互積層膜130の欠陥103と吸着層120の欠陥105とが重ならない部分では、ガスは透過経路Wを通過することとなる。同一面積あたりで比較した場合、T<Tとなることから、バリアフィルム100は、従来よりもガス透過率を低減させることができるため、より高いバリア性能を有することができる。
続いて、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、無機系材料としてPHPSを用いて吸着層を形成し、形成された吸着層を負に帯電させた例である。具体的には、以下の手順で実施例1のバリアフィルムを作製した。
1)樹脂フィルムの洗浄
帝人DuPont Film製TeonexQ65FA(0.2mm厚のPENフィルム)を、洗剤と純水で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
2)吸着層の形成
次に、1)で洗浄した樹脂フィルムに、PHPSとしてAZElectronic Materials製AquamicaNL 100Aをスピンコーティングし、コーティングされたPHPSを、200℃で1時間硬化させ、続いて95℃−80%RHで3時間硬化させることで、約0.5μmの膜厚のシリカ膜を形成した。
3)板状粒子層形成用の溶液の作製
次に、モンモリロナイト(MMT)として、Kunimine工業製Kunifil−D36を0.5g、純水1L中に入れ、市販のスターラーを用いて、1日間攪拌し、板状粒子層形成用の溶液を作製した。
4)バインダ層形成用の溶液の作製
ポリアリルアミン塩酸塩(PAH:PolyAllylAmine Hydrochloricacid Salt)の30mM/L水溶液を調整し、バインダ層形成用の溶液を作製した。
5)樹脂フィルムの帯電処理
2)で吸着層を形成した樹脂フィルムを、10分間コロナ処理した。
6)バインダ層の形成
5)で帯電処理した樹脂フィルムを、4)で作製したバインダ層形成用の溶液に15分間浸漬した後、純水で十分洗い流した後に、エアブローで乾燥させることで、バインダ層を形成した。
7)板状粒子層の形成
6)でバインダ層を形成した樹脂フィルムを、3)で作製した板状粒子層形成用の溶液に15分間浸漬し、純水で十分洗い流した後に、エアブローで乾燥させることで、板状粒子層を形成した。
8)交互積層膜の形成
6)と7)の工程を、それぞれ、5回、10回、20回繰り返し、樹脂フィルム上に(バインダ層/板状粒子層)の対が、それぞれ、5対、10対、20対積層された交互積層膜を形成し、実施例1のバリアフィルムを得た。
9)WVTR測定
2)の工程までを行い吸着層のみを形成した樹脂フィルム、及び、8)で作製した3枚のバリアフィルムについて、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて、WVTRを測定した。
(実施例2)
実施例2は、無機系材料としてPHPSを用いて吸着層を形成し、形成された吸着層を正に帯電させた例である。具体的には、以下の手順で実施例2のバリアフィルムを作製した。
1)樹脂フィルムの洗浄
帝人DuPont Film製TeonexQ65FA(0.2mm厚のPENフィルム)を、洗剤と純水で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
2)吸着層の形成
次に、1)で洗浄した樹脂フィルムに、PHPSとしてAZElectronic Materials製AquamicaNL 100Aをスピンコーティングし、コーティングされたPHPSを、200℃で1時間硬化させ、続いて95℃−80%RHで3時間硬化させることで、約0.5μmの膜厚のシリカ膜を形成した。
3)板状粒子層形成用の溶液の作製
次に、モンモリロナイト(MMT)として、Kunimine工業製Kunifil−D36を0.5g、純水1L中に入れ、市販のスターラーを用いて、1日間攪拌し、板状粒子層形成用の溶液を作製した。
4)バインダ層形成用の溶液の作製
ポリアリルアミン塩酸塩(PAH:PolyAllylAmine
Hydrochloricacid Salt)の30mM/L水溶液を調整し、バインダ層形成用の溶液を作製した。
5)樹脂フィルムの帯電処理
2)で吸着層を形成した樹脂フィルムを、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の10mM/Lのエタノール溶液に30分間浸漬させ、エタノールと純水で洗い流した後、エアブローで乾燥させた。
6)板状粒子層の形成
5)で帯電処理した樹脂フィルムを、3)で作製した板状粒子層形成用の溶液に15分間浸漬し、純水で十分洗い流した後に、エアブローで乾燥させることで、板状粒子層を形成した。
7)バインダ層の形成
6)で板状粒子層を形成した樹脂フィルムを、4)で作製したバインダ層形成用の溶液に15分間浸漬し、純水で十分洗い流した後に、エアブローで乾燥させることで、バインダ層を形成した。
8)交互積層膜の形成
6)と7)の工程を、それぞれ、5回、10回、20回繰り返し、樹脂フィルム上に(板状粒子層/バインダ層)の対が、それぞれ、5対、10対、20対積層された交互積層膜を形成し、実施例2のバリアフィルムを得た。
9)WVTR測定
2)の工程までを行い吸着層のみを形成した樹脂フィルム、及び、8)で作製した3枚のバリアフィルムについて、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて、WVTRを測定した。
10)AFM観察
6)の工程までを行い、吸着層と板状粒子層のみを形成した樹脂フィルムについて、SII製SPA400を用いてAFM観察し、MMTの付着状況を確認した。
11)膜厚測定用サンプルの作製
ニラコ製酸化膜付シリコンウエハ500452を、洗剤と純水で洗浄し、エアブローで乾燥させた。その後、5)〜8)までと同様の工程を行い、シリコンウエハ上に(板状粒子層/バインダ層)の対が、それぞれ、5対、10対、20対積層された交互積層膜を形成し、膜厚測定用サンプルを得た。
12)交互積層膜の膜厚測定
11)で作製した膜厚測定用サンプルに形成された交互積層膜について、エリプソメーター(日本レーザ電子製のNL−ELP)を用いて、膜厚を測定した。
(実施例3)
実施例3は、実施例2で吸着層を形成するための無機系材料を変更した例である。具体的には、2)の工程を以下のようにして行い、更に10)〜12)を省いたこと以外は、実施例2と同様の工程で4種類のサンプルを作製し、WVTRを測定した。
2)吸着層の形成
テトラエトキシシラン(TEOS)8g、純水2.5g、塩酸0.01g、エタノール9.5gをガラス容器中に投入し、1昼夜攪拌した。この溶液を市販のスピンコータを用い、1)で洗浄した樹脂フィルム上にスピンコーティングし、コーティングされたTEOSを、200℃で1時間硬化することで、約0.5μmの膜厚のシリカ膜を形成した。
(実施例4)
実施例4は、実施例2で吸着層を形成するための無機系材料を変更した例である。具体的には、2)の工程を以下のようにして行い、更に10)〜12)を省いたこと以外は、実施例2と同様の工程で4種類のサンプルを作製し、WVTRを測定した。
2)吸着層の形成
ULVAC社製スパッタ装置SBH−2306REを用い、1)で洗浄した樹脂フィルム上にAlのターゲットを用いてスパッタ成膜し、約0.2μmの膜厚のアルミナ膜を形成した。
(実施例5)
実施例5は、実施例2の交互積層膜の表面に平滑化層をさらに形成した例である。具体的には、実施例2と同様に1)〜8)の工程を行って交互積層膜を形成した後に、次のような工程を行った。
9)平滑化層の形成
8)で形成した交互積層膜上に、PHPSとしてAZElectronic Materials製AquamicaNL 100Aをスピンコーティングし、コーティングされたPHPSを、200℃で1時間硬化させ、続いて95℃−80%RHで3時間硬化させることで、約0.1μmの膜厚のシリカ膜を形成した。
10)WVTR測定
8)で作製した3枚のバリアフィルムについて、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて、WVTRを測定した。
11)AFM観察
8)の工程までを行い吸着層と交互積層膜20対のみを形成したバリアフィルムと、9)までの工程を行い、吸着層と交互積層膜20対と平滑化層を形成したバリアフィルムとについて、SII製SPA400を用いてAFM観察し、MMTの付着状況を確認した。
(実施例6)
実施例6は、実施例2で、板状粒子層形成用材料である無機板状粒子と、バインダ層形成用材料であるバインダ粒子を変更した例である。具体的には、3)と4)の工程を次のように実施し、更に10)〜12)を省いたこと以外は、実施例2と同様の工程で4種類サンプルを作製し、WVTRを測定した。
3)板状粒子層形成用の溶液の作製
まず、第一希元素化学製α−ZrPを1g、純水150mLに入れ、市販のスターラーを用いて、1日間攪拌した。攪拌した溶液に、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TetraButylAmmoniumHydroOxide)の150mM/L水溶液を30mL、ZrP液のphが9を超えないように、少量ずつ加えることでZrP粒子の層分離(剥離)を行い、板状粒子層形成用の溶液を作製した。
4)バインダ層形成用の溶液の作製
AlK(SOの30mM/L水溶液を調整し、バインダ層形成用の溶液を作製した。
(実施例7)
実施例7は、実施例2で、バインダ層形成用材料であるバインダ粒子を変更した例である。具体的には、4)の工程を次のように実施し、更に10)〜12)を省いたこと以外は、実施例2と同様の工程で4種類サンプルを作製し、WVTRを測定した。
4)バインダ層形成用の溶液の作製
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の30mM/Lのエタノール溶液を調整し、バインダ層形成用の溶液を作製した。
(比較例1)
比較例1は、実施例2の2)の工程を省略し、バインダ層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様の工程で従来のバリアフィルムを作製し、WVTR測定、及びAFM観察を行った。
(WVTRの測定結果)
表1に、実施例1〜6、及び、比較例1で作製したサンプルを、40℃−90%RHの条件でWVTR測定した結果を示す。
表1に示すように、いずれの実施例においても、比較例1に比べ、WVTRの値が大幅に小さくなっており、本発明の実施例によるバリア層が、高いバリア性能を示すことが分かる。吸着層があるために、より多くの板状粒子が吸着し、交互積層膜に含まれる板状粒子の体積分率が大きくなったためと考えられる。また、実施例2〜4の結果を比較すると、吸着層のWVTRが0.1g/m/dayより小さい実施例2と4では、実施例3に比べおよそ一桁小さいWVTRが得られており、吸着層の効果がより大きく現れたものと思われる。この理由は、吸着層により、交互積層膜への水分進入が防止され、バインダ層のPAHの吸湿が防止されたためと考えられる。吸着層が高いバリア性能を有する場合、その効果は、板状粒子層の欠陥を少なくすることのみならず、交互積層膜のバリア性能を高めることにも有効である。
すなわち、本発明による交互吸着法を用いて作成したバリア層は、従来の交互吸着法を用いたバリア層に比べ、高いバリア性能を少ない積層数で実現できることが確認された。
(AFMによる観察結果)
実施例2、5及び、比較例1で作製したサンプルをAFMで観察した結果を、図3に示す。何れのAFM像も視野は1μmとした。
図3に示すように、比較例1に比べ、実施例2ではより多くの板状粒子が付着していることが分かった。表2に、板状粒子が付着している面積の割合(被覆率)と、被覆率から計算した交互積層膜に含まれる板状粒子の体積分率を示す。比較例1に比べ、実施例2では、被覆率が大きくなったのに伴い、板状粒子の体積分率が50%以上の大きな値が得られることが分かった。
また、実施例5で作製した2つのサンプルのAFM像を比較すると、平滑化層を形成したサンプルの平均表面粗さRaが0.3nmと1nm以下であるのに対し、平滑化層を形成しないサンプルはRaが4.8nmとなった。OLED等、基板の平滑性が厳しく求められる用途には、平滑化層を形成することが有効であることが分かった。
(エリプソメーターによる膜厚測定結果)
実施例2で作製したサンプルの交互積層膜の膜厚を測定した結果を、表3に示す。それぞれのサンプルの膜厚は、およそ50nm以下と非常に薄いことが分かった。この結果から、本発明による交互積層膜は、このような非常に薄い膜で、高いガスバリヤ性を達成できることが分かった。
なお、交互積層1対あたりの膜厚はおよそ1.2nmと見積もられる。MMTの厚さは約1nmなので、PAHからなるバインダ層の厚さは0.2nm程度だと考えられる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100、200 バリアフィルム
101 空隙部分
103 (交互積層膜130に発生した)欠陥
105 (吸着層120に発生した)欠陥
110 樹脂フィルム
120 吸着層
130 交互積層膜
131 板状粒子層
133 バインダ層
140 平滑化層
、W、W、W ガスの透過経路

Claims (16)

  1. 樹脂フィルムと、
    前記樹脂フィルムの表面よりも親水性の高いシリカ膜又はアルミナ膜からなる吸着層と、
    リン酸ジルコニウム粒子又はモンモリロナイト粒子からなる少なくとも1層の帯電した板状粒子層と、AlK(SO 又は3−アミノプロピルトリエトキシシランのみからなり、前記板状粒子層と反対の電荷に帯電した少なくとも1層のバインダ層と、が交互に積層された交互積層膜と、
    が順次積層され、
    前記シリカ膜又は前記アルミナ膜は、前記板状粒子層又は前記バインダ層と反対の電荷に帯電されている、電子デバイス用バリアフィルム。
  2. 前記吸着層は前記シリカ膜からなる、請求項1記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  3. 前記板状粒子層は前記モンモリロナイト粒子からなり、前記バインダ層は前記3−アミノプロピルトリエトキシシランのみからなる、請求項2記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  4. 前記吸着層の膜厚が、0.1μm以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  5. 前記交互積層膜の膜厚が、50nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  6. 前記交互積層膜に含まれる前記リン酸ジルコニウム粒子又はモンモリロナイト粒子の体積分率が、50%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  7. 前記交互積層膜の上層として、前記交互積層膜よりも表面粗さが小さな平滑化層がさらに積層された、請求項1〜のいずれか1項に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  8. 前記平滑化層はシリカ膜である、請求項7に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  9. 前記シリカ膜は、酸化ケイ素膜若しくは窒化ケイ素膜である、請求項8に記載の電子デバイス用バリアフィルム。
  10. 樹脂フィルム上に、前記樹脂フィルムの表面よりも親水性の高いシリカ膜又はアルミナ膜からなる吸着層を形成する工程と、
    前記吸着層の表面を正電荷又は負電荷に帯電させる工程と、
    前記吸着層上に、前記シリカ膜又は前記アルミナ膜と反対の電荷に帯電したリン酸ジルコニウム粒子又はモンモリロナイト粒子からなる少なくとも1層の板状粒子層と、前記リン酸ジルコニウム粒子又はモンモリロナイト粒子と反対の電荷に帯電したAlK(SO 又は3−アミノプロピルトリエトキシシランのみからなる少なくとも1層のバインダ層と、を吸着法により交互に積層し、交互積層膜を形成する工程と、
    を含む、電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  11. 前記吸着層は前記シリカ膜からなる、請求項10記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  12. 前記板状粒子層は前記モンモリロナイト粒子からなり、前記バインダ層は前記3−アミノプロピルトリエトキシシランのみからなる、請求項11記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  13. 前記交互積層膜の上層として、前記交互積層膜よりも表面粗さが小さな平滑化層をさらに形成する工程を更に含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  14. 前記平滑化層として、シリカ膜を形成する、請求項13に記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  15. 前記シリカ膜を形成する工程は、シラザン化合物を酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素に転化する工程を含む、請求項14に記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
  16. 前記シラザン化合物はパーハイドロポリシラザンである、請求項15に記載の電子デバイス用バリアフィルムの製造方法。
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