JP2006218687A - 積層体およびそれを含むディスプレイ - Google Patents

積層体およびそれを含むディスプレイ Download PDF

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淳裕 中原
Yoshitaka Uehara
剛毅 上原
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Abstract

【課題】 水蒸気バリア性に優れた積層体を提供すること。
【解決手段】 基材層、組成物層および金属酸化物層を含む積層体であって、前記組成物層が、水酸基含有重合体(A)と、金属アルコキシド化合物(B)の加水分解縮合物と、ホウ素原子を含む化合物(C)の加水分解縮合物とを含む組成物からなり、かつ前記化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜10000の範囲であることを特徴とする積層体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、積層体および前記積層体を含むディスプレイに関する。
食品や様々な物品を包装するための包装材料には、ガスバリア性、特に酸素バリア性が要求されることが多い。従来、これらの食品包装材にはさまざまなバリア材が用いられていた。より具体的なバリア材を用いた包装材としては、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有高分子からなるバリア層を有する包装材、アルミニウム箔などの金属箔、アルミニウム蒸着層に代表される金属又は金属化合物からなるバリア層を有する包装材、ビニルアルコール系重合体又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるバリア層を有する包装材などが知られている。
また、食品包装材以外のバリア材の用途としては、例えば、ディスプレイ素子の基材としての利用が知られている。ディスプレイ素子の基材としては、ガラスを用いたものが知られているが、ガラスの基材は優れた水蒸気バリア性を有する一方で、重くて割れやすいという欠点があった。このため、ディスプレイ素子の基材として用いることが可能な、優れたバリア性を有する樹脂基材が求められていた。しかしながら、従来の樹脂基材は軽量で割れにくいものの、水蒸気や酸素に対するバリア性が十分ではなく、ディスプレイ素子の性能を経時的に劣化させるという問題が残されていた。
ガスバリア性に優れたバリア材を得るための手段の一つとして、近年、ゾル−ゲル法を利用して、有機重合体の存在下で、シリコンアルコキシドなどの金属アルコキシドを重縮合させることにより、有機重合体中に金属酸化物が比較的細かく分散した有機/無機複合体を調製する方法が提案されている。その具体的な方法として、例えば、金属アルコキシドとカルボン酸ビニル系重合体とを含む溶液からビニルアルコール系重合体組成物を製造し、その組成物の溶液に金属アルコキシドを添加したのち溶媒を除去する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、(a)ポリビニルアルコール系樹脂、(b)特定の一般式で表される、金属アルコレートまたはその誘導体、および(c)ホウ素化合物を含有することを特徴とするガスバリアコーティング組成物も開示されている(特許文献2参照)。
特開2002−138109号公報 特開2002−047442号公報
近年では市場の要求性能はさらに高まり、ガスバリア性のみならず、水蒸気バリア性にも優れたバリア材が市場において求められるようになりつつある。具体的には、上述したような包装材料の用途のみならず、物品の被覆材としての用途分野において、水蒸気バリア性に優れたバリア材が求められている。しかしながら、従来の技術で得られるバリア材は、その水蒸気バリア性についてさらに改善の余地が残されていた。
このような状況において、水蒸気バリア性に優れ、しかも着色が少なく外観に優れるバリア材が求められている。このようなバリア材は、ガスバリア性にも優れることがより好ましい。本発明は、優れた水蒸気バリア性を有するバリア材およびそれを用いたディスプレイを提供することを目的の一つとする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、基材層、組成物層および金属酸化物層を含む積層体であって、前記組成物層が、水酸基含有重合体(A)と、金属アルコキシド化合物(B)の加水分解縮合物と、ホウ素原子を含む化合物(C)の加水分解縮合物とを含む組成物からなり、かつ前記化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜10000の範囲であることを特徴とする積層体である。
本発明によれば、水蒸気バリア性に優れる積層体、より好ましくは水蒸気バリア性および酸素バリア性に優れる積層体が得られる。本発明の積層体は、食品、医薬、医療器材、機械部品、衣料などの包装材料や、水蒸気バリア性を必要とする各種物品の被覆材として用いられる。特に好ましい実施態様では、ディスプレイ素子を本発明の積層体で被覆することにより、ディスプレイを製造するための材料として有効に使用される。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、特定の機能を発現する化合物として具体例を示しているが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に説明がない限り、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。また、特に説明がない限り、「組成物」とは固形の組成物を意味する。
本発明の積層体は、基材層、組成物層および金属酸化物層を含む。前記基材層を構成するのに用いられる重合体としては特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン(以下、「PE」と略記することがある)、ポリプロピレン(以下、「PP」と略記することがある)等のポリオレフィン;ポリシクロオレフィン(以下、「PCy」と略記することがある);ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と略記することがある)、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と略記することがある)等のポリエステル;ナイロン6(以下、「Ny6」と略記することがある)、ナイロン66(以下、「Ny66」と略記することがある)等のポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリウレタン;ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート(以下、「PC」と略記することがある)等の重合体を挙げることができ、この他の基材層として紙などが例示される。好ましい実施態様では、前記基材層が熱可塑性樹脂を含む層である。より好ましい実施態様では、前記熱可塑性樹脂を含む層が、厚さ10〜1000μm、より好ましくは厚さ10〜100μmの熱可塑性樹脂フィルムである。
本発明の積層体の力学的特性の観点からは、基材層としてポリエステル層、ポリアミド層およびポリオレフィン層からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。また、本発明の積層体において、水蒸気バリア性を特に重視する場合は、基材層がポリシクロオレフィン(PCy)層およびポリエーテルサルホン層からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の積層体は前記組成物層が、水酸基含有重合体(A)と、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)の加水分解縮合物と、ホウ素原子を含む化合物(C)の加水分解縮合物とを含む組成物からなり、かつ前記化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜10000の範囲であることを特徴とする。
本発明に用いられる水酸基含有重合体(A)は、重合体を構成する単量体単位として、水酸基を含有する単量体単位を有する重合体である。水酸基含有重合体(A)としては、前記水酸基を含有する単量体単位が、(A)を構成する全単量体単位に対して50モル%以上含まれていることが好ましく、60モル%以上含まれていることがより好ましく、70モル%以上含まれていることがさらに好ましい。このような水酸基含有重合体(A)としては、特にビニルアルコール系重合体が好適なものとして例示される。
水酸基含有重合体(A)として用いられる前記ビニルアルコール系重合体は、カルボン酸ビニル系重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化することにより得られる重合体である。カルボン酸ビニル系重合体は、カルボン酸ビニル単位(ビニルエステル単位)を有する重合体であり、カルボン酸ビニル単独の重合体、および/または、カルボン酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体である。前記ビニルアルコール系重合体において、ビニルアルコール単位およびカルボン酸ビニル単位の含有量の合計は、重合体を構成する全単量体単位に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。カルボン酸ビニル単位は、けん化されてビニルアルコール単位に変換されるが、変換率(けん化度)は80モル%以上であることが好ましい。けん化度が80モル%未満である場合には、組成物のガスバリア性が低くなる場合がある。高度のガスバリア性を得るためには、ビニルアルコール系重合体のけん化度は90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。カルボン酸ビニル単位の一部はけん化されない場合があり、その場合にはカルボン酸ビニル単位が残存する。重合されるカルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−メチルプロピオン酸ビニル等が挙げられ、好ましくは酢酸ビニルである。
本発明の積層体の水蒸気バリア性の観点からは、用いられるビニルアルコール系重合体は、未変性のポリビニルアルコールであることが好ましい。一方、好適な実施態様においては、本発明の積層体はその優れた酸素バリア性を生かして、ガスバリア材としても用いることができる。かかる実施態様においては、ビニルアルコール系重合体として、カルボン酸ビニルおよびこれと共重合可能なその他の単量体との共重合体をけん化することによって得られる重合体を用いることが好ましい場合がある。カルボン酸ビニルとの共重合に用いられるその他の単量体単位の割合は、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。カルボン酸ビニルとの共重合に用いることができるその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリルアルコール;ビニルトリメチルシラン等が挙げられ、その中でも、組成物の酸素バリア性の観点からはエチレンが好ましい。ビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分けん化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、またはエチレン−ビニルアルコール共重合体の部分けん化物であって、結晶性を有するものが好適に用いられる。エチレンを共重合する場合、エチレンの好適な共重合比率は、1〜20モル%が好ましく、2〜18モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。
本発明に用いられる水酸基含有重合体(A)の重合度は特に限定されない。組成物の水蒸気バリア性、力学的物性、加工性の観点からは、その重合度は100〜10000であることが好ましく、200〜5000であることがより好ましく、300〜3000であることがさらに好ましい。
本発明に用いられるハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)は、単一の化合物であっても、複数種の化合物を含んでも良い。化合物(B)としては、1個のケイ素原子を有し、2個、3個又は4個のアルコキシ基またはハロゲン基がケイ素原子に結合した化学構造を有するものが好ましい。ここで、ケイ素原子に結合したアルコキシ基またはハロゲン基の個数は3個又は4個であることがより好ましく、4個であることが特に好ましい。化合物(B)のうち、アルコキシ基が結合したケイ素原子を含む化合物は、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーから選択される、少なくとも1種類以上の成分である。
上記シリコンアルコキシドとしては、1個のケイ素原子を有し、2個、3個又は4個のアルコキシ基がケイ素原子に結合した化学構造を有するものが好ましい。ここで、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の個数は3個又は4個であることがより好ましく、4個であることが特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが例示される。なお、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の個数が2個又は3個の場合、ケイ素原子にはさらにメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基などが結合する。シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが挙げられ、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである。
シリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーとは、シリコンアルコキシドを単独で、公知の方法に従って加水分解・縮合することにより製造することができるオリゴマーである。また、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルコキシド以外の1種類以上の金属アルコキシドから誘導されるオリゴマーとは、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルコキシド以外の1種類以上の金属アルコキシドから選ばれる金属アルコキシドの1種類を混合して、公知の方法に従って加水分解・縮合することにより製造することができるオリゴマーである。
上記したシリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーの具体例としては、テトラメトキシシラン2量体又はその3量体以上のオリゴマー、テトラエトキシシラン2量体又はその3量体以上のオリゴマー、オリゴジメチルシロキサンなどが挙げられるが、テトラメトキシシラン2量体又はその3量体以上のオリゴマー、テトラエトキシシラン2量体又はその3量体以上のオリゴマーが好ましく用いられる。その重合度は、必ずしも限られるものではないが、2〜25の範囲内であることが好ましく、2〜10の範囲内であることがより好ましい。
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)において、ハロゲン原子が結合したケイ素原子を含む化合物におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などが例示される。なお、ケイ素原子に結合したハロゲン基の個数が2個又は3個の場合、ケイ素原子にはさらにメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基などが結合する。ハロゲン原子が結合したケイ素原子を含む化合物の具体例としては、たとえば、ビニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等が挙げられる。
また、化合物(B)のうち、ハロゲン原子およびアルコキシ基が結合したケイ素原子を含む化合物の具体例としては、たとえば、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等が挙げられる。
以上に示した化合物(B)の中でも、組成物の水蒸気バリア性の観点からは、アルコキシ基が結合したケイ素原子を含む化合物を用いることが好ましく、シリコンアルコキシドおよび/またはシリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーを用いることがより好ましい。
本発明に用いられるホウ素原子を含む化合物(C)としては、アルコキシ基、水酸基および水素原子から選ばれる少なくとも1つが結合したホウ素原子を含む化合物が好ましい。具体的には、ホウ酸、ホウ酸の金属塩、ホウ酸塩鉱物および有機ホウ素化合物などが挙げられる。
ホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸および四ホウ酸などが挙げられるが、オルトホウ酸を用いることが好ましい。
ホウ酸の金属塩としては、例えばホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛など)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウムなど)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウムなど)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウムなど)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀など)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅など)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウムなど)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛など)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケルなど)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウムなど)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウムなど)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガンなど)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウムなど)などが挙げられる。
ホウ酸塩鉱物としては、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石などが挙げられる。
有機ホウ素化合物としては、ボラン、ボロキシン、フェニルホウ酸、ジフェニルホウ酸、およびホウ酸とアルコール化合物またはフェノール化合物とのホウ酸エステル化合物などが挙げられる。ここで、ホウ酸エステル化合物としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族モノアルコール、多価アルコール(エチレングリコール、テトラブチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなど)、フェノール化合物(フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、クレゾールなど)とのホウ酸モノ、ジ、トリまたはテトラエステル化合物やそれらの混合物、さらにはそれらの金属塩が挙げられる。これらのホウ酸エステル化合物の中でも、炭素数1〜20の脂肪族モノアルコールとのエステル化合物が好ましく、トリメトシキボランおよびトリエトシキボランが特に好ましい。
以上に示したホウ素原子を含む化合物(C)の中でも、組成物の水蒸気バリア性が高度に発現する観点から、有機ホウ素化合物およびホウ酸が好ましい。また、化合物(B)との良好な混合状態が得られるという観点からは、ホウ酸エステル化合物およびホウ酸がより好ましい。
本発明の積層体において、組成物の製造方法は特に限定されない。前記組成物の特に好適な製造方法は、水酸基含有重合体(A)を含有する溶液(S1)を調製する第一工程と、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)と、ホウ素原子を含む化合物(C)とを混合して得られる、化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜10000である組成物を含む溶液(S2)を調製する第二工程と、前記溶液(S1)および前記溶液(S2)を混合して溶液(S3)を調製する第三工程とを含む製造方法である。この上記溶液(S2)を調製する工程(第二工程)において、触媒(D)を使用することが、工程を円滑に進行させる観点から好ましい。
前記製造方法に用いられる触媒(D)としては、塩基性触媒およびその塩、ならびに酸触媒およびその塩などが挙げられる。塩基性触媒としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などが挙げられる。塩基性触媒の塩としてはフッ化アンモニウムなどが挙げられる。一方、酸触媒としては、公知の各種酸触媒が使用可能であり、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸などが挙げられる。これらの中でも、組成物の水蒸気バリア性が良好となる観点から、触媒として酸触媒を添加することが好ましく、上記した酸触媒の中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸および乳酸が特に好ましい。
前記第一工程において、水酸基含有重合体(A)を含有する溶液(S1)を調製する。溶液(S1)の調製に用いられる溶媒としては、水酸基含有重合体(A)を溶解する溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、たとえば、水や、水とアルコールとの混合溶媒を用いることができる。混合溶媒に用いられるアルコールとしては、たとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。用いられる水酸基含有重合体(A)の水への溶解性が高くない場合は、水とアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。一方、用いられる水酸基含有重合体(A)が水への溶解性を充分に有している場合は、環境への影響の観点から、溶媒として水を用いることが好ましい。溶液(S1)中の水酸基含有重合体(A)の濃度としては、溶液の取り扱いの容易性から1〜50重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲である。
前記第一工程において、水酸基含有重合体(A)は、カルボン酸ビニル系重合体を含有する溶液にハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(b)を添加し、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応と、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)との反応とを同時に進行させることにより製造されるビニルアルコール系重合体であることが、得られる組成物の水蒸気バリア性の観点から好ましい。カルボン酸ビニル系重合体には、上述したカルボン酸ビニル系重合体が用いられる。化合物(b)には、上述したハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)について説明した化合物の1種または2種以上を適用できる。化合物(B)と化合物(b)は同じであっても異なっていてもよい。また、化合物(b)の少なくとも1成分として、シリコンアルコキシドおよび/又はシリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーを使用することが、得られる組成物の水蒸気バリア性の観点から好ましい。
ここで、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応とは、カルボン酸ビニル系重合体からビニルアルコール系重合体を生成する反応であり、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単量体単位に由来するアシルオキシ基が水酸基に変換され、それと同時にカルボン酸系化合物(使用する有機溶媒、触媒の種類などに応じて相違するが、通常は、カルボン酸、カルボン酸エステルおよびカルボン酸塩から選択される1種以上の化合物)が副生する。一方、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)との反応により、化合物(b)はカルボン酸エステル系重合体に含まれるエステル基と交換反応を生じて重合体と結合する。その場合、得られるビニルアルコール系重合体は、化合物(b)に由来する基を含む。また、上記反応の際には、通常、化合物(b)同士が脱水・縮合する反応も生じる。
上記の方法でビニルアルコール系重合体を得るに際し、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基100モルあたり、化合物(b)中のケイ素原子が0.01〜75モルの範囲となるような量の化合物(b)を使用することが好ましい。上記割合が0.01モル以上である場合には、得られる組成物の水蒸気バリア性がより良好となる。また、上記割合が75モル以下である場合には、得られる組成物は、性能斑(溶液(S3)の貯蔵に伴うガスバリア性能の格差)が小さい。化合物(b)の使用量としては、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基100モルに対して、化合物(b)中のケイ素原子が0.01〜50モルの範囲になるような量の化合物(b)を使用することがより好ましく、さらに好ましくは0.1〜20モル、特に好ましくは0.1〜10モルである。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応を行うに際しては、一般的なけん化反応において公知の各種触媒を使用することができる。使用可能な触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸性触媒、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属化合物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ土類金属化合物;アンモニア、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどのアミン化合物などの塩基性触媒を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述の製造方法において得られる溶液(S3)のコーティング適性(粘度および塗膜の外観)ならびに組成物の水蒸気バリア性能が良好となる観点から、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応には塩基性触媒を用いることが好ましい。中でも水酸化アルカリ金属化合物および水酸化アルカリ土類金属化合物から選ばれる1種類以上の化合物を用いることがより好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムの中から選ばれる1種類以上の化合物が触媒として好ましく用いられる。触媒の使用量は必ずしも厳密に限定されるものではないが、使用する化合物(b)中のハロゲン原子およびアルコキシ基のモル数と、使用するカルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基のモル数との和(総モル数)の1モルあたり、0.001〜0.1モルの範囲であることが好ましく、0.01〜0.08モルの範囲であることがより好ましい。
アルカリ金属化合物(たとえば水酸化アルカリ金属)および/またはアルカリ土類金属化合物(たとえば水酸化アルカリ土類金属)を触媒として用いた場合、得られるビニルアルコール系重合体は、副生成物であるカルボン酸塩を含む場合がある。このカルボン酸塩は、たとえば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウムに代表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。溶液(S1)および溶液(S3)の貯蔵安定性、ならびに組成物のガスバリア性を考慮すると、該カルボン酸塩の量は、ビニルアルコール系重合体の乾燥重量に対して5重量%以下であるのが好ましく、2重量%以下であるのがより好ましく、1重量%以下であるのがさらに好ましい。
カルボン酸塩の含有量は、たとえば、第一工程における触媒の使用量や、ビニルアルコール系重合体の洗浄によって調整できる。ビニルアルコール系重合体は、たとえば、アルコールや、アルコールと水との混合溶媒を用いた公知の方法によって洗浄できる。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応を行うに際し、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応を開始する前に、反応液中に含まれる水分量を管理することによって、水蒸気バリア性、溶液溶解性および溶液安定性が良好な組成物を得ることが可能となる。反応液中に含まれる水分量は、必ずしも限定されるものではないが、反応液に対して300〜200000ppm(重量比)の範囲にあることが好ましく、2000〜100000ppmの範囲にあることがより好ましく、3000〜80000ppmの範囲にあることがさらに好ましく、3000〜60000ppmの範囲にあることが特に好ましい。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応を行う際の反応液としては、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)を溶媒に溶解させてなる溶液(ゾル)を使用する。その際に使用される溶媒は、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)との両方を十分に溶解し得るものであれば特に限定されないが、有機溶媒が好適に用いられる。該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられ、これらを単独で、又はその2種類以上を混合して用いることが好ましい。これらの中ではメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシドを用いることが特に好ましい。有機溶媒の使用量は必ずしも限定されないが、水酸基含有重合体(A)の製造時のハンドリング性、および組成物の水蒸気バリア性が良好となる観点から、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)との総重量100重量部に対して、20〜2000重量部の範囲にあることが好ましく、100〜1000重量部の範囲にあることがより好ましい。ビニルアルコール系重合体中のアシル基(カルボン酸ビニル単位に由来するアシル基)の残存率を下げるには、ビニルアルコール系重合体と親和性を有する有機溶媒を5重量%以上の割合で含む均一な有機溶媒を用いることが好ましい。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応を行うに際して、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常20〜100℃の範囲内であり、好ましくは30〜60℃の範囲内である。反応時間は触媒の量、種類などの反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜10時間の範囲内、好ましくは0.01〜5時間の範囲内であり、より好ましくは0.02〜3時間の範囲内である。また、反応系の雰囲気については、必ずしも限定されるものではなく、空気雰囲気下、窒素気流下などの条件を採用することができる。
前記第一工程において、溶液(S1)を調製する特に好ましい方法は、以下の通りである。上述の方法にしたがって、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応と、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(b)との反応とを同時に進行させることによりビニルアルコール系重合体を含む溶液を製造する。得られたビニルアルコール系重合体を含む溶液から溶媒を除去・乾燥し、固形分を得る。ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール系重合体を乾燥するための公知の方法で乾燥できる。乾燥は、常温で行っても加熱下で行ってもよく、常圧で行っても減圧下で行ってもよい。該固形分は、必要に応じて、溶媒を用いて公知の方法によって洗浄、乾燥する。洗浄のための溶媒には、アルコール溶媒や、アルコールと水との混合溶媒等を用いることができる。このようにして得られた固形分を溶媒に溶解して、溶液(S1)を調製する。
前記第二工程は、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)と、ホウ素原子を含む化合物(C)とを混合して得られる、化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜100000である組成物を含む溶液(S2)を調製する工程である。上記溶液(S2)を調製する工程において、触媒(D)を使用することが、工程を円滑に進行させる観点から好ましい。組成物の水蒸気バリア性の観点から、化合物(B)/化合物(C)のモル比の下限は好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、特に好ましくは4以上である。同様に、化合物(B)/化合物(C)のモル比の上限は、好ましくは5000以下であり、より好ましくは1000以下であり、さらに好ましくは100以下であり、特に好ましくは50以下である。
溶液(S2)の調製方法は特に限定されないが、化合物(B)、化合物(C)および必要に応じて添加される触媒(D)を、溶液中で混合することが好ましい。溶液(S2)を調製するに際し、化合物(B)は単独で添加しても良く、化合物(B)を含む溶液として添加しても良い。化合物(B)を溶液として添加する場合、溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒が好ましい。化合物(B)を含む溶液の濃度は特に限定されない。本発明の製造方法で得られる組成物の生産性の観点からは、化合物(B)を含む溶液の濃度の下限は1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。また、化合物(B)を含む溶液の濃度の上限は90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、70重量%以下であることがさらに好ましく、60重量%以下であることが特に好ましい。
同様に、化合物(C)も単独で添加しても良く、化合物(C)を含む溶液として添加しても良い。化合物(C)を溶液として添加する場合、溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒が好ましい。化合物(C)を含む溶液の濃度は特に限定されない。上述の製造方法で得られる組成物の生産性の観点からは、化合物(C)を含む溶液の濃度の下限は1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。また、化合物(C)を含む溶液の濃度の上限は90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、70重量%以下であることがさらに好ましく、60重量%以下であることが特に好ましい。
また、触媒(D)は単独で使用しても良く、水と共に触媒を使用しても良いが、水と共に触媒を使用することが好ましい。触媒を水と共に使用する場合、水および触媒を同時に添加しても良く、水を添加した後に触媒を添加しても良く、触媒を添加した後に水を添加しても良い。また、水および触媒は一度に添加しても良く、時間をかけて徐々に添加しても良い。
組成物の水蒸気バリア性が良好となる観点から、本発明者らが推奨する溶液(S2)の調製方法は、下記の(I)〜(III)の方法である。
方法(I):化合物(B)および化合物(C)を混合した後に触媒(D)を添加して溶液(S2)を調製する方法。
方法(II):化合物(B)に触媒(D)を添加した後に、化合物(C)を添加して溶液(S2)を調製する方法。
方法(III):化合物(B)に触媒(D)を添加した後に、化合物(C)を添加してから、さらに触媒(D)を添加して溶液(S2)を調製する方法。
上記調製方法(I)〜(III)は、より好ましくは下記方法(I')〜(III')である。
方法(I'):化合物(B)を含む溶液に化合物(C)を含む溶液を添加した後、触媒(D)を添加して溶液(S2)を調製する方法。
方法(II'):化合物(B)を含む溶液に触媒(D)を添加した後、化合物(C)を含む溶液を添加して溶液(S2)を調製する方法。
方法(III'):化合物(B)を含む溶液に触媒(D)を添加した後、化合物(C)を含む溶液を添加し、さらに触媒(D)を添加して溶液(S2)を調製する方法。
溶液(S2)の調製方法である上記の方法(I)〜(III)の中で、得られる組成物の水蒸気バリア性の観点からは、方法(II)および方法(III)の方法がより好ましく、(III)の方法がさらに好ましい。
触媒(D)の添加量は、使用する触媒の種類および溶液(S2)の調製方法により異なるため、一概に添加量を規定するのは難しいが、化合物(B)由来のケイ素原子および化合物(C)由来のホウ素原子の合計量1モルに対して、0.00001〜10モルの範囲であることが、組成物の水蒸気バリア性、溶液(S3)の溶液安定性が良好となる観点より好ましく、0.0001〜5モルの範囲であるのがさらに好ましい。
溶液(S2)の調製方法が上記の方法(I)および方法(II)である場合、化合物(B)由来のケイ素原子および化合物(C)由来のホウ素原子の合計量1モルに対して、触媒(D)の添加量が0.00001〜10モルの範囲であることが好ましく、0.0001〜2モルの範囲であることがより好ましく、0.0005〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。
さらに溶液(S2)の調製方法が上記の調製方法(III)である場合、化合物(B)への触媒(D)の添加量は、化合物(B)由来のケイ素原子1モルに対して0.00001〜10モルの範囲であることが好ましく、0.0001〜2モルの範囲であることがより好ましく、0.0005〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。化合物(B)および化合物(C)を混合した後に、さらに触媒(D)を添加する際の触媒(D)添加量は、化合物(B)由来のケイ素原子および化合物(C)由来のホウ素原子の合計量1モルに対して0.00001〜5モルの範囲であることが好ましく、0.0001〜2モルの範囲であることがより好ましく、0.0005〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。
また、溶液(S2)を調製する第二工程においては、水を添加することが好ましいが、溶液(S2)を調製する際の水の添加量は、化合物(B)由来のケイ素原子および化合物(C)由来のホウ素原子の合計量1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが、組成物の水蒸気バリア性が良好となる観点から好ましい。水の添加量は0.5〜8モルの範囲であることがより好ましく、1〜4の範囲であることがさらに好ましい。
なお、塩酸のように水を含有する成分を触媒(D)として使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定すべきである。
溶液(S2)を調製する第二工程において、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常5〜100℃の範囲内であり、好ましくは10〜60℃の範囲内であり、さらに好ましくは10〜50℃の範囲内である。反応時間は触媒の量、種類などの反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜60時間の範囲内、好ましくは0.1〜12時間の範囲内であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲内である。また、反応系の雰囲気については、必ずしも限定されるものではなく、空気雰囲気下、窒素気流下などの条件を採用することができる。
第三工程は、溶液(S1)および溶液(S2)を混合して溶液(S3)を調製することにより組成物を調製する工程である。溶液(S1)および溶液(S2)を混合する方法は特に限定されない。溶液(S1)に溶液(S2)を添加しても良いし、溶液(S2)に溶液(S1)を添加しても良く、任意の容器に溶液(S1)および溶液(S2)を同時に添加して混合しても良い。これらの中でも、溶液の安定性の観点から、溶液(S1)に溶液(S2)を添加して溶液(S3)を調製することが好ましい。
前記第三工程において、得られる溶液の貯蔵安定性の観点、および得られる組成物が高いバリア性を発現する観点からも、溶液(S3)のpH調整を行うことが好ましい。溶液(S3)のpHは1.0〜7.0の範囲であることが好ましく、1.5〜6.0の範囲であることがより好ましく、2.0〜4.0の範囲であることがさらに好ましく、2.5〜3.5であることが特に好ましい。
溶液(S3)のpHを調整するためには公知技術を用いることができ、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウムなどの酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を添加することによりpHを調整することができる。
第三工程において、溶液(S3)の固形分濃度は特に限定されるものではないが、0.1〜40重量%の範囲内であることが好適であり、0.5〜20重量%の範囲内であることがより好適であり、1〜12重量%の範囲内であることがさらに好適である。固形分濃度が0.1〜40重量%の範囲内である場合には、組成物の水蒸気バリア性がより良好となる。一方、固形分濃度が40重量%を超える場合には溶液(S3)の貯蔵安定性が悪くなる虞があり、0.1重量%未満では組成物の水蒸気バリア性能斑が生じやすくなる虞がある。固形分濃度を調整する際に用いられる溶媒としては特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
上述の組成物の製造方法は、好適には前記溶液(S3)から溶媒を除去する第四工程を含む。前記第四工程において、溶液(S3)から溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、熱風などで加熱し溶媒を除去する方法が好ましく適用される。溶媒を除去する際の加熱媒体の温度は通常30〜200℃の範囲内であることが好ましく、50〜150℃の範囲内であることがより好ましい。乾燥時間は、通常0.0001〜60時間の範囲内であることが好ましく、0.001〜10時間の範囲内であることがより好ましく、0.001〜1時間の範囲内であることがさらに好ましい。また、溶媒を除去する時の雰囲気については、必ずしも限定されるものではないが、空気雰囲気下、窒素気流下などの条件を採用することができる。
金属アルコキシド系化合物のゾル−ゲル法を用いて製造された組成物を含む積層体をバリア材等に用いる場合、金属アルコキシド系化合物の加水分解反応および縮合反応を進め、該材料の物性を向上させるために、金属アルコキシド系化合物からなる溶液の溶媒を除去した後、熱処理を施すことが一般的に行われる。上述の製造方法で得られる組成物についても、溶液(S3)からの溶媒除去がほぼ終了した後であれば、任意の時点で熱処理を施すことが可能であり、120〜250℃の範囲の温度で熱処理を施すことにより、水蒸気バリア性能が著しく向上する。熱処理の温度は140〜240℃の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは150〜230℃の範囲である。
本発明者らは熱処理の効果について確認した結果、上述の製造方法で得られる組成物は、従来の技術で得られる重合体組成物と比較して、より短い熱処理時間でも優れた水蒸気バリア性および酸素バリア性が得られることを見出した。熱処理時間を短くできることは、製品の生産速度すなわち生産性の観点から極めて好ましく、かつ消費電力量などのユーティリティコストの節約の点からも好ましい。さらに、熱処理時間を短くできることで、組成物層を含む積層体の着色および/またはひび割れ等を効果的に抑制することができる。
熱処理は公知の方法を用いて施すことができる。具体的には熱風方式、熱ドラム方式、赤外線加熱、マイクロウエーブ加熱等である。これらの方法を単独で行ってもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、組成物には、紫外線照射または電子線照射を施してもよい。紫外線照射および電子線照射は、溶液(S3)からの溶媒除去がほぼ終了した後であればいつ施してもよい。その方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。
熱処理、紫外線照射、電子線照射は、それぞれ単独で行っても組み合わせて行ってもよい。熱処理、紫外線照射および電子線照射の少なくとも1つを施すことによって、前記組成物物層を含む積層体の水蒸気バリア材性能がより良好になる。
上述の組成物の製造に際し、本発明の効果を損なわない範囲で金属塩、金属錯体、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などを必要に応じて反応系に添加することができる。金属塩又は金属錯体の例としては、上記金属アルコキシド系化合物を湿式で加水分解、重縮合して製造した金属酸化物の微粉末;金属アルコキシド系化合物を乾式で加水分解、重縮合又は燃焼して調製した金属酸化物の微粉末;水ガラスから調製したシリカ微粉末;炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩などの無機酸金属塩;シュウ酸塩などの有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートなどのアセチルアセトナート金属錯体、シクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体などの金属錯体などが挙げられる。
本発明において、化合物(B)の加水分解縮合物は、縮重合反応が進めば実質的にケイ素酸化物となる。したがって、別の側面から見た場合、前記組成物では、上記加水分解縮合物が、ケイ素酸化物である。その場合には、以下の説明において「化合物(B)の加水分解縮合物」を「ケイ素酸化物」に読みかえることができる。同様に、化合物(C)の加水分解縮合物は、縮重合反応が進めば実質的にホウ素酸化物となる。その場合には、以下の説明において「化合物(C)の加水分解縮合物」を「ホウ素酸化物」に読みかえることができる。
本発明に用いられる組成物は、水酸基含有重合体(A)と、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基が結合したケイ素原子を含む少なくとも1種の化合物(B)の加水分解縮合物(またはケイ素酸化物)と、ホウ素原子を含む化合物(C)の加水分解縮合物とを含む。好適な実施態様では、前記組成物は、化合物(B)の加水分解縮合物100重量部に対して、水酸基含有重合体(A)0.1〜200重量部および化合物(C)0.01〜60重量部とを含む。同様に、別の好適な実施態様では、前記組成物は、ケイ素酸化物100重量部に対して、水酸基含有重合体(A)0.1〜200重量部およびホウ素酸化物0.01〜60重量部とを含む。水酸基含有重合体(A)の含有量が0.1重量部に満たない場合、組成物からなる成形物が脆くなり、欠陥を生じる可能性がある。また、水酸基含有重合体(A)の含有量が200重量部を超える場合、水蒸気バリア性が悪化する可能性がある。化合物(B)の加水分解縮合物(またはケイ素酸化物)100重量部に対する、水酸基含有重合体(A)の含有量は、より好ましくは1〜180重量部であり、さらに好ましくは10〜160重量部であり、特に好ましくは40〜150重量部である。
本発明において、組成物中の無機成分(化合物(B)および化合物(C))の含有率は、該組成物を調製する際に使用する原料の重量から算出することができる。すなわち、化合物(B)および化合物(C)、化合物(B)および化合物(C)が部分的に加水分解したもの、化合物(B)および化合物(C)が完全に加水分解したもの、化合物(B)および化合物(C)が部分的に加水分解・縮合したもの、化合物(B)および化合物(C)が完全に加水分解し、その一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどが完全に加水分解・縮合してケイ素酸化物およびホウ素酸化物になったと仮定し、そのケイ素酸化物およびホウ素酸化物の重量を算出する。
また前記組成物においては、前記化合物(B)/前記化合物(C)のモル比が1.5〜10000の範囲である。同様に、別の好適な実施態様では、(前記ケイ素酸化物中のケイ素原子)/(前記ホウ素酸化物中のホウ素原子)のモル比が1.5〜10000の範囲である。前記モル比が1.5に満たない場合およびモル比が10000を超える場合は、充分な水蒸気バリア性が得られない。前記モル比の上限は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、特に好ましくは4以上である。また、前記モル比の下限は、好ましくは5000以下であり、より好ましくは1000以下であり、さらに好ましくは100以下であり、特に好ましくは50以下である。上記モル比は誘導結合プラズマ原子発光分光法によって求めることができる。
前記組成物は、水蒸気バリア性に優れることが好ましい。具体的には、組成物の水蒸気透過速度が20g・2μm/m・day以下(40℃―90%RH雰囲気下)であることが好ましい。水蒸気透過速度の上限は15g・2μm/m・day以下であることがより好ましく、12g・2μm/m・day以下であることがさらに好ましい。
また、前記組成物は、ガスバリア性に優れることが好ましい。具体的には、組成物の酸素透過速度が2.0cc・2μm/m・day・atm以下(20℃―85%RH雰囲気下)であることが好ましい。酸素透過速度の上限は1.0cc・2μm/m・day・atm以下であることがより好ましく、0.5cc・2μm/m・day・atm以下であることがさらに好ましい。
前記組成物において、無機層状化合物(E)を添加することにより水蒸気バリア性の更なる向上が可能である。無機層状化合物(E)としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントライト、およびマイカ等が挙げられる。これらは、天然品および合成品であってもよい。この中でも、組成物の透明性、水蒸気バリア性の観点からモンモリロナイトおよびマイカが特に好ましい。またこれら無機層状化合物(E)は有機処理したものを用いることができる。
上述の組成物の製造方法において、無機層状化合物(E)は溶液(S1)、溶液(S2)および溶液(S3)のいずれに添加しても良いが、無機層状化合物の分散性を考慮すると溶液(S1)、溶液(S3)がさらに好ましい。なお、本発明においては、溶液(S1)、溶液(S2)および溶液(S3)に、上記無機層状化合物(E)を添加して得られる液も、「溶液」と表現する場合がある。
無機層状化合物の添加量は溶液(S3)の安定性および組成物の外観に悪影響を及ぼすことを考慮し、組成物中に0.1〜50重量%含有することが好ましく、0.1〜20重量%含有することがより好ましく、0.1〜10重量%含有することがさらに好ましい。
上述の組成物は、上述した組成物を有機溶媒などの溶媒に分散させて液状としたものであってもよい。このような組成物は、コーティング剤(塗液組成物)やフィルムの原料として用いることができる。溶媒の量は、組成物の用途に応じて決定される。溶媒には、上述した組成物の製造方法の説明において例示される溶媒を用いることができる。
本発明の積層体の製造方法は特に限定されない。好ましい実施態様では、本発明に用いられる組成物層は、前記溶液(S3)を用いてキャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法などの公知の手法を採用し、前記溶液(S3)からなる膜を形成させることで得られる。前記溶液(S3)からなる膜を形成させる方法としては、生産性の観点からは、前記溶液(S3)を含むコーティング液を用いて、ロールコーティング法により製膜する方法が好ましい。また、基材層に組成物層を積層する際には、基材の種類に応じて一般的に用いられている公知のアンダーコーティング剤又は接着剤を使用することが好ましい。
本発明に用いられる金属酸化物層としては、酸化窒化珪素層、酸化珪素層、酸化アルミニウム層、酸化珪素酸化アルミニウム複合層および酸化チタン層からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは酸化窒化珪素層、酸化珪素層、酸化アルミニウム層からなる群より選ばれる少なくとも1種である。金属酸化物膜を形成する手法としては、特に限定されないが、蒸着法、スパッタリング法、もしくはイオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、もしくはゾルゲル法、ポリシラザン法などの湿式コーティング法が挙げられる。バリア性の観点から、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)がより好ましい。金属酸化物膜の厚みは特に限定されないが、割れの発生を防ぐ観点からは、その厚みは0.001〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.5μmであることがより好ましい。
本発明の積層体は、基材層、組成物層および金属酸化物層を含む。その積層順序は特に限定されないが、特に好ましい実施態様では、組成物層に金属酸化物膜層が直接積層された積層体として用いられる。すなわち、好適な実施態様では、本発明の積層体は基材層/金属酸化物層/組成物層の順に積層されてなる層構成を有し、別の好適な実施態様では、基材層/組成物層/金属酸化物層の順に積層されてなる層構成を有する。さらに、基材層と他の層とを積層する際に、基材の種類に応じて一般的に用いられている公知のアンダーコーティング剤又は接着剤を使用してもよい。また組成物層と金属酸化物層を交互に4層以上積層しても良い。すなわち、本発明の積層体は基材層/金属酸化物層/組成物層/金属酸化物層/組成物層の順に積層されてなる層構成を有しても良いし、基材層/組成物層/金属酸化物層/組成物層/金属酸化物層の順に積層されてなる層構成を有しても良く、この中でも基材層/金属酸化物層/組成物層/金属酸化物層/組成物層の順に積層されてなる層構成が特に好ましい。このように交互に多層積層することで、より高いバリア性を示す。以上のような層構成を採用することにより、本発明の積層体のバリア性が著しく向上するだけでなく、金属酸化物層が割れにくくなり屈曲させても高いバリア性を維持することができるようになり、その工業的価値が極めて高いものになる。
本発明の積層体は、金属酸化物層と組成物層が直接積層されることで、基材/金属酸化物層のバリア性および組成物層のバリア性から予想される以上のバリア性を示す。これは組成物層が金属酸化物層の欠陥部を埋めるだけでなく、金属酸化物層表面と接触している組成物層が金属酸化物層表面と化学結合を形成しバリア性の高い界面を形成するためであると考えられる。
前記積層体に他の層を積層させることも可能である。前記方法で製造した基材層/金属酸化物層/組成物層からなる積層体に、例えばポリアミドからなるフィルムをドライラミネートなどの公知の方法により積層しても良い。この時の層構成としては基材層/金属酸化物層/組成物層/接着剤/ポリアミドとしても良いし、ポリアミド/接着剤/基材層/金属酸化物層/組成物層としても良い。他の層を積層することで、耐衝撃性などの機能の付与が可能となり、より付加価値の高い積層体を得ることができる。
本発明の積層体の全層厚みは特に限定されないが、10〜1000μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。薄すぎるとバリア性、強度の観点から不利であり、逆に厚すぎると不経済である。
本発明の積層体は優れた水蒸気バリア性を有する。具体的には、本発明の積層体は、40℃―90%RH雰囲気下の水蒸気透過速度が0.2g/m・day以下である積層体であることが好ましく、より好ましくは、0.1g/m・day以下である。また、好適な実施態様では、本発明の積層体は優れた酸素バリア性を有する積層体である。本発明の積層体は、20℃―85%RH雰囲気下の酸素透過速度が0.1cc/m・day・atm以下である積層体であることが好ましく、より好ましくは0.01cc/m・day・atm以下である。
本発明の積層体の用途は特に限定されない。好適な実施態様では、本発明の積層体はフィルムとして用いられ、より好ましい実施態様では水蒸気バリア性を有する水蒸気バリアフィルムとして用いられる。さらに好適な実施態様では、水蒸気バリア性および酸素バリア性を有するバリアフィルムとして用いられる。本発明の積層体は、優れたバリア性を高湿度条件下および屈曲条件に晒された後でも高度に保持し得る。このため、本発明の積層体は、電子材料包装用フィルムおよび食品包装用フィルムなどの包装材として特に有用である。
本発明の積層体は優れた水蒸気バリア性を有するため、酸素や水により劣化を起こし易い部材と積層することにより、部材を長寿命化することができる。このため上記積層体は酸素や水により劣化する部材の保護膜として用いることができる。好ましい実施態様では、本発明の積層体はディスプレイ素子の少なくとも片側に積層してディスプレイとして用いられ、より好ましい実施太陽では、本発明の積層体はディスプレイ素子の両側に積層してディスプレイとして用いられる。さらに好ましくは、前記ディスプレイ素子が有機EL素子または液晶ディスプレイ素子である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」及び「部」は特に断りのない限り、「重量%」及び「重量部」を意味する。
<参考例1>
スパッタ装置の真空槽内にOPET(東レ株式会社製、ルミラー(商品名)、フィルム厚み12μm)を装着し、10−4Pa台まで真空にし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.04Pa導入し、反応ガスとして酸素を分圧で0.04Pa導入した。圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところで、シャッターを開きOPET上へ酸化珪素を成膜した。膜厚が50nmになったところでシャッターを閉じ、成膜を終了し、酸化珪素膜50nmを有する基材(OPET/酸化珪素)を作製した。
<実施例1>
水酸基含有重合体(A)として粘度平均重合度500、けん化度98.5モル%のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「ポバールPVA−105」)を、金属アルコキシド化合物(B)としてテトラメトキシシランを、ホウ素原子を含む化合物(C)としてトリメトキシボランを、それぞれ用いた。水酸基含有重合体(A)40.0重量部に蒸留水360.0重量部を加え90℃で1時間加熱溶解させ、固形分濃度10重量%の水酸基含有重合体(A)を含む溶液(S1−1)を調製した(第1工程)。
次にテトラメトキシシラン146.7重量部をメタノール146.7重量部に溶解した後、蒸留水4.9重量部および0.1N(規定)−塩酸12.0重量部を加えてゾルを調製した。得られたゾルを攪拌しながら10℃で30分反応させた後、当該ゾルに対してトリメトキシボラン(和光純薬製、一級)を6.3重量部添加した。前記ゾルにさらに蒸留水4.9重量部および0.1N(規定)−塩酸12.0重量部を加えた後、これを攪拌しながら10℃で30分反応させて、溶液(S2−1)を調製した(第2工程)。得られた溶液(S2−1)に含まれる、化合物(B)/化合物(C)のモル比は15.7だった。
上記方法で得られた溶液(S2−1)を蒸留水175.5重量部で希釈した後、当該希釈溶液を、速やかに第1工程で調製した上記溶液(S1−1)に攪拌下に添加して、溶液(S3−1)を調製した(第3工程)。溶液(S3−1)のpHは2.9であった。溶液(S3−1)は、その調製後、25℃の雰囲気下で30分静置した。
上記溶液(S3−1)の溶媒を除去すること(第4工程)で、本発明の被膜層を固体状で得ることができる。本実施例における被膜層中の水酸基含有重合体(A)の含有量は40.0重量%であり、ケイ素酸化物の含有量は57.9重量%であり、ホウ素酸化物の含有量は2.1重量%であった。
参考例1で作製したOPET/酸化珪素からなる基材の酸化珪素面上に、静置後の溶液(S3−1)を、乾燥後の厚みが1μmになるようにバーコーターにより塗工した。塗工後の基材を、120℃で5分間乾燥した後に、さらに200℃で30秒間熱処理を行った。このようにして、無色透明な塗膜を有する積層体(OPET(12μm)/酸化珪素(50nm)/組成物層(1μm))を得た。得られた積層体を用いて、以下の方法にしたがって積層体の外観を評価し、水蒸気透過速度および酸素透過速度を測定した。本実施例における積層体の外観は良好(評価:○判定)であり、水蒸気透過速度は測定限界の0.1g/m・day以下であり、酸素透過速度も測定限界の0.01cc/m・day・atm以下であった。
(1)積層体の外観の評価
上記方法で得られた積層体について、目視による外観評価を行った。外観評価は、以下の規準に従った。
◎:無色、透明でブツがなく、外観に優れる。
○:やや不透明、および/またはブツが見られるが、外観上大きな問題はない。
×:不透明および/またはブツが多く、外観に劣る。
(2)水蒸気透過速度
上記方法で得られた積層体から2枚の試料(12cm×12cmの正方形)を作製した。当該2枚の試料について水蒸気透過速度測定装置(モダンコントロール社製「MOCON PERMATRAN−3/33」)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件下でそれぞれ水蒸気透過速度を測定し、それらの平均値から積層体の水蒸気透過速度(単位:g/m・day)を求めた。
(3)酸素透過速度
上記方法で得られた積層体から2枚の試料(12cm×12cmの正方形)を作製した。当該10枚の試料について、酸素透過速度測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて、温度20℃、湿度85%RH且つ酸素圧2.5kgf/cmの条件下でそれぞれ酸素透過速度を測定し、それらの平均値から積層体の酸素透過速度(単位:cc/m・day・atm)を求めた。
<実施例2>
無機層状化合物(E)として雲母(コープケミカル製、商品名「ME−100」)10重量部および蒸留水90重量部を、ミキサー(NAVIC社製、スピンドルEL−64)を用いて13000回転/分にて1時間撹拌し、無機層状化合物(E)の分散液を調製した。実施例1で作製した(A−1)を含む溶液に、無機層状化合物(E)の分散液を添加した後、ミキサー(NAVIC社製、スピンドルEL−64)を用いて13000回転/分にて1時間撹拌し、固形分濃度10重量%の(A−2)および無機層状化合物(E)を含有する溶液(S1−2)を調製した(第1工程)。
実施例1において、溶液(S1−1)の替わりに上記作製した溶液(S1−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして溶液(S3−2)を調製した。溶液(S3−2)のpHを1N塩酸にてpH3.0に調整し溶液(S3−2’)を得た。当該溶液(S3−2’)を用いて無色透明な塗膜を有する積層体(OPET(12μm)/酸化珪素(50nm)/組成物層(1μm))を得た。本実施例で得られた積層体を用いて、水蒸気透過速度および酸素透過速度を測定した。本実施例における積層体の外観は良好(評価:○判定)であり、水蒸気透過速度は測定限界の0.1g/m・day以下であり、酸素透過速度も測定限界の0.01cc/m・day・atm以下であった。
<比較例1>
参考例1で作製した酸化珪素膜50nmを有する基材(酸化珪素/OPET)の外観は良好(評価:◎判定)であり、水蒸気透過速度は0.9g/m・dayであり、酸素透過速度は1.2cc/m・day・atmであった。
<比較例2>
金属酸化物層を有さないOPET(東レ株式会社製、ルミラー(商品名)、フィルム厚み12μm)基材に、静置後の溶液(S3−1)を、乾燥後の厚みが1μmになるようにバーコーターにより塗工した。塗工後の基材を、120℃で5分間乾燥した後に、さらに200℃で30秒間熱処理を行った。このようにして、無色透明な塗膜を有する積層体(OPET(12μm)/被膜層(1μm))を得た。本比較例で得られた積層体の外観は良好(評価:○判定)であり、水蒸気透過速度は5g/m・dayであり、酸素透過速度は0.2cc/m・day・atmであった。
<比較例3>
テトラメトキシシラン146.7重量部をメタノール146.7重量部に溶解した後、蒸留水5.8重量部および0.1N(規定)−塩酸24.0重量部を加えてゾルを調製した。得られたゾルを攪拌しながら10℃で60分反応させて、溶液(S2−2)を調製した(第2工程)。
実施例1において、溶液(S2−1)の替わりに上記作製した溶液(S2−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして溶液(S3−3)を調製した。当該溶液(S3−3)を用いて無色透明な塗膜を有する積層体(OPET(12μm)/酸化珪素(50nm)/組成物層(1μm))を得た。本比較例で得られた積層体を用いて、水蒸気透過速度および酸素透過速度を測定した。本比較例における積層体の外観は良好(評価:◎判定)であり、水蒸気透過速度は0.3g/m・dayであり、酸素透過速度は0.02cc/m・day・atmであった。

Claims (12)

  1. 基材層、組成物層および金属酸化物層を含む積層体であって、前記組成物層が、水酸基含有重合体(A)と、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合したケイ素原子を含む化合物(B)の加水分解縮合物と、ホウ素原子を含む化合物(C)の加水分解縮合物とを含む組成物からなり、かつ前記化合物(B)/化合物(C)のモル比が1.5〜10000の範囲であることを特徴とする積層体。
  2. 前記基材層が、ポリエステル層、ポリアミド層およびポリオレフィン層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層である請求項1に記載の積層体。
  3. 前記基材層が、ポリシクロオレフィン層およびポリエーテルサルホン層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層である請求項1に記載の積層体。
  4. 前記水酸基含有重合体(A)がポリビニルアルコールおよび/またはエチレン−ビニルアルコール共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記組成物層が、無機層状化合物(E)を0.1〜50重量%含有する組成物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記金属酸化物層が、酸化窒化珪素層、酸化珪素層、酸化アルミニウム層、酸化珪素―酸化アルミニウム複合層および酸化チタン層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記積層体が、40℃―90%RH雰囲気下の水蒸気透過速度が0.2g/m・day以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体を、ディスプレイ素子の少なくとも片側の表面に積層してなるディスプレイ。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体を、ディスプレイ素子の両側の表面に積層してなるディスプレイ。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体により、ディスプレイ素子が密封されてなるディスプレイ。
  11. 前記ディスプレイのディスプレイ素子が有機EL素子である請求項8〜10のいずれか1項に記載のディスプレイ。
  12. 前記ディスプレイのディスプレイ素子が液晶ディスプレイ素子である請求項8〜10のいずれか1項に記載のディスプレイ。


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