以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunication)規格に準拠したデジタルコードレス電話機を例に説明する。DECTは、欧州の電気通信標準化機関であるETSI(European Telecommunications Standards Institute)で標準化されている方式である。
(実施の形態1)
デジタルコードレス電話機は、1つの親機1(図1参照)と、1または複数の子機2(図2参照)と、子機2と同数の充電台3(図2参照)と、から構成される。親機1(無線通信装置)は、各子機2とTDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信を行う。
図1は、本発明の一実施の形態に係る親機1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、親機1は、電話回線インターフェース101と、主制御部102と、メモリ部103と、無線部104と、アンテナ105と、表示部106と、操作部107と、マイクロフォン108と、スピーカ109と、クロック生成部110と、から主に構成される。
電話回線インターフェース101は、電話回線と主制御部102とを繋ぐインターフェースであり、着呼処理、発呼処理を行って電話回線を介して外部の電話機と接続したり、回線の開放・閉結を行ったりする。
主制御部102は、CPUを含み、メモリ部103に記憶されている制御プログラムに基づいて、各部から出力された信号の処理、および、各部の制御を行う。特に、主制御部102は、デジタル音声データに対してADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)方式の符号化処理を行い、制御データを付加し、フレーム中の所定のスロットに挿入し、周波数変調等の変調処理を行い、ベースバンドの送信信号を生成する。また、主制御部102は、ベースバンドの受信信号に対して復調処理を行い、フレーム中の所定のスロットから制御データおよび音声符号化データを取り出し、音声符号化データに対してADPCM方式の復号処理を行い、デジタル音声データを生成する。
メモリ部103は、例えば、主制御部102が使用する制御プログラム、および、各種データを記憶する。また、メモリ部103は、主制御部102の作業用メモリ、各種情報を記録しておくテーブルを備える。メモリ部103の登録情報記録部(図示せず)は、親機1自身のID(Identification)、通信相手である各子機2のID、他の子機のID等を記憶する。なお、メモリ部103に記憶される情報の内、本発明に関わるものについては後述する。
無線部104は、主制御部102から出力されたベースバンドのデジタル信号に対して、増幅、アップコンバート等の無線処理を行い、アンテナ105から無線信号を送信する。また、無線部104は、アンテナ105に受信された無線信号に対して、増幅、ダウンコンバート等の無線処理を行い、ベースバンドのデジタル信号を主制御部102に出力する。
表示部(LCD:Liquid Crystal Display)106は、主制御部102から出力された各種情報を表示する。操作部107は、多様なボタン、ダイヤル、キーを有し、ユーザの意志に基づく操作内容を電気信号に変換して主制御部102に出力する。
マイクロフォン108は、ユーザの音声を集音し、音声信号に変換して主制御部102に出力する。スピーカ109は、小型スピーカを含み、電話回線インターフェース101から呼出信号を受信した場合に報知音を出力し、主制御部102から出力された音声信号を音声に変換して発音する。
クロック生成部110は、親機1の各部が動作するために用いられるクロック信号を生成する。
ここで、本発明の特徴的な構成として、主制御部102は、送信電力制御部102aおよびタイマ部102bを有する。また、無線部104は、レベル測定部104a、増幅部104bおよび同期制御部104cを有する。
送信電力制御部102aは、レベル測定部104aにて測定された各子機2からの受信信号の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいて送信電力値を計算し、計算結果を示す制御信号を増幅部104bに出力する。なお、送信電力制御部102aにおける具体的な送信電力制御方法は後述する。
タイマ部102bは、スリープ時間等の所定の時間を計時する。
レベル測定部104aは、子機2からの受信信号の受信電界強度を測定し、受信電界強度の測定値を示すRSSI信号を送信電力制御部102aに出力する。
増幅部104bは、送信電力制御部102aの制御に基づいて、アンテナ105から送信される無線信号の電力を増幅する。
同期制御部104cは、無線部104がDECTプロトコルを用いて無線通信を行う場合、クロック生成部110の基準クロックに基づいて、無線部104による通信信号の通信タイミングを決定する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る子機2および充電台3の構成を示すブロック図である。図2に示すように、子機2は、主制御部201と、メモリ部202と、無線部203と、アンテナ204と、表示部205と、操作部206と、マイクロフォン207と、スピーカ208と、充電回路211と、2次電池212と、電源制御部213と、から主に構成される。また、子機2は、端子T21、T22を有する。
主制御部201は、メモリ部202に記憶されている制御プログラムに基づいて、各部から出力された信号の処理、および、各部の制御を行う。また、主制御部201は、充電回路211から充電検出信号を受け取ると、子機2が充電台3に載置されたことを通知するための通知メッセージ(以下、「載置通知メッセージ」という)を無線部203,アンテナ204を介して親機1に送信する。
また、主制御部201は、充電回路211から出力されていた充電検出信号が停止されると、子機2が充電台3から離れたことを通知するための通知メッセージ(以下、「分離通知メッセージ」という)を無線部203,アンテナ204を介して親機1に送信する。
メモリ部202は、制御プログラム等、所定の情報を記憶する。
無線部203は、主制御部201から出力されたベースバンドのデジタル信号に対して、増幅、アップコンバート等の無線処理を行い、アンテナ204から無線信号を送信する。また、無線部203は、アンテナ204に受信された無線信号に対して、増幅、ダウンコンバート等の無線処理を行い、ベースバンドのデジタル信号を主制御部201に出力する。
表示部205は、主制御部201から出力された各種情報を表示する。操作部206は、多様なボタン、ダイヤル、キーを有し、ユーザの意志に基づく操作内容を電気信号に変換して主制御部201に出力する。
マイクロフォン207は、ユーザの音声を集音し、音声信号に変換して主制御部201に出力する。スピーカ208は、主制御部201から出力された音声信号を音声に変換して発音する。
端子T21,T22は、子機2を充電台3に載置した際に端子T31,T32と接触させて充電電流を入力するための端子である。
充電回路211は、充電台3から供給される充電電流を入力して2次電池212および電源制御部213に供給する。また、充電回路211は、子機2が充電台3に載置され、充電台3からの充電電流を検出した場合、充電検出信号を信号送信部201に出力する。また、充電回路211は、子機2が、載置されていた充電台3から離れ、充電台3からの充電電流を検出しなくなった場合、充電検出信号の出力を停止する。
2次電池212は、充電回路211からの充電電流を蓄電し、電源制御部213に放電する。電源制御部213は、安定した直流電圧を、主制御部201に供給する定電圧源であり、充電回路211あるいは2次電池212からの直流電圧(例えば2.5V)をさらに低い電圧(例えば1.8V)に変換する。
図2に示す充電台3は、外部電源コネクタ301と、電源回路302と、から主に構成される。また、充電台3は、端子T31、T32を備える。端子T31,T32は、子機2に充電電流を供給するための端子である。
外部電源コネクタ301は、外部電源と接続して、直流電流を入力する。電源回路302は、外部電源コネクタ301からの直流電圧(例えば6.5V)を適正な電圧(例えば2.5V)に変換し、子機2の充電回路211に供給するDC/DCコンバータである。
図3に示すように、子機2は、ユーザが充電台3に載置すること、及び、充電台3から離すことが容易にできる構造となっている。子機2は、充電台3に載置されると、充電台3と電気的に接続し、2次電池212に充電台3からの充電電流を蓄電する。なお、親機1には、子機2に充電することができる構造を持つものがある。この場合、子機2は、親機1の充電部に載置されると、親機1と電気的に接続し、2次電池212に親機1からの充電電流を蓄電する。
ここで子機2の間欠動作について説明する。子機2の電源制御部213は、定電圧安定機能の他に、電源電力のHi/Lowを切り替えるスイッチ機能を有する。主制御部201のタイマ部201b(図18における第1のタイマ)はスリープ時間を計時する。主制御部201は、スリープ時間が満了値(約5分)に達する毎に電源制御部213のスイッチをHiに切り替え、無線部203に動作可能な電力を供給する。
一方、主制御部201は、電源制御部213のスイッチをLowに切り替えると、無線部203への電力供給を遮断する。また、スイッチがLowのとき、主制御部201はスリープ状態になり、電源制御部213は主制御部201に必要最小限の電力(タイマ部201bおよび低速のクロック回路を動作させ続けることが可能な電力)を供給する。
電源制御部213のスイッチがHiになると、無線部203が動作を開始する。無線部203が動作を開始し、親機1との通信が可能な状態になると、主制御部201の制御によって種々の通信に必要な動作が行われる。
主制御部201は通信に必要な動作を終了すると、電源制御部213に対してスイッチをLowに戻す等に指示を出し、電源制御部213はLow電力状態に切り替わることによる主制御部201はスリープ状態に入る。このように子機2は間欠的な通信を行う。
なお、子機2が間欠的な通信の合間に主要部の動作を完全に停止させる場合もある。例えば、必要な時のみ画像を撮像するカメラ機能付き子機や、窓の開閉を検知するセンサ付子機等は、待機状態の時の電力消費を極力下げることが望ましいため、このような構成にすることが好ましい。
この場合、子機2の電源制御部213のスイッチ機能は、電源電力のOn/Offを切り替える。無線部203および主制御部201には、電源制御部213のスイッチがOnのときのみ電力が供給され、電源制御部213のスイッチがOffのときには電力が供給されない。
ただし、電源制御部213のスイッチがOffのときでも、タイマ部201bには電池から電力が供給される。タイマ部201bは、常時、低速のクロック回路を動作させてカウント動作を行う。
タイマ部201bのカウント値が満了値(約1時間)に達する毎に、電源制御部213のスイッチはOnに切り替えられ、主制御部201および無線部203に電力が供給され、主制御部201の制御によって種々の通信に必要な動作が行われる。
主制御部201は、通信に必要な動作を終了すると、電源制御部213にスイッチをOffにするように指示を出す。電源制御部213は、スイッチをOffに切り替えて主制御部201および無線部203への電力供給を停止させる。これにより、主制御部201は、スリープ状態に入る。子機2が、スリープ状態において主要部の電源を完全にOffにする機能(ULE:ultra low energy)を持つことにより、電力消費を大幅に下げることができる。
また、本発明の特徴的な構成として、主制御部201は、送信電力制御部201aを有する。また、無線部203は、レベル測定部203aおよび増幅部203bを有する。レベル測定部203aは、親機1からの受信信号の強度(RSSI)を測定する。
送信電力制御部201aは、親機1からの制御信号内の情報によって通知された親機1の送信電力値と、当該親機1からの制御信号の受信信号の強度(RSSI)に基づいて伝播損失(親機1との距離に相当)を判定し、子機2の送信電力値を計算し、メモリ部202に記録する。また、送信電力制御部201aは、計算した送信電力値で信号を送信するように増幅部203bを制御する。増幅部203bは、送信電力制御部201aによる制御に基づいて無線信号を増幅する。
また、主制御部201は、内蔵するカウンタによる定期的なタイミングで親機1に対して各種通知メッセージを送信する。特に、主制御部201は、ほぼ5分に1回の通知タイミングにおいて、メモリ部202に記憶されている当該子機2の最新の送信電力値を読出し、当該送信電力値を示すメッセージを親機1に送信する。
また、主制御部201は、前述のように計算した親機1との間の伝播損失が所定の基準値より低くなった場合、または、親機1の制御信号が正常に受信できない場合には、送信電力制御を行わずに送信電力値をフルパワーとすることを示す通知メッセージを親機1に送信する。なお、子機2の送信電力制御部201aにおける具体的な送信電力制御方法は後述する。
次に、DECT方式で通信する場合の、通信制御について説明する。まず、DECT方式における多重通信について説明する。
図4は、DECT方式における無線信号の多重化方式のフレーム、スロット構成を示す図である。図4に示したように、DECT方式では、10ms周期の1フレームを24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)に分割したTDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex)方式で無線多重通信を行う。また、DECT方式では、通信用に5つの周波数を使用することができる。
次に、DECT方式における無線信号のフィールド構成について説明する。図5は、DECT方式の無線通信システムで使用する1つのスロットで送受信される無線信号のフィールド構成を示す。図5に示すように、1つのスロットで送受信される無線信号は、同期フィールド、AフィールドおよびBフィールドの3つのフィールドで構成される。
同期フィールドは、ビットタイミングの同期を取るためのプリアンブルと後続のAフィールドの開始位置を検出するためのシンクワードで構成された同期信号のためのフィールドである。Aフィールドは、Aフィールドのメッセージの種別を示すメッセージ種別とBフィールドのデータフォーマットを示すフォーマット識別情報とAフィールドメッセージで構成された制御データ1とAフィールドで受信したデータの受信エラー検出用の誤り検出符号1のためのフィールドである。
Bフィールドは、用途に応じたフォーマットで使用されるフィールドであり、通信制御用の制御データ、音声通信用の音声データ、画像通信用の画像データ、および、メッセージ通信用のメッセージのためのフィールドである。
次に、DECT方式における無線通信制御用のメッセージについて説明する。DECT方式における無線通信制御用のメッセージは、NTメッセージ、MTメッセージ、PTメッセージ、QTメッセージ、および、CTメッセージに分類される。
NTメッセージは、親機が自機の識別番号(即ち親機ID)を子機に通知するためのメッセージである。親機は、後述する制御信号の中にNTメッセージ含めて送信する。子機は、受信したNTメッセージにより、自機と通信を行う親機を選択する。また、NTメッセージは、子機から送信する際に親機を指定するために使用される。
MTメッセージは、親機と子機との間の無線リンクの確立、維持、切断のために使用されるメッセージである。また、MTメッセージは、本発明において、子機から親機に送信電力値を通知するメッセージとして使用される。
PTメッセージは、制御局から従属局を呼び出すためのページング用に使用されるメッセージである。また、PTメッセージは、本発明において、制御局から従属局に送信電力値を通知するメッセージとして使用される。
QTメッセージは、フレーム番号やスロット番号等の、フレーム、スロットの同期を確立するために必要な情報等を通知するために使用されるメッセージである。
CTメッセージは、呼制御や認証のために使用されるメッセージである。また、CTメッセージは、本発明において、制御局から従属局に送信電力値の通知メッセージの送信を要求するメッセージとして使用される。
次に、DECT方式における、待機状態での親機1と子機2の通信について図6および図7を用いて説明する。
図6に示すように、DECT方式では、10ms周期の1フレームに24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)が含まれる。親機1は、常時、フレーム毎に、所定のスロット(図6では第2スロット)で制御信号を送信している。すなわち、親機1は、各フレームの予め定められた所定のスロットを、制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)に決め、この制御チャネルにおいて10msのフレーム周期で制御信号(Beacon)を送信する。また、他の通話チャネルにおいても10msのフレーム周期で信号が送受信される。
同期信号としての役割を持つ制御信号は同期データ(例えば、Syncword)を含む。Syncwordは、タイミング同期用の予め決定された既知の数字列であり、子機2が同期するための同期情報となる。受信側の子機2は、この既知の数字列を見つけた時点でフレームの切り出しと取り込みを始める。DECT方式では、ネットワーク毎に固有のSyncwordが割り当てられ、各機器が送信する信号には、当該Syncwordが含まれている。
親機1は、この制御信号によって自機のIDを送信する。子機2は制御信号を受信しながら親機1のIDを取得し、待ち受ける親機1(登録した親機1)のIDと比較して同期すべき親機1を選択する。
図6に示すように、待機状態では、子機2は、親機1に信号を送信しない。発呼などのイベント等が発生し、通話状態になった場合のみ、子機2は、フレーム毎に、親機1に信号を送信する。また、子機2は、親機1に定期的に通知メッセージを送信する。その際、子機2は、予め定められた所定のスロットによって、そのイベントに関する通知メッセージを親機1に対して送信する。図6の例では、子機2は、第14スロットを使って通知メッセージを送信する。また、後述のように数分の周期で、子機2は、何れかのスロットを選択し、種々の通知メッセージを親機1に送信する。
次に、DECT方式における通話状態での親機1と子機の通信について、図7を用いて説明する。通話状態でも親機1は、待機状態と同様に制御信号(Beacon)を子機2に送信する。通話の為の通話チャネルとしては,制御信号のスロットとは異なるスロットが用いられる。親機1および子機2は、各フレームにおいて、親機1が指定した上りと下りのスロット(図7では第5スロットおよび第17スロット)にて、音声信号を送信/受信する。
本実施の形態の親機1は、各子機2から送信された通知メッセージ(送信電力通知メッセージあるいはイベント通知メッセージなど)の受信電界強度を測定し、各子機2と親機1との間の伝播損失を計算し、計算結果に基づいて親機の送信電力値を制御する。また、子機2は、親機1から送信される制御信号(送信電力通知メッセージ)の受信電界強度を測定し、各子機2と親機1との間の伝播損失を計算し、計算結果に基づいて子機の送信電力値を制御する。以下、親機1および子機2の送信電力制御について説明する。
図8は、本発明の一実施の形態に係る親機1のメモリ部103に記憶される情報を示す。図8に示すように、親機1のメモリ部103には、各子機2について、子機のID番号(IDi)、通知メッセージ(送信電力通知メッセージあるいはイベント通知メッセージ)などの受信電界強度に基づいて計算した伝播損失(Pppi)、各子機2が電力制御の機能を有するか否かを示す情報、および、通知メッセージの受信時刻(Tppi)が対応付けて記憶される。以下、図8に示したテーブルを親機側送信電力制御テーブルという。
レベル測定部104aは、親機1が各子機2から通知メッセージを受信する度に、通知メッセージの受信電界強度を測定し、受信電界強度の測定値を主制御部102(送信電力制御部102a)に出力する。
主制御部102は、いずれかの子機2から送信電力通知メッセージを受信すると、当該メッセージで通知された子機2の送信電力(送信電力通知メッセージを送信した際の送信電力)とレベル測定部104aより通知された送信電力通知メッセージの受信電界強度より伝播損失を計算し、当該子機2のID、伝播損失および受信時刻を対応付けて、メモリ部103に記憶する。
また、主制御部102は、メモリ部103において電力制御の機能を有するか否かを示す情報が「無」となっている子機(例えばID3の子機)から送信電力通知メッセージ以外の通知メッセージ(例えば、イベント通知メッセージ)を受信すると、予め決められた子機2の送信電力(例えば、DECTのコードレス電話子機であれば23dbm)とレベル測定部104aにより通知された通知メッセージの受信電界強度に基づいて伝播損失を計算し、当該子機のID、伝播損失および受信時刻を対応付けて、メモリ部103に記憶する。
送信電力制御部102aは、所定のタイミングで、メモリ部103に記憶されている伝播損失(Pppi)の最大値を用いて、送信電力値を計算する。なお、送信電力制御部102aが送信電力制御を行うタイミングとして、図8に示したメモリ部103に記憶された情報内容が更新されたタイミング等が挙げられる。
具体的には、送信電力制御部102aは、メモリ部103に格納された、各子機2から送信される通知メッセージを受信した際の各伝播損失(Pppi)を読み出し、その最大値を選択する。親機1と通信が可能な各子機2は、後で説明する手順で親機1に送信電力値を通知する。なお、電力制御の機能を有しない各子機2の送信電力値は、製品の製造段階で親機1のメモリ部103に予め格納される。
本実施の形態では、最も親機1からの信号の受信信号レベルが弱い子機2にあわせて制御信号を送信するときの増幅部104bの増幅度を制御する。具体的には、親機1は、メモリ部103に格納された情報から、最も伝播損失が大きい子機2の伝播損失を読み出し、自らが送信する信号が相手(子機)に到達するレベルが所定のレベル以上になるように送信電力値を決定する。
送信電力制御部102aは、最も親機からの信号のレベルが弱い子機2に関する伝播損失に受信電力基準値を加えた値に応じて、親機1が制御信号を送信するための送信電力値を計算する。なお、受信電力基準値は、親機1と子機2が通信を維持するため、または通信干渉を抑圧するために必要な受信電力値にマージンを加えた値である。
そして、送信電力制御部102aは、計算した送信電力値で信号を送信するように増幅部104bを制御する。すなわち親機1が制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)で制御信号を送信する際、増幅部104bは送信電力制御部102aによって制御された送信電力値で制御信号を送信する。
図10は、本実施の形態において、親機1が制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)で制御信号を送信する時の信号到達エリアの調整の様子を示す図である。ID1の子機が送信する通知メッセージの受信電界強度を用いて計算した伝播損失をPpp1、ID2の子機が送信する通知メッセージの受信電界強度を用いて計算した伝播損失をPpp2、ID3の子機が送信する通知メッセージの受信電界強度を用いて計算した伝播損失をPpp3とした場合、親機1における各子機(ID1, ID2, ID3)の伝播損失が、Ppp1<Ppp2<Ppp3であるならば、親機1は最大値Ppp3を用いて送信電力値を計算する。
これにより、親機1の遠方に存在し、伝播損失が大きい子機でも、通信を維持するために必要な受信電力値で、親機1から制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)で送信される制御信号を受信することができる。また、親機1の送信電力値が低減されるので、他の無線通信システムへの電波干渉を抑えることができる。また、親機1から送信される制御信号の送信電力制御は、単位面積当たりのシステムの収容数を増やすためには非常に有効である。
次に、本発明の一実施の形態に係る子機2のメモリ部202に記憶される送信電力制御の為の情報について説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る子機2のメモリ部202に記憶される情報を示す。図9に示すように、子機2のメモリ部202には、登録している親機1のID番号(ID-M)、親機1から送信される制御信号を受信した時に測定した受信電界強度(親機信号RSSIレベル:Mp)、親機1から送信される制御信号の受信電界強度の測定値と制御信号に乗せて通知された親機1の送信電力値を示す情報とから計算した自機と親機との間の伝播損失(M-loss)、子機2の送信電力値(PW-p)および子機2の送信電力値を親機1に通知した最新の通知時刻(TM-p)が記憶される。以下、図9に示したテーブルを子機側送信電力制御テーブルという。
子機2のレベル測定部203aは、待機状態の時、親機1からの制御信号を受信する度に受信電界強度を測定し、受信電界強度の測定値を主制御部201に出力する。主制御部201は、制御信号の受信電界強度(Mp)をメモリ部202の子機側送信電力制御テーブルに記憶する。また、後述するように、主制御部201は、所定のタイミング(定期的または所定のイベント発生時に)で、子機2の送信電力値を親機1に通知する。
所定のイベントは、例えば子機2が充電台3から離れた時であり、そのときに子機2から親機1に送信される分離通知メッセージに乗せて子機2の送信電力値を親機1に通知する。また所定のイベントとしては、センサ付きの子機である場合は、センサが検知した時に子機2から親機1に送信される検知メッセージに乗せて子機2の送信電力値を親機に通知する。
すなわち、主制御部201は、タイマ部201b(図18に示す第1タイマ)によってカウントされる5分に1回の間隔で定期的に、受信電界強度(Mp)の測定値と親機1の送信電力値の情報から伝播損失(M-loss)を計算し、計算結果をメモリ部202の子機側送信電力制御テーブルに記録する。また、送信電力制御部201aは、親機1にて正常な受信に必要とされる信号強度基準値(予め設定)と伝播損失に基づいて子機2の送信電力値(PW-p)を計算して子機側送信電力制御テーブルに書き込む。
そして、送信電力制御部201aは、計算した送信電力値で信号を送信するように増幅部203bを制御する。すなわち、子機2が通知メッセージを送信する際、増幅部203bは、送信電力制御部201aによって制御された送信電力値で制御信号を送信する。
主制御部201は、所定のタイミング(定期的または所定のイベント発生時に)で子機2の送信電力値を親機1に通知し、この送信電力値を含む通知メッセージを親機1に送信する度に、その時の通知時刻(TM-p)を子機2の送信電力値に対応付けて子機側送信電力制御テーブルに記録する。以上のように主制御部201の送信電力制御部201aは、子機2が通知メッセージを送信するための送信電力値を計算し、子機側送信電力制御テーブルを更新する。
図11は、親機1および子機2の送信電力値、受信電界強度、伝播損失、距離の関係を説明する図である。図11において、Pftx は親機信号の送信電力値、Pprx は親機信号の子機における受信電界強度、Pptx は子機信号の送信電力値、Pfrx は子機信号の親機における受信電界強度である。
親機1の送信出力をPftx[dbm]、親機1からL[m]だけ離れた地点にいる子機2の受信電界強度をPprx[dbm]とした場合、親機1と子機2との間の通信路における伝播損失Plossfp [db]は次の式(1)から求められる。
Plossfp = Pftx − Pprx ・・・(1)
一方、子機2から送信された信号が親機1に届くまでの減衰量は、上記伝播損失Plossfp[db]にほぼ等しい。従って、親機1からL[m]だけ離れた地点にいる子機がPptx[dbm]の信号を出力した場合、親機1の受信電界強度Pfrx[dbm]は、次の式(2)から求められる。
Pfrx = Pptx − Plosspf
≒ Pptx − Plossfp
= Pptx − ( Pftx − Pprx ) ・・・(2)
以下、子機2が、送信する信号の送信電力値を決定する方法を、図11を用いて説明する。図11に示すように、受信側(親機1)で正常に受信可能な受信電界強度の下限値をPthreshold[dbm]とした場合、子機2の送信電力値:Pptx は、親機1での受信電界強度がPthreshold以上になるように決定される。即ち、まず親機1の受信電界強度Pfrxが次の式(3)を満たすように子機2の送信電力値を決定する。
Pfrx > Pthreshold ・・・(3)
さらに、これらの式(2)および式(3)より、以下の式(4)が導かれる。子機2の送信電力値:Pptx は数4を満たす必要がある。
Pptx − ( Pftx − Pprx ) > Pthreshold
Pptx − Pthreshold > Pftx − Pprx ・・・(4)
仮に、子機2の送信電力値を、ハイパワーまたはローパワーの2レベルから選択する方式とした場合、ローパワー時の送信電力値Plow[dbm]は、以下の式(5)を満たすように設定される。
Plow − Pthreshold > Pftx − Pprx ・・・(5)
以上のように、子機2が如何なる種類であっても、子機2は通知メッセージに乗せて自機の送信電力値を親機1に送信すれば、親機1は適切な送信電力制御が可能になるので、追加される子機の種類が増えても親機の構成を変えることなく送信電力制御を行うことができる。
また、親機1は、子機ごとに送信電力制御を行うか否かと、既知である子機の最大送信電力値を記憶しているので、子機に送信電力制御機能が無く、常に、固定の送信電力値で動作する場合は、子機から送信電力値を通知するメッセージを受信しなくとも、イベント通知などの何らかの信号を受信することにより、親機1は適切な送信電力制御が可能になる。なお、後述の他の形態では、子機として通常の電話用子機の他に、センサ、カメラ等の機能を備えた多種の子機に対応できるようにしている。
図12は、待機中に親機1のローパワー通信エリアとハイパワー通信エリアを跨いで子機2が移動した時の送信電力制御の為の通知メッセージの送信を示す図である。
本実施の形態では、親機1は、制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)で送信電力値を示す情報を子機に報知し、子機2は独自メッセージ(以下、送信電力制御の為の通知メッセージと呼ぶ)により送信電力値を示す情報を親機1に通知することにより、制御信号の送信電力制御を実現する。
待機状態の子機2は、制御信号の送信電力値を示す情報と、制御信号の受信電界強度より親機1との間の伝播損失を把握し、ハイパワーで通信するエリアにいるか、またはローパワーで通信するエリアにいるかを判断する。
子機2は、所定の周期(約5分)で電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する他に、所定のイベント、例えば充電台から離れた時、ローパワー通信エリアとハイパワー通信エリア間を移動したとき、または、センサが反応したとき等に送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する。この際、子機2からの送信電力制御の為の通知メッセージは、送達確認なしの1スロットのMt:escapeを使用して親機1に送信する。またその際の再送回数はイベントの種類または重要性に応じて調整される。
主制御部201は、ローパワー通信エリアとハイパワー通信エリア間を移動した場合、子機2は送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する。親機1は、それぞれの子機2から送信される通知メッセージを乗せた無線信号を受信すると、その受信電界強度を測定して図8に示すように子機2毎に記憶し、各子機2との間の伝播損失を計算し、もっとも伝播損失が大きい子機2にあわせて制御信号の送信電力値を決定する。そして、親機1は、制御信号に乗せて送信電力値の情報を各子機2に報知する。例えば子機2が1台でもハイパワー通信エリアにいる場合は、親機1も送信電力値をハイパワーにして制御信号を送信する。
即ち、親機1は、各子機2から通知メッセージによって通知された送信電力値を示す情報と、当該通知メッセージ受信時の受信電界強度とにより、各子機2までの伝播損失を計算する。そして、親機1は、最も大きい伝播損失がある(最も遠くに位置する、あるいは、電波が届きにくい環境にある)子機2に対応するように自機の送信電力値を決め、その送信電力値を示す情報を制御信号のAフィールドのPtメッセージ、BフィールドのMBnメッセージによって子機2に報知する。
なお、エリア境界におけるパワー切り替えの頻発を防止するため、ハイパワーに切り替え後、一定時間はローパワーへの切り替えを禁止することが望ましい。この場合、ローパワーからハイパワーへの切り替えは即時行われる。
図13は、子機2におけるローパワーからハイパワーへの切り替え、および、ハイパワーからローパワーへの切り替への際の伝播損失と距離の関係、および子機2から親機1に送信する通知メッセージのタイミングを説明する図である。
図13において、縦軸は子機2にて予測した親機受信電界強度[dbm]、横軸は親機1と子機2との間の距離である。Pthresh HtoLは、ハイパワーで送信中の子機2がローパワーに切り替わるための親機1における受信電界強度予測値における閾値である。また、Pthresh LtoH は、ローパワーで送信中の子機2がハイパワーに切り替わるための親機1における受信電界強度予測値における閾値である。子機2は、待機状態において、親機1から制御信号に乗せて送信される親機1の送信電力値を示す情報と、親機1からの信号の実際の受信電界強度の測定値に基づいて判定した子機2と親機1との間の信号減衰値(双方の距離に相当)を計算する。
そして、子機2は、その計算結果と、その時の自機の送信電力値に基づいて前述の親機1の受信電界強度の予測値:Rpre を演算によって求める。次の式(6)は、例えば、子機2がローパワー時における親機1の受信電界強度の予測値:Rpre (low)を示す。
Rpre (low) = Plow − ( Pftx − Pprx ) ・・・(6)
Pftx:親機信号の送信電力値
Pprx:親機信号の子機における受信電界強度
Plow:子機のローパワー時の送信電力値
また、次の式(7)は、子機2がハイパワー時における親機1の受信電界強度の予測値:Rpre (hi)を示す。
Rpre (hi) = Phigh − ( Pftx − Pprx ) ・・・(7)
Pftx:親機信号の送信電力値
Pprx:親機信号の子機における受信電界強度
Phigh:子機のハイパワー時の送信電力値
図13の例では、ローパワーで送信中の子機2が親機1の近傍から遠ざかる方向に移動する場合、所定の時点で子機2の送信電力値はローパワーからハイパワーに切り替わる。即ち親機1の近傍より遠ざかる子機2にて計算された親機1の受信電界強度の予測値が[1]から[2]に向かって変化し、この受信電界強度の予測値がPthresh LtoHに達した時に、子機2は送信電力値をローパワーからハイパワーに切り替える([2]→[3])。その後、さらに子機2がそのまま遠ざかる方向に移動すると、親機1の受信電界強度の予測値は[3]から[4]に向かって変化する。
一方、子機2が親機1の遠方より近づく方向に移動する場合、子機2の送信電力値は、ハイパワーからローパワーに切り替わる。即ち、子機2にて計算された親機1の受信電界強度の予測値は図13の[4]から[5]に向かって変化し、この受信電界強度の予測値がPthresh HtoLに達した時に子機2は送信電力値をハイパワーからローパワーに切り替える。そして、子機2がそのまま近づく方向に移動すると親機1の受信電界強度の予測値は[6]から[1]に向かって変化する。
すなわち、子機2は、ローパワーで送信中に次の式(8)に該当する状態になった時にハイパワーに切り替える。
Rpre (low) < Pthresh LtoH ・・・(8)
また、子機2は、ハイパワーで送信中に次の式(9)に該当する状態になった時にローパワーに切り替える。
Rpre (hi) > Pthresh HtoL ・・・(9)
ここで、Pthresh HtoL をPthresh LtoH より十分に高い値に設定することにより、子機2がハイパワーで送信中である場合には、その子機2が親機1の方に接近していく過程で、ハイパワー時の親機受信電界強度の予測値:Rpre (hi)が十分に高くなってからローパワーに切り替わるようにすることができる。このように、ハイパワーからローパワーへの切り替えの閾値と、ローパワーからハイパワーへの切り替えの閾値を個別に設けることにより、ローパワーとハイパワーへの境界付近での送信電力値の切り替えの多発を防ぐことができる。
なお、図13に示すように、子機2は所定の周期(約5分)で送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信するときには、送達確認なしの1スロットのMt:escapeを使用する。子機2が親機1に送信する送信電力制御の為の通知メッセージは、その時の子機2の送信電力値を示すもの([2]→[3])、送信電力制御の為の通知メッセージを連続的に繰り返し送信し、その再送回数は3回程度である。また、再送回数は、イベントの種類または重要性に応じて調整される。
図14は、親機1と子機2の送待機中の送信電力制御の為の通知メッセージの通知を説明する図である。
親機1の子機2への送信電力値の通知は、制御信号として送信する制御信号(Dummy Bearer)を使用し、通知用のメッセージはDECT規格で規定されたMACレイヤのPtメッセージ(RFP power level)を使用する。また、送信方法として、制御信号(Dummy Bearer)のBフィールドを使用した、送達確認を必要としないConnectionless Bearer(Long)の方式を使う。親機1は、Connectionless Bearer にPtメッセージを乗せて子機2に送信する。
複数種ある子機の中の電話用子機のように640msec周期でフレーム番号が0のフレームのAフィールドを待受けるタイプの子機(以下、Aフィールド待受け子機と呼ぶ)に対しては、親機1はAフィールドで送受信されるPtメッセージを用いて送信電力値を通知する。
図14における子機2は、Aフィールド待受け子機である。Aフィールド待受け子機宛に送信電力値の通知を行うPtメッセージの送信周期とタイミングは、MACレイヤによって決定され、他のPtメッセージと共にスケジューリングされ一定周期で送信される。
なお、カメラ機能付き子機のようにシステムに応じた特定のフレーム番号のBフィールドを待受ける子機(以下、Bフィールド待受け子機と呼ぶ)に対しては、Bフィールドで送受信されるMACレイヤ B-field messagesを用いて送信電力値を通知する。Bフィールド待受け子機宛への送信電力値の通知を行うMACレイヤ B-field messagesの送信周期とタイミングは、送信電力制御部より指定し、MACレイヤは指定された送信周期とタイミングに合わせてメッセージを送信する。
子機2の無線部203は、親機1からMACレイヤのPtメッセージ(RFP power level)を使って送信される親機1の送信電力値を示す情報を受信した時、その情報を、当該Ptメッセージを受信した際の受信電界強度とともに主制御部201に通知する。また、無線部203は、親機1からMBn:escapeを使って送信される親機1の送信電力値を示す情報を受信した時についても、その情報を当該MBn:escapeを受信した際の受信電界強度とともに主制御部201に通知する。主制御部201はこれらの情報に従って図9に示した子機側送信電力制御テーブルを更新する。
子機2において送信電力値を示す情報を送信する必要が生じた場合、主制御部201は、その情報を親機1に1回のみ送信するように無線部203に指示する。無線部203は、Mt:escapeを使って、1スロットで完結する電力制御の為の情報を乗せた通知メッセージを親機1に送信する。
親機1の無線部104は、子機2からMt:escapeを使って送信される通知メッセージの子機2の送信電力値を示す情報を当該通知メッセージの信号受信電界強度とともに主制御部102に通知する。主制御部102は、これらの情報に従って図8に示した親機側送信電力制御テーブルを更新する。
なお、子機2から親機1への送信電力値の通知は、生存確認を兼ねており、待機中ではConnectionless Bearer(short)と呼ばれる信号を使用して行われる。これも前述同様に送達確認を必要としない方式である。図15は、複数の子機(子機2a、子機2b・・・子機2n)が所定の周期で送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信することを示すタイミングチャートである。
各子機の主制御部201(送信電力制御部)は、ハイパワー通信エリアとローパワー通信エリア間を移動した際に送信電力値の通知を行う他、図15に示すように所定の周期(約5分)で送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する。電話子機のようにCPUの電源が常時On状態で動作する子機では、主制御部201(送信電力制御部)は、タイマ等を使用して一定周期で送信電力値の通知を行う。また、カメラ機能付き子機のようにULE制御によって間欠受信中にCPUの電源がOffとなる子機では、主制御部201(送信電力制御部)は、親機1からの生存確認要求の受信を契機に送信電力値の通知を行う。このように、所定の周期での送信電力制御の為の通知をすることにより、送信電力制御の手順は子機の生存確認も兼ねている。
次に、子機2において送信電力値を示す情報を送信する必要が生じ場合の動作を詳細に説明する。主制御部201は、待機中に送信電力値を示す情報を送信する必要が生じると、制御信号が送信されると予測されるスロット/周波数を選択し、そのスロットから始めて2スロット連続のキャリアセンスを行う。そして、主制御部201は、親機1から送信される制御信号(Dummy Bearer)を受信すると、その信号から得られた情報に基づいて、制御信号を受信したスロットに対して所定の関係にある1つのスロットを送信スロットとして決定する。すなわち親機1のPrimary receiver Scanのタイミングにあわせて、子機2が送信する為のスロットを決定する。
そして、子機2の主制御部201は、親機1のPrimary receiver Scanのタイミングにあわせた送信スロットを使って、1スロットで完結する送信電力制御の為の通知メッセージすなわちその時の自機の送信電力値を示す情報を通知するためのMt:escapeを送信する。
また、通信中において、子機2から親機1への送信電力値の通知は通信チャネル(Traffic Bearer)を使用して行われる。また、子機2が通信チャネル(Traffic Bearer)を起動する時のMt:access request の送信時においても、同様に1スロットで完結する信号(Connectionless Bearer(short))を使用して送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する。
なお、子機2は、通話中に送信電力値を示す情報を送信する必要が生じ場合にも、1スロットで完結する信号(Connectionless Bearer(short))を使用して送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信する。この場合、子機2は、通信中のTraffic BearerのAフィールドを使ってMt:escapeを送信することによって送信電力値を示す情報を通知する。
図16は、待機中の生存確認(死活監視)の為のために送信電力値の通知メッセージを利用する場合を説明する図である。親機1は、干渉による通信障害の検知のために、定期的に親機1と子機2との間で通信を行う生存確認による死活監視を行う。
前述のように子機2は、一定間隔で送信電力制御の為の通知メッセージを送信し、親機1で制限時間内に子機2からの通知メッセージが受信できなかった場合、親機1は、自機の送信電力制御を停止し、送信電力値を最大値(ハイパワー)に切り替える。
具体的には、図16に示すように、ULEの間欠受信を行わない子機(電話子機などのAフィールド待受け子機)は、スリープ状態でも親機1に同期しており、また子機2の主制御部201のタイマ機能が働いて、一定間隔(約約5分に一度の周期)で送信電力制御の為の通知メッセージの送信を行う。親機1は、この通知メッセージを受信することにより、子機2の生存を確認することができる。
また、親機1は、ULEの間欠受信を行う子機(カメラ機能付き子機などのBフィールド待受け子機)の間欠受信タイミングに合わせて、所定の周期で生存確認要求を送信する。この生存確認要求は、ULEの間欠受信を行う子機2に対して送信電力制御するための情報の送信を促す役割がある。
ULEの間欠受信を行う子機2は、親機1が生存確認要求の送信を開始する時刻に合わせて無線部203を起動して親機1を探索する動作を行い、親機1が発する制御信号を受信すると、当該親機1から送信される生存確認要求を受信し、その受信を契機に送信電力制御の為の通知メッセージを送信する。または、子機2は、親機1が発する制御信号の中に生存確認要求が含まれている場合には、制御信号を受信した時点で親機1からの生存確認要求を確認し、送信電力制御の為の通知メッセージを送信する。
尚、ULEの間欠動作を行う子機2は、間欠動作の合間のスリープ状態では無線部203の受信動作を停止させる。また、子機2の主制御部201のタイマ機能も働いていないので、親機1は、子機2の間欠受信タイミングに合わせて生存確認要求を送信する。
親機1の主制御部102(送信電力制御部)は、ある子機2から送信電力制御の為の通知メッセージを一定時間(調整値)以上受信できなかった場合にハイパワーに切り替える。その後、更に一定時間(調整値)、当該子機2からの通知メッセージを受信できなかった場合、該当子機2が電話用子機または画像モニタ機能付き子機のようなAフィールド待受け子機であれば、親機1の当該子機2を送信電力制御の計算対象より外す。なお、親機1から子機2への生存確認要求の動作では、親機1は調整値で指定された回数の再送を行う。
なお、子機2の電源に余裕がある場合には、子機2の主制御部201(送信電力制御部)は、親機1からの送信電力制御の為の通知メッセージを一定時間は探索する動作を行い、一定時間(固定値:10分程度)以上受信できなかった場合に子機2の送信電力値をハイパワーに切り替えるようにしても良い。
図17は.通話中に通話チャネルにおける送信電力制御を説明する図である。通話中の通信チャネル(Traffic Bearer)における送信電力制御は、通話チャネルの受信電界強度と送信電力制御の為の通知メッセージを使用して送信電力値を示す情報をやり取りする。
通話開始によって通信チャネル(Traffic Bearer)が起動されると、親機1と子機2のMACレイヤは定期的に通信チャネル(Traffic Bearer)の受信電界強度を上位レイヤに通知し、上位レイヤ経由で受信電界強度の情報が送信電力制御部に通知される。例えば、親機1の主制御部102(送信電力制御部)は、通知された受信電界強度に従い、親機1の送信電力値を切り替える。通話中の親機1からの送信電力値を示す情報は、通信チャネル(Traffic Bearer)のAフィールドのPtメッセージで通知される。すなわち、親機1は、制御信号(Dummy Bearer)のAフィールドで送信するPtメッセージと同じものを通信チャネル(Traffic Bearer)のAフィールドを用いて送信する。親機1は、自機の送信電力値の情報をこのAフィールドに乗せて子機2に送信する。
また、子機2の主制御部201(送信電力制御部)は、無線部203から受信電界強度の測定値を示す情報を受信する毎に子機2の送信電力値を切り替え、子機2の最新の送信電力値を示す情報を親機1に送信する。このように、受信電界強度の情報を得ることを契機に送信電力制御の為の通知メッセージを送信することにより、カメラ機能付き子機やセンサ子機のようにULE間欠動作対応の子機2に対しても、通信中は、短周期で送信電力制御の為の通知メッセージが親機1に通知される。したがって、親機1は、必ずしも通信開始時に送信電力制御の為の通知メッセージ送信要求を行う必要はなく、通信中に送信電力値を切り替えた場合に、送信電力制御の為の通知メッセージを送信すれば良い。
通信中の受信電界強度の検知には、以下の動作パターンが有る。
親機1のMACレイヤは、子機2からMt:escapeにより子機2の送信電力値を示す情報を受信した時、当該Mt:escapeを受信した際の受信電界強度を主制御部102に通知する。また、親機1のMACレイヤは、通信チャネル(Traffic Bearer)が起動されると、一定周期で通信チャネルの受信電界強度を主制御部102に通知する。
なお、旧式の送信電力制御未対応の子機2が登録された時には、子機2からMt:escapeによる子機2の送信電力値を示す情報を受けることは無い。この場合、親機1は、一定周期で通信チャネルの受信電界強度を検知しながら自親の送信電力値を制御する。
また、親機1のMACレイヤは、子機2からConnectionless Bearer(Long)により、子機2の送信電力値を示す情報を受信した時にも、当該Connectionless Bearer(Long)を受信した際の受信電界強度を親機1の主制御部102に通知する。
電話用子機やモニタ機能付き子機のようなAフィールド待受け子機(640msec周期で所定のレームのAフィールドを待受ける)が通信相手の場合、親機1は一定時間(例えば24時間)以上受信できなかったときには当該子機2を送信電力制御の計算対象より外す。このように長時間受信できない子機2を送信電力制御の計算対象より外すことにより、親機1は、動作を完全に停止した子機2があっても、それを無視して送信電力制御を行うことができる。
また、子機2においても、MACレイヤは、通信チャネル(Traffic Bearer)が起動されると、一定周期で通信チャネル(Traffic Bearer)の受信電界強度を主制御部201に通知する。通信相手が旧式の送信電力制御未対応の親機1であるときには、親機1からMt:escapeによる送信電力値を示す情報を受けることは無い。このため、子機2は、一定周期で通信チャネル(Traffic Bearer)の受信電界強度を検知しながら自機の送信電力値を制御する。
なお、カメラ機能付き子機やセンサ子機のようなULEの間欠受信を行う子機(Bフィールド待受け子機)は、親機1に確実に検知情報を伝える必要があり、たとえ受信電界強度が小さくても無視することはできないので、通知メッセージを一定時間(調整値)以上受信できなくても当該子機2を送信電力制御の計算対象より外すことはしない。この点については、後で詳細に説明する。
次に、上述した無線通信装置の動作例について説明する。図18は、子機2が親機1に同期して動作する一例を示すフローチャートである。
まず、図18において、親機1に電力が供給されて動作を開始すると待機モードを起動し、ステップ101(以下、「ST」と省略する)では、親機1は、制御信号の送信を開始する。さらに、親機1は、ST102において、制御信号を送信するスロットに対して所定の時間位置の関係にある受信用スロットにて各子機2からの応答信号を受信する動作を開始する。なお、親機1は、送信する制御信号の中に同期情報および自機の送信電力値の情報を挿入して送信する。
図18において、ST201では、子機2も、電源スイッチ(図示せず)がオンにされると(ST201)、主制御部201および各部に電力が供給される。主制御部201は、無線部203に指示を出して親機1からの信号を連続して探す(オープン探索)ための受信動作を開始する。また、主制御部201は、クロックをカウントするタイマ部201bによりオープン探索の為の第1タイマおよび周期的な通信動作を制御する為の第2タイマを起動する(ST202)。
ST203において、無線部203にて親機1からの制御信号が受信されると(ST203:YES)、フローはST205に進む。親機1からの制御信号が受信されていない場合は(ST203:NO)、フローはST204に進む。
ST204において、主制御部201は、オープン探索の為の第2タイマが満了したか否かを判断する。ST204の判断の結果、第2タイマが満了していない場合(ST204:NO)、フローはST203に戻る。一方、ST204の判断の結果、第1タイマが満了した場合(ST204:YES)、フローはST212に進み、「親機1を確認できません」のメッセージを表示する。その後、通信機能をOffにし、スリープ状態に移行する(ST217)。
ST218において、主制御部201は間欠動作の為の第1タイマが満了したか否かを判断する。第1タイマは約5分毎に満了する。第1タイマが満了していない場合(ST218:NO)、第1タイマが満了するまでスリープ状態が維持される。第1タイマが満了した場合(ST218:YES)、フローはST201に戻り、通信動作が開始され、親機1からの信号を連続して探すための受信動作が開始される。
以下、子機2が親機1に通知メッセージを送信する動作について説明する。
ST203において、無線部203にて親機1からの制御信号が受信されると(ST203:YES)、ST205において主制御部201は制御信号によって送信された同期情報を取得し、ST206において同期情報に従って親機1との間でTDMA同期を確立し、親機1からの制御信号を受信しながら同期状態に入る。そして主制御部201は、ST207においてDECTによる通信が可能であることを意味する表示をする。待機状態では、子機2は、図14に示したように、親機1からの制御信号(Dummy Bearer)を受信しながら同期状態を維持する。
親機1は、前述のように送信する制御信号の中に、同期の為の情報に他に、親機1の送信電力値の情報を挿入している。主制御部201は、同期状態に入るとST208において定期的な子機側送信電力決定手順の実行を開始する。
ST208の子機側送信電力決定手順において、主制御部201は、図14に示したように親機1から制御信号により送信される親機1の送信電力値を示す情報を取り込む。また、主制御部201は、親機1からの制御信号の受信信号レベルを測定する。そして、主制御部201は、親機1の送信電力値および受信信号レベルの測定値をメモリ部202に設けられた子機側送信電力制御テーブルに記録(または更新)する。また、主制御部201は、親機1の送信電力値及び受信信号レベルの測定値により伝播損失を求め、メモリ部202に設けられた子機側送信電力制御テーブルに記録(または更新)する。
また、主制御部201は、ST209において、自機の送信電力値を決定し、親機1に通知する。また、主制御部201は、親機1に対してその他必要な種々の通知メッセージ、例えばエラー情報などを親機1に対して通知する。
また、主制御部201は、ST210において、そのときに子機2において何らかのイベントが発生した場合は、例えば、子機2のユーザが発信の操作をした場合、あるいは、親機1からの制御信号によって固定電話網からの着信があることを示す情報が送信された場合には応答信号などを送信する。また、主制御部201は、子機2に設けられたセンサ等が何らかの反応を示した場合などにも、そのイベントに関する情報を親機1に対して送信する。
ST211において、主制御部201は、親機1からの制御信号を受信できない場合(ST211:NO)、フローは前述のST212に進む。ST211において、主制御部201は、DECTによる通信が不可能になったと判断して、表示部205に「DECT非接続」を意味する表示をする。例えば、図23に示すように、「DECT」文字の隣のアンテナマークに重ねて「×」を表示する。
主制御部201は親機1からの制御信号を受信できた場合(ST211:YES)、フローはST213に進む。ST213において、主制御部201は間欠動作の為の第1タイマが満了したか否かを判断する。第1タイマが満了していない場合(ST213:NO)、ST211において主制御部201は親機1からの制御信号の監視を継続する。ST213において、第1タイマが満了した場合(ST213:YES)、フローはST214に進む。
ST214において、主制御部201は、前述のST208と同様に、子機側送信電力決定手順を実行する。また、主制御部201は、親機1から制御信号により送信される親機1の送信電力値を示す情報を取り込み、親機1からの制御信号の受信信号レベルを測定する。そして、主制御部201は、親機1の送信電力値および受信信号レベルの測定値によりメモリ部202に設けられた子機側送信電力制御テーブルを更新する。
また、主制御部201は、ST215において自機の送信電力値を決定して親機1に通知し、親機1に対してその他必要な種々の通知メッセージを通知する。
また、主制御部201は、ST216において、そのときに子機2において何らかのイベントが発生した場合(ユーザが発信の操作、着信に対する応答操作、子機が充電台から離れた時、子機のセンサが検知した時など)に、そのイベントに関する情報を親機1に対して送信する。なお、図では示さないが、固定電話網を介した音声通話が開始された場合は、主制御部201は、上り/下りでそれぞれ1スロットを使って親機1との間で音声データの送受信を行う。
なお、親機1は、ST103において、子機2からのイベントに関する通知メッセージを受信する。また、親機1は、固定電話網からの着信があった場合には子機2に着信情報を送信する。また、固定電話網を介した音声通話が開始された場合は、子機2との間で上り/下りでそれぞれ1スロットを使って音声データの送受信を行う。
ST104において、親機1は常時、親機側送信電力決定手順を行っている。親機側送信電力決定手順において、主制御部102は、子機2からの通知メッセージにより送信される子機2の送信電力値を示す情報を取り込む。またレベル測定部104は、子機2からの通知メッセージの受信信号レベルを測定し、この情報に基づいて主制御部102は、子機毎に、これら子機2の送信電力値を示す情報および受信信号レベルの測定値をメモリ部103に設けられた親機側送信電力制御テーブルに記録(または更新)する。
また、親機1は、子機2の状態を把握し、例えば子機2から送信されるイベントに関する情報、その他種々の通知メッセージ(例えばエラー情報など)を受信してテーブルに記録する。
また、親機1は、ST105において、自機の送信電力値を決定し、子機2に通知する。
また、親機1は、ST106において、親機1からの要求に対して、登録された全ての子機2から応答があるか否かを判断する。親機1からの要求に対していずれかの子機2が応答しない場合(ST106:NO)、親機1は、ST107において、メモリ部103の登録情報記録部の中の子機状態管理部の情報を更新し、当該子機2について「応答無し」のフラグを立てる。そして、親機1は、ST108において、送信電力を最大にする。また、ST106において、親機1からの要求に対して全ての子機2から応答があった場合(ST106:YES)、フローはST101に戻る。
このようにして、お互いの信号が届く範囲内では、子機2が親機1に同期して通信し、子機2が親機1から離れて、親機1からの制御信号の受信信号レベルが低下し、メモリ部103のテーブルの伝播損失が所定値以下に低下した場合、親機1は最大電力で信号を送信することになる。
なお、ST211において、親機1からの制御信号が正常に受信できない場合、主制御部201は前述のように表示部205に「DECT非接続」を意味する表示をしたうえで、通信機能をOffにし、スリープ状態に移行する(ST217)。そして、ST218において間欠動作の為の第1タイマが満了したか否かを判断し、第1タイマが満了していない場合(ST218:NO)、第1タイマが満了するまでスリープ状態が維持される。
第1タイマが満了した場合(ST218:YES)、フローはST201に戻り、通信動作が開始される。すなわち、親機1からの制御信号が正常に受信できない場合、第1タイマが満了するほぼ5分間隔で間欠的な受信動作を行う。
このように、子機2が信号到達圏外になった場合、または何らかの原因で親機1にからの信号が正常に受信できない場合は、子機2の主制御部201は、親機1を連続的に探索することはせず、第1タイマによって規定されるインターバルで起動され、親機1を探索してスリープ状態に入るという間欠的通信モードに切り替わる。
なお、以上の例では子機2は、親機1との通信ができなくなった後は第1タイマによって規定される約5分の周期で親機1を探索する動作を行っているが、さらに所定の期間が経過した後はインターバルの周期を長く変更してもよい。
すなわち、子機2は、親機1との通信ができなくなった後では第1タイマによって規定される所定の周期(第1の所定の周期)で親機1を探索し、その後、次に来る所定の期間が経過した時に第1タイマの満了値を変更し、第1の所定の周期より長い満了値(第2の所定の周期)を第1タイマに設定する。
以上のように本実施の形態によれば、親機1に複数の子機2が登録されている場合であっても(たとえば子機2a、子機2b、子機2c)、親機1は、各子機2の送信電力値と各子機2からの通知メッセージの受信電界強度とに基づいて各子機2との間の伝播損失を計算し、最も遠い子機2にあわせて自機の送信電力値を決定する。したがって、ある子機2が親機1の遠方に離れても、親機1は、その子機2に合わせて通信を維持できる必要最小限の送信電力値で制御信号を送信するので、他の無線通信システムへの電波干渉を極力抑えながら、全ての子機2との通信を維持することができる。
子機2は、親機1からの制御信号の受信電界強度と親機1の送信電力値とから親機1との間の伝播損失を計算し、自機の送信電力値を決定し、子機側送信電力制御テーブルの情報を更新する。そして、子機2は、定期的に子機側送信電力制御テーブルの情報に記憶された送信電力値を親機1に通知する。これにより、子機2の消費電力を抑えて電池を長持ちさせ、また他の無線通信装置への電波干渉を極力抑えることができる。
また、子機2は、待機状態において、一定周期(例えば5分)で、親機1に自機の送信電力値を示す情報を乗せた通知メッセージを送信する。加えて、ある子機2が移動し、当該子機からの通知メッセージが十分なレベルで親機1に届かなくなった場合でも、当該子機2は、送信電力値をハイパワーに切り替えた場合にはその直後に自機の送信電力値を示す情報を乗せた臨時の通知メッセージを親機1に送信する。このように、子機2から定周期で送信される通知メッセージおよび臨時の通知メッセージにより、親機1は、子機2を把握できなくなる前に子機2からの通知メッセージに応じて親機1の送信電力値を上げることができる。
なお、親機1から発呼する場合や、または子機2から発呼する場合に、子機2から親機1に通信開始要求が送信され、これに対して親機1から子機2に通信開始要求の受領信号が送信される。子機2は、受領信号の受信電界強度を測定する。
また、親機1は、一定期間、子機2からの通知メッセージが来なかった場合、親機1の送信電力値をハイパワーに切り替える。この制御により、無線の空きリソースなし等の何らかの理由で子機2から親機1に通知メッセージが送信できなくなった場合には、一定時間経過後に親機1は送信電力値をハイパワーに切り替える。したがって、例えば、親機1がローパワーで動作し、しかも子機2がローパワーのまま親機1から離れて、ハイパワーで送信すべきエリアにまで移動したような状態であっても、親機1が子機2を把握できない(圏外状態)状態になる危険を低減することができる。
また、親機1は、一定時間以上、ある子機2からの通知メッセージが来なかった場合、該当子機を無視して送信電力値の決定を行うように制御する。これにより、ある子機2が故障や紛失等の理由で、未使用の状態になった場合に、該当子機2が登録削除されなくても、該当子機2の状態を無視し、親機1は他の子機2にあわせて送信電力値を切り替えることができる。
また、子機2がULE機能を備えたものである場合、子機2は、通常の無線リンクの形成を行わず、子機2から親機1に送信電力値を通知するための通知メッセージを、1つのスロットのみで送信する。これにより、子機2の送信電力値を通知するために要する子機2の消費電力および無線リソースの無駄使いを低減できる。
以上で、実施の形態1における子機2が親機1に同期して、双方の送信電力制御が開始されるまでの動作の説明を終える。
次に、子機2の送信電力制御手順について、図19を用いて詳細に説明する。
図19において、ST301では、子機2が親機1から送信される制御信号を受信する為のオープン探索を実行する。親機1からの制御信号が受信されると(ST301:YES)、フローはST302に移行する。親機1からの制御信号が受信されていない場合は(ST301:NO)、前述のようにオープン探索の為の第2タイマが満了したか否かを判断し、第2タイマが満了しない間は(ST316:NO)、フローはST301に戻る。
ST302では、子機2は制御信号の受信電界強度を測定し、さらにその受信電界強度の測定値と当該制御信号に乗せて送信されてきた親機1の送信電力値とに基づいて、伝播損失を判定し、子機が送信する際の送信電力値を計算する。
ST303では子機2のメモリ部202に記憶された子機側送信電力制御テーブルにおいて、送信電力値を更新するとともに、親機1に対して、Mt:escape によって送信電力値を通知する。ST304では、子機2は、更新した子機側送信電力制御テーブルにおける送信電力値に基づいて送信電力制御を開始する。
ST305では、子機2は親機1から送信される制御信号を毎回、あるいは所定の周期で定期的に受信しながら、親機1に同期した待機状態に入る。
ST306では、子機2は、親機1から通信開始要求があるか否かを判定し、通信開始要求がある場合(ST306:YES)、フローはST308に移行し、通信開始要求がない場合(ST306:NO)、フローはST307に移行する。
ST307では、子機2が親機1と同期している状態での電力制御のインターバルを規定する第3タイマを管理する。第3タイマは、前回、子機側送信電力制御テーブルを更新した時に起動し、所定の時間が経過すると満了する。ST307にて第3タイマが満了するまでは子機2は子機側送信電力制御テーブルを更新せず、第3タイマが満了した時(ST307:YES)、フローはST302に戻り、子機2は最新の制御信号の受信電界強度と親機の送信電力値とに基づいて、伝播損失を判定し、子機側送信電力制御テーブルを更新する。
ST306にて、通信開始要求がある場合(ST306:YES)、フローはST308に移行し、子機2は、その時の最新の制御信号の受信電界強度と親機の送信電力値とに基づいて、伝播損失を判定し、子機が送信する際の送信電力値を計算する。そして、ST309にて、子機2は、メモリ部202に記憶された子機側送信電力制御テーブルを更新するとともに、親機1に対して、待機状態と同じMt:escape によって送信電力値を通知する。ST310では、子機2と親機1は互いに通信するためのチャネルを形成し、通信状態に入る。
ST311では、子機2は親機1との通信を終了するための通信終了要求があるか否かを判定し、通信終了始要求がある場合(ST311:YES)、フローはST313に移行し、通信開始要求がない場合(ST311:NO)、フローはST312に移行する。
ST312も前述のST307と同様に、同期状態での電力制御のインターバルを規定する第3タイマを管理する。第3タイマは前回、子機側送信電力制御テーブルを更新した時から所定の時間が経過すると満了する。第3タイマが満了した時(ST312:YES)、フローはST308に戻り、子機2は、最新の制御信号の受信電界強度と親機の送信電力値とに基づいて、伝播損失を判定し、子機側送信電力制御テーブルを更新する。
ST311にて通信終了始要求がある場合(ST311:YES)、フローはST313に移行し、子機2は、この場合もその時の最新の制御信号の受信電界強度と親機の送信電力値とに基づいて送信電力値を計算する。ST314にて、子機2は、メモリ部202に記憶された子機側送信電力制御テーブルを更新し、親機1に対して待機状態と同じMt:escape によって送信電力値を通知する。その上で子機2は親機1との通信を終了する(ST315)。
なお、子機送信電力制御では、通信中と待機中とでは第3タイマが満了値を変えず、一定周期で電力制御の情報を更新しても良い。
このように、子機2は、親機1から送信された制御信号の受信電界強度を測定し、測定した受信電界強度で更新した子機側送信電力制御テーブルに基づいて、送信電力値を決定して、電力制御を行う。これにより子機2は、他の無線通信装置に対する電波干渉を極力抑えながら、必要最小限の電力で親機1との通信を維持することができる。
(実施の形態2)
図20は、システム内にULE間欠受信対応のセンサ子機が登録された場合における、センサ子機からのセンサ情報を受信した場合の受信電界強度の通知を示す。システム内にセンサ子機が登録された場合、センサ子機から親機1に対して窓の開閉情報等を乗せた通知信号[CLMS VARIABLE] が送信されると、親機1はこの通知メッセージを受信した際の受信電界強度を元に送信電力値を制御する。
親機1の送信電力制御部は、センサ子機からの信号[CLMS VARIABLE] を一定時間(調整値)以上受信できなかった場合、ハイパワーに切り替える。このようなセンサ子機のようなBフィールド待受け子機に対しては、死活監視によって送信電力制御の計算対象より外すことをせず、センサ子機からの信号を一定時間(調整値)以上受信できなかった場合には常にハイパワーの送信とする。
このようにULEの間欠受信を行う子機(Bフィールド待受け子機)は、親機1に常時同期しているものではなく、高頻度で受信電界強度を親機1に送信することは無い。しかし、センサが検知した情報は確実に親機1に伝える必要があり、たとえ受信電界強度が小さくても無視することはできない。従って、ULE間欠受信対応の子機が相手に含まれている場合、親機1は、当該子機からの通知メッセージを一定時間(調整値)以上受信できなくても当該子機を送信電力制御の計算対象より外すことはしない。また、当該子機の通信状況が改善し、親機が再び当該子機からのConnectionless Bearer(Long)を受信した際には、受信電界強度が親機1の主制御部102に通知され、親機1は、当該子機を計算対象に加えて送信電力制御を行う。
それに対し、前述の電話用子機のようなAフィールド待受け子機であれば、親機1は、所定時間以上通知メッセージを受信できなかった場合には送信電力制御の計算対象より外し、それ以外の子機の送信電力値のみによって送信電力制御を行う。それとは異なり、親機1は、センサ子機については確実に動作状況を管理できるようにする。
(実施の形態3)
図21は、コードレス電話機の親機1と、無線ドアホンの親機4が連携する場合の対応を示す。連携子機5は、コードレス電話機の親機1と、ドアホン親機4の双方に接続可能な子機である。この場合、ドアホン親機4はコードレス電話機の親機(以下、親機1)に子機として登録されない。
無線ドアホン親機4は、親機1の制御信号を送信するためのチャネル(制御チャネル)に同期する。無線ドアホン親機4は子機としては動作しないため、親機1と無線で通信する機能はない。
常にコードレス電話機の親機1に無線ドアホン親機4を同期させて動作させる為に、無線ドアホンの親機4が連携する場合には、親機1の送信電力制御を停止する。この場合、連携子機5のアプリより、親機1のアプリに対してドアホン親機4が連携していることを通知し、親機1のアプリは送信電力制御を停止する。
(実施の形態4)
図22は、親機が隣接する他のコードレス電話システムに対する干渉を回避するための親機内部の仕組みを示す。
親機1はローパワーで動作中は、制御信号(Dummy Bearer )を送信するためのチャネル(制御チャネル)の妨害波レベル検知の閾値を低くし、たとえ比較的低い妨害波が生じても制御信号を送信するための制御チャネルを変更するチャネル移動を起動する。これにより、干渉波による制御チャネルでの受信障害の発生頻度を低減することができる。
親機1の無線部104は、1.28秒に1回の周期で制御信号の送信を停止し、定期的に制御信号を送信する為のスロットにおいて受信動作を行い、当該スロットの受信電界強度の測定値を主制御部102に出力する。親機1の主制御部102は、無線部104からの受信電界強度情報を基に、閾値を用いて妨害波の有無やその強度の判定を行う。
親機1の主制御部102は、制御チャネルを移動するために閾値を、送信電力制御状態に応じた補正する。親機1の送信電力値が低いほど妨害波レベル検知の閾値を低くし、親機1の送信電力値が高いほど妨害波レベル検知の閾値を高くする。これにより、主制御部102は、制御チャネルでの受信電界強度に従って妨害波レベル検知の閾値を更新する。
主制御部102は、閾値を変更する場合に補正値取得関数を送信電力制御部102aに出力する。親機1の送信電力制御部102aは、主制御部102から受信電界強度の情報を渡されると、補正値管理用変数を更新する。これにより、送信電力制御部102aは、親機1の送信電力値を制御する。なお、処理時間を最短にするため、補正値管理用変数を返すのみの処理としても良い。
親機1の主制御部102は、制御チャネルにおける妨害波レベルと閾値を比較し、制御チャネル移動の起動の必要性を判定する。すなわち制御チャネルにおける受信電界強度に基づいて、受信電界強度>デフォルト閾値−補正値、を満たす場合に、制御チャネル移動を起動する。
(実施の形態5)
通常、図15に示すように、複数の子機(子機2a、子機2b、・・・、子機2n)は、所定の周期での親機1からの生存確認要求の受信を契機に、所定の周期(約5分)で送信電力制御の為の通知メッセージを親機1に送信している。
たとえば他人に聞かれたくない通話をしようとして、ユーザが子機を充電台から離して直ぐに親機から離れた場所に移動して発信をしようとした場合、低い送信電力値のままでは子機と親機が通信不可能な状態で発信の操作をすることがあり、子機と親機間で直ぐに無線リンクを確立することができない。
そこで、本実施の形態では、子機2は、親機1の制御信号が正常に受信できない場合に、自機の送信電力制御を停止し、送信電力値をフルパワーとし、当該送信電力値を示す情報を親機1に通知する。図24は、ある子機2が、親機1からの制御信号を正常に受信できない場合に、自機の送信電力値を示す情報を親機1に通知する様子を示す。
図24に示すように、ある子機2nの主制御部201は、定期的に親機1から送信されるはずの制御信号を正常に受信できない場合、または、親機1から送信される制御信号の受信電界強度が所定の閾値に達しない場合には、自機の送信電力値をフルパワーに設定する。そして、子機2nは、その後の送信の機会において自機の送信電力値を示す情報を親機1に通知する。その際、子機2nは、前述の通知タイミングの関わらず、自機の送信電力値を示す情報を親機1に通常より高頻度で通知する。
例えば、子機2は送信電力制御の為の通知メッセージを、送達確認なしの1スロットのMt:escapeを使用して連続的に3回、親機1に送信する。その際の再送回数は、子機2が持つ機能の重要性に応じて調整される。
また、子機2は、定期的に親機1から送信される制御信号を受信して受信電界強度を測定し、その測定値が受信電力基準値より低くなったと判断した場合にも、前述の通知タイミングの関わらず、自機の送信電力値を示す情報を親機1に通常より高頻度で通知する。