図1および図2にはそれぞれ、本発明の実施例1である一眼レフデジタルカメラ(撮像装置)を斜め前方および斜め後方から見たときの斜視図を示している。
撮影レンズ2は、一眼レフデジタルカメラ(以下、単にカメラという)1に着脱可能である。レリーズボタン3は、測光、焦点検出の開始を指示し、撮影を指示するための2段スイッチである。レリーズボタン3を1段目まで軽く押し込んだ状態を「半押し」といい、この状態では測光および焦点検出が行われる。半押しからさらに2段目まで押すことを「全押し」といい、全押しすることでシャッタ装置4が駆動され、撮影が行われる。モードダイアルスイッチ5は、カメラの各種撮影モードを切り換える。また、画像表示部6は撮影画像の確認や選択、メニュー機能の選択・設定に使用し、光学ファインダー7は被写体像を確認する。
図3には、カメラ1および撮影レンズ2の制御系の構成を示したブロック図を示している。撮影レンズ2には、複数の光学レンズ8と絞り9により構成される撮影光学系が収容されている。撮像素子10は被写体像を光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等により構成され、A/D変換部11は撮像素子10からのアナログ撮像信号をデジタルの画像データに変換する。また、タイミング発生回路12は、撮像素子10、A/D変換部11にクロック信号や制御信号を供給し、メモリ制御部13及びシステム制御部14により制御されている。
メモリ制御部13は、A/D変換部11、タイミング発生回路12、画像処理部15、画像表示メモリ16、表示制御部17、メモリ18、圧縮伸長部19を制御する。A/D変換部11から出力されるデータは、画像処理部15、メモリ制御部13を介して、あるいはA/D変換部11のデータが直接、メモリ制御部13を介して、画像表示メモリ16あるいはメモリ18に書き込まれる。
システム制御部14は、CPUを含むマイクロコンピュータユニットから構成されており、メモリ27に格納されたプログラムを実行し、カメラ全体を制御する。
画像処理部15は、A/D変換部11あるいはメモリ制御部13からの画像データに対して画素補間処理や色変換処理等の所定の画像処理を行う。また、画像処理部15は、A/D変換部11から出力される画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL(スルーザレンズ)方式のAWB(オートホワイトバランス)制御処理も行っている。
メモリ18は、撮影した画像を格納するためのメモリであり、所定枚数の画像を格納するのに十分な記憶量を備えている。圧縮伸長部19は、メモリ18から読み出した画像データを所定の画像圧縮方法(例えば、適用離散コサイン変換など)に従って画像データを圧縮処理あるいは伸長処理を行い、処理を終えた画像データをメモリ18に書き込む。処理を終えた画像データは、さらに記録媒体20に記録される。記録媒体20は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリによって構成されており、カメラ1に対して着脱が可能である。さらに、記録媒体20から画像データをメモリ18に読み出し、画像処理部15やメモリ制御部13を介して画像表示メモリ16に画像データを書き込む処理をし、表示制御部17により画像表示部6に表示する場合にも使用される。
シャッタ制御部21は、シャッタ装置4の先羽根群をチャージ状態で保持する先羽根コイルと先羽根ヨークで構成された先羽根電磁石39と、後羽根群をチャージ状態で保持する後羽根コイルと後羽根ヨークで構成された後羽根電磁石40への電力供給制御を行っている。モータ41は、モータ制御部22からの制御信号に基づいて駆動され、レリーズボタン3の操作に連動して、第1のカムギアであるシャッタカムギア36やクイックリターンミラー30を所定の位置まで駆動させる。
絞り制御部23は絞り9を制御し、焦点検出制御部24は撮影レンズ2のフォーカシングを制御する。また、ストロボ制御部26は、ストロボ25の発光を制御する。
メモリ27は、システム制御部14の動作用の定数、変数、プログラムなどを記憶している。
電源制御部28は、電源検出回路、DC−DCコンバータ、電力を供給する回路ブロックを切換えるスイッチ回路等により構成されている。電源制御部28は、電源部の装着の有無、電源の種類、電池残量の検出等を行い、検出結果及びシステム制御部14の指示に基づいて該DC−DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体を含む各部へ電力を供給する。
図4には、シャッタ装置4とクイックリターンミラー30の分解斜視図を示している。
シャッタ地板29は、不図示のカメラ本体のミラーボックスに固定されており、先羽根群および後羽根群の駆動機構を構成する各部品が取り付けられている。クイックリターンミラー30は、軸部30aを中心に往復回動することによりミラーボックス内において撮影光路に対し進退するよう上下揺動する。ミラー駆動部材であるミラー駆動レバー31は、MG地板32の軸部32aを中心に回動可能に支持されている。MG地板32の軸部32aの外周には、不図示のねじりコイルバネが配置されており、このねじりコイルバネはミラー駆動レバー31を時計回り方向(クイックリターンミラー30をアップさせる方向)に付勢している。ミラー駆動レバー31の軸部31aは、撮影光軸より下側に配設されたクイックリターンミラー30の被駆動部であるクイックリターンミラー30の軸部30bと当接する。さらに、ミラー駆動レバー31は、ミラー駆動レバー31の軸部31bにて第2のカムギアであるミラーカムギア33に形成されたカム面33aと当接する。なお、クイックリターンミラー30は、ミラー駆動レバー31の動きに追従するように不図示のバネによって付勢されている。
先羽根用駆動部材である先駆動レバー34、後羽根用駆動部材である後羽根駆動レバー35はそれぞれ、シャッタ地板29に配設された先羽根軸29a、後羽根軸29bに回動可能に支持されている。シャッタカムギア36は、先羽根軸29a、後羽根軸29bの間で、先羽根軸29a、後羽根軸29bを結んだ線より撮影光軸と反対側に配設されたシャッタカムギア軸29cを中心に回動可能に支持されている。先羽根駆動レバー34に配設された被押動部である先羽根チャージコロ34aおよび後羽根駆動レバー35に配設された被押動部である後羽根チャージコロ35aは、シャッタカムギア36に形成されたカム面と接する。また、先羽根駆動レバー34、後羽根駆動レバー35にはそれぞれ先羽根アマチャ37、後羽根アマチャ38が配設され、MG地板32に配設された先羽根電磁石39、後羽根電磁石40に電圧を印加することで吸着される。さらに、ミラーカムギア33は、シャッタ地板29に配設された撮影光軸と同一方向のミラーカムギア軸29dを中心に回動可能に支持されており、シャッタカムギア36と直接連結する。
撮影光軸に平行に延びる出力軸を有するモータ41にて発生された駆動力は、伝達部材である減速ギア列42とミラーカムギア33とを介して伝達される駆動力によって、ミラー駆動レバー31およびシャッタカムギア36を回動させる。これにより、クイックリターンミラー30の往復回動とシャッタ装置4のチャージおよび解除とを行うことができる。
次に、シャッタ装置4の構成について図5−9を参照しながら詳細に説明する。図5、図7−9は、カメラ1に組み込まれたシャッタ装置4のうち、被写体側から見た略右半分だけを示した平面図である。なお、これらの図面において、図面の見易さのためにMG地板32を省略している。また、図6は、図5に示したシャッタ装置4の右側面図であり、一部の部品の図示を省略している。
図5はオーバーチャージ状態、すなわち、カメラが停止している状態を示している。また、図7は走行前待機状態、図8は先羽根走行完了状態、図9は後羽根走行完了状態を示している。
先羽根軸29aの外周には不図示のねじりコイルバネが配置されており、このねじりコイルバネは先羽根駆動レバー34を図5中の反時計回り方向(先羽根群を走行させる方向)に付勢している。29eは、被写体光束が通過するアパーチャであり、シャッタ地板29に形成されている。
先羽根駆動レバー34の先端部に形成された先羽根駆動ピン34bは、シャッタ地板29に形成された先羽根溝部29fを貫通して不図示の先羽根駆動アームと係合している。先羽根駆動アームは、リンク機構を介して先羽根群34cと連結している。先羽根群34bは複数のシャッタ羽根で構成されている。
先羽根駆動レバー34の回動によって先羽根駆動ピン34bが先羽根溝部29fに沿って移動すると、先羽根駆動アームが回動して先羽根群34cを展開させたり、重畳させたりする。先羽根群34cの動作によって、アパーチャ29eを開き状態(被写体光束を通過させる状態)にさせたり、閉じ状態(被写体光束を概ね遮断する状態)にさせたりすることができる。ここで、先羽根駆動レバー34は、先羽根溝部29fによって回動範囲が制限されている。
先羽根駆動レバー34には先羽根アマチャ支持部34dが設けられている。先羽根アマチャ支持部34dに形成された不図示の貫通孔部には、貫通孔部の内径よりも大きなフランジ部を有し、先羽根アマチャ37に対して一体的に取り付けられた先羽根アマチャ軸37aが係合している。先羽根アマチャ軸37aは、先羽根アマチャ37の吸着面に対して略直交方向に延びている。
先羽根アマチャ37と先羽根アマチャ支持部34dの間であって、先羽根アマチャ軸37aの外周には、不図示の圧縮バネが配置されており、先羽根アマチャ37および先羽根アマチャ支持部34dを互いに離す方向(図5の上下方向)に付勢している。
先羽根電磁石39は、先羽根ヨーク39aと、先羽根ヨーク39aの外周に設けられた先羽根コイル39bで構成されている。先羽根コイル39bに電圧を印加すると、先羽根ヨーク39aに磁力を発生させることができ、この磁力によって先羽根アマチャ37を吸着することができる。
後羽根軸29bの外周には不図示のねじりコイルバネが配置されており、このねじりコイルバネは後羽根駆動レバー35を図5中の反時計回り方向(後羽根群を走行させる方向)に付勢している。
後羽根駆動レバー35の先端部に形成された後羽根駆動ピン35bは、シャッタ地板29に形成された後羽根溝部29gを貫通して不図示の後羽根駆動アームと係合している。後羽根駆動アームは、リンク機構を介して後羽根群35c(図5、図7、図8では重畳状態にある)と連結している。後羽根群35cは複数のシャッタ羽根で構成されている。
後羽根駆動レバー35の回動によって後羽根駆動ピン35bが後羽根溝部29gに沿って移動すると、後羽根駆動アームが回動して後羽根群35cを展開させたり、重畳させたりする。後羽根群35cの動作によって、アパーチャ29eを開き状態(被写体光束を通過させる状態)にさせたり、閉じ状態(被写体光束を概ね遮断する状態)にさせたりすることができる。ここで、後羽根駆動レバー35は、後羽根溝部29gによって回動範囲が制限されている。
後羽根駆動レバー35には後羽根アマチャ支持部35dが設けられている。後羽根アマチャ支持部35dに形成された不図示の貫通孔部には、貫通孔部の内径よりも大きなフランジ部を有し、後羽根アマチャ38に対して一体的に取り付けられた後羽根アマチャ軸38aが係合している。後羽根アマチャ軸38aは、後羽根アマチャ38の吸着面に対して略直交方向に延びている。
後羽根アマチャ38と後羽根アマチャ支持部35dの間であって、後羽根アマチャ軸38aの外周には、不図示の圧縮バネが配置されており、後羽根アマチャ38および後羽根アマチャ支持部35dを互いに離す方向(図5の上下方向)に付勢している。
後羽根電磁石40は、後羽根ヨーク40aと、後羽根ヨーク40aの外周に設けられた後羽根コイル40bで構成されている。後羽根コイル40bに電圧を印加すると、後羽根ヨーク40aに磁力を発生させることができ、この磁力によって後羽根アマチャ38を吸着することができる。
シャッタカムギア36に形成された先羽根カム部36aには、先羽根第1カム面36a1と先羽根第2カム面36a2が形成されている。先羽根第2カム面36a2は、先羽根第1カム面36a1とカムトップをつなぐテーパー面となっている。また、先羽根第2カム面36a2のカムリフトは、先羽根第1カム面36a1のカムリフトより小さく設定されている。シャッタカムギア36が回動すると、先羽根チャージコロ34aに、先羽根第1カム面36a1が当接してトレースすることで、先羽根駆動レバー34を作動角の半分以上を急激にチャージする。次に、先羽根第2カム面36a2が当接してトレースすることで、緩やかにチャージする。図5において、先羽根カム部36aは、先羽根群34cの走行を完了させた状態にある(先羽根群34cを重畳状態とさせたときの)先羽根駆動レバー34を時計回り方向に回動させることによって、チャージ動作を行う。
シャッタカムギア36に形成された後羽根カム部36bには、後羽根第1カム面36b1と後羽根第2カム面36b2が形成されている。後羽根第2カム面36b2は、後羽根第1カム面36b1とカムトップをつなぐテーパー面となっている。また、後羽根第2カム面36b2のカムリフトは、後羽根第1カム面36b1のカムリフトより小さく設定されている。シャッタカムギア36が回動すると、後羽根チャージコロ35aに、後羽根第1カム面36b1が当接してトレースすることで、後羽根駆動レバー35を作動角の半分以上を急激にチャージする。次に、後羽根第2カム面36b2が当接してトレースすることで、緩やかにチャージする。図5において、後羽根カム部36bは、後羽根群35cの走行を完了させた状態にある(後羽根群35cを展開状態とさせたときの)後羽根駆動レバー35を時計回り方向に回動させることによって、チャージ動作を行う。
ミラーカムギア33に形成されたカム面33aは、ミラーカムギア33の回動に応じて、ミラー駆動レバー31の軸部31bに当接して、ミラー駆動レバー31を回動させる。図5において、ミラーカムギア33に形成されたカム面33aは、クイックリターンミラー30がアップ状態にあるミラー駆動レバー31を反時計回り方向に回動させることによって、チャージ動作を行う。
次に、実際に撮影を行う際のシャッタ装置4の動作について説明する。
まず、光学ファインダー7で被写体を観察しながら撮影するモード(通常撮影モード)でのシャッタ装置4の動作について、図5、図7〜9を用いて説明する。
図5の状態でレリーズボタン3が全押しされると、先羽根コイル39bと後羽根コイル40bへの通電を開始するとともに、モータ41の回転によって、ミラーカムギア33は時計回りに、シャッタカムギア36は反時計回りに回転する。すると、ミラー駆動レバー31の軸部31bが、カム面33aのカムボトムに落ちることによって、ミラー駆動レバー31はクイックリターンミラー30を跳ね上げる。また、シャッタカムギア36の先羽根カム部36a、後羽根カム部36bからそれぞれ先羽根チャージコロ34a、後羽根チャージコロ35aが離れ、図7に示す走行前待機状態へと移行する。図7で、先羽根アマチャ37と後羽根アマチャ38が電磁的に吸着保持されているため、先羽根駆動レバー34と後羽根駆動レバー35は回転しない。その後、システム制御部14によって設定されたシャッタ秒時に対応する時間間隔を設けて、先羽根コイル39b、後羽根コイル40bの通電をオフする。先羽根コイル39bの通電がオフされることにより、先羽根駆動レバー34が反時計方向に回転し、図8の先羽根走行完了状態となる。後羽根コイル40bの通電がオフされることにより、後羽根駆動レバー35が反時計方向に回転し、図9の後羽根走行完了状態となる。
撮像素子10への露光終了後、モータ41の回転によって、ミラーカムギア33は時計回りに、シャッタカムギア36は反時計回りに回転する。そして、カム面33aがミラー駆動レバー31の軸部31bを、先羽根カム部36a、後羽根カム部36bがそれぞれ先羽根チャージコロ34a、後羽根チャージコロ35aを押すことで図9の状態から図5の状態に戻る。
次に、ライブビューモードでハイブリッドシャッタ撮影を行う際のシャッタ装置4の動作について、図5、図8〜図11を用いて説明する。図10はライブビュー前待機状態、図11はライブビュー状態を表している。ライブビュー状態では、撮像素子10に入射した被写体像が画像表示部6に表示される。
図5の状態でモードダイアルスイッチ5によってライブビューモードが選択されると、先羽根コイル39bへの通電を開始するとともに、モータ41の回転によって、ミラーカムギア33は時計回りに、シャッタカムギア36は反時計回りに回転する。すると、図10に示すように、ミラー駆動レバー31の軸部31bが、カム面33aのカムボトムに落ちることによって、ミラー駆動レバー31はクイックリターンミラー30を跳ね上げる。また、シャッタカムギア36の先羽根カム部36aから先羽根チャージコロ34aは離れているが、後羽根チャージコロ35aは後羽根カム部36bに乗った状態に遷移する。図10の状態で先羽根コイル39bへの通電をカットすることで先羽根駆動レバー34が走行し、図11のライブビュー状態へと移る。このライブビュー状態では、後羽根チャージコロ35aは、後羽根カム部36bに乗っているため、後羽根コイル40bへの通電は不要である。
ライブビュー状態でレリーズボタン3が全押しされると、後羽根コイル40bへの通電を開始するとともに、モータ41の回転によって、ミラーカムギア33は時計回りに、シャッタカムギア36は反時計回りに回転し、図8の状態に遷移する。その後、システム制御部14によって設定されたシャッタ秒時に対応する時間間隔を設けて、撮像素子10の画素のリセット走査(以下、電子先羽根と呼ぶ)と、後羽根コイル40bの通電オフを実行することで、図9の状態に移行する。
撮像素子10への露光終了後、モータ41の回転によって、チャージ動作が行われ、図5、図10の状態を経て図11のライブビュー状態に戻る。
図12は、ミラーカムギア33およびシャッタカムギア36のカム線図と各区間におけるモータ41に印加される電圧を示す図である。これは、ミラーカムギア33やシャッタカムギア36の裏面に設けられた不図示の位相接片の位相検出により求めている。ここで、シャッタ装置4の動きについて、図12を用いてカム線図の視点から説明する。
図5で表されるカメラ停止位相(第1の位相)はカム線図において、各カムの回転角度が0°〜55°の間であり、ミラーカムギア33のカム面33a、シャッタカムギア36の先羽根カム部36a、後羽根カム部36bは、全てカムトップ状態になっている。
各カムギアが55°〜85°まで回転することにより、ミラーカムギア33のカム面33aは、ミラー駆動レバー31の軸部31bの回転軌跡から退避し、クイックリターンミラー30のアップ動作が行われる。また、シャッタカムギア36の先羽根カム部36aは、先羽根チャージコロ34aの回転軌跡から退避することで、先羽根駆動レバー34の解除動作が行われる。以上のようにして、カメラ停止位相から85°〜105°の間で示されるライブビュー位相(第2の位相)に遷移する。
シャッタカムギア36が105°〜135°まで回転することにより、シャッタカムギア36の後羽根カム部36bは、後羽根チャージコロ35aの回転軌跡から退避することで後羽根駆動レバー35の解除動作が行われる。このようにして、ライブビュー位相から135°〜185°の間で示される撮影位相(第3の位相)に遷移する。
185°〜360°までの間では、各カムは順次ボトムからトップへと遷移し、チャージ動作を行う。ミラーカムギア33のカム面33aは、185°〜240°までの区間でミラー駆動レバー31のチャージ動作を行う。また、先羽根第1カム面36a1は、240°〜296°までのチャージ動作を行い、先羽根駆動レバー34の作動角の半分以上のチャージ動作を行う。そして、先羽根第2カム面36a2は、296°〜360°までのチャージ動作を行い、先羽根駆動レバー34のチャージが完了する。後羽根第1カム面36b1は、281°〜341°までのチャージ動作を行い、後羽根駆動レバー35の作動角の半分以上のチャージ動作を行う。そして、後羽根第2カム面36b2は、341°〜360°までのチャージ動作を行い、後羽根駆動レバー35のチャージ動作が完了する。すなわち、360°において、先羽根駆動レバー34と後羽根駆動レバー35のチャージが完了する。
先羽根第1カム面36a1と後羽根第1カム面36b1が、それぞれ先羽根駆動レバー34と後羽根駆動レバー35の作動角の半分以上のチャージ動作を行うことで、先羽根第2カム面36a2と後羽根第2カム面36b2をより緩やかに設定することが可能となる。そのため、先羽根アマチャ37が先羽根電磁石39と接触する際の角速度と、後羽根アマチャ38が後羽根電磁石40と接触する際の角速度をより低く抑えることができ、シャッタ装置の耐久性をより向上させることができる。
ここで、チャージ中の露光を防止するため、先羽根駆動レバー34を後羽根駆動レバー35より先行してチャージする必要がある。先羽根駆動レバー34を緩やかにチャージし、シャッタ装置4の耐久性を向上させるため、先羽根第2カム面36a2のチャージ角(64°)を後羽根第2カム面36b2のチャージ角(19°)よりも大きくとり、チャージ動作を同時に完了させている。
本実施例では、先羽根駆動レバー34と後羽根駆動レバー35はチャージ角60°で先羽根アマチャ37と後羽根アマチャ38がそれぞれ先羽根電磁石39と後羽根電磁石40と接触するよう構成されている。先羽根第1カム面36a1と後羽根第1カム面36b1による駆動レバーのチャージ角は50°以上であることが好ましいため、先羽根駆動レバー34はチャージ角57°、後羽根駆動レバー35はチャージ角57.5°でカム面が切り替わるようになっている。
上記構成において連写駒速を速くするためには、モータ41のトルクアップや、減速ギア列42のギア比を高くすることでカムの回転スピードのアップが必要となる。また、カメラ停止位相や撮影位相を可能な限り小さくしてカムの空走時間を出来るだけ小さくすることが重要である。
次に、図12を用いて、モータ41に印加される電圧について説明する。図12において、電圧が示されていない区間は、モータ41の端子間をショートさせたショートブレーキ状態となっており、モータ41の回転を妨げるブレーキがかかった状態となっている。
まず、カメラ停止位相から撮影位相までの区間に関して考える。カメラ停止位相から撮影位相に直接遷移する場合(通常撮影)と、カメラ停止位相からライブビュー位相へ遷移した後、ライブビュー位相から撮影位相へ遷移する場合(ライブビュー撮影)のモータ41に印加される電圧について説明する。
通常撮影の場合、撮影位相から後羽根解除スタートまで(55°〜105°)のモータ41に印加される電圧(第1の電圧)V1より後羽根解除スタートから撮影位相まで(105°〜135°)のモータ41に印加される電圧(第2の電圧)V2を低く設定している。このようにすることで、以下の2つの効果がある。
一つ目の効果は、後羽根電磁石40の吸着不良を防ぐことである。前述した通り、レリーズタイムラグや連写駒速を速くするために単純にモータ41のトルクをアップするだけであると、シャッタカムギア36が後羽根解除動作を行う際のスピードが速くなってしまう。すなわち、後羽根駆動レバー35と後羽根アマチャ軸38aの衝突時のスピードが速くなってしまう。そのため、後羽根電磁石40が吸着できずに後羽根駆動レバー35が走行してしまう不具合が発生してしまう恐れがある。一方、先羽根側は、シャッタカムギア36が停止状態から動き出してすぐに解除される。そのため、モータ41の回転速度がそれほど高くない状態で解除されることになるので上記問題は後羽根側ほど顕著ではない。本実施例では、後羽根解除時にモータ41にかかる電圧を下げることにより、後羽根解除時の後羽根駆動レバー35が後羽根アマチャ軸38aに衝突するスピードを下げることができる。このようにすることで、後羽根駆動レバー35と後羽根アマチャ軸38aの衝突時のスピードが速いために後羽根電磁石40が吸着できずに後羽根駆動レバー35が走行してしまう不具合の発生を抑えることができる。
二つ目の効果は、撮影位相の範囲を小さく設定することが可能となり、駒速アップできることである。モータ41への印加電圧を前述のように制御することにより、モータ41に単一電圧を印加した際よりも、モータ停止時の各カムギアのオーバーランが小さくなる。すなわち、撮影位相の範囲を小さく設定できるようになり、チャージ時の空走時間が短くなるため、駒速アップにつながる。
また、ライブビュー撮影の場合、ライブビュー位相から撮影位相に遷移する際に、モータ41に印加される電圧(第3の電圧)V3は、電圧V1より低く電圧V2より高い。電圧V2で駆動するときは、電圧V1での駆動の後であるため、モータ41や各カムギアは回転している状態となっている。一方、電圧V3で駆動する際は、モータ41や各カムギアは停止した状態となっている。
仮に、電圧V3が電圧V2と同等以下であった場合について考える。このとき、ライブビュー位相から撮影位相に遷移する場合のオーバーラン(電圧V3での駆動)は、カメラ停止位相から撮影位相に直接遷移する場合のオーバーラン(電圧V1、V2での駆動)より小さくなる。そのため、撮影位相の幅は、カメラ停止位相から撮影位相に直接遷移する場合のオーバーランを基準に設定する必要がある。しかし、ライブビュー位相から撮影位相に遷移する際のオーバーランが小さいため、ライブビュー撮影でのチャージ開始時の空走時間が長くなってしまい、ライブビュー撮影での連写駒速が遅くなってしまう。
そこで、上述したように、電圧V3を電圧V2より高く制御することで、カメラ停止位相から撮影位相に直接遷移する場合のオーバーランを可能な限り小さくすることができる。そして、ライブビュー位相から撮影位相に遷移する場合のオーバーランをカメラ停止位相から撮影位相に直接遷移する場合のオーバーランと同等にすることが可能となる。すなわち、撮影位相の範囲を小さく設定できるようになり、通常撮影時、ライブビュー撮影時ともにチャージ時の空走時間が短くなるため、駒速アップにつながる。
また、カメラ停止位相からライブビュー位相に遷移する場合にモータ41に印加される電圧(第4の電圧)V4は電圧V1より低く設定されている。そのため、各カムギアがライブビュー位相で停止する際のオーバーランをより小さくできるので、ライブビュー位相の幅を小さくすることができる。したがって、カメラ停止位相から撮影位相までの間隔(55°〜135°)が、モータ41に印加する電圧の切換を行わない時に比べてより小さく設定されるので、通常撮影時のレリーズタイムラグの増加が抑えられ、駒速をより速くすることができる。
ここで、電圧V3と電圧V4は等しくなるようにしても良い。こうすることでモータ41に印加する電圧の種類を減らせるため、制御が単純になるという利点がある。
次に、撮影位相からカメラ停止位相までチャージ動作する区間に関して考える。チャージ動作に関しては、通常撮影とライブビュー撮影は同じ動作を行う。
モータ41のトルクが上がると、モータ41の加速度が上がるため、先羽根アマチャ37が先羽根電磁石39と接触する際の角速度と、後羽根アマチャ38が後羽根電磁石40と接触する際の角速度は大きくなる。ただし、前述したように、先羽根第2カム面36a2のチャージ角(64°)は後羽根第2カム面36b2のチャージ角(19°)よりも大きくとられているので、先羽根側への影響は小さく、後羽根側への影響は顕著となる。この問題を解決するためには、後羽根第2カム面36b2のチャージ角をさらに大きくすればよいが、カムは全体で360°までと有限であるため、その設定には限界がある。
そこで、本実施例では、撮影位相から後羽根第2カム面36b2まで(185°〜341°)チャージする際にモータ41に印加される電圧V5より、後羽根第2カム面からカメラ停止位相まで(341°〜360°)チャージする際の電圧V6を低くしている。こうすることで、後羽根アマチャ38が後羽根電磁石40と接触する際の角速度をさらに下げることができる。すなわち、駒速をアップしたにもかかわらず、先羽根アマチャ37が先羽根電磁石39と接触する際の角速度と、後羽根アマチャ38が後羽根電磁石40と接触する際の角速度との差を可能な限り小さくなるようにできる。こうすることで、耐久での先羽根と後羽根のアマチャと電磁石の傷つき具合の差が小さくなり、先羽根と後羽根の保持電磁石の離反時間がほぼ揃って変化するため、シャッタ精度の変化を小さくすることができる。さらに、チャージ完了時のオーバーランが小さくなるため、カメラ停止位相の幅を小さく設定できる。カメラ停止位相の幅が小さくなると、カメラ停止位相から撮影位相へと駆動する際のモータ41の空走時間が短くなり、レリーズタイムラグ短縮と連写駒速のアップへとつながる。
また、電圧V6での駆動時は、緩やかにチャージする先羽根第2カム面36a2と後羽根第2カム面36b2でチャージされる区間であるため、チャージ負荷としては軽くなっている区間である。したがって、電圧V6は、モータ41がチャージ負荷に耐えられず止まってしまうことが起きない範囲で低電圧に設定することができる。言い換えると、チャージ負荷が軽くなっている区間であるため、より電圧V6を低電圧に設定することが可能となり、チャージ完了時のオーバーランを小さくすることができる。
なお、これまで説明したモータ41に印加される電圧の切換については、公知のPWM制御を用いて実効電圧を低くしてもよい。