本実施の形態にかかる光学機器は、レンズユニットに対するアオリ角度を調整するアオリ調整機構を有している。以下の説明において、光学機器が撮像装置である場合を例に挙げて説明を行う。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1、及び図2は、本実施の形態に係る撮像装置1の全体的な構成を示す斜視図である。図1は、撮像装置1を左前方から見た斜視図であり、図2は、撮像装置1を右前方から見た斜視図である。以下の説明では、説明の明確化のため、図に示すようなXYZ直交座標系を用いて、説明を行う。
ここでは、Z軸が、撮像装置1の前後方向を示し、Y軸が撮像装置1の上下方向(鉛直方向)を示し、X軸が撮像装置1の左右方向(横方向)を示している。すなわち、Z方向が、撮像装置1に設けられたレンズの光軸に平行な方向であり、Y方向、及びX方向が撮像装置1に設けられたレンズの光軸と垂直な方向である。さらに、レンズ2a側を被写体(物体)側に向け、レンズ2aと反対側をユーザ側に向け、かつ、操作部18を上方に向けてユーザが撮像装置1を把持した状態において、撮像装置1を把持するユーザを基準に方向を特定する。すなわち、+X側が左側、−X側が右側、+Y側が上方側、−Y側が下方側、+Z側が後側(背面側)、−Z側が前側(前面側)とする。もちろん、上記の方向は、相対的なものであり、撮像装置1の向きに応じて変化する。
(外部構成)
図1、及び図2に示すように、撮像装置1は、本体部11と、モニタ部13と、レンズ2aと、レンズバリア12と、操作部18とを有している。撮像装置1は、アオリ調整機構を有している。
本体部11は、略直方体形状を有しており、レンズ2aを有するレンズ鏡筒、撮像素子、アオリ調整機構、制御回路、及びメモリなどを内蔵している。そして、本体部11の前面には、レンズ2aを覆うレンズバリア12が設けられている。このレンズバリア12が開くことで、レンズ2aが露出して、撮像可能な状態となる。さらに、本体部11の右側面の前方側には、レンズバリア12の開閉を切り替えるためのレバー17が設けられている。本体部11の上面には、操作ボタンなどを有する操作部18が設けられている。操作部18は、録画開始ボタンや録画終了ボタン等を備えている。ユーザが、操作部18を操作することで、被写体を撮像することができる。本体部11の右側面には、バッテリを覆うバッテリカバー14が設けられている。
図2に示すように、本体部11の左側面には、モニタ部13が設けられている。モニタ部13は、本体部11に対して、回動部15を介して接続されている。回動部15は、不図示のヒンジなどから構成されており、この回動部15によって、モニタ部13が本体部11に開閉可能に取り付けられている。モニタ部13は、被写体、記憶された画像データ、設定情報、及びその他の情報を表示する液晶ディスプレイなどを有している。なお、モニタ部13を開いた状態では、モニタ部13のモニタは、後方側、すなわちユーザ側を向いて配置されている。撮像装置1が、タッチパネル機能を備える場合には、モニタ部13のディスプレイが操作部の一部となる。
レンズ2aは、外部の光を撮像装置1内の撮像素子に導くものである。また、本体部11には、撮像素子や制御回路等が配置されている。撮像装置1は、レンズ2aを通して入射してきた光を受光して、被写体を撮像する。さらに、本体部11のモニタ部13が設けられた左側面と対向する右側面には、バッテリが収納されている。バッテリは、本体部11に対して脱着可能に設けられ、撮像装置1のモニタ部13や撮像素子に電源を供給する。
(内部構成)
次に、撮像装置1の内部構成について、図3を用いて説明する。図3は、撮像装置1の主要な内部構成を模式的に示す図である。なお、図3は、撮像装置1の内部構成を、主に機能の面から説明するための模式図であるため、実際の配置や構成とは異なっている箇所も存在している。
撮像装置1はレンズマウント6を介してレンズユニット2を筐体8に取り付ける構造を有している。レンズユニット2は、複数のレンズ2aとそれを保持する鏡筒などを有している。レンズユニット2の光軸10がセンサ3の中心と一致している。レンズ2aを通して入射した画像光は、筐体内部のセンサ3に結像する。センサはCCD(Charged Coupled Device)センサやCMOS(ComplementarY Metal OXide Semiconductor)センサなどのイメージセンサからなる撮像素子である。センサ3は受光した光を電気信号に変換して、映像信号処理部7に出力する。映像信号処理部7、電気信号に対して映像化処理を行い、配線9を介してモニタ部13等の外部に出力する。センサ3はレンズユニット2の光軸に対して可能な限り傾きが少ない状態で保持されなければならない。撮像装置1は、このような撮像面の傾きを調整するアオリ調整機構4を備える。
アオリ調整機構4は、図3では示さない調整操作部を備えている。撮像装置1の製造時に、調整者は、この調整操作部を操作することで、光軸に対するセンサ3の撮像面の角度を調整することができる。また撮像の際に、撮像者が、この調整操作部を操作することで、被写体に合わせてピント面を傾けたい場合等に、所望の調整を行うこともできる。また、アオリ調整機構4と筐体8を介する位置にバックフォーカス・光軸周り回転・センサセンタ調整を行う4軸調整機構5が設けられている。4軸調整機構5の4軸については、アオリ調整機構4のアオリとは別に調整可能である。この4軸調整機構5による4軸調整と、アオリ調整機構4による2軸調整により、撮像装置1では計6軸の調整が可能となっている。音声について本実施例では特にふれないが、マイクを備えて音声を電気信号に変換し、映像信号と合わせて扱える。
(アオリ調整機構4)
図4及び図5は図3におけるセンサ3とアオリ調整機構4及びセンサ3の具体的な構成を表す分解斜視図である。図4と図5はセンサ3及びアオリ調整機構4を異なる角度から示している。
上記の通り、−Z側がレンズ側となっている。したがって、レンズ側から、ベース板70、アオリ調整部材60、フレーム50、板バネ40、センサ保持部材30、センサ基板20の順番で配置されている。センサ基板20は、センサ3を保持する基板である。すなわち、撮像素子であるセンサ3がセンサ基板20に固定されている。センサ基板20は、センサ3と接続される回路や配線などが形成されたプリント配線基板である。
センサ基板20の−Z側には、センサ保持部材30が配置されている。センサ基板20は、ネジ等によってセンサ保持部材30に固定されている。センサ保持部材30は、平面視において、概略矩形枠状であり、その中心にレンズユニット2からの光をセンサ3に導くための開口部34を備えている。すなわち、レンズユニット2からの光は、開口部34を介してセンサ3に入射する。さらに、センサ保持部材30は、アオリ調整用ピン31a、31b、及び固定支持点用ピン32を有している。アオリ調整用ピン31a、31b、及び固定支持点用ピン32は、−Z側、すなわちレンズユニット2側に延びている。センサ保持部材30には、2つのアオリ調整用ピン31a、31bと、1つの固定支持点用ピン32が設けられている。
アオリ調整用ピン31a、31bと固定支持点用ピン32は、矩形枠状のセンサ保持部材30の角部周辺に配置されている。2つのアオリ調整用ピン31a、31bは、開口部34を介したセンサ保持部材30の対角に配置されている。アオリ調整用ピン31a、31bの先端は後述するように傾斜ブロック61の傾斜面62と当接している。なお、図4、及び図5では、アオリ調整用ピン31a、31bが傾斜面62に当接する様子を示している。固定支持点用ピン32は、センサ保持部材30のアオリ調整用ピン31a、31bが設けられていない角部周辺に配置されている。固定支持点用ピン32の先端は、例えば、ベース板70に接触されている。なお、アオリ調整用ピン31a、31bと固定支持点用ピン32の配置は特に限定されるものではなく、3つのピンが同一直線上になければよい。すなわち、XY平面において、2つのピンを結ぶ直線上に、もう一つのピンが配置されていなければよい。
センサ保持部材30の−Z側には、板バネ40が配置されている。板バネ40は、ネジなどによってセンサ保持部材30に固定されている。板バネ40は、XY平面に沿って配置された薄板のばね部材である。板バネ40には、開口部44と穴406が設けられている。すなわち、金属板を加工して貫通穴を設けることで、板バネ40を形成することができる。アオリ調整用ピン31a、31b、及び固定支持点用ピン32は、穴406を通っている。
開口部44は、レンズユニット2からの光をセンサ3に導くために設けられている。すなわち、レンズユニット2からの光は、開口部44を通過して、センサ3に入射する。Y方向において、2つの穴406の間に開口部44が配置されている。板バネ40に穴406を設けることで、板バネ40が弾性変形して、バネ機能を有する。板バネ40は、例えば、板厚0.3mmのステンレス製の薄板ばねである。板バネ40は、アオリ調整用ピン31a、31bを後述する傾斜ブロック61に押し付けるための付勢力を発生している。
板バネ40の−Z側には、フレーム50が配置されている。フレーム50は、上記した4軸調整機構5に固定される。フレーム50は、矩形枠状に形成されており、開口部54を有している。開口部54は、レンズユニット2からの光をセンサ3に導くために設けられている。フレーム50は、板バネ40を保持している。すなわち、板バネ40をフレーム50に固定することで、板バネ40がフレーム50とセンサ保持部材30との間に保持される。
センサ保持部材30は板バネ40を介してフレーム50に保持されている。アオリ調整用ピン31a、31bが力を受けることで、板バネ40が変形する。これにより、センサ保持部材30が傾き、センサ3のアオリ量を制御する。アオリ調整用ピン31a、31bが受ける力が小さくなった場合は、板バネ40の復元力が働いて元に復元する。
フレーム50の−Z側の面には、切欠部51が形成されている。この切欠部51にアオリ調整部材60が配置される。すなわち、アオリ調整部材60は、フレーム50の−Z側に配置され、切欠部51に挿入される。切欠部51はアオリ調整部材60の両端周辺に配置されている。ここでは、2つのアオリ調整部材60が設けられている。2つのアオリ調整部材60は同じ構成を有しており、向きが反対になっている。2つのアオリ調整部材60は独立して駆動可能である。アオリ調整部材60のそれぞれには、傾斜ブロック61をY方向に移動させるための送りネジ63が設けられている。
アオリ調整部材60は、Y方向に延びた部材であり、その途中に傾斜ブロック61を有している。傾斜ブロック61は、楔形状を有しており、XY平面に対して傾斜した傾斜面62を有している。2つのアオリ調整部材60では、傾斜面62の傾斜方向が反対になっている。この傾斜面62に、アオリ調整用ピン31a、31bが当接する(図5参照)。傾斜ブロック61がY方向に移動することで、傾斜面62とアオリ調整用ピン31a、31bとの当接位置がZ方向に変位する。Y方向における傾斜ブロック61の位置に応じて、傾斜ブロック61がアオリ調整用ピン31a、31bを押圧する押圧力が変化する。このように、傾斜面62を有する傾斜ブロック61がY方向の移動をZ方向の移動に変換するカム部となる。
2つのアオリ調整部材60は、レンズユニット2からの光を遮らないようにX方向に離間して配置されている。アオリ調整部材60は2つ設けられている。アオリ調整用ピン31aが一方のアオリ調整部材60の傾斜ブロック61と当接し、アオリ調整用ピン31bが他方のアオリ調整部材60の傾斜ブロック61と当接する。センサ3の光学中心を対角状に挟んで設けた2箇所のアオリ調整用ピン31a、31bを押す事で2軸の傾きに対応している。
上記のように、傾斜ブロック61は送りネジ63と螺合している。よって、送りネジ63を回転させることで、傾斜ブロック61がY方向に変位する。傾斜ブロック61がY方向に移動すると、アオリ調整用ピン31a、31bが傾斜ブロック61に押されて、Z方向に変位する。このように、傾斜ブロック61のY方向の移動に沿って、傾斜ブロック61とアオリ調整用ピン31a、31bとの当接位置が比例的に変化する。
さらに、フレーム50、及びアオリ調整部材60の−Z側には、ベース板70が配置されている。すなわち、ベース板70は、アオリ調整機構4の最も−Z側に配置されている。ベース板70は、レンズユニット2からの光を導くための開口部74が設けられている。すなわち、レンズユニット2からの光は、開口部74を通って、センサ3に入射する。ベース板70は、フレーム50に取り付けられている。アオリ調整部材60は、フレーム50とベース板70との間で保持される。ベース板70は、送りネジ63の基準面となっている。なお、なお、図4及び図5に図示されない光学フィルタ、光学面への塵埃の進入を防ぐスペーサ等が組み込まれてもよい。
(アオリ調整部材60の構造)
図6は、センサ3を実装したセンサ基板20と、アオリ調整用ピン31a、31b、及び固定支持点用ピン32を備えたセンサ保持部材30を示す斜視図である。センサ保持部材30には先端が球状の押圧ピンが三箇所設けられている。センサ保持部材30は、1つの固定支持点用ピン32と2つのアオリ調整用ピン31a、31bを有している。2つのアオリ調整用ピン31a、31bは、開口部34を挟んだ対角に配置されている。固定支持点用ピン32は、アオリ調整用ピン31a、31bが設けられた対角の反対側の対角の一方に配置されている。
アオリ調整用ピン31a、31bが設けられた2箇所を、送りネジ63で螺合された傾斜ブロック61の傾斜面62で押し上げて角度調整する構造である。レンズユニット2の光軸10は、センサ3の中心に一致するように配置されている。そして、レンズユニット2の光軸10をセンサ3の受光面に対して垂直になるようにアオリ角を調整する。
以下、アオリ調整用ピン31a、31bとアオリ調整部材60との構成について説明する。なお、アオリ調整用ピン31aとアオリ調整用ピン31bについての構造は基本的に同一であるため、適宜、アオリ調整用ピン31aとアオリ調整用ピン31bをアオリ調整用ピン31と称して、説明を行う。図7及び図8は、傾斜ブロック61にアオリ調整用ピン31が当接した状態のアオリ調整部材60を示す斜視図である。アオリ調整部材60は、傾斜ブロック61、送りネジ63、ナット64、圧縮コイルばね65、及びカラー66を備えている。傾斜ブロック61の+Z側の面が、XY平面に対して傾いた傾斜面62となっている。
送りネジ63によって傾斜ブロック61がY方向に変位する。送りネジ63にはM3メートル並目ねじが形成されている。したがって、ねじ1回転で、傾斜ブロック61が500μm移動する。なお、送りネジ63に細目ねじを採用すれば、ねじ1回転の移動量を350μmとする事も可能である。更に規格にこだわらなければ、専用ねじとしてピッチ250μmといった、さらに微細な移動も実現可能である。
傾斜ブロック61のY方向の位置に応じて、Z方向における傾斜ブロック61の厚さが変化するように傾斜面62が傾斜している。送りネジ63を回転させていくと、傾斜面62を有する傾斜ブロック61が軸67に沿って送り出されていく。送りネジ63の軸67は、Y方向に沿って配置されている。傾斜面62にはアオリ調整用ピン31が当接している。アオリ調整用ピン31の球状先端部を傾斜ブロック61の傾斜面62で押圧する。傾斜面62が、傾斜ブロック61のY方向の移動をアオリ調整用ピン31のZ方向の移動に変換する。
図7では、−Y側に向かうにつれて、Z方向における傾斜ブロック61の厚さが増加するように、傾斜面62が傾斜している。したがって、傾斜ブロック61を+Y方向に移動すると、アオリ調整用ピン31が+Z方向に移動する。
XY平面に対する傾斜面62の傾斜角度に応じて、アオリ調整用ピン31がZ方向に移動する。XY平面に対して傾斜面62が傾斜している角度を適切な値にすることで、所望の位置調整分解能を得ることができる。すなわち、送りネジ63の1回転に対するアオリ調整用ピン31の移動量は、傾斜面62の角度と送りネジ63の送りピッチによって決まっている。送りネジ63の送りピッチと傾斜面62の角度に応じた分解能で位置調整することができる。換言すると、送りピッチを小さくするほど、傾斜面62をなだらかにするほど、細かなアオリ調整が可能となる。さらに、2つのアオリ調整用ピン31が対角に配置されているため、2軸方向のアオリ角を調整することができる。
送りネジ63の材質としては、磨耗と入手性、コストを考慮してSS400等の一般構造用圧延鋼材とすることができる。軸67がベース板70に対して平行になるようにアオリ調整部材60を取り付ける。傾斜ブロック61は送りネジ63と螺合されている。送りネジ63を回転させると、送りネジ63の軸67に沿って、傾斜ブロック61が移動する。
図8は傾斜ブロック61のスラストガタを排除する構成を説明するものであり、一部の構成の断面を示している。傾斜ブロック61と同じく送りネジ63に螺合されたナット64はベース板70で回転しない外形を有している。ナット64は、送りネジ63の回転につれて傾斜ブロック61と間隔を保ちながら移動する。ナット64と傾斜ブロック61の間には圧縮コイルばね65が送りネジ63と同軸で配置されている。圧縮コイルばね65は、傾斜ブロック61をナット64から離れる側に付勢している。圧縮コイルばね65と送りネジ63の間にはカラー66が、送りネジ63と同軸に配置されている。送りネジ63と圧縮コイルばね65が干渉しないようにカラー66が設けられている。このようにすることで、スラストガタを低減することができる。
次に、傾斜面62上でのアオリ調整用ピン31の当接位置について、図9を用い説明する。図9は、傾斜面62上でのアオリ調整用ピン31の当接位置を示すXZ平面図である。すなわち、図9は送りネジ63の軸67と垂直な平面視の構成を示している。図9に示すように、X方向における傾斜ブロック61とアオリ調整用ピン31との当接位置をAとする。X方向において、当接位置Aは、送りネジ63の軸67からずれている。
ここでは、送りネジ63の軸67を境界として、光軸10から遠い側でアオリ調整用ピン31が設けられている。すなわち、X方向において、アオリ調整用ピン31と光軸10との間に、送りネジ63の軸67が配置されている。こうすることで、センサ3中心から遠い位置に角度変位を与える事ができ、微小な角度調整に対応する。光軸10から離れた位置にアオリ調整用ピン31を配置することで、アオリ角をより細かく調整することができる。また、送りネジ63の軸67から可能な限り離れた位置でアオリ調整用ピン31を傾斜面62と接触させることが好ましい。こうすることで、より少ない板バネ40の力で、送りネジ63の回転方向の力を抑える事が出来る。
傾斜ブロック61の傾斜面62と対向する面を対向面61aとする。すなわち、傾斜ブロック61の−Z側の面を対向面61aとする。対向面61aはXY平面に沿って設けられている。そして、対向面61aとベース板70の間には2mmのクリアランスを確保してある。さらに、対向面61aからは突起部61bが設けられている。突起部61bは、対向面61aから−Z側に突出している。すなわち、突起部61bは対向面61aから約2mm突出している。そして、突起部61bの先端がベース板70と当接している。X方向における突起部61bとベース板70の当接位置を当接位置Bとする。
傾斜ブロック61の対向面61aがベース板70と接触するように設計すると、部品の寸法や組立のばらつきにより、送りネジの軸67とベース板70の平行が保てない場合に、調整部品の動きが渋くなる或いは動かなくなる。従って、本実施形態では、図9に示すように、ベース板70と対向面61aとの間にクリアランスを確保している。さらに、アオリ調整用ピン31の先端部に合わせて、送りネジ63の軸67を境界として光軸10から遠い側に、ベース板70に接する突起部61bを設けている。突起部61bがベース板70に当接した状態で傾斜面62が正規の位置になるように設定している。こうすることで、傾斜ブロック61がアオリ調整用ピン31とベース板70に挟まれた構成となる。すなわち、+Z側からは、アオリ調整用ピン31が傾斜ブロック61を押さえ、−Z側からは突起部61bを通じてベース板70が傾斜ブロック61を押さえている。これにより、送りネジ63の回転に伴って、傾斜ブロック61が回転するのを防ぐことができる。
X方向において、当接位置Aと当接位置Bを軸67からずらして配置している。このように、突起部61bと傾斜ブロック61との当接位置Bと、アオリ調整用ピン31と傾斜ブロック61の当接位置Aを設定すれば、部品寸法或いは組立ばらつきで送りネジの軸とベース板70の面の平行が保てない場合であっても、傾斜ブロック61は、送りネジ63の軸67について傾きながら接触を保つ事が出来る。そして傾いてはいるが送りネジ63の軸67の傾きの範囲内であり、送りネジ63の回転の影響は受けない。
図9において、送りネジ63が紙面表からみて時計回りに回転する場合について考える。傾斜ブロック61の突起部61bがベース板70に当接する。これにより、送りネジ63の回転が傾斜ブロック61の傾斜面62に影響するのを抑える事が出来る。逆に、反時計回り方向に回転する場合、板バネ40の付勢力によって、送りネジ63の回転が傾斜ブロック61の傾斜面62に影響するのを抑える事が出来る。換言すると、送りネジ63の回転により傾斜ブロック61が受ける力より大きい力がアオリ調整用ピン31から掛かるように板バネ40の力を設定すれば良い。アオリ調整用ピン31が傾斜面62に当接する当接位置Aが送りネジ63の軸67から離れているほどより少ない力で送りネジ63の回転の影響を抑えられる。よって、本実施形態では、傾斜ブロック61の最外縁部に突起部61bを設けている。すなわち、突起部61bは傾斜ブロック61の+X側の端部に形成されている。
図10は、送りネジ63が傾斜ブロック61を動かす力が円滑に伝わるように送りネジ63の軸67上にアオリ調整用ピン31の当接位置Cを設けた比較例の構成を示すXZ平面図である。部品寸法や組立ばらつきにより、調整部材の動きが渋くなる或いは動かなくなる恐れがある。したがって、必ず、傾斜ブロック61とベース板70とのクリアランスは必要であるが、送りネジ63の軸67上に当接位置Cを設けると、送りネジ63の回転方向によって傾斜ブロック61が矢印の方向に振られてしまう。よって、アオリ調整用ピン31の変位量も不安定になってしまう。
このように本実施の形態の構成によって、簡便にアオリを調整することができる。なお、本実施形態では、センサ3の保持・位置復元に板バネ40を利用しているが、センサ3をコイルスプリングの力を利用して回転可能に保持するようにしてもよい。この場合であっても、センサ保持部材30に設けたアオリ調整用ピン31が傾斜面62から力を受けて変位する構成が可能である。
センサ保持部材30を傾斜面62により微小量押圧して傾きを僅かに変えるために、送りネジ63を用いているが、通常ネジの螺合部にはスラストガタがある。よって、送りネジ63の回転方向を変える際にスラストガタがバックラッシュとなり、傾斜面62の追従遅れが生じる。そこで送りネジ63の軸67方向に傾斜面62が低い部分から高い部分に変化する向きに付勢する構造とする。例えば、図7に示したように、+Y方向に傾斜ブロック61が移動するように、傾斜ブロック61を送り出していく。こうすることで、予め、傾斜ブロック61をガタの範囲内で高い傾斜面62の側に押し付けて、ガタの影響を排除することできる。
また、上記の構成は、以下のように表現することもできる。図9に示すように、送りネジ63の軸67を含み光軸10と平行なYZ平面Pと、傾斜面62との交線L1によって分割される傾斜面62の光軸側の領域(図9において交線L1よりも左側の領域)を第一の領域62aとし、光軸10から遠い側の領域(図9において交線L1よりも右側の領域)を第二の領域62bとする。送りネジ63の軸67を含み光軸10と平行なYZ平面Pと、対向面61aとの交線L2によって分割される対向面61aの光軸側の領域(図9において交線L2よりも左側の領域)を第三の領域69aとし、光軸10から遠い側の領域(図9において交線L2よりも右側の領域)を第四の領域69bとする。この場合、当接位置Aは第二の領域61bに設けられ、突起部61bは第四の領域69bに設けられている。あるいは、当接位置Aは第一の領域61aに設けられ、突起部61bは第三の領域69aに設けられている。
(板バネ40の構造)
図11は、板バネ40の平面形状を示すXY平面図である。図11はレンズ側から見た状態である。板バネ40の中央にはセンサ3用の開口部44が設けてある。板バネ40の材質はJIS規格にて規定されるばね用ステンレス鋼帯であるSUS304CSP材を用いている。板バネ40としての性質の他に耐食性も備えている。更にSUS304CSPは汎用的な非磁性のステンレス鋼帯材として広く流通しており、入手は容易である。板厚も豊富で1mm以下では、0.9mm、0.7mm等一部に汎用品として入手出来ない品も存在するが、それ以外はほぼ0.1mm置きに規格品が存在する。本実施形態では0.6mm厚のものを用いている。前述の如く送りネジ63の回転方向が、傾斜ブロック61の回転止めが無い側に回転する方向の場合、板バネ40の力で抑えられるように板厚を選定する。
板バネ40は、ばね機能部401、センサ保持部402、固定支持部403、固定部404、及び開口部44を備えている。開口部44は、外形が矩形状の板バネ40の中心部分に設けられている。そして、XY平面において、開口部44にセンサ3が配置される。
開口部44の外側には、センサ保持部材30を可動に保持するためのセンサ保持部402が設けられている。センサ保持部402には、固定用穴408が設けられている。固定用穴408にネジなどを挿入するころで、板バネ40とセンサ保持部材30が固定される。ここでは、固定用穴408は、センサ保持部材30の4隅に対応する箇所に、それぞれ配置されている。
センサ保持部402の外側には固定部404が配置されている。すなわち、板バネ40の外周部分がフレーム50を固定するための固定部404となる。固定部404には、固定用穴407が設けられている。固定用穴407にネジなどを挿入するころで、板バネ40とフレーム50が固定される。ここでは、固定用穴407は、フレーム50の4隅に対応する箇所に、それぞれ配置されている。
そして、固定部404とセンサ保持部402は、穴406a〜406cによって隔てられている。3つの穴406a〜406cが開口部44の周りにそれぞれ離間して配置されている。穴406aはL字状、穴406b、406cは矩形状に開口している。この穴406a、406bの中にアオリ調整用ピン31a、31bと固定支持点用ピン32が配置される。穴406aに一つのアオリ調整用ピン31aが配置され、穴406bに1つのアオリ調整用ピン31bと1つの固定支持点用ピン32が配置される。アオリ調整用ピン31aとアオリ調整用ピン31bは、開口部44を隔てた対角に配置されている。すなわち、図11では開口部44の左上にアオリ調整用ピン31bが配置され、開口部44の右下にアオリ調整用ピン31aが配置される。また、固定支持点用ピン32は、開口部44の右上に配置されている。
センサ保持部402と固定部404との繋ぎ部分に、固定支持部403及びばね機能部401が配置される。固定支持部403はXYの両方向について繋がっている。2つのばね機能部401は、開口部44を隔てた対角に配置され、Y方向に延びている。一方のばね機能部401は、穴406aと穴406bとを隔ており、他方のばね機能部401は穴406aと穴406cとを隔てている。固定支持部403は、穴406bと穴406cとを隔てている。ばね機能部401は、傾斜面62の押圧に応じて変形しながらセンサ3を傾ける。
このように、板バネ40をフレーム50とセンサ保持部材30との間に取り付ける構成としている。簡便な構成で、ばね機能部401と固定支持部403が正しい位置関係に固定できるので組立が容易である。さらに、ネジなどによって、板バネ40を固定することができるため、容易に組み立てることができる。さらに、図11のような板バネ40を用いることで、撮像装置1の小型化を図ることができる。例えば、撮像装置1のY方向の幅をより狭くすることができる。
対象物を正しく撮影するためには、フランジバックの調整等に加えて結像光学系の光軸10に対してセンサ3の受光面を正対させる必要がある。楔形状の傾斜面による調整は、光軸10に垂直な方向の変位を光軸に平行な方向の変位に変換出来るので、光軸方向の省スペース化に役立つ。さらに、傾斜面の角度設定により、入力変位量と作用する変位量の比を自由に設定できるというメリットもある。なお、これに対し、傾斜面を有する楔状部材をツマミ等を介して直接動かす従来の調整方法(特許文献1)は、定量的な移動量の把握が難しく、微小量の移動に不向きである。
本実施の形態のように、送りネジ63で微小量送るようにした場合、送りネジ63の回転に応じて調整部品自体も摩擦で同方向に回転する力を受ける。したがって、傾斜面62が安定せず、送りネジ63の進行量とセンサ3の傾き角度が比例せず不安定になる。送りネジ63の回転による影響を受けにくい送りネジ63の軸67上に当接位置を設ける事が考えられるが、傾斜ブロック61は可動部品なので周囲部品と必ずクリアランスを確保する必要があり、送りネジ63の軸67上に当接位置Cを設けた場合でも、送りネジ63の回転の影響は避けられない。
そこで本実施の形態では、上記の通り、送りネジ63の軸67からずれた位置に、当接位置Aと突起部61bを配置している。より好ましくは、光軸10から遠い側にアオリ調整用ピン31の当接位置Aと突起部61bを設けている。傾斜面62が押圧する位置が光軸10から遠い側にあると、微小角度の調整に適するからである。更に傾斜ブロック61とベース板70の面の関係は密着せず数ミリ程度の僅かなクリアランスを確保し、当接位置Aと同様に、当接位置Bを送りネジ63の軸67とずらす。すなわち、光軸10から遠い側に突起部61bを設けて、突起部61bとベース板70の当接位置Bを光軸10から遠い側にずらす。
対向面61aからベース板70側に突出した突起部61bでのみベース板70と当接し、突起部61bがベース板70と接触している状態で傾斜面62が正規の位置になるように寸法設定を行う。傾斜ブロック61の対向面61aをベース板70と接触するように配置すると、部品のばらつきにより送りネジ63の軸67とベース板70の平行が保てない場合に、傾斜ブロック61の動きが渋くなる、或いは動かなくなる。傾斜ブロック61のベース板70に対向する対向面61aで、送りネジ63の軸67を投影した部分から離れて部分でベース板70に接するように設定する。こうすることで、部品寸法或いは組立ばらつきで送りネジの軸とベース面の平行が保てない場合であっても、螺合の自由度を失わずに傾いて接触を保つ事が出来る。
センサ保持部材30を傾斜面62により微小量押圧して傾きを僅かに変えるために、上記の実施形態では送りネジ63を用いているが、ねじの螺合部にはスラストガタがある場合がある。送りネジ63の回転方向を変える際にバックラッシュとなり、傾斜面62の追従遅れが生じる。そこで、本実施の形態では、送りネジ63の軸67と同方向に斜面が低い部分から高い部分に変化する方向に付勢する圧縮コイルばね65を設ける構造とする。こうすることで、予め傾斜ブロック61をガタの範囲内で高い斜面の側に押し付けて、ガタの影響を排除する。もちろん、圧縮コイルばね65以外の弾性部材で、傾斜ブロック61を軸67方向に付勢してもよい。また、ねじは汎用的な工作機械で製作可能であり、規格も定まっているので品質の安定した部品を安価に製作可能である。
実施の形態2.
本実施の形態では、板バネ40の構造が実施の形態1と異なっている。板バネ40以外の基本的構成については、実施の形態1と同様であるため、共通する部分は説明を省略する。
図12は、本実施の形態にかかる板バネ40を示すXY平面図である。本実施の形態では板バネ40がジンバル構造を有している。開口部44の外側には穴406a、406bが設けられている。穴406a、406bはコの字型に開口しており、互いに向かい合っている。穴406a、406bの間がばね機能部401aとなっている。2つのばね機能部401aはY方向に沿って設けられている。ばね機能部401aは、X方向において、開口部44の中心近傍に配置されている。
さらに、穴406a、406bの外周には、穴406c、406dが設けられている。穴406c、406dはコの字型に開口しており、互いに向かい合っている。穴406c、406dの間がばね機能部401bとなっている。2つのばね機能部401bはX方向に沿って設けられている。ばね機能部401bは、Y方向において、開口部44の中心近傍に配置されている。一方のアオリ調整用ピン31aは開口部44を通過しており、他方のアオリ調整用ピン31bは、穴406dを通過している。固定支持点用ピン32は穴406aと通過している。
穴406a、406bのペアと、穴406c、406dのペアとは90°向きが異なっている。したがって、ばね機能部401aとばね機能部401bは90°異なる向きとなっている。換言すると、ばね機能部401aはY方向の回転軸となり、ばね機能部401bはX方向の回転軸となる。このように、ジンバルに配置すれば、XYの各方向に関して両側からばね機能部が保持するので固定支持部が無く、アオリ調整の際の2軸を分離した状態で調整できる。X軸回りとY軸回りに分離した状態でアオリ角を調整することができるため、さらに、調整を容易に行うことができる。
その他の形態.
上記の説明では、アオリ調整用ピン31とアオリ調整部材60のペアを2組設けたが、アオリ調整用ピン31とアオリ調整部材60のペアは1組であってもよく、3組以上あってもよい。
なお、以下の説明では、レンズユニット2に対するセンサ3のアオリ角を調整するアオリ調整機構4を有する撮像装置1について説明したが、本実施の形態にかかるアオリ調整機構4は、撮像装置用に限られるものではない。レンズユニット2に対して取り付けられる光学素子を有する光学機器であれば、アオリ調整機構4を設置することが可能である。
例えば、表示素子などがレンズユニットに対して取り付けられるプロジェクタなどの光学機器であれば、アオリ調整機構4を取り付けることが可能になる。より具体的には、レンズユニット2などの光学系を通して機器外部に映像を投射する液晶表示デバイスのアオリ調整機構に対しても、上記のアオリ調整機構4を用いることができる。簡便な調整で、レンズユニット2の光軸10に対して光学素子を正対させることができる。これにより、アオリを調整することができ、表示品質を向上することができる。スラストガタを排除した傾斜ブロック61を、回転防止構造を取りつつ送りネジで送って微小角度変更する利用も可能である。