JP5929402B2 - 電子写真感光体、画像形成装置、およびプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
請求項1に係る発明は、
支持体と、
少なくとも金属酸化物粒子および結着樹脂を含有し、示差熱熱重量同時測定における温度30℃から130℃までの質量変化量が0.65質量%以下である下引層と、
感光層と、
をこの順に有する電子写真感光体である。
前記下引層は、さらに電子受容性化合物を含有する請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置である。
請求項1に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
本実施形態に係る電子写真感光体(以下単に「感光体」とも称す)は、支持体と、少なくとも金属酸化物粒子および結着樹脂を含有し、示差熱熱重量同時測定(TG/DTA測定)における温度30℃から130℃までの質量変化量が0.65質量%以下である下引層と、感光層と、をこの順に有する。
特に、近年、帯電前の感光体全面に光を照射することで前サイクルの履歴を消去する機能を果たす除電装置を、コスト低減の観点から設けない画像形成装置の開発が盛んに行われている。この除電装置を有さない画像形成装置では、下引層の抵抗値をより高抵抗とすることで前サイクルの履歴によるポジゴーストを低減する方法があるが、この構成の場合、下引層における抵抗値が上昇した際に臨界値を超えやすく、前記ネガゴーストの発生が顕著となることがあった。
この効果が奏されるメカニズムは、必ずしも明確ではないが、感光体の製造の際に下引層中に混入する水分に起因するものと推察される。具体的には、下引層中に水分が混入すると、金属酸化物の酸素欠損中に水分などの不純物が入り込むことで電荷を捕獲するトラップとなり、下引層の抵抗が上昇して生成される電荷数が減少し、その結果ネガゴーストが発生するものと考えられる。また、水分などの不純物が混入することで下引層が緩和され、導電剤である金属酸化物同士の距離が広がるために導電剤同士の距離が遠くなり、その結果下引層の抵抗が上昇してネガゴーストが発生するものと考えられる。しかし、本実施形態に係る感光体の下引層は、温度30℃から130℃までの質量変化量が上記範囲であり、この温度30℃から130℃までの質量変化量は水分の含有量の指標として考えられる。つまり下引層における水分の含有量が上記範囲に抑制されているため、水分に起因して引き起こされる下引層の抵抗上昇が抑制され、その結果ネガゴーストの発生が抑制されるものと推察される。
ここで、下引層における上記質量変化率の測定は、まず感光体から下引層を剥がし取り、TG/DTA6300(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて、30℃から130℃まで10℃/minの上昇率で温度を上昇させた際の質量変化量を測定することで行われる。
下引層における前記質量変化率を前記の範囲に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば後述の方法によって支持体上に下引層を形成した後、更に乾燥処理を行う方法が挙げられる。該乾燥処理は、下引層を形成し更にその上に感光層(例えば電荷発生層や電荷輸送層)などの他の層を形成した後に行なってもよく、また下引層上に他の層を形成していない状態でおこなってもよい。
乾燥の方法としては、特に真空乾燥を行うことが好ましい。尚、乾燥条件は、真空乾燥を行わない場合、温度が90℃以上120℃以下が好ましく、110℃以上120℃以下がより好ましい。時間は20分以上1時間以下が好ましく、20分以上30分以下がより好ましい。真空乾燥を行う場合、温度が70℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がより好ましい。時間は、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、3時間以上が更に好ましい。
ついて、本実施形態に係る感光体の層構成について説明する。図1乃至図6は、本実施形態に係る感光体の層構成の例を示す概略図である。
図1に示す感光体は、支持体1と、支持体1の上に形成された下引層2と、下引層2の上に形成された感光層3と、から構成されている。また、図2に示すごとく、感光層3は電荷発生層31と電荷輸送層32との2層構造でもよい。さらに、図3および図4に示すごとく、感光層3上または電荷輸送層32上に保護層5を設けてもよい。また、図5および図6に示すごとく、下引層2と感光層3との間または下引層2と電荷発生層31との間に中間層4を設けてもよい。
支持体1としては、導電性を有する支持体が用いられ、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属または合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、および金属ベルト、または、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属または合金を塗布、蒸着またはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
リン酸、クロム酸およびフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。
本実施形態における下引層2は、示差熱熱重量同時測定(TG/DTA測定)における温度30℃から130℃までの質量変化量が0.65質量%以下である。
尚、下引層2は、少なくとも金属酸化物粒子と結着樹脂とを含有した層として構成される。
下引層2に含有される結着樹脂としては、公知のいかなるものでも使用し得るが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特に尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が望ましく用いられる。
これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
金属酸化物粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。
尚、金属酸化物粒子の体積平均粒径は、レーザ回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定を行う。測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるよう調整し、これにイオン交換水を添加して40mlにし、これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待ったところで測定を行う。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
さらに金属酸化物粒子に加えて、電子受容性化合物(アクセプター性化合物)を含有させてもよい。電子受容性化合物(アクセプター性化合物)としてはいかなるものでも使用し得るが、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
また、下引層2中に金属酸化物粒子に加えて電子受容性化合物を含有させる場合には、電子受容性化合物は望ましくは金属酸化物粒子100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、さらに望ましくは0.05質量部以上10質量部以下の範囲で用いられる。
下引層2中には種々の添加剤を用いてもよい。添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。
下引層形成用の塗布液を調製するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
上記分散の際の条件としては、例えば直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルによる分散では、充填率:70%以上95%以下、0.1時間以上100時間以下で分散させることが望ましい。
乾燥の際の条件としては、通常溶剤を蒸発させ製膜し得る温度で行われるが、例えば温度としては150℃以上200℃以下が好ましく、160℃以上200℃以下がより好ましく、170℃以上190℃以下が更に好ましい。また、乾燥の時間としては10分以上50分以下が好ましく、20分以上40分以下がより好ましい。
下引層2は、交流インピーダンス測定における抵抗値が1×108Ω以上1×1010Ω以下であることが好ましく、更には1×109Ω以上1×1010Ω以下がより好ましい。
まず、下引層2のインピーダンスを測定する。インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプ等の支持体を陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定する。この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで下引層2の抵抗値を得る。
更に、下引層の抵抗値は下引層を形成する際の乾燥温度によっても調整され、前記乾燥温度が高くなるにつれ、下引層の抵抗値は低下する傾向にある。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。
下引層と感光層との間に中間層4を設けてもよい。
中間層4を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などがある。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物が望ましい。
感光層の電荷発生層31は、電荷発生物質を真空蒸着して形成するか、電荷発生物質を、有機溶剤、結着樹脂、添加剤等とともに分散して塗布することにより形成される。
本実施形態において、電荷発生材料としては、公知の電荷発生物質を使用してよいが、特に優れた性能が得られ、望ましく使用される電荷発生物質として、フタロシアニン系顔料が挙げられる。また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型を用いてもよい。特に望ましく用いられる電荷発生材料の具体例を以下に示す。
これらの中でも、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜および28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶がよい。
溶剤は、顔料結晶に対して、1部以上200部以下、望ましくは10部以上100部以下の範囲(質量比)で用いる。
処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、望ましくは10℃以上60℃以下の範囲で行う。
また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述した乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御される。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が望ましく、濃度70%以上100%以下、望ましくは95%以上100%以下のものが使用され、溶解温度は、−20℃以上100℃以下、望ましくは0℃以上60℃以下の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1倍以上100倍以下、望ましくは3倍以上50倍以下の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが望ましい。
望ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。これらの中で特にポリビニルアセタール樹脂が望ましく用いられる。
また、電荷発生物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものでも使用してもよい。
分散の際、粒子を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いられる。
電荷発生層の厚みは、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、公知のものならいかなるものを使用してよいが、下記に示すものが例示される。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質、あるいは以上に示した化合物に由来する基を主鎖または側鎖に有する重合体などがあげられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合せて使用される。
結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は、10:1乃至1:5が好ましい。
電荷輸送層を設ける際に用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。塗布に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
たとえば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果が得られる。
ベンゾフェノン系光安定剤として2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系系光安定剤として2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。その他の化合物として2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
本実施形態の電子写真感光体は、感光層上に保護層5を設けてもよい。この保護層は、積層構造からなる感光体では帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する為に設けられる。保護層としては公知の保護層が用いられる。
保護層を設ける際に用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いてよいが、下層を溶解しにくい溶剤を用いることが望ましい。
また、本実施形態に係る感光体は、一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いられる。
次に、本実施形態の画像形成装置について説明する。
図7は本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図7に示す画像形成装置100は、回転し得るよう設けられた本実施形態のドラム状(円筒状)の電子写真感光体7を備えている。電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の外周面の移動方向に沿って、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13および除電装置(イレーズ装置)14がこの順で配置されている。
尚、コスト低減の観点から、除電装置14を有しない態様としてもよい。
帯電装置8は、コロナ帯電方式の帯電装置であり、電子写真感光体7を帯電させる。帯電装置8は、電源9に接続されている。帯電装置8としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器が挙げられる。
ここで、図8は本実施形態の電子写真感光体を用いた接触帯電型方式の画像形成装置の一例を示す概略図である。
上記接触帯電用部材は、感光体表面に接触するように配置され、電圧を感光体に直接印加し、感光体表面を予め定めた電位に帯電させるものである。この接触帯電用部材にはアルミニウム、鉄、銅などの金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素、金属酸化物などの金属酸化物粒子を分散したものなどが用いられる。
また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いてもよい。これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、酸化防止剤を含有させてもよい。また、エマルジョン樹脂にレベリング剤や界面活性剤を含有させてもよい。
露光装置10は、帯電した電子写真感光体7を露光して電子写真感光体7上に静電潜像を形成する。露光装置10としては、例えば、電子写真感光体7の表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体7の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよいが、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置10としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
現像装置11は、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する。現像剤は、重合法により得られる体積平均粒子径3μm以上9μm以下のトナー粒子を含有することが望ましい。現像装置11は、例えば、トナーおよびキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体7に対向して配置された現像ロールが備えられた構成が挙げられる。
転写装置12は、電子写真感光体7上に現像されたトナー像を被転写媒体に転写する。転写装置12としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
クリーニング装置13は、転写後の電子写真感光体7上に残存するトナーを除去する。クリーニング装置13は、電子写真感光体7に対して線圧10g/cm以上150g/cm以下で接するブレード部材を有することが望ましい。クリーニング装置13は、例えば、筐体と、クリーニングブレードと、クリーニングブレードの電子写真感光体7回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシと、を含んで構成される。また、クリーニングブラシには、例えば、固形状の潤滑剤が接触して配置される。
除電装置(イレーズ装置)14は、トナー像を転写した後の電子写真感光体7の表面に除電光を照射して、電子写真感光体の表面に残留する電位を除電する。除電装置14は、例えば、電子写真感光体7の軸方向幅方向全域にわたって除電光を照射して、電子写真感光体7の表面に生じた露光装置10による露光部と非露光部との電位差を除去する。なお、除電装置14が設けられていない態様であってもよい。
画像形成装置100は、転写工程後の被転写媒体にトナー像を定着させる定着装置15を備えている。定着装置としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
電子写真感光体7における静電潜像の形成された部分が現像装置11に近づくと、現像装置11により、静電潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
トナー像が形成された電子写真感光体7が矢印Aに方向にさらに回転すると、転写装置12によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
画像が形成された記録紙Pは、定着装置15でトナー像が定着される。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、前記した本実施形態に係る電子写真感光体7を備えたプロセスカートリッジを画像形成装置に着脱させる形態であってもよい。
本実施形態に係るプロセスカートリッジの構成は、少なくとも、前記本実施形態に係る電子写真感光体7を備えてえればよく、電子写真感光体7のほかに、例えば、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、およびクリーニング装置13、および除電装置14から選択される少なくとも1つの構成部材を備えていてもよい。
−感光体の作製−
・下引層
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m2/g)100部をメタノール500部と攪拌混合し、シランカップリング剤としてKBM603(信越化学社製)0.75部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム支持体上に塗布し、176℃,24分の乾燥硬化を行い、厚さ32μmの下引層を得た。
次に、電荷発生材料としてCuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜および28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部およびn−ブチルアルコール300部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用塗布液を得た。
この電荷発生層形成用塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子8部(平均粒径:0.2μm)およびフッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量30000)0.01部を、テトラヒドロフラン4部およびトルエン1部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
次に、電荷輸送物質としてトリス[4−(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)フェニル]アミンを4部、結着樹脂としてビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)を6部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1部、混合してテトラヒドロフラン24部およびトルエン11部を混合溶解して、混合溶解液Bを得た。この混合溶解液Bに前記樹脂粒子懸濁液Aを加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cm2まで昇圧して分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100、信越シリコーン社製)を5ppm添加し、攪拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この電荷輸送層形成用塗布液を前記電荷発生層上に塗布して、135℃で25分間乾燥し、膜厚が24μmの電荷輸送層を形成した。
次に、得られた電子写真感光体を、乾燥装置(ADVANTEC社製、商品名DRV422DB)を用いて80℃3hの条件にて真空乾燥処理を行い、電子写真感光体を得た。
実施例1において、下引層形成時の乾燥硬化の際の温度を176℃から下記表1に記載の温度に変更し、且つ真空乾燥処理時の乾燥条件を80℃3hから下記表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1に記載の方法により感光体を作製した。
−質量変化量−
前記実施例および比較例における下引層の形成方法に即して、アルミニウム基板上に下引層のみを形成し、その後該下引層を有するアルミニウム基板に対し、下記表1に記載の真空乾燥処理時の乾燥条件にて真空乾燥処理を施した。そこから該下引層のみを剥離し、TG/DTA6300(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて、30℃から130℃まで10℃/minの上昇率で温度を上昇させた際の質量変化量を測定した。
下引層の抵抗値を、以下の通り測定した。まず、下引層のインピーダンスを、インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプ等の支持体を陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定した。この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで下引層の抵抗値を得た。
DocuCentre 505a(富士ゼロックス社製)の改造機に実施例および比較例で得た感光体を組みこんで、除電手段を備えない条件(イレーズなし)において、10℃、湿度15%の条件下にて、画像濃度100%、2cm×2cmの画像を感光体1サイクル分形成した後、ハーフトーン画像(画像濃度30%)の全面ベタ画像を形成して画像の履歴に起因するネガゴーストの発生の程度を、限度見本を用いた目視観察によって評価した。
・評価基準
A:未発生
B:微小な濃度変化発生
C:濃度変化発生(実用上問題ないレベル)
D:顕著な濃度変化発生
(ただし、−グレードはハーフトーン画像濃度に比べ)
サイクル特性は、DocuPrint505(富士ゼロックス社製)の改造機に実施例および比較例で得た感光体を組みこんで、28℃85RH%の雰囲気下で、画像密度5%のランダムチャートを10000枚連続プリントし、その直後に帯電装置と露光装置の中間に表面電位プローブを設置し、表面電位計トレック334(トレック社製)を用いて測定した残留電位(V)と、10000枚連続プリント前の残留電位(V)との差(残留電位上昇分)を算出して、以下の評価基準により評価した。
・評価基準
A:10V以下
B:10V超え15V以下
C:15V超え20V以下
D:20V超え
Claims (4)
- 支持体と、
少なくとも金属酸化物粒子および結着樹脂を含有し、示差熱熱重量同時測定における温度30℃から130℃までの質量変化量が0.65質量%以下である下引層と、
感光層と、
をこの順に有する電子写真感光体。 - 前記下引層は、さらに電子受容性化合物を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。 - 請求項1に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
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