以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のうち眼前の両側の部分からそれぞれ延びてフレーム121を折りたたむためのヒンジ(不図示)の手前までを占める部分(フロントカバー)141,142や当該ヒンジより後段から耳にかかる部分までを占める部分(テンプル)151,152に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で右側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、図中破線で囲んだ虚像表示装置100全体のうちの中央より右半分の範囲にあり、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で左側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、虚像表示装置100全体のうち中央より左半分の範囲にあり、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。この場合、画像形成装置10は、観察者の耳に近接して配置されるものとなる。
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1中の破線で囲まれた範囲内における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の2次元的な広がりを有する光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、投射光学系12を通る第1光軸AX1と、後述する導光部材21の第3反射面21cに平行な特定線とを含む縦断面の延びる方向に対応し、第2方向D2は、上記第1光軸AX1と、上記第3反射面21cの法線とを含む横断面の延びる方向に対応する。つまり、液晶表示デバイス32の位置において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のZ方向に相当する。
投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズ13と、コリメートレンズ13で平行光束化された画像光の広がり状態を調整することにより、表示すべき虚像について縦横比の調整を行うトーリック光学系である縦横比変換光学系15とを含むレンズ群である。
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてYZ面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3、及び第4反射面21a,21b,21c,21dに隣接するとともに互いに対向する上面21eと下面21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、YZ面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、YZ面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
導光部材21は、第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返されつつ伝搬する横方向すなわち閉じ込め方向は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(X軸に平行)で、光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される拘束が全体として向かう主導光方向は、+Z方向になっている。
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、一体形成品であるが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域全体に、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための全反射ミラー層を有する。この全反射ミラー層は、導光部材21の斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として−X方向に向かう画像光GLを、全体として+X方向寄りの+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
導光部B2は、互いに対向しYZ面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、その表面には、ミラー層等の反射コートが施されていなが、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層で被覆されている。このハードコート層は、導光部材21上に樹脂等を含有するコート材をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向すなわち光射出部B3を設けた+Z側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための表側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるための矩形の平坦面である。第4反射面21dには、ハーフミラー層28が付随している。このハーフミラー層28は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、導光部材21のうち第4反射面21dを構成する斜面RS上に金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL'の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はYZ面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として+X方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
光透過部材23は、導光部材21の本体と同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、YZ面に沿って延びる。また、第3面23cは、YZ面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第3面23cとに挟まれた楔状の部材を有する部材となっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化させることで形成されている。
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第3面23cは、接着剤によって導光部材21の第4反射面21dに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cを通過する外界光GL'は、ハーフミラー層28において例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものをハーフミラー層28越しに観察することになる。
〔C.画像光の光路の概要〕
図3(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のX'Y'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
上側の画像光GLaは、縦横比変換光学系15を含む投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ1の上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ2(|φ2|=|φ1|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ1,φ2は、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
図3(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向(閉じ込め方向又は合成方向)D2の光路を説明する図である。第2方向D2(閉じ込め方向又は合成方向)に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+Z側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GLcとし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−Z側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GLdとする。図3(B)中には、参考のため、右寄り内側のから射出される画像光GLeと、左寄り内側のから射出される画像光GLfとを追加している。
向かって右側の第1表示点P1からの画像光GLcは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ1の右方向から傾いて入射する。一方、向かって左側の第2表示点P2からの画像光GLdは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ2(|θ2|=|θ1|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ1,θ2は、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
なお、第2方向D2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GLc,GLdが反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GLc,GLdが導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GLc,GLdの導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GLcの射出角度θ1'と左側の画像光GLdの射出角度θ2'とは異なるものに設定されている。
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GLc,GLdは、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図4は、第1表示装置100Aにおける横の第2方向D2での具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、既述のように、複数のレンズ(不図示)で構成されるコリメートレンズ13と、画像領域の虚像について縦横比の変換を行うための縦横比変換光学系15とを有している。縦横比変換光学系15は、1組のシリンドリカルレンズ15a,15bで構成されている。縦横比変換光学系15は、縦方向と横方向とで曲率半径の異なる光学面を有する1組のシリンドリカルレンズ15a,15bを用いることで、コリメートレンズ13で平行光束化された画像光の平行状態を保ったままで観察者の眼EYへの入射角度を変化させて、画角の調整による縦横比の変換を可能としている。ここでは、一例として、画像表示装置11の画像領域での縦横比すなわちアスペクト比を4:3とし、これを観察者が虚像として認識する際にアスペクト比16:9となるような比率の変換を行っている。なお、縦横比変換光学系15によるアスペクト比変換動作の詳細については後述する。
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のコリメートレンズ13を通過することで平行光束化される。さらに、画像光GL11,GL12は、投射光学系12の縦横比変換光学系15を通過することで、平行光束化された状態を保ちつつ、アスペクト比変換のために横方向に関して光路方向が調整される。つまり、縦横比変換光学系15により、映し出される画像について、横方向の画角を調整して液晶表示デバイス32の画像領域での縦横比変換のための調整がなされる。
投射光学系12を経た画像光GL11,GL12は、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ1の傾きで平行光束として射出される。
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のコリメートレンズ13を通過することで平行光束化され、縦横比変換光学系15の通過では平行光束化された状態を保ちつつ光路調整されて、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ2の傾きで平行光束として射出される。
図4において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS'を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS”を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS',IS"の近傍に存在する投射光学系12のレンズ15bを重ねて観察していることになる。
図5(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図5(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図5(C)及び5(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図5(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図5(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図5(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図5(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
図5(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図5(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
ここで、図4に戻って、投射光学系12の縦横比変換光学系15による画像光GL11,GL12,GL21,GL22の光路の調整に関して説明する。以上のような画像形成にあたって、縦横比変換光学系15は、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の光路を通常の場合よりも広角なものとするように光路を調整することで、縦横比すなわちアスペクト比の変換をしている。具体的には、図中破線で示すように、仮に縦横比変換光学系15がないとした場合には、仮想の光路GLMが画像光の光路となる。この仮想の光路GLMは、実際の画像光GL11,GL12,GL21,GL22の光路よりも狭い角度で導光部材21等に入射するものであり、この場合、画像表示装置11の画像領域での状態を保ってアスペクト比4:3の画像が形成されることになる。これに対して、本実施形態では、縦横比変換光学系15によって、画像光の光路が調整されている。これにより、画像表示装置11側では、画像領域がアスペクト比4:3であっても、観察者は、より横長のアスペクト比16:9の映像として認識することができる。なお、縦横比変換光学系15は、投射光学系12において、コリメートレンズ13の後段に位置することで、平行光束化された状態にある画像光に対して上記のようなアスペクト比変換のための横方向へ伸張の作用を施すものとなっている。このため、縦横比変換光学系15の通過に際して、画像光の成分が平行光束化された状態を維持することが可能となっている。
〔D.縦横比変換光学系の構造及びこれによる縦横比変換〕
以下、図6(A)〜6(C)及び7(A)〜7(C)を参照して、縦横比変換光学系15の構造や機能についてより詳細に説明する。なお、図6(A)及び6(B)では、縦横比変換光学系15についての説明を優先するため、他の機構や光路等が、模式的に示されている。また、ここでは、図7(A)に概念的に説明するように、図6(A)等に示す縦横比変換光学系15が横方向にのみ光束の角度変換を行うことによって、観察者に認識される映像に相当するパネル画像PPは、元のアスペクト比4:3から縦横比変換されアスペクト比16:9となる。なお、比較例として図7(B)に概念的に示すように、仮に縦横比変換光学系15が配置されないとすると、上記のような縦横比変換がなされず、パネル画像PPは、元の画像表示装置11の画面のアスペクト比4:3のままとなる。
図6(A)は、虚像表示装置100をY方向から見た断面図であり、図6(B)は、虚像表示装置100をZ方向から見た側面図であり、図6(C)は、縦横比変換光学系15を構成する1組のシリンドリカルレンズ15a,15bの斜視図である。図示の虚像表示装置100において、画像表示装置11の横方向である第1方向D1は、図7(A)に示すように観察者の横方向すなわちパネル画像PPの横方向E1に対応している。また、第1方向D1に垂直な画像表示装置11の縦方向である第2方向D2は、パネル画像PPの縦方向E2に対応している。
縦横比変換光学系15は、光路上流側すなわち光源側に配置される凸シリンドリカルレンズ15aと、光路下流側すなわち反光源側に配置される凹シリンドリカルレンズ15bとにより構成される。凸シリンドリカルレンズ15a及び凹シリンドリカルレンズ15bは、いずれも、母線がY方向に延びるように配置されており、XZ面に平行な断面については正負の屈折力を与える円弧状であり、XY面に平行な断面については屈折力を与えない直線状であり、図6(C)に斜視図で示すような全体外観を有するシリンドリカル光学系である。各シリンドリカルレンズ15a,15bは、導光部材21の光入射面ISに直接又は間接的に対向するように配置されている。各シリンドリカルレンズ15a,15bが、以上のような形状及び配置となっているため、その断面形状の違いによって、通過する光の発散・収束作用すなわち画像光についての伸張・縮小作用が生ずる方位と生じない又は殆ど生じない方位とがある。なお、図6(A)等に例示するシリンドリカルレンズ15a,15bの場合、光路下流側の面HSa,HSbは曲面になっており、光路上流側の面TSa,TSbは平坦面になっている。
図6(A)及び6(B)に示すように、縦横比変換光学系15に入射した画像光は、コリメートレンズ13によって予め平行化されている。縦横比変換光学系15は、第1方向D1に対応するXZ断面で、各画像光の光束の平行性を保ちつつ画角を拡げるように変換するアフォーカル系すなわち焦点距離が無限大の光学系であり、入射する平行光束の平行性を保って射出する。一方、縦横比変換光学系15は、第2方向D2に対応するXY断面で各画像光の光束の平行性を保ち画角を維持する非作用型の光学系となっている。従って、図6(A)においてすなわちXZ面内において、画像光GL1等は、平行光束として入射し、射出角度が変化するものの平行光束として射出されている。また、図6(B)においてすなわちXY面内において、画像光GL1等は、平行光束として入射し、略そのままの平行光束として射出されている。ここで、縦横比変換光学系15による画像光の光束断面の第1方向D1すなわち横方向についての伸張・縮小は、射出角度の増減に相当するものであり、縦横比変換光学系15を構成する両シリンドリカルレンズ15a,15bの屈折力や間隔によって定まる。図6(A)等に示すレンズ15a,15bの配置の場合、レンズ15a,15bすなわち縦横比変換光学系15がない場合と比較して、Z方向については横画角φ=2θを拡げ画像光を伸張させる。一方、第2方向D2すなわち縦方向については伸張も縮小もさせないものとなっている。
以下、図6(A)等を参照して、画像形成装置10側における第1方向D1すなわち横方向に関しての画像光の光路調整について説明する。ここでは、縦横比変換光学系15での光路調整によるアスペクト比変換について説明するため、画像光のうち例えば図7(C)に示す画像光GL2,GL3のように画像表示装置11の周辺側から入射角度θ0だけ傾いて射出され光軸XXと交差する成分について考える。このような成分は、まず、凸シリンドリカルレンズ15aに入射すると、アフォーカル系である凸シリンドリカルレンズ15a及び凹シリンドリカルレンズ15bにより、光軸XXに対して入射角度θ0よりも傾きの大きい射出角度θで+Z側又は−Z側から射出される。なお、この射出角度θは、図6(A)等に示す虚像の横半画角θの値に等しい。以上のように、縦横比変換光学系15を通過することで横方向に関して入射角度θ0よりも射出角度θが大きくなるすなわち角倍率が大きくなる結果、画像光の射出時の画角が入射時よりも拡がる。つまり、画像光による虚像は、縦横比変換光学系15がない場合と比較して、横方向へ伸張されることになる。
以上において、凸シリンドリカルレンズ15aと凹シリンドリカルレンズ15bとの位置関係や、これらの焦点距離の比を適宜定めることで、入射角度θ0に対する射出角度θの大きさを所望の値にし、結果として、観察者に認識させるべき虚像の縦横比を所望の比率に調整することができる。なお、ここでは、一例として、横方向について4/3倍する伸張変換となっている。
以下、図6(B)に戻って、画像形成装置10側における第2方向D2すなわち縦方向に関しての画像光の光路について説明する。この場合、各シリンドリカルレンズ15a,15bは屈折力を有さず平行平板と同等のものとなっているので、画像光のうち例えば画像表示装置11の−Y側から射出される画像光GLyのように周辺側から射出される成分も、中心側の成分も、縦横比変換光学系15による角度変化の影響を殆ど受けない。つまり、画像光は、入射角度θ0の値をそのまま射出角度θ0とし、縦横比変換光学系15がない場合と比較して、伸縮されることなくそのままの状態を維持して射出され虚像を形成する。
以上の結果、縦横比変換光学系15は、通過する画像光による虚像について、縦横比変換光学系15がない場合と比較して、横方向に関しては伸張し、縦方向に関しては殆ど変化しないように変換している。つまり、横方向と縦方向とで異なる比率で変換している。この場合、上記のように横方向についての伸張量を4/3倍とすることで、4:3の縦横比から16:9への変換を横伸張のみによって行っている。以上のような変換により、16:9の縦横比となる虚像を形成可能な画像光を導光部材21の光入射面ISに入射させることができる。なお、図6(A)のように、画角を拡げて虚像を横方向に伸張させる場合、導光部材21を通過する各平行光束の幅は狭くなる。一方、図6(B)のように、伸張も縮小もさせない場合、導光部材21を通過する各平行光束の幅は変わらない。
以下、上記縦横比変換に応じた画像を構成する画素の形状について説明する。まず、図8(A)は、画像表示装置11の画面に対応するものとして、縦横比変換による作用のない状態のパネル画像PPを模式的に示すものである。この場合、パネル画像PPの形状は、画像表示装置11の画像領域PDの形状をそのまま反映したアスペクト比4:3の矩形状となっている。従って、パネル画像PP上にマトリクス状に配置された多数の画素PEは、画像表示装置11における画像領域PDの画素の配置・形状を示すものとして捉えることができる。一方、図8(B)は、縦横比変換光学系15の縦横比変換による作用で縦横比が16:9に変換された状態のパネル画像PPを模式的に示すものである。図8(B)において、パネル画像PPの各映像画素PE'は、図8(A)の各画素PEに1対1で対応するものである。ここでは、既述のように、縦横比変換光学系15による縦横比変換は、横方向について4/3倍するものとして設定されている。これに対応するように、図8(A)のパネル画像PPの画素PEの各形状は、縦横比変換光学系15による変換比率と逆比率の縦横比の縦長の長方形状としている。つまり、各画素PEの縦横比m:nは、縦方向すなわちY方向に長くm:n=3:4となっている。これにより、図8(B)に示すパネル画像PPの各映像画素PE'の各形状は、縦横比変換光学系15によって横方向に4/3倍の変換比率で伸張変換されることで縦横比1:1の正方形の状態となっているものとして観察者に認識される。以上のように、画像表示装置11の画素の形状すなわち画素PEの形状を、縦横比変換光学系15での縦横比変換に対応して予め縦長にしておくことで、縦横比変換されて観察者の眼EYに届く映像は、画像処理等を施すことなく、元の映像の状態をそのまま自然な形に保たれたものとなる。
以下、各画素PEを3セグメントで構成する場合の画素要素について説明する。例えば、図9(A)及び9(B)に示すように、RGB(赤、緑、青)3色の縦長の画素要素R1,G1,B1を横一列に配列したものを1組として1つの画素PEを形成してもよい。この場合、縦横比変換後の各画素PE'において、各画素要素R1',G1',B1'は、横方向に伸張される。従って、変換前の画素要素R1,G1,B1を予め縦長にしておくことで、変換後の各画素要素R1',G1',B1'が最良な形状となるようにできる。また、図9(C)及び9(D)に示すように、RGB(赤、緑、青)3色の画素要素R1,G1,B1を縦一列に配列することも可能である。なお、上記のような縦又は横ストライプ配置のほか、例えばデルタ配置やモザイク配置等の配列方式も適用可能であり、各配列方式により例えば縦線が見やすいものや、グラフィック表示に向いているもの等があり、必要な特性に応じて種々の配列方式から適するものを選択できる。
また、このほかにも、例えば図9(E)及び9(F)に示すように、RGB(赤、緑、青)3色を4セグメントの画素要素を矩形の4マスに配列して1つの画素PEを構成することもできる。図9(E)及び9(F)では、一例として、R及びBを1つずつ、Gを2つという配色するすなわち画素要素R1,G1,G2,B1を2行2列に配置して、これらを画素要素R1',G1',G2',B1'に変換して正方形の画素PE'を形成するものとしている(図9(F)参照)。また、図9(G)及び9(H)に示すように、例えばRGB(赤、緑、青)にY(黄)を加えた4色による4セグメントの画素要素R1,G1,B1,Y1で1つの画素PEを構成し、配置された各画素要素R1,G1,B1,Y1を縦横比変換で画素要素R1',G1',B1',Y1'に変換して正方形の画素PE'を形成するものとしてもよい(図9(H)参照)。4セグメントで構成する場合、上記のように緑を強くしたり、黄色を加えたりすることで、光量を大きくしたり色再現性をより向上させることが可能となる。また、4色目の色については、Y(黄)に限らず、この他にも、例えばW(白)とすることもできる。
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100は、縦横比変換光学系15での伸張変換によって、形成された虚像の縦横比について、元の画像表示装置11の画像領域PDの縦横比(4:3)よりも横長の縦横比(16:9)に変換することができる。これにより、例えば虚像表示装置100全体に対する画像表示装置11を含む画像形成装置10の横幅WDが設計上制限され画像領域PDを映像として必要とされる比較的横長の縦横比(例えば16:9)にすることができず、正方形に近い比(例えば縦横比4:3)となる場合であっても、観察者の眼に虚像として認識される画像光の縦横比を、シリンドリカルレンズ15a,15bでの縦横比変換によって所望の状態(例えば縦横比16:9)に調整できる。
なお、上記実施形態及び各変形例の縦横比変換光学系15等において、画像表示装置11側の表示画像の縦横比を4:3とし、観察者に認識される画像光による虚像の縦横比を16:9とするように変換しているが、縦横比については、これに限らず、変換の前と後とについてそれぞれ種々のものが想定される。縦横比の変換比率は、例えば縦横比変換光学系15を構成する1組の凹凸形状のシリンドリカルレンズ15a,15bの配置を変更することで調整できる。
また、以上説明した実施形態の虚像表示装置100では、光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLが導光部の第1及び第2反射面21a,21bで全反射されつつ伝搬され、光射出部B3の第4反射面21dで反射されて虚像として観察者の眼EYに入射する。この際、画像表示装置11の第1表示点P1から射出される第1画像光GL11,GL12の導光部における反射回数と、画像表示装置11の第2表示点P2から射出される第2画像光GL21,GL22の導光部B2における反射回数とが異なるので、光射出部B3から射出される画像光GLの射出角度の角度幅を広くとることができる。つまり、画像表示装置11における異なる部分領域A10,A20からの画像光GLを比較的広い視野角で取り込むことができるようになり、光射出部B3越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。このように、反射回数が異なる画像光GLを取り出す構造とすることにより、導光部B2をあまり厚くすることなく瞳を覆うように光射出部B3を大きくすることができるので、光射出部B3を瞳に近づけて瞳分割を行う必要がなくなり、アイリング径を大きく確保することができ、良好なシースルー観察も可能になる。
〔第2実施形態〕
以下、図10(A)等により、第2実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置200は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、第1実施形態の虚像表示装置100と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
図10(A)は、虚像表示装置200をY方向から見た断面図であり、図10(B)は、虚像表示装置200をZ方向から見た側面図である。本実施形態の虚像表示装置200は、縦横比変換光学系215において、第1方向D1(Z方向)に垂直な第2方向D2(Y方向)に関して縮小変換を行うことで、観察されるべき虚像を所望状態の縦横比に変換している。ここでは、一例として、画像表示装置11での表示画像の縦横比すなわちアスペクト比を4:3とし、縦横比変換光学系215による縦横比変換である縮小変換によって、アスペクト比16:9の映像を観察者に認識させるものとする。
縦横比変換光学系215は、第2方向D2すなわち縦方向に関する縮小変換を行うため、光路上流側すなわち光源側に凹シリンドリカルレンズ215aを配置し、光路下流側すなわち反光源側に凸シリンドリカルレンズ215bを配置している。より具体的には、各リンドリカルレンズ215a,215bは、いずれも、母線がZ方向に延びるように配置されており、XZ面に平行な断面については屈折力を与えない直線状であり、XY面に平行な断面については正負の屈折力を与える円弧状であるシリンドリカル光学系である。これにより、縦横比変換光学系215は、XZ面については、平行平板と同等で光束を殆ど変化させないものとなっている一方、XY面については、画像光の光束の平行性を保ちつつ、画角を狭めるように変換するアフォーカル系として機能するものとなっている。
以上から、まず、図10(A)に示すように、第1方向D1すなわちZ方向に関しての画像光の光路は、縦横比変換光学系215による角度変化の影響を殆ど受けない。つまり、画像光は、縦横比変換光学系215がない場合と比較して、伸縮されることなくそのままの状態を維持して射出される。
一方、図10(B)に示すように、第2方向D2すなわちY方向に関しての画像光の光路は、アフォーカル系である縦横比変換光学系215により、射出時の画角が入射時よりも狭まるように変化する。つまり、画像光による虚像は、縦横比変換光学系215がない場合と比較して、縦方向に縮小されることになる。
以上の結果、縦横比変換光学系215は、通過する画像光全体の光束断面形状について、横方向に関しては殆ど変化させず、縦方向に関しては縮小するように縦縮小変換している。このように、横方向と縦方向とで異なる比率で変換することで、例えば4:3の縦横比から16:9への変換を行うことができる。なお、この場合、上記変換を達成するため、縦方向について3/4倍する縮小量の縮小変換に設定されることになる。
〔第3実施形態〕
以下、図11(A)等により、第3実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置300は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、第1実施形態の虚像表示装置100と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
虚像表示装置300は、縦横比変換光学系315において、観察者にとっての横方向に対応する第1方向D1(Z方向)に関する伸張変換と、第1方向D1に垂直な第2方向D2(Y方向)に関する縮小変換との双方の変換を縦横比変換として行っている。
縦横比変換光学系315は、第1方向D1すなわち横方向に関する伸張変換を行い、第2方向D2すなわち縦方向に関する縮小変換を行うため、断面方向によって凹凸の異なる鞍型の表面形状を有するトーリックレンズ315a,315bを配置している。つまり、各トーリックレンズ315a,315bは、XZ面に平行な断面及びXY面に平行な断面のいずれについても円弧状であるが、断面方向によって凹形状であるか凸形状であるかが異なるトーリック状となっている。
まず、図11(A)に示すように、第1方向D1すなわちZ方向に関しての画像光の光路は、アフォーカル系である縦横比変換光学系315により、射出時の画角が入射時よりも広がるように変化する。つまり、画像光による虚像は、縦横比変換光学系315がない場合と比較して、横方向に伸張されることになる。
一方、図11(B)に示すように、第2方向D2すなわちY方向に関しての画像光の光路は、アフォーカル系である縦横比変換光学系315により、射出時の画角が入射時よりも狭まるように変化する。つまり、画像光による虚像は、縦横比変換光学系315がない場合と比較して、縦方向に縮小されることになる。
以上の結果、縦横比変換光学系315について適宜横伸張量と縦縮小量を調整して、横方向と縦方向とで異なる比率で変換することで、例えば4:3の縦横比から16:9への変換を行うことができる。この場合、横伸張量と縦縮小量とを適宜分配することで個々の変化量を比較的小さくできるため、縦横比変換光学系315は、より容易に作製できる。
〔第4実施形態〕
以下、図12(A)等により、第4実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置400は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、第1実施形態の虚像表示装置100と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
図12(A)に示すように、虚像表示装置400は、画像形成装置10と、導光装置20とに加え、画像処理部430を備える。
画像処理部430は、外部から画像表示装置11に入力される画像信号について、画像処理をする。具体的には、画像処理部430は、必要な当該画像信号の信号処理を行うとともに、図12(B)に示すように、外部から入力される画像信号に相当する元映像PP1を画像表示装置11の画像領域の形状に合わせたパネル入力映像PP2となるように横倍率の変換処理をする。この際、観察者が認識するものとなる最終画像である表示映像PP3が、元映像PP1の状態に戻るように変換処理となっている。具体的には、例えば、元映像PP1の縦横比が16:9であり、パネル入力映像PP2の縦横比すなわち画像表示装置11の画像領域の縦横比が4:3であり、表示映像PP3が16:9であるとする。また、縦横比変換光学系15において横方向について4/3倍するような伸張量の伸張変換に設定されているものとする。この場合、画像処理部430は、縦横比変換光学系15での変換率に応じて元映像PP1を横方向すなわち長手方向L1について、3/4倍に縮小するように変換する。これにより、図示のように、パネル入力映像PP2での映像は元映像PP1に比べて長手方向L1について縮むため相対的に縦長のものとなるが、最終画像である表示映像PP3では、縦横比変換により長手方向L1について伸張されるので、元映像PP1が復元された状態となる。
以上のように、本実施形態の場合、画像処理部430は、画像処理によって、縦横比変換光学系15による画像光の縦横比の変換比率に応じて、これを補償するために、外部からの画像信号について当該変換比率と逆比率となるように縦横比の変換処理を行っている。これにより、観察者に認識される映像PP3を、外部からの入力時の映像信号による元映像PP1について縦横伸縮させることなくそのままの状態にできる。
〔第5実施形態〕
以下、図13(A)等により、第5実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置500は、第1実施形態の虚像表示装置100等の変形例であり、第1実施形態の虚像表示装置100等と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
図13(A)及び13(B)に示すように、虚像表示装置500は、画像形成装置510と、導光部材21とに加え、画像処理部530と、駆動機構540とを備える。
画像形成装置510において、縦横比変換光学系515は、コリメートレンズ13と、縦横比変換光学系515とを備え、このうち縦横比変換光学系515は、凸シリンドリカルレンズ515aと凹シリンドリカルレンズ515bとにより構成される。光路上流側の凸シリンドリカルレンズ515aについて、光路下流側の面HSaはシリンドリカル面となっており、光路上流側の面TSaは平坦面になっている。一方、光路下流側の凹シリンドリカルレンズ515bについて、光路上流側の面TSbはシリンドリカル面となっており、光路下流側の面HSbは平坦面になっている。さらに、面HSaと面TSbとは一対の対応する形状となっており、図13(B)に示すように、凸シリンドリカルレンズ515aと凹シリンドリカルレンズ515bとを接合させた場合、略隙間なく密着するものとなっている。これにより、虚像表示装置500は、縦横比変換を行うオンのパターンと縦横比変換を行わないオフのパターンとに切替可能になっている。
駆動機構540は、縦横比変換光学系515を構成する各シリンドリカルレンズ515a,515bを支持しており、これらを光軸XXに沿う方向であるX方向についてスライド移動可能としている。つまり、図13(A)〜13(F)に示すように、駆動機構540は、各シリンドリカルレンズ515a,515bを互いに所定の距離だけ離間させたり、密着させたりする。つまり、駆動機構540により、シリンドリカルレンズ515aは、図13(A)に示す第1の位置PT1と図13(B)に示す第2の位置PT2との間で往復移動可能であり、シリンドリカルレンズ515bは、シリンドリカルレンズ515aと連動して第1の位置PS1と第2の位置PS2との間で往復移動可能となっている。また、画像処理部530は、外部から画像表示装置11に入力される画像信号について画像処理を行うが、この際、駆動機構540から得た各シリンドリカルレンズ515a,515bの位置情報に基づいて行うべき画像処理の設定をしている。なお、ここでは、図13(A)の離間した状態となり縦横比変換光学系515による縦横比変換を行う場合の画像処理を、通常のオンのパターンの画像処理とし、図13(B)の密着した状態となり縦横比変換光学系515による縦横比変換を行わない場合の画像処理を、非通常のオフのパターンの画像処理として扱う。
以下、虚像表示装置500における縦横比変換の動作について説明する。まず、図13(A)に示すように、各シリンドリカルレンズ515a,515bが第1の位置PT1,PS1にそれぞれあり、両者が離間した状態となっている場合、シリンドリカルレンズ515a,515bは、縦横比率変換を行う。具体的には、図13(C)に示すように、XZ面に平行な断面について、両レンズ515a,515bは、屈折力を有し互いに離間しており、縦横比変換光学系515は、アフォーカル系として機能する。この場合、光路上流側に凸型のレンズを配置し、光路下流側に凹型のレンズを配置することで、周辺側からの画像光GL2について角度を拡げることで、横方向に伸張させることができる。一方、図13(D)に示すように、XY面に平行な断面については、例えば周辺側からの画像光GLyは、角度変換がされず、縦横比変換光学系515によって伸縮されることなくそのままの状態を維持して射出される。
次に、図13(B)に示すように、各シリンドリカルレンズ515a,515bが第2の位置PT2,PS2にそれぞれあり、両者が密着した状態となっている場合、図13(E)及び13(F)に示すように、シリンドリカルレンズ515a,515bは、一体化した1つの平行平板と同様となる。この場合、縦横比変換光学系515は、横方向についても、縦方向についても、比率変換を行わない。つまり、画像表示装置11における縦横比がそのまま維持されて、観察者に認識される。
以上のように、駆動機構540によって、縦横比変換光学系515を構成する各シリンドリカルレンズ515a,515bを画像光の光路上で移動させてその位置を切り替えることで、縦横比変換光学系515による変換比率を切り替えることができる。これにより、例えば図14(A)に示すように、両シリンドリカルレンズ515a,515bを離間させることにより縦横比変換を行って最終映像を16:9にする通常の場合には、変換後の1つの映像画素PE'を1ブロックの画素として1つの映像ピクセルEEを形成し、各画映像素の形状が1:1の正方形となるようにできる。一方、例えば図14(B)に示すように、両シリンドリカルレンズ515a,515bを密着させることにより縦横比変換を行わず最終映像を元の4:3のままとする非通常の場合には、例えば2つの映像画素PE'を1ブロックの画素として1つの映像ピクセルEEを形成し、より高精細な画像とすることができる。なお、画像処理部530は、駆動機構540からの信号に基づき、縦横比16:9用の画像処理を行うか、縦横比4:3用の画像処理を行うかを判断し、画像表示装置11に適切な画像形成を行わせている。
以上の場合における縦横比変換の有無に応じた画像処理について、図15のフローチャートにより説明する。まず、虚像表示装置500を起動すると、画像処理部530は、駆動機構540から各シリンドリカルレンズ515a,515bの位置情報を読み出す(ステップS1)。当該情報からシリンドリカルレンズ515a,515bが位置PT1,PS1にそれぞれあると判断すると(ステップS2:Yes)、画像処理部530は、縦横比変換光学系515による縦横比率変換を行う通常のオンのパターンでの画像処理を行う(ステップS3)。つまり、例えば図14(A)の場合に対応する画像処理を行う。一方、ステップS1において読み出された位置情報からシリンドリカルレンズ515a,515bが位置PT2,PS2にそれぞれあると判断すると(ステップS2:No)、縦横比変換光学系515による縦横比率変換を行わない非通常のパターンに応じた画像処理を行う(ステップS4)。つまり、例えば図14(B)の場合に対応する画像処理を行う。なお、画像処理部530は、ステップS3の通常のパターンでの画像処理又はステップS4の非通常のオフのパターンでの画像処理のいずれかを、虚像表示装置500の映像表示動作が終了するまで、ステップS1で読み出された位置情報の変更に応じて適宜オン・オフを切り替えつつ続ける(ステップS5)。
また、本実施形態の変形例として、図16(A)及び16(B)に示す虚像表示装置600のように、シリンドリカルレンズ615a,615bで構成される縦横比変換光学系615が、不図示の駆動機構により光路上に進退可能となっていてもよい。この場合、例えば、画像形成装置610に設けられたセンサー650が、縦横比変換光学系615が光路上に有るか否かの情報を画像処理部630に送信し、画像処理部630が、当該情報に基づいて縦横比変換光学系615の有無に応じて画像処理を行うことで、図10(A)等に示す虚像表示装置500の場合と同様に縦横比の変換比率のオン・オフが切替可能となる。
本実施形態の場合、虚像表示装置500,600において、駆動機構540等により縦横比変換光学系515,615を移動させ、縦横比の変換比率をオン・オフで切替可能とすることで、変換比率を変化させ、縦横比を所望の状態に設定できる。
なお、上記では、オン・オフの2段階で切替可能としているが、虚像表示装置500,600において、縦横比変換光学系515,615が、アフォーカルズームレンズで構成されることで、連続的に倍率変換を行うものとしてもよい。
〔第6実施形態〕
以下、図17(A)等により、第6実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置700は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、第1実施形態の虚像表示装置100と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。従って、虚像表示装置700のうち右眼用の第1表示装置に相当する部分のみ図示し、他の部分については省略している。
図17(A)に示すように、虚像表示装置700は、画像形成装置10と、導光装置720とを一組として備える。導光装置720は、導光部材721を有する。導光部材721は、導光部材本体部20aと、画像取出部である角度変換部723とを備える。なお、図17(A)は、図17(B)に示す導光部材721のA−A断面に対応する。
導光部材721の全体的な外観は、図中YZ面に平行に延びる平板である導光部材本体部20aによって形成されている。また、導光部材721は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材721は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する上面21eと下面21fとを有する。さらに、導光部材721は、長手方向の一端において導光部材本体部20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部723を有し、長手方向の他端において導光部材本体部20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有する構造となっている。
導光部材本体部20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、YZ面に平行で画像形成装置10に対向する表側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射部である光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出部である光射出面OSとを有している。導光部材本体部20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜する入射光折曲部である第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として−X方向に向かう画像光を、全体として+X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光部材本体部20a内に確実に結合させる。また、導光部材本体部20aにおいて、光射出面OSの裏側の平面に沿って微細構造である角度変換部723が薄い層状に形成されている。導光部材本体部20aは、入口側の第3反射面21cから奥側の角度変換部723にかけて、第3反射面21cを介して内部に入射させた画像光を角度変換部723に導く。
導光部材721の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の導光部材本体部20aの主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、第3反射面21cで折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、第1及び第2反射面21a,21bで繰り返し全反射され、導光部材721の奥側すなわち角度変換部723を設けた+Z側に導かれる。
導光部材本体部20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部723は、導光部材721の奥側(+Z側)において、第2反射面21bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部723は、導光部材721の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部723は、画像光の角度を変換している。ここでは、角度変換部723に最初に入射する画像光が虚像光としての取出し対象であるものとする。角度変換部723の詳しい構造については、図18(A)等により後述する。
なお、導光部材本体部20aに用いる透明樹脂材料の屈折率nは、1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光部材721に比較的屈折率の高い透明樹脂材料を用いることで、導光部材721内部で画像光を導光させやすくなり、かつ、導光部材721内部での画像光の画角を比較的小さくすることができる。
画像形成装置10から射出され光入射面ISから以上の導光部材721に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材721の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸OAに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部723において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから射出される。光射出面OSから射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
以下、導光部材721中の画像光の光路について詳しく説明する。図17(A)に示すように、画像表示装置11からそれぞれ射出される画像光のうち図中点線で示す画像表示装置11の中央部分から射出される成分を画像光GL1とし、図中一点鎖線で示す画像表示装置11の周辺のうち紙面右側(−Z側)から射出される成分を画像光GL2とし、図中二点鎖線で示す画像表示装置11の周辺のうち紙面左側(+Z側)から射出される成分を画像光GL3とする。
投射光学系12を経た各画像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光部材721の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL1,GL2,GL3のうち、画像表示装置11の中央部分から射出された画像光GL1は、平行光束として第3反射面21cで反射された後、標準反射角γ0で導光部材721の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL1は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL1は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部723の中央部723kに入射する。画像光GL1は、この中央部723kにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから光射出面OSを含むYZ面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。画像表示装置11の一端側(−Z側)から射出された画像光GL2は、平行光束として第3反射面21cで反射された後、最大反射角γ+で導光部材721の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL2は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部723のうち最も奥側(+Z側)の周辺部723hにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、第3反射面21c側に戻されるようなものになっており、+Z軸に対して鈍角となる。画像表示装置11の他端側(+Z側)から射出された画像光GL3は、平行光束として第3反射面21cで反射された後、最小反射角γ−で導光部材721の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL3は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部723のうち最も入口側(−Z側)の周辺部723mにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、第3反射面21c側から離れるようなものになっており、+Z軸に対して鋭角となる。なお、画像光GL1,GL2,GL3以外の画像光を構成する光束成分についても同様に導かれ光射出面OSから射出されるため、これらについては図示及び説明を省略している。
ここで、導光部材721に用いられる透明樹脂材料の屈折率nの値の一例として、n=1.5とすると、その臨界角γcの値はγc≒41.8°となり、n=1.6とすると、その臨界角γcの値はγc≒38.7°となる。各画像光GL1,GL2,GL3の反射角γ0,γ+,γ−のうち最小である反射角γ−を臨界角γcよりも大きな値とすることで、必要な画像光について導光部材721内における全反射条件を満たすものにできる。
以下、図18(A)等により、角度変換部723の構造及び角度変換部723による画像光の光路の折曲げについて詳細に説明する。
まず、角度変換部723の構造について説明する。角度変換部723は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット723cで構成される。つまり、図18(A)〜18(C)に示すように、角度変換部723は、Y方向に延びる細長い反射ユニット723cを所定のピッチPTで導光部材721の延びる方向すなわちZ方向に多数配列させることで構成されている。各反射ユニット723cは、奥側すなわち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面723aと、入口側すなわち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面723bとを1組のものとして有する。これらのうち、少なくとも第2の反射面723bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。また、各反射ユニット723cは、隣接する第1及び第2の反射面723a,723bにより、XZ断面視においてV字又は楔状となっている。つまり、第1及び第2の反射面723a,723bは、第2反射面21bに対してそれぞれ異なる角度(すなわちYZ面に対してそれぞれ異なる角度)で傾斜し、各第1の反射面723aは、第2反射面21bに対して略垂直な方向(X方向)に沿って延び、各第2の反射面723bは、対応する第1の反射面723aに対して所定角度(相対角度)ζをなす方向に延びている。ここで、相対角度ζは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。
図18(A)等に示す具体例において、第1の反射面723aは、第2反射面21bに対して略垂直であるものとしているが、第1の反射面723aの方向は、導光部材721の仕様に応じて適宜調整されるものであり、第2反射面21bに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば80°から100°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。また、第2の反射面723bの方向は、第2反射面21bに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば30°から40°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。結果的に、第2の反射面723bは、第1の反射面723aに対して40°から70°までの範囲内でいずれかの相対角度を有するものとなる。
以下、角度変換部723による画像光の光路の折曲げについて説明する。ここでは、画像光のうち、角度変換部723の両端側に入射する画像光GL2及び画像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。
まず、図18(A)及び18(B)に示すように、画像光のうち全反射角度の最も大きい反射角γ+で導かれた画像光GL2は、角度変換部723のうち光入射面IS(図17(A)参照)から最も遠い+Z側の周辺部723hに配置された1つの反射ユニット723cに入射し、最初に奥側すなわち+Z側の第1の反射面723aで反射され、次に、入口側すなわちZ側の第2の反射面723bで反射される。当該反射ユニット723cを経た画像光GL2は、他の反射ユニット723cを経ることなく、図17(A)等に示す光射出面OSから射出される。つまり、画像光GL2は、角度変換部723での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
また、図18(A)及び18(C)に示すように、全反射角度の最も小さい反射角γ−で導かれた画像光GL3は、角度変換部723のうち光入射面IS(図17(A)参照)に最も近い−Z側の周辺部723mに配置された1つの反射ユニット723cに入射し、画像光GL2の場合と同様に、最初に奥側すなわち+Z側の第1の反射面723aで反射され、次に、入口側すなわちZ側の第2の反射面723bで反射される。当該反射ユニット723cを経た画像光GL3も、角度変換部723での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
ここで、上記のような第1及び第2の反射面723a,723bでの2段階での反射の場合、図18(B)及び18(C)に示すように、各画像光の入射時の方向と射出時の方向とのなす角である折り曲げ角ψは、いずれもψ=2(R−ζ)(R:直角)となる。つまり、折り曲げ角ψは、角度変換部723に対する入射角度すなわち各画像光の全反射角度である反射角γ0,γ+,γ−等の値によらず一定である。これにより、上記のように、画像光のうち全反射角度の比較的大きい成分を角度変換部723のうち+Z側の周辺部723h側に入射させ、全反射角度の比較的小さい成分を角度変換部723のうち−Z側の周辺部723m側に入射させた場合にも、画像光を全体として観察者の眼EYに集めるような角度状態で効率的に取り出すことが可能となる。このような角度関係で画像光を取り出す構成であるため、導光部材721は、画像光を角度変換部723において複数回通過させず、1回だけ通過させることができ、画像光を少ない損失で虚像光として取り出すことを可能にする。
また、導光部材721の形状や屈折率、角度変換部723を構成する反射ユニット723cの形状等の光学的な設計において、画像光GL2,GL3等が導かれる角度等を適宜調整することで、光射出面OSから射出される画像光を、基本の画像光GL1すなわち光軸AXを中心として、全体として対称性が保たれた状態の虚像光として観察者の眼EYに入射させることができる。ここで、一端の画像光GL2のX方向又は光軸AXに対する角度θ12と、他端の画像光GL3のX方向又は光軸AXに対する角度θ13とは、大きさが略等しく逆向きとなっているものとする。角度θ12,θ13は、観察者に認識される虚像の横画角φに相当するものであり、角度θ12と角度θ13とが等しいため、横半画角θ(つまり、φ=2θ)は、θ=θ12=θ13となる。
また、角度変換部723を構成する各反射ユニット723cの間隔であるピッチPTの具体的な数値範囲は、0.2mm以上、より好ましくは0.3mm〜1.3mmとする。この範囲にあることにより、取り出されるべき画像光が、角度変換部723において回折による影響を受けることなく、かつ、反射ユニット723cによる格子縞が観察者にとって目立つものとならないようにすることができる。
本実施形態の場合も、図19(A)及び19(B)に示すように、虚像表示装置700は、縦横比変換光学系15での伸張変換によって、例えば縦横比16:9のように所望の状態に調整できる。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
例えば、図20に示すように、虚像表示装置100のミラー層25(図2(A)等参照)に代えてホログラム素子825を備えるものとしてもよい。この場合、画像表示装置11は、光源として、例えば3色の光束を発生するLED光源RRを有し、ホログラム素子825は、当該3色に応じた3層構造のホログラム層を有するものとする。これにより、ホログラム素子825は、第3反射面21cの近辺に形成された仮想的なミラーとして、画像表示装置11からの各色光を所望の方向に反射させる機能を有するものとなる。つまり、ホログラム素子825は、画像光の反射方向の調整を可能とする。このホログラム素子825により、画像光を導光部材21内に効率良く取り込ませることができる。なお、第4反射面21d(図2(A)参照)にもホログラム素子を形成することもできる。
また、別の例として、図21(A)〜21(D)に示すように、虚像表示装置100の使用状態によって、画像が90°回転するように切り替わってもよい。具体的には、図21(A)に示すように、観察者が座っている或いは立っているといった通常の状態で使用する場合には、虚像表示装置100は、重力方向G1すなわち−Y方向に対して水平なZ方向と虚像表示装置100の長手方向である横方向E1とが一致しておりこの方向を長手方向としてアスペクト比16:9の画像を形成する。これに対して、図21(B)に示すように、観察者が横に寝そべっているといった通常でない状態で使用する場合には、虚像表示装置100は、重力方向G1すなわち−Y方向に対して水平なZ方向と虚像表示装置100の短手方向である縦方向E2とが一致しておりこの方向を長手方向としてアスペクト比16:9の画像を形成する。つまり、画像形成装置は、図21(A)の状態では、図21(C)に示すように横方向E1を長手方向とする横長の画像を形成し、図21(B)の状態では、図21(D)に示すように縦方向E2を長手方向として、縦長の画像を形成することで、いずれの使用状態においても、観察者が見る画像の縦横方向と、外界の縦横方向とを一致させた状態に保つことができる。このような画像の形成については、例えば第5実施形態のように複数のアスペクト比に変換可能な虚像表示装置500(図13(A)等参照)が、重力方向G1を察知する重力センサー(不図示)を備えることで実現できる。すなわち、まず、重力センサーにより察知された重力方向G1に対応して、方向E1,E2のどちらを画像の長手方向とすべきかを決定し、次に、その決定に応じて、目的とする画像を形成できるように画像処理を行うとともに、対応するアスペクト比に変換できるように駆動機構540によって縦横比変換光学系515を適宜スライド移動させるようにすればよい。
また、上記実施形態では、導光部材において、各面が平面で構成されているが、これに限らず、導光部材が一部に曲面を有して、画像光を内部で一旦結像させるリレー系の構成であってもよい。この場合、例えば光路を適宜調整して装置全体の小型化を図ることができる。
また、アスペクト比の変換等について、映し出す画像のコンテンツによって決定するものとしてもよい。例えば図22(A)、22(B)及び22(C)に示すようなインターネット上の画像を映し出す場合に、特定のホームページ画像については、その画像を見るのに適したものとなる予め定められた縦横の表示倍率で表示するようにできる。具体的には、図22(A)に示す初期画面において、縦長の画像中に配列されるコンテンツ選択のための複数のアイコンICから特定のホームページ画像を映し出すためのアイコンICaを選択すると、アイコンICaの選択と同時に画像の縦横の表示倍率を変更する。これにより、例えば図22(B)や22(C)に示すように当該ホームページ画像として表示される左右2つに区切られた画像GG1,GG2について、画像GG1の表示文面A〜Dと画像GG2の表示内容A〜Dとの対応性が良い横長の画像が映し出されるように横縦比の倍率等が自動的に切り替わるものとすることができる。なお、図22(B)に示す変更は、単純に縦横の比率を図22(A)の場合と入れ替えただけの例であるが、図22(C)に示す変更は、特定のホームページ画像表示に最適な縦横の比率となるように特定の割合で変換した場合の例である。以上のような変更により、例えば比較例の図22(D)に示すように、図22(A)の場合から変更がなされず縦長のままで、画像GG1と画像GG2との対応性が悪い画像が映し出される、といったことがないようにできる。また、例えば図22(B)に示す状態を通常の横長の画像とし、この状態から図22(C)に示す特定のホームページ画像の表示として最適な状態の画像へ切り替え可能とすることもできる。また、併せて画像処理において予めコンテンツを部分的に拡大等した上で投射を行うこともできる。
また、画像の縦横の表示倍率の変更については、自動で行う場合のほか、スイッチ等を設けてユーザーがオン・オフの切替を手動で行うものとしてもよい。また、手動ダイヤルのような機構を設けて、レンズを動かすようなものであってもよい。例えば、図13(A)等に示す駆動機構540に手動ダイヤルを設けることで実現できる。
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図5(B)に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
上記実施形態では、第4反射面21dに設けたハーフミラー層28の反射率を20%としてシースルーを優先しているが、ハーフミラー層28の反射率を50%以上として画像光を優先することもできる。なお、外界像を観察させる必要がない場合、第4反射面21dの光反射率を略100%することが可能である。また、ハーフミラー層28は、第4反射面21dの全面に形成されなくてもよく、一部の必要領域にのみ形成されるものとできる。なお、ハーフミラー層28は、光透過部材23の第3面23c上に形成することもできる。
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する単眼タイプの構成にしてもよい。
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光射出面OSを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。