JP5926900B2 - タイヤ - Google Patents

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本発明は、カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられた第1ベルト層と、第1ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられた第2ベルト層とを備え、第2ベルト層が第1ベルト層のタイヤ径方向内側に折り返されたフォールドベルト構造を有するタイヤに関する。
従来、乗用自動車などに装着されるタイヤでは、タイヤの骨格を形成するカーカス層のタイヤ径方向外側に、複数層のベルト層が設けられることが一般的である。
このようなタイヤにおいて、層間におけるせん断歪みの抑制すべく、何れかのベルト層のトレッド幅方向端部を折り返した、いわゆるフォールドベルト構造が知られている。ベルト層の折り返しについては、様々な方法が用いられている。例えば、第1ベルト層と、第1ベルト層よりもタイヤ径方向外側に設けられた第2ベルト層とを備え、タイヤのトレッド幅方向における断面において、第2ベルト層の側端が第1ベルト層のタイヤ径方向内側に折り返された構造が知られている(特許文献1参照)。
特開2009−154664号公報(第5頁、第2図)
しかしながら、上述した従来のタイヤの場合、第2ベルト層の折り返し部分と、第2ベルト層の側端とが接近している。つまり、タイヤのトレッド幅方向において、第1ベルト層及び第2ベルト層のみで形成される部分と、第1ベルト層及び第2ベルト層に加えて折り返された第2ベルト層によって形成される部分とが混在するため、剛性段差が生じる。
このため、タイヤが装着された車両の走行に伴って第2ベルト層の折り返し部分付近に、この剛性段差に起因する歪みが集中し、カーカス層と第2ベルト層とが分離してしまうセパレーションを誘発し易い。さらに、この剛性段差によってトレッド内での接地性に偏りが生じるため、トラクション性能やコーナリング性能が低下する。
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、フォールドベルト構造を有する場合において、カーカス層とベルト層とのセパレーションを抑制しつつ、トラクション性能やコーナリング性能を確保したタイヤの提供を目的とする。
本発明の特徴は、カーカス層(カーカス層20)と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられた第1ベルト層(第1ベルト層100)と、前記第1ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられた第2ベルト層(第2ベルト層200)とを備え、前記第2ベルト層が前記第1ベルト層のタイヤ径方向内側に折り返されたフォールドベルト構造を有するタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記第2ベルト層は、前記第1ベルト層のトレッド幅方向の一端部(端部110a)においてタイヤ径方向内側に折り返された第1折り返し部分(折り返し部分210a)と、前記第1ベルト層のトレッド幅方向の他端部(端部110b)においてタイヤ径方向内側に折り返された第2折り返し部分(折り返し部分210b)とを有し、前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端(側端220a)は、前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端(側端220b)と突き合わされるように配置されることを要旨とする。
上述した本発明の特徴において、前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端と、前記前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端との距離は、10mm以下であってもよい。
上述した本発明の特徴において、前記第1ベルト層は、複数の第1コード(第1コード150)を含み、前記第2ベルト層は、前記タイヤのトレッド面視において、前記第1コードと交錯する複数の第2コード(第2コード250)を含み、前記第1コードは、前記タイヤのトレッド面視において、タイヤ赤道線(タイヤ赤道線CL)に対して35度±5度傾斜して配置され、前記第2コードは、前記タイヤのトレッド面視において、タイヤ赤道線に対して20度±5度傾斜して配置されてもよい。
上述した本発明の特徴において、前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端と、前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端とは、トレッド幅方向における前記第1ベルト層の中央部のおいて突き合わされるように配置されてもよい。
本発明の特徴によれば、フォールドベルト構造を有する場合において、カーカス層とベルト層とのセパレーションを抑制しつつ、トラクション性能やコーナリング性能を確保したタイヤを提供することができる。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッド幅方向D1及びタイヤ径方向D2に沿った一部断面図である。 本発明の実施形態に係る交錯ベルト層50の概略斜視図である。 本発明の実施形態に係る交錯ベルト層50の概略断面図である。 本発明の実施形態に係る交錯ベルト層50の概略平面図である。
次に、本発明に係るタイヤ(空気入りタイヤ)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
(1)空気入りタイヤの概略構成
図1は、空気入りタイヤ10のトレッド幅方向D1及びタイヤ径方向D2に沿った一部断面図である。図1では、タイヤ赤道線CLを基準とした片側のみが示されている。図1に示すように、空気入りタイヤ10は、空気入りタイヤ10の骨格を形成するカーカス層20を備える。カーカス層20のタイヤ径方向D2外側には、第1ベルト層100及び第2ベルト層200によって構成される交錯ベルト層50が設けられる。なお、空気入りタイヤ10には、空気に代えて窒素ガスなどの不活性ガスを充填してもよい。
第1ベルト層100(第1ベルト層)は、カーカス層20のタイヤ径方向D2外側に設けられる。第2ベルト層200(第2ベルト層)は、第1ベルト層100のタイヤ径方向D2外側に設けられる。第1ベルト層100及び第2ベルト層200によって構成される交錯ベルト層50は、第2ベルト層200が第1ベルト層100のタイヤ径方向D2内側に折り返されたフォールドベルト構造を有する。
具体的には、第2ベルト層200を第1ベルト層100の端部で折り返し(フォールド)、第1ベルト層100の下(タイヤ径方向D2内側)において、第2ベルト層200を実質上突き合わせている。第1ベルト層100及び第2ベルト層200の材料としては、アラミド繊維或いはアラミド繊維を含むハイブリッドコードなどの高弾性有機繊維を好適に用いることができる。
(2)交錯ベルト層の構造
次に、図2〜4を参照して、第1ベルト層100及び第2ベルト層200によって構成される交錯ベルト層50の構造について説明する。図2は、交錯ベルト層50の概略斜視図である。図3は、交錯ベルト層50の概略断面図である。図4は、交錯ベルト層50の概略平面図である。なお、図2及び図3では、交錯ベルト層50の構造の理解を容易にするため、第1ベルト層100及び第2ベルト層200の間隔が実際よりも広くなっていることに留意されたい。
図2〜図4に示すように、第1ベルト層100は、複数の第1コード150を含む。本実施形態では、第1コード150は、空気入りタイヤ10のトレッド面視において、タイヤ赤道線CL(タイヤ周方向D3)に対して35度±5度傾斜して配置される。具体的には第1コード150は、タイヤ赤道線CLと成す角度θ1が35度±5度となるように配向される。
第2ベルト層200は、複数の第2コード250を含む。本実施形態では、第2ベルト層200は、空気入りタイヤ10のトレッド面視において、タイヤ赤道線CLに対して20度±5度傾斜して配置される。具体的には第2コード250は、タイヤ赤道線CLと成す角度θ2が20度±5度となるように配向される。つまり、第1コード150がタイヤ赤道線CLに対して成す角度θ1と、第2コード250がタイヤ赤道線CLと成す角度θ2とは、異なっている。
また、第2コード250は、空気入りタイヤ10のトレッド面視において、第1コード150と交錯するように、タイヤ赤道線CLを基準として第1コード150と逆方向に配向される。
また、上述したように、交錯ベルト層50は、第2ベルト層200が第1ベルト層100のタイヤ径方向D2内側に折り返されたフォールドベルト構造を有する。このため、第2ベルト層200は、一対の折り返し部分210a及び折り返し部分210bを有する。
折り返し部分210aは、第1ベルト層100のトレッド幅方向D1の端部110aにおいてタイヤ径方向D2内側に折り返された部分である。折り返し部分210bは、第1ベルト層100のトレッド幅方向D1の端部110bにおいてタイヤ径方向D2内側に折り返された部分である。
このように第2ベルト層200の幅方向の両端部がタイヤ径方向D2内側に折り返されることによって、第2ベルト層200の側端220a及び側端220bは、第1ベルト層100よりもタイヤ径方向D2において隣接するように配置される。具体的には、折り返し部分210a寄りに位置する第2ベルト層200の側端220aは、折り返し部分210b寄りに位置する第2ベルト層200の側端220bと突き合わされるように配置される。
本実施形態では、側端220aと側端220bとは、トレッド幅方向D1における第1ベルト層100の中央部のおいて突き合わされるように配置される。具体的には、側端220aと側端220bとの間には、タイヤ赤道線CLが位置するように突き合わされる。
また、本実施形態では、側端220aと側端220bとの距離は、10mm以下である。つまり、側端220aが側端220bと突き合わされるように配置されるとは、側端220aと側端220bとの間隔が10mm以内であることを意味する。
(3)作用・効果
次に、上述した本実施形態に係る空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。表1は、空気入りタイヤ10について実施した高速耐久性、低速操縦性、高速操縦性、加速性能及び減速性能(制動性能)の試験結果の評価値を示す。評価値は10点を最高とし、値が大きい程、当該試験結果が良好なことを示す。
Figure 0005926900
なお、試験条件は、以下のとおりである。
・ 使用タイヤサイズ: 225/45R17
・ 使用リムホールサイズ: 8J×17
・ 設定空気圧: 210kPa
また、高速耐久性については、屋内ドラム試験機を用いた試験を実施し、低速操縦性、高速操縦性、加速性能及び減速性能については、テストドライバーによる車両を用いた試験を実施した。
低速操縦性は、80km/h程度でのレーンチェンジを行った際におけるステアリングフィーリングを評価したものであり、高速操縦性は、150km/h程度でのレーンチェンジを行った際におけるステアリングフィーリングを評価したものである。
加速性能及び減速性能については、100km/hまでの発進加速と、100km/hから停止するまでの減速(制動)距離、及びテストドライバーによるフィーリングを評価したものである。
また、比較例1、比較例2及び実施例に係る空気入りタイヤは、何れもフォールドベルト構造を有する。比較例1は、第2ベルト層200がタイヤ径方向D2外側に折り返された構造である。比較例2は、実施例と同様に、第2ベルト層200がタイヤ径方向D2内側に折り返された構造であるが、側端220aと側端220bとの距離が実施例よりも広い。また、実施例に係る空気入りタイヤは、上述した空気入りタイヤ10と同様のベルト構造を有する。
このように、上述した本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、第2ベルト層200の側端220aは、側端220bと突き合わされるように配置される。具体的には、側端220aと側端220bとの距離が10mm以下となるように、第2ベルト層200が突き合わされる。
つまり、比較例1や比較例2に係る空気入りタイヤのように、トレッド幅方向D1において、第1ベルト層100及び第2ベルト層200のみで形成される部分と、第1ベルト層100及び第2ベルト層200に加えて折り返された第2ベルト層200によって形成される部分とが混在することが回避される。このため、第1ベルト層100及び第2ベルト層200のみで形成される部分と、折り返された第2ベルト層200によって形成される部分とに起因する剛性段差が抑制される。
空気入りタイヤ10によれば、剛性段差に起因する歪みによるカーカス層20と第2ベルト層200とが分離してしまうセパレーションが抑制される。さらに、この剛性段差によってトレッド内での接地性に偏りが生じることによる、トラクション性能やコーナリング性能が低下も抑制される。
より具体的には、側端220aが側端220bと突き合わされるように配置されるため、トレッド内における剛性分布が均一化され、側端220a及び側端220bへの歪みの集中が回避されるため、セパレーションを効果的に抑制し得る。このような構造は、特に、空気入りタイヤに対する負荷が極めて高い競技用車両などに好適に用い得る。また、このようにトレッド部における剛性分布が均一化されると、トレッド内での接地性に偏りも抑制され、トラクション性能やコーナリング性能も向上する。
本実施形態では、角度θ1が35度±5度であり、角度θ2が20度±5度であるため、側端220aが側端220bと突き合わされるように配置された交錯ベルト層50の構造と相まって、トラクション性能やコーナリング性能などをさらに効果的に向上できる。
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、上述した実施形態では、側端220aと側端220bとは、トレッド幅方向D1における第1ベルト層100の中央部のおいて突き合わされるように配置されていたが、側端220aと側端220bとは、必ずしも第1ベルト層100の中央部のおいて突き合わされていなくても構わない。さらに、上述した実施形態では、側端220aと側端220bとの距離は、10mm以下であったが、側端220aと側端220bとの距離は、空気入りタイヤ10のサイズなどに応じて変更されるものであり、必ずしも10mm以下でなくてもよい。
また、上述した実施形態における第1コード150及び第2コード250のタイヤ赤道線CLに対する角度(θ1及びθ2)は一例であり、異なる角度であっても構わない。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
10…空気入りタイヤ
20…カーカス層
50…交錯ベルト層
100…第1ベルト層
110a, 110b…端部
150…第1コード
200…第2ベルト層
210a, 210b…折り返し部分
220a, 220b…側端
250…第2コード

Claims (2)

  1. カーカス層と、
    前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられた第1ベルト層と、
    前記第1ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられた第2ベルト層と
    を備え、前記第2ベルト層が前記第1ベルト層のタイヤ径方向内側に折り返されたフォールドベルト構造を有するタイヤであって、
    前記第2ベルト層は、
    前記第1ベルト層のトレッド幅方向の一端部においてタイヤ径方向内側に折り返された第1折り返し部分と、
    前記第1ベルト層のトレッド幅方向の他端部においてタイヤ径方向内側に折り返された第2折り返し部分と
    を有し、
    前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端と、前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端とは、トレッド幅方向における前記第1ベルト層の中央部において突き合わされるように配置され、
    前記第1ベルト層は、複数の第1コードで構成され
    前記第2ベルト層は、前記タイヤのトレッド面視において、前記第1コードと交錯する複数の第2コードで構成され
    前記第1コードは、前記タイヤのトレッド面視において、タイヤ赤道線に対して35度±5度傾斜して配置され、
    前記第2コードは、前記タイヤのトレッド面視において、タイヤ赤道線に対して20度±5度傾斜して配置され
    前記第1ベルト層の中央部にはタイヤ赤道線が位置するとともに、
    前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端と、前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端とに隣接して、タイヤ赤道線が位置するタイヤ。
  2. 前記第1折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端と、前記前記第2折り返し部分寄りに位置する前記第2ベルト層の側端との距離は、10mm以下である請求項1に記載のタイヤ。
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