JP5926756B2 - ルリコナゾールを含有する製剤の評価方法及び指標物質 - Google Patents
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Description
また、このアミド体はルリコナゾールのシアノ基に水が付加して生じると考えられるが、その存在の予測とは裏腹にルリコナゾール原体を加速試験にかけても、苛酷試験にかけてもほとんど生じない。すなわち、存在の予測はされるものの、実態の捉えられていない物質であった。従って、製剤化の段階において、溶媒の種類により、保存条件下、この様な化合物が生成することは推測しがたい。また、SE体或いはZ体は比較的加速試験や苛酷試験で生じやすいことから、アミド体の生成メカニズムはSE体、Z体とは異なると考えられる。
定性の阻害要因として、アミド体の経時的生成が存在することを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、ルリコナゾールを含有する製剤においては、その構成成分の種類によって、SE体、Z体の生成とは独立にアミド体が生成する可能性がある。このものの生成量を、ルリコナゾールのSE体、Z体の生成量と共に、安定性指標に加え評価することにより、より安定なルリコナゾールを含有する製剤が得られることを見いだし、発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は次に示すとおりである。
苛酷条件又は加速条件での保存による、下記式(2)に示されるルリコナゾールのSE体の生成量、下記式(3)に示されるルリコナゾールのZ体の生成量、及び下記式(1)に示されるルリコナゾールのアミド体の生成量を測定し、SE体の生成量、Z体の生成量、及びアミド体の生成量が、ルリコナゾールの配合量に対してそれぞれ5質量%以下であることを以て、安定性の高い製剤であると判別する、評価方法。
二塩基酸エステルは、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル及び炭酸プロピレンから選択されるものであり、
芳香族アルコールは、ベンジルアルコールであり、
ケトンは、アセトン又はメチルエチルケトンであり、
トリグリセライドは、中鎖脂肪酸トリグリセライド又はオリーブ油であり、
複素環系溶剤はN−メチル−2−ピロリドン又はN−エチル−2−ピロリドンである、<4>に記載の評価方法。
<6> 1)ルリコナゾールと、2)多価アルコール又はそのエーテル、二塩基酸エステル、芳香族アルコール、ケトン、トリグリセライド及び複素環系溶剤から選択される1種又は2種以上の成分とを含有する医薬製剤であって、
苛酷条件又は加速条件での保存による、下記式(2)に示されるルリコナゾールのSE体の生成量、下記式(3)に示されるルリコナゾールのZ体の生成量、及び下記式(1)に示されるルリコナゾールのアミド体の生成量を測定し、SE体の生成量、Z体の生成量、及びアミド体の生成量が、ルリコナゾールの配合量に対してそれぞれ、5質量%以下である、医薬製剤。
該安定性の指標物質は、下記式(2)に示されるルリコナゾールのSE体、下記式(3)に示されるルリコナゾールのZ体を指標物質とする安定性の評価を補完するものである、指標物質。
本発明の評価方法は、ルリコナゾールを含有する製剤の安定性の評価方法であって、苛酷条件又は加速条件での保存による、上記に示す構造のルリコナゾールのSE体の生成量、上記に示す構造のZ体の生成量、及び上記に示す構造のアミド体の生成量を測定し、SE体の生成量、Z体の生成量、及びアミド体の生成量が、少ないことを以て、安定性の高い製剤であると判別することを特徴とする。
しかしながら、製剤化研究の過程において、加速条件又は苛酷条件におけるSE体の生成量、Z体の生成量とは独立して、配合された成分の影響を受けて、製剤の加速条件乃至は苛酷条件での保存の結果、アミド体の生成が認められ、使用する配合成分を変える場合にはアミド体の生成量を、SE体の生成量、Z体の生成量に加えて安定性の指標とすべきことを本発明者等は見いだした。
混液、エタノール、イソプロパノールなどからの再結晶などにより、精製され、指標物質として供される。ルリコナゾールのアミド体は、前述のごとく、通常条件では生成しにくい物質であるため、前記のような触媒の存在下で反応させることが好ましく、このような触媒存在下の反応であっても、アミド体への転化の割合は低いため、カラムクロマトグラフィーなどによる精製過程が必須となる。指標物質としては、純度が90%以上であることが好ましい。
が好ましい。前記製品の品質に係わる製造工程としては、例えば、ルリコナゾールを溶剤などに溶解させる工程などが好適に例示できる。また、製造された製品の保存工程に、アミド体の含有量を測定する作業を組み込むことも好ましい。
この時、同時にキラルカラムを用いて、SE体やZ体の生成量を計測し、これらの生成をコントロールすることも製品品質を向上せしめる上で好ましい。特に、SE体の生成メカニズム、Z体の生成メカニズムはそれぞれ異なり、且つ、アミド体の生成メカニズムとも異なるため、どれか一つの生成を抑制したのみでは、他の類縁体が増えることになりかねないためである。
HPLC条件:カラム;CHIRALCEL OD−RH 4.6×150mm、カラム温度;35℃、移動相;メタノール/1.8%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液の混液(83:17、v/v)、流速;0.56mL/min.、検知;295nm
重合体の重合度は、通常2〜50、好ましくは3〜30程度である。
この様な抑制のためには、ポリエチレングリコールであれば、製剤全量に対して20〜50質量%含有されることが好ましく、より好ましくは28〜35質量%含有されることが例示できる。また、ポリプロピレングリコールについては、製剤全量に対して15〜40質量%含有されることが好ましく、17〜25質量%含有されることがより好ましい。これは含有量が多すぎると、ルリコナゾールとの相溶性を損なう場合が存し、少なすぎると、アミド体の抑制効果が認められなくなるためである。この様な構成を採用することにより、アミド体の生成を抑制し、40℃6ヶ月の加速条件下でも、60℃3週間の苛酷条件でも、該アミド体の生成量は10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下に抑えることが出来る。このように多価アルコール或いはそのエーテルには、アミド体の生成を促す成分と、アミド体の生成を抑制する成分とが存在するため、本発明の評価方法により、その安定性を確認することが必要となる。
ールとしては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びポリプロピレングリコールから選択されるものが好ましく例示できる。多価アルコールとしては、製剤全量に対して5〜70質量%含有されることが好ましい。
ルリコナゾールを含有する製剤に用いられる溶剤としては、多価アルコールの他、例えば、炭酸プロピレン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルなどの二塩基酸エステル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香族アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油などのトリグリセライド或いはN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、ピロリドンカルボン酸エチルなどの複素環系溶剤等が好ましく例示できる。
本発明の医薬製剤は、1)ルリコナゾールと、2)多価アルコール又はそのエーテル、二塩基酸エステル、芳香族アルコール、ケトン、トリグリセライド及び複素環系溶剤から選択される1種又は2種以上の成分とを含有する医薬製剤であって、苛酷条件又は加速条件での保存による、上記に示す構造のSE体の生成量、上記に示す構造のZ体の生成量、及び上記に示す構造のアミド体の生成量を測定し、SE体の生成量、Z体の生成量、及びアミド体の生成量が、ルリコナゾールの配合量に対してそれぞれ、5質量%以下であることを特徴とする。
膚真菌症にも及ぶので、本発明の構成を充足する皮膚真菌症に対する医薬製剤も本発明の技術的範囲に属する。この様な皮膚真菌症としては、足白癬症や足白癬症の内、かかとなどに現れる角質増殖型の白癬症などが例示できる。上記皮膚真菌症においては、通常の薬剤が効果を奏しにくい角質増殖型の白癬症への適用が本発明の効果が著しく現れるので好ましい。
例えば外用剤であれば、一日に一回又は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。特に、爪白癬に対しては、通常の製剤では為し得ない量の有効成分であるルリコナゾールを、爪内に移行せしめることが出来る。これにより、長期間抗真菌剤を飲用することなく、外用のみによって爪白癬を治療することが出来る。又、再発や再感染が爪白癬では大きな問題となっているが、本発明の医薬製剤を、症状鎮静後1〜2週間投与することにより、この様な再発や再感染を防ぐことができる。この様な形態で本発明の医薬製剤は予防効果を奏する。
本発明の指標物質は、上記に示す構造のルリコナゾールのアミド体からなる、ルリコナゾール製剤の安定性の指標物質であって、
該安定性の指標物質は、ルリコナゾールのSE体、ルリコナゾールのZ体を指標物質とする安定性の評価を補完するものであることを特徴とする。
「安定性の評価を補完する」とは、本発明の指標物質が、ルリコナゾールのSE体、ルリコナゾールのZ体と共にルリコナゾール製剤の安定性の指標物質として用いられるものであることを意味する。
ルリコナゾール1kgを10%含水エタノール溶液に溶解し、シリカゲルを10g加えて1時間加熱乾留した。冷却後、シリカゲルを濾別し、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し46.41gのアミド体粗生成物を得た。このものをエタノールから3回再結晶し、2.6gの精製物を得た。このものの示性値は以下の通りであった。
m.p.:238〜244℃
以下に示す処方に従って、ルリコナゾール製剤1を作製した。即ち、処方成分を加熱、攪拌、可溶化して、室温まで攪拌冷却し、ルリコナゾール製剤を得た。このルリコナゾール製剤を60℃3週間の温度条件で保存し、保存後の製剤をHPLC法にて確認したところ、ルリコナゾールのピーク以外に、3つのピークが確認され、このピークに相当する化合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、NMR及び質量分析にて構造を決定した。最も生成量の多いものは、アミド体であった。即ち、このことより、系によってはアミド体が重要な類縁物質となることが判る。
実施例2と同様に、製剤2、3を作製した。これらの60℃3週間保存でのアミド体も同様に測定した。結果は、表2に示す。これより、1,3−ブタンジオールはアミド体生成の要因になっていることが判る。この様に、安定化阻害要因を鑑別する指標としてもアミド体は使用できることが判る。
以下に示す処方に従って、製剤4を作製した。このものも60℃3週間の保存条件でアミド体の生成を抑制していることが判る。これはポリエチレングリコール400の添加によるものと考えられる。これより、ポリエチレングリコールには、ポリプロピレングリコールと同様にアミド体の生成を抑制する作用が存するものと考えられる。
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