JP5925613B2 - ポリテトラフルオロエチレン系複合融着構造体の製造法 - Google Patents
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Description
さらに詳しくは、融着部の融着が低圧条件下でなされたものであるにもかかわらず、母材部に対する接合部の引張強伸度の維持率がすぐれているポリテトラフルオロエチレン系の複合融着構造体の製造法に関するものである。
以下においては、必要に応じ、ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」、変性ポリテトラフルオロエチレンを「変性PTFE」と略称することにする。
コモノマーであるパーフルオロアルキル基含有モノマーの例は、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ2−プロポキシプロピルビニルエーテルなどである。
市場で入手しうる上記の「変性PTFE」の代表的なものの例は、ダイキン工業株式会社製の「ポリフロンM−111」や「ポリフロンM−112」、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製の「テフロンTG−70J」、住友スリーエム株式会社製の「ダイニオン(Dyneon)TFM1600」や「ダイニオンTFM1700」などである。(「ポリフロン」、「テフロン」、「ダイニオン」は、いずれも登録商標である。)
上述の「PTFE」や「変性PTFE」のうち成形用の原料は、モールディングパウダーやファインパウダーとして、粒子の状態で原料メーカーから入手することができる。
ところが、周知のようにフッ素系樹脂のうち高融点のものは、一般の熱可塑性樹脂とは異なりそのままでは溶融成形し難いので、まず原料粒子を金型内に充填してから、非溶融条件下に(常温で、場合により若干加熱して)100〜1000kg/cm2程度の加圧下に圧縮する予備成形(プレフォーミング)を行って、「圧縮体(圧縮成形体)」となすのが通常である。(なお、本明細書においては、「平方センチメートル」を「cm2」と表示している。)
このようにして得た「圧縮体(圧縮成形体)」は、「予備成形体(または予備成形品)」あるいは「プレフォーム」と称されるが、本件出願においては「プレフォーム」と称することにする。というのは、「〜成形体」の用語は、先に述べた「圧縮成形体」や、後述の「(焼成後の)成形体」や、「(複合構造の)成形体」などの用語と紛らわしいからである。
上記の予備成形により得られたプレフォームの比重は、原料粒子がPTFEの粒子である場合を例にとると、そのプレフォームを経たPTFEの焼成体(焼成成形体)の真比重(2.2程度)に近いものとなる。
そして、本明細書においては、
・上記のPTFEの圧縮成形体を「PTFEプレフォーム(1A)」、
・上記の変性PTFEの圧縮成形体を「変性PTFEプレフォーム(2A)」
と称することにする。
このようにして得た「プレフォーム」を炉内において焼成温度(たとえば350〜400℃程度、殊に360〜390℃程度)にまで上昇させてから、燒結が全体に均一に完了するまで保持した後、室温にまで冷却したものが「成形体(焼成体、焼成成形体)」である。このとき、プレフォームは、その焼成過程においてだんだんと膨張し、PTFEの場合を例にとれば、その融点(327℃)を超えると急激に膨張する。焼成の完了は、定性的には、目的物が半透明ないし透明になる度合いで判断することができる。(なお、「燒結」は粒子の結合状態の観点からの用語、「焼成」は操作の観点からの用語であると思われるが、「燒結」と「焼成」とは区別なしに使われることが多い。)
そして、本明細書においては、
・上記のPTFEプレフォーム(1A)の焼成成形体を「PTFE成形体(1)」、
・上記の変性PTFEプレフォーム(2A)の焼成成形体を「変性PTFE成形体(2)」
と称することにする。
ところで、フッ素系樹脂、殊にPTFEは、耐薬品性、電気的性質、耐熱性などの性質が極めてすぐれているので、化学工業、半導体工業、ガラス基板の取り扱い分野、医療分野をはじめとする種々の分野において、貯蔵容器、処理容器、洗浄容器、搬送容器、配管、弁体などとして使用されている。たとえば、角槽、丸槽、角棒、丸棒、板、円筒、角筒、円錐、円錐筒、タンク、ウェハボックス、ウェハキャリア、フィルターハウジング、バタフライ弁、コネクター、ジョイントなどである。これらの用途は、他のプラスチックスでは代替が困難な用途である。
PTFE成形体とPTFE成形体とを接合一体化する具体的な方法としては、両成形体をフッ素樹脂系粒子からなる溶接材を用いて溶接を行う方法(溶接接合法)や、両成形体の間にフッ素樹脂系のフィルム等の成形体を介在させて加熱融着させる方法(融着接合法)などがあるが、実用に耐えうるような接合強度を得ることは容易ではない。
上記のうち後者の融着接合法にかかるものとして、下記のように、PTFE成形体とPTFE成形体とを直接に融着接合するか、PTFE成形体とPTFE成形体との間に他のフッ素樹脂成形体を介在させた状態で融着接合する方法が提案されている。
特公昭60−56611号公報(特開昭52−63274号公報)(特許文献1)には、PTFE成形体同士の突き合せ面を突き合せ溶接により接合する方法が示されている。この方法においては、クランプジョウにより突き合せ面にPTFEの膨張による押圧力が働くように「装置上の特別の工夫」をしながら、その突き合せ面を340〜430℃の温度、60〜300N/cm2(つまり6〜30kgf/cm2)の接触圧力に保持して溶接を行っている。
この公報の6〜7欄にかけての箇所には、接合部(突き合せ部)の引張強さと塊状の出発材料(PTFE成形体)の引張強さとの商(「前者の引張強さ/後者の引張強さ」のこと)である溶接係数はほぼ1であるとの記載がある。
また、この公報の5欄から6欄にかけての箇所には、溶接時間の短縮および溶接温度および圧力の低下は、突き合せ面の間の間隙にFEPまたはPFA共重合体フィルムを挿入することにより、達成されうるとの記載がある。(ただし、この公報には、本発明にいう「変性PTFE」の介在については記載がない。)
また、その例2においては、厚さ5mmのPTFEシート同士をその間にPFAシートを挿入した状態で、温度約350℃、圧力約20N/cm2(つまり約2kgf/cm2)で突き合せ接合することにより、溶接されていないPTFE(つまり母材)に比較して、破断強度が0.90よりも大きく、破断時の伸びが0.95よりも大きいという結果を得ている。
特許第4303660号(特開2006−68909号公報)(特許文献2)には、複数の難溶着性フッ素樹脂材料を接合面が対向するように固定し、その接合面の間に熱溶融性のフッ素樹脂材料(PFAまたは変性PTFE)を介在させた状態で、その接合面またはその近傍を加熱手段によりその難溶着性フッ素樹脂材料の溶融温度以上の温度に加熱すると共に、その際にその溶融温度より低い温度に加熱するようにした溶着方法が示されている(その請求項7を参照)。(なお、この文献2における「材料」や「母材」とは、「成形体」のことである。)
ここで、難溶着性フッ素樹脂材料として具体的にあげられているPTFE材料とは、その段落0013に記載のように50mm×50mmの角材(つまり成形体)であり、その角材の端面同士を接合している。
上記の特許文献2と同日の出願にかかる特開2006−68910号公報(特許文献3)には、PTFE等の難溶着性フッ素樹脂材料を互いにその接合面が対向するように配置し、その接合面にPFAまたは変性PTFEのような熱溶融性フッ素樹脂材料を介在させて加熱圧着することにより溶着した溶着構造体が示されている。この場合、接合面に凹所を形成してそこに中芯材を嵌入したり、接合面を凹所に突起部が嵌入したりするような工夫を講じている。その段落0019および図面には、50mm×50mmのフッ素樹脂の「角材」10,10の端面同士を熱溶融性フッ素樹脂14を介して溶着接合することが示されている。
下記の特許文献4〜7は、変性PTFE成形体と変性PTFE成形体との接合体(接合部に他の樹脂を介在させない直接接合体)にかかる代表的な文献である。
特公昭63−67808号公報(特開昭61−136525号公報)(特許文献4)には、比溶融粘度が1×10の7乗〜1×10の11乗ポイズの変性PTFE成形体同士の接合体(接合面には他の樹脂は介在させていない)が示されている(請求項1)。変性PTFE成形体の試料は、変性PTFEの粒状粉末を機械粉砕して平均粒径約30μmの微粉末を得てから、その微粉末から圧縮成形によりシート状の予備成形物(予備成形体)を作り、ついでこれを370℃で焼成することにより試料シートを作製している。(なお、比溶融粘度は特公昭51−46794記載の方法で測定したとの注記がある。)
特開2000−140067号公報(特許文献5)には、金型内に変性PTFEの原料粉末を充填してから圧縮することにより容器本体および蓋体に対応する予備成形体を形成すると共に、これらの予備成形体を焼成して成形体とし、ついで容器本体用の成形体の内面を切削加工してから、融着用金型を用いて容器本体となる成形体と蓋体となる成形体とを融着すると共に再焼成処理することにより、薬液貯蔵用の密封中空容器を製造する技術が示されている。
国際公開WO98/24612(特許文献6)には、熱収縮率の異なる少なくとも2つの変性PTFEの予備成形部品を、接合すべき面同士を相互に接触または近接させて配置し、ついでその予備成形部品を焼成することにより該予備成形部品を接合面において接合、一体化するようにした変性ポリテトラフルオロエチレン成形品の接合成形方法が示されている。
この接合一体化方式は、たとえば、小さい収縮率を有する1つの部品の周囲を収縮率の大きい他方の部品で取り囲むようにして加熱することにより、外部からの加圧なしに接合するものであり、いわゆる「焼き嵌め方式」であるということができる。
国際公開WO99/62696(特許文献7)には、閉じた内周接合面を有する第1の変性ポリテトラフルオロエチレン予備成形部品(たとえば円筒)と、上記の内周接合面の形状に適合する外周接合面を有する第2の変性ポリテトラフルオロエチレン予備成形部品(たとえば円板)とを用いた変性ポリテトラフルオロエチレン成形品の接合成形方法が示されている。変性ポリテトラフルオロエチレンとは、テトラフルオロエチレンとフルオロアルキルビニルエーテルなどの変性モノマーとの共重合体であり、変性度は0.01〜1.0重量%である。
接合成形は、たとえば、第1の予備成形部品を加熱してその直径を大きくした時点で、その内部に第2の予備成型品を嵌め込み、ついで昇温−保持−放冷することにより行っているので、上記の特許文献6と同様に、いわゆる「焼き嵌め方式」であるということができる。
特許文献1〜3の発明は、「PTFE成形体/PFAや変性PTFEなどの成形体/PTFE成形体」の基本構造を有するものであるが、難溶着性フッ素樹脂であるPTFEの焼成体である成形体同士では加熱条件下において相互融着しないため、PTFE成形体とPTFE成形体との間に熱溶融性フッ素樹脂であるPFAや変性PTFEを介在させた状態で、PTFE成形体同士を溶接接合しようとするものである。
そして、上記のようにPTFE成形体側に変性PTFEの分子が入り込んでいないことは、接合部に粘りがないことを意味し、その融着構造体を実際に使用したときに変形や湾曲やクラックなどの兆候なしに突然破断などのトラブルを起こすおそれがある。
特許文献4〜7は、2つの変性PTFE成形体の端面同士を直接に融着接合しようとするものである。このような融着接合は、PTFEに比しては熱溶融性が大きい変性PTFEの成形体の同士であるから達成できるわけであるが(PTFEの成形体同士では容易ではない)、接合構造体の全体(または大部分)が変性PTFE成形体にて構成されることはPTFE成形体のすぐれた特性(耐薬品性、電気的性質、耐熱性など)がフルには利用されないことになるので、PTFE成形体に比しての変性PTFE成形体のデメリットが大きく現れる。
本発明は、このような背景下において、耐薬品性、電気的性質、耐熱性などの性質が極めてすぐれているPTFEの利点を生かしながらも、その弱点であるPTFE成形体同士の接合の困難性を解消した複合融着構造体の製造法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、融着部の融着が低圧条件下でなされたものであるにもかかわらず融着接合部の強伸度が大きい(つまり強靭性にすぐれた)複合融着構造体の製造法を提供することを目的とするものである。
ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」、そのPTFEの圧縮成形体を「PTFEプレフォーム(1A)」、そのPTFEプレフォーム(1A)の焼成体を「PTFE成形体(1)」と称し、かつ、
パーフルオロアルキル基含有モノマーの共重合割合が0.001〜1重量%であるテトラフルオロエチレン共重合体を「変性PTFE」、その変性PTFEの圧縮成形体を「変性PTFEプレフォーム(2A)」、その変性PTFEプレフォーム(2A)の焼成体を「変性PTFE成形体(2)」
と称するとき、
PTFEプレフォーム(1A),(1A)間に変性PTFEプレフォーム(2A)が介在した状態でこれらを焼成すると同時に融着させる「焼成融着法」を実施することにより「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得るか、あるいは、
PTFEプレフォーム(1A)と変性PTFEプレフォーム(2A)とが一体化した「(1A)/(2A)」の構造体を焼成した「(1)/(2)」の構造の成形体の複数個を得た後、それらの成形体「(1)/(2)」の(2)側を突き合わせた状態で再焼成して融着させる「再焼成融着法」を実施することにより「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得ること、
を特徴とするものである。
本発明の製造法のうちの第1態様においては、PTFEプレフォーム(1A),(1A)間に変性PTFEプレフォーム(2A)が介在した状態でこれらを焼成すると同時に融着させる「焼成融着法」を実施することにより、「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得ている。
また、本発明の製造法のうちの第2態様においては、PTFEプレフォーム(1A)と変性PTFEプレフォーム(2A)とが一体化した「(1A)/(2A)」の構造体を焼成した「(1)/(2)」の構造の成形体の複数個を得た後、それらの成形体「(1)/(2)」の(2)側を突き合わせた状態で再焼成して融着させる「再焼成融着法」を実施することにより、「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得ている。
本発明によれば、低圧条件下の融着操作によっても引張強伸度の大きい複合融着構造体を得ることができるので、装置上、操作上の制約が大幅に減少する上、製造に要するエネルギーの点でも有利となる。従って、複合融着構造体の製造コストも最小限に抑えることができる。
また、複合融着構造物に占める変性PTFE部分の割合は極小であるので、たとえば容器や槽のように溶剤や化学薬品や薬液を収容する場合にも、PTFE単独品の場合に比しての耐性の低下は無視しうるほどになる。
たとえば薬液の収容槽の用途に用いた場合、長期間の使用や不測の衝撃などが加わったときに予兆なく突然に破壊することは、薬液の飛散による人身事故にもつながるので絶対に避けなければならないことである。
しかるに、本発明の方法によって得られた複合融着構造体は引張伸度も大きい(靱性もすぐれている)という特性を有するため、たとえ構造物に歪みが生じても直ちに破壊することはなく、従って、歪みなどの予兆があった時点で交換などの対処を講ずることができる。
本明細書においては、必要に応じて次のような略号を用いている。
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
・PTFEプレフォーム(1A):PTFEの圧縮成形体(予備成形体)
・PTFE成形体(1):PTFEプレフォーム(1A)の焼成体(焼成成形体)
・変性PTFE:パーフルオロアルキル基含有モノマーの共重合割合が0.001〜1重量%であるテトラフルオロエチレン共重合体
・変性PTFEプレフォーム(2A):変性PTFEの圧縮成形体(予備成形体)
・変性PTFE成形体(2):変性PTFEプレフォーム(2A)の焼成体(焼成成形体)
本発明のポリテトラフルオロエチレン系複合融着構造体の製造法の1つは、PTFEプレフォーム(1A),(1A)間に変性PTFEプレフォーム(2A)が介在した状態でこれらを焼成すると同時に融着させる「焼成融着法」を実施することにより、「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得る方法である。各層の長さ(高さ)は種々に設定できるが、(2)は接合のための層であるので、(1)に比して極めて小にするのが通常である。
上記のうち「焼成融着法」にはいくつかの態様があるので、先に述べた略号を使って説明する。以下に述べる第1法、第2法が焼成融着法に属する。第3法は再焼成融着法に属する。第4法は焼成融着法と再焼成融着法との中間的な位置にあるが、この焼成融着法の箇所で説明する。
ついで、そのような複合プレフォームの2つを
「(1A)/(2A)」+「(2A)/(1A)」
のように配置してから、焼成することにより、
「(1)/(2)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得る。(なお、この複合融着構造体「(1)/(2)/(2)/(1)」は、「(1)/(2/2)/(1)」と表わすことができ、あるいは「(1)/(2)/(1)」と表わすこともできる。)
「(1A)+(2A)+(1A)」
の順序となるように配置してから、焼成することにより、
「(1)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得る。
「(1A)/(2A)」+(2A)+(1A)
のように配置してから、焼成することにより、
「(1)/(2)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得ることもできる。(なお、この複合融着構造体「(1)/(2)/(2)/(1)」は、「(1)/(2/2)/(1)」と表わすことができ、あるいは「(1)/(2)/(1)」と表わすこともできる。)
「(1A)/(2A)」+(2A)+「(2A)/(1A)」
のように配置してから、焼成することにより、
「(1)/(2)/(2)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得ることもできる。(なお、この複合融着構造体「(1)/(2)/(2)/(2)/(1)」は、「(1)/(2/2/2)/(1)」と表わすことができ、あるいは「(1)/(2)/(1)」と表わすこともできる。)
「(1A)/(2A)/(1A)」
の複合プレフォームを得てから、その複合プレフォームの(2A)の箇所に
「(2A)/(1A)」
の複合プレフォームの(2A)側を当接するように配置してから、焼成することにより、T字型の複合融着構造体を得ることもできる。
また、別途圧縮成形用の型に変性PTFEの粒子を充填してから圧縮成形することにより、プレフォーム(2A)を得てから、これを焼成することにより、成形体(2)を得る。
そして、前者のプレフォーム(1A)と後者の成形体(2)と前者のプレフォーム(1A)とを
「(1A)+(2)+(1A)」
の順序となるように配置してから、焼成することにより(成形体(2)については再焼成となる)、
「(1)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得る。
このときの接合層には、プレフォーム(2A)ではなく成形体(2)を使っているわけであるが、融点がPTFEよりもやや低い変性PTFEの成形体(2)であるので、相応の融着強度が得られる。
第3法は、再焼成融着法に相当する。
第3法においては、まず、圧縮成形用の型にPTFE(または変性PTFE)の粒子を充填して該粒子の充填層を形成し、続いてその充填層の上から変性PTFE(またはPTFE)の粒子を充填して該粒子の充填層を形成してから、圧縮成形することにより「(1A)/(2A)」の複合プレフォームを得る。
ついで、そのような複合プレフォーム「(1A)/(2A)」の2つを配置してから、焼成することにより、「(1)/(2)」の構造の複合融着体を得る。
次に、その複合融着体の2つを
「(1)/(2)」+「(2)/(1)」
のように配置してから、再焼成することにより、
「(1)/(2)/(2)/(1)」
の構造の複合融着構造体を得る。(なお、この複合融着構造体「(1)/(2)/(2)/(1)」は、「(1)/(2/2)/(1)」と表わすことができ、あるいは「(1)/(2)/(1)」と表わすこともできる。)
このときの接合層には変性PTFEプレフォーム(2A)ではなく変性PTFE成形体(2)を使っているわけであるが、融点がPTFEよりもやや低い変性PTFEの成形体(2),(2)同士の融着接合であるので、良好な融着強度が得られるのである。
上記において、PTFE粒子や変性PTFE粒子からPTFEのプレフォーム(1A)や変性PTFEのプレフォーム(2A)を作製するときには、PTFE粒子と変性PTFE粒子との適宜の割合の混合粒子のプレフォームからなるゾーンを設けてもよい。たとえば、「(1A)」−「(1+2)A」−「(2A)」というように移行する構造を形成するのである。
そのように工夫すると、PTFEのプレフォーム(1A)から変性PTFEのプレフォーム(2A)への移行部分における両粒子の分布が「段階的な配置」または「傾斜配置」になるので、それらのプレフォームを焼成して成形体としたときに、「成形体(1)/成形体(2)」の界面にPTFE相と変性PTFE相の入り組み組織が形成され、接合部の強伸度の点で有利になることがあるからである。
プレフォーム(1A)とプレフォーム(2A)との界面は、たとえば縦型の構造の場合を例にとると、水平面とすることが多いが、V字面やその逆のΛ字面、W字面やその逆のM字面、U字面やその逆字面、凹面や凸面のような非水平面とすることも好ましい。
そのような非水平面にすると、プレフォーム(1A)とプレフォーム(2A)との界面における両者間の接触面積が広くなるので、成形体(1)/成形体(2)としたときの接合強度が向上するからである。
本発明の方法により複合融着構造体を製造するときには、使用時の温度変化に伴う膨張収縮を減ずるため、原料粒子であるPTFE粒子や変性PTFE粒子に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維、炭化ケイ素繊維などの強化繊維を配合したものを用いることもできる。繊維の形状は、短繊維、長繊維、ウィスカーなどのいずれであってもよい。繊維のほかあるいは繊維に代えて、金属粉、セラミックス粉などの各種のフィラーを配合することもできる。
なお、複合融着構造体の製造に際しては、構造体の内部に芯材がインサートされたものを製造してもよい。
上記の焼成融着や再焼成融着は、融着に必要な温度tにおいて行う。この温度tは、355℃程度から400℃(または390℃)程度とすることが多い。350℃程度では融着性が不足する傾向があり、一方必要以上に温度を高めるメリットもない。温度tの好ましい範囲は370±10℃程度である。
ここで低圧条件とは、融着部に加わる面圧で1kgf/cm2以下であり、0.8kgf/cm2以下、0.6kgf/cm2以下、0.4kgf/cm2以下というように、もっと低圧であってもよい。後述の実施例においては、0.1kgf/cm2以下の低圧条件下に融着を行っている。
なお、融着部に加わる面圧とは、「その融着部よりも上部側の部分の自重」に、「必要に応じて追加した荷重」をプラスした圧力のことである。
[低圧融着型の複合融着構造体]
上記の製造法によって得られたポリテトラフルオロエチレン系複合融着構造体は、PTFE成形体(1),(1)間に変性PTFE成形体(2)が介在した「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着体であって、かつその融着が「融着に必要な温度tにてかつ融着部における面圧pが1kgf/cm2以下の低圧条件下にて」なされた低圧融着型の複合融着構造体である。融着に必要な温度tと低圧条件については、すでに述べた。
上記複合融着構造体の構造部分「(1)/(2)/(1)」の各部位を引き離す方向に引張試験を行って破壊させたときの接合部引張強伸度と、上記の構造部(1)の部位のみを引き離す方向に引張試験を行って破壊させたときの母材部引張強伸度との関係は、次の通りである。
「接合部引張強度/母材部引張強度」の比αが0.6以上であること。αは、0.65以上、さらには0.7以上であることが好ましい。αのさらに好ましい範囲は0.8以上、特に好ましい範囲は0.85以上である。
「接合部引張伸度/母材部引張伸度」の比βが0.3以上であること。βは、0.5以上、0.6以上、さらには0.7以上であることが好ましい。特に好ましい範囲は0.8以上、なかんずく0.85以上、特に0.9以上である。βは1を超えることもある。
なお、後述の実施例のように、PTFE成形体(1)とPTFE成形体(1)との間に変性PTFE成形体(2)を介在させた状態で370℃にて低圧条件下に融着を行っている比較例1(成形体同士を融着させている事例)においては、αは0.43、βは0.09にとどまっている。本発明の製造法により得られる複合融着構造体は、接合部における引張強度の点でも引張伸度の点でも、上記2種の成形体同士を融着させている比較例1よりも確実にすぐれていることがわかる。
本発明の製造法により得られる複合融着構造体は、耐薬品性、電気的性質、耐熱性などの性質が極めてすぐれているので、化学工業、半導体工業、ガラス基板の取り扱い分野、医療分野をはじめとする種々の分野において、貯蔵容器、処理容器、洗浄容器、搬送容器、配管、弁体などとして好適に使用することができる。
図面との対応関係については、比較例1と実験例1〜3とが図1に対応し、実験例4〜6が図2に対応する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、ダイキン工業株式会社製の「ポリフロン(登録商標)PTFE M−392」を用いた。このM−392の一般物性の公称値は、見掛け密度が0.86g/ml、平均粒径が480μm、融点が327℃(DSC法(10℃/min))である。
ポリテトラフルオロエチレン共重合変性樹脂(変性PTFE)としては、ダイキン工業株式会社製の「ポリフロン(登録商標)PTFE M−139」を用いた。このM−139の一般物性の公称値、見掛け密度が0.90g/ml、平均粒径が430μm、融点が324℃(DSC法(10℃/min))である。
PTFEプレフォーム(1A)は、型内にPTFE粒子を型に詰め、350kg/cm2の成形圧を加えることにより作製した。
変性PTFEプレフォーム(2A)は、型内に変性PTFE粒子を型に詰め、350kg/cm2の成形圧を加えることにより作製した。
PTFEプレフォーム(1A)と変性PTFEプレフォーム(2A)とが一体化した「プレフォーム(1A)/(2A)」は、型内にまずPTFE粒子と変性PTFE粒子とのどちらかを詰め、ついで他方を詰めてから、350kg/cm2の成型圧を加えることにより作製した。
これらの「PTFEプレフォーム(1A)」、「変性PTFEプレフォーム(2A)」、「プレフォーム(1A)/(2A)」のそれぞれを、350℃または370℃で焼成することにより、成形体(1)、成形体(2)、複合成形体「(1)/(2)」を準備した。
[比較例1]
比較例1においては、上記の成形体(1)と成形体(1)との間に上記の成形体(2)を介在させた状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「融着」に供することにより、「(1)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図1の(A)を参照されたい。
実験例1においては、上記の「プレフォーム(1A)/(2A)」,「プレフォーム(1A)/(2A)」同士を、それぞれの変性PTFEプレフォーム(2A)側が対向するようにした状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「焼成と同時の融着」に供することにより、「(1)/(2)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図1の(B)を参照されたい。
なお、この構造体の中間の(2)/(2)は一体化しているので、この実験例1で得られた複合融着構造体は、「(1)/(2/2)/(1)」または「(1)/(2)/(1)」と表わした方が実体に合っている。
実験例2においては、上記の「プレフォーム(1A)」と「プレフォーム(1A)」との間に「プレフォーム(2A)」を介在させた状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「焼成と同時の融着」に供することにより、「(1)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図1の(C)を参照されたい。
実験例3においては、実験例1のように2つの「プレフォーム(1A)/(2A)」,「プレフォーム(1A)/(2A)」を作製してから、それぞれを別個に焼成して2つの複合成形体「(1)/(2)」,「(1)/(2)」を作製し、ついでそれら2つの複合成形体の(2)側と(2)側とが対向するようにした状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「焼成と同時の融着」に供することにより、「(1)/(2)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図1の(D)を参照されたい。
なお、中間の(2)/(2)は一体化しているので、この実験例3で得られた複合融着構造体は、「(1)/(2/2)/(1)」または「(1)/(2)/(1)」と表わした方が実体に合っている。
実験例4においては、上記の「プレフォーム(1A)」と「プレフォーム(1A)」との間に「成形体(2)」を介在させた状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「焼成と同時の融着」に供することにより、「(1)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図2の(E)を参照されたい。
焼成融着に先立ち両側に位置する「プレフォーム(1A)」と「プレフォーム(1A)」とはいずれもプレフォームである上、それらの間に介在させるものがPTFEに比すれば融点がやや低い変性PTFEであるため、実施例2のようにそれらの間に「プレフォーム(2A)」ではなく「成形体(2)」を介在させた状態で焼成融着に供しても、実験例2に比し極端には悪くならない融着強度が得られることが期待されるわけである。
そして、後述の表1のように、結果もその通りとなっている。
実験例5においては、上記の「プレフォーム(1A)」と「プレフォーム(1A)」とを別々に焼成して「成形体(1)」と「成形体(1)」とを作製し、ついでそれぞれの「成形体(1)」,「成形体(1)」に対して成形体(2),成形体(2)を融着させて「(1)/(2)」の融着体としてから、さらにそれらの「(1)/(2)」の(2)側と「成形体(1)/(2)」の(2)側とが対向するように突き合わせた状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃での「焼成と同時の融着」に供することにより、「(1)/(2)/(2)/(1)」の複合融着構造体を製造した。図2の(F)を参照されたい。
しかしながら、「(1)/(2)」の融着体とした段階においてすでに融着強度が低いであろうことが予想される上、「(1)/(2)/(2)/(1)」の複合融着構造体を作製した後も融着強度が低いであろうことが予想されるところ、後述の表1のように、結果もその通りとなっている。
実験例6においては、予め準備したPTFEの「成形体(1)」と「成形体(1)」との間に変性PTFEの「プレフォーム(2A)」を介在させた状態で縦姿勢にし、電気炉内において350℃または370℃でその「プレフォーム(2A)」を焼成すると同時に成形体(1),(1)との融着を図るようにしている。図2の(G)を参照されたい。
しかしながら、融着相手がPTFEの「成形体(1)」であるため、「プレフォーム(2A)」を構成する変性PTFEの分子が絡み合いを生ずる手掛かりが乏しく、後述の表1のように結果は劣るものとなっている。
上述の比較例1および実験例1〜6においては、すでに述べたように縦姿勢にして融着操作を行っているが、サンプル体の融着面より上の部分の重量をもって自重とし、その自重にプラスして上端側に加えた荷重との合計を「面圧」とした。比較例1および実験例1〜6の面圧は、いずれも75gf/cm2になるように設定している。
そして、上記のようにこの状態で所定の温度に設定した電気炉内に入れ、縦姿勢にて融着または焼成融着のための加熱を行った。融着温度は、350℃と370℃との2水準である。
上記の融着または焼成融着操作後、融着体を炉内から取り出して室温にまで放冷した。
融着体の寸法は、幅が35mm、厚さが10mm、高さ(長さ)が123mm前後である。中間の変性PTFEの部分の高さは5mmまたは10mmである。
得られた角柱状の融着体をフライス(milling cutter)にて2mmの厚さに切削加工した後、強伸度の測定に供した。
ダンベル寸法は、全長が60mm、両端側の掴み部の幅が各15mm、中央部の幅が5mmである。
株式会社島津製作所製の島津オートグラフ(型式:AG−5kNIS MS)を使用した。
接合部/母材部のそれぞれの引張強度(単位はkgf/cm2)の測定結果とそのときの「接合部/母材部」の引張強度比α、接合部/母材部の引張伸度(単位は%)の測定結果とそのときの「接合部/母材部」の引張伸度比βとを、次の表1および表2に示す。
表1は350℃融着品の場合、表2は370℃融着品の場合である。
なお、母材部の引張強伸度は、比較例1、実験例1〜6、そして別途PTFEプレフォーム(1A)を焼成したPTFE成形体(1)の引張強伸度とほとんど変わらないことを確かめているので、それらの引張強伸度の平均値である引張強度297kgf/cm2、引張伸度390%をもって、母材部の引張強伸度とした。
表1、2から350℃融着品と370℃融着品とを対比すると、比較例1は350℃融着品の方が370℃融着品よりも引張強度はやや大きくかつ引張伸度はかなり大きい。ただし、いずれの場合も母材部に比しては引張強伸度は半分またはそれ以下であり、母材部に比して低下が大きい。
これに対し、実験例1〜4にあっては、370℃融着品の方が350℃融着品よりも引張強度も引張伸度も大きい。特に実験例1〜3は母材部に比しての低下の度合いが小さい。このことから、実験例1〜3は、比較例1とは作用機構が相違していることがうかがわれる。
上記の比較例1と製造法が似ている実験例5は、その350℃融着品も370℃融着品も、比較例1よりも劣る傾向を示している。
比較例1と実施例6とを対比すると、比較例1においては2つのPFTE成形体(1),(1)間に変性PFTE成形体(2)を挟んだ状態で焼成に供しており、一方実施例6は2つのPFTE成形体(1),(1)間に変性PFTEプレフォーム(2A)を挟んだ状態で焼成に供しているものであるが、比較例1よりも劣る結果となっている。
(その1)引張強度について
−1−
比較例1においては、引張強度の絶対値は350℃融着品も370℃融着品も不足しており、しかもその引張強度の絶対値は370℃融着品の方が350℃融着品よりもむしろ低い傾向があることがわかる。
このことから、PTFE成形体とPTFE成形体との間に変性PTFE成形体を介在させた状態で350℃とか370℃で圧着して融着させる方法によっては、融着接合体の引張強度は著しく不足することがわかる。
PTFE成形体とPTFE成形体との間の融着強度を上げるためには、特許文献1,2のような特殊な加圧機構を採用して接合部に加わる面圧を極めて大きくしなければならず、しかもそのように面圧を極めて大きくしても、上記の実験例1や実験例3のような大きな引張強度を得ることは期待できない。
実験に際しては、まず融着温度をPTFEの融点(327℃)よりも23℃高い350℃に設定して融着接合を行ったところ、全体的には引張強度が不足している傾向があることが判明した。
350℃融着品における引張強度の不足は、接合部位の溶融不足に起因するものと理解される。
そこで、融着温度を370℃に上げて実験を行ったところ、実験例1〜4においては引張強度が大幅に向上した。
370℃融着品の引張強度の絶対値は「実験例1≧実験例3>実験例2>実験例4」の順であり、特に実験例1と実験例3とがすぐれていた。
実験例5よび実験例6については、融着温度を370℃に上げても、よい結果が得られなかった。
350℃融着品に比しての370℃融着品の引張強度の上昇の度合いは、実験例1が284/121=2.3倍と大きく、実験例2は226/136=1.7倍であり、実験例4は178/123=1.4倍であった。
実験例3は267/236=1.1倍であったが、それは350℃融着品の引張強度がもともと大きかったからであり、実験例3は融着温度の高低にかかわらず引張強度が高いことを意味している。
以上を総合してみると、引張強度については実験例1と実験例3とが特にすぐれており、実験例2がそれらの実験例1、2に準じていることがわかる。
引張伸度については、実験例1の370℃融着品がすぐれており、実験例3の370℃融着品もすぐれている。なお、実験例3の350℃融着品も良好である。
実験例2の370℃融着品も良好である。
−1−
引張強度は文字通り強度に関する指標であるが、強度が大きいだけではいわゆる粘りが不足することがある。
つまり、ある限度以上の引張力が加わったときに、破壊の兆候を示すことなく突如破壊に至ることがある。また、曲げを伴うような力がかかったときには、接合部の側部の一方には引張力が大きく働くと同時に他方には圧縮力が働くため、当該接合部が破壊しやすくなる。
外部からの力、容器や槽の場合には内容物の重量、融着構造物の自重などの力が加わったときには、融着構造物が実際に破壊する前に歪みや裂傷などの兆候を示してくれる方が対処が可能となるので、安全なのである。
これらのことを考慮すると、単に引張強度(つまり長さ方向の引っ張りに対する強度)が大きいだけでは、実際の破壊時のトラブルに対処しえないことがある。引張強度が大きくかつ引張伸度も大きい方が、実際の用途に用いるときには適しているのである。
上記の比較例1においては、350℃融着品の引張伸度は142%であり、基材部分の引張伸度(390%)との対比では、142/390=0.36、つまり36%に低下している。350℃融着品の引張伸度に至っては、36/390=0.09、つまりわずか9%に低下している。このことは、PTFE成形体とPTFE成形体との間に変性PTFEを介在させた状態で融着させた場合は、低圧融着品であっても高圧融着品であっても、曲げ力の加わるような場合(つまり接合部に圧縮と伸びとが同時に起こるような場合)に耐えられないおそれがあることを意味している。
これに対し、上記の実験例1,3の370℃融着品においては、引張伸度は400%前後であり、しかも基材部分のみの引張伸度(390%)が事実上維持されている。
PTFE製の「角槽」や「丸槽」をいくつか成形体を融着接合させることにより作製することは、融着に高圧を要するために実際には容易ではない。
まして、図3〜図4に示したようなフッ素樹脂製の「オーバーフロー槽」は、角槽や丸槽に比べて構造が格段に複雑であるので、PTFEの板状の成形体の融着により製作することは至難である。そのため、大ブロックの成形体を製作してから、切削により不要の部分を除去していくしか方法が見当たらないところ、そのような方法によっては切削除去する部分の割合が極めて大きいので高コストになる上、切削により残す壁の厚みがたとえば15mm程度というように薄いため、切削加工操作の点でも難度が極めて高い。
図3において、(a)はオーバーフロー槽の幅方向の縦切断断面図、(b)はその長さ方向の縦切断断面図である。ただし、断面を示すハッチングは省略してある。なお、実際の槽は底部に3つのドレイン(排液管)を備えているが、図3においてはそのドレインの図示を省略してある。実際の使用にあたっては、本槽内にはたとえば超音波洗浄機が取り付けられる。
なお、図4においては、「PTFEプレフォーム」は白丸で、それらの「PTFEプレフォーム」同士を接合するための「変性PTFEプレフォーム」は黒丸で示してある。
そして、このときには、適当な治具、介在体(部材間の間隔を保つためのもの)、支持体、付勢部材を用いて、上記の各部材(P1), (P2), (P3), (P4)間に0.1〜0.5kgf/cm2程度の圧力(低圧である)が加わるように留意しながら、焼成融着を行った。焼成融着温度は370℃である。
このようにして得られた本槽の寸法は、平面視で縦×横が280mm×1130mm、高さが335mmである。オーバーフロー部の寸法は、平面視で縦×横が410mm×1260mmである。
(2A)…変性PTFEプレフォーム、
(1)…PTFE成形体、
(2)…変性PTFE成形体、
(P1)…本槽の4側壁を構成するための壁板、
(P2)…本槽を構成するための底板、
(P3)…オーバーフロー部の外壁、
(P4)…オーバーフロー部の底板
Claims (2)
- ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」、そのPTFEの圧縮成形体を「PTFEプレフォーム(1A)」、そのPTFEプレフォーム(1A)の焼成体を「PTFE成形体(1)」と称し、かつ、
パーフルオロアルキル基含有モノマーの共重合割合が0.001〜1重量%であるテトラフルオロエチレン共重合体を「変性PTFE」、その変性PTFEの圧縮成形体を「変性PTFEプレフォーム(2A)」、その変性PTFEプレフォーム(2A)の焼成体を「変性PTFE成形体(2)」
と称するとき、
PTFEプレフォーム(1A),(1A)間に変性PTFEプレフォーム(2A)が介在した状態でこれらを焼成すると同時に融着させる「焼成融着法」を実施することにより「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得るか、あるいは、
PTFEプレフォーム(1A)と変性PTFEプレフォーム(2A)とが一体化した「(1A)/(2A)」の構造体を焼成した「(1)/(2)」の構造の成形体の複数個を得た後、それらの成形体「(1)/(2)」の(2)側を突き合わせた状態で再焼成して融着させる「再焼成融着法」を実施することにより「(1)/(2)/(1)」の構造部分を有する融着構造体を得ること、
を特徴とするポリテトラフルオロエチレン系複合融着構造体の製造法。 - 前記の焼成融着法または再焼成融着法を、融着に必要な温度条件下でかつ融着部における面圧で1kgf/cm2以下の低圧条件下にて実施すること、
を特徴とする請求項1記載の製造法。
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