[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1はバタフライ型蒸気弁の正面図、図2は図1のF2−F2線に沿う断面図、図3はバタフライ型蒸気弁の断面図、図4は図3のF4の箇所を拡大して示す断面図、図5は図4のF5の箇所を拡大して示す断面図、図6は弁ディスクの加工予定部とナットのフランジ部との位置関係を示す側面図である。
図1および図2は、例えばタービン発電プラントに用いられるバタフライ型蒸気弁1を開示している。バタフライ型蒸気弁1は、例えば蒸気発生源から低圧タービンに供給される蒸気の流量を制御するための弁であって、蒸気の流量制御とは、緊急時における蒸気の流れを遮断することも含んでいる。
図2に示すように、バタフライ型蒸気弁1は、弁箱を兼ねた弁本体2、一対の弁棒3および一対の弁ディスク4を主要な要素として備えている。弁本体2、弁棒3および弁ディスク4は、例えばオーステナイト系あるいはフェライト系の耐熱合金鋼で構成されている。
弁本体2は、蒸気発生源と低圧タービンとの間を結ぶ蒸気管に接続されている。弁本体2は、中空の円筒状であり、蒸気発生源で発生した蒸気を低圧タービンに導く流路5を備えている。蒸気は、図2に矢印で示す方向に沿って流路5内を流通する。
弁棒3は、弁本体2に軸受を介して回動可能に支持されている。弁棒3は、流路5と直交するように流路5を横切るとともに、蒸気の流れ方向に互いに間隔を存して平行に配列されている。本実施形態によると、弁棒3は、弁本体2に対し水平な軸線O1を有している。
図1に示すように、弁棒3の一端は、リンク機構7を介して駆動装置8に連結されている。駆動装置8は、直線的に往復動されるロッド9を有している。ロッド9の往復運動は、リンク機構7で回動運動に変換されて弁棒3に伝えられる。そのため、弁棒3は、駆動装置8からのトルクを受けることで軸回り方向に略90°回動される。
図1および図2に示すように、弁ディスク4は、円盤状であるとともに、その中心部から外周縁部に向けて肉厚が徐々に減少するような断面形状を有している。弁ディスク4は、夫々弁棒3に支持されている。弁棒3は、弁ディスク4に設けた貫通孔10に圧入されている。貫通孔10は、弁ディスク4の中心部を通って弁ディスク4の径方向に延びている。このため、弁棒3は、弁ディスク4を径方向に貫通するように弁ディスク4に圧入されている。
本実施形態によると、弁ディスク4は、弁棒3と一緒に第1の位置P1と第2の位置P2との間で回動可能となっている。第1の位置P1では、弁ディスク4は、流路5内の蒸気の流れを遮断するように流路5内で起立されている。第2の位置P2では、弁ディスク4は、流路5内の蒸気の流れ方向に沿うように流路5内に横たわっている。
弁ディスク4は、第1の位置P1および第2の位置P2の二つの位置に回動されることに限定されない。例えば、弁ディスク4を第1の位置P1と第2の位置P2との間の第3の位置に回動させ、第3の位置に回動された弁ディスク4で流路5内を流れる蒸気の流量を調整するようにしてもよい。
図1に示すように、弁ディスク4は、弁棒3に対し例えば二本のテーパーピン11を介して固定されている。図2および図3に示すように、テーパーピン11は、弁棒3の軸線O1と直交する方向に延びているとともに、弁ディスク4の中心部を外れた位置で弁棒3の軸方向に互いに間隔を存して並んでいる。テーパーピン11を用いた弁ディスク4の固定構造は、弁ディスク4毎に共通となっているので、一方の弁ディスク4を代表して説明する。
テーパーピン11は、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。図3に示すように、テーパーピン11は、第1の端部11aおよび第2の端部11bを有している。第1の端部11aおよび第2の端部11bは、テーパーピン11の軸方向に互いに離れている。テーパーピン11の外径dは、第1の端部11aから第2の端部11bに向けて連続的に減少されている。
さらに、テーパーピン11の第2の端部11bにねじ部12が一体に形成されている。ねじ部12は、第2の端部11bから同軸状に突出されているとともに、第2の端部11bよりも外径が小さく形成されている。
図2および図3に示すように、テーパーピン11は、弁棒3および弁ディスク4を弁棒3の径方向に貫通するように弁棒3および弁ディスク4に取り外し可能に圧入されている。テーパーピン11は、弁棒3に形成された第1の嵌合孔13および弁ディスク4に形成された第2の嵌合孔14に連続して圧入されている。第1の嵌合孔13は、弁棒3の軸線O1と直交するように弁棒3を貫通している。第2の嵌合孔14は、テーパーピン1の第1の端部11aが圧入される第1の開口部14aと、テーパーピン1の第2の端部11bが圧入される第2の開口部14bとを有している。第1の開口部11aおよび第2の開口部11bは、弁棒3を間に挟んで同軸状に位置するように弁ディスク4に形成されている。
図3に示すように、テーパーピン11は、ねじ部12を先頭にした向きで第2の嵌合孔14の第1の開口部14aから第1の嵌合孔13を通じて第2の嵌合孔14の第2の開口部14bに挿入されている。これにより、テーパーピン11の第1の端部11aが第1の開口部14aの開口端を塞いでいるとともに、テーパーピン11のねじ部12が第2の開口部14bから弁ディスク4の外に突出されている。
図3および図4に示すように、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16がねじ込まれている。六角ナット16は、当該六角ナット16の周囲に張り出す円盤状のフランジ部17を備えている。フランジ部17は、弁ディスク4に面するフラットな座面18と、座面18の反対側に位置された係合面19と、を有している。係合面19は、フランジ部17の周方向に連続するリング状に形成されているとともに、フランジ部17の外周縁に向けて座面18に近づくようにフレア状に傾斜されている。
弁ディスク4の表面の中心部に六角ナット16が入り込む座ぐり部21が形成されている。座ぐり部21は、第2の嵌合孔14に対し同軸状に形成されているとともに、六角ナット16のフランジ部17の座面18が突き当たる底面22を有している。第2の嵌合孔14の第2の開口部14aは、座ぐり部21の底面22の中央部に開口されている。
ねじ部12にねじ込まれた六角ナット16は、予め規定されたトルクで締め付けられている。この締め付けにより、フランジ部17の座面18が座ぐり部21の底面22に当接されて、テーパーピン11が弁ディスク4に脱落不能に保持されている。
図4および図6に示すように、六角ナット16にロックピン23が取り付けられている。ロックピン23は、六角ナット16の緩みを防ぐ回り止め部材の一例であって、六角ナット16とねじ部12との間に跨っている。
すなわち、図6に示すように、ロックピン23は、六角ナット16に設けた第1のピン孔16aおよびねじ部12に設けた第2のピン孔12aに挿入されている。第1のピン孔16aは、六角ナット16を径方向に貫通し、第2のピン孔12aはねじ部12を径方向に貫通している。第1のピン孔16aは、六角ナット16を締め付けた時に、第2のピン孔12aに対し同軸状に合致するようになっている。そのため、ロックピン23は、六角ナット16およびねじ部12を連続して貫通し、六角ナット16をねじ部12の定位置に固定している。
本実施形態によると、図2に示すように弁ディスク4が第1の位置P1に回動された状態では、テーパーピン11が蒸気の流れ方向に沿うように横たわるとともに、テーパーピン11の第1の端部11aが流路5内で蒸気の流れ方向に沿う上流を指向している。この結果、弁ディスク4が流路5を遮断した時に、テーパーピン11の第1の端部11aが蒸気の圧力を受ける。
言い換えると、テーパーピン11を第1および第2の嵌合孔13,14に押し込むような力がテーパーピン11に作用し、テーパーピン11が弁棒3および弁ディスク4から抜け難くなっている。
図3ないし図6に示すように、弁ディスク4の座ぐり部21に円筒状の加工予定部25が一体に形成されている。加工予定部25は、座ぐり部21の底面22の外周部から突出されて、六角ナット16のフランジ部17を同軸状に取り囲んでいる。加工予定部25の先端部の内周面は、フランジ部17の係合面19と向かい合うような位置関係に保たれている。
弁ディスク4の加工予定部25に係合部26が形成されている。係合部26は、複数のかしめ部27を含んでいる。かしめ部27は、例えば加工予定部25の先端部の三箇所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いて係合面19に向けて塑性変形させることで構成されている。
図5に最もよく示されるように、かしめ部27は、加工予定部25に対し角度θだけ折り曲げられてフランジ部17の係合面19の上に被さっている。さらに、かしめ部27は、フランジ部17の周方向に間隔を存して配列されている。このため、かしめ部27は、座ぐり部21の底面22と協働して六角ナット16のフランジ部17を挟んで保持している。
次に、バタフライ型蒸気弁1を分解する手順および組み立てる手順について説明する。
最初に、図5に二点鎖線で示すように、弁ディスク4のかしめ部27をフランジ部17の係合面19から離脱するように起こして、加工予定部25から係合部26を排除する。それとともに、ロックピン23をねじ部12および六角ナット16から引き抜いて六角ナット16の回り止めを解除する。この状態で、六角ナット16を緩めてテーパーピン11のねじ部12から取り外す。
この後、テーパーピン11のねじ部12の端面をハンマー等の工具で叩くことにより、テーパーピン11に軸方向に沿う衝撃を加える。これにより、テーパーピン11が弁棒3の第1の嵌合孔13および弁ディスク4の第2の嵌合孔14から強制的に押し出され、テーパーピン11による弁ディスク4の固定が解除される。この結果、弁棒3と弁ディスク4とを互いに分離させる分解作業に移行することができる。
分解されたバタフライ型蒸気弁1の点検が完了したら、バタフライ型蒸気弁1を再度組み立てる復旧作業に移行する。まず、弁ディスク4の貫通孔10に弁棒3を圧入し、弁棒3と弁ディスク4とを一体化させる。この状態で、テーパーピン11を弁ディスク4の第2の嵌合孔14および弁棒3の第1の嵌合孔13に圧入し、テーパーピン11のねじ部12を弁ディスク4の座ぐり部21から弁ディスク4の外に突出させる。
この後、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16をねじ込むとともに、六角ナット16を規定のトルクで締め付ける。さらに、六角ナット16およびねじ部12にロックピン23を取り付け、ロックピン23で六角ナット16の緩みを防止する。
六角ナット16を締め付けた状態では、六角ナット16のフランジ部17の座面18が座ぐり部21の底面22に突き当たるとともに、フランジ部17が底面22から突出された加工予定部25で取り囲まれる。そのため、六角ナット16にロックピン23を取り付けた後、加工予定部25の先端部の三箇所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いて塑性変形させることにより、弁ディスク4にフランジ部17の係合面19に被さるかしめ部27を形成する。
これにより、六角ナット16のフランジ部17がかしめ部27と座ぐり部21の底面22との間で挟持され、六角ナット16がねじ部12の上に保持される。
第1の実施形態によると、テーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4から取り外す時に、テーパーピン11のねじ部12の端面をハンマー等で叩いている。そのため、バタフライ型蒸気弁1を分解する度に、高温高圧の蒸気にさらされるねじ部12にテーパーピン11の軸方向に沿う衝撃が加わる。よって、強度的に厳しい環境下におかれるねじ部12にいつの間にかクラックや腐食が生じる可能性がある。
すなわち、例えば図4に符号Aで示すように、ねじ部12の軸方向に沿う中間部にクラックが生じた場合、クラックAの箇所に応力が集中して当該クラックAの箇所でねじ部12が折れるのを否めない。
しかるに、第1の実施形態では、ねじ部12に締め込まれた六角ナット16のフランジ部17が弁ディスク4のかしめ部27と座ぐり部21の底面22との間で挟持されている。このため、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12がクラックAの箇所で折れたとしても、折れたねじ部12は六角ナット16と一緒に弁ディスク4の座ぐり部21に保持される。
したがって、折れたねじ部12、六角ナット16およびロックピン23が弁ディスク4から脱落するのを防ぐことができ、バタフライ型蒸気弁1の保守管理を容易に行うことができる。
さらに、かしめ部27が被さるフランジ部17の係合面19は、フランジ部17の外周縁に向けて座ぐり部21の底面22に近づくようにフレア状に傾斜されている。このため、弁ディスク4の加工予定部25にかしめ部27を形成する際に、図5に示すかしめ部27の折り曲げ角度θを小さく抑えて、かしめ部27をフランジ部17の傾斜面19に沿うように容易に変形させることができる。よって、加工予定部25を塑性変形させる際の作業性が向上する。
しかも、かしめ部27が被さる係合面19は、フランジ部17の周方向に連続して形成されている。このため、加工予定部25にかしめ部27を形成するに際しては、加工予定部25の任意な位置を係合面19に向けて塑性変形させればよく、かしめ部27の位置を自由に設定できる。
加えて、三つのかしめ部27は、加工予定部25の周方向に互いに間隔を存して配列されているので、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる度に、加工予定部25を塑性変形させる場所を変えることができる。言い換えると、加工予定部25にかしめ部27を形成する際に、その都度、かしめ部27を形成する場所を加工予定部25の周方向にずらすことができる。
この結果、加工予定部25の同一の箇所に繰り返し曲げ応力が加わるのを回避することができる。したがって、加工予定部25およびかしめ部27の強度を確保しつつ、加工予定部25に数回にわたってかしめ加工を施すことができる。
第1の実施形態では、二本のテーパーピン11で弁ディスク4を弁棒3に固定したが、テーパーピン11の本数は第1の実施形態に特定されるものではない。例えば一本のテーパーピン11又は三本以上のテーパーピン11を用いて弁ディスク4を弁棒3に固定してもよい。
テーパーピン11を複数本とすることで、例えば一つのテーパーピン11が折れても他のテーパーピン11で弁棒3に対する弁ディスク4の固定状態を維持することができ、信頼性が向上する。
さらに、弁ディスク4を弁棒3に固定するピンは、テーパーピン11に限らず、外径が一定のストレートピンであってもよい。
加えて、かしめ部27の数にしても第1の実施形態に制約されるものではない。例えば二個又は四個以上のかしめ部27をかしめ予定部25に形成したり、一つのかしめ部27をかしめ予定部25の周方向に連続するように形成してもよい。
[第2の実施形態]
図7および図8は、第2の実施形態を開示している。
第2の実施形態は、座ぐり部21の底面22とフランジ部17の座面18との間にリング状のスペーサ31を介在させた点が第1の実施形態と相違している。スペーサ31を除いたバタフライ型蒸気弁1の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
第2の実施形態によると、スペーサ31は、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。さらに、スペーサ31は、六角ナット16を締め付けた時に、座ぐり部21の底面22とフランジ部17の座面18との間で挟み込まれている。このため、第2の実施形態では、スペーサ31の厚さtに対する分だけ座ぐり部21の深さDが第1の実施形態の座ぐり部21よりも増加している。
さらに、第2の実施形態では、厚さtが異なる複数のスペーサ31が準備されており、所望の厚さtを有する一つのスペーサ31を選択することで、六角ナット16の第1のピン孔16aとねじ部12の第2のピン孔12aとの間の位置合わせを実行し得るようになっている。
第2の実施形態によると、スペーサ31は、六角ナット16と共にテーパーピン11のねじ部12の上に取り付けられる。六角ナット16を規定されたトルクで締め付けると、スペーサ31が六角ナット16のフランジ部17の座面18と座ぐり部21の底面22との間で挟み込まれ、ねじ部12に対する六角ナット16の締め付け位置が定まる。
すなわち、スペーサ31の存在により、六角ナット16の第1のピン孔16aとねじ部12の第2のピン孔12aとが同軸状に合致した位置で六角ナット16の締め付けが完了する。このため、第1のピン孔16aと第2のピン孔12aとの相対的な位置合わせを容易に行うことができる。
言い換えると、第1のピン孔16aが第2のピン孔12aに合致するように、規定値を上回るトルクで六角ナット16を無理に締め付けるといった強引な操作を予防することができる。この結果、ねじ部12と六角ナット16との噛み合い部分に応力が集中するのを防ぐことができ、ねじ部12又は六角ナット16の損傷を回避できる。
その上、スペーサ31をフランジ部17の座面18と座ぐり部21の底面22との間に介在させたことで、弁ディスク4の加工予定部25の先端部の内周面がフランジ部17の係合面19と向かい合うように、六角ナット16の締め付け位置を調整することができる。
この結果、加工予定部25の先端部を塑性変形させてかしめ部27を形成した際に、かしめ部27が精度よく係合面19に被さる。よって、フランジ部17を座ぐり部21の底面22とかしめ部27との間でしっかりと保持することができ、六角ナット16を弁ディスク4に確実に保持することができる。
[第3の実施形態]
図9および図10は、第3の実施形態を開示している。
第3の実施形態は、六角ナット16を弁ディスク4に保持する構成が第2の実施形態と相違している。これ以外のバタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第2の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態において、第2の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図9および図10に示すように、かしめリング41が弁ディスク4の座ぐり部21に取り付けられている。かしめリング41は、弁ディスク4に対し独立した部品であって、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。
第3の実施形態によると、かしめリング41は、六角ナット16のフランジ部17およびスペーサ31を取り囲むように座ぐり部21に収容されて、座ぐり部21の内周面に溶接等の手段により一体的に固定されている。これにより、かしめリング41と座ぐり部21の底面22との間に溶接ビード45が形成されている。溶接ビード45は、かしめリング41の周方向に連続していてもよいし、かしめリング41の周方向に間隔を存して並んでいてもよい。
さらに、かしめリング41は、円筒状の加工予定部42を備えている。加工予定部42は、かしめリング41の内周縁部から座ぐり部21の底面22の反対側に向けて一体に突出されている。加工予定部42の内周面は、フランジ部17の係合面19と向かい合うような位置関係に保たれている。
かしめリング41の加工予定部42に係合部43が形成されている。係合部43は、複数のかしめ部44(図9および図10に一つのみを図示)を含んでいる。かしめ部44は、例えば加工予定部42の先端部の複数個所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いて係合面19に向けて塑性変形させることで構成されている。かしめ部44は、加工予定部42からかしめリング41の内側に折り曲げられてフランジ部17の係合面19の上に被さっている。さらに、かしめ部44は、フランジ部17の周方向に間隔を存して配列されている。このため、かしめ部44は、座ぐり部21の底面22と協働して六角ナット16のフランジ部17を挟んで保持している。
第3の実施形態において、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる際には、前記第1の実施形態と同様の手順でテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4に圧入する。この後、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16をねじ込むとともに、ロックピン23で六角ナット16の緩みを防止する。
引き続いて、かしめリング41の加工予定部42の三箇所を塑性変形させることで、フランジ部17の係合面19に被さるかしめ部44を形成する。これにより、六角ナット16のフランジ部17がかしめ部44と座ぐり部21の底面22との間で挟持されて、六角ナット16がねじ部12の上に保持される。
第3の実施形態によれば、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図10に示すクラックAの箇所で折れたとしても、折れたねじ部12は六角ナット16と一緒に弁ディスク4の座ぐり部21に保持される。
したがって、折れたねじ部12、六角ナット16、ロックピン23およびスペーサ31が弁ディスク4から脱落するのを防ぐことができる。
加えて、かしめ部44は、加工予定部42の周方向に互いに間隔を存して配列されているので、加工予定部42にかしめ部44を形成する際に、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる度に、かしめ部44を形成する場所を加工予定部42の周方向にずらすことができる。
このため、加工予定部42の同一の箇所に繰り返し曲げ応力が加わるのを回避することができ、加工予定部42およびかしめ部44の強度を確保しつつ、かしめリング41に数回にわたってかしめ加工を施すことができる。
さらに、第3の実施形態によると、かしめ部44が形成されるかしめリング41は、弁ディスク4とは別の部品であり、弁ディスク4の座ぐり部21に溶接されている。このため、例えばバタフライ型蒸気弁1の分解・組み立ての繰り返しによってかしめリング41の加工予定部42が劣化した場合には、かしめリング41を弁ディスク4の座ぐり部21から取り除いて、新たなかしめリング41を座ぐり部21に溶接すればよい。
すなわち、高価な弁ディスク4は、廃棄せずにそのまま繰り返し使用することができる。よって、コスト的な面で好都合となるとともに、バタフライ型蒸気弁1のメンテナンスに要する期間を短縮することができる。
第3の実施形態では、かしめリング41を弁ディスク4に溶接しているが、例えばかしめリング41を冷し嵌めによって弁ディスク4の座ぐり部21に締結したり、又はかしめリング41を座ぐり部21の内周面にねじ込むようにしてもよい。
この構成によれば、例えばかしめリング41を座ぐり部21に溶接した場合に懸念される溶接部の歪あるいは溶接割れのような欠陥から開放され、かしめリング41を弁ディスク4の座ぐり部21に安定して固定することができる。
[第4の実施形態]
図11および図12は、第4の実施形態を開示している。
第4の実施形態は、六角ナット16を弁ディスク4に保持する構成が第3の実施形態と相違している。これ以外のバタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第3の実施形態と同様である。そのため、第4の実施形態において、第3の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図11および図12に示すように、保持リング51が弁ディスク4の座ぐり部21に取り付けられている。保持リング51は、弁ディスク4に対し独立した部品であって、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。
保持リング51は、六角ナット16がねじ部12にねじ込まれた状態で座ぐり部21に収容されている。保持リング51は、座ぐり部21の内周面に溶接等の手段により固定されて、六角ナット16のフランジ部17およびスペーサ31を取り囲んでいる。これにより、保持リング51と座ぐり部21の内周面との間に溶接ビード54が形成されている。溶接ビード54は、保持リング51の周方向に連続していてもよいし、保持リング51の周方向に間隔を存して並んでいてもよい。
さらに、保持リング51は、係合部52を備えている。係合部52は、保持リング51の内周面からフランジ部17の係合面19に向けて突出されている。第4の実施形態によると、係合部52は、保持リング51に周方向に連続して形成されているとともに、係合面19に沿うように傾斜された押圧面53を有している。押圧面53は、フランジ部17の係合面19に接触することで、座ぐり部21の底面22と協働して六角ナット16のフランジ部17を挟んで保持している。
第4の実施形態において、バタフライ型蒸気弁1を分解するには、溶接ビード54を切削等の手段により除去した後、保持リング51を弁ディスク4の座ぐり部21から取り除く。引き続いて、前記第1の実施形態と同様の手順でテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4から強制的に押し出し、弁棒3と弁ディスク4とを互いに分離させる。
一方、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる際には、前記第1の実施形態と同様の手順でテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4に圧入した後、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16をねじ込むとともに、ロックピン23で六角ナット16の緩みを防止する。
さらに、取り外した保持リング51又は新たな保持リング51を弁ディスク4の座ぐり部21に収容して、座ぐり部21の内周面に溶接する。この溶接により、保持リング51の係合部52の押圧面53がフランジ部17の係合面19に接触する。この結果、六角ナット16のフランジ部17が保持リング51の係合部52と座ぐり部21の底面22との間で挟持されて、六角ナット16がねじ部12の上に保持される。
第4の実施形態によれば、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図12に示すクラックAの箇所で折れたとしても、折れたねじ部12は六角ナット16と一緒に弁ディスク4の座ぐり部21に保持される。
したがって、前記第1の実施形態と同様に、折れたねじ部12、六角ナット16およびロックピン23が弁ディスク4から脱落するのを防止できる。
加えて、第4の実施形態では、係合部52を有する保持リング51を弁ディスク4の座ぐり部21に溶接することで、六角ナット16を弁ディスク4に保持している。このため、保持リング51を座ぐり部21に溶接した以降は、塑性変形を伴うかしめ作業のような格別な後加工が不要となり、六角ナット16をねじ部12の上の定位置に容易に保持することができる。
さらに、バタフライ型蒸気弁1の分解・組み立ての繰り返しにより保持リング51が劣化した場合は、バタフライ型蒸気弁1の組み立て時に新たな保持リング51を弁ディスク4の座ぐり部21に溶接すればよい。このため、第3の実施形態と同様に、高価な弁ディスク4をそのまま繰り返し使用することができ、経済的である。
第4の実施形態において、フランジ部17に被さる係合部52は、保持リング51の周方向に連続させる必要はなく、例えば複数の係合部52を保持リング51の周方向に間隔を存して配列してもよい。
[第5の実施形態]
図13および図14は、第5の実施形態を開示している。
第5の実施形態は、前記第1の実施形態のバタフライ型蒸気弁1にテーパーピン11の抜け出しを防ぐ構成を付加したものであって、バタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。そのため、第5の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図13および図14に示すように、テーパーピン11は、ねじ部12の反対側に面取り部61を有している。面取り部61は、例えばテーパーピン11の第1の端部11aの外周面と端面とで規定される角を斜めに削り落すことにより構成されている。面取り部61は、テーパーピン11の周方向に連続されている。
一方、弁ディスク4は、第2の嵌合孔14の第1の開口部14aに対応する位置に座ぐり部62を有している。座ぐり部62は、第1の開口部14aよりも大径であるとともに、第1の開口部14aが開口された底面63を有している。テーパーピン11の面取り部61は、第1の開口部14aから座ぐり部62の内側に露出されている。
座ぐり部62の底面63に円筒状のかしめ予定部64が一体に形成されている。かしめ予定部64は、第1の開口部14aの開口縁から突出されて、テーパーピン11の第1の端部11aの縁を同軸状に取り囲んでいる。かしめ予定部64の内周面は、テーパーピン11の面取り部61と向かい合うような位置関係に保たれている。
座ぐり部62のかしめ予定部64に複数のかしめ部65(図13、図14に一つのみを図示)が一体に形成されている。かしめ部65は、例えばかしめ予定部64の先端部の三箇所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いてテーパーピン11の面取り部61に向けて塑性変形させることで構成されている。かしめ部65は、テーパーピン11の周方向に連続するように形成してもよいし、テーパーピン11の周方向に間隔を存して配列してもよい。
図14に最もよく示されるように、かしめ部65は、テーパーピン11の面取り部61に接するように面取り部61の上に被さっている。このため、かしめ部65は、テーパーピン11の第1の端部11aに引っ掛かって、テーパーピン11の軸方向への移動を制限している。
バタフライ型蒸気弁1を分解する際には、弁ディスク4のかしめ部65をテーパーピン11の面取り部61から離脱するように起こして、弁ディスク4のかしめ予定部64からかしめ部65を排除する。この後、前記第1の実施形態と同様の手順で六角ナット16を取り外すとともに、テーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4から強制的に押し出し、弁棒3と弁ディスク4とを互いに分離させる。
一方、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる際には、前記第1の実施形態と同様の手順でテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4に圧入した後、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16をねじ込む。さらに、ロックピン23で六角ナット16の緩みを防止する。
引き続いて、弁ディスク4のかしめ予定部64の複数個所を塑性変形させることで、テーパーピン11の面取り部61に被さる複数のかしめ部65を形成する。これにより、かしめ部65がテーパーピン11の第1の端部11aに引っ掛かり、テーパーピン11の軸方向への移動が阻止される。
第5の実施形態によれば、弁ディスク4の座ぐり部62にテーパーピン11の面取り部61に被さるかしめ部65を設けたことで、テーパーピン11が弁ディスク4の第2の嵌合孔14から抜け出るのを防止できる。このため、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図13に示すクラックAの箇所で折れたとしても、テーパーピン11を弁ディスク4に脱落不能に保持することができる。
さらに、第5の実施形態では、面取り部61がテーパーピン11の周方向に連続して形成されている。このため、弁ディスク4のかしめ部65をテーパーピン11の周方向に間隔を存して配列すれば、分解したバタフライ型蒸気弁1を組み立てる度に、かしめ予定部64を塑性変形させる場所を変えることができる。
したがって、バタフライ型蒸気弁1の分解・組み立てを繰り返したとしても、かしめ予定部64の同一の箇所に繰り返し曲げ応力が加わるのを回避できる。この結果、かしめ予定部64の部分的な劣化を防ぎつつ、かしめ予定部64に数回にわたってかしめ加工を施すことができる。
第5の実施形態に開示されたテーパーピン11の抜け止め構造は、前記第1の実施形態のバタフライ型蒸気弁1に適用することに限定されるものではない。当該テーパーピン11の抜け止め構造は、例えば前記第2の実施形態、第3の実施形態および第4の実施形態のいずれかに記載されたバタフライ型蒸気弁においても同様に適用が可能である。
[第6の実施形態]
図15および図16は、第6の実施形態を開示している。
第6の実施形態は、前記第3の実施形態のバタフライ型蒸気弁1に、テーパーピン11の抜け出しを防ぐ構成を付加したものであって、バタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第3の実施形態と同様である。そのため、第6の実施形態において、第3の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図15および図16に示すように、テーパーピン11は、前記第5の実施形態と同様の面取り部61を備えている。弁ディスク4は、第2の嵌合孔14の第1の開口部14aに対応する位置に座ぐり部71を有している。座ぐり部71は、第1の開口部14aよりも大径であるとともに、第1の開口部14aが開口されたフラットな底面72を有している。テーパーピン11の面取り部61は、第1の開口部14aから座ぐり部71の内側に突出されている。
図16に示すように、かしめリング73が弁ディスク4の座ぐり部71に取り付けられている。かしめリング73は、弁ディスク4に対し独立した部品であって、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。かしめリング73は、テーパーピン11の第1の端部11aを取り囲むように座ぐり部71に収容されて、座ぐり部71の内周面に溶接等の手段により一体的に固定されている。したがって、かしめリング73と座ぐり部71の内周面との間に溶接ビード77が形成されている。溶接ビード77は、かしめリング73の周方向に連続していてもよいし、かしめリング73の周方向に間隔を存して並んでいてもよい。
かしめリング73は、円筒状のかしめ予定部74を備えている。かしめ予定部74は、かしめリング73の内周縁部から座ぐり部71の底面72の反対側に向けて一体に突出されて、テーパーピン11の面取り部61を取り囲んでいる。
かしめ予定部74に複数のかしめ部75(図15、図16に一つのみを図示)が一体に形成されている。かしめ部75は、例えばかしめ予定部74の先端部の三箇所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いてテーパーピン11の面取り部61に向けて塑性変形させることで構成されている。かしめ部75は、テーパーピン11の周方向に間隔を存して配列してもよいし、テーパーピン11の周方向に連続するように形成してもよい。
図16に最もよく示されるように、かしめ部75は、テーパーピン11の面取り部61に接するように面取り部61の上に被さっている。このため、かしめ部75は、テーパーピン11の第1の端部11aに引っ掛かって、テーパーピン11の軸方向への移動を制限している。
さらに、座ぐり部71の底面72とかしめリング73との間にリング状のスペーサ76が介在されている。スペーサ76は、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成され、かしめリング73と座ぐり部71の底面72との間で挟み込まれている。
第6の実施形態では、厚さtが異なる複数のスペーサ76が準備されている。このため、所望の厚さtを有する一つのスペーサ76を選択することで、かしめ予定部74がテーパーピン11の面取り部61と向かい合うように、テーパーピン11の軸方向に沿うかしめリング73の位置を調整し得るようになっている。
バタフライ型蒸気弁1を分解する際には、かしめリング73のかしめ部75をテーパーピン11の面取り部61から離脱するように起こして、かしめリング73のかしめ予定部74からかしめ部75を排除する。この後、前記第3の実施形態と同様の手順で六角ナット16を取り外すとともに、テーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4から強制的に押し出し、弁棒3と弁ディスク4とを互いに分離させる。
一方、分解されたバタフライ型蒸気弁1を組み立てる際には、前記第3の実施形態と同様の手順でテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4に圧入した後、テーパーピン11のねじ部12に六角ナット16をねじ込む。さらに、ロックピン23で六角ナット16の緩みを防止する。
引き続いて、かしめリング73のかしめ予定部74を塑性変形させることで、テーパーピン11の面取り部61に被さるかしめ部75を形成する。これにより、かしめ部75がテーパーピン11の第1の端部11aに引っ掛かり、テーパーピン11の軸方向への移動が阻止される。
第6の実施形態によれば、弁ディスク4の座ぐり部71に溶接したかしめリング73にテーパーピン11の面取り部61に被さるかしめ部75を設けたので、テーパーピン11が第2の嵌合孔14の第1の開口部14aから抜け出るのを防止できる。このため、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図15に示すクラックAの箇所で折れたとしても、テーパーピン11を弁ディスク4に脱落不能に保持することができる。
さらに、第6の実施形態によると、かしめ部75が形成されるかしめリング73は、弁ディスク4とは別の部品であり、弁ディスク4の座ぐり部71に溶接されている。このため、例えばバタフライ型蒸気弁1の分解・組み立ての繰り返しによってかしめリング73のかしめ予定部74が劣化した場合には、かしめリング73を弁ディスク4から取り除いて、新たなかしめリング73を弁ディスク4の座ぐり部71に溶接すればよい。
すなわち、高価な弁ディスク4は、廃棄せずにそのまま繰り返し使用することができる。よって、コスト的な面で好都合となるとともに、バタフライ型蒸気弁1のメンテナンスに要する期間を短縮することができる。
第6の実施形態では、かしめリング73を弁ディスク4に溶接しているが、例えばかしめリング73を冷し嵌めによって弁ディスク4の座ぐり部71に締結したり、又はかしめリング73を座ぐり部71の内周面にねじ込むようにしてもよい。
この構成によれば、かしめリング73を座ぐり部71に溶接した場合に懸念される溶接部分の歪あるいは溶接割れのような欠陥から開放され、かしめリング73を弁ディスク4の座ぐり部71に安定して固定することができる。
加えて、第6の実施形態によると、スペーサ76は、かしめリング73と共に弁ディスク4の座ぐり部71に収容されるとともに、かしめリング73を座ぐり部71に溶接した時に、かしめリング73と座ぐり部71の底面72との間で挟み込まれる。
すなわち、適切な厚さtを有するスペーサ76を選択してかしめリング73と座ぐり部71の底面72との間に介在させることで、テーパーピン11の面取り部61に対するかしめリング73の位置をテーパーピン11の軸方向に調整することができる。このため、かしめリング73のかしめ予定部74がテーパーピン11の面取り部61と合致するように座ぐり部71に対するかしめリング73の位置を固定的に定めることができる。
この結果、かしめ予定部74を塑性変形させてかしめ部75を形成した際に、かしめ部75が精度よく面取り部61に被さる。
第6の実施形態に開示されたテーパーピン11の抜け止め構造は、前記第3の実施形態のバタフライ型蒸気弁1に適用することに限定されるものではない。当該テーパーピン11の抜け止め構造は、例えば前記第1の実施形態、第2の実施形態および第4の実施形態のいずれかに記載されたバタフライ型蒸気弁においても同様に適用が可能である。
[第7の実施形態]
図17および図18は、第7の実施形態を開示している。
第7の実施形態は、前記第4の実施形態のバタフライ型蒸気弁1に、テーパーピン11の抜け出しを防ぐ構成を付加したものであって、バタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第4の実施形態と同様である。そのため、第7の実施形態において、第4の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図17および図18に示すように、テーパーピン11は、前記第6の実施形態と同様の面取り部61を備えている。弁ディスク4は、前記第6の実施形態と同様の座ぐり部71を備えている。
図18に示すように、かしめリング81が弁ディスク4の座ぐり部71に取り付けられている。かしめリング81は、弁ディスク4に対し独立した部品であって、例えばステンレスのような耐熱性に優れた金属材料で構成されている。
かしめリング81は、テーパーピン11の第1の端部11aを取り囲むように座ぐり部71に収容されて、座ぐり部71の内周面に溶接等の手段により固定されている。これにより、かしめリング81と座ぐり部71の内周面との間に溶接ビード84が形成されている。溶接ビード84は、かしめリング81の周方向に連続していてもよいし、かしめリング81の周方向に間隔を存して並んでいてもよい。第7の実施形態では、かしめリング81が座ぐり部71の底面72に直に接している。
かしめリング81は、円筒状のかしめ予定部82を備えている。かしめ予定部82は、かしめリング81の内周縁部から座ぐり部71の底面72の反対側に向けて一体に突出されて、テーパーピン11の面取り部61を取り囲んでいる。
かしめ予定部82に複数のかしめ部83(図18、図19に一つのみを図示)が一体に形成されている。かしめ部83は、例えばかしめ予定部82の三箇所をポンチあるいはたがね等の工具で叩いてテーパーピン11の面取り部61に向けて塑性変形させることで構成されている。かしめ部83は、テーパーピン11の周方向に間隔を存して配列してもよいし、テーパーピン11の周方向に連続するように形成してもよい。
図18に最もよく示されるように、かしめ部83は、テーパーピン11の面取り部61に接するように面取り部61の上に被さっている。このため、かしめ部83は、テーパーピン11の第1の端部11aに引っ掛かって、テーパーピン11の軸方向への移動を制限している。
第7の実施形態によれば、弁ディスク4の座ぐり部71に溶接したかしめリング81にテーパーピン11の面取り部61に被さるかしめ部83を設けたので、テーパーピン11が第2の嵌合孔14の第1の開口部14aから抜け出るのを防止できる。このため、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図17に示すクラックAの箇所で折れたとしても、テーパーピン11を弁ディスク4に脱落不能に保持することができる。
さらに、例えばバタフライ型蒸気弁1の分解・組み立ての繰り返しによってかしめリング81のかしめ予定部82が劣化した場合は、かしめリング81を弁ディスク4から取り除いて、新たなかしめリング81を弁ディスク4の座ぐり部71に溶接すればよい。
したがって、高価な弁ディスク4は、廃棄せずにそのまま繰り返し使用することができ、コスト的な面で好都合となるとともに、バタフライ型蒸気弁1のメンテナンスに要する期間を短縮することができる。
第7の実施形態では、かしめリング81を弁ディスク4に溶接しているが、例えばかしめリング81を冷し嵌めによって弁ディスク4の座ぐり部71に締結したり、又はかしめリング73を座ぐり部71の内周面にねじ込むようにしてもよい。
第7の実施形態に開示されたテーパーピン11の抜け止め構造は、前記第4の実施形態のバタフライ型蒸気弁1に適用することに限定されるものではない。当該テーパーピン11の抜け止め構造は、例えば前記第1ないし第3の実施形態のいずれかに記載されたバタフライ型蒸気弁にも適用が可能である。
さらに、第5ないし第7の実施形態に開示されたテーパーピン11の抜け止め構造は、六角ナット16を省略してテーパーピン11を弁棒3および弁ディスク4に圧入した形態のバタフライ型蒸気弁であっても同様に適用することができる。
[第8の実施形態]
図19および図20は、第8の実施形態を開示している。
第8の実施形態は、テーパーピン11のねじ部12にねじ込まれる六角ナットの構成が第2の実施形態と相違している。これ以外のバタフライ型蒸気弁1の基本的な構成は、第2の実施形態と同様である。そのため、第8の実施形態において、第2の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図19および図20に示すように、第8の実施形態では、六角ナットとして溶接ナット91を用いている。溶接ナット91は、溶接ナット91の周囲に張り出す円盤状のフランジ部92を有している。
フランジ部92は、フラットな座面93と、座面93の反対側に位置された表面94とを有している。座面93は、溶接ナット91をテーパーピン11のねじ部12にねじ込んだ時に、スペーサ31を座ぐり部21の底面22との間で挟み込む。表面94は、座面93と平行なフラットな面である。そのため、フランジ部92の厚さは、フランジ部92の径方向に一定である。
溶接ナット91は、テーパーピン11のねじ部12に予め規定されたトルクで締め付けた後、フランジ部92の外周部を座ぐり部21の底面22に溶接することで弁ディスク4に一体的に固定される。これにより、フランジ部92と座ぐり部21の底面22との間に溶接ビード95が形成されている。溶接ビード95は、フランジ部92の周方向に連続していてもよいし、フランジ部92の周方向に間隔を存して並んでいてもよい。
第8の実施形態によると、テーパーピン11のねじ部12に締め付けられた溶接ナット91のフランジ部92が弁ディスク4の座ぐり部21に溶接されている。このため、バタフライ型蒸気弁1の使用中に、たとえねじ部12が図20に示すクラックAの箇所で折れたとしても、折れたねじ部12は溶接ナット91と一緒に弁ディスク4の座ぐり部21に保持される。
したがって、折れたねじ部12、溶接ナット91およびロックピン23が弁ディスク4から脱落するのを防止でき、バタフライ型蒸気弁1の保守管理を容易に行うことができる。
一方、バタフライ型蒸気弁1を分解する際には、溶接ビード95を切削等の手段で除去した後、溶接ナット91をテーパーピン11のねじ部12から取り外す。引き続いて、テーパーピン11のねじ部12の端面をハンマー等の工具で叩くことにより、テーパーピン11に軸方向に沿う衝撃を加える。これにより、テーパーピン11が弁棒3の第1の嵌合孔13および弁ディスク4の第2の嵌合孔14から強制的に押し出され、テーパーピン11による弁ディスク4の固定が解除される。
したがって、例えばバタフライ型蒸気弁1の分解・組み立ての繰り返しによって溶接ナット91が劣化した場合には、劣化した溶接ナット91を新たな溶接ナット91と交換すればよい。
この結果、かしめ作業のような格別な後加工を必要としないとともに、高価な弁ディスク4は、そのまま繰り返し使用することができる。よって、コスト的な面で好都合となるのは勿論のこと、バタフライ型蒸気弁1のメンテナンスに要する期間を短縮することができる。
第1ないし第7の実施形態では、六角ナット16でテーパーピン11を締め付けるようにしたが、六角ナット16に代わりに四角ナットを用いてもよく、テーパーピン11のねじ部12にねじ込まれるナットの形態に制約はない。
以上説明した実施形態によれば、たとえピンが破損したとしても、当該ピンあるいはナットが弁ディスクから脱落するのを防ぐことができ、保守管理を容易に行えるバラフライ型蒸気弁を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。