JP5924730B2 - ドハティ増幅回路 - Google Patents

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Description

本発明は、ドハティ増幅回路に係り、特に、入力信号の強度に応じて動作モードが切り替わるドハティ増幅回路に係る。
無線通信システムの高度化に伴い、送信電力制御技術や、多値変調方式や、多チャンネル共通増幅技術のように、様々な新規技術が進展している。これらの技術のキーデバイスとして、送信電力増幅器が用いられており、その電力効率およびひずみ特性への要求は厳しさを増している。
ドハティ増幅器は、このような要求を満たす電力増幅器として期待されており、その研究開発が多くの研究機関で行われている。ドハティ増幅器の特徴は、信号入力レベルが比較的低く、飽和増幅の状態に達しない、すなわちバックオフを大きく取った状態での電力効率が、他の方式による増幅器と比べて大きいことにある。このような特性は、先に述べた通信方式の電力増幅器として極めて適しているため、ドハティ増幅器に注目が集まっている。
ドハティ増幅器は、非特許文献1に記載されているように、1936年にドハティ(Doherty)氏によって考案された。ここで、ドハティ氏は、並列接続負荷方式と、直列接続負荷方式とを提案している。
図1Aは、従来技術による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示す回路図である。図1Aに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図1Aに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路は、第1の真空管T1と、第2の真空管T2と、並列接続負荷LPと、インピーダンス反転回路IINとを含んでいる。
図1Aに示した並列接続負荷型ドハティ増幅器の構成要素の接続関係について説明する。第1の真空管T1と、第2の真空管T2と、並列接続負荷LPとは、並列に接続されている。また、第1の真空管T1と、第2の真空管T2との間には、インピーダンス反転回路IINが接続されている。
図1Bは、従来技術による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示す回路図である。図1Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図1Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路は、第1の真空管T1と、第2の真空管T2と、直列接続負荷LSと、インピーダンス反転回路IINとを含んでいる。
図1Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅器の構成要素の接続関係について説明する。第1の真空管T1と、第2の真空管T2と、並列接続負荷LPとは、直列に接続されている。また、第1の真空管T1と、第2の真空管T2との間には、インピーダンス反転回路IINが接続されている。
図1Cは、図1Aに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路を、トランジスタを想定して理想電源を用いて構成した場合の回路図である。図1Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図1Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路は、第1の理想電流源I1と、第2の理想電流源I2と、並列接続負荷LPと、4分の1波長線路QWとを具備している。
図1Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素の接続関係について説明する。第1の理想電流源I1と、第2の理想電流源I2と、並列接続負荷LPとは、並列に接続されている。4分の1波長線路QWは、第1の理想電流源I1と、第2の理想電流源I2との間に直列に接続されている。
図1Dは、図1Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路を、トランジスタを想定して理想電源を用いて構成した場合の回路図である。図1Dに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図1Dに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路は、第1の理想電圧源V1と、第2の理想電圧源V2と、直列接続負荷LSと、4分の1波長線路QWとを具備している。
図1Dに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素の接続関係について説明する。第1の理想電圧源V1と、第2の理想電圧源V2と、直列接続負荷LSと、4分の1波長線路QWとは、直列に接続されている。
図1A〜図1Dに示した各種ドハティ増幅回路の動作について説明する。まず、図1Aおよび図1Bに示した第1の真空管T1と、図1Cに示した第1の理想電流源I1と、図1Dに示した第1の理想電圧源V1とは、いずれも、キャリア増幅器として機能する。ここで、キャリア増幅器とは、AB級乃至B級あるいはこれらに相当する動作の増幅器であって、入力信号の強度が所定の閾値以下であればこれを増幅し、所定の閾値以上であれば飽和出力状態になるものである。
同様に、図1Aおよび図1Bに示した第2の真空管T2と、図1Cに示した第2の理想電流源I2と、図1Dに示した第2の理想電圧源V2とは、いずれも、ピーク増幅器として機能する。ここで、ピーク増幅器とは、B級乃至C級あるいはこれらに相当する動作の増幅器であって、入力信号の強度が所定の閾値以下であればオフ状態になり、所定の閾値以上であればこれを増幅するものである。なお、ピーク増幅器の閾値は、キャリア増幅器の閾値と同じ値に設定されているものである。
次に、図1Cおよび図1Dに示した4分の1波長線路QWは、入力信号の波長のほぼ4分の1の長さを有する伝送線路であって、インピーダンスの変換を行うものである。図1Aおよび図1Bに示したインピーダンス反転回路IINは、図1Cおよび図1Dに示した4分の1波長線路QWの機能を果たすものである。
典型的な並列負荷接続方式によるドハティ増幅器では、入力信号は分配回路によって二分され、一方はキャリア増幅器に供給され、他方は入力信号のほぼ4分の1波長の線路を介してピーク増幅器に供給される。キャリア増幅器の出力部には、入力信号のほぼ4分の1波長の線路からなるインピーダンス変換回路が接続されている。このインピーダンス変換回路を介して出力されるキャリア増幅器の出力信号と、ピーク増幅器の出力信号とは、直接結合されることで、負荷において増幅後の信号が得られる。
典型的なドハティ増幅器では、入力信号の電力が増大し、キャリア増幅器がほぼ飽和出力に近い状態に達するとき、ピーク増幅器の出力が立ち上がる。このとき、キャリア増幅器の電力効率は最大になっており、これはB級に近い動作で理想的にはほぼ78%となる。入力信号の電力がさらに増大すると、両増幅器の出力電力が共通負荷から取り出される。
言い換えれば、ドハティ増幅器では、以下のような特性が実現する。入力信号の電力を増やしていくとき、まず、ピーク増幅器が立ち上がるまではキャリア増幅器が増幅動作を行って増幅特性を支配する。次に、キャリア増幅器がそのほぼ最大電力効率に達する入力信号電力においてピーク増幅器が立ち上がる。さらに、入力信号の増加とともに出力電力および電力効率がほぼ維持される。
ドハティ増幅器は、その後も様々な改善がなされている。2001年には、特許文献1(米国特許第6262629号明細書)に記載されているように、逆(Inverted)ドハティ増幅器が提案されている。この方式では、インピーダンス変換用の4分の1波長線路が、ピーク増幅器の出力部に挿入されている。
まず、従来技術による超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路における、通常型および逆型の違いについて説明する。図2Aは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路を通常型で形成した場合の構成を示す回路図である。図2Bは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路を逆型で形成した場合の構成を示す回路図である。
図2Aおよび図2Bに示した超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路は、いずれも、分配回路DCと、位相調整線路PLと、キャリアトランジスタTCと、ピークトランジスタTPと、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、4分の1波長線路QWと、伝送線路TLとを有している。
また、図2Aおよび図2Bに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路では、いずれの場合も、分配回路DCが入力信号を入力してキャリアトランジスタTCおよびピークトランジスタTPに分配する。キャリアトランジスタTCの出力は、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCを介して、並列接続負荷LPに供給される。ピークトランジスタTPの出力は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPおよび伝送線路TLを介して、やはり並列接続負荷LPに供給される。
しかし、4分の1波長線路QWが、図2Aの通常型ドハティ増幅回路ではキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCおよび並列接続負荷LPの間に配置されているのに対して、図2Bの逆型ドハティ増幅回路ではピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPおよび並列接続負荷LPの間に配置されている。また、位相調整線路PLも、図2Aの通常型ドハティ増幅回路では分配回路DCおよびピークトランジスタTPの間に配置されているのに対して、図2Bの逆型ドハティ増幅回路では分配回路DCおよびキャリアトランジスタTCの間に配置されている。
次に、従来技術による超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路における、通常型および逆型の違いについて説明する。図2Cは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路を通常型で形成した場合の構成を示す回路図である。図2Dは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路を逆型で形成した場合の構成を示す回路図である。
図2Cおよび図2Dに示した超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路は、いずれも、分配回路DCと、位相調整線路PLと、キャリアトランジスタTCと、ピークトランジスタTPと、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、4分の1波長線路QWと、伝送線路TLと、バランBとを有している。
また、図2Cおよび図2Dに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路では、いずれの場合も、分配回路DCが入力信号を入力してキャリアトランジスタTCおよびピークトランジスタTPに分配する。キャリアトランジスタTCの出力は、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCを介して、バランBの平衡ポートの一方の端部に供給される。ピークトランジスタTPの出力は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPおよび伝送線路TLを介して、やはりバランBの平衡ポートの他方の端部に供給される。バランBの不平衡ポートは、直列接続負荷LSに接続されている。移送調節線路PLは、分配回路DCおよびピークトランジスタTPの間に配置されている。
しかし、4分の1波長線路QWが、図2Cの通常型ドハティ増幅回路ではバランBおよびピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの間に配置されているのに対して、図2Bの逆型ドハティ増幅回路ではバランBおよびキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの間に配置されている。
米国特許第6262629号明細書
W. H. Doherty, "A new high efficiency power amplifier for moulated waves", Proc. IRE, vol. 24, no. 9, pp. 1163−1182, Sept. 1936
このように、従来技術によるドハティ増幅回路では、インピーダンス変換回路として機能する4分の1波長線路が重要な構成要素として用いられている。しかし、4分の1波長線路はドハティ増幅回路の中でも大きな面積を占めており、また、特性面でも増幅周波数帯の狭帯域化および出力電力損失の要因となっている。なお、4分の一波長線路は集中素子回路により構成することも可能である。
本発明の目的は、従来技術の欠点を除去した、インピーダンス変換回路としての4分の1波長線路を用いない、通常型および逆型を統合した新規な構成による超高周波ドハティ電力増幅器を提供することにある。
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明によるドハティ増幅回路は、入力信号の強度に応じて動作モードが第1増幅モードおよび第2増幅モードの間で切り替わる。このドハティ増幅回路は、入力部(I)と、第1増幅器(TC)と、第2増幅器(TP)と、第1整合回路(OMNC)と、出力部(O)と、第2整合回路(OMNP)と、線路(TL)とを具備する。ここで、入力部(I)は、入力信号を2つに分配する。第1増幅器(TC)は、第1増幅モードにおいては入力信号の一方を増幅し、第2増幅モードにおいては飽和出力状態になる。第2増幅器(TP)は、第1増幅モードにおいてはオフ状態になり、第2増幅モードにおいて入力信号の他方を増幅する。第1整合回路(OMNC)は、第1増幅器(TC)の後段に接続されている。出力部(O)は、第1整合回路(OMNC)の後段に接続されている。第2整合回路(OMNP)は、第2増幅器(TP)の後段に接続されている。線路(TL)は、出力部(O)と、第2整合回路(OMNP)の出力部との間に接続されている。線路(TL)は、入力信号の四分の一波長より短い長さを具備する。第1整合回路(OMNC)は、4つの独立パラメータを具備する。ここで、4つの独立パラメータは、第1増幅モードにおいても、第2増幅モードにおいても、出力インピーダンス整合を満足するように設計調整されている。
本発明によるドハティ増幅回路は、4分の1波長線路が無いので、そのサイズを大幅に縮小することが可能となっている。
図1Aは、従来技術による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示す回路図である。 図1Bは、従来技術による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示す回路図である。 図1Cは、図1Aに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路を、理想電源を用いて構成した場合の回路図である。 図1Dは、図1Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路を、理想電源を用いて構成した場合の回路図である。 図2Aは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路を通常型で形成した場合の構成を示す回路図である。 図2Bは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波並列接続負荷型ドハティ増幅回路を逆型で形成した場合の構成を示す回路図である。 図2Cは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路を通常型で形成した場合の構成を示す回路図である。 図2Dは、電界効果トランジスタ(FET)による従来技術による超高周波直列接続負荷型ドハティ増幅回路を逆型で形成した場合の構成を示す回路図である。 図3Aは、本発明によるドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。 図3Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。 図3Cは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示すブロック回路図である。 図4Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路のピーク増幅部における出力インピーダンスを示すブロック回路図である。 図4Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路でピーク増幅部に行うインピーダンス変換を示すスミスチャートである。 図5Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、低電力増幅モードにおけるキャリア増幅部の入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。 図5Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、高電力増幅モードにおけるキャリア増幅部の入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。 図6Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路の構成例を示す回路図である。 図6Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路の構成例を示す回路図である。 図6Cは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路の他の構成例を示す回路図である。 図7Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路の他の構成例を示す回路図である。 図7Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路のさらに他の構成例を示す回路図である。 図8Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。 図8Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示すブロック回路図である。 図9Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路のピーク増幅部における出力インピーダンスを示すブロック回路図である。 図9Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路でピーク増幅部に行うインピーダンス変換を示すスミスチャートである。 図10Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、低電力増幅モードにおけるキャリア増幅部の出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。 図10Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、高電力増幅モードにおけるキャリア増幅部の出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。 図11Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路の具体的な構成例を示す回路図である。 図11Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路の具体的な構成例を示す回路図である。
添付図面を参照して、本発明によるドハティ増幅器を実施するための形態を以下に説明する。
本発明では、従来技術によるドハティ増幅回路が基本構成回路要素として備えている、インピーダンス変換回路としての4分の1波長線路を用いないドハティ増幅回路を提供する。本発明の基本的な原理は、以下の2点による。
第1の点として、入力信号の強度がピーク増幅器の閾値未満である際の出力インピーダンスが誘導性である場合は、並列接続負荷型の構成を用いる。反対に、出力インピーダンスが容量性である場合は、直列接続負荷型の構成を用いる。
第2の点として、並列接続負荷型の構成を用いる場合には、キャリア増幅器の出力インピーダンス整合回路を、出力並列結合端子に直接接続する負荷インピーダンスに最適化する。また、直列接続負荷型の構成を用いる場合には、キャリア増幅器の出力インピーダンス整合回路を、出力バランの合成端子に直接接続する負荷インピーダンスに最適化する。
なお、これらの原理は、トランジスタを用いて構成された超高周波電力増幅器が入力インピーダンス整合回路および出力インピーダンス整合回路を備えていることを利用している。
図3Aは、本発明によるドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。図3Aに示したドハティ増幅回路は、入力部Iと、キャリア増幅部Cと、ピーク増幅部Pと、出力部Oとを有している。キャリア増幅部Cと、ピーク増幅部Pとは、入力部Iと、出力部Oとにおいて、並列または直列に接続されている。
入力部Iは、入力信号を入力して2つに分配し、一方をキャリア増幅部Cに供給し、他方をピーク増幅部Pに供給する。
キャリア増幅部Cは、分配された入力信号の一方を増幅するが、この入力信号の強度が所定の閾値以上の場合は飽和出力状態になるように設計されている。また、キャリア増幅部Cの出力部は、接続先である出力部Oに対して、インピーダンス整合が取れているように設計されている。
ピーク増幅部Pは、分配された入力信号の他方を増幅するが、この入力信号の強度が所定の閾値以下の場合はオフ状態になるように設計されている。また、ピーク増幅部Pの出力部は、接続先である出力部Oに対して、インピーダンス整合が取れているように設計されている。なお、ピーク増幅部Pに関わる閾値は、キャリア増幅部Cの飽和出力状態に関わる閾値と同じ値であることが望ましい。
出力部Oは、キャリア増幅部Cの出力と、ピーク増幅部Pの出力とを並列あるいは直列に合成するように設計されている。
(第1の実施形態)
図3Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。図3Bに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路は、図示しない入力部Iと、キャリア増幅部Cの出力増幅部CCと、ピーク増幅部Pの出力増幅部PPと、出力部Oおよび負荷LPの集合体OOとを有している。これらの入力部I、キャリア増幅部C、ピーク増幅部Pおよび出力部Oは、図3Aに示したものにそれぞれ対応する。
キャリア増幅部Cの出力増幅部CCは、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCとを含んでいる。ピーク増幅部Pの出力増幅部PPは、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとを含んでいる。集合体OOは、図示しない線路TLと、並列接続負荷LPとを含んでいる。
ここでは、並列接続負荷型の構成について、本発明の第1の実施形態として説明する。直列接続負荷型の構成については、本発明の第2の実施形態として後述する。
図3Cは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示すブロック回路図である。図3Cに示したブロック回路図を用いて、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成例を、図3Bよりも詳しく説明する。
図3Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図3Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路は、入力部Iと、キャリア増幅部Cと、ピーク増幅部Pと、出力部Oとを含んでいる。
図3Cに示した入力部Iは、分配回路DCと、位相調整線路PLとを含んでいる。図3Cに示したキャリア増幅部Cは、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCと、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCとを含んでいる。図3Cに示したピーク増幅部Pは、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPと、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとを含んでいる。図3Cに示した出力部Oは、伝送線路TLを含んでおり、並列接続負荷LPに接続されている。
図3Cに示した並列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素の接続関係について説明する。分配回路DCにおける一方の出力部は、位相調整線路PLの一端に接続されている。位相調整線路PLの他端は、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCの入力部に接続されている。キャリア側入力インピーダンス整合回路IMCNの出力部は、キャリアトランジスタTCのゲートに接続されている。キャリアトランジスタTCのドレインは、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの入力部に接続されている。キャリアトランジスタTCのソースは、接地されている。キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの出力部は、伝送線路TLの一端と、並列接続負荷LPの一端とに共通接続されている。並列接続負荷LPの他端は、接地されている。
分配回路DCにおける他方の出力部は、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPの入力部に接続されている。ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPの出力部は、ピークトランジスタTPのゲートに接続されている。ピークトランジスタTPのドレインは、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部に接続されている。ピークトランジスタTPのソースは、接地されている。ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力部は、伝送線路TLの他端に接続されている。
ここで、図2Aおよび図2Bに示した従来技術による並列接続負荷型ドハティ増幅器では必要とされていた4分の1波長線路QWが、図3Cに示した本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅器には用いられていないことに注目されたい。
ピーク増幅器に関する上記第1の原理について説明する。図4Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路のピーク増幅部Pにおける出力インピーダンスを示すブロック回路図である。図4Aに示したピーク増幅部Pは、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、図3Bでは図示を省略されていた伝送線路TLとを有している。図4Aに示したピーク増幅部Pにおいて、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、伝送線路TLとは、この順番に直列に接続されている。
図4Aに示したピーク増幅器の出力インピーダンスをZPと置く。この出力インピーダンスZPが誘導性である場合について説明する。
図4Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路でピーク増幅部Pに行うインピーダンス変換を示すスミスチャートである。図4Bに示した第1のインピーダンスZP1は、入力信号の強度がピーク増幅器の閾値未満である場合の、図4Aに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力インピーダンスを示している。第1のインピーダンスZP1は、図4Bに示したスミスチャートの上半分に位置しており、すなわち誘導性である。
このピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの後段に、伝送線路TLを追加することで、出力インピーダンスを調整することが可能である。図4Bに示した第2のインピーダンスZP2は、図4Aに示した伝送線路TLの出力インピーダンスを示している。第2のインピーダンスZP2は、図4Bに示したスミスチャートの右端付近に位置しており、すなわち開放に近いインピーダンスである。
なお、この範囲でインピーダンスを調整する伝送線路TLの長さは、4分の1波長よりも短い。
キャリア増幅器に関する上記第2の原理について説明する。図5Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、低電力増幅モードにおけるキャリア増幅部Cの入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。図5Aに示すブロック回路図では、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、負荷LPとが、縦続に接続されている。
図5Aに示したZoptLは、入力信号の強度がピーク増幅部Pの閾値に到達する近傍にあるときの、キャリア増幅部Cの出力電力効率あるいは出力電力が最大となるキャリアトランジスタTCの負荷インピーダンスを表す。負荷LPは、このとき、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCから見た負荷である。
図5Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、高電力増幅モードにおけるキャリア増幅部Cの入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。図5Bに示したブロック回路図では、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、負荷LPとが、縦続に接続されている。
図5Bに示したZoptHは、入力信号の強度が、キャリア増幅部Cが飽和状態になる近傍にあるときの、キャリア増幅部Cの出力電力効率あるいは出力電力が最大となるキャリアトランジスタTCの負荷インピーダンスを表す。負荷LPは、このとき、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCから見た負荷である。
ここで、典型的な並列接続負荷型ドハティ増幅器では、図5Aに示した低電力増幅モードにおける負荷LPのインピーダンスは、図5Bに示したこう電力増幅モードにおける負荷LPのインピーダンスの半分である。すなわち、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCは、負荷LPに対してZoptLのインピーダンスを、負荷LPに対してZoptHのインピーダンスを満たす必要がある。
各インピーダンスは複素数であるから前項の二条件を満たすには、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCが、独立に設計調整可能なパラメータを、最低でも4つ有することが必要である。その一例を以下に示す。
図6Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの構成例を示す回路図である。図6Aに示したキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCは、第1のインダクタL1と、第2のインダクタL2と、第1のキャパシタC1と、第2のキャパシタC2とを有している。ここで、第1のインダクタL1と、第2のインダクタL2とは、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの入力部および出力部の間に直列に接続されている。第1のキャパシタC1は、その一端は第1のインダクタL1と、第2のインダクタL2とに共通接続されており、その他端は接地されている。第2のキャパシタC2は、その一端がキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの出力部と、第2のインダクタL2とに共通接続されており、その他端は接地されている。言い換えれば、第1、第2のインダクタL1、L2は直列に接続されており、第1、第2のキャパシタC1、C2は並列に接続されている。
図6Aに示した2つのインダクタL1およびL2のそれぞれにおけるインダクタンスと、同じく2つのキャパシタC1およびC2のそれぞれにおける容量とを、適宜に設計調整することで、本実施形態によるドハティ増幅回路が正常に機能することを、発明者はシミュレーション解析及び実験で確認した。
ここで、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、例えば、図6Bまたは図6Cのように構成してもよい。
図6Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの構成例を示す回路図である。図6Bに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、インダクタL3と、キャパシタC3とを有している。インダクタL3は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部および出力部の間に接続されている。キャパシタC3は、その一端がピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力部に接続されており、その他端は接地されている。言い換えれば、インダクタL3は直列に接続されており、キャパシタC3は並列に接続されている。
図6Cは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの他の構成例を示す回路図である。図6Cに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、第1のインダクタL4と、第2のインダクタL5と、第1のキャパシタC4と、第2のキャパシタC5とを有しているが、その構成は図6Aに示したキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの場合と同様であるので、更なる詳細な説明を省略する。
独立に設計調整可能なパラメータを4つ有するキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの他の構成例について説明する。
図7Aは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの他の構成例を示す回路図である。図7Aに示したキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCは、第1の伝送線路TL1と、第2の伝送線路TL2と、第1のスタブS1と、第2のスタブS2とを有している。第1の伝送線路TL1と、第2の伝送線路TL2とは、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの入力部と、出力部との間に直列に接続されている。第1のスタブS1は、第1の伝送線路TL1と、第2の伝送線路TL2とに共通接続されている。第2のスタブS2は、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの出力部と、第2の伝送線路TL2とに共通接続されている。言い換えれば、第1、第2の伝送線路TL1、TL2は、直列に接続されており、第1、第2のスタブS1、S2は並列に接続されている。
第1の伝送線路TL1と、第2の伝送線路TL2と、第1のスタブS1と、第2のスタブS2とのそれぞれのサイズを適宜に設計調整することで、本発明によるドハティ増幅回路が正常に機能することを、発明者は実験で確認した。
ここで、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、例えば、図7Bのように構成してもよい。
図7Bは、本発明の第1の実施形態による並列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPのさらに他の構成例を示す回路図である。図7Bに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、伝送線路TL3と、スタブS3とを有している。伝送線路TL3は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部と、出力部との間に接続されている。スタブS3は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力部と、伝送線路TL3とに共通接続されている。言い換えれば、伝送線路TL3は直列に接続されており、スタブS3は並列に接続されている。
このように、本実施形態によるキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとは、集中定数素子を用いて構成しても良いし、分布定数素子を用いて構成しても良い。さらには、集中定数素子と、分布定数素子とを組み合わせて構成しても良いことは言うまでも無い。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態として、直列接続負荷型ドハティ増幅回路について説明する。
図8Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の基本形を概略的に示すブロック回路図である。図8Aに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路は、図示しない入力部Iと、キャリア増幅部Cの出力増幅部CCと、ピーク増幅部Pの出力増幅部PPと、出力部Oおよび負荷LSの集合体OOとを有している。これらの入力部I、キャリア増幅部C、ピーク増幅部Pおよび出力部Oは、図3Aに示したものにそれぞれ対応する。
キャリア増幅部Cの出力増幅部CCは、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCとを含んでいる。ピーク増幅部Pの出力増幅部PPは、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとを含んでいる。集合体OOは、図示しない線路TLと、直列接続負荷LSとを含んでいる。
図8Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成を示すブロック回路図である。図8Bに示したブロック回路図を用いて、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成例を、図8Aよりも詳しく説明する。
図8Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素について説明する。図8Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路は、入力部Iと、キャリア増幅部Cと、ピーク増幅部Pと、出力部Oとを含んでいる。
図8Bに示した入力部Iは、分配回路DCと、位相調整線路PLとを含んでいる。図8Bに示したキャリア増幅部Cは、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCと、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCとを含んでいる。図8Bに示したピーク増幅部Pは、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPと、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとを含んでいる。図8Bに示した出力部Oは、伝送線路TLと、バランBとを含んでおり、直列接続負荷LSに接続されている。ここで、バランBには特に制限は無く、伝送線路バラン、変成器バラン、集中定数バラン、位相反転バラン、その他のバランのいずれを用いても構わない。
図8Bに示した直列接続負荷型ドハティ増幅回路の構成要素の接続関係について説明する。分配回路DCにおける一方の出力部は、キャリア側入力インピーダンス整合回路IMNCの入力部に接続されている。キャリア側入力インピーダンス整合回路IMCNの出力部は、キャリアトランジスタTCのゲートに接続されている。キャリアトランジスタTCのドレインは、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの入力部に接続されている。キャリアトランジスタTCのソースは、接地されている。キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの出力部は、バランBの平衡ポートの一方の端部に接続されている。直列接続負荷LSにおいて、一端はバランBの不平衡ポートの一方の端部に接続されており、他端は直接接地されている。バランBの不平衡ポートの他方の端部は、接地されている。
分配回路DCにおける他方の出力部は、位相調整線路PLの一端に接続されている。位相調整線路PLの他端は、ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPの入力部に接続されている。ピーク側入力インピーダンス整合回路IMNPの出力部は、ピークトランジスタTPのゲートに接続されている。ピークトランジスタTPのドレインは、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部に接続されている。ピークトランジスタTPのソースは、接地されている。ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力部は、伝送線路TLを介してバランBの平衡ポートの他方の端部に接続されている。
ここで、図2Aおよび図2Bに示した従来技術による並列接続負荷型ドハティ増幅器では必要とされていた4分の1波長線路QWが、図8Bに示した本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅器にも用いられていないことに注目されたい。
ピーク増幅器に関する上記第1の原理について説明する。図9Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路のピーク増幅部Pにおける出力インピーダンスを示すブロック回路図である。図9Aに示したピーク増幅部Pは、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、図3Bでは図示を省略されていた伝送線路TLとを有している。図9Aに示したピーク増幅部Pにおいて、ピークトランジスタTPと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPと、伝送線路TLとは、この順番に縦続に接続されている。
図PAに示したピーク増幅器の出力インピーダンスをZSと置く。この出力インピーダンスZSが容量性である場合について説明する。
図9Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路でピーク増幅部Pに行うインピーダンス変換を示すスミスチャートである。図9Bに示した第1のインピーダンスZS1は、入力信号の強度がピーク増幅器の閾値未満である場合の、図9Aに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの出力インピーダンスを示している。第1のインピーダンスZS1は、図9Bに示したスミスチャートの下半分に位置しており、すなわち容量性である。
このピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの後段に、伝送線路TLを追加することで、出力インピーダンスを調整することが可能である。図9Bに示した第2のインピーダンスZS2は、図9Aに示した伝送線路TLの出力インピーダンスを示している。第2のインピーダンスZS2は、図9Bに示したスミスチャートの右端付近に位置しており、すなわち短絡に近いインピーダンスである。
なお、この範囲でインピーダンスを調整する伝送線路TLの長さは、4分の1波長よりも短い。
キャリア増幅器に関する上記第2の原理について説明する。図10Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、低電力増幅モードにおけるキャリア増幅部Cの入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。図10Aに示すブロック回路図では、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、負荷LSとが、縦続に接続されている。
図10Aに示したZoptLは、入力信号の強度がピーク増幅部Pの閾値に到達する近傍にあるときの、キャリア増幅部Cの出力電力効率あるいは出力電力が最大となるキャリアトランジスタTCの負荷インピーダンスを表す。負荷LSは、このとき、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCから見た負荷である。
図10Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、高電力増幅モードにおけるキャリア増幅部Cの入出力インピーダンス整合条件を示すブロック回路図である。図5Bに示したブロック回路図では、キャリアトランジスタTCと、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、負荷LSとが、縦続に接続されている。
図10Bに示したZoptHは、入力信号の強度が、キャリア増幅部Cが飽和状態になる近傍にあるときの、キャリア増幅部Cの出力電力効率あるいは出力電力が最大となるキャリアトランジスタTCの負荷インピーダンスを表す。負荷LSは、このとき、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCから見た負荷である。
ここで、典型的な直列接続負荷型ドハティ増幅器では、図10Aに示した低電力増幅モードにおける負荷LSのインピーダンスは、図10Bに示した高電力増幅モードにおける負荷LSのインピーダンスの2倍である。すなわち、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCは、負荷LPに対してZoptLのインピーダンスを、負荷LPに対してZoptHのインピーダンスを満たす必要がある。
各インピーダンスは複素数であるから前項の二条件を満たすには、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCが、独立に設計調整可能なパラメータを、最低でも4つ有することが必要である。その一例を以下に示す。
図11Aは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの具体的な構成例を示す回路図である。図11Aに示したキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCは、第1のインダクタL6と、第2のインダクタL7と、第1のキャパシタC6と、第2のキャパシタC7とを有している。ここで、第1のインダクタL6と、第2のインダクタL7とは、キャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの入力部および出力部の間に直列に接続されている。第1のキャパシタC6は、その一端は第1のインダクタL6と、第2のインダクタL7とに共通接続されており、その他端は接地されている。第2のキャパシタC7は、その一端がキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCの出力部と、第2のインダクタL7とに共通接続されており、その他端は接地されている。言い換えれば、第1、第2のインダクタL6、L7は直列に接続されており、第1、第2のキャパシタC6、C7は並列に接続されている。
図11Aに示した2つのインダクタL6およびL7のそれぞれにおけるインダクタンスと、同じく2つのキャパシタC6およびC7のそれぞれにおける容量とを、適宜に設計調整することで、本実施形態によるドハティ増幅回路が正常に機能することを、発明者はシミュレーション解析及び実験で確認した。
ここで、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、例えば、図11Bのように構成してもよい。
図11Bは、本発明の第2の実施形態による直列接続負荷型ドハティ増幅回路の、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの具体的な構成例を示す回路図である。図11Bに示したピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPは、インダクタL8と、キャパシタC8とを有している。インダクタL8は、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部および出力部の間に接続されている。キャパシタC8は、その一端がピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPの入力部に接続されており、その他端は接地されている。言い換えれば、インダクタL8は直列に接続されており、キャパシタC8は並列に接続されている。
このように、本実施形態によるキャリア側出力インピーダンス整合回路OMNCと、ピーク側出力インピーダンス整合回路OMNPとは、集中定数素子を用いて構成することが出来るが、分布定数素子を用いて構成しても良いし、集中定数素子と、分布定数素子とを組み合わせて構成しても良いことは言うまでも無い。
B バラン
C キャリア増幅部
C1〜C8 キャパシタ
CC 出力増幅部
DC 分配回路
I 入力部
I1、I2 理想電流源
IIN インピーダンス反転回路
IMNC 逆モード用キャリア側整合回路
IMNP 逆モード用ピーク側整合回路
L1〜L8 インダクタ
LP、LP、LP 並列接続負荷
LS、LS、LS 直列接続負荷
NMNC ノーマルモード用キャリア側整合回路
NMNP ノーマルモード用ピーク側整合回路
O 出力部
OMNC キャリア側出力インピーダンス整合回路
OMNP ピーク側出力インピーダンス整合回路
OO 集合体
P ピーク増幅部
PL 位相調整線路
PP 出力増幅部
QW 4分の1波長線路
R1A、R1B 負荷
S1〜S3 スタブ
T1、T2 真空管
TC キャリアトランジスタ
TP ピークトランジスタ
TL、TL1〜TL3 伝送線路
V1、V2 理想電圧源
optL、ZoptH インピーダンス
ZP、ZP1、ZP2 インピーダンス
ZS、ZS1、ZS2 インピーダンス

Claims (10)

  1. 入力信号の強度に応じて動作モードが第1増幅モードおよび第2増幅モードの間で切り替わるドハティ増幅回路であって、
    前記入力信号を2つに分配する入力部と、
    前記第1増幅モードにおいては前記入力信号の一方を増幅し、前記第2増幅モードにおいては飽和出力状態になる第1増幅器と、
    前記第1増幅モードにおいてはオフ状態になり、前記第2増幅モードにおいて前記入力信号の他方を増幅する第2増幅器と、
    前記第1増幅器の後段に接続された第1整合回路と、
    前記第1整合回路の後段に接続された出力部と、
    前記第2増幅器の後段に接続された第2整合回路と
    を具備し、
    前記第2整合回路の後段に接続される伝送線路は
    前記入力信号の四分の一波長より短い長さ
    を具備し、
    前記第1整合回路は、
    前記第1増幅モードにおいても、前記第2増幅モードにおいても、出力インピーダンス整合を満足するように設計調整された少なくとも4つの独立パラメータ
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  2. 請求項1に記載のドハティ増幅回路において、
    前記線路は、
    前記第2整合回路の出力インピーダンスが誘導性である場合には前記線路の出力インピーダンスが開放インピーダンスとして振舞うように調節され、前記第2整合回路の出力インピーダンスが容量性である場合には前記線路の出力インピーダンスが短絡インピーダンスとして振舞うように調節されたインピーダンス
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  3. 請求項1または2に記載のドハティ増幅回路において、
    前記第1整合回路の出力部と、前記線路の他方の端部とは、前記出力部の後段に配置される負荷に並列に共通接続されたものである
    ドハティ増幅回路。
  4. 請求項1または2に記載のドハティ増幅回路において、
    前記出力部は、
    前記出力部の後段に配置される負荷に接続されたバラン
    をさらに具備し、
    前記バランは、
    前記第1整合回路の出力部と、前記線路との間に直列に接続された一方の回路と、
    前記負荷に直列に接続された他方の回路と
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記入力部は、
    前記第1増幅器の前段に接続されて、前記入力信号の前記一方の位相を調整する位相調整線路
    をさらに具備する
    ドハティ増幅回路。
  6. 請求項1、2または4のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記入力部は、
    前記第2増幅器の前段に接続されて、前記入力信号の前記他方の位相を調整する位相調整線路
    をさらに具備する
    ドハティ増幅回路。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記第1整合回路は、
    直列に接続された2つのインダクタと、
    並列に接続された2つのキャパシタと
    を具備し、
    前記4つのパラメータは、
    前記2つのインダクタのそれぞれにおけるインダクタンスと、前記2つのキャパシタのそれぞれにおける容量と
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記第1整合回路は、
    直列に接続された2つの伝送線路と、
    並列に接続された2つのスタブと
    を具備し、
    前記4つのパラメータは、
    前記2つの伝送線路のそれぞれにおけるサイズと、前記2つのスタブのそれぞれにおけるサイズと
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記第2整合回路は、
    直列に接続されたインダクタと、
    並列に接続されたキャパシタと
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のドハティ増幅回路において、
    前記第2整合回路は、
    直列に接続された伝送線路と、
    並列に接続されたスタブと
    を具備する
    ドハティ増幅回路。
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