JP5923841B2 - ドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材 - Google Patents
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Description
前記した従来の技術では、加工性の向上が図られてはいるものの、近年においては、熱交換器のさらなるコンパクト化や軽量化、高性能化に加え、より加工のし易いフィン材の供給が期待されていることから、さらなる加工性の向上が求められている。
ここで、特許文献1に記載のフィン材は、耐カラー割れ性の改善を図っている。しかし、Mnを積極添加しているため、Mnの含有量および製造条件によっては、粗大な金属間化合物、あるいは、固溶Mnにより加工硬化しやすくなるという問題がある。そのため、耐カラー割れの改善には余地がある。
このような構成によれば、Tiを所定量添加することで、鋳塊組織が微細化される。
このような構成によれば、耐食性や親水性、成形性等、使用環境や用途等に応じた特性を向上させることができる。
本発明に係るフィン材は、Feを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、Al純度が99.30質量%以上のアルミニウム合金からなるドローレスプレス用としてのものである。そして、このフィン材の厚みが0.115mm未満であり、亜結晶粒の平均粒径を2.5μm以下および耐力を130N/mm2以上に規定したものである。また、アルミニウム合金の化学成分について、必要に応じてCuを所定量含有し、アルミニウム合金に含まれる不可避的不純物のうち、Si、Mn、Crを所定量以下または所定量未満に抑制することが好ましい。さらに、必要に応じてTiを所定量含有してもよい。
以下、各構成について、まず、化学成分について説明した後、その他の構成について説明する。
Feは、Al−Fe系金属間化合物を形成(あるいは、アルミニウムマトリクス中に固溶)して、プレス成形時における亜結晶粒を微細にすることができるために、加工硬化抑制に寄与する元素であり、カラー割れ不良を減少させる効果がある。また、アルミニウム合金板の亜結晶粒の大きさに寄与する効果や、強度を向上させる効果も有する。Fe含有量が0.010質量%未満では、前記の効果が得られずに、プレス成形でカラー割れ性に劣る。一方、0.4質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、耐カラー割れ性が劣る。従って、Fe含有量は、0.010〜0.4質量%とする。
薄肉化した時の剛性を確保するためには、さらにCuを添加することが望ましい。その効果は、0.005質量%以上の添加により得られる。一方で、Cu含有量が0.05質量%を超えると、加工硬化を招き、耐アベック性を低下させる他、耐カラー割れ性および耐食性の低下を招く。したがって、剛性確保させるためにCuを添加する場合には、Cu含有量は、0.005〜0.05質量%とする。さらに好ましくは、0.01〜0.05質量%である。
Siは、不可避的不純物として混入する元素であるが、Si含有量が0.15質量%を超えると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Siを含有する場合には、Si含有量は、0.15質量%以下とする。なお、0質量%まで抑制してもよい。
Mnは、不可避的不純物として混入する元素であるが、Mn含有量が0.015質量%以上になると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Mnを含有する場合には、Mn含有量は、0.015質量%未満に抑制する。さらには、0.005質量%未満に抑制することが好ましい。なお、0質量%まで抑制してもよい。
Crは、不可避的不純物として混入する元素であるが、Cr含有量が0.015質量%を超えると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Crを含有する場合には、Cr含有量は、0.015質量%以下に抑制する。なお、0質量%まで抑制してもよい。
Tiは、鋳塊組織の微細化のために、Al−Ti−B中間合金として添加しても良い。すなわち、Ti:B=5:1あるいは5:0.2の割合としたAl−Ti−B鋳塊微細化剤を、ワッフルあるいはロッドの形態で溶湯(スラブ凝固前における、溶解炉、介在物フィルター、脱ガス装置、溶湯流量制御装置へ投入された、いずれかの段階での溶湯)へ添加してもよく、Ti量で、0.05質量%までの含有は許容される。Ti含有量が0.01質量%未満では、鋳塊組織微細化の効果が得られない。一方、0.05質量%を超えると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Tiを添加する場合には、Ti含有量は、0.01〜0.05質量%とする。
フィン材の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物として、前記したSi、Mn、Crの他、例えば、地金や中間合金に含まれている、通常知られている範囲内のMg、Zn、Zr、Ce、Ga、V、Ni等は、Al純度が、99.30質量%未満とならない範囲で、それぞれ0.05質量%までの含有は許容される。
Al純度が、99.30質量%未満では、金属間化合物の増加に伴い,カラー割れが増加し、耐食性が低下する。したがって、Al純度は、99.30質量%以上とする。
本発明は、近年における熱交換器のコンパクト化や軽量化、高性能化等の要請により、フィン材の薄肉化を図る観点から、0.115mm未満の厚みのフィン材を対象とする。したがって、フィン材の厚みは、0.115mm未満とする。
0.115mm未満の厚みのフィン材での伸びの増加のためには、合金中の亜結晶粒の平均粒径を2.5μm以下とすることが必要である。亜結晶粒の平均粒径が2.5μmを超えると、フィン材の伸びが十分に得られない。したがって、亜結晶粒の平均粒径は、2.5μm以下とする。なお、下限値は特に規定しないが、0μmであってもよい(すなわち、亜結晶粒を含まなくてもよい)。この様な範囲にすることにより、固溶Mnや固溶Cu等により加工硬化するような場合であっても、カラー割れの発生を抑制することができる。
まず、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy-Electron)組織をEBSD(Electron Back Scattered Diffraction Pattern)法により方位解析する。EBSD法は、試料に電子線を照射し、その際に生じる反射電子菊池線回折を利用して結晶方位を特定するものである。また、結晶方位解析には、例えば、TSL社製OIM(Orientation Imaging Microscopy. TM)を用いることができる。
そして、亜結晶粒の平均粒径は、このSEM/EBSD測定データにより亜結晶粒の数を算出し、フィン材の全面積を亜結晶粒の数で除し、各亜結晶粒の面積を円と近似した場合の直径を亜結晶粒の平均粒径と定義する。
本発明のフィン材は、ドローレスプレス用としてのものであるため、耐力は130N/mm2以上とする。耐力が130N/mm2未満では、強度が不足し、ドローレスプレス成形の際にカラー割れが生じる。したがって、耐力は130N/mm2以上とする。なお、好ましくは130N/mm2超である。また、強度が高過ぎると、ドローレスプレス成形の際にカラー割れが生じやすくなるため、上限値は170N/mm2とすることが好ましい。
耐力の測定は、例えば、フィン材から、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を切り出し、JISZ2241による引張試験を実施することで行なうことができる。
(表面処理皮膜)
表面処理皮膜としては、使用環境や用途に応じ、化成皮膜や樹脂皮膜、無機皮膜が挙げられ、これらを組み合わせ(化成皮膜上に樹脂皮膜、無機皮膜を設け)てもよい。また、樹脂皮膜、無機皮膜としては、耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、親水性無機皮膜、潤滑性樹脂皮膜等が挙げられ、これらを適宜組み合わせてもよい。
本発明に係るフィン材の製造方法は、前記したフィン材の製造方法であって、熱処理工程と、熱間圧延工程と、冷間加工工程と、調質焼鈍工程と、を行うものである。さらに必要に応じて、鋳塊作製工程や表面処理工程を含んでもよい。
以下、各工程について説明する。
鋳塊作製工程は、アルミニウム合金を溶解、鋳造してアルミニウム合金鋳塊を作製する工程である。
鋳塊作製工程では、前記した化学成分を有するアルミニウム合金を溶解した溶湯から、所定形状の鋳塊を作製する。アルミニウム合金を溶解、鋳造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、真空誘導炉を用いて溶解し、連続鋳造法や、半連続鋳造法を用いて鋳造することができる。
熱処理工程は、前記アルミニウム合金の化学成分を有するアルミニウム合金鋳塊に、450〜500℃の温度で1時間以上の熱処理(均質化熱処理)を施す工程である。
熱処理温度が450℃未満では、鋳塊の組織の均質化が不十分となる。また、熱間加工性の低下を招く。さらに耐力が下限値未満となる。一方、500℃を超えると、加熱中で微細化する微細金属間化合物が粗大化し、亜結晶粒が粗大化して伸びが低下する。また、固溶量の増加を招く。したがって、熱処理温度は、450〜500℃とする。また、熱処理は保持時間1時間以上であれば前記効果を得られるため、特に上限を規定する必要はない。一方で、10時間を超えると効果が飽和することから、経済的には、熱処理時間は24時間以内が好ましい。
熱間圧延工程は、前記熱処理後に、熱間仕上げ圧延の終了温度が250℃以上300℃未満となる条件で熱間圧延を施す工程である。
熱間仕上げ圧延の終了温度が250℃未満では、材料の圧延性が低下し、圧延自体が困難となったり、板厚制御が難しくなったりして、生産性が低下する。一方、300℃以上では、熱延板で再結晶組織となるために、調質焼鈍後に繊維状の同一結晶方位群が生成し、ピアス&バーリング工程時にくびれを生じる。また、亜結晶粒径が大きくなり、さらに耐力が下限値未満となる。したがって、熱間仕上げ圧延の終了温度は、250℃以上300℃未満とする。より好ましくは、260〜290℃である。
冷間加工工程は、前記熱間圧延後に、冷間加工率96%以上の冷間加工(冷間圧延)を施す工程である。
熱間圧延終了後、冷間加工を1回、あるいは複数回行なって、フィン材を所望の最終板厚とする。ただし、冷間加工率が96%未満では、調質焼鈍後に亜結晶粒が粗大化する。また、耐力が低くなる。したがって、冷間加工における冷間加工率は、96%以上とする。ここで、冷間加工の途中で中間焼鈍を行なった場合、冷間加工率は中間焼鈍後から最終板厚までの加工率である。よって、中間焼鈍を行なうと、96%以上の冷間加工率とすることが困難となることから、中間焼鈍は行なわない。なお、冷間加工率は高いほど好ましいため、上限は特に設けない。
調質焼鈍工程は、前記冷間加工後に、230℃以下の温度で1〜6時間保持する調質焼鈍(仕上げ焼鈍)を施す工程である。
調質焼鈍の温度が、230℃を超えると、しごき加工により、加工硬化が促進され、割れが生じる。また、耐力が低くなる。したがって、調質焼鈍の温度は、230℃以下とする。好ましくは180℃未満とする。なお、下限値は特に規定されるものではないが、調質焼鈍の効果を発揮させるため、100℃以上で行なうことが好ましい。なお、調質焼鈍は1時間以上行うことが通常であり、6時間を超えると効果が飽和することから、保持時間は1〜6時間とする。
表面処理工程は、調質焼鈍後のフィン材に表面処理を施す工程である。
表面処理工程において、化成皮膜を形成する場合には、通常の塗布型または反応型の薬剤を用いた化成処理によって行うことができる。耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、潤滑性樹脂皮膜等の樹脂皮膜を形成する場合には、ロールコーターを用いた塗布、乾燥によって行うことができる。
ドローレス成形(ドローレスプレス)は、第1工程で打ち抜きおよび穴広げ加工(ピアス&バーリング成形)、第2、第3工程でしごき加工、第4工程でリフレア加工を施すものである。そして、本発明のフィン材は、耐カラー割れ性に優れるため、ドローレス方式による成形加工時のカラー割れの発生を抑制することができる。
(実施例または参考例No.1〜10、比較例No.11〜21)
表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、480℃にて4時間の均質化熱処理を施した。この均質化した鋳塊に、熱間仕上げ圧延の終了温度を270℃となるように制御して熱間圧延を施し、板厚3.0mmの熱間圧延板とした。さらに、それぞれ97.0%または97.3%程度の冷間加工率で冷間圧延を施して板厚を90μmおよび80μmとした後、表1に示す温度および保持時間の調質焼鈍を施してフィン材とした。
表2に示すアルミニウム合金(表1に対応する合金A,B,C)を、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、均質化熱処理、熱間圧延を施し、板厚3.0mmの熱間圧延板とした。さらに、No.34以外は、それぞれ97.0%または97.3%程度の冷間加工率で冷間圧延を施して板厚を90μmおよび80μmとした後、調質焼鈍を施してフィン材とした。No.34は、板厚3.0mmの熱間圧延板に50%の冷間加工率で冷間圧延を施した後、バッチ炉を用いて360℃×3hの中間焼鈍を実施した。その後さらに、それぞれ94.0%または94.7%程度の冷間加工率で冷間圧延を施して板厚を90μmおよび80μmとした後、調質焼鈍を施してフィン材とした。均質化熱処理、熱間仕上げ圧延の終了温度、調質焼鈍の条件は、表2に示すとおりである。なお、No.30はフィン材を製造できなかったものである。
表2のNo.22と同様のフィン材であるNo.35、36、表2のNo.27と同様のフィン材であるNo.37、38、表2のNo.29と同様のフィン材であるNo.39、40、表2のNo.32と同様のフィン材であるNo.41、42に対して以下の表面処理(No.1〜4)を行った。
No.2:特許第3383914号公報の実施例1と同じ条件の表面処理(化成皮膜、親水性皮膜、潤滑性樹脂皮膜をこの順に備える)
No.3:特開2008−224204号公報の実施例1と同じ条件の表面処理(化成皮膜、耐食性樹脂皮膜、親水性皮膜をこの順に備える)
No.4:特開2010−223514号公報の比較例21と同じ条件の表面処理(化成皮膜、耐食性樹脂皮膜をこの順に備える)
亜結晶粒の平均粒径は、観察倍率1,000倍で試料表面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)組織を、測定間隔0.10μmにてEBSD法により方位解析したデータを基に、TSL社製OIM(Orientation Imaging Microscopy. TM)ソフト上で自動計算することにより算出した。すなわち、フィン材の全面積をSEM/EBSD測定データによりカウントされた亜結晶粒の数で除し、各亜結晶粒の面積を円と近似した場合の直径を亜結晶粒の平均粒径と定義した。なお、亜結晶粒の数は、隣接結晶粒間の方位差が2°以上の粒界に囲まれた粒を亜結晶粒としてカウントした。
フィン材から、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を切り出した。この試験片で、JISZ2241による引張試験を実施し、引張強さ、0.2%耐力、および、伸びを測定した。なお、本実施例、参考例、および比較例の評価における引張速度は5mm/minで行った。
作製したフィン材にドローレス成形によりプレス成形を実施し、耐カラー割れ性を評価した。
耐カラー割れ性評価は、プレス成形品400穴に対して、カラー部に生じた割れを目視にてカウントすることで評価した。
「割れ数/400×100(%)」を発生率とし、発生率が3%未満を(◎)、3%以上5%未満を(○)、5%以上を(×)とした。そして、90μmおよび80μmのすべてにおいて(◎)、(○)のいずれかであったものを合格とした。
表1に示すように、実施例または参考例であるNo.1〜10は、本発明の範囲を満たすため、または参考例のため、耐カラー割れ性に優れていた。
No.11は、Si含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が増加し、耐カラー割れ性に劣った。
表2に示すように、実施例であるNo.22〜27は、本発明の範囲を満たすため、耐カラー割れ性に優れていた。
No.28は、均質化熱処理の温度が下限値未満のため、均質化が十分にされず、また、耐力が下限値未満となり、耐カラー割れ性に劣った。No.29は、均質化熱処理の温度が上限値を超えるため、亜結晶粒径が大きくなり、耐カラー割れ性に劣った。
No.35〜42における表面処理を施したフィン材の耐カラー割れ性は、表面処理を実施していないフィン材と同様の結果となった。
Claims (6)
- Fe:0.010〜0.4質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、Al純度が99.30質量%以上のアルミニウム合金からなるドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材であって、
前記ドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材の厚みが0.115mm未満であり、亜結晶粒の平均粒径が2.5μm以下および耐力が130N/mm2以上であることを特徴とするドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。 - 前記アルミニウム合金の化学成分について、さらに、Cu:0.005〜0.05質量%を含有し、Si:0.15質量%以下、Cr:0.015質量%以下に抑制することを特徴とする請求項1に記載のドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記アルミニウム合金の化学成分について、さらに、Ti:0.01〜0.05質量%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記ドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材の厚みが90μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記ドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材の厚みが80μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- フィン材表面に表面処理皮膜を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドローレスプレス用熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
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