JP6328374B2 - 熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法 - Google Patents
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本発明フィン材の化学成分組成(以下、単に組成とも言う)は、フィン材としての高強度や高成形性などの諸要求特性を満たすための前提条件となる。アルミニウム合金フィン材の組成が、規定する純アルミニウム組成から外れては、熱交換器としての伝熱性が確保できず、H24〜H26に調質焼鈍されても、規定する機械的な特性(高強度、高伸び、高延性)が得られない。また、強度と伸びとのバランスも低下して、フィン成形性が低下する。このため、カラー部の高さを1.6mm以上に高くすることも出来なくなる。
Feは、Al−Fe系金属間化合物を形成するか、あるいはアルミニウムマトリクス中に固溶して、プレス成形時における亜結晶粒を微細にすることができるために、加工硬化抑制に寄与する元素であり、カラー割れ不良を減少させる効果がある。また、アルミニウム合金板の亜結晶粒の大きさに寄与する効果や、強度を向上させる効果も有する。Fe含有量が0.010%未満では、前記の効果が得られずに、プレス成形でカラー割れ性に劣る。一方、0.9%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、耐カラー割れ性が劣る。したがって、Fe含有量は0.010〜0.9%の範囲とする。
Cuはフィンが薄肉化した時の剛性を確保するために含有させる。この効果は0.001%以上の含有により得られる。一方で、Cu含有量が0.05%を超えると、加工硬化を招き、耐アベック性を低下させる他、耐カラー割れ性および耐食性の低下を招く。したがって、Cu含有量は0.001〜0.05%の範囲とする。
Siは、地金や中間合金などの溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Si含有量が0.15%を超えると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これがフィン成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Si含有量は含有されても0.15%以下(0%を含む)に規制する。
Mnも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Mn含有量が0.4%以上になると晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Mn含有量は0.015%以下(0%を含む)に規制する。
Mgも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Mg含有量が0.015%以上になると、引張変形時に顕著な降伏点現象を示し、延性(伸び)を低下させ、成形加工した後にフィン表面に有害なしわが発生するのを助長する。したがって、Mg含有量は0.015%以下(0%を含む)に規制する。
Crも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Cr含有量が0.015%以上になると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Cr含有量は0.015%以下(0%を含む)に抑制する。
フィン材のAl純度が99.04%未満では、製法にもよるが、金属間化合物が必然的に増加し、フィンへの成形性が低下して、カラー割れの発生が増加し、耐食性が低下する。したがって、Al純度は99.04%以上とする。
前記した必須元素あるいは不純物元素以外の元素は、残部規定に含まれる不可避的不純物である。この不可避的不純物としては、例えば、Ti、B、Zn、Zr、Ce、Ga、V、Niあるいは酸素、水素、水分等がある。これらの元素は、Al純度が、99.04質量%未満とならない範囲で、フィン材やフィンの特性を阻害しない範囲での含有が許容される。
本発明フィン材の組織は特に規定しない。ただ、本発明は、前記従来技術で好ましいとされている組織となっているか、そのような組織にすることを排除しない。例えば、組織として亜結晶粒を含む場合は、この亜結晶粒の平均粒径は2.5μm以下と細かいことが好ましい。この亜結晶粒の平均粒径が2.5μmを超えるとフィン材の伸びが低下する可能性がある。また、亜結晶粒を細かくすることで、固溶Mnや固溶Cu等により、成形によって加工硬化するような場合であっても、カラー割れの発生を抑制することができる。ちなみに、この亜結晶粒を含まなくてもよく、含まない場合は、亜結晶粒の平均粒径は0μmとなる。
本発明フィン材は、近年の熱交換器の性能向上や軽量化あるいは製造コスト低減の要求を満たす、フィンの薄肉化ために、板厚は0.15mm以下とする。そして、このように薄肉化した冷延板を、後述する質別記号でH24〜H26に調質焼鈍し、特徴的な軽圧下での冷間圧延を施して、高強度な割に伸びを格段に向上させる。すなわち、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPaを有した上で、全伸び量を8〜20%の範囲とする。
本発明のフィン材は、フィンとして、あるいはフィンへの成形加工のために、フィン材表面に表面処理皮膜を設けた態様が好ましい。ここで、フィン材表面とは、フィン材の片面もしくは両面を意味する。勿論、不要であれば、フィン材表面に表面処理皮膜を設けなくても良い。
ここで、表面処理皮膜のうちでも親水性塗膜が特に好ましい。また、この親水性塗膜が、フィンへの成形加工前に、素材であるフィン材(アルミニウム薄板)に、あらかじめ塗布および焼付けされて形成されているプレコートが好ましいフィン材表面に親水性塗膜がプレコートされていれば、熱交換器としての耐食性が確保でき、フィン成形時の潤滑剤の役割も果たす。
本発明フィン材の好ましい製造方法を以下に説明する。本発明フィン材は、純アルミニウム系のアルミニウム合金冷延板を焼鈍、軽圧下の冷間圧延などの調質したものである。その製造工程としては、冷延板の調質焼鈍後の軽圧下による冷間圧延を除いては、常法により製造可能である。この常法とは、溶解、鋳造工程、均質化熱処理工程、熱間圧延工程、冷間加工工程、調質焼鈍工程を行うものである。但し、前記した好ましい組織や、フィン材あるいはフィンとしての必要特性を再現性良く得るための好ましい条件がある。以下、各工程について説明する。
溶解鋳造では、前記組成の純アルミニウム系のアルミニウム合金を溶解、鋳造してアルミニウム合金鋳塊を作製する。溶解、鋳造手段は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよく、例えば、真空誘導炉を用いて溶解し、連続鋳造法や半連続鋳造法を用いて鋳造することができる。
均質化熱処理(均熱)はアルミニウム合金鋳塊を450〜500℃の温度で1時間以上熱処理し、鋳塊組織を均質化する。均熱温度が450℃未満では、鋳塊の組織の均質化が不十分となる。また、熱間加工性の低下を招く。さらに亜結晶粒径が大きくなる。一方、500℃を超えると、金属間化合物が粗大化し、亜結晶粒も粗大化して、伸びが低下する。また、元素固溶量が増加し、加工硬化量が大きくなって、圧延性や成形性が低下する。したがって、好ましい均熱温度は450〜500℃の範囲であり、好ましい均熱温度の保持時間は1時間以上であり、効果が飽和するゆえに、経済的には24時間以内とする。
熱間圧延は、前記した均熱処理後に、この均熱温度以下で圧延を開始し、圧延終了温度が250℃以上300℃未満となる条件で施し、熱延板を得る。圧延終了温度が250℃未満では、材料の圧延性が低下し、圧延自体が困難となったり、板厚制御が難しくなったりして、生産性が低下する。一方、300℃以上では、熱延板で再結晶組織となるために、調質焼鈍後に繊維状の同一結晶方位群が生成して、ピアス&バーリング成形工程時にくびれを生じる。また、亜結晶粒径が大きくなるなど、前記したフィン材組織が得られない。したがって、好ましい熱間圧延終了温度は250℃以上300℃未満の範囲とする。
冷間圧延では、前記熱延板を、加工率96%以上にて、圧延を施し、板厚が0.03〜0.15mmの、所望板厚の冷延板とする。この冷間圧延は、圧延のパスを複数回行なって、前記所望の最終板厚とする。この際に、冷間圧延率が96%未満では、調質焼鈍後に亜結晶粒が粗大化するので、この、冷間圧延率を得るために、最終板厚との関係で、前記熱延板の板厚を選択する。なお、冷間圧延の途中で中間焼鈍を行なった場合、圧延率は中間焼鈍後から最終板厚までの加工率とする。このため、中間焼鈍を行なうと、96%以上の圧延率とすることが困難となることから、中間焼鈍は行なわない方が好ましい。なお、冷間圧延率は高いほど好ましく、上限は特に設けない。
この冷延板に親水性塗膜などをプレコートして、調質焼鈍前のフィン材表面に塗膜を設ける表面処理を施せば、前記H24〜H26の調質焼鈍が、塗膜の焼付け処理を兼ねることができる。この表面処理工程において、前記下地あるいは前処理としての化成皮膜を形成する場合には、通常の塗布型または反応型の薬剤を用いた冷延板の化成処理工程を用いて行うことができる。また、耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、潤滑性樹脂皮膜等の樹脂皮膜を形成する場合には、ロールコーターを用いた塗布、乾燥によって行うことができる。これらの方法は、塗膜を成形後のフィンに設ける場合でも同様に用いることができる。
調質焼鈍では、冷延板を160〜260℃の温度で1〜6時間保持して、H24〜H26調質相当の調質(仕上げ焼鈍、最終焼鈍)を施す。調質焼鈍の温度が160℃未満では、調質(熱処理)が不足して、充分な組織の回復効果が得られず、フィン材の規定どおりの機械的性質が得られない。また、調質焼鈍が、冷延板にプレコートされた親水性塗膜などの塗膜焼付け処理を兼ねる場合には、親水性塗膜の塗膜焼付けが不足する。一方、260℃を超えると、焼鈍後に再結晶粒を生じ、これを起点に割れが生じる。また、亜結晶粒の微細化が促進されない。したがって、調質焼鈍の温度は160〜260℃の範囲とする。なお、調質焼鈍は1時間以上行い、6時間を超えると効果が飽和することから、保持時間は1〜6時間とする。
本発明は、従来、純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材の製造には適用されることの無かった、調質焼鈍後の、スキンパスなどの軽圧下での冷間圧延を採用する。この軽圧下での冷間圧延によって、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さないフィン材とでき、従来のアルミニウム合金フィン材と同じ強度レベルであっても、格段に、しかも再現性良く、フィン材の伸びを向上させることが可能となる。このため、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材の機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPaを有した上で、全伸び量を8〜20%の範囲とすることができる。そして、高強度化され、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材を、前記ドロー・アイアニング併用方式を用いてフィンに成形しても、また、フィンのカラー部の高さが1.6mm以上要求されたとしても、成形加工後のフィン表面に有害なしわが発生せず、表面が平滑で外観が良好なフィンを得ることが可能となる。
表1に示す組成のアルミニウム合金を各々溶解、鋳造して鋳塊とした。これらの組成は、JIS規格の合金番号1200、1100、1050、1070等のいわゆる純アルミニウム系の組成に相当する。表1中の各元素の含有量の表示において、「−」の表示は、その含有量が、検出限界以下で、これらの元素を含まない0%であることを示している。
これらフィン材の組織を調査した結果、各例とも共通して、亜結晶粒の平均粒径は2.0μm以下であり、最大長さが3μmを超える粗大な金属間化合物も平均で1500個/mm2以下であった。
フィン材から、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を切り出した。この試験片で、JISZ2241による引張試験を実施し、機械的な特性として、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、および全伸び(%)を測定した。なお、本実施例および比較例の評価における引張速度は5mm/minで行った。
フィン材のドロー・アイアニング併用方式の成形加工性の評価として、絞り-張出し複合領域の成形性を評価する、JISZ2247によるエリクセン試験を行って、エリクセン値(mm)を測定した。試験は、フィン材に、直径20mmの鋼球をパンチにより押し込んで、半円形状に変形させた上で、この半円形の変形部分の裏面に達する割れが生じたときのパンチのストローク(mm)をエリクセン値とした。フィン材試験片は、一辺90mmの四角形のブランクを用い、ブランクの両面とも潤滑は施さなかった。ダイスと板押えとの間には10kN(1.02トン)の力を加えた。
前記フィン材のエリクセン試験において、成形した前記半円形の変形部分表面を観察して、半円形頂部から裾野の周辺部に亘る、白い筋状の模様が、放射状に多く目視観察される場合を、SSマークが発生したと評価した。また、これらの白い筋状の模様が目視観察されない場合を、SSマークの発生無しと評価した。
比較例11は、表1に示す、Fe含有量が少なすぎる合金番号7を用いている。
比較例12は、表1に示す、Fe含有量が多すぎる合金番号8を用いている。
比較例13は、表1に示す、Cu含有量が多すぎる合金番号9を用いている。
比較例14は、表1に示す、Si含有量が多すぎる合金番号10を用いている。
比較例15は、表1に示す、Mn含有量が多すぎる合金番号11を用いている。
比較例16は、表1に示す、Mg含有量が多すぎる合金番号12を用いている。
比較例17は、表1に示す、Cr含有量が多すぎる合金番号13を用いている。
比較例18は調質焼鈍温度が低すぎる。
比較例19は調質焼鈍温度が高すぎる。
比較例20は冷間圧延(スキンパス)の圧下率が低すぎる。
比較例21は従来と同様に冷間圧延(スキンパス)を施していない。
比較例20は冷間圧延(スキンパス)の圧下率が高すぎる。
Claims (4)
- 質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であり、降伏点現象を示さない、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材であって、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲とされていることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記フィン材の表面に、親水性塗膜から構成される表面処理皮膜が設けられた請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であるアルミニウム合金冷延板を、160〜260℃の温度で調質焼鈍後に圧下率0.1〜10%の範囲で冷間圧延して、降伏点現象を示さない、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材とするとともに、このフィン材の機械的特性として、引張強さを120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲としたことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
- 前記フィン材の表面に、親水性塗膜から構成される表面処理皮膜を設ける工程を有する請求項3に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
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