JP6328374B2 - 熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法 - Google Patents

熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エアコン等の熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金フィン材とは、成形加工により熱交換器用フィンとされる、アルミニウム合金薄板素材のことを言う。そして、このアルミニウム合金薄板素材は冷延板を調質した板(板材)である。
家庭用や自動車用のクーラー、エアコン等に使用される熱交換器は、熱交換チューブ(銅管)に、多数枚の熱交換器用フィンが、かしめ加工にて積層されている。このような熱交換器用フィンには、純アルミニウム系などの軟質なアルミニウム合金フィン材(アルミニウム合金薄板)が素材として用いられる。
これらアルミニウム合金フィン材のフィンへの成形は、ダイスとパンチとを用いたプレス成形によって、この薄板にカラー部(フィンカラー部とも言う)を形成した上で、この薄板をフィン形状の短冊状に加工することによって行う。フィンにおけるカラー部は、銅管を挿通(貫通)させた上で、かしめ加工によってフィンを一体化するために重要な開口部分である。このようなカラー部は、アルミニウム合金フィン材に円形の開口部を開けた上で、この開口部に、更に銅管との接触部となる「つば」(鍔、カール部とも言う)を設けた形状に成形される。
このようなフィンのカラー部の形成は、通常、複数段のプレス加工を組み合わせて行われ、代表的な成形方法としては、ドロー成形、ドローレス成形、ドロー・アイアニング併用方式(ドロー・ドローレス複合方式、コンビネーション成形とも言う)などが公知である。
このうち、ドロー成形は、多段階の絞り加工とピアス・バーリング加工(打ち抜きおよび穴広げ加工)、リフレア加工からなるが、カラー部の前記つばあるいは縦壁の高さ(以下、単にカラー部の高さとも言う)をあまり高くできず、要求される壁部の高さが不足する問題がある。また、ドローレス成形は、ピアス・バーリング加工、アイアニング加工、リフレア加工からなるが、やはりカラー部の高さをあまり大きくできず、要求高さを満足できない問題がある。
これに対して、ドロー・アイアニング併用方式(コンビネーション成形)は、第1工程の張出成形、第2工程の絞り成形、第3工程のピアス・バーリング加工、第4工程のアイアニング加工、第5工程目のリフレア加工からなり、比較的高いカラー部が効率よく得られるという利点がある。
ただ、近年、熱交換器の性能向上や軽量化あるいは製造コスト低減の必要性から、純アルミニウム系などの素材軟質アルミニウム薄板(アルミニウム合金フィン)を、例えば引張強さが120MPa以上に高強度化した上で、その板厚を例えば0.15mm以下により薄くすることが要求されている。しかも、前記第5工程目のリフレア工程後のカラー部の高さとしては例えば1.6mm以上に高くすることが要求されている。これらの成形は、板厚が0.15mm以下にまで薄肉化されたフィン材にとっては、過酷な成形となる。
従来から、フィンの薄肉化に対応して、素材側の成形性を改良する提案が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、板厚が0.15mm以下であり、金属間化合物の粒径、大傾角粒の最大の長さ、大傾角粒内の亜結晶粒の平均粒径等を所定に規定した、成形加工性に優れたアルミニウム合金フィン材が開示されている。また、特許文献2には、板厚が0.11mm未満であり、Fe、Tiを所定量含有し、Si、Cuを所定量以下に規制するとともに、伸び率を所定に規定した、耐アベック性、スタック性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材が開示されている。特許文献3には、板厚が0.11mm未満であり、所定元素の含有量を所定に規定した、耐アベック性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材が開示されている。また、特許文献4には、冷間圧延後の板厚が0.115mmであり、所定元素を所定に規定した、ドローレスフィン用高強度アルミニウム合金薄板とその製造方法が開示されている。
また、さらなる成形加工性の向上や、成形加工中に生じるカラー割れと言われる割れが生じるのを抑制する(耐カラー割れを改善する)ために、特許文献5、6などでは、アルミニウム合金フィン材の組織を、亜結晶粒の平均粒径が2.5μm以下、最大長さが3μmを超える金属間化合物が2000個/mm以下などと制御することも提案されている。
特開2006−104488号公報 特許第4275560号公報 特開2005−126799号公報 特開昭64−8240号公報 特開2012−214842号公報 特開2012−214844号公報
しかしながら、これら従来技術では解決できていない、純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材の問題が以前からあった。この問題とは、所定のフィン板厚とされた純アルミニウム系のアルミニウム合金冷延板を、H24〜H26調質相当の焼鈍(調質焼鈍)を施してアルミニウム合金フィン材とした際に、引張変形時に顕著な降伏点現象を示す場合が生じる点である。このような降伏点現象が生じたアルミニウム合金フィン材は、延性が小さくなって、フィンへの成形性が低下する。また、成形加工した後のフィン表面に、5000系合金では良く知られているストレッチャストレインマークと言える、白い筋状の有害なしわが発生する場合もある。
この問題に対して有効な解決策は、これまで殆ど提案されてこなかった。その理由は、この問題発生の機構が不明であることにもよる。例えば、類似の現象として、アルミニウム合金の中でも、合金元素としてMgを2〜5%含む5000系合金では、引張り変形時に、前記ストレッチャストレインマーク(以下、SSマークと言う)の発生することが古くから知られている。しかし、本発明で対象とする純アルミニウム合金系のフィン材は、含有しても不純物量程度しかMgを含有しないために、降伏点が発生する原因がわからず、このため、素材側からの有効な対策も採られていなかったのが実状である。
このため、前記したように高強度化され、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材においては、前記ドロー・アイアニング併用方式を用いて成形されたり、カラー部の高さ1.6mm以上が要求されたとしても、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さず、成形加工後のフィン表面に有害なしわが発生しない、フィン材(フィン素材アルミニウム合金薄板)が求められている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高強度化された純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材であって、伸びが高く、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さない、成形性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法を提供することである。
上記目的達成のために、本発明熱交換器用アルミニウム合金フィン材の要旨は、質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であり、降伏点現象を示さない、アルミニウム合金冷延板を、調質焼鈍後に圧下率0.1〜10%の範囲で冷間圧延してなる、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材であって、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲とされていることである。
また、上記目的達成のために、本発明熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法の要旨は、質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であるアルミニウム合金冷延板を、160〜260℃の温度で調質焼鈍後に圧下率0.1〜10%の範囲で冷間圧延して、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材とするとともに、このフィン材の機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲としたことである。
本発明は、従来、純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材の製造には不要であり、適用されることが無かった、スキンパスなどの軽圧下の冷間圧延を調質焼鈍後に敢えて施す。興味深いことに、この軽圧下の冷間圧延によって、このような冷間圧延が施されない従来の純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材に比して、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さないフィン材とすることが可能である。すなわち、同じ強度レベルであっても、格段に、しかも再現性良く、フィン材の伸びを向上させることが可能となる。
このため、本発明によれば、高強度化され、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材を、前記ドロー・アイアニング併用方式を用いてフィンに成形しても、また、フィンのカラー部の高さが1.6mm以上要求されたとしても、成形加工後のフィン表面に有害なしわが発生せず、表面が平滑で外観が良好なフィンを得ることが可能となる。
実施例における発明例と比較例との応力−ひずみ曲線を示す説明図である。
以下、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金フィン材(以下、単にフィン材ともいう)およびフィン材の製造方法の実施形態について説明する。
フィン材の化学成分組成:
本発明フィン材の化学成分組成(以下、単に組成とも言う)は、フィン材としての高強度や高成形性などの諸要求特性を満たすための前提条件となる。アルミニウム合金フィン材の組成が、規定する純アルミニウム組成から外れては、熱交換器としての伝熱性が確保できず、H24〜H26に調質焼鈍されても、規定する機械的な特性(高強度、高伸び、高延性)が得られない。また、強度と伸びとのバランスも低下して、フィン成形性が低下する。このため、カラー部の高さを1.6mm以上に高くすることも出来なくなる。
このため、本発明フィン材の組成はJIS規格の合金番号1200、1100、1050、1070等のいわゆる純アルミニウム系の組成を有していることが好ましい。本発明では、この組成を、質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04質量%以上の、純アルミニウム系のアルミニウム合金と規定している。
以下、各元素の規定範囲について説明する。なお、本明細書で記載する元素の含有量の%表示は、請求項を含めて、全て質量%の意味である。
(Fe:0.010〜0.9%)
Feは、Al−Fe系金属間化合物を形成するか、あるいはアルミニウムマトリクス中に固溶して、プレス成形時における亜結晶粒を微細にすることができるために、加工硬化抑制に寄与する元素であり、カラー割れ不良を減少させる効果がある。また、アルミニウム合金板の亜結晶粒の大きさに寄与する効果や、強度を向上させる効果も有する。Fe含有量が0.010%未満では、前記の効果が得られずに、プレス成形でカラー割れ性に劣る。一方、0.9%を超えると、粗大な金属間化合物が形成され、耐カラー割れ性が劣る。したがって、Fe含有量は0.010〜0.9%の範囲とする。
(Cu:0.001〜0.05%)
Cuはフィンが薄肉化した時の剛性を確保するために含有させる。この効果は0.001%以上の含有により得られる。一方で、Cu含有量が0.05%を超えると、加工硬化を招き、耐アベック性を低下させる他、耐カラー割れ性および耐食性の低下を招く。したがって、Cu含有量は0.001〜0.05%の範囲とする。
(Si:0.15%以下)
Siは、地金や中間合金などの溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Si含有量が0.15%を超えると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これがフィン成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Si含有量は含有されても0.15%以下(0%を含む)に規制する。
(Mn:0.015%以下)
Mnも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Mn含有量が0.4%以上になると晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Mn含有量は0.015%以下(0%を含む)に規制する。
(Mg:0.015%以下)
Mgも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Mg含有量が0.015%以上になると、引張変形時に顕著な降伏点現象を示し、延性(伸び)を低下させ、成形加工した後にフィン表面に有害なしわが発生するのを助長する。したがって、Mg含有量は0.015%以下(0%を含む)に規制する。
(Cr:0.015%以下)
Crも、前記溶解原料を通じて、不純物として混入しやすい元素である。Cr含有量が0.015%以上になると、晶出物(金属間化合物)が粗大化し、これが成形加工時の応力集中点となり、割れの起点となる。したがって、Cr含有量は0.015%以下(0%を含む)に抑制する。
(Al純度:99.04%以上)
フィン材のAl純度が99.04%未満では、製法にもよるが、金属間化合物が必然的に増加し、フィンへの成形性が低下して、カラー割れの発生が増加し、耐食性が低下する。したがって、Al純度は99.04%以上とする。
(不可避的不純物)
前記した必須元素あるいは不純物元素以外の元素は、残部規定に含まれる不可避的不純物である。この不可避的不純物としては、例えば、Ti、B、Zn、Zr、Ce、Ga、V、Niあるいは酸素、水素、水分等がある。これらの元素は、Al純度が、99.04質量%未満とならない範囲で、フィン材やフィンの特性を阻害しない範囲での含有が許容される。
フィン材組織:
本発明フィン材の組織は特に規定しない。ただ、本発明は、前記従来技術で好ましいとされている組織となっているか、そのような組織にすることを排除しない。例えば、組織として亜結晶粒を含む場合は、この亜結晶粒の平均粒径は2.5μm以下と細かいことが好ましい。この亜結晶粒の平均粒径が2.5μmを超えるとフィン材の伸びが低下する可能性がある。また、亜結晶粒を細かくすることで、固溶Mnや固溶Cu等により、成形によって加工硬化するような場合であっても、カラー割れの発生を抑制することができる。ちなみに、この亜結晶粒を含まなくてもよく、含まない場合は、亜結晶粒の平均粒径は0μmとなる。
また、最大長さが3μmを超える粗大な金属間化合物も、従来の通り、例えば2000個/mm以下として規制して、できるだけ含まない方が好ましい。粗大な金属間化合物はカラー割れの起点となり、また、亀裂が伝播する過程でマイクロクラック(微小な亀裂)の発生により亀裂伝播を助長する。
ちなみに、これらフィン材の好ましい組織は、後述する好ましい製造方法をとれば、必然的に、あるいは再現性良く、得ることができる。
フィン材の板厚:
本発明フィン材は、近年の熱交換器の性能向上や軽量化あるいは製造コスト低減の要求を満たす、フィンの薄肉化ために、板厚は0.15mm以下とする。そして、このように薄肉化した冷延板を、後述する質別記号でH24〜H26に調質焼鈍し、特徴的な軽圧下での冷間圧延を施して、高強度な割に伸びを格段に向上させる。すなわち、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPaを有した上で、全伸び量を8〜20%の範囲とする。
アルミニウム合金フィン材の板厚が0.15mmを超えては、近年の熱交換器の性能向上や軽量化あるいは製造コスト低減の要求が満たせない。なお、板厚は薄い方が好ましいが、薄板の製造限界や、フィンとしての必要強度、剛性を考慮すると、0.03mm程度の薄さが下限の限界である。
表面処理皮膜:
本発明のフィン材は、フィンとして、あるいはフィンへの成形加工のために、フィン材表面に表面処理皮膜を設けた態様が好ましい。ここで、フィン材表面とは、フィン材の片面もしくは両面を意味する。勿論、不要であれば、フィン材表面に表面処理皮膜を設けなくても良い。
表面処理皮膜としては、使用環境や用途に応じ、化成皮膜や樹脂皮膜、無機皮膜が挙げられ、これらを組み合わせ(化成皮膜上に樹脂皮膜、無機皮膜を設け)てもよい。また、樹脂皮膜、無機皮膜としては、耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、親水性無機皮膜、潤滑性樹脂皮膜等が挙げられ、これらを適宜組み合わせてもよい。
化成皮膜は、公知あるいは市販の適当な下地処理あるいは前処理でよく、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、クロム酸クロメート処理などの、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン酸処理による下地処理層の形成や、塗布型クロメート処理または塗布型ジルコニウム処理が例示される。
耐食性樹脂皮膜としては、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の樹脂が挙げられ、その膜厚は、0.5〜5μmが好ましい。親水性皮膜としては、水ガラス系の無機物、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩を含有するような樹脂、スルホン酸基またはスルホン酸基誘導体を含有するような樹脂等が挙げられ、その膜厚は、0.05〜10μmが好ましい。潤滑性樹脂皮膜としてはポリエーテルポリオールを含有する樹脂などが挙げられ、その膜厚は、0.1〜10μmが好ましい。
耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、親水性無機皮膜、潤滑性樹脂皮膜のうち2種以上を組み合わせる場合には、耐食性樹脂皮膜の表面側に親水性樹脂皮膜が設けられ、親水性樹脂皮膜、親水性無機皮膜の表面側に潤滑性樹脂皮膜が設けられることが好ましい。
親水性塗膜:
ここで、表面処理皮膜のうちでも親水性塗膜が特に好ましい。また、この親水性塗膜が、フィンへの成形加工前に、素材であるフィン材(アルミニウム薄板)に、あらかじめ塗布および焼付けされて形成されているプレコートが好ましいフィン材表面に親水性塗膜がプレコートされていれば、熱交換器としての耐食性が確保でき、フィン成形時の潤滑剤の役割も果たす。
熱交換器の熱交換率(熱交換効率)の好ましい向上策としては、アルミニウムフィンに親水性を付与する。熱交換器においては、水蒸気が液化して水になる状態での凝縮運転時に、フィン表面に水滴が付着してフィン間にブリッジが形成されたり、使用環境によっては、霜が形成されフィン間に目詰まりを起こしたりして、通風抵抗値が上昇し、熱交換効率が低下する。また、アルミニウムフィンは本来耐食性に優れているが、凝縮水がフィン表面に長期間滞留すると酸素濃淡電池を形成したり、大気中の汚染物質が付着、濃縮されて水和反応が生じたりして腐食が促進される。フィン表面の親水性塗膜は、これらを解消でき、凝縮水を水膜として流下させ、水滴付着や霜形成を抑制することができる。
このような親水性塗膜の形成にあたって、フィンに加工した後にアルミニウムフィンに親水性塗料の塗装、焼付けを行う手もある。しかし、工程の簡略化や塗膜の均一性、そして潤滑作用によるフィンへの成形性向上の点から、フィンへの成形加工前に、素材であるフィン材(アルミニウム薄板)に塗装、焼付けを施すプレコートが好ましい。しかも、調質焼鈍後のアルミニウム薄板に予めプレコートすることによって、親水性塗膜は、H24〜H26の調質焼鈍によって、充分な密着性(剥離強度)でフィン材に焼付け硬化されるようになる。そして、これによって、フィンへの成形加工性(潤滑性)が一段と向上される。
親水性塗膜自体は、前記した公知あるいは市販の適当な下地処理あるいは前処理を施した上で、公知あるいは市販の水溶性樹脂塗料が使用される。膜厚が塗布量換算で50〜1000mg/mの範囲で、このような特性を有する親水性塗膜として、例えば、特開2011−208813号に開示された、水溶性樹脂塗膜として、固形分換算で分子量5000〜50000の水溶性ポリエーテルを75〜99.9質量%、熱分解抑制剤を0.1〜25質量%含み、前記水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテルの1種又は2種以上よりなるものが使用できる。
フィン材の製造方法:
本発明フィン材の好ましい製造方法を以下に説明する。本発明フィン材は、純アルミニウム系のアルミニウム合金冷延板を焼鈍、軽圧下の冷間圧延などの調質したものである。その製造工程としては、冷延板の調質焼鈍後の軽圧下による冷間圧延を除いては、常法により製造可能である。この常法とは、溶解、鋳造工程、均質化熱処理工程、熱間圧延工程、冷間加工工程、調質焼鈍工程を行うものである。但し、前記した好ましい組織や、フィン材あるいはフィンとしての必要特性を再現性良く得るための好ましい条件がある。以下、各工程について説明する。
(溶解鋳造)
溶解鋳造では、前記組成の純アルミニウム系のアルミニウム合金を溶解、鋳造してアルミニウム合金鋳塊を作製する。溶解、鋳造手段は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよく、例えば、真空誘導炉を用いて溶解し、連続鋳造法や半連続鋳造法を用いて鋳造することができる。
(均質化熱処理)
均質化熱処理(均熱)はアルミニウム合金鋳塊を450〜500℃の温度で1時間以上熱処理し、鋳塊組織を均質化する。均熱温度が450℃未満では、鋳塊の組織の均質化が不十分となる。また、熱間加工性の低下を招く。さらに亜結晶粒径が大きくなる。一方、500℃を超えると、金属間化合物が粗大化し、亜結晶粒も粗大化して、伸びが低下する。また、元素固溶量が増加し、加工硬化量が大きくなって、圧延性や成形性が低下する。したがって、好ましい均熱温度は450〜500℃の範囲であり、好ましい均熱温度の保持時間は1時間以上であり、効果が飽和するゆえに、経済的には24時間以内とする。
(熱間圧延)
熱間圧延は、前記した均熱処理後に、この均熱温度以下で圧延を開始し、圧延終了温度が250℃以上300℃未満となる条件で施し、熱延板を得る。圧延終了温度が250℃未満では、材料の圧延性が低下し、圧延自体が困難となったり、板厚制御が難しくなったりして、生産性が低下する。一方、300℃以上では、熱延板で再結晶組織となるために、調質焼鈍後に繊維状の同一結晶方位群が生成して、ピアス&バーリング成形工程時にくびれを生じる。また、亜結晶粒径が大きくなるなど、前記したフィン材組織が得られない。したがって、好ましい熱間圧延終了温度は250℃以上300℃未満の範囲とする。
(冷間圧延)
冷間圧延では、前記熱延板を、加工率96%以上にて、圧延を施し、板厚が0.03〜0.15mmの、所望板厚の冷延板とする。この冷間圧延は、圧延のパスを複数回行なって、前記所望の最終板厚とする。この際に、冷間圧延率が96%未満では、調質焼鈍後に亜結晶粒が粗大化するので、この、冷間圧延率を得るために、最終板厚との関係で、前記熱延板の板厚を選択する。なお、冷間圧延の途中で中間焼鈍を行なった場合、圧延率は中間焼鈍後から最終板厚までの加工率とする。このため、中間焼鈍を行なうと、96%以上の圧延率とすることが困難となることから、中間焼鈍は行なわない方が好ましい。なお、冷間圧延率は高いほど好ましく、上限は特に設けない。
(表面処理)
この冷延板に親水性塗膜などをプレコートして、調質焼鈍前のフィン材表面に塗膜を設ける表面処理を施せば、前記H24〜H26の調質焼鈍が、塗膜の焼付け処理を兼ねることができる。この表面処理工程において、前記下地あるいは前処理としての化成皮膜を形成する場合には、通常の塗布型または反応型の薬剤を用いた冷延板の化成処理工程を用いて行うことができる。また、耐食性樹脂皮膜、親水性樹脂皮膜、潤滑性樹脂皮膜等の樹脂皮膜を形成する場合には、ロールコーターを用いた塗布、乾燥によって行うことができる。これらの方法は、塗膜を成形後のフィンに設ける場合でも同様に用いることができる。
(調質焼鈍工程)
調質焼鈍では、冷延板を160〜260℃の温度で1〜6時間保持して、H24〜H26調質相当の調質(仕上げ焼鈍、最終焼鈍)を施す。調質焼鈍の温度が160℃未満では、調質(熱処理)が不足して、充分な組織の回復効果が得られず、フィン材の規定どおりの機械的性質が得られない。また、調質焼鈍が、冷延板にプレコートされた親水性塗膜などの塗膜焼付け処理を兼ねる場合には、親水性塗膜の塗膜焼付けが不足する。一方、260℃を超えると、焼鈍後に再結晶粒を生じ、これを起点に割れが生じる。また、亜結晶粒の微細化が促進されない。したがって、調質焼鈍の温度は160〜260℃の範囲とする。なお、調質焼鈍は1時間以上行い、6時間を超えると効果が飽和することから、保持時間は1〜6時間とする。
H2の調質とは、H1の冷間圧延などによる加工硬化ままと違い、加工硬化後に160〜2600℃程度で、60分程度の所定時間の焼きなまし(焼鈍)を行い、所定強度まで低下させたもので、親水性塗膜の塗膜焼付け処理を兼ねる。また、加工硬化後により低温で焼鈍(安定化処理ともいう)するH3とも区別される。H24のH2の後の4の数字は、0(完全焼きなまし)=H20から、8(硬質)=H28までの、0から8まで表され、数字8(H28)は、最終の加工硬化の程度がその材料を完全焼鈍後に75%の加工率を与えたときに得られる引張り強さに相当する。この0と8との強さの中間の引張り強さをもつものが数字4(1/2硬質)で、H24と表す。したがって、H24とは加工硬化後に焼きなまし(焼鈍)を行い、H20とH28との中間の引張り強さをもつものである。
軽圧下の冷間圧延:
本発明は、従来、純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材の製造には適用されることの無かった、調質焼鈍後の、スキンパスなどの軽圧下での冷間圧延を採用する。この軽圧下での冷間圧延によって、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さないフィン材とでき、従来のアルミニウム合金フィン材と同じ強度レベルであっても、格段に、しかも再現性良く、フィン材の伸びを向上させることが可能となる。このため、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材の機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPaを有した上で、全伸び量を8〜20%の範囲とすることができる。そして、高強度化され、薄肉化されたアルミニウム合金フィン材を、前記ドロー・アイアニング併用方式を用いてフィンに成形しても、また、フィンのカラー部の高さが1.6mm以上要求されたとしても、成形加工後のフィン表面に有害なしわが発生せず、表面が平滑で外観が良好なフィンを得ることが可能となる。
この軽圧下の圧下率の範囲は0.1〜10%とする。圧下率が0.1%未満では、勿論、組成にもよるが、圧下率が不足して、前記した冷間圧延の効果が発揮されない。すなわち、このような冷間圧延が施されない従来のアルミニウム合金フィン材と同じく、引張変形時に顕著な降伏点現象を示すフィン材となってしまい、このような降伏点現象を示さないフィン材に、再現性良くすることができなくなる。一方、圧下率が10%を超えると、加工硬化を生じて、却って伸びが低下し、成形性が低下する。
なお、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、ごみ等の異物を除去する異物除去や、鋳塊に面削を施す面削や、調質焼鈍や表面処理の後に、フィン材として必要な機械加工等を含めてもよい。
そして、このようにして製造されたフィン材は各成形法に応じて成形加工されるが、本発明のフィン材は、特に、前記したドロー・アイアニング併用方式(コンビネーション成形)に好適である。本発明フィン材は、前記した通り降伏点が現れないので、エリクセン試験での成形時に、エリクセン値が高く、かつ成形後のフィン表面には有害なしわ(SSマーク)が発生しない。また、前記均一な塑性変形が生じる結果、引張り試験での伸び量も、引張強さが120〜155MPaのレベルで、8%以上の高いレベルが得られる。このため、耐カラー割れ性にも優れ、成形加工時のカラー割れの発生を抑制することができる。
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔供試材作製〕
表1に示す組成のアルミニウム合金を各々溶解、鋳造して鋳塊とした。これらの組成は、JIS規格の合金番号1200、1100、1050、1070等のいわゆる純アルミニウム系の組成に相当する。表1中の各元素の含有量の表示において、「−」の表示は、その含有量が、検出限界以下で、これらの元素を含まない0%であることを示している。
これらの鋳塊を面削した後、各例とも共通して、480℃にて4時間の均質化熱処理を施した。この均質化した鋳塊を、各例とも共通して、400℃で熱間圧延を開始し、仕上げ圧延の終了温度が270℃となるように制御して熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延板とした。さらに、各例の冷延加工率が97.0%〜97.3%の範囲となるように冷間圧延して、板厚を80〜90μmの範囲の冷延板とした。
その後、表2の発明例9、10を除く、各例とも共通して、この冷延板に、下地処理としてリン酸クロメート処理した表面に、ポリアルキレングリコール(分子量5000)を90質量%、イオウ系熱分解抑制剤を25質量%含む、親水性の水溶性樹脂塗膜(前記特開2011−208813号に開示)を塗布(プレコート)した。そして、このプレコートフィン材を、表2に示す温度および保持時間の調質焼鈍後に、更には軽圧下の冷間圧延(スキンパス)を施して、フィン材とした。表2の発明例9、10は、親水性の水溶性樹脂塗膜を塗布(プレコート)せずに、表2に示す温度および保持時間の調質焼鈍後に、更には軽圧下の冷間圧延(スキンパス)を施してフィン材とした。
〔フィン材組織〕
これらフィン材の組織を調査した結果、各例とも共通して、亜結晶粒の平均粒径は2.0μm以下であり、最大長さが3μmを超える粗大な金属間化合物も平均で1500個/mm以下であった。
亜結晶粒の平均粒径は、観察倍率1,000倍で試料表面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)組織を、測定間隔0.10μmにてEBSD法により方位解析したデータを基に、TSL社製OIM(Orientation Imaging Microscopy. TM)ソフト上で自動計算することにより算出した。すなわち、フィン材の全面積をSEM/EBSD測定データによりカウントされた結晶粒の数で除し、各結晶粒の面積を円と近似した場合の直径を亜結晶粒の平均粒径と定義した。なお、結晶粒の数は、隣接結晶粒間の方位差が2°以上の結晶粒界に囲まれた結晶粒を一つの結晶粒としてカウントした。
3μmを超える金属間化合物の個数は、観察倍率500倍で、面積1.0mmの試料表面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)組織を画像解析することにより、個々の化合物の最大の長さが3μmを超える金属間化合物の平均個数を測定した。
〔引張試験〕
フィン材から、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を切り出した。この試験片で、JISZ2241による引張試験を実施し、機械的な特性として、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、および全伸び(%)を測定した。なお、本実施例および比較例の評価における引張速度は5mm/minで行った。
〔エリクセン試験〕
フィン材のドロー・アイアニング併用方式の成形加工性の評価として、絞り-張出し複合領域の成形性を評価する、JISZ2247によるエリクセン試験を行って、エリクセン値(mm)を測定した。試験は、フィン材に、直径20mmの鋼球をパンチにより押し込んで、半円形状に変形させた上で、この半円形の変形部分の裏面に達する割れが生じたときのパンチのストローク(mm)をエリクセン値とした。フィン材試験片は、一辺90mmの四角形のブランクを用い、ブランクの両面とも潤滑は施さなかった。ダイスと板押えとの間には10kN(1.02トン)の力を加えた。
〔SSマーク〕
前記フィン材のエリクセン試験において、成形した前記半円形の変形部分表面を観察して、半円形頂部から裾野の周辺部に亘る、白い筋状の模様が、放射状に多く目視観察される場合を、SSマークが発生したと評価した。また、これらの白い筋状の模様が目視観察されない場合を、SSマークの発生無しと評価した。
これらの測定結果および評価結果を表2に示す。
表2の発明例は、表1に示す、本発明の組成範囲を満たすアルミニウム合金を用い、親水性樹脂塗膜がプレコートされた上で、好ましい条件で調質焼鈍および軽圧下の冷間圧延(スキンパス)が施されてフィン材とされている。
この結果、各発明例は、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材であって、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲内である。そして、エリクセン値が高く、SSマークも発生していない。すなわち、高強度化されたフィン材であっても、伸びが高く、成形性に優れていることが分かる。
これに対して、表2の比較例11〜17は、表1に示す、本発明の組成範囲を外れたアルミニウム合金番号7〜13を用いている。このため、親水性樹脂塗膜がプレコートされた上で、好ましい条件で調質焼鈍および軽圧下の冷間圧延(スキンパス)が施されてフィン材とされているものの、機械的特性として、引張強さ、0.2%耐力、全伸び量が規定する範囲を満足していないか、エリクセン値が低い、あるいはSSマークが発生しているなど、成形性が劣る。すなわち、高強度化されたフィン材では、特に伸びが低く、成形性に劣っていることが分かる。
比較例11は、表1に示す、Fe含有量が少なすぎる合金番号7を用いている。
比較例12は、表1に示す、Fe含有量が多すぎる合金番号8を用いている。
比較例13は、表1に示す、Cu含有量が多すぎる合金番号9を用いている。
比較例14は、表1に示す、Si含有量が多すぎる合金番号10を用いている。
比較例15は、表1に示す、Mn含有量が多すぎる合金番号11を用いている。
比較例16は、表1に示す、Mg含有量が多すぎる合金番号12を用いている。
比較例17は、表1に示す、Cr含有量が多すぎる合金番号13を用いている。
一方、表2の比較例18〜22は、表1に示す、本発明の組成範囲内のアルミニウム合金番号1を用いている。しかし、親水性樹脂塗膜がプレコートされていても、調質焼鈍あるいは軽圧下の冷間圧延(スキンパス)の条件が、好ましい条件から外れている。このため、機械的特性として、引張強さ、0.2%耐力、全伸び量が、規定する範囲を満足していないか、エリクセン値が低い、あるいはSSマークが発生しているなど、成形性が劣る。すなわち、高強度化されたフィン材では、やはり伸びが低く、成形性に劣っていることが分かる。
比較例18は調質焼鈍温度が低すぎる。
比較例19は調質焼鈍温度が高すぎる。
比較例20は冷間圧延(スキンパス)の圧下率が低すぎる。
比較例21は従来と同様に冷間圧延(スキンパス)を施していない。
比較例20は冷間圧延(スキンパス)の圧下率が高すぎる。
図1に、前記発明例6(図では実施例6と記載、細線)と、軽圧下を施していない比較例21(太線)との、応力−ひずみ曲線を各々示す。この図1から分かる通り、軽圧下を施していない比較例21には降伏点が現れており、発明例には共通して降伏点が現れていない。これは、前記軽圧下にて、フィン材の材料各部に一様に塑性ひずみが導入され、その後の引張り変形時に均一に塑性変形が生じているためである。
発明例は、前記応力−ひずみ曲線のように、従来とは異なり、降伏点が現れないので、エリクセン試験での成形時に、エリクセン値が高く、かつ成形後のフィン表面には有害なしわ(SSマーク)が発生していない。また、前記した均一な塑性変形が生じる結果、引張り試験での全伸び量も、引張強さが120〜155MPaのレベルでも、8%以上と高いレベルが得られている。
Figure 0006328374
Figure 0006328374
以上の実施例によって、本発明に係るフィン材およびその製造方法の各要件の技術的な意義が裏付けられる。
以上の通り、本発明によれば、高強度化された純アルミニウム系のアルミニウム合金フィン材であって、伸びが高く、引張変形時に顕著な降伏点現象を示さない、成形性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法を提供できる。このため、エアコン等の熱交換器用フィンの素材として好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であり、降伏点現象を示さない、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材であって、機械的特性として、引張強さが120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲とされていることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
  2. 前記フィン材の表面に、親水性塗膜から構成される表面処理皮膜が設けられた請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
  3. 質量%にて、Fe:0.010〜0.9%、Cu:0.001〜0.05%を各々含有するとともに、Si:0.15%以下(0%を含む)、Mn:0.015%以下(0%を含む)、Mg:0.015%以下(0%を含む)、Cr:0.015%以下(0%を含む)に各々抑制し、残部Alと不可避不純物からなり、Al純度が99.04%以上であるアルミニウム合金冷延板を、160〜260℃の温度で調質焼鈍後に圧下率0.1〜10%の範囲で冷間圧延して、降伏点現象を示さない、板厚が0.03〜0.15mmのアルミニウム合金フィン材とするとともに、このフィン材の機械的特性として、引張強さを120〜155MPa、0.2%耐力が100〜150MPa、全伸び量が8〜20%の各範囲としたことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
  4. 前記フィン材の表面に、親水性塗膜から構成される表面処理皮膜を設ける工程を有する請求項3に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
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