JP2005125363A - ブレージングシートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行い、前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で焼鈍を行ない、1800℃/分以下の冷却速度で冷却した後、3〜7%の歪みを導入することを特徴とするブレージングシートの製造方法を採用する。
【選択図】 なし
Description
これらプレート材、ヘッダープレート、タンクなどは、ブレージングシートを張出し加工等することによって形成されている。ブレージングシートは、高い耐食性と強度を有するAl-Mn系合金からなる心材に、Al-Si系合金からなるろう材が貼り合わされて構成される。ろう付けには、非腐食性フラックス等を用いたフラックスろう付けや、真空ろう付けなどの手法が知られている。
しかしながら、熱交換器の性能向上のため、プレート材の成形が従来よりも複雑で加工度が高くなっており、従来のブレージングシートでは成形困難な形状になりつつある。また、成形性を高めるために単に伸び率を重視しただけの材料は、張出し性が十分でない場合があり、複雑な形状のプレート材を得られない状況になっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形性及びろう付け性に優れたブレージングシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のブレージングシートの製造方法は、少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行い、前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で焼鈍を行ない、1800℃/分以下の冷却速度で冷却した後、3〜7%の歪みを導入することを特徴とする。
また、初期均質化処理及び本均質化処理は、アルミニウム合金を熔解、鋳造して心材をシート状に成形した後に行うことが好ましい。
更に、初期焼鈍後の後に最終焼鈍を行うことにより、微細な析出物の析出を更に促進することができる。
更にまた、最終焼鈍の後に歪みを導入することで、ろう浸食を防止してろう付け性を高めることができる。
また、前記心材を形成するアルミニウム合金は更に、0.1〜0.8質量%のSi、0.01〜0.2質量%のZr、0.01〜0.25質量%のTi、0.05〜0.5質量%のMgのうちの少なくとも1種以上を含むものが好ましい。
本発明に係るブレージングシートは、少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてから熱間圧延に続いて冷間圧延され、更に焼鈍処理がなされてなるものである。また本発明のブレージングシートは、心材の一面に前記のろう材が貼り合わされるとともに心材の他面にAl-Zn合金からなる犠牲陽極材が貼り合わされたものでもよい。ブレージングシートを構成する心材はO材調質とされ、ろう付け時の加熱処理によりほとんどの部分で再結晶組織となる。
次に、本発明に係るブレージングシートの心材を構成するアルミニウム合金の組成限定理由について説明する。
マンガン(Mn)は必須の元素であり、Fe、Si、Alとともに金属間化合物を形成し、晶出相及び析出相となってろう付け後の心材の強度を向上させる。また、心材の電位を貴にして犠牲陽極材側のみならずろう材側の耐孔食性を向上させる。Mn含有量が1.0質量%未満では所望の強度並びに耐孔食性が得られず、一方、Mn含有量が1.5質量%を越えると脆くなり圧延などの加工性が劣化する。従ってMnの適正含有量は、1.0〜1.5質量%と設定する。
鉄(Fe)は、Si、Alとともに金属間化合物を形成し、晶出相及び析出相となってろう付け後のブレージングシートの強度を向上させる。また、焼鈍工程及びろう付け工程において再結晶化を促進する。Feの含有量が0.1%未満ではではこれらの効果が乏しく、一方、Fe含有量が0.7%を越えると、腐食速度が過大となり、また焼鈍における結晶粒が小さくなりすぎて、成形時に加工が導入されない部分でろうによる浸食が著しく増大する。従ってFeの適正含有量は、0.1〜0.7%と設定する。
なお、FeとCuはいずれか一方が心材に含まれていればよく、両方含まれても良い。
シリコン(Si)は、Al及びMnとともにAl-Mn-Si化合物を形成し、固溶硬化、析出硬化、分散硬化作用を及ぼし、心材の強度を向上させる。Si含有量が0.1%未満では心材の強度を高めることができない。一方、Si含有量が0.8%を越えると、Mgとともに犠牲陽極材側に拡散し、犠牲陽極材の粒界腐食感受性を高めてしまう。従ってSiの適正含有量は、0.1〜0.8%と設定する。
次に、本発明に係るブレージングシートのろう材を構成するAl-Si合金の組成限定理由について説明する。
シリコン(Si)は必須の元素であり、ろう付け時にろう材を溶融、流動させて接合部を形成する。Si含有量が5%未満だとろう材の流動性が低下し、Si含有量が15%を越えると心材又はひ接合部材への浸食が大きくなる。従ってSiの適正含有量は、5〜15%に設定する。
インジウム(In)及び錫(Sn)は、ろう材の電位を卑にしてろう材の犠牲陽極効果を向上させる。Inの含有量が0.05%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。同様にSnの場合も含有量が0.2%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。従ってInの適正含有量は0.05質量%以下に設定し、Snの適正含有量は0.2%以下に設定する。
マグネシウム(Mg)は、真空ろう付けを行う場合に添加することが好ましく、添加した場合はろう付け性が向上する。Mgの含有量が1.5%を越えるとろう付け性が阻害され、またろう材の加工性を低下させる。従ってMgの適正含有量は1.5質量%以下に設定する。
なお、Zn、In、Sn、Mgは、いずれか一種以上がろう材に含まれていればよい。
次に、本発明に係るブレージングシートの犠牲陽極材を構成するAl-Zn合金の組成限定理由について説明する。
亜鉛(Zn)は必須の元素であり、犠牲陽極材の電位を卑にして犠牲陽極材表面から心材への防食上有効な電位分布を形成させて耐食性を向上させる。Znの含有量が5%を越えると、自己腐食速度が過大となる。従ってZnの適正含有量は5質量%以下に設定する。
シリコン(Si)は、ろう付け後に犠牲陽極材に同時に添加したMgや、心材から拡散したMgなどとMg2Siなどの析出物を形成し、犠牲陽極材の強度を向上させる。Si含有量が1%を越えると、犠牲陽極材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまう。従ってSiの適正含有量は、1%以下に設定する。
ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)は、ろう付け後に微細な金属間化合物を形成して分散硬化作用を及ぼし、犠牲陽極材の強度を向上させる。Zr含有量、Ti含有量がそれぞれが0.2%を越えると加工性が低下する。従ってZr及びTiの適正含有量はそれぞれ、0.2%以下に設定する。
インジウム(In)及び錫(Sn)は、犠牲陽極材の電位を卑にしてろう材の犠牲陽極効果を向上させる。Inの含有量が0.05%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。同様にSnの場合も含有量が0.2%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。従ってInの適正含有量は0.05質量%以下に設定し、Snの適正含有量は0.2%以下に設定する。
なお、Mg、Si、Mn、Zr、Ti、In、Snは、いずれか一種以上が犠牲陽極材に含まれていればよい。
次に、本発明の第1の実施形態のブレージングシートの製造方法について説明する。
本実施形態のブレージングシートの製造方法においては、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得、この心材に対して均質化を施す。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得、このろう材に対して必要に応じて均質化、熱間圧延を施す。次に心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、焼鈍を行い、更に歪みを導入することにより、所望のブレージングシートが得られる。
本発明では、歪み量を3〜7%とすることが好ましい。歪みを導入することで、ろう浸食発生の可能性のある低加工領域にも歪みが付加され、これにより、ろう付け性を高めることができる。また、歪み導入を適度に行うことで、ブレージングシートの過剰な伸びを防止して成形性が向上する。歪み量が3%未満だと、ろう付けの際の加熱処理により心材が再結晶せず、ろう材に含まれるSiが心材の亜結晶粒界に侵入し、ろう浸食が生じてろう付け性が低下する。また、歪み量が7%を越えると、ブレージングシートが歪み導入工程で伸びきってしまい、ブレージングシートからプレート材を成形する際の張出し性が低下する。
次に、本発明の第2の実施形態のブレージングシートの製造方法について説明する。
本実施形態ブレージングシートの製造方法においては、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得、この心材に対して均質化を施す。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得、このろう材に対して必要に応じて均質化、熱間圧延を施す。次に心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、初期焼鈍及び最終焼鈍を行い、更に歪みを導入することにより、所望のブレージングシートが得られる。
また、保持温度を300〜500℃にすることで、再結晶化を完全に行うことができ、伸び率を高めて張出し性が向上する。保持温度が300℃未満だと、再結晶化が不完全となって張出し性が低下する。また、保持温度が500℃を超えると、添加元素が過剰に固溶して深絞り性が低下する。なお、保持温度の保持時間は、数秒以上3時間以下の範囲が好ましい。また、初期焼鈍工程から最終焼鈍工程に移る前に、クラッド材を180℃以下に冷却することが好ましい。これは、初期焼鈍の保持温度が最終焼鈍の保持温度より高いため、冷却せずに最終焼鈍工程に突入すると、結果的に初期焼鈍工程を過剰に行ってしまうことになるためである。
更に冷却速度が0.2〜300℃/分であれば、平均粒径0.01〜0.1μmの微細析出物の析出が促進される。冷却速度が0.2℃/分未満だと析出物が粗大化して深絞り性が低下し、300℃/分を越えると添加元素が過剰に固溶して深絞り性が低下する。更に、保持温度の保持時間は、0時間以上5時間以下の範囲が好ましい。
アルミニウム合金を溶融、鋳造したのち、初期均質化と本均質化を施した後に冷間圧延をすることにより厚さ160mmの心材を調製した。尚、本均質化の回数は1回とした。
また、Al-Si合金を溶融、鋳造した後、昇温速度1℃/分、保持温度500℃、保持時間540分の条件で均質化を行うことにより、厚さ20mmのろう材を調製した。
得られたブレージングシートに対してエリクセン試験を行い、エリクセン値を測定した。エリクセン試験の条件は、試料片の大きさを90mm四方、厚み0.5mmの正方形の板材とし、しわ押さえ力を10kNとし、ポンチの先端形状を外径20mmの粒面とした。
長さ100mm、幅25mmの平面視矩形のブレージングシートを垂直に立てた状態で、600℃の雰囲気中で3分間放置すると、ブレージングシートの下側に向けてろう材の一部が流下し、ブレージングシートの下側にろう材溜まり部が形成される。流動係数Kdは、加熱前のブレージングシート全体の重量をW0とし、ろう材溜まり部を含む加熱後のブレージングシートの下側4分の1の重量をWbとしたとき、
Kd=(4Wb−W0)/(3W0×クラッド率)
で算出した。尚、クラッド率は、板厚に対するろう材の厚みの割合である。
また、実施例1〜5のブレージングシートは、限界絞り比が2.14〜2.16の範囲にあり、比較例1〜11に比べて高めの値を示している。このことから、実施例1〜5は、深絞り性にも優れていることが分かる。
アルミニウム合金を溶融、鋳造したのち、初期均質化と本均質化を施した後に冷間圧延をすることにより厚さ160mmの心材を調製した。尚、本均質化の回数は1回とした。
また、Al-Si合金を溶融、鋳造した後、昇温速度1℃/分、保持温度510℃、保持時間540分の条件で均質化を行うことにより、厚さ20mmのろう材を調製した。
表4に心材及びろう材の合金組成を示し、表5に心材の均質化条件及びクラッド材の焼鈍条件並びに歪み量をそれぞれ示し、表6にはエリクセン値、限界絞り比及び流動係数を示す。
また、実施例6〜10のブレージングシートは、限界絞り比が2.15〜2.16の範囲にあり、比較例1〜18に比べて高めの値を示している。このことから、実施例6〜10は、深絞り性にも優れていることが分かる。
Claims (6)
- 少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、
前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行い、
前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で焼鈍を行ない、1800℃/分以下の冷却速度で冷却した後、3〜7%の歪みを導入することを特徴とするブレージングシートの製造方法。 - 少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、
前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行い、
前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で初期焼鈍を行ない、一旦180℃以下に冷却した後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度180〜280℃なる条件で加熱するとともに、冷却速度0.2〜300℃/分なる条件で冷却する最終焼鈍を行ない、更に3〜7%の歪みを導入することを特徴とするブレージングシートの製造方法。 - 前記心材を形成するアルミニウム合金は、1.0〜1.5質量%のMnを必ず含み、0.05〜0.8質量%のCu、0.1〜0.7質量%のFeのいずれか一方または両方を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレージングシートの製造方法。
- 前記心材を形成するアルミニウム合金は更に、0.1〜0.8質量%のSi、0.01〜0.2質量%のZr、0.01〜0.25質量%のTi、0.05〜0.5質量%のMgのうちの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載のブレージングシートの製造方法。
- 前記ろう材を形成するAl-Si合金は、5〜15質量%のSiを必ず含み、5質量%以下のZn、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSn、1.5質量%以下のMgのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレージングシートの製造方法
- 前記心材の他面にAl-Zn合金からなる犠牲陽極材が貼り合わされ、前記犠牲陽極材を形成するAl-Zn合金は、5質量%以下のZnを必ず含み、2質量%以下のMg、1質量%以下のSi、1.5質量%以下のMn、0.2質量%以下のZr、0.2質量%以下のTi、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSnのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレージングシートの製造方法。
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JP2010209445A (ja) * | 2009-03-12 | 2010-09-24 | Furukawa-Sky Aluminum Corp | 高耐熱性アルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法 |
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