JP2005125364A - ブレージングシートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成形性及びろう付け性に優れたブレージングシートの製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、保持時間1〜5時間なる条件で初期焼鈍を行ない、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で中間焼鈍を行ない、一旦200℃以下に冷却した後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、冷却速度0.2〜300℃/分なる条件で最終焼鈍を行ない、更に0.5〜3%の歪みを導入することを特徴とするブレージングシートの製造方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、積層形エバポレータ用のプレート材や、ラジエータ、ヒータコアなどのヘッダープレート、タンクなど、高い成形性及びろう付性を必要とするブレージングシートの製造方法に関するものである。
積層型エバポレータなどの熱交換器は張出し加工部と絞り加工部を有する一対のプレート材により冷媒流通部となる管路を形成させ、熱交換を促進するフィンとともにろう付けして製造される。また、ラジエータ、ヒータコアなどのヘッダープレート、タンクなども、張出しや絞りなどを含む所定の工程が施された後に、チューブなどと組み合わされてろう付けにより一体化されて製品とされる。
これらプレート材、ヘッダープレート、タンクなどは、ブレージングシートを張出し加工等することによって得られる。ブレージングシートは、高い耐食性と強度を有するAl-Mn系合金からなる心材に、Al-Si系合金からなるろう材が貼り合わされて構成される。ろう付けには、非腐食性フラックス等を用いたフラックスろう付けや、真空ろう付けなどの手法が知られている。
ところで、上記のプレート材やヘッダープレートは優れた加工性が必要であり、材料の伸びが重視される。このため、ブレージングシートに心材には、鋳造後に530℃以上で1時間保持する均質化処理を施した材料で、伸びを重視した調質、例えばO材調質や、H2n調質(最終焼鈍で完全に軟化させずに再結晶化の途中で止めた状態のもの)、あるいはH1n調質(最終焼鈍後に歪みを付加したもの)などが用いられる。更に、ろう付け性を考慮した場合に、O材調質で問題となる、成形時に導入された低加工領域部分のろう浸食を防止するために、最終焼鈍後に1〜3%の歪みを付加する場合もある(特許文献1)。
特公平6−47196号公報
ところで、自動車用の熱交換器は、省エネルギーなどの環境問題や軽量化によるコストダウンに対応するため、プレート材の薄肉化を進めるとともに高強度化を図る必要がある。従来はブレージングシートの心材にAA3003合金などが用いられていたが、最近ではCuやSiを含有するアルミニウム合金が用いられ、薄肉化と高強度化を図れるようになっている。また、心材中に含まれるFeを低減した高耐食材も使用されている。
しかしながら、熱交換器の性能向上のため、プレート材の成形が従来よりも複雑で加工度が高くなっており、従来のブレージングシートでは成形困難な形状になりつつある。
そこで発明者らの鋭意研究の末、圧延後のブレージングシートを軟化させるための焼鈍工程の前後に、比較的低温でかつ冷却速度が遅い熱処理工程を設け、さらに数%程度の歪みを付加することにより、成形性及びろう付け性に優れたブレージングシートが製造できることを見出した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形性及びろう付け性に優れたブレージングシートの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のブレージングシートの製造方法は、少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、保持時間1〜5時間なる条件で初期焼鈍を行ない、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で中間焼鈍を行ない、一旦200℃以下に冷却した後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、冷却速度0.2〜300℃/分なる条件で最終焼鈍を行ない、更に0.5〜3%の歪みを導入することを特徴とする。
尚、前記圧延は、熱間圧延に続いて冷間圧延を行うことが好ましい。
中間焼鈍の前に初期焼鈍を行って心材をある程度軟化させることで、中間焼鈍による再結晶化の際に、結晶粒の微細化と心材の異方性の向上を促進することができ、ブレージングシートの成形性を高めることができる。また、中間焼鈍の後に最終焼鈍を行うことにより、微細な析出物の析出を更に促進することができる。更に、最終焼鈍の後に歪みを導入することで、ろう浸食を防止してろう付け性を高めることができる。
また本発明のブレージングシートの製造方法は、先に記載のブレージングシートの製造方法であり、前記圧延を行う前に、前記心材に対して保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の均質化処理を行うことを特徴とする。
尚、均質化処理は、アルミニウム合金を熔解、鋳造してシート状に成形した後に行うことが好ましい。
心材に対して予め均質化処理を行うことで、中間焼鈍による再結晶化の際に、結晶粒の微細化を促進することができる。
また本発明のブレージングシートの製造方法は、先に記載のブレージングシートの製造方法であり、前記圧延を行う前に、前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行うことを特徴とする。
尚、初期均質化処理及び本均質化処理は、アルミニウム合金を熔解、鋳造してシート状に成形した後に行うことが好ましい。
心材に対して複数回の本均質化処理を行うことで、結晶粒の微細化をより促進することができる。
前記心材を形成するアルミニウム合金は、1.0〜1.5質量%のMnを必ず含み、0.05〜0.8質量%のCu、0.1〜0.7質量%のFeのいずれか一方または両方を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものが好ましい。
また、前記心材を形成するアルミニウム合金は更に、0.1〜0.8質量%のSi、0.01〜0.2質量%のZr、0.01〜0.25質量%のTi、0.05〜0.5質量%のMgのうちの少なくとも1種以上を含むものが好ましい。
心材として上記組成のアルミニウム合金を用いることで、ブレージングシートの強度を高めることができる。
また、前記ろう材を形成するAl-Si合金は、5〜15質量%のSiを必ず含み、5質量%以下のZn、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSn、1.5質量%以下のMgのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものが好ましい。
ろう材として上記組成のAl-Si合金を用いることで、ブレージングシートの耐食性とろう付け性を向上できる。
更に、前記心材の他面にAl-Zn合金からなる犠牲陽極材が貼り合わされ、この犠牲陽極材を形成するAl-Zn合金は、5質量%以下のZnを必ず含み、2質量%以下のMg、1質量%以下のSi、1.5質量%以下のMn、0.2質量%以下のZr、0.2質量%以下のTi、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSnのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであってもよい。
上記組成のAl-Zn合金からなる犠牲陽極材を用いることで、ブレージングシートの硬度とろう付け性を向上できる。
以上説明したように、本発明のブレージングシートの製造方法によれば、成形性及びろう付け性に優れたブレージングシートを製造することができる。
(心材の組成)
先ず、本発明に係るブレージングシートの心材を構成するアルミニウム合金の組成限定理由について説明する。
マンガン(Mn)は必須の元素であり、Fe、Si、Alとともに金属間化合物を形成し、晶出相及び析出相となってろう付け後の心材の強度を向上させる。また、心材の電位を貴にして犠牲陽極材側のみならずろう材側の耐孔食性を向上させる。Mn含有量が1.0質量%未満では所望の強度並びに耐孔食性が得られず、一方、Mn含有量が1.5質量%を越えると脆くなり圧延などの加工性が劣化する。従ってMnの適正含有量は、1.0〜1.5質量%と設定する。
銅(Cu)は、Alに固溶してろう付け後のブレージングシートの強度を向上させる。また、心材の電位を貴にして犠牲陽極材側のみならずろう材側の耐孔食性をも向上させる。Cu含有量が0.05%未満ではこれらの効果が乏しく、またCu含有量が0.8%を越えると心材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまう。従って、Cuの適正な含有量は0.05〜0.8%に設定する。
鉄(Fe)は、Si、Alとともに金属間化合物を形成し、晶出相及び析出相となってろう付け後のブレージングシートの強度を向上させる。また、中間焼鈍工程及びろう付け工程において再結晶化を促進する。Feの含有量が0.1%未満ではではこれらの効果が乏しく、一方、Fe含有量が0.7%を越えると、腐食速度が過大となり、また中間焼鈍により析出する析出物が小さくなりすぎて、成形時に加工が導入されない部分でろうによる浸食が著しく増大する。従ってFeの適正含有量は、0.1〜0.7%と設定する。
なお、FeとCuはいずれか一方が心材に含まれていればよく、両方含まれても良い。
また、心材には、Si、Zr、Ti、Mgのうちの少なくとも1種以上が含まれていても良い。
シリコン(Si)は、Al及びMnとともにAl-Mn-Si化合物を形成し、固溶硬化、析出硬化、分散硬化作用を及ぼし、心材の強度を向上させる。Si含有量が0.1%未満では心材の強度を高めることができない。一方、Si含有量が0.8%を越えると、Mgとともに犠牲陽極材側に拡散し、犠牲陽極材の粒界腐食感受性を高めてしまう。従ってSiの適正含有量は、0.1〜0.8%と設定する。
ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)は、ろう付け後に微細な金属間化合物を形成して分散硬化作用を及ぼし、心材の強度を向上させる。Zr含有量が0.01%未満だと心材の強度を十分に高めることができない。またZr含有量が0.2%を越えると加工性が低下する。Tiの場合は、Ti含有量が0.01%未満だと心材の強度を十分に高めることができない。またTi含有量が0.25%を越えると加工性が低下する。従ってZrの適正含有量は0.01〜0.2%に設定し、Tiの適正含有量は0.01〜0.25%に設定する。
マグネシウム(Mg)は、マトリックスに固溶して心材の強度を向上する。また、Mgはろう材から拡散したSiや心材に同時添加したSiとMgSi化合物を形成して心材の強度を向上させる。Mg含有量が0.05%未満では心材の強度を高めることができない。一方、Mg含有量が0.5%を越えると、Siとともに犠牲陽極材側に拡散して犠牲陽極材の粒界腐食感受性を高めてしまうとともに、ろう付けを阻害する。従ってMgの適正含有量は、0.05〜0.5%と設定する。
(ろう材の組成)
次に、本発明に係るブレージングシートのろう材を構成するAl-Si合金の組成限定理由について説明する。
シリコン(Si)は必須の元素であり、ろう付け時にろう材を溶融、流動させて接合部を形成する。Si含有量が5%未満だとろう材の流動性が低下し、Si含有量が15%を越えると心材又はひ接合部材への浸食が大きくなる。従ってSiの適正含有量は、5〜15%に設定する。
亜鉛(Zn)は、ろう材の電位を卑にしてろう材表面から心材への防食上有効な電位分布を形成させて耐食性を向上させる。Znの含有量が5%を越えると、自己腐食速度が過大となる。従ってZnの適正含有量は5質量%以下に設定する。
インジウム(In)及び錫(Sn)は、ろう材の電位を卑にしてろう材の犠牲陽極効果を向上させる。Inの含有量が0.05%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。同様にSnの場合も含有量が0.2%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。従ってInの適正含有量は0.05質量%以下に設定し、Snの適正含有量は0.2%以下に設定する。
マグネシウム(Mg)は、真空ろう付けを行う場合に添加することが好ましく、添加した場合はろう付け性が向上する。Mgの含有量が1.5%を越えるとろう付け性が阻害され、またろう材の加工性を低下させる。従ってMgの適正含有量は1.5質量%以下に設定する。
なお、Zn、In、Sn、Mgは、いずれか一種以上がろう材に含まれていればよい。
(犠牲陽極材の組成)
次に、本発明に係るブレージングシートの犠牲陽極材を構成するAl-Zn合金の組成限定理由について説明する。
亜鉛(Zn)は必須の元素であり、犠牲陽極材の電位を卑にして犠牲陽極材表面から心材への防食上有効な電位分布を形成させて耐食性を向上させる。Znの含有量が5%を越えると、自己腐食速度が過大となる。従ってZnの適正含有量は5質量%以下に設定する。
マグネシウム(Mg)は、ろう付け後に犠牲陽極材に同時に添加したZn、Siや、心材から拡散したSiなどとMgZnやMgSiなどの析出物を形成し、犠牲陽極材の強度を向上させる。Mg含有量が2%を越えると、脆くなって圧延加工性が低下する。従ってMgの適正含有量は、2%以下に設定する。
シリコン(Si)は、ろう付け後に犠牲陽極材に同時に添加したMgや、心材から拡散したMgなどとMgSiなどの析出物を形成し、犠牲陽極材の強度を向上させる。Si含有量が1%を越えると、犠牲陽極材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまう。従ってSiの適正含有量は、1%以下に設定する。
マンガン(Mn)は、Si、Alとともに金属間化合物を形成し、晶出相及び析出相となってろう付け後の犠牲陽極材の強度を向上させる。また、犠牲陽極材の電位を貴にして耐孔食性を向上させる。Mn含有量が1.5質量%を越えると脆くなり圧延などの加工性が劣化する。従ってMnの適正含有量は、1.5質量%以下に設定する。
ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)は、ろう付け後に微細な金属間化合物を形成して分散硬化作用を及ぼし、犠牲陽極材の強度を向上させる。Zr含有量、Ti含有量がそれぞれが0.2%を越えると加工性が低下する。従ってZr及びTiの適正含有量はそれぞれ、0.2%以下に設定する。
インジウム(In)及び錫(Sn)は、犠牲陽極材の電位を卑にしてろう材の犠牲陽極効果を向上させる。Inの含有量が0.05%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。同様にSnの場合も含有量が0.2%を越えても犠牲陽極効果は向上しない。従ってInの適正含有量は0.05質量%以下に設定し、Snの適正含有量は0.2%以下に設定する。
なお、Mg、Si、Mn、Zr、Ti、In、Snは、いずれか一種以上が犠牲陽極材に含まれていればよい。
(ブレージングシートの製造方法)
次に、本発明の実施形態であるブレージングシートの製造方法について説明する。
本発明のブレージングシートの製造方法においては、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得、この心材に対して必要に応じて均質化工程を施す。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得、このろう材に対して必要に応じて均質化、熱間圧延を施す。次に心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、初期焼鈍、中間焼鈍、最終焼鈍を行い、更に歪みを導入することにより、所望のブレージングシートが得られる。
つぎに、本発明におけるブレージングシートの製造条件について順を追って説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、まず、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得る。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得る。そして、心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、初期焼鈍工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程を行い、更に歪みを導入する。
初期焼鈍工程は、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、保持時間1〜5時間なる条件で、バッチ処理にて行う。初期焼鈍を行うことにより、圧延によって加工硬化されたクラッド材を中間焼鈍工程の前に軟化させることができる。これにより、中間焼鈍工程における結晶粒の微細化と、結晶粒の異方性の向上を促進することができ、成形性が向上する。初期焼鈍が不十分だと、クラッド材を十分に軟化させることができずに成形性が低下する。また、初期焼鈍が過剰になると、再結晶化が過度に促進されて結晶粒の異方性が低下し、成形性が低下する。なお、加熱速度の上限は100℃/分以下が好ましい。
中間焼鈍工程は、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で、連続焼鈍処理(CAL)にて行う。加熱速度を100℃/分以上とすることで、結晶粒を微細化させて歪み導入後の成形性の低下を防止する。即ち、結晶粒を微細化することで、ろう浸食が生じる低加工領域を小さくすることができ、導入する歪み量を小さくすることができ、成形性(特に張出し性)を低下させることがない。加熱速度が100℃/分未満だと、結晶粒が粗大化して成形性が低下する。
また、保持温度を300〜500℃にすることで、再結晶化を完全に行うことができ、心材及びろう材に添加した添加元素の過剰な固溶を抑制して成形性を向上させることができる。保持温度が300℃未満だと、再結晶化が不完全となって成形性が低下する。また、保持温度が500℃を超えると、添加元素が過剰に固溶して成形性が低下する。なお、保持温度の保持時間は、数秒以上3時間以下の範囲が好ましい。また、中間焼鈍工程から最終焼鈍工程に移る前に、クラッド材を200℃以下に冷却することが好ましい。これは、中間焼鈍の保持温度が最終焼鈍の保持温度より高いため、冷却せずに最終焼鈍工程に突入すると、結果的に中間焼鈍工程を過剰に行ってしまうことになるためである。
最終焼鈍工程は、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、冷却速度0.2〜300℃/分なる条件でバッチ焼鈍処理にて行う。最終焼鈍工程によって、平均粒径0.01〜0.1μmの微細析出物の析出を促進する。最終焼鈍が不十分だと、即ち加熱速度が0.2℃/分未満もしくは保持温度が20℃未満だと、析出物が粗大化して成形性が低下する。最終焼鈍が過剰に行われると、即ち保持温度が280℃を超えると、添加元素が過剰に固溶して成形性が低下する。また、冷却速度が0.2〜300℃/分であれば、平均粒径0.01〜0.1μmの微細析出物の析出が促進される。冷却速度が0.2℃/分未満だと析出物が粗大化して成形性が低下し、300℃/分を越えると添加元素が過剰に固溶して成形性が低下する。更に、保持温度の保持時間は、
0時間以上5時間以下の範囲が好ましい。
なお、初期焼鈍の保持温度と最終焼鈍の保持温度の関係は特に制限はなく、両工程の保持温度が同一でも異なっていても良い。
更に、最終焼鈍後に、0.5〜3%の歪みを導入する。歪み導入は、クラッド材の板厚を減少させるものであり、例えば、テンションレベラー、ストレッチャー、スキンパス圧延、ローラーベラー等により行う。歪み導入前のクラッド材の板厚をtとし、歪み導入後の板厚をtとしたとき、歪み量は(t―t)/t×100(%)で与えられる。
本発明では、歪み量を0.5〜3%とすることが好ましい。歪みを導入することで、ろう浸食発生の可能性のある低加工領域にも歪みが付加され、これにより、ろう付け性を高めることができる。また、歪み導入を適度に行うことで、ブレージングシートの過剰な伸びを防止して成形性が向上する。歪み量が0.5%未満だと、ろう付けの際の加熱処理により心材が再結晶化せず、ろう材に含まれるSiが心材の亜結晶粒界に侵入し、ろう浸食が生じてろう付け性が低下する。また、歪み量が3%を越えると、ブレージングシートが歪み導入工程で伸びきってしまい、ブレージングシートからプレート材を成形する際の成形性が低下する。
上記のように、中間焼鈍工程の前後に、中間焼鈍工程よりも加熱速度が小さな初期焼鈍工程及び最終焼鈍工程を設けることで、中間焼鈍工程における結晶粒を微細化させるとともに異方性を大きくし、更に最終焼鈍工程における微細析出物の析出を促進することができる。これにより、ブレージングシートの深絞り性や張出し性などの成形性を高めることができる。更に、歪み導入により、ろう付け性を高めることができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、まず、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得、この心材に対して均質化を施す。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得る。そして、心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、初期焼鈍工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程を行い、更に歪みを導入する。
尚、本実施形態における初期焼鈍工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程及び歪み導入工程は、第1の実施形態における各工程と同一の条件で行うものであるので、ここでは説明を省略し、本実施形態では心材に対する均質化工程についてのみ説明する。
本実施形態における心材に対する均質化工程は、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件で行う。この均質化工程を行うことにより、心材の再結晶化を著しく促進することができ、ブレージングシートの成形性を高めることができる。保持温度が580℃未満あるいは保持時間が3時間未満では、均質化が不十分となり、ブレージングシートの成形性が低下する。また保持温度が620℃を超えると心材が溶融してしまう。更に保持時間が12時間を超えると再結晶化が促進されすぎて異方性が低下し、これにより成形性が低下する。従って均質化の条件を上記の通りとした。
(第3の実施形態)
本実施形態では、まず、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造して心材を得、この心材に対して均質化を施す。また、上記適正範囲の組成を有するAl-Si合金を溶融、鋳造してろう材を得る。そして、心材の一方又は両面にろう材を貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施してクラッド材とする。このクラッド材に対して、初期焼鈍工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程を行い、更に歪みを導入する。
尚、本実施形態における初期焼鈍工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程及び歪み導入工程は、第1の実施形態における各工程と同一の条件で行うものであるので、ここでは説明を省略し、本実施形態では心材に対する均質化工程についてのみ説明する。
本実施形態における心材に対する均質化工程は、保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行う。この均質化工程により、心材の再結晶化を著しく促進することができ、ブレージングシートの成形性を高めることができる。また、本均質化工程を少なくとも1回以上行うことで、第2実施形態の場合よりも再結晶化を進めることができる。本均質化工程は1回以上であれば、何回でも行って良い。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施形態では、心材の一面又は両面にろう材を貼り合わせてブレージングシートとする例を説明したが、本発明はこれに限らず、心材の一面にろう材を貼り合わせ、他面には犠牲陽極材を貼り合わせてブレージングシートとしてもよい。
(実験例1)
アルミニウム合金を溶融、鋳造したのち、熱間圧延及び冷間圧延をすることにより厚さ160mmの心材を調製した。
また、Al-Si合金を溶融、鋳造した後、熱間圧延及び冷間圧延をすることにより、厚さ20mmのろう材を調製した。
次に心材の両面にろう材をそれぞれ貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施して厚さ0.5mmのクラッド材とした。このクラッド材に対して、初期焼鈍、中間焼鈍及び最終焼鈍を順次行い、更に圧延により歪みを導入することにより、実施例1〜5及び比較例1〜9のブレージングシートを得た。尚、初期焼鈍の保持時間はいずれも3時間とし、中間焼鈍の保持時間はいずれも20秒とし、最終焼鈍の保持時間はいずれも4時間とした。これらの保持時間は、昇温時間を含まないものとする。
得られたブレージングシートに対してエリクセン試験を行い、エリクセン値を測定した。エリクセン試験の条件は、試料片の大きさを90mm四方、厚み0.5mmの正方形の板材とし、しわ押さえ力を10kNとし、ポンチの先端形状を外径20mmの球面とした。
また、得られたブレージングシートに対して深絞り試験を行い、限界絞り比を測定した。深絞り試験の条件は、試料片の大きさを90mm四方、厚み0.5mmの正方形の板材とし、しわ押さえ力を3kNとし、ポンチの形状を直径30mm、肩R4.5mmの円筒とし、ダイスの寸法は外径34mm、肩R4.5mmとした。更に、潤滑油として試料片の両面に牛脂を塗布した。
また、得られたブレージングシートに対してドロップ試験を行い、心材に対するろう材の流動係数を測定した。
平面視矩形のブレージングシートを垂直に立てた状態で、600℃の雰囲気中で5分間放置すると、ブレージングシートの下側に向けてろう材の一部が流下し、ブレージングシートの下側にろう材溜まり部が形成される。流動係数Kdは、加熱前のブレージングシート全体の重量をW0とし、ろう材溜まり部を含む加熱後のブレージングシートの下側4分の1の重量をWbとしたとき、
Kd=(4Wb−W0)/(3W0×クラッド率)
で算出した。尚、クラッド率は、板厚に対するろう材の厚みの割合である。
表1に心材及びろう材の合金組成を示し、表2にクラッド材の焼鈍条件並びに歪み量をそれぞれ示し、表3にはエリクセン値、限界絞り比及び流動係数を示す。
Figure 2005125364
Figure 2005125364
Figure 2005125364
表3に示すように、実施例1〜5のブレージングシートは、エリクセン値が7.7〜8.0の範囲にあり、比較例1〜9に比べて高めの値を示している。このことから、実施例1〜5は、張り出し性に優れていることが分かる。
また、実施例1〜5のブレージングシートは、限界絞り比が2.14〜2.16の範囲にあり、比較例1〜9に比べて高めの値を示している。このことから、実施例1〜5は、深絞り性にも優れていることが分かる。
更に実施例1〜5のブレージングシートは、流動係数が0.58〜0.6の範囲にあり、比較例1〜9よりも高めの値を示している。従って実施例1〜5については、ろう材の流動性が高く、ろう付け性に優れることが分かる。
一方、比較例1については初期焼鈍の保持速度が低く、比較例2については初期焼鈍の保持温度が高く、比較例3については中間焼鈍の保持温度が低く、比較例4については中間焼鈍の保持温度が高かったために、エリクセン値、限界絞り比及び流動係数が実施例1〜5よりも低下したものと思われる。
同様に、比較例5については中間焼鈍の昇温速度が低く、比較例6については最終焼鈍の保持温度が低く、比較例7については最終焼鈍の保持温度が高かったために、エリクセン値及び限界絞り比が実施例1〜5よりも低下したものと思われる。
更に、比較例8については歪み量が小さく、比較例9については歪み量が大きかったために、エリクセン値、限界絞り比及び流動係数が実施例1〜5よりも低下したものと思われる。
(実験例2)
熱間圧延及び冷間圧延の前に均質化処理を行ったこと以外は実験例1と同様にして厚さ160mmの心材を調製した。また、実験例1と同様にして厚さ20mmのろう材を調製した。
次に心材の両面にろう材をそれぞれ貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施して厚さ0.5mmのクラッド材とした。このクラッド材に対して、初期焼鈍、中間焼鈍及び最終焼鈍を順次行い、更に圧延により歪みを導入することにより、実施例6〜10及び比較例10〜20のブレージングシートを得た。尚、初期焼鈍の保持時間はいずれも3時間とし、中間焼鈍の保持時間はいずれも20秒とし、最終焼鈍の保持時間はいずれも4時間とした。これらの保持時間は、昇温時間を含まないものとする。
得られたブレージングシートに対して、実験例1と同様に、エリクセン値、限界絞り比及び流動係数を測定した。
表4に心材及びろう材の合金組成を示し、表5に心材の均質化条件を示し、表6にクラッド材の焼鈍条件並びに歪み量をそれぞれ示し、表7にはエリクセン値、限界絞り比及び流動係数を示す。
Figure 2005125364
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表7に示すように、実施例6〜10のブレージングシートは、エリクセン値が8.0〜8.2の範囲にあり、比較例1〜20に比べて高めの値を示しており、更に実施例1〜5と比べても高い値を示している。このことから、心材に均質化処理を行うことによって、張り出し性が更に向上することが分かる。
また、実施例6〜10のブレージングシートは、限界絞り比が2.13〜2.16の範囲にあり、比較例1〜20に比べて高めの値を示しており、実施例1〜5と比べるとほぼ同等の値を示している。このことから、心材に均質化処理を行っても深絞り性が低下しないことが分かる。
更に実施例6〜10のブレージングシートは、流動係数が0.58〜0.62の範囲にあり、比較例1〜20寄りも高い値を示している。従って実施例6〜10については、ろう付け性にも優れることが分かる。
一方、比較例10については均質化の保持速度が低く、比較例11については均質化の保持温度が高かったために、エリクセン値及び限界絞り比が実施例6〜10よりも低下したものと思われる。
また、比較例12については初期焼鈍の保持速度が低く、比較例13については初期焼鈍の保持温度が高く、比較例14については中間焼鈍の保持温度が低く、比較例15については中間焼鈍の保持温度が高かったために、エリクセン値及び限界絞り比が実施例6〜10よりも低下したものと思われる。
同様に、比較例16については中間焼鈍の昇温速度が低く、比較例17については最終焼鈍の保持温度が低く、比較例18については最終焼鈍の保持温度が高かったために、エリクセン値及び限界絞り比が実施例6〜10よりも低下したものと思われる。
更に、比較例19については歪み量が小さく、比較例20については歪み量が大きかったために、エリクセン値及び限界絞り比が実施例6〜10よりも低下したものと思われる。
(実験例3)
熱間圧延及び冷間圧延の前に初期均質化処理及び本均質化処理を行ったこと以外は実験例1と同様にして厚さ160mmの心材を調製した。尚、初期均質化処理終了後に心材を所定の冷却温度まで冷却し、続いて、本均質化処理を行った。また、初期均質化処理の保持時間は6時間とし、本均質化処理の保持時間は8時間とした。
また、実験例1と同様にして厚さ20mmのろう材を調製した。
次に心材の両面にろう材をそれぞれ貼り合わせ、熱間圧延に続いて冷間圧延を施して厚さ0.5mmのクラッド材とした。このクラッド材に対して、初期焼鈍、中間焼鈍及び最終焼鈍を順次行い、更に圧延により歪みを導入することにより、実施例11〜15及び比較例21〜26のブレージングシートを得た。尚、初期焼鈍の保持時間はいずれも3時間とし、中間焼鈍の保持時間はいずれも20秒とし、最終焼鈍の保持時間はいずれも4時間とした。これらの保持時間は、昇温時間を含まないものとする。
得られたブレージングシートに対して、実験例1と同様に、エリクセン値、限界絞り比及び流動係数を測定した。
表8に心材及びろう材の合金組成を示し、表9に心材の均質化条件を示し、表10にクラッド材の焼鈍条件並びに歪み量をそれぞれ示し、表11にはエリクセン値、限界絞り比及び流動係数を示す。
Figure 2005125364
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表11に示すように、実施例11〜15のブレージングシートは、エリクセン値が8.3〜8.5の範囲にあり、比較例1〜26に比べて高めの値を示しており、更に実施例1〜10と比べても高い値を示している。このことから、心材に均質化処理を2回施すことによって、張り出し性が更に向上することが分かる。
また、実施例11〜15のブレージングシートは、限界絞り比が2.14〜2.16の範囲にあり、比較例1〜26に比べて高めの値を示しており、実施例1〜10と比べるとほぼ同等の値を示している。このことから、心材に均質化処理を2回行っても深絞り性が低下しないことが分かる。
更に実施例11〜15のブレージングシートは、流動係数が0.54〜0.58の範囲にあり、比較例1〜26よりも高くなっている。従って実施例11〜15については、ろう付け性にも優れることが分かる。
一方、比較例21については、均質化処理における冷却温度が高く、比較例22については初期均質化の保持速度が低く、比較例23については本均質化の保持温度が低く、比較例24については本均質化の保持温度が高く、比較例25については初期均質化の保持温度が高く、比較例26では初期均質化の保持温度が本均質化の保持温度よりも高くなっている。このため、エリクセン値、限界絞り比及び流動係数が実施例10〜15よりも低下したものと思われる。

Claims (7)

  1. 少なくともMnを含むアルミニウム合金からなる心材の一面又は両面に、Al-Si合金からなるろう材が貼り合わされてなるブレージングシートの製造方法であり、
    前記心材の一面又は両面に前記ろう材を重ねてから圧延を行った後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、保持時間1〜5時間なる条件で初期焼鈍を行ない、加熱速度100℃/分以上、保持温度300〜500℃なる条件で中間焼鈍を行ない、一旦200℃以下に冷却した後、加熱速度0.2℃/分以上、保持温度200〜280℃、冷却速度0.2〜300℃/分なる条件で最終焼鈍を行ない、更に0.5〜3%の歪みを導入することを特徴とするブレージングシートの製造方法。
  2. 前記圧延を行う前に、前記心材に対して保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の均質化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のブレージングシートの製造方法。
  3. 前記圧延を行う前に、前記心材に対して保持温度560〜610℃で3〜10時間保持した後300℃以下まで冷却する条件の初期均質化処理を行い、続いて、保持温度580〜620℃、保持時間3〜12時間なる条件の本均質化処理を少なくとも1回以上行うことを特徴とする請求項1に記載のブレージングシートの製造方法。
  4. 前記心材を形成するアルミニウム合金は、1.0〜1.5質量%のMnを必ず含み、0.05〜0.8質量%のCu、0.1〜0.7質量%のFeのいずれか一方または両方を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のブレージングシートの製造方法。
  5. 前記心材を形成するアルミニウム合金は更に、0.1〜0.8質量%のSi、0.01〜0.2質量%のZr、0.01〜0.25質量%のTi、0.05〜0.5質量%のMgのうちの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載のブレージングシートの製造方法。
  6. 前記ろう材を形成するAl-Si合金は、5〜15質量%のSiを必ず含み、5質量%以下のZn、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSn、1.5質量%以下のMgのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1に記載のブレージングシートの製造方法
  7. 前記心材の他面にAl-Zn合金からなる犠牲陽極材が貼り合わされ、前記犠牲陽極材を形成するAl-Zn合金は、5質量%以下のZnを必ず含み、2質量%以下のMg、1質量%以下のSi、1.5質量%以下のMn、0.2質量%以下のZr、0.2質量%以下のTi、0.05質量%以下のIn、0.2質量%以下のSnのうちの少なくとも1種以上を含み、かつ残部が不可避的不純物を含むAlからなるものであることを特徴とする請求項1に記載のブレージングシートの製造方法。
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JP2013036098A (ja) * 2011-08-09 2013-02-21 Mitsubishi Alum Co Ltd 冷却器用クラッド材および発熱素子用冷却器

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