JP5920109B2 - 歪補償装置、歪補償方法、歪補償プログラム、送信機、及び1bitオーディオ装置 - Google Patents

歪補償装置、歪補償方法、歪補償プログラム、送信機、及び1bitオーディオ装置 Download PDF

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本発明は、歪補償装置、歪補償方法、歪補償プログラム、送信機、及び1bitオーディオ装置に関するものである。
アナログ波形を表現する1bitのパルス列(1 bit plus train)を生成する技術として、例えば、ΔΣ変調(Delta Sigma Modulation)がある(非特許文献1参照)。
ΔΣ変調は、オーバサンプリング変調の一種である。ΔΣ変調器は、ループフィルタと量子化器とを備えて構成される。量子化器は、量子化信号として1bitのパルス列を出力することができる。
ΔΣ変調器から出力された1bitのパルス列は、アナログフィルタを通過するだけで、元のアナログ波形となる。つまり、ΔΣ変調器から出力された1bitのパルス列は、デジタル信号であるが、アナログ波形を表現したものとなっており、デジタル信号としての性質とアナログ信号としての性質を両方有している。
和保 孝雄、安田 明 監訳(原著者 Richard Schreier, Gabor C. Temes)ΔΣ型アナログ/デジタル変換器入門(Understanding Delta-Sigma Data Converters)、丸善株式会社、2007,pp1−17 Joon Hyung Kim, Sung Jun Lee, Jae Ho Jung, and Chul Soon Park, "60% High-Efficiency 3G LTE Power Amplifier with Three-level Delta Sigma Modulation Assisted By Dual Supply Injection", Microwave Symposium Digest (MTT), 2011 IEEE MTT-S International, June 2011 Woo-Young Kim, J. Rode, A. Scuderi, Hyuk-Su Son, Chul Soon Park, and Peter. M. Asbeck, "An Efficient Voltage-Mode Class-D Power Amplifier for Digital Transmitters with Dlta-Sigma Modulation", Microwave Symposium Digest (MTT), 2011 IEEE MTT-S International, June 2011
非特許文献2,3には、ΔΣ変調器から出力された信号の隣接チャネル漏洩電力比(ACLR;Adjacent Channel Leakage power Ratio)が、それぞれ、30[dB]、43[dB]であったことが記載されている。
ここで、アナログ波形の場合、隣接チャネル漏洩電力(Adjacent Channel Leakage Power)を小さくすることが求められることが多い。隣接チャネル漏洩電力とは、使用周波数帯域外に漏れ出した電力をいう。隣接チャネル漏洩電力が小さければ、ACLRが高くなる。
前述のように、ΔΣ変調器から出力された1bitのパルス列は、デジタル信号であるが、アナログ波形を表現したものでもある。
したがって、ΔΣ変調器から出力された1bitのパルス列についても、隣接チャネル漏洩電力が小さいこと、換言すると、ACLRが高いことが望ましい。
しかし、非特許文献2,3には、ACLRが、なぜそのように低い値になるのかという原因については記載されていない。
本発明者は、パルスの波形がACLRに影響しているとの仮説を立て、数値シミュレーションを行った。その結果、その仮説が正しいこと、つまり、パルスの波形がACLRに影響していることを確認した。
本発明は、パルスの波形が、ACLRなどのアナログ信号の信号特性に影響するという新規な知見に基づくものである。本発明は、パルスが表現するアナログ信号の信号特性の改善を目的とする。
これまで、パルス波形と、そのパルス波形が表現するアナログ信号としての信号特性について考慮されたことは無かった。一般的に、デジタル信号は、HighとLowを表現することが重要である。したがって、デジタル信号としてのパルスは、時間軸方向におけるパルス中央付近の大きさが安定していることが重要であり、パルスの立ち上がり及び立ち下がりはさほど問題とならない。
しかし、本発明者は、アナログ信号としての性質も有するパルスの場合、パルスの立ち上がり及び立ち下がりの波形も信号特性に影響を与える重要な要因ではないかと考えた。
そこで、本発明者は、パルス波形と性能劣化との関係性に着目し、その関係性を、シミュレーションによって解明した。その結果、立ち上がり波形と立ち下り波形の非対称性が、アナログ信号としての信号特性劣化の原因であることを発見した。
つまり、入力信号を、アナログ信号を表現する1bitパルス列に変換する際に、前記1bitパルス列が、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して、第2の歪成分を有している。
そして、前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分に基づいて、信号の周波数帯に影響を与えている成分を抑圧するとともに、時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることで、信号特性劣化を防止できることを見出した。
本発明者は、上記知見に基づいて本発明を完成させた。
(1)すなわち、本発明は、1bitパルス列で表現された信号の歪補償を行う歪補償装置であって、前記1bitパルス列で表現された信号は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、前記1bitパルス列で表現された信号に加算することで前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を出力することを特徴としている。
上記のように構成された歪補償装置によれば、パルスの立ち上がり波形と立ち下り波形が時間軸に対して実質的に非対称となっている1bitパルス列で表現された信号に、歪補償信号を加算することができる。これにより、第1の歪成分及び第2の歪成分を、時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることができ、好適に歪補償を行うことができる。この結果、信号特性劣化を抑制することができる。
(2)上記歪補償装置において、前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分が、前記第1の歪成分と前記第2の歪成分との間の時間軸に対する線対称性を低下させる非対称成分を含んでいる場合には、前記非対称成分に基づいて前記歪補償信号を生成する信号生成部を備えていることが好ましい。
この場合、歪補償信号を、非対称成分の抑圧が可能な信号とすることで効果的に歪補償を行うことができる。
(3)前記歪補償信号は、1bitパルス列であることが好ましい。
この場合、歪補償信号をデジタル処理によって生成することができるので、歪補償を精度良く行うことが可能な精度の高い歪補償信号を生成することができ、信号特性劣化を効果的に抑制することができる。
(4)上記歪補償装置は、前記非対称成分をデジタル信号として前記信号生成部に供給する供給部をさらに備え、前記信号生成部が、供給された前記非対称成分にΔΣ変調を行い、1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記歪補償信号として生成する変調器を備えていることが好ましい。
この場合、供給部が非対称成分をデジタル信号として信号生成部に供給するとともに、変調器がデジタル信号の非対称成分に対してΔΣ変調を行って歪補償信号を生成するので、歪補償装置は、1bitパルス列で表現された信号に応じた精度の高い歪補償信号を、デジタル処理によって生成することができる。
(5)また、上記歪補償装置において、前記非対称成分をデジタル信号として示した情報を記憶している記憶部をさらに備えている場合には、前記供給部は、前記記憶部に記憶された前記情報を参照することで、前記信号生成部に供給すべき非対称成分を取得するものとしてもよい。
(6)上記歪補償装置において、前記信号生成部は、前記変調器の前段に設けられ、前記非対称成分を増幅して前記変調器に出力する増幅器と、前記変調器によって1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記増幅器による増幅率に応じた減衰率によって減衰させる減衰器とを備えていてもよい。
この場合、1bitパルス列とする前の非対称成分を増幅器によって増幅し、変調器によって非対称成分を1bitパルス列に変換した後に、当該1bitパルス列で表現された非対称成分を減衰器によって減衰するので、1bitパルス列に変換する際に非対称成分に付加される歪成分を、相対的に抑制することができる。この結果、不要な歪成分が抑制された非対称成分を得ることができ、より精度の高い歪補償信号を生成することができる。
(7)また、前記変調器の前段に設けられ、前記非対称成分の中から、歪補償に必要な帯域幅の成分を前記変調器に出力するフィルタをさらに備えていることが好ましい。
この場合、非対称成分に対して歪補償に必要な帯域幅となるように帯域制限を行うことで、非対称成分と、歪補償の対象となる信号とを同程度の帯域幅の信号とすることができる。これにより、歪補償の対象となる信号とほぼ同一の条件で非対称成分の変調を行うことができ、歪補償を行うために十分な精度を確保することができる。
(8)また、上記歪補償装置において、前記歪補償信号が加算された前記1bitパルス列で表現された信号から非対称成分を抽出する抽出部をさらに備え、前記供給部は、前記抽出部が抽出した非対称成分に基づいて、前記信号生成部に供給すべき前記非対称成分を更新することが好ましい。
この場合、歪補償後の1bitパルス列で表現された信号に含まれている非対称成分を、信号生成部に供給すべき非対称成分に反映させることができるので、現状の1bitパルス列で表現された信号に応じた高い精度の歪補償信号を生成することができる。
(9)非対称成分に基づいた上記歪補償信号は、信号におけるパルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれる非対称成分に加算する必要がある。従って、前記供給部は、前記1bitパルス列で表現された信号のパルス波形の変化に応じて前記非対称成分を供給することが好ましく、この場合、適切なタイミングで歪補償信号を生成し、1bitパルス列で表現された信号に加算することができる。
(10)また、非対称成分に基づいた上記歪補償信号は、前記1bitパルス列で表現された信号におけるパルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれる非対称成分に加算する必要がある。
その一方、歪補償信号を生成するための期間が必要となるため、前記1bitパルス列で表現された信号に対して遅延が生じるおそれがある。
このため、前記1bitパルス列で表現された信号に加算される前記歪補償信号に生じる遅延を解消するための遅延処理部をさらに備えていることが好ましい。
(11)また、前記1bitパルス列で表現された信号は、バンドパス型ΔΣ変調器による出力であることが好ましい。
(12)本発明は、1bitパルス列で表現された信号の歪補償を行う歪補償方法であって、前記1bitパルス列で表現された信号は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として前記1bitパルス列で表現された信号に加算する加算ステップを含むことを特徴としている。
(13)本発明は、1bitパルス列で表現された信号の歪補償を行う歪補償プログラムであって、前記1bitパルス列で表現された信号は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、コンピュータに、前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として前記1bitパルス列で表現された信号に加算する加算ステップを実行させるものである。
(14)(15)また、本発明の送信機は、1bitパルス列で表現された信号を送信する送信部と、上記(1)〜(11)のいずれかの歪補償装置と、を備えていることを特徴としている。
また、本発明の1bitオーディオ装置は、1bitパルス列で表現された音声信号を出力する信号出力部と、上記(1)〜(11)のいずれかの歪補償装置と、を備えていることを特徴としている。
上記構成の送信機、及び1bitオーディオ装置によれば、出力する信号の歪補償を精度よく行うことが可能となり、信号特性劣化を抑制することができる。
1bitパルス列で表現されたRF信号を出力するシステムのブロック図である。 ΔΣ変調器の構成図である。 1次ローパス型ΔΣ変調器である。 1次ローパス型ΔΣ変調器から変換して得られた2次バンドパス型ΔΣ変調器である。 シミュレーション用の装置の構成図である。 対称波形の波形図である。 非対称波形の波形図である。 シミュレーションパラメータの説明図である。 対称波形のパワースペクトラムである。 非対称波形のパワースペクトラムである。 実測結果を示す図である。 ΔΣ変調器に入力される入力信号の電力に対する、出力信号の電力と、隣接チャネル漏洩電力との関係の一例を示したグラフである。 フィードフォーワード型の歪補償を採用した、ACLRに関する検証試験に用いる装置の構成図である。 第1の実施形態に係る歪補償装置を示すブロック図である。 ΔΣ変調器25が出力するアナログ信号を表現している1bitパルス列のパルス波形の一例を示す図であり、(a)は非対称成分を含んだパルス波形のアイパターン、(b)は(a)に示すパルス波形の内の立ち上がり及び立ち下がり波形、(c)は(b)に示すパルス波形から非対称成分を除去したパルス波形、(d)は(b)に示すパルス波形から抽出された非対称成分fAsym(t)を示す図である。 信号生成部による歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号と、この反転信号に付加される非対称成分f´Asym(t)との関係を示した図であり、(a)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号と、ΔΣ変調器25から出力される1bitパルス列で表現されたRF信号とを示している。(b)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号を増幅したときの状態、(c)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号を減衰したときの状態を示している。 図14に示すシステムによって、RF信号を出力したときの時間領域の信号波形を示すグラフであり、(a)は歪補償前のRF信号の信号波形、(b)は歪補償信号の信号波形、(c)は歪補償後のRF信号の信号波形を示している。 図17にて示した歪補償前のRF信号と、歪補償後のRF信号のパワースペクトラムを示す図である。 第2の実施形態に係る歪補償装置を示すブロック図である。 本実施形態の歪補償装置を備えた1bitオーディオ装置を示すブロック図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る歪補償装置は、1bitパルス列で表現された信号に対して歪補償を行う。そこでまず、1bitパルス列で表現された信号を出力するシステム、及び1bitパルス列で表現された信号に含まれる非対称成分について説明する。
[1.システムについて]
[1.1 システムの全体構成について]
図1は、1bitパルス列で表現されたRF信号を出力するシステムのブロック図である。このシステム1は、信号変換装置70を備えたデジタル信号処理部21と、アナログフィルタ32と、を有している。
デジタル信号処理部21は、アナログ信号であるRF(Radio Frequency)信号を表現するデジタル信号(1bitパルス列)を出力する。RF信号は、無線波として空間に放射されるべき信号であり、例えば、移動体通信のためのRF信号、テレビ/ラジオなどの放送サービスのためのRF信号である。
デジタル信号処理部21から出力されたRF信号は、アナログフィルタ(バンドパスフィルタ又はローパスフィルタ)32に与えられる。1bitパルス列が表現するアナログ信号は、RF信号以外のノイズ成分も含んでいる。そのノイズ成分は、アナログフィルタによって除去される。
1bitパルス列は、アナログフィルタ32を通過するだけで、純粋なアナログ信号となる。
このように、デジタル信号処理部21では、デジタル信号処理で1bitパルス列を生成することで、実質的に、RF信号を生成することができる。したがって、RF信号を表現している1bitパルス列を、RF信号を処理する回路(例えば、無線通信機、テレビ受信機などのRF信号受信機)に与えれば、その回路は、1bitパルス列をアナログ信号として処理することができる。なお、この場合、アナログフィルタ32は、RF信号を処理する回路に備わっていればよい。
アナログフィルタ32として、バンドパスフィルタを用いるか、ローパスフィルタを用いるかは、RF信号の周波数によって、適宜決定される。
なお、信号変換装置70が、バンドパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、アナログフィルタ32としてバンドパスフィルタが用いられ、ローパス型ΔΣ変調によって信号変換を行う場合には、アナログフィルタ32としてローパスフィルタが用いられる。
デジタル信号処理部21とアナログフィルタ32との間の信号伝送路4は、回路基板に形成された信号配線であってもよいし、光ファイバー又は電気ケーブルなどの伝送線路であってもよい。また、信号伝送路4は、1bitパルス列を送信するための専用線である必要は無く、インターネットなどのパケット通信を行う通信ネットワークであってもよい。パケット通信を行う通信ネットワークを信号伝送路4として用いる場合、送信側(デジタル信号処理部21側)は、1bitパルス列を、ビット列に変換して、信号伝送路4に送信し、受信側(アナログフィルタ32側)が、受信したビット列を元の1bitパルス列に復元すればよい。
デジタル信号処理部21は、信号伝送路4に対して、1bitパルス列を送信する送信機とみなすことができる。この場合、アナログフィルタ32を有する装置は、RF信号の受信機となる。
また、システム1全体が送信機1であってもよい。例えば、送信機1は、デジタル信号処理部21から出力された信号を増幅器にて増幅し、アンテナから出力するよう構成されていてもよい。この場合、アナログフィルタ32は、デジタル信号処理部21からアンテナの間に設けてもよいし、アンテナがアナログフィルタ32として機能してもよい。
デジタル信号処理部21は、送信信号であるベースバンド信号(IQ信号)を出力するベースバンド部23と、ベースバンド信号を変調する変調器(直交変調器)24aと、処理部24bと、信号変換装置(信号変換部)70と、を備えている。
ベースバンド部23は、IQベースバンド信号(I信号、Q信号それぞれ)をデジタルデータとして出力する。
変調器24aは、IQベースバンド信号を、中間周波数の信号に変換する。変調器24aは、デジタル信号処理で直交変調を行うデジタル直交変調器として構成されている。したがって、直交変調器24aからは、多ビットのデジタルデータ(離散値)によって表現されたデジタル信号形式の信号(デジタルIF信号)が出力される。
なお、変調波を生成する変調器24aとしては、直交変調器に限らず、変調波を生成するための他の方式の変調器であってもよい。
変調器24aから出力されたIF信号は、デジタル信号処理部21における処理部24bに与えられる。処理部24bは、IF信号に対して、DPD(Digital Pre-distortion)、CFR(Crest Factor Reduction)、DUC(Digital Up Conversion)などの様々なデジタル信号処理を施す。処理部24bからは、デジタル信号処理によって生成されたRF信号が出力される。
なお、信号変換部70には、上述の各種のデジタル処理によって生成されたデジタルRF信号が与えられればよく、処理部24bで行われる各種のデジタル処理は、直交変調器24aによる直交変調の前段において行ってもよい。
処理部24bから出力されたデジタルRF信号は、信号変換部70に与えられる。本実施形態の信号変換部70は、バンドパス型のΔΣ変調器(変換器)25を有して構成されている。なお、変換器25は、ローパス型ΔΣ変調器であってもよいし、PWM変調器であってもよい。
ΔΣ変調器25は、入力信号であるRF信号に対して、ΔΣ変調を行って1bitの量子化信号(1bitパルス列)を出力する。ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列は、デジタル信号であるが、アナログRF信号を表現したものとなっている。
ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列は、デジタル信号処理部21の出力信号として、デジタル信号処理部21から信号伝送路4へ出力される。
[1.2 ΔΣ変調について]
図2に示すように、ΔΣ変調器25は、ループフィルタ27と、量子化器28と、を備えている(非特許文献1参照)。
図2に示すΔΣ変調器25は、入力(本実施形態では、RF信号)Uが、ループフィルタ27に与えられる。ループフィルタ27の出力Yは、量子化器(1bit量子化器)28に与えられる。量子化器28の出力(量子化信号)Vは、ループフィルタ27への他の入力として与えられる。
ΔΣ変調器25の特性は、信号伝達関数(STF;Signal Transfer Function)及び雑音伝達関数(NTF;Noise Transfer Function)によって表すことができる。
つまり、ΔΣ変調器25の入力をUとし、ΔΣ変調器25の出力をVとし、量子化雑音をEとしたときに、ΔΣ変調器25の特性を、z領域において表すと、次のとおりである。
したがって、所望のNTFとSTFとが与えられると、ループフィルタ27の伝達関数を得ることができる。
図3は、1次ローパス型ΔΣ変調器125の線形z領域モデルのブロック図を示している。符号127がループフィルタの部分を示し、符号128が量子化器を示している。このΔΣ変調器125への入力をU(z)とし、出力をV(z)とし、量子化雑音をE(z)としたときに、ΔΣ変調器125の特性を、z領域において表すと、次のとおりである。
V(z)=U(z)+(1−z−1)E(z)
つまり、図3に示す1次ローパス型ΔΣ変調器125において、信号伝達関数STF(z)=1であり、雑音伝達関数NTF(z)=1−z−1である。
非特許文献1によれば、ローパス型ΔΣ変調器に対して、以下の変換を行うことで、ローパス型ΔΣ変調器を、バンドパス型ΔΣ変調器に変換できる。
上記変換式に従って、ローパス型ΔΣ変調器125のz領域モデルにおけるzを、z’=−zに置き換えることでバンドパス型ΔΣ変調器が得られる。
上記変換式を用いると、n次のローパス型ΔΣ変調器(nは1以上の整数)を、2n次のバンドパス型Σ変調器に変換できる。
本発明者は、ローパス型ΔΣ変調器から、所望の周波数f(θ=θ)を、中心周波数fとして持つバンドパス型ΔΣ変調器を得るための変換式を見出した。当該変換式は、例えば、次の式(3)に示す通りである。

ここで、
θ=2π×(f/fs) fsはΔΣ変調器のサンプリング周波数。
式(2)の変換式では、特定の周波数θ=π/2に関するものであったが、式(3)の変換式では、任意の周波数(θ)に一般化されている。
図4は、図3に示す1次ローパス型ΔΣ変調器125を、式(3)の変換式で変換して得られた2次バンドパス型ΔΣ変調器25を示している。
なお、図3から図4への変換では、表記の便宜上、式(3)において、a=cosθとおいた下記の変換式を用いた。
なお、バンドパス型ΔΣ変調器への変換は、その他の高次ローパス型ΔΣ変調器(例えば、非特許文献1記載のCIFB構造、CRFF構造、CIFF構造など)に対しても適用できる。
[2.信号特性と1bitパルス列波形との間の関係]
図5は、ΔΣ変調器(変換器)25から出力された1bitパルス列が表現するRF信号の信号特性と、その1ビットパルス列のアナログ波形と、の関係を検討するために用いた装置構成を示している。
図1に示す実際のバンドパス型ΔΣ変調器25は、量子化信号をパルスとして出力するため、フリップフロップなどのハードウェアを、少なくとも一部に有することになる。
ただし、図5のΔΣ変調器としては、ソフトウェアで構成したバンドパス型ΔΣ変調器25aを用いた。ソフトウェアで構成されたバンドパス型ΔΣ変調器25aから出力された量子化信号dは、パルスパターン生成器(PPG;Pulse Pattern Generator)25bに与えられる。パルスパターン生成器25bは、量子化信号dに基づき、理想的な波形(完全な矩形波)に対して任意の形状に歪んだ1bitパルス列Sout(t)を出力することができる。歪んだ1bitパルス列Sout(t)は、実際のバンドパス型ΔΣ変調器25から出力される1bitパルス列に相当する。
また、パルスパターン生成器25bの出力回路は、理想的な波形とみなすことができる波形を生成できるように、十分な高速応答性能を有している。したがって、パルスパターン生成器25bは、理想的な波形の1bitパルス列Sout(t)を出力することもできる。
上記のように、理想的な(パルスの)波形とは、完全な矩形波を構成する際の波形であり、理想的なパルス立ち上がり波形とは、完全な矩形波を構成する際の立ち上がり波形と実質的に同一の波形を指し、理想的なパルス立ち下がり波形とは、完全な矩形波を構成する際の立ち下がり波形と実質的に同一の波形を指す。
パルスパターン生成器25bから出力された信号は、アナログバンドパスフィルタ32を通過し、測定器25cに与えられる。
パルスパターン生成器25bの出力Sout(t)は、下記式(A)のように定義される。
式(A)の第1項であるSidealは、量子化信号d(=±1)を理想的な矩形波で表現したものであり、式(B)のように定義される。量子化信号dは、パルスのHighレベルに対応した値として+1をとり、パルスのLowレベルに対応した値として−1をとる。U(t)は、単位ステップ関数である。
式(A)の第2項は、実際の波形に相当するSout(t)と、理想的な波形Sidealとの差を示している。第2項におけるf(t−kt)は、下記式(C)のように定義される。Signは、符号関数である。

式(C)において、(C−1)は、ある量子化信号の値dと時間的に一つ前の量子化信号の値dk−1との差分を示す値の符号がプラスである場合、すなわち、量子化信号dが、パルスの立ち上がりとなる場合である。
(C−2)は、ある量子化信号の値dと時間的に一つ前の量子化信号の値dk−1との差分を示す値の符号がマイナスである場合、すなわち、量子化信号dが、パルスの立ち下がりとなる場合である。
(C−3)は、ある量子化信号の値dと時間的に一つ前の量子化信号の値dk−1との差分を示す値がゼロである場合、すなわち、パルスの値に変化がない場合である。
rise(t)とffall(t)は、それぞれ、立ち上がり波形と立ち下がり波形である。立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)は、シミュレーションのため、任意の形状に設定される。
さらに、frise(t)とffall(t)は、式(D)に示すように、対称成分fsym(t)と非対称成分fAsym(t)に分解することができる。
非対称成分fAsym(t)は、式(D)より、下記式(E)によって求めることができる。
式(E)は、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とが、下記式F)の関係を有している場合に、非対称成分fAsym(t)が無くなることを示している。
式(F)を満たす場合、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とは、時間軸に対して線対称となる。つまり、式(F)を満たすパルス波形をアイパターンで示した場合、そのアイパターンは時間軸に対して線対称となる。
図6は、式(F)を満たすパルス波形(対称波形)を示している。図6(a)は、対称波形Sout(t)のアイパターンを示している。このアイパターンは、時間軸に対して線対称となっている。なお、時間軸は、パルスのLowレベル(−1)とHighレベル(+1)の中間(0)にあるものとする(以下、同様)。
また、図6(b)は、対称波形Sout(t)の時間軸波形を示し、図6(c)は、対称波形についての理想的な波形SIdeal(t)を示し、図6(d)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示し、図6(e)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。
図6に示すように、対称波形は、理想的な波形SIdeal(t)に対して歪んでおり、歪成分を有する。具体的には、パルスの立ち上がり波形frise(t)に歪成分(第1の歪成分)を有するとともに、パルスの立ち下がり波形ffall(t)に歪成分(第2の歪成分)を有する。
式(F)を満たす場合、歪成分は、対称成分fsym(t)を有しているが(図6(d)参照)、非対称成分fAsym(t)は有していない(図6(e)参照)。
対称波形において、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とを、アイパターンのように、立ち上がり開始時点と立ち下がり開始時点とを時間軸上で一致させて重ねた場合、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とは、遷移時間(立ち上がり時間、立ち下がり時間)が同一であるため、時間軸に対して線対称となる。
換言すると、立ち上がり波形frise(t)における歪成分(第1歪成分)と、立ち下がり波形ffall(t)における歪成分(第2歪成分)とは、時間軸に対して線対称となっており、非対称成分fAsym(t)はゼロとなる。
図7は、式(F)を満たさないパルス波形(非対称波形)を示している。図7(a)は、非対称波形Sout(t)のアイパターンを示している。このアイパターンは、時間軸に対して非対称となっている。具体的には、図7に示す非対称波形は、パルスの立ち上がり時間よりも、パルスの立ち下がり時間の方が長い波形となっている。
図7(b)は、非対称波形Sout(t)の時間軸波形を示し、図6(c)は、対称波形についての理想的な波形SIdeal(t)を示し、図6(d)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示し、図6(e)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。
図7に示すように、非対称波形も、理想的な波形SIdeal(t)に対して歪んでおり、歪成分を有する。具体的には、パルスの立ち上がり波形frise(t)に歪成分(第1の歪成分)を有するとともに、パルスの立ち下がり波形ffall(t)に歪成分(第2の歪成分)を有する。
式(F)を満たさない場合、歪成分は、対称成分fsym(t)とともに、非対称成分fAsym(t)を有する(図7(d)、図7(e)参照)。
[3.非対称成分fAsym(t)の信号特性への影響]
パルスの波形が、アナログ信号としての信号特性(ACLR)へ与える影響を調べるため、シミュレーションを行った。その結果を、以下に示す。
このシミュレーションでは、ΔΣ変調器25として、6次のCRFB構造のバンドパス型ΔΣ変調器を用いた。バンドパス型ΔΣ変調器25に入力される試験信号は、LTE(Long Term Evolution)のRF信号であり、搬送波周波数800MHz、帯域5MHz、4キャリアである。つまり、RF信号としての全帯域は、20MHzである。
シミュレーションでは、パルス波形として、遷移時間(立ち上がり時間α及び立ち下り時間β)がゼロである理想波形”Ideal”、立ち上がり波形及び立ち下がり波形が指数関数である波形”exp(x)”、立ち上がり波形及び立下り波形が双曲線正接関数である波形”tanh(x)”を用いた。
exp(x)及びtanh(x)については、立ち上がり波形と立下り波形とが、時間軸に対して線対称である対称波形(Symm.)と、時間軸に対して非線対称である非対称波形(Asymm.)を用いた。
線対称である波形については、立ち上がり時間α及び立ち下り時間βを同一にし(α=β)、α=β=0.2の場合、及び、α=β=0.4の場合の2つのケースについてシミュレーションを行った。
非線対称である波形については、立ち上がり時間α及び立ち下り時間βを異ならせ(α≠β)、α=0.2,β=0.4の場合、及び、α=0.4,β=0.2の場合の2つのケースについてシミュレーションを行った。
図8において、シミュレーションパラメータ(波形と遷移時間α,β)の定義を、図8に示す。図8において、exp(x)の立ち上がり波形及び立ち下がり波形は、実線で示し、tanh(x)の立ち上がり波形及び立ち下がり波形は、点線で示した。
遷移時間α,βは、単位区間(UI;unit interval)に対する割合で表される。単位区間は、一つの量子化信号に対応する1パルスの区間であり、その長さは、1/fsである。
立ち上がり時間は、パルスのLowレベル(−1)からHighレベル(+1)に至るまでの時間であり、立ち下り時間は、パルスのHighレベル(+1)からLowレベル(−1)に至るまでの時間である。
表1のシミュレーション結果において、ACLR1は、隣接チャネル漏洩電力比を示し、ACLR2は、次隣接チャネル漏洩電力比を示す。ACLR1’,ACLR2’は、それぞれ、非対称波形(Asymm.)から、非対称成分fAsym(t)を除去した場合の隣接チャネル漏洩電力比及び次隣接チャネル漏洩電力比である。
表1のシミュレーション結果によれば、対称波形(Symm.)については、理想波形ではないexp(x),tanh(x)についても、理想波形と同様のACLR1,ACRL2が得られた。また、対称波形(Symm.)において、遷移時間α、βの違いは、ACLR1,ACRL2に影響がなかった。
したがって、遷移時間α,βの長短は、信号特性ACLR1,2)にとって重要ではないと考えられる。すなわち、パルス波形が理想波形から歪んでいても、対称波形である限りは、ACLR1,ACRL2は低下しないため、パルス波形に歪成分が含まれること自体は、信号特性に悪影響を与えないと考えられる。
一方、非対称波形(Asymm.)については、いずれも、対称波形(Symm.)の場合よりも、ACLR1,ACLR2が低下した。しかし、それぞれの非対称波形(Asymm.)から、非対称成分fAsym(t)を除去した場合、ACLR1’,ACLR2’は、対称波形(Symm.)のACLR1,ACLR2と同じになった。
したがって、ACLR1,ACLR2の劣化は、非対称成分fAsym(t)が原因であることがわかる。
図9は、パルス波形”exp(x)”を対称波形(Symm.)とした場合のパワースペクトラムを示し、図10は、パルス波形”exp(x)”を非対称波形(Asymm.)とした場合のパワースペクトラムを示している。
図9(a)は、α=β=0.2の1bitパルス列Sout(t)のパワースペクトルを示し、図9(b)は、α=β=0(理想波形)の1bitパルス列Sout(t)のパワースペクトルを示している。図9によれば、α=β=0.2の場合も、α=β=0(理想波形)の場合も、パワースペクトラムはほぼ同じである。つまり、α=β=0.2にしても、α=β=0(理想波形)からの劣化は認められない。
図10(a)は、α=0.2,β=0.3であるパルス波形”exp(x)”のパワースペクトラムを示し、図10(b)は、α=0.2,β=0.3であるパルス波形”exp(x)”から、非対称成分を除去した場合のパワースペクトラムを示している。
非対称成分を除去する前(図10(a)のパワースペクトラム)では、RF信号の帯域(790MHz〜810MHz)外では、漏洩電力が認められる。一方、非対称成分を除去すると(図10(b)のパワースペクトラム)では、帯域外の漏洩電力が低下しており、図9(b)と同様のパワースペクトルが得られている。
なお、tahn(x)についても、図9及び図10と同様の測定結果が得られた。
また、exp(x)及びtahn(x)以外の他の波形についても確認したところ、同様の結果が得られた。
シミュレーション結果によると、完全な矩形波である理想波形であれば、ACLR1,ACLR2は良好な値が得られる。しかし、より完全な矩形波を生成しようとすると、装置のコスト高を招く。また、矩形波は、多くの高調波成分を有するため好ましくなく、消費電力も増大させる。
したがって、実際の信号変換部70(ΔΣ変調器25)としては、完全な矩形波である理想波形ではなく、歪成分を有するパルス波形を出力するものとして構成できれば、好適である。
この点に関し、シミュレーション結果によれば、パルス波形が、歪成分を有していても、時間軸に対して線対称であれば、つまり、非対称成分がなければ、信号特性の劣化を生じさせない。
したがって、信号変換部70(ΔΣ変調器25)としては、歪成分を有するパルス波形を出力するものとして構成できる。この場合、信号変換部70(ΔΣ変調器25)の出力するパルス波形が、歪成分を有していても、立ち上がり波形及び立ち下がり波形の歪成分が、時間軸に対して実質的に線対称であれば、つまり、実質的に非対称成分がなければ、信号特性の劣化を抑えることができる。
なお、歪成分が、時間軸に対して実質的に線対称であるとは、完全に線対称である必要はない、という意味である。例えば、ACLR(隣接チャネル漏洩電力比)が45[dB]以上となるように歪成分に線対称性があればよい。より好ましくは、46[dB]以上となるように、さらに好ましくは、48[dB]以上となるように、さらに好ましくは、50[dB]以上となるように、さらに好ましくは55[dB]以上となるように、さらに好ましくは60[dB]以上となるように、歪成分に線対称性があればよい。
また、歪成分の対称性は、単位区間(UI)分の個々のパルスに着目して考える必要はなく、多数の単位区間(UI)における歪成分の平均で考えれば足りる。
図11は、図1のΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列を実測した結果を示している。図11(a)は実測したアイパターンであり、図11(b)は実測したパワースペクトラムである。実測したパルス波形(図11(a)のアイパターン)には、非対称成分が含まれており、ACLRは46.1[dB]であった。
図11(a)のアイパターンの軌道を数値化して、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とを抽出した。抽出した立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とから、式(E)に基づいて、非対称成分fAsym(t)を算出した。
実測したパルス波形から、算出した非対称成分fAsym(t)を取り除いて、ACLRを再計算すると、ACLRは、52.3[dB]に改善した。
[4.歪補償装置について]
本発明者は、上述の非対称成分fAsym(t)を抑圧するための方法について研究し検討を重ねた。その中で、上述の非対称成分が、アナログ波形の符号間干渉に起因する相互変調歪ではないという知見を得た。
図12は、ΔΣ変調器25に入力される入力信号の電力に対する、出力信号の電力と、隣接チャネル漏洩電力との関係の一例を示したグラフである。
図において、横軸は、ΔΣ変調器25の入力電力、縦軸は、ΔΣ変調器25からの出力電力を示している。
図に示すように、ΔΣ変調器25から出力される出力信号の電力は、入力信号の電力が増加するに従って増加しているのに対し、隣接チャネル漏洩電力は、入力信号の電力の増加に対してほとんど増加が見られない。
一般に、相互変調歪に起因する漏洩電力は、入力信号の電力との間で相関が見られることが知られている。一方、図12のグラフから、ΔΣ変調器による隣接チャネル漏洩電力には、入力信号の電力との間で相関がほとんど見られない。
このことから、ΔΣ変調により生じる非対称成分fAsym(t)は、相互変調歪ではないことが言える。
相互変調歪では、べき級数によって生じた歪をモデル化し、入力信号にフィードバックすることで歪補償が行われる。
しかし、ΔΣ変調によって生じる非対称成分fAsym(t)は、入力信号の電力との間で相関がなく、フィードバックによる手法では、好適に歪補償を行うことができない。
そこで、本発明者は、ΔΣ変調によって生じる非対称成分fAsym(t)を好適に補償するための手法として、フィードフォーワードによる手法に着目した。
図13は、フィードフォーワード型の歪補償を採用した、上記ACLRに関する検証試験に用いる装置の構成図である。この装置は、フィードフォーワード型の歪補償によって、ΔΣ変調によって生じる非対称成分fAsym(t)を抑圧する基本的構成を示している。
図中、非対称成分供給部40は、ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を相殺し除去するための歪補償用非対称成分fdist(t)をアナログ信号として供給する機能を有している。歪補償用非対称成分fdist(t)には、1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を予め上記計算によって求めた計算結果が用いられる。
非対称成分供給部40から供給される歪補償用非対称成分fdist(t)は、反転増幅器41によって反転される。
反転された歪補償用非対称成分fdist(t)は、加算器43によって、システム1のバンドパスフィルタ32から出力される1bitパルス列で表現されたアナログ信号に加算される。
図13に示す構成の装置を用いて上記ACLRに関する検証試験を行った結果、上述のように、アナログ信号を表現する1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抑圧することができ、ACLRが改善されたアナログRF信号が得られることが確認できた。
上記のように、図13に示す装置は、システム1が出力する信号に、歪補償用非対称成分fdist(t)を加算することで、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とを時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることができる。つまり、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の線対称性を高めることができ、アナログ信号としてのACLRを改善することができる。
このように、1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)は、フィードフォーワード型の歪補償によって好適に除去することができ、信号特性劣化を抑制することができる。
ところで、上述のシステム1を用い、1bitパルス列で表現されたRF信号をアナログ信号として送信する送信機を構成した場合、送信されるRF信号のアナログ特性は、当該RF信号を出力するデジタル信号処理部21に依存する。
仮に、デジタル信号処理部21に、非常に高精度なデジタルチップを用いれば、1bitパルス列に含まれる歪成分の線対称性を維持し、RF信号のアナログ特性を適切に維持することができる可能性はある。
しかし、送信信号としてのアナログ特性の要求レベルは比較的高く、そのような比較的高い要求レベルを満たすことができる高性能なデジタルチップを用いることは、装置の製造コストの高騰を招くため好ましくない。
これに対して、図13に示すように、デジタル信号処理部21が出力する1bitパルス列で表現されたRF信号に歪補償(フィードフォーワード型の歪補償)を行えば、デジタルチップの性能に大きく依存することなく、RF信号のアナログ特性を高めることができる。
一方、送信信号である1bitパルス列で表現されたRF信号に対して歪補償のために加算される歪補償用非対称成分fdist(t)は、アナログ信号でなければならない。
歪補償用非対称成分fdist(t)をアナログ信号で出力しようとすると、歪補償用非対称成分fdist(t)をアナログ信号として送信するための搬送波を発生させるための高周波発振器や搬送波を変調するための変調器等、多くのアナログ機器が必要となり、コストの上昇や、高精度化が困難であるといった問題が生じる。
そこで、本発明者は、1bitパルス列で表現されたアナログ信号について、低コストで精度よく信号特性劣化を抑制することができる歪補償装置を完成させた。
[4.1 歪補償装置の全体構成]
図14は、第1の実施形態に係る歪補償装置を示すブロック図である。図14では、歪補償装置50をシステム1のΔΣ変調器25(図1)の後段に設けた場合を示している。
ΔΣ変調器25は、上述のように、処理部24bから与えられるデジタルのRF信号に対して、ΔΣ変調を行って当該RF信号を表現する1bitパルス列を生成する。ΔΣ変調器25による1bitパルス列は、入力されるRF信号の周波数帯域を含む帯域がノイズシェイピングされている。1bitパルス列が表現するアナログ信号には、入力されるRF信号の他、ノイズシェイピングされている量子化雑音阻止帯域の帯域外に、ノイズシェイプにより移動された量子化雑音が比較的高い電力比で存在している。
ΔΣ変調器25は、量子化雑音阻止帯域が、当該ΔΣ変調器25に入力されるRF信号の周波数帯域(RF信号の信号帯域)を含むように設定されている。
なお、ΔΣ変調器25は、量子化雑音阻止帯域(バンドパス型ΔΣ変調器25の中心周波数)を、入力されるRF信号の周波数帯域に応じて、変更可能に構成することもできる。
ΔΣ変調器25は、上記式(3)に基づいて、zの値が変換可能となっている。つまり、ΔΣ変調器25は、量子化雑音阻止帯域の中心周波数を変更可能となっている。換言すると、量子化雑音阻止帯域が変更可能となっている。
歪補償装置50は、ΔΣ変調器25から出力される、1bitパルス列で表現されたRF信号に加算することで、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とを実質的に線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として出力する機能を有している。
本実施形態の歪補償装置50は、非対称成分供給部51と、信号生成部52とを備えている。
信号生成部52は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の時間軸に対する線対称性を低下させる非対称成分fAsym(t)に基づいて、歪補償信号を生成する機能を有している。
歪補償信号は、ΔΣ変調器25から出力される1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抑圧することが可能な信号である。より具体的に、歪補償信号は、前記1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抽出することで得られる歪補償用非対称成分fdist(t)を反転し、さらにこの反転した歪補償用非対称成分fdist(t)を1bitパルス列に変換したものである。
信号生成部52は、生成した歪補償信号をΔΣ変調器25の後段に設けられた加算器65に出力する。
これによって、歪補償信号は、1bitパルス列で表現されたアナログ信号に加算される。このように、本実施形態の歪補償装置50は、フィードフォーワード型の歪補償を実行するように構成されている。
歪補償信号が加算されたアナログ信号は、RF信号の帯域に含まれる非対称成分fAsym(t)が抑圧され、歪補償がなされる。
この結果、1bitパルス列で表現されたRF信号は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とを時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることができる。
また、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とを時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることで、1bitパルス列が表現するRF信号の周波数帯に影響を与えている成分を抑圧でき、アナログ信号としての信号特性劣化が抑制される。
[4.2 非対称成分供給部について]
非対称成分供給部51は、歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給する。非対称成分供給部51が供給する歪補償用非対称成分fdist(t)は、LUT記憶部53に記憶されているLUT(Lock Up Table)に格納されている。LUTは、歪補償用非対称成分fdist(t)がデジタル信号として示された情報を格納している。
非対称成分供給部51は、必要に応じて、LUT記憶部53のLUTを参照し、信号生成部52に供給すべき歪補償用非対称成分fdist(t)を取得する。
非対称成分供給部51は、取得した歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給する。
LUT記憶部53に記憶された歪補償用非対称成分fdist(t)は、ΔΣ変調器25が出力するアナログ信号を表現した1bitパルス列のアイパターンを測定し、アイパターンから抽出される1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)に基づいて求められる。
非対称成分fAsym(t)は、予め測定したΔΣ変調器25による1bitパルス列のアイパターンに基づいて、上述した式(E)を適用することで抽出することができる。
1bitパルス列から抽出された非対称成分fAsym(t)は、デジタルデータに変換された後、歪補償用非対称成分fdist(t)としてLUT記憶部53のLUTに格納される。
つまり、歪補償用非対称成分fdist(t)は、測定されたアイパターンから抽出された非対称成分fAsym(t)をデジタルデータに変換したものである。
図15は、ΔΣ変調器25が出力するアナログ信号を表現している1bitパルス列のパルス波形の一例を示す図であり、(a)は非対称成分を含んだパルス波形のアイパターン、(b)は(a)に示すパルス波形の内の立ち上がり及び立ち下がり波形を示す図である。
図15(a)及び(b)に示すパルス波形は、パルスの立ち上がり時間よりも立ち下がり時間の方が長い波形となっており、立ち上がり波形と立ち下がり波形とは、時間軸方向に非対称となっている。
図15(c)は、図15(b)に示すパルス波形から非対称成分を除去したパルス波形、図15(d)は、図15(b)に示すパルス波形から抽出された非対称成分fAsym(t)を示す図である。
上記アイパターンに基づいて平均化されたパルスの立ち上がり波形と立ち下がり波形とが取得され、取得された波形に対して、上記式(E)を適用することで、図15(d)に示す非対称成分fAsym(t)を抽出することができる。
図14を参照して、非対称成分供給部51には、ΔΣ変調器25の後段に接続された分岐路54を介して、ΔΣ変調器25が出力する1bitパルス列が与えられる。非対称成分供給部51は、与えられた1bitパルス列に基づいて、当該1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングを取得する。
非対称成分供給部51は、ΔΣ変調器25が出力する1bitパルス列のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて、歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給する。信号生成部52は、歪補償用非対称成分fdist(t)の供給に応じて歪補償信号を生成する。
1bitパルス列で表現されたアナログ信号における非対称成分fAsym(t)は、パルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれている。
上記歪補償信号は、非対称成分fAsym(t)を抑圧するための信号である。よって、精度よく歪補償を行うために、歪補償信号は、1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれる非対称成分に加算する必要がある。
この点、本実施形態では、非対称成分供給部51が、1bitパルス列のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給するので、RF信号におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて、信号生成部52に歪補償信号を生成し出力させることができる。
このように、非対称成分供給部51は、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列のパルス波形の変化に応じて歪補償用非対称成分fdist(t)を供給することにより、適切なタイミングで歪補償信号を生成し、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列に加算することができる。この結果、効果的に歪補償を行うことができる。
なお、図7(d)や、図15(d)に示すように、立ち上がり波形に含まれる非対称成分fAsym(t)と、立ち下がり波形に含まれる非対称成分fAsym(t)とは、ほぼ同一の成分である。このため、非対称成分供給部51は、パルスの立ち上がり及び立ち下がりの両タイミングに対して、同じ歪補償用非対称成分fdist(t)を用いる。
[4.3 信号生成部について]
信号生成部52は、上述したように、1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号を歪補償信号として生成する機能を有している。
図14に示すように、信号生成部52は、非対称成分供給部51からの歪補償用非対称成分fdist(t)が与えられる反転増幅器55と、バンドパスフィルタ56と、増幅器57と、ΔΣ変調器58と、ATT(減衰器)59とを備えている。なお、反転増幅器55、バンドパスフィルタ56、増幅器57、及びΔΣ変調器58は、デジタル信号処理を行うデジタル信号処理部21に設けられている。
反転増幅器55は、デジタル信号として与えられる歪補償用非対称成分fdist(t)を反転させる。反転増幅器55は、歪補償用非対称成分fdist(t)を反転させた反転信号を後段に接続されたバンドパスフィルタ56に与える。
バンドパスフィルタ56は、反転された歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償に必要な帯域幅の成分を通過させ、通過成分を後段の増幅器57に与える。
上記必要な帯域幅とは、ΔΣ変調器25から出力されることで1bitパルス列で表現されるRF信号の帯域幅である。
ΔΣ変調器25から出力された1bitパルス列で表現されたアナログ信号において、歪補償を行う必要があるのは、RF信号の帯域幅のみである。
この点、本実施形態では、バンドパスフィルタ56を設けることで、歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償にとって必要がない帯域の成分を除去でき、後段の処理量を減少させることができる。
増幅器57は、バンドパスフィルタ56を通過した歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号(以下、単に反転信号ともいう)を所定の増幅率Gで増幅する。増幅器57は、増幅した反転信号をΔΣ変調器58に与える。
ΔΣ変調器58は、上記で説明したΔΣ変調器25と同様の構成である。ΔΣ変調器58は、上記で説明したΔΣ変調器25と同様、RF信号の周波数帯域を含むように設定されている。
ΔΣ変調器58は、デジタル信号である反転信号にΔΣ変調を行うことで、アナログの反転信号を1bitパルス列で表現した信号(量子化信号)に変換し、減衰器59に与える。
減衰器59は、1bitパルス列で表現されたアナログの反転信号を減衰する。減衰器59は、増幅器57によって増幅された利得を減衰させうる減衰率Wに設定されている。減衰器59は、減衰後の1bitパルス列で表現された反転信号を加算器65に出力する。
すなわち、信号生成部52は、減衰器59により減衰された後の1bitパルス列で表現されたアナログの反転信号を、歪補償信号として加算器65に出力する。
ここで、信号生成部52は、反転信号をΔΣ変調器58によって1bitパルス列で表現された信号(量子化信号)に変換している。従って、1bitパルス列で表現された反転信号においても、RF信号を表現する1bitパルス列と同様に、ΔΣ変調によって生じる非対称成分f´Asym(t)が雑音成分として含まれる。このため、単にΔΣ変調を行っただけでは、RF信号を表現する1bitパルス列の歪補償を適切に行うことができないおそれがある。
この点、本実施形態では、ΔΣ変調前の反転信号を増幅器57によって増幅し、ΔΣ変調器58によって反転信号を1bitパルス列に変換した後に、当該1bitパルス列で表現された反転信号を減衰器59によって減衰するので、1bitパルス列に変換する際に反転信号に付加される非対称成分f´Asym(t)(歪成分)を、相対的に抑制することができ、より精度の高い歪補償信号を生成することができる。
図16は、信号生成部52による歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号と、この反転信号に付加される非対称成分f´Asym(t)との関係を示した図であり、(a)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号と、ΔΣ変調器25から出力される1bitパルス列で表現されたRF信号とを示している。(b)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号を増幅したときの状態、(c)は、歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号を減衰したときの状態を示している。
図16(a)中、量子化誤差Q1に対する1bitパルス列で表現されたRF信号Sの電力比が、例えば60dBであるとする。また、RF信号Sに対するRF信号Sに含まれる非対称成分fAsym(t)の電力比が−40dBであるとすると、RF信号Sに対する歪補償用非対称成分fdist(t)の反転信号Er1の電力比も、−40dBとなる。歪補償用非対称成分fdist(t)は、非対称成分fAsym(t)に基づいてほぼ同じとなるように求められているからである。
このとき、図16(b)に示すように、反転信号Er1を所定の増幅率Gで増幅し、量子化誤差Q2に対する反転信号Er1の電力比を、例えば60dBとした後、当該反転信号Er1に対してΔΣ変調を行ったとする。
ここで、ΔΣ変調後の(1bitパルス列で表現された)反転信号Er1は、上述したように、ΔΣ変調によって生じる非対称成分f´Asym(t)を含んでいる。
図16(b)に示すように、ΔΣ変調後の反転信号Er1に含まれる非対称成分f´Asym(t)を示す信号Er2の電力は、量子化誤差Q2よりも大きく、反転信号Er1よりも小さく現れる。
図16(b)に示すΣ変調後の反転信号Er1を、所定の減衰率Wで増幅前の電力程度(図16(a))となるように減衰すると、図16(c)のように、増幅前とほぼ同様の反転信号Er1が得られる。また、反転信号Er1、RF信号Sに対する量子化誤差Q1、信号Er2、及び反転信号Er1に対する量子化誤差Q2は、下記式(4)に示す関係となる。
Er1 < Q1 < Er2 < Q2 ・・・(4)
つまり、ΔΣ変調によって反転信号Er1に生じた非対称成分f´Asym(t)(信号Er2)は、減衰器59によって減衰されることで、量子化誤差Q1よりも小さくなるように抑圧することができ、実質的に反転信号Er1から除去することができる。
この結果、信号生成部52は、減衰器59から出力される1bitパルス列で表現された反転信号に含まれる、ΔΣ変調による非対称成分f´Asym(t)等の誤差成分を抑圧でき、精度の高い歪補償信号を得ることができる。
[4.4 歪補償について]
信号生成部52が出力する歪補償信号は加算器65に与えられる。これにより、歪補償信号は、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列で表現されたRF信号に加算される。
上述したように、歪補償信号は、RF信号を表現する1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて加算する必要がある。このため、非対称成分供給部51は、パルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給する。
しかし、歪補償用非対称成分fdist(t)が与えられた信号生成部52は、歪補償信号を生成するために所定期間を必要とする。このため、非対称成分供給部51において歪補償用非対称成分fdist(t)の供給時に、タイミングを調整したとしても、歪補償信号が加算器65に出力されたときには、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列で表現されたRF信号に対しては遅延が生じるおそれがある。
このため、歪補償装置50は、ΔΣ変調器25と、加算器65との間に配置された遅延処理部61をさらに備えている。遅延処理部61は、ΔΣ変調器25から1bitパルス列で表現されたRF信号が与えられると、当該1bitパルス列を、信号生成部52が歪補償信号を生成するために要する期間分だけ遅延させる処理を行う。
これによって、歪補償信号を生成するために要する期間により生じる遅延を解消することができ、精度よく歪補償を行うことができる。
加算器65は、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列で表現されたRF信号と、信号生成部52からの歪補償信号とを加算する。
この結果、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列で表現されたRF信号に含まれる非対称成分fAsym(t)は、歪補償信号によって相殺される。1bitパルス列で表現されたRF信号は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の線対称性が高められ、アナログ信号としての信号特性劣化が抑制される。
ここで、ΔΣ変調器25から出力された歪補償前の1bitパルス列で表現されたアナログ信号を、Dout、増幅器57の増幅率をG、減衰器59の減衰率をWとしたとき、加算器65から出力される歪補償後の1bitパルス列で表現されたアナログ信号D´outは、下記式(5)のように表すことができる。
D´out = Dout + W × fdist(G) ・・・(5)
なお、歪補償用の非対称成分であるfdistは、Gの関数として表している。これは、ΔΣ変調器による変換が、変換前と変換後とで電力が線形とはならず、増幅率Gと減衰率Wとの間も線形とはならないためである。
さらに、Doutは、上述したように、矩形波を定める成分として、下記式(6)に示すように、理想的な波形成分fideal、対称成分fsym、及び非対称成分fAsymを含んでいる。
out = fideal + fsym + fAsym ・・・(6)
よって、式(5)のDoutに、式(6)を代入すると、D´outは、下記式(7)のように表される。
D´out = fideal + fsym + fAsym + W × fdist(G)
= fideal + fsym + (fAsym + W × fdist(G))
・・・(7)
上記式(7)において、非対称成分fAsymを含むかっこ内の部分を可能なかぎり「0」に近づけることで、当該、非対称成分fAsymを相殺し抑圧することができる。
非対称成分fAsymが抑圧された後に残るfidealと、fsymとの和は、理想的な矩形波に歪成分である対称成分を含んでいるが、非対称成分fAsymを含んでいないので、アナログ信号としたときの信号特性の劣化は抑制される。つまり、非対称成分fAsymを含んでいなければ、理想的な矩形波としなくても、信号特性の劣化を抑制することができる。
このため、理想的な矩形波が得られるように歪補償する場合と比較して、より容易に歪補償を行うことができる。
なお、前記かっこ内の部分は、増幅率G及び減衰率Wを調整することにより、可能なかぎり「0」に近づくように調整される。
この場合、減衰器59(図14)を例えば所定の抵抗値を有する抵抗器で構成し、この抵抗器の抵抗値を一定に固定した上で増幅器57の増幅率を調整することができる。
減衰器59はアナログ信号を処理する機器であり、調整に対する精度が低い。よって、抵抗値を一定として減衰率Wを固定し、デジタル信号を処理する増幅器57の増幅率Gを調整することで、前記かっこ内の部分が「0」に近づくようにより詳細に調整を行うことができる。この結果、互いに線形ではない増幅率G及び減衰率Wの最適値を得ることができる。
図17は、図14に示すシステム1によって、RF信号を出力したときの時間領域の信号波形を示すグラフであり、(a)は歪補償前のRF信号の信号波形、(b)は歪補償信号の信号波形、(c)は歪補償後のRF信号の信号波形を示している。なお、横軸は、サンプル数を示している。
図17(b)には、減衰器59による減衰前の歪補償信号の信号波形と、減衰後の歪補償信号の信号波形を示している。
図17(a)に示す信号波形のRF信号に、図17(b)に示す減衰後の歪補償信号の信号波形を加算した結果が、図17(c)に示す信号波形である。
図17(c)をみると、歪補償後のRF信号の信号波形には、歪補償信号の信号波形に変位がみられる部分に対応して、わずかに変化がみられる。しかし、歪補償後のRF信号の信号波形には、顕著な変化はみられない。
図18は、図17にて示した歪補償前のRF信号と、歪補償後のRF信号のパワースペクトラムを示す図である。図中、歪補償前のRF信号は、実線にて示されている。また、歪補償後のRF信号は、星印をプロットすることにより示されている。
このRF信号は、中心周波数300MHz、帯域幅5MHzに設定されている。
図18に示すように、歪補償後のRF信号は、信号部分については、歪補償前のRF信号とよく一致している。
一方、帯域外の隣接チャネルにおいては、歪補償後のRF信号の方が、電力比に大きな低下がみられる。このことから、ACLRが改善され、信号特性の劣化が抑制されていることが確認できる。
このように、時間領域における信号波形では、顕著な変化はみられないが、周波数領域では、ACLRの改善が顕著にみられる。
[5.効果について]
上記のように構成された歪補償装置50は、フィードフォーワード型の歪補償を行うように構成されており、1bitパルス列で表現されたアナログ信号に、歪補償信号を加算する。これにより、立ち上がり波形frise(t)の歪成分、及び立ち下がり波形ffall(t)の歪成分を、時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させることができ、好適に歪補償を行うことができる。
また、本実施形態では、立ち上がり波形frise(t)の歪成分、及び立ち下がり波形ffall(t)の歪成分を、時間軸に対して、実質的に線対称に漸近させて歪補償を行うことで、1bitパルス列が表現するRF信号の周波数帯に影響を与えている成分を抑圧できる。
以上のように、本実施形態によれば、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の線対称性を高めつつ、1bitパルス列が表現するRF信号の周波数帯に影響を与えている成分を抑圧でき、信号特性劣化を抑制することができる。
また、本実施形態の歪補償装置50によれば、1bitパルス列で表現されたアナログ信号に加算することで、立ち上がり波形frise(t)の歪成分、及び立ち下がり波形ffall(t)の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として出力するので、歪補償信号をデジタル処理によって生成することができる。この結果、歪補償を精度良く行うことが可能な精度の高い歪補償信号を生成することができ、信号特性劣化を抑制することができる。
また、本実施形態の歪補償装置50は、ΔΣ変調器25が出力する1bitパルス列で表現されたアナログ信号に含まれる非対称成分fAsym(t)を抽出して得た歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給する非対称成分供給部51を備えており、信号生成部52が、供給された歪補償用非対称成分fdist(t)にΔΣ変調を行い、1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を歪補償信号として生成するΔΣ変調器58を備えている。
これにより、非対称成分供給部51が歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給するとともに、ΔΣ変調器58がデジタル信号の歪補償用非対称成分fdist(t)に対してΔΣ変調を行って歪補償信号を生成するので、歪補償装置50は、デジタル処理によって、1bitパルス列で表現されたアナログ信号に応じた精度の高い歪補償信号を生成することができる。
また、上記構成では、ΔΣ変調器58によって、1bitパルス列で表現されたアナログの歪補償用非対称成分fdist(t)を歪補償信号として生成するので、例えば、高周波発振器や搬送波を変調するための変調器等のアナログ機器を用いて歪補償信号を生成する場合と比較して、簡易な構成でアナログの歪補償信号を得ることができる。
この結果、低コストで精度よく信号特性劣化を抑制することができる歪補償装置を得ることができる。
また、本実施形態では、ΔΣ変調器58の前段に設けられ、歪補償用非対称成分fdist(t)の中から、歪補償に必要な帯域幅の成分をΔΣ変調器58に出力するバンドパスフィルタ56を備えているので、歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償にとって必要がない帯域の成分を除去でき、後段の処理量を減少させることができる。
仮に、歪補償にとって必要がない帯域の成分を多く含んだまま、歪補償用非対称成分fdist(t)に対してΔΣ変調を行ったとすると、必要がない帯域成分が、必要な帯域よりも先に電力レベルが飽和してしまい、適切な歪補償信号が得られないおそれがある。
その理由は、歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償にとって必要がない帯域の成分は、ΔΣ変調器25からの1bitパルス列で表現されたアナログ信号の量子化雑音阻止帯域の量子化雑音成分であるため、歪補償にとって必要な帯域の電力よりも、必要がない帯域の電力の方が相対的に大きい場合があるからである。
この点、本実施形態では、歪補償にとって必要がない帯域の成分を除去するので、歪補償用非対称成分fdist(t)がΔΣ変調器58により変換されたときに、歪補償にとって不必要な帯域の成分が、必要な帯域幅の成分に対して与える影響を抑制することができる。
また、歪補償用非対称成分fdist(t)に対して歪補償に必要な帯域幅となるように帯域制限を行うことで、歪補償用非対称成分fdist(t)と、歪補償の対象となる1bitパルス列で表現されたRF信号とを同程度の帯域幅の信号とすることができる。これにより、ΔΣ変調のオーバサンプリング率について、歪補償の対象となる信号とほぼ同一の条件で非対称成分の変調を行うことができ、歪補償を行うために十分な精度を確保することができる。
なお、本実施形態では、増幅器57の前段にバンドパスフィルタ56を設けたが、バンドパスフィルタ56は、ΔΣ変調器58よりも前段にあれば、歪補償にとって必要がない帯域の成分を除去することができる。よって、バンドパスフィルタ56は、増幅器57と、ΔΣ変調器58との間に設けてもよい。
[6.他の実施形態について]
図19は、第2の実施形態に係る歪補償装置を示すブロック図である。本実施形態は、加算器65の後段に接続されたオシロスコープ部66と、このオシロスコープ部66に接続された抽出部67とを備えている点において、第1の実施形態と相違している。
オシロスコープ部66は、デジタル信号処理部21に設けられており、例えば、FPGA等のチップに実装されたBuilt-In Oscilloscopeと呼ばれる機能によって実現されている。Built-In Oscilloscopeと呼ばれる機能によれば、当該機能を有するチップからデジタル信号が出力される際にそのデジタル信号をモニタすることができる。
オシロスコープ部66は、上記機能によって、システム1による歪補償後の1bitパルス列を取得し、取得した歪補償後の1bitパルス列のアイパターンを測定する。
オシロスコープ部66は、測定結果である歪補償後の1bitパルス列で表現されたアナログ信号のアイパターンを抽出部67に与える。
抽出部67は、オシロスコープ部66から与えられたアイパターンに基づいて、上記式(E)を適用することにより、歪補償後の1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抽出する機能を有している。
抽出部67は、抽出した非対称成分fAsym(t)を非対称成分供給部51に与える。
非対称成分供給部51は、抽出部67から与えられた非対称成分fAsym(t)に基づいて、LUT記憶部53のLUTに格納された歪補償用非対称成分fdist(t)を更新する機能を有している。
非対称成分供給部51は、抽出部67から与えられた非対称成分fAsym(t)と、歪補償用非対称成分fdist(t)とを加算することで、歪補償用非対称成分fdist(t)を更新してもよいし、抽出部67から与えられた非対称成分fAsym(t)と、歪補償用非対称成分fdist(t)との差分に基づいて、歪補償用非対称成分fdist(t)を更新してもよい。
この場合、歪補償後の1bitパルス列に含まれている非対称成分fAsym(t)を、LUTに格納された歪補償用非対称成分fdist(t)に反映させることができるとともに、現状の1bitパルス列の非対称成分fAsym(t)を、歪補償用非対称成分fdist(t)に反映させることができる。これにより、より高い精度の歪補償信号を生成することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態では、1bitパルス列により表現されたアナログ信号(RF信号)を出力するシステムに、歪補償装置を用いた場合を例示したが、1bitパルス列で表現されたアナログ信号を出力する機器であれば、歪補償装置を好適に用いることができる。
図20は、本実施形態の歪補償装置を備えた1bitオーディオ装置を示すブロック図である。図中、1bitオーディオ装置80には、音声を出力するための出力装置として、スピーカ90と、レコーダ91とが接続されている。
1bitオーディオ装置80は、デジタル音声信号供給部81と、ΔΣ変調器82と、本実施形態の歪補償装置50と、切替部83とを備えており、1bitパルス列で表現されたアナログの音声信号を出力装置に対して出力する機能を有している。
切替部83は、1bitオーディオ装置80が出力する1bitパルス列で表現されたアナログの音声信号を、スピーカ90、又はレコーダ91のいずれか一方、又は両方に出力するための切替機能を有している。
デジタル音声信号供給部81は、音声等のアナログ信号をパルス符号変調することによりデジタル信号に変換されたPCM信号を出力する。デジタル音声信号供給部81は、PCM信号を後段のΔΣ変調器82に与える。
ΔΣ変調器82は、PCM信号を1bitパルス列に変換し、後段の歪補償装置50に与える。
歪補償装置50は、上述したように、PCM信号がΔΣ変調器82によって1bitパルス列へ変換されることによって当該1bitパルス列に付加される非対称成分fAsym(t)を抑圧する機能を有している。
このため、歪補償装置50は、1bitパルス列で表現されたアナログ音声信号におけるノイズを抑制することができるとともに、アナログ信号としての信号特性の劣化を抑制することができる。
この結果、1bitオーディオ装置80は、1bitパルス列で表現されたアナログ音声信号を高い品質で出力することができる。
このように、上記実施形態に係る歪補償装置によれば、1bitパルス列で表現されたアナログ信号を出力する機器に好適に用いることができる。
[7.付記]
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 システム
25 ΔΣ変調器
50 歪補償装置
51 非対称成分供給部(供給部)
52 信号生成部
53 LUT記憶部(記憶部)
56 バンドパスフィルタ
57 増幅器
58 ΔΣ変調器
59 減衰器
61 遅延処理部
67 抽出部

Claims (15)

  1. 1bitパルス列で表現されたRF信号の歪補償を行う歪補償装置であって、
    前記RF信号を表現する前記1bitパルス列は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、
    記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を前記1bitパルス列で表現された前記RF信号に加算し、前記1bitパルス列で表現された前記RF信号の隣接漏洩電力を低下させる加算器を備えている歪補償装置。
  2. 前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分は、前記第1の歪成分と前記第2の歪成分との間の時間軸に対する線対称性を低下させる非対称成分を含んでおり、
    前記非対称成分に基づいて前記歪補償信号を生成する信号生成部を備えている請求項1に記載の歪補償装置。
  3. 前記歪補償信号は、1bitパルス列である請求項1又は2に記載の歪補償装置。
  4. 前記非対称成分をデジタル信号として前記信号生成部に供給する供給部をさらに備えており、
    前記信号生成部は、供給された前記非対称成分にΔΣ変調を行い、1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記歪補償信号として生成する変調器を備えている請求項3に記載の歪補償装置。
  5. 前記非対称成分をデジタル信号として示した情報を記憶している記憶部をさらに備え、
    前記供給部は、前記記憶部に記憶された前記情報を参照することで、前記信号生成部に供給すべき非対称成分を取得する請求項4に記載の歪補償装置。
  6. 前記信号生成部は、
    前記変調器の前段に設けられ、前記非対称成分を増幅して前記変調器に出力する増幅器と、
    前記変調器によって1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記増幅器による増幅率に応じた減衰率によって減衰させる減衰器と、を備えている請求項4又は5に記載の歪補償装置。
  7. 前記変調器の前段に設けられ、前記非対称成分の中から、歪補償に必要な帯域幅の成分を前記変調器に出力するフィルタをさらに備えている請求項4〜6のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  8. 前記1bitパルス列で表現された前記RF信号に加算される前記歪補償信号に生じる遅延を解消するための遅延処理部をさらに備えている請求項1〜のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  9. 前記1bitパルス列で表現された前記RF信号は、バンドパス型ΔΣ変調器による出力である請求項1〜のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  10. 1bitパルス列で表現されたRF信号の歪補償を行う歪補償方法であって、
    前記RF信号を表現する前記1bitパルス列は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、
    前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として前記1bitパルス列で表現された前記RF信号に加算し、前記1bitパルス列で表現された前記RF信号の隣接漏洩電力を低下させる加算ステップを含むことを特徴とする歪補償方法。
  11. 1bitパルス列で表現されたRF信号の歪補償を行う歪補償プログラムであって、
    前記RF信号を表現する前記1bitパルス列は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、
    コンピュータに、前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として前記1bitパルス列で表現された前記RF信号に加算し、前記1bitパルス列で表現された前記RF信号の隣接漏洩電力を低下させる加算ステップを実行させる歪補償プログラム。
  12. 1bitパルス列で表現されたRF信号を送信する送信部と、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の歪補償装置と、を備えていることを特徴とする送信機。
  13. 1bitパルス列で表現された信号の歪補償を行う歪補償装置であって、
    前記1bitパルス列で表現された信号は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、
    前記1bitパルス列で表現された信号に加算することで前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を出力し、
    前記歪補償信号は、1bitパルス列であり、
    前記非対称成分をデジタル信号として前記信号生成部に供給する供給部をさらに備えており、
    前記信号生成部は、供給された前記非対称成分にΔΣ変調を行い、1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記歪補償信号として生成する変調器を備え、
    前記歪補償信号が加算された前記1bitパルス列で表現された信号から非対称成分を抽出する抽出部をさらに備え、
    前記供給部は、前記抽出部が抽出した非対称成分に基づいて、前記信号生成部に供給すべき前記非対称成分を更新する歪補償装置。
  14. 1bitパルス列で表現された信号の歪補償を行う歪補償装置であって、
    前記1bitパルス列で表現された信号は、パルスの立ち上がり波形が理想的なパルス立ち上がり波形に対して第1の歪成分を有し、かつ、パルスの立ち下がり波形が理想的なパルス立ち下がり波形に対して第2の歪成分を有し、
    前記1bitパルス列で表現された信号に加算することで前記第1の歪成分及び前記第2の歪成分を時間軸に対して実質的な線対称としうる歪補償信号を出力し、
    前記歪補償信号は、1bitパルス列であり、
    前記非対称成分をデジタル信号として前記信号生成部に供給する供給部をさらに備えており、
    前記信号生成部は、供給された前記非対称成分にΔΣ変調を行い、1bitパルス列で表現された前記非対称成分を前記歪補償信号として生成する変調器を備え、
    前記供給部は、前記1bitパルス列で表現された信号のパルス波形の変化に応じて前記非対称成分を供給する歪補償装置。
  15. 1bitパルス列で表現された音声信号を出力する信号出力部と、
    請求項13又は14に記載の歪補償装置と、を備えていることを特徴とする1bitオーディオ装置。
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