JP2014220654A - 歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置 - Google Patents

歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低コスト化を図ることができる歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置を提供する。【解決手段】歪補償装置20は、増幅器3によって増幅された対象信号に生じる歪成分を相殺するためのデジタルの歪相殺信号を生成する演算部22と、前記歪相殺信号に対してΔΣ変調を行うΔΣ変調器25と、ΔΣ変調された前記歪相殺信号を前記対象信号に加算するための加算器21と、を備えている。加算器21は、増幅器3に入力される対象信号をデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換器4の後段に設けられている。【選択図】図1

Description

本発明は、歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置に関するものである。
高出力増幅器(High Power Amplifier、以下、「HPA」という)などの増幅器を用いて、無線波等の電力を増幅する場合、増幅器の非線形な歪特性のため、所望の入出力特性を得ることができないことがある。
特に、増幅したい無線波の周波数が高い場合には、非線形歪特性を補正して増幅器を線形化するために、デジタル信号処理を用いて増幅器の非線形歪特性を打ち消す前置歪補償(Predistortion)を施すことがある(例えば、特許文献1参照)。
図14は、HPAに対して前置歪補償を実施するための一般的な歪補償装置を示すブロック図である。歪補償装置(DPD:Digital Predistorter)100は、デジタル処理によって前置歪補償を行う装置であり、HPA101の出力信号をフィードバック信号として取得し、出力信号と入力信号とを比較することで、HPA101による歪が補償されたデジタル信号である歪補償信号を出力する。
歪補償信号は、デジタル/アナログ変換器(DAC:Digital/Analog Converter)102によりアナログ信号に変換され、HPA101に与えられる。HPA101は、この歪補償信号を増幅して出力信号として出力する。
また、DPD100がフィードバック信号として取得する出力信号は、HPA101の出力端に設けられたカプラ103を介して取得する。
カプラ103を介して取得される出力信号はアナログ信号であるため、アナログ−デジタル変換器(ADC:Analog /Digital Converter)104によりデジタル信号に変換され、DPD100に与えられる。
特開2010−114759号公報
上記従来の歪補償装置は、入力信号と出力信号との比較により得られる歪成分に基づいて、当該歪成分を相殺するための歪相殺信号を生成し、入力信号に加算することで歪補償信号を生成している。
つまり、DAC102がデジタル−アナログ変換する歪補償信号には、入力信号の他、歪成分を相殺するための歪相殺信号が加算されている。従って、DAC102は、入力信号の帯域以外に当該入力信号の帯域外に存在する歪相殺信号についてもデジタル−アナログ変換する必要がある。
よって、DAC102は、アナログ変換可能な帯域幅が、歪補償の対象となる歪成分の信号帯域幅を含むことが可能な帯域幅となるように設定する必要がある。
また、DAC102は、入力信号を適切に再現するために分解能を比較的多bitに設定する必要もある。
このため、上記従来の歪補償装置を用いた場合、歪補償信号のデジタル−アナログ変換を行うDACとして、アナログ変換可能な帯域幅が比較的広帯域でかつビット数が他ビットである変換器を用いる必要があり、装置全体としてコスト高を招くという問題を有していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低コスト化を図ることができる歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置を提供することを目的とする。
(1)本発明は、対象信号を増幅する増幅器の歪特性を補償する歪補償装置であって、前記増幅器によって増幅された前記対象信号に生じる歪成分を相殺するためのデジタルの歪相殺信号を生成する生成部と、前記歪相殺信号に対してΔΣ変調を行うΔΣ変調器と、ΔΣ変調された前記歪相殺信号を前記対象信号に加算するための加算器と、を備え、前記加算器は、前記増幅器に入力される対象信号をデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換器の後段に設けられていることを特徴としている。
上記構成の歪補償装置によれば、歪相殺信号を、デジタル/アナログ変換後の対象信号に加算するので、デジタル/アナログ変換器に与えられる信号には、歪相殺信号が加算されていない。よって、デジタル/アナログ変換器は、対象信号の帯域外に広がる歪成分までもデジタル/アナログ変換する必要がない。このため、デジタル/アナログ変換器のデジタル/アナログ変換可能な帯域幅を、歪成分の帯域幅を考慮することなく狭帯域とすることができる。この結果、デジタル/アナログ変換可能な帯域幅が比較的狭いデジタル/アナログ変換器を用いることが可能となり、上記従来例よりもより低コスト化が可能となる。
また、本発明によれば、歪相殺信号をデジタル/アナログ変換器の後段の任意の場所に加算することができるため、回路設計の自由度が高められる。
(2)上述の理由から、前記デジタル/アナログ変換器におけるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅は、前記増幅器によって増幅された前記対象信号をアナログ/デジタル変換して前記生成部に与えるアナログ/デジタル変換器におけるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅よりも狭く設定されていることが好ましい。
(3)さらに、前記デジタル/アナログ変換器によるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅は、前記対象信号の周波数帯域幅とほぼ一致していることがより好ましい。
(4)上記歪補償装置において、前記加算器は、デジタル/アナログ変換された前記対象信号を送信周波数に変換する周波数変換部の後段に設けられていることが好ましい。
ΔΣ変調器は、歪相殺信号をΔΣ変調することによって、歪相殺信号を比較的高い周波数の量子化信号として出力することができる。このため、歪相殺信号を送信周波数に変換する周波数変換部の後段に加算することで、歪相殺信号のために周波数変換部等のアナログデバイスを設ける必要がなくなり、さらに低コスト化に有利である。
(5)ある信号について、ΔΣ変調により量子化された反転信号を得る場合、前記ある信号の反転信号をΔΣ変調する方法と、前記ある信号をΔΣ変調しその信号を反転する方法とが考えられるが、両方法の間で、得られる反転信号が互いに一致しない場合がある。
このため、上記歪補償装置において、生成部が生成する歪相殺信号を反転して対象信号に加算する必要がある場合、前記ΔΣ変調器と、前記加算器との間に、前記歪相殺信号を反転させる反転部をさらに備えていることが好ましい。
この場合、ΔΣ変調された後の歪相殺信号を反転するので、反転された歪相殺信号をより精度よく得ることができる。
(6)上記歪補償装置において、前記生成部は、前記歪成分を次数の異なる歪成分ごとに分離し、次数の異なる歪成分ごとに複数の前記歪相殺信号を生成するものであり、前記ΔΣ変調器は、複数の前記歪相殺信号に対応して複数設けられているものであってもよい。
この場合、次数の異なる歪成分ごとに帯域幅を考慮して各ΔΣ変調器のオーバサンプリングレート等を設定することができる。
(7)また、本発明は、増幅器と、前記増幅器に入力される対象信号をデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換器と、前記増幅器の歪特性を補償する歪補償装置と、を備えた増幅装置であって、前記歪補償装置は、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の歪補償装置であることを特徴としている。
(8)また、本発明の無線通信装置は、上記歪補償装置を備えていることを特徴としている。
上記増幅装置、及び無線通信装置によれば、低コスト化を図ることができる。
本発明の歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置によれば、低コスト化を図ることができる。
第1実施形態に係る歪補償装置を備えた無線通信装置の要部を示すブロック図である。 ΔΣ変調器のブロック図である。 1次ローパス型ΔΣ変調器の線形z領域モデルのブロック図である。 ΔΣ変調器の量子化器における入力と出力との関係を示した図である。 (a)は、出力信号yを、当該出力信号yが含む成分ごとに模式的に示した図であり、(b)は、主信号成分、(c)は、歪成分を示した図である。 第2実施形態に係る歪補償装置を無線通信装置の要部を示すブロック図である。 参考形態に係る、1bitパルス列で表現されたRF信号を出力するシステムのブロック図である。 ΔΣ変調器が出力する1bitパルス列のパルス波形(対称波形)の一例を示す図であり、(a)は、そのアイパターンを示しており、(b)は、このパルス波形Sout(t)の時間軸波形を示している。(c)は、対称波形についての理想的なパルス波形SIdeal(t)を示しており、(d)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示しており、(e)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。 1bitパルス列のパルス波形(非対称波形)の一例を示す図であり、(a)は、非対称波形Sout(t)のアイパターンを示しており、(b)は、非対称波形Sout(t)の時間軸波形を示し、(c)は、対称波形についての理想的な波形SIdeal(t)を示し、(d)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示し、(e)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。 図7中、歪補償装置を示すブロック図である。 ΔΣ変調器が出力する1bitパルス列のパルス波形の一例を示す図であり、(a)は非対称成分を含んだパルス波形のアイパターン、(b)は(a)に示すパルス波形の内の立ち上がり及び立ち下がり波形を示す図である。(c)は、(b)に示すパルス波形から非対称成分を除去したパルス波形、(d)は、(b)に示すパルス波形から抽出された非対称成分fAsym(t)を示す図である。 信号生成部による歪補償用非対称成分fdist(t)と、この歪補償用非対称成分fdist(t)に付加される非対称成分f´Asym(t)との関係を示した図であり、(a)は、歪補償用非対称成分fdist(t)と、ΔΣ変調器から出力される1bitパルス列で表現されたRF信号とを示している。(b)は、歪補償用非対称成分fdist(t)を増幅したときの状態、(c)は、歪補償用非対称成分fdist(t)を減衰したときの状態を示している。 図10に示すシステムによって出力した歪補償前のRF信号と、歪補償後のRF信号のパワースペクトラムを示す図である。 HPAに対して前置歪補償を実施するための一般的な歪補償装置を示すブロック図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔1. 第1実施形態〕
〔1.1 歪補償装置の構成〕
図1は、第1実施形態に係る歪補償装置を備えた無線通信装置の要部を示すブロック図である。図中、無線通信装置1は、無線信号として送信される送信信号の増幅を行うための増幅装置2を備えている。なお、この増幅装置2は、受信信号の増幅に用いても良い。
増幅装置2は、高出力増幅器(HPA、以下、単に増幅器ともいう)3と、増幅器3に入力される送信信号である信号x(対象信号)に対してデジタル/アナログ変換を行うデジタル/アナログ変換器(DAC)4と、歪補償装置20とを備えている。
DAC4と、増幅器3の信号入力端との間には、送信周波数としてのRF(Radio Frequency)周波数に変換するアップコンバータ5と、バンドパスフィルタ6とが接続されている。
DAC4に与えられる信号xは、DAC4によりアナログ信号に変換され、さらに、アップコンバータ5によってベースバンド周波数から、RF(Radio Frequency)周波数にアップコンバートされた後、バンドパスフィルタ6を通過して増幅器3に与えられる。
歪補償装置20は、増幅器3による非線形歪特性を打ち消す歪補償処理を行う機能を有している。歪補償装置20は、バンドパスフィルタ6と、増幅器3との間に接続された加算器21を備えており、信号xに対して、増幅器3によって増幅された後の出力信号yに生じる歪成分を相殺するための歪相殺信号uを加算することで、歪補償処理を行う。
増幅器3は、歪相殺信号uが加算された信号xを増幅する。増幅器3の信号出力端には、アンテナ7が接続されており、増幅器3が出力する出力信号yは、送信信号としてアンテナ7から放射される。
増幅器3の信号出力端と、アンテナ7との間には、増幅器3が出力する出力信号yを得るためのカプラ8が接続されている。
カプラ8の出力端は、歪補償装置20に接続されている。カプラ8と、歪補償装置20との間には、ダウンコンバータ9と、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器(ADC)10とが接続されている。
カプラ8から得られる増幅器3の出力信号yは、ダウンコンバータ9によってRF周波数からベースバンド周波数にダウンコンバートされ、ADC10によってデジタル信号に変換され、歪補償装置20に与えられる。
カプラ8から得られる出力信号yは、フィードバック信号として歪補償装置20に与えられる。
歪補償装置20は、上述の加算器21の他、演算部22と、バンドパス型ΔΣ変調器(BP−DSM、以下、単にΔΣ変調器ともいう)25と、反転増幅器24とを備えている。
演算部22は、DAC4の前段の接続部からデジタル信号の信号xを取得するとともに、フィードバック信号としての出力信号yをデジタル信号として取得する。
演算部22は、信号xと出力信号yとを比較し、両者の差分に基づいて出力信号yに生じる歪成分を歪相殺信号uとして生成する機能を有している。
ΔΣ変調器25は、演算部22が生成した歪相殺信号uに対してΔΣ変調を行い、歪相殺信号uを1ビットの量子化信号(1bitパルス列)として出力する。
1ビットの量子化信号として表現された歪相殺信号uは、反転増幅器24を経て加算器21に与えられ、信号xに加算される。
演算部22は、信号xと出力信号yとを比較し、両者の差分に基づいて出力信号yに生じる歪成分を歪相殺信号uとして求める。よって、信号xに対しては、前記歪成分を逆特性として加算する必要がある。
そこで、本実施形態では、ΔΣ変調器25と加算器21との間に反転増幅器24が接続されている。演算部22により生成され、さらにΔΣ変調器25によって1ビットの量子化信号とされた歪相殺信号uは、反転増幅器24によって反転される。これにより、信号xに対しては、逆特性とされた歪相殺信号uが加算される。
歪相殺信号uが加算された信号xは、歪特性を有する増幅器3に入力される。
増幅器3は、歪相殺信号uが加算された信号xを増幅するので、当該増幅器3による出力信号yに含まれる歪が抑制される。
以上のようにして、本実施形態の歪補償装置20は、出力信号yに含まれる歪を抑制し、増幅器3による非線形歪特性を打ち消すことで歪補償処理を行う。
〔1.2 ΔΣ変調器について〕
図2は、ΔΣ変調器25のブロック図である。図2に示すように、ΔΣ変調器25は、ループフィルタ27と、量子化器28と、を備えている。
図2に示すΔΣ変調器25は、入力U(本実施形態では、歪相殺信号u)が、ループフィルタ27に与えられる。ループフィルタ27の出力は、量子化器28に与えられる。量子化器28の出力(量子化信号)Vは、ループフィルタ27への他の入力として与えられる。
ΔΣ変調器25の特性は、信号伝達関数(STF;Signal Transfer Function)及び雑音伝達関数(NTF;Noise Transfer Function)によって表すことができる。
つまり、ΔΣ変調器25の入力をUとし、ΔΣ変調器25の出力をVとし、量子化雑音をEとしたときに、ΔΣ変調器25の特性を、z領域において表すと、次のとおりである。
V(z)=STF(z)U(z)+NTF(z)E(z) ・・・(1)
したがって、所望のNTFとSTFとが与えられると、ループフィルタ27の伝達関数を得ることができる。
図3は、1次ローパス型ΔΣ変調器125の線形z領域モデルのブロック図を示している。符号127がループフィルタの部分を示し、符号128が量子化器を示している。このΔΣ変調器125への入力をU(z)とし、出力をV(z)とし、量子化雑音をE(z)としたときに、ΔΣ変調器125の特性を、z領域において表すと、下記式(2)のとおりである。
V(z)=U(z)+(1−z−1)E(z) ・・・(2)
つまり、図3に示す1次ローパス型ΔΣ変調器125において、信号伝達関数STF(z)=1であり、雑音伝達関数NTF(z)=1−z−1である。
ここで、上記ローパス型ΔΣ変調器に対して、以下の変換を行うことで、ローパス型ΔΣ変調器を、バンドパス型ΔΣ変調器に変換できる。
z → −z ・・・(3)
上記変換式に従って、ローパス型ΔΣ変調器125のz領域モデルにおけるzを、z’=−zに置き換えることで、本実施形態によるバンドパス型ΔΣ変調器25が得られる。
上記変換式を用いると、n次のローパス型ΔΣ変調器(nは1以上の整数)を、2n次のバンドパス型Σ変調器に変換できる。
ここで、演算部22が生成する歪相殺信号uは、信号xに加算されるまでに、逆特性に変換する必要がある。本実施形態では、ΔΣ変調器25と加算器21との間に反転増幅器24を接続することで、1ビットの量子化信号とされた歪相殺信号uを逆特性に変換するように構成されている。
これに対して、歪相殺信号uを逆特性に変換するために、上記のようにΔΣ変調器25の後段に反転増幅器24を接続する構成と、反転増幅器24をΔΣ変調器25の前段に接続する構成とが等価であるようにも思われる。
しかし、ΔΣ変調器25の前段に反転増幅器24を接続する構成では、逆特性とされた歪相殺信号uを精度よく得ることができないおそれがある。
上記式(1)にも示す通り、ΔΣ変調器25の出力Vは、上記式(1)によって表されるように信号成分であるSTF(z)U(z)と、雑音成分であるNTF(z)E(z)との和として表されるが、仮に信号成分であるU(z)に対して、「−1×U(z)」を入力したとすると、「NTF(z)E(z)」が不明である。
この点についてさらに検討すると、本実施形態において、上記構成のΔΣ変調器25は、歪相殺信号uに対してΔΣ変調を行い、1ビットの量子化信号を出力する。
図4は、ΔΣ変調器25の量子化器28における入力と出力との関係を示した図である。
本実施形態のΔΣ変調器25の量子化器28は、例えば、2値の量子化レベル(−1V,+1V)によって量子化信号を出力するように構成されている。さらにこの場合、量子化器28は、例えば、当該量子化器28に対する入力が「0」以上であるときに「+1V」を出力し、「0」より小さいときに「−1V」を出力する。
つまり、入力が「0」のときの量子化レベルは、「+1V」となるように設定されているので、入力前の信号を(−1)倍する場合、入力が「0」であるときは、(−1)倍しても「0」のままであるため、その後量子化器28により量子化されると、「+1V」を出力することとなる。
しかし、量子化後の出力を(−1)倍する場合、入力が「0」であるときは、量子化器28により量子化されると、を入力してから量子化したとすると、「+1V」を出力し、その後(−1)倍することになるので、「−1V」の出力となる。
このように、量子化前に信号に対して(−1)倍する場合と、量子化後に(−1)倍する場合とで、異なる結果が得られることとなる。
このように、ΔΣ変調器25は、入力が「0」のときにも、2値の量子化レベルの内のいずれかを割り当てるので、変調対象である信号を予め反転させてしまうと、元の信号とは異なるように量子化され、当該信号を適切にΔΣ変調できない。よって、ΔΣ変調の後に反転させたとしても、元の信号との関係において適切に反転されない結果となる。
上記検討から、ΔΣ変調器25の前段に反転増幅器24を接続する構成では、歪相殺信号uを適切にΔΣ変調することができず、ΔΣ変調された歪相殺信号uの反転出力を精度よく得るには、歪相殺信号uをΔΣ変調した後に反転させるべきであることが判る。
従って、本実施形態では、ΔΣ変調器25と加算器21との間に反転増幅器24を接続することで、1ビットの量子化信号とされた歪相殺信号uを反転することで逆特性に変換するように構成されているので、ΔΣ変調によって量子化信号とされるとともに反転された歪相殺信号uをより精度よく得ることができる。
〔1.3 ΔΣ変調器及びデジタル/アナログ変換器のサンプリングレート等について〕
歪補償装置20の演算部22は、歪相殺信号u(歪成分)として、信号xを増幅したときに生じる3次及び5次の歪成分を求める。
よって、ΔΣ変調器25は、3次及び5次の歪成分のみについてΔΣ変調を行う。
また、DAC4は、信号xについてデジタル/アナログ変換可能とされ、信号xの周波数帯域に隣接する帯域の信号については、デジタル/アナログ変換の対象に設定されていない。
図5(a)は、出力信号yを、当該出力信号yが含む成分ごとに模式的に示した図である。図中、横軸は周波数、縦軸はSN比(dB)を示している。
出力信号yは、信号xである主信号成分(図5(b))の他、隣接周波数帯域に増幅器3の歪特性により生じる歪成分(図5(c))を含んでいる。
例えば、主信号成分の周波数帯域幅BW1が10MHzであるとすると、主信号成分に隣接する3次歪成分の周波数帯域幅BW2は、30MHz、さらに3次歪成分に隣接する5次歪成分の周波数帯域幅BW3は、50MHzとなる。
本実施形態の歪補償装置20の演算部22は、信号xと出力信号yとの差分から、図5(c)に示す3次及び5次の歪成分を求める。
この3次及び5次の歪成分は、ΔΣ変調器25によってΔΣ変調がなされる。
よって、ΔΣ変調器25は、その中心周波数が信号xに設定され、信号通過帯域幅が5次の歪成分の周波数帯域幅BW3の50MHzに設定される。
また、ΔΣ変調器25として必要な帯域幅は、5次歪成分の周波数帯域幅BW3の50MHzである。また、3次歪成分のSN比であるSN2として必要な値が例えば30dBであるとすると、ΔΣ変調器25として必要なオーバサンプリングレート(OSR)は、50に設定される。
この場合、ΔΣ変調器25のサンプリングレートfsは、下記式のようになる。
fs = 信号周波数帯域幅 × OSR = 50 × 50 = 2.5GHz
また、本実施形態の増幅装置2では、DAC4によってデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅が、信号xの周波数帯域幅とほぼ一致するように設定されている。
よって、DAC4によってデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅は、増幅器3の歪特性による歪成分を含む出力信号yをアナログ/デジタル変換する必要があるADC10におけるアナログ/デジタル変換可能な周波数帯域幅よりも狭く設定されている。
なお、DAC4によるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅とは、ナイキストの定理に基づき、変換の対象とする信号の周波数帯域幅の2倍の帯域幅を示している。
よって、本実施形態のDAC4のサンプリングレートfsは、20MHz(10MHz(信号xの帯域幅)×2)に設定されている。
また、DAC4によってデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅が、信号xの周波数帯域幅とほぼ一致している状態とは、DAC4によってデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅が、信号xの周波数帯域幅以上であって、信号xの周波数帯域幅を超えて隣接帯域に及ぶ部分については、誤差を許容するマージン程度とされている状態をいう。
また、例えば、主信号成分のSN比であるSN1として、60dB必要であるとすると、DAC4の分解能として10bit以上必要となる。よって、本実施形態のDAC4は、分解能が10bitとされている。
ここで、例えば、上記従来例(図14)にて示した歪補償装置のDAC102では、デジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅が、歪補償の対象となる歪成分の信号帯域幅となるように設定する必要がある。
また、DAC102は、主信号成分を適切に再現するために分解能が比較的高くなるようにビット数を設定する必要もある。
つまり、上記従来例の歪補償装置によって、図5(a)に示す出力信号yを出力する場合、DAC102は、5次歪成分の帯域幅BW3に合わせる必要がある。よって、DAC102のサンプリングレートfsは、100MHz(50MHz(5次歪成分の帯域幅)×2)に設定する必要がある。さらに、分解能については主信号成分に合わせる必要があるため、例えば、10bitとする必要がある。
このため、上記従来の歪補償装置では、歪補償信号のデジタル/アナログ変換を行うDACとして、デジタル/アナログ変換可能な帯域幅が比較的広帯域でかつ分解能が高い変換器を用いる必要があり、装置全体としてコスト高を招く場合があった。
この点、本実施形態の歪補償装置20によれば、歪相殺信号uを、DAC4の後段において加算するので、DAC4に与えられる信号には、歪相殺信号uが加算されていない。よって、DAC4は、信号xの帯域外に広がる歪成分までもデジタル/アナログ変換する必要がない。このため、DAC4のデジタル/アナログ変換可能な帯域幅を、歪成分の帯域幅を考慮することなく信号xの帯域幅に合わせるように狭帯域とすることができる。この結果、デジタル/アナログ変換可能な帯域幅が比較的狭いデジタル/アナログ変換器を用いることが可能となり、上記従来例よりもより低コスト化が可能となる。
また、仮に主信号成分をΔΣ変調によってデジタル/アナログ変換しようとする場合、主信号成分のSN比であるSN1(図5)として、60dB必要であるとすると、OSRを100以上に設定する必要があり、非常に高いサンプリングレートとなり、装置としてのコストにおいて不利となる。
一方、本実施形態では、主信号成分については、一般的なDAC4によってデジタル/アナログ変換し、歪補償に用いる歪相殺信号uについては、ΔΣ変調器25を用いたので、DAC4及びΔΣ変調器25それぞれについて、サンプリングレートを低く抑えることができ、コストをより低減することができる。
また、本実施形態では、歪相殺信号uは、1ビットの量子化信号として出力されるので、DAC4の後段の任意の位置に加算することができる。このため、回路設計の自由度が高められる。つまり、図1では、加算器21をバンドパスフィルタ6と、増幅器3との間に接続したが、アップコンバータ5とバンドパスフィルタ6との間に接続してもよく、DAC4の後段でかつ増幅器3の前段であれば、加算器21を任意の位置に接続することができる。
ただし、加算器21は、アップコンバータ5よりも後段に接続されていることが好ましい。
ΔΣ変調器25は、歪相殺信号uをΔΣ変調することによって、歪相殺信号uを比較的高い周波数の1ビットの量子化信号として出力することができる。このため、加算器21をアップコンバータ5よりも後段に接続することで、歪相殺信号uをRF周波数とするためのアップコンバータ等のアナログデバイスを設ける必要がなくなり、さらに低コスト化に有利である。
また、上述したように、本実施形態のDAC4は、歪補償に必要な歪成分をデジタル/アナログ変換する必要がないので、例えば、元々歪補償機能を備えておらず、歪成分を含む帯域幅でデジタル/アナログ変換することができないDACを備えている増幅装置に対して、本実施形態の歪補償装置20を設けることで、その増幅装置に対して歪補償機能を付与することもできる。
つまり、既存の増幅装置に対して、DAC等の変更をすることなく、本実施形態にて示した歪補償装置20を容易に追加することができ、容易に歪補償機能を付与することができる。
〔2. 第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る歪補償装置を無線通信装置の要部を示すブロック図である。
本実施形態の歪補償装置20は、2つのΔΣ変調器を備えている点において、第1実施形態と相違している。
本実施形態の歪補償装置20は、第1ΔΣ変調器30と、第2ΔΣ変調器31と、第1ΔΣ変調器30の出力を反転する第1反転増幅器32と、第2ΔΣ変調器31の出力を反転する第2反転増幅器33と、次数の異なる歪成分ごとに複数の歪相殺信号を出力するフィルタ回路34とを備えている。
本実施形態の演算部22は、信号xと出力信号yとを比較し、両者の差分に基づいて出力信号yに生じる歪成分をフィルタ回路34に与える。
フィルタ回路34は、演算部22から与えられる歪成分を次数の異なる歪成分ごとに分離し、次数の異なる歪成分ごとに複数の歪相殺信号を生成する。
本実施形態では、フィルタ回路34は、演算部22から与えられる歪成分を3次歪成分(図5(c)参照)に対応した第1歪相殺信号u1と、5次歪成分(図5(c)参照)に対応した第2歪相殺信号u2とに分離する。つまり、フィルタ回路34は、演算部22とともに、歪相殺信号を生成する生成部を構成している。
フィルタ回路34は、第1歪相殺信号u1を第1ΔΣ変調器30に与え、第2歪相殺信号u2を第2ΔΣ変調器31に与える。
第1ΔΣ変調器30に与えられた第1歪相殺信号u1は、第1ΔΣ変調器30によってΔΣ変調された後、第1反転増幅器32を通過して加算器21に与えられ、信号xに加算される。
また、第2ΔΣ変調器31に与えられた第2歪相殺信号u2は、第2ΔΣ変調器31によってΔΣ変調された後、第2反転増幅器33を通過して加算器21に与えられ、信号xに加算される。
信号xに加算された第1歪相殺信号u1は、出力信号yにおける3次歪成分を相殺し、第2歪相殺信号u2は、出力信号yにおける5次歪成分を相殺する。
本実施形態では、第1ΔΣ変調器30は、3次歪成分に対応した第1歪相殺信号u1に対してΔΣ変調を行う。よって、第1ΔΣ変調器30は、信号通過帯域幅が3次の歪成分の周波数帯域幅BW2の30MHzに設定される。
また、第1ΔΣ変調器30として必要な帯域幅は、3次歪成分の周波数帯域幅BW2の30MHzである(図5参照)。また、3次歪成分のSN比であるSN2として必要な値が例えば30dBであるとすると、第1ΔΣ変調器30として必要なオーバサンプリングレート(OSR)は、50に設定される。
よって、第1ΔΣ変調器30のサンプリングレートfsは、下記式のようになる。
fs = 信号周波数帯域幅 × OSR = 30 × 50 = 1.5GHz
また、第2ΔΣ変調器31は、5次歪成分に対応した第2歪相殺信号u2に対してΔΣ変調を行う。よって、第2ΔΣ変調器31は、信号通過帯域幅が5次の歪成分の周波数帯域幅BW3の50MHzに設定される。
また、第2ΔΣ変調器31として必要な帯域幅は、5次歪成分の周波数帯域幅BW3の50MHzである(図5参照)。また、5次歪成分のSN比であるSN3として必要な値が例えば10dBであるとすると、第2ΔΣ変調器31として必要なオーバサンプリングレート(OSR)は、第1ΔΣ変調器30よりも低い値として20に設定される。
よって、第2ΔΣ変調器31のサンプリングレートfsは、下記式のようになる。
fs = 信号周波数帯域幅 × OSR = 50 × 20 = 1.0GHz
上記のように、本実施形態では、3次及び5次の歪成分ごとにΔΣ変調器30,31を設けたので、3次及び5次の歪成分ごとに帯域幅を考慮して、両ΔΣ変調器30,31のオーバサンプリングレート等を設定することができる。この結果、両ΔΣ変調器30,31それぞれのサンプリングレートをより低く抑えることができる。
〔3. 参考形態〕
〔3.1 システムの構成〕
図7は、参考形態に係る、1bitパルス列で表現されたRF信号を出力するシステムのブロック図である。このシステム40は、デジタル信号処理部41と、バンドパスフィルタ42と、を有している。
デジタル信号処理部41は、所定のRF(Radio Frequency)周波数の信号であるRF信号を表現するデジタル信号(1bitパルス列)を出力する。RF信号は、無線波として空間に放射されるべき信号であり、例えば、移動体通信のためのRF信号、テレビ/ラジオなどの放送サービスのためのRF信号である。
デジタル信号処理部41から出力された1bitパルス列は、バンドパスフィルタ42に与えられる。1bitパルス列は、RF周波数以外の帯域にノイズ成分を含んでいる。そのノイズ成分は、アナログフィルタによって除去される。
1bitパルス列は、バンドパスフィルタ42を通過するだけで、純粋なアナログのRF信号となる。
このように、デジタル信号処理部41では、デジタル信号処理によって1bitパルス列を生成することで、実質的に、RF信号を生成することができる。したがって、RF信号を表現している1bitパルス列を、アナログのRF信号を処理する回路(例えば、無線通信機、テレビ受信機などのRF信号受信機)に与えれば、その回路は、1bitパルス列をアナログのRF信号として処理することができる。なお、この場合、バンドパスフィルタ42は、RF信号を処理する回路に備わっていればよい。
デジタル信号処理部41とバンドパスフィルタ42との間の信号伝送路43は、回路基板に形成された信号配線であってもよいし、光ファイバー又は電気ケーブルなどの伝送線路であってもよい。また、信号伝送路43は、1bitパルス列を送信するための専用線である必要は無く、インターネットなどのパケット通信を行う通信ネットワークであってもよい。パケット通信を行う通信ネットワークを信号伝送路43として用いる場合、送信側(デジタル信号処理部41側)は、1bitパルス列を、ビット列に変換して、信号伝送路43に送信し、受信側(バンドパスフィルタ42側)が、受信したビット列を元の1bitパルス列に復元すればよい。
デジタル信号処理部41は、信号伝送路43に対して、1bitパルス列を送信する送信機とみなすことができる。この場合、バンドパスフィルタ42を有する装置は、RF信号の受信機となる。
また、システム40全体が送信機として構成されていてもよい。例えば、システム40は、デジタル信号処理部41から出力された信号を増幅器にて増幅し、アンテナから出力するよう構成されていてもよい。この場合、バンドパスフィルタ42は、デジタル信号処理部41とアンテナとの間に設けてもよいし、アンテナをバンドパスフィルタ42として機能させてもよい。
デジタル信号処理部41は、送信信号であるベースバンド信号(IQ信号)を出力するベースバンド部44と、ベースバンド信号を変調するデジタル直交変調器45(以下、単に直交変調器45ともいう)と、処理部46と、ΔΣ変調器47と、歪補償装置50とを備えている。
ベースバンド部44は、IQベースバンド信号(I信号、Q信号それぞれ)をデジタルデータとして出力する。
直交変調器45は、IQベースバンド信号を、中間周波数の信号に変換する。直交変調器45は、デジタル信号処理で直交変調を行うデジタル直交変調器として構成されている。したがって、直交変調器45からは、多ビットのデジタルデータ(離散値)によって表現されたデジタル信号形式の信号(デジタルIF信号)が出力される。
なお、変調波を生成する直交変調器45としては、直交変調器に限らず、変調波を生成するための他の方式の変調器であってもよい。
直交変調器45から出力されたIF信号は、デジタル信号処理部41における処理部46に与えられる。処理部46は、IF信号に対して、DPD(Digital Pre-distortion)、CFR(Crest Factor Reduction)、DUC(Digital Up Conversion)などの様々なデジタル信号処理を施す。処理部46からは、デジタル信号処理によって生成された、デジタル信号形式のRF信号(デジタルRF信号)が出力される。
処理部46から出力されたデジタルRF信号は、ΔΣ変調器47に与えられる。ΔΣ変調器47は、入力信号であるデジタルRF信号に対して、ΔΣ変調を行って1bitの量子化信号(1bitパルス列)を出力する。ΔΣ変調器47から出力された1bitパルス列は、デジタル信号であるが、アナログRF信号を表現したものとなっている。
なお、ΔΣ変調器47の構成は、上記第1実施形態にて示したΔΣ変調器25と同様である。
ΔΣ変調器47から出力された1bitパルス列は、歪補償装置50に与えられる。
歪補償装置50は、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列を構成するパルス波形に生じる歪を補償する機能を有している。
歪補償装置50から出力された歪補償がなされた1bitパルス列は、デジタル信号処理部41の出力信号として、デジタル信号処理部41から信号伝送路43へ出力される。
次に、歪補償装置50が補償する、1bitパルス列を構成するパルス波形に生じる歪について説明する。
〔3.2 1bitパルス列を構成する波形に生じる歪〕
本発明者は、1bitパルス列を構成するパルス波形が、時間軸に対して線対称なパルス波形である場合、1bitパルス列とされたRF信号の信号特性、特に隣接チャネル漏洩電力比(ACLR;Adjacent Channel Leakage power Ratio)を向上させるという知見を、種々の実験結果から得た。
そこで、本参考形態の歪補償装置50は、1bitパルス列を構成するパルス波形が、時間軸に対して線対称となることを妨げる歪を相殺し歪補償するように構成されている。
図8は、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列のパルス波形の一例を示す図であり、図8(a)は、そのアイパターンを示しており、図8(b)は、このパルス波形Sout(t)の時間軸波形を示している。
図8に示すパルス波形は、アイパターン及び時間軸波形が示すように、時間軸に対して線対称となっている。以下、このような時間軸に対して線対称なパルス波形を対称波形ともいう。また、時間軸に対して非対称なパルス波形を非対称波形ともいう。
なお、時間軸は、パルスのLowレベル(−1)とHighレベル(+1)の中間(0)にあるものとする(以下、同様)。
また、図8(c)は、対称波形についての理想的なパルス波形SIdeal(t)を示している。ここで、理想的なパルス波形とは、完全な矩形波を構成する際の波形であり、理想的なパルス立ち上がり波形とは、完全な矩形波を構成する際の立ち上がり波形と実質的に同一の波形を指し、理想的なパルス立ち下がり波形とは、完全な矩形波を構成する際の立ち下がり波形と実質的に同一の波形を指す。
ここで、上記パルス波形の立ち上がり波形をfrise(t)、立ち下がり波形をfrise(t)とすると、frise(t)とffall(t)は、式(4)(5)に示すように、対称成分fsym(t)と非対称成分fAsym(t)に分解することができる。
rise(t)=fAsym(t)+fSym(t) ・・・(4)
fall(t)=fAsym(t)−fSym(t) ・・・(5)
非対称成分fAsym(t)は、上記式(4)、(5)より、下記式(6)によって表すことができる。
式(6)は、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とが、下記式(7)の関係を有している場合に、非対称成分fAsym(t)が無くなることを示している。
rise(t)=−ffall(t) ・・・(7)
式(7)を満たす場合、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とは、時間軸に対して線対称となる。つまり、式(7)を満たすパルス波形をアイパターンで示した場合、そのアイパターンは時間軸に対して線対称となる。
図8(d)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示し、図8(e)は、対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。
図8(b)に示すように、対称波形は、理想的な波形SIdeal(t)に対して歪んでおり、パルスの立ち上がり波形frise(t)及びパルスの立ち下がり波形ffall(t)それぞれに歪成分を有している。
式(7)を満たす場合、歪成分は、対称成分fsym(t)を含んでいるが(図8(d)参照)、非対称成分fAsym(t)は含んでいない(図8(e)参照)。
対称波形において、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とを、アイパターンのように、立ち上がり開始時点と立ち下がり開始時点とを時間軸上で一致させて重ねた場合、立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)とは、遷移時間(立ち上がり時間、立ち下がり時間)が同一であるため、時間軸に対して線対称となる。
換言すると、立ち上がり波形frise(t)における歪成分(第1歪成分)と、立ち下がり波形ffall(t)における歪成分(第2歪成分)とは、時間軸に対して線対称となっており、非対称成分fAsym(t)はゼロとなる。
図9は、式(7)を満たさないパルス波形(非対称波形)を示している。図9(a)は、非対称波形Sout(t)のアイパターンを示している。このアイパターンは、時間軸に対して非対称となっている。具体的には、図9に示す非対称波形は、パルスの立ち上がり時間よりも、パルスの立ち下がり時間の方が長い波形となっている。
図9(b)は、非対称波形Sout(t)の時間軸波形を示し、図9(c)は、対称波形についての理想的な波形SIdeal(t)を示し、図9(d)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における対称成分fsym(t)を示し、図9(e)は、非対称波形における立ち上がり波形frise(t)と立ち下がり波形ffall(t)における非対称成分fAsym(t)を示している。
図9に示すように、非対称波形も、理想的な波形SIdeal(t)に対して歪んでおり、パルスの立ち上がり波形frise(t)及びパルスの立ち下がり波形ffall(t)それぞれに歪成分を有している。
式(7)を満たさない場合、歪成分は、対称成分fsym(t)とともに、非対称成分fAsym(t)を有する(図9(d)、図9(e)参照)。
本参考形態の歪補償装置50は、1bitパルス列を構成するパルス波形を時間軸に対して非対称にしうる要素(歪)である上記対称成分fsym(t)を相殺し抑圧して歪補償を実施するように構成されている。
〔3.3 歪補償装置の全体構成〕
図10は、図7中、歪補償装置50を示すブロック図である。ΔΣ変調器47は、上述のように、処理部46から与えられるデジタルのRF信号に対して、ΔΣ変調を行って当該RF信号を表現する1bitパルス列を生成する。ΔΣ変調器47による1bitパルス列は、入力されるRF信号の周波数帯域を含む帯域がノイズシェイピングされている。1bitパルス列が表現するアナログ信号には、入力されるRF信号の他、ノイズシェイピングされている量子化雑音阻止帯域の帯域外に、ノイズシェイプにより移動された量子化雑音が比較的高い電力比で存在している。
ΔΣ変調器47は、量子化雑音阻止帯域が、当該ΔΣ変調器47に入力されるRF信号の周波数帯域(RF信号の信号帯域)を含むように設定されている。
なお、ΔΣ変調器47は、量子化雑音阻止帯域(バンドパス型ΔΣ変調器47の中心周波数)を、入力されるRF信号の周波数帯域に応じて、変更可能に構成することもできる。
また、ΔΣ変調器47は、量子化雑音阻止帯域の中心周波数を変更可能となっている。換言すると、量子化雑音阻止帯域が変更可能となっている。
歪補償装置50は、ΔΣ変調器47から出力される、1bitパルス列に加算することで、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とを時間軸に対して実質的に線対称としうる歪補償信号を1bitパルス列として出力する機能を有している。
本形態の歪補償装置50は、非対称成分供給部51と、信号生成部52とを備えている。
信号生成部52は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の時間軸に対する線対称性を低下させる非対称成分fAsym(t)に基づいて、歪補償信号(歪相殺信号)を生成する機能を有している。
歪補償信号は、ΔΣ変調器47から出力される1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抑圧することが可能な信号である。より具体的に、歪補償信号は、前記1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)を抽出することで得られる歪補償用非対称成分fdist(t)を1bitパルス列に変換したものである。
信号生成部52は、生成した歪補償信号をΔΣ変調器47の後段に設けられた加算器65に出力する。
これによって、歪補償信号は、1bitパルス列で表現されたアナログ信号に加算される。このように、本形態の歪補償装置50は、フィードフォーワード型の歪補償を実行するように構成されている。
歪補償信号が加算された、1bitパルス列は、RF信号の帯域に含まれる非対称成分fAsym(t)が抑圧され、歪補償がなされる。
歪補償がなされた1bitパルス列は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分とが、時間軸に対して実質的に線対称に漸近することとなる。
この結果、この1bitパルス列から得られるアナログのRF信号の信号特性を向上させることができる。
〔3.4 非対称成分供給部について〕
非対称成分供給部51は、歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給する。非対称成分供給部51が供給する歪補償用非対称成分fdist(t)は、LUT記憶部53に記憶されているLUT(Look Up Table)に格納されている。LUTは、歪補償用非対称成分fdist(t)がデジタル信号(デジタル信号形式の信号)として示された情報を格納している。
非対称成分供給部51は、必要に応じて、LUT記憶部53のLUTを参照し、信号生成部52に供給すべき歪補償用非対称成分fdist(t)を取得する。
非対称成分供給部51は、取得した歪補償用非対称成分fdist(t)をデジタル信号として信号生成部52に供給する。
LUT記憶部53に記憶された歪補償用非対称成分fdist(t)は、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列のアイパターンを測定し、アイパターンから抽出される1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)に基づいて求められる。
非対称成分fAsym(t)は、予め測定したΔΣ変調器47による1bitパルス列のアイパターンに基づいて、上述した式(6)を適用することで抽出することができる。
1bitパルス列から抽出された非対称成分fAsym(t)は、デジタル信号に変換された後、歪補償用非対称成分fdist(t)としてLUT記憶部53のLUTに格納される。
つまり、歪補償用非対称成分fdist(t)は、測定されたアイパターンから抽出された非対称成分fAsym(t)をデジタル信号に変換したものである。
図11は、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列のパルス波形の一例を示す図であり、(a)は非対称成分を含んだパルス波形のアイパターン、(b)は(a)に示すパルス波形の内の立ち上がり及び立ち下がり波形を示す図である。
図11(a)及び(b)に示すパルス波形は、パルスの立ち上がり時間よりも立ち下がり時間の方が長い波形となっており、立ち上がり波形と立ち下がり波形とは、時間軸方向に非対称となっている。
図11(c)は、図11(b)に示すパルス波形から非対称成分を除去したパルス波形、図11(d)は、図11(b)に示すパルス波形から抽出された非対称成分fAsym(t)を示す図である。
上記アイパターンに基づいて平均化されたパルスの立ち上がり波形と立ち下がり波形とが取得され、取得された波形に対して、上記式(6)を適用することで、図11(d)に示す非対称成分fAsym(t)を抽出することができる。
図10を参照して、非対称成分供給部51には、ΔΣ変調器47の後段に接続された分岐路54を介して、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列が与えられる。非対称成分供給部51は、与えられた1bitパルス列に基づいて、当該1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングを取得する。
非対称成分供給部51は、ΔΣ変調器47が出力する1bitパルス列のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて、デジタル信号である歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給する。信号生成部52は、歪補償用非対称成分fdist(t)の供給に応じて歪補償信号を生成する。
1bitパルス列における非対称成分fAsym(t)は、パルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれている。
上記歪補償信号は、非対称成分fAsym(t)を抑圧するための信号である。よって、精度よく歪補償を行うために、歪補償信号は、1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり波形及び立ち下がり波形に含まれる非対称成分に加算する必要がある。
この点、本形態では、非対称成分供給部51が、1bitパルス列のパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給するので、RF信号におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて、信号生成部52に歪補償信号を生成し出力させることができる。
このように、非対称成分供給部51は、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列のパルス波形の変化に応じて歪補償用非対称成分fdist(t)を供給することにより、適切なタイミングで歪補償信号を生成し、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列に加算することができる。この結果、効果的に歪補償を行うことができる。
なお、図9(e)や、図11(d)に示すように、立ち上がり波形に含まれる非対称成分fAsym(t)と、立ち下がり波形に含まれる非対称成分fAsym(t)とは、ほぼ同一の成分である。このため、非対称成分供給部51は、パルスの立ち上がり及び立ち下がりの両タイミングに対して、同じ歪補償用非対称成分fdist(t)を用いる。
〔3.5 信号生成部について〕
信号生成部52は、上述したように、1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を歪補償信号として生成する機能を有している。
図10に示すように、信号生成部52は、非対称成分供給部51からの歪補償用非対称成分fdist(t)が与えられるバンドパスフィルタ56と、増幅器57と、ΔΣ変調器58と、反転増幅器55と、ATT(減衰器)59とを備えている。なお、バンドパスフィルタ56、増幅器57、ΔΣ変調器58、及び反転増幅器55は、デジタル信号処理を行うデジタル信号処理部41に設けられている。
バンドパスフィルタ56は、歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償に必要な帯域の成分を通過させ、通過成分を後段の増幅器57に与える。
上記必要な帯域とは、ΔΣ変調器47から出力されることで1bitパルス列として表現されているRF信号の周波数帯域である。
ΔΣ変調器47から出力された1bitパルス列において、RF信号の周波数帯域以外の帯域はノイズ成分なので、歪補償を行う必要があるのは、RF信号の周波数帯域のみである。
この点、本形態では、バンドパスフィルタ56を設けることで、歪補償用非対称成分fdist(t)の内、歪補償にとって必要がない帯域の成分を除去でき、後段の処理量を減少させることができる。
増幅器57は、バンドパスフィルタ56を通過した歪補償用非対称成分fdist(t)を所定の増幅率Gで増幅する。増幅器57は、増幅した歪補償用非対称成分fdist(t)をΔΣ変調器58に与える。
ΔΣ変調器58は、上記で説明したΔΣ変調器25(47)と同様の構成である。ΔΣ変調器58は、上記で説明したΔΣ変調器25と同様、RF信号の周波数帯域を含むように設定されている。
ΔΣ変調器58は、デジタル信号である歪補償用非対称成分fdist(t)にΔΣ変調を行うことで、1bitパルス列で表現された信号(量子化信号)に変換し、反転増幅器55に与える。
反転増幅器55は、1bitパルス列で表現された量子化信号として与えられる歪補償用非対称成分fdist(t)を反転させる。反転増幅器55は、歪補償用非対称成分fdist(t)を反転させることで、歪補償用非対称成分fdist(t)を逆特性に変換し、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列で表現されたRF信号に当該歪補償用非対称成分fdist(t)が加算されたときに非対称成分fAsym(t)を相殺することができるように変換する。
反転増幅器55は、歪補償用非対称成分fdist(t)を反転させた後、後段に接続された減衰器59に与える。
減衰器59は、1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を減衰する。減衰器59は、増幅器57によって増幅された利得を減衰させうる減衰率Wに設定されている。減衰器59は、減衰後の1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を加算器65に出力する。
すなわち、信号生成部52は、減衰器59により減衰された後の1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を、歪補償信号として加算器65に出力する。
ここで、信号生成部52は、歪補償用非対称成分fdist(t)をΔΣ変調器58によって1bitパルス列で表現された信号(量子化信号)に変換している。従って、1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)においても、ΔΣ変調によって生じる非対称成分f´Asym(t)が雑音成分として含まれる。このため、単にΔΣ変調を行っただけでは、RF信号を表現する1bitパルス列の歪補償を適切に行うことができないおそれがある。
この点、本形態では、ΔΣ変調前の歪補償用非対称成分fdist(t)を増幅器57によって増幅し、ΔΣ変調器58によって歪補償用非対称成分fdist(t)を1bitパルス列に変換した後に、当該1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)を減衰器59によって減衰するので、1bitパルス列に変換する際に歪補償用非対称成分fdist(t)に付加される非対称成分f´Asym(t)(歪成分)を、相対的に抑制することができ、より精度の高い歪補償信号を生成することができる。
図12は、信号生成部52による歪補償用非対称成分fdist(t)と、この歪補償用非対称成分fdist(t)に付加される非対称成分f´Asym(t)との関係を示した図であり、(a)は、歪補償用非対称成分fdist(t)と、ΔΣ変調器47から出力される1bitパルス列で表現されたRF信号とを示している。(b)は、歪補償用非対称成分fdist(t)を増幅したときの状態、(c)は、歪補償用非対称成分fdist(t)を減衰したときの状態を示している。
図12(a)中、量子化誤差Q1に対する1bitパルス列で表現されたRF信号Sの電力比が、例えば60dBであるとする。また、RF信号Sに対するRF信号Sに含まれる非対称成分fAsym(t)の電力比が−40dBであるとすると、RF信号Sに対する歪補償用非対称成分fdist(t)を示す信号Er1の電力比も、−40dBとなる。歪補償用非対称成分fdist(t)は、非対称成分fAsym(t)に基づいてほぼ同じとなるように求められているからである。
このとき、図12(b)に示すように、信号Er1を所定の増幅率Gで増幅し、量子化誤差Q2に対する信号Er1の電力比を、例えば60dBとした後、当該信号Er1に対してΔΣ変調を行ったとする。
ここで、ΔΣ変調後の(1bitパルス列で表現された)信号Er1は、上述したように、ΔΣ変調によって生じる非対称成分f´Asym(t)を含んでいる。
図12(b)に示すように、ΔΣ変調後の信号Er1(歪補償用非対称成分fdist(t))に含まれる非対称成分f´Asym(t)を示す信号Er2の電力は、量子化誤差Q2よりも大きく、反転信号Er1よりも小さく現れる。
図12(b)に示すΣ変調後の信号Er1を、所定の減衰率Wで増幅前の電力程度(図12(a))となるように減衰すると、図12(c)のように、増幅前とほぼ同様の信号Er1が得られる。また、信号Er1、RF信号Sに対する量子化誤差Q1、信号Er2、及び信号Er1に対する量子化誤差Q2は、下記式(8)に示す関係となる。
Er1 < Q1 < Er2 < Q2 ・・・(8)
つまり、ΔΣ変調によって信号Er1に生じた非対称成分f´Asym(t)(信号Er2)は、減衰器59によって減衰されることで、量子化誤差Q1よりも小さくなるように抑圧することができ、実質的に信号Er1から除去することができる。
この結果、信号生成部52は、減衰器59から出力される1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t)に含まれる、ΔΣ変調による非対称成分f´Asym(t)等の誤差成分を抑圧でき、精度の高い歪補償信号を得ることができる。
〔3.6 歪補償について〕
図10を参照して、信号生成部52が出力する歪補償信号は加算器65に与えられる。これにより、歪補償信号(1bitパルス列で表現された歪補償用非対称成分fdist(t))は、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列に加算される。
上述したように、歪補償信号は、RF信号を表現する1bitパルス列におけるパルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて加算する必要がある。このため、非対称成分供給部51は、パルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに合わせて歪補償用非対称成分fdist(t)を信号生成部52に供給する。
しかし、歪補償用非対称成分fdist(t)が与えられた信号生成部52は、歪補償信号を生成するために所定期間を必要とする。このため、非対称成分供給部51において歪補償用非対称成分fdist(t)の供給時に、タイミングを調整したとしても、歪補償信号が加算器65に出力されたときには、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列に対しては遅延が生じるおそれがある。
このため、歪補償装置50は、ΔΣ変調器47と、加算器65との間に配置された遅延処理部61をさらに備えている。遅延処理部61は、ΔΣ変調器47から1bitパルス列が与えられると、当該1bitパルス列を、信号生成部52が歪補償信号を生成するために要する期間分だけ遅延させる処理を行う。
これによって、歪補償信号を生成するために要する期間により生じる遅延を解消することができ、精度よく歪補償を行うことができる。
加算器65は、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列と、信号生成部52からの歪補償信号とを加算する。
この結果、ΔΣ変調器47からの1bitパルス列に含まれる非対称成分fAsym(t)は、歪補償信号によって相殺される。RF信号を表現する1bitパルス列は、立ち上がり波形frise(t)の歪成分と、立ち下がり波形ffall(t)の歪成分との間の線対称性が高められ、RF信号としての信号特性劣化が抑制される。
ここで、ΔΣ変調器47から出力された歪補償前の1bitパルス列で表現されたRF信号を、Dout、増幅器57の増幅率をG、減衰器59の減衰率をWとしたとき、加算器65から出力される歪補償後の1bitパルス列で表現されたアナログ信号D´outは、下記式(9)のように表すことができる。
D´out = Dout + W × fdist(G) ・・・(9)
なお、歪補償用の非対称成分であるfdistは、Gの関数として表している。これは、ΔΣ変調器による変換が、変換前と変換後とで電力が線形とはならず、増幅率Gと減衰率Wとの間も線形とはならないためである。
さらに、Doutは、上述したように、矩形波を定める成分として、下記式(10)に示すように、理想的な波形成分fideal、対称成分fsym、及び非対称成分fAsymを含んでいる。
out = fideal + fsym + fAsym ・・・(10)
よって、式(9)のDoutに、式(10)を代入すると、D´outは、下記式(11)のように表される。
D´out = fideal + fsym + fAsym + W × fdist(G)
= fideal + fsym + (fAsym + W × fdist(G))
・・・(11)
上記式(11)において、非対称成分fAsymを含むかっこ内の部分を可能なかぎり「0」に近づけることで、当該、非対称成分fAsymを相殺し抑圧することができる。
非対称成分fAsymが抑圧された後に残るfidealと、fsymとの和は、理想的な矩形波に歪成分である対称成分を含んでいるが、非対称成分fAsymを含んでいないので、アナログのRF信号としたときの信号特性の劣化は抑制される。つまり、非対称成分fAsymを含んでいなければ、理想的な矩形波としなくても、信号特性の劣化を抑制することができる。
このため、理想的な矩形波が得られるように歪補償する場合と比較して、より容易に歪補償を行うことができる。
なお、前記かっこ内の部分は、増幅率G及び減衰率Wを調整することにより、可能なかぎり「0」に近づくように調整される。
この場合、減衰器59(図10)を例えば所定の抵抗値を有する抵抗器で構成し、この抵抗器の抵抗値を一定に固定した上で増幅器57の増幅率を調整することができる。
減衰器59はアナログ信号を処理する機器であり、調整に対する精度が低い。よって、抵抗値を一定として減衰率Wを固定し、デジタル信号を処理する増幅器57の増幅率Gを調整することで、前記かっこ内の部分が「0」に近づくようにより詳細に調整を行うことができる。この結果、互いに線形ではない増幅率G及び減衰率Wの最適値を得ることができる。
図13は、図10に示すシステム40によって出力した歪補償前のRF信号と、歪補償後のRF信号のパワースペクトラムを示す図である。図中、歪補償前のRF信号は、実線にて示されている。また、歪補償後のRF信号は、星印をプロットすることにより示されている。
このRF信号は、中心周波数300MHz、帯域幅5MHzに設定されている。
図13に示すように、歪補償後のRF信号は、信号部分については、歪補償前のRF信号とよく一致している。
一方、帯域外の隣接チャネルにおいては、歪補償後のRF信号の方が、電力比に大きな低下がみられる。このことから、ACLRが改善され、信号特性の劣化が抑制されていることが確認できる。
このように、時間領域における信号波形では、顕著な変化はみられないが、周波数領域では、ACLRの改善が顕著にみられる。
〔3.7 反転増幅器について〕
本形態の信号生成部52が備えている反転増幅器55は、上述したように、ΔΣ変調器58の後段に接続されているが、第1実施形態と同様、本形態においても、ΔΣ変調器58の後段に反転増幅器55を接続する構成(図10参照)と、反転増幅器55をΔΣ変調器58の前段に接続する構成とが等価であるようにも思われる。
しかし、第1実施形態で述べたように、ΔΣ変調器58の前段に反転増幅器55を接続する構成では、歪補償用非対称成分fdist(t)を適切にΔΣ変調することができず、ΔΣ変調された歪補償用非対称成分fdist(t)の反転出力を精度よく得るには、歪補償用非対称成分fdist(t)をΔΣ変調した後に反転させるべきである。
本形態では、ΔΣ変調器58の後段に反転増幅器55を接続することで、1ビットの量子化信号とされた歪補償用非対称成分fdist(t)を反転することで逆特性に変換するように構成されているので、ΔΣ変調によって量子化信号とされるとともに反転された歪補償用非対称成分fdist(t)をより精度よく得ることができる。
このように、第1実施形態の歪補償装置20や、本形態の信号生成部52は、入力信号の反転信号をΔΣ変調された量子化信号(1bitパルス列)として出力する信号処理装置であって、前記入力信号(歪相殺信号u,歪補償用非対称成分fdist(t))をΔΣ変調して量子化信号を出力するΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の後段に接続され、前記量子化信号を反転する反転手段(反転増幅器)とを備えていることを特徴としている。
上記構成の信号処理装置によれば、上述のように、ΔΣ変調器の後段に反転手段を接続することで、量子化信号を反転するように構成されているので、ΔΣ変調によって量子化信号とされた入力信号に対する反転信号をより精度よく得ることができる。
〔4. 付記〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 無線通信装置
3 増幅器
4 デジタル/アナログ変換器
5 アップコンバータ(周波数変換部)
20 歪補償装置
21 加算器
22 演算部(生成部)
24 反転増幅器(反転部)
25 ΔΣ変調器
30 第1ΔΣ変調器
31 第2ΔΣ変調器
32 第1反転増幅器
33 第2反転増幅器
34 フィルタ回路(生成部)

Claims (8)

  1. 対象信号を増幅する増幅器の歪特性を補償する歪補償装置であって、
    前記増幅器によって増幅された前記対象信号に生じる歪成分を相殺するためのデジタルの歪相殺信号を生成する生成部と、
    前記歪相殺信号に対してΔΣ変調を行うΔΣ変調器と、
    ΔΣ変調された前記歪相殺信号を前記対象信号に加算するための加算器と、を備え、
    前記加算器は、前記増幅器に入力される対象信号をデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換器の後段に設けられていることを特徴とする歪補償装置。
  2. 前記デジタル/アナログ変換器におけるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅は、前記増幅器によって増幅された前記対象信号をアナログ/デジタル変換して前記生成部に与えるアナログ/デジタル変換器におけるアナログ/デジタル変換可能な周波数帯域幅よりも狭く設定されている請求項1に記載の歪補償装置。
  3. 前記デジタル/アナログ変換器によるデジタル/アナログ変換可能な周波数帯域幅は、前記対象信号の周波数帯域幅とほぼ一致している請求項1又は2に記載の歪補償装置。
  4. 前記加算器は、デジタル/アナログ変換された前記対象信号を送信周波数に変換する周波数変換部の後段に設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  5. 前記ΔΣ変調器と、前記加算器との間には、前記歪相殺信号を反転させる反転部をさらに備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  6. 前記生成部は、前記歪成分を次数の異なる歪成分ごとに分離し、次数の異なる歪成分ごとに複数の前記歪相殺信号を生成するものであり、
    前記ΔΣ変調器は、複数の前記歪相殺信号に対応して複数設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  7. 増幅器と、
    前記増幅器に入力される対象信号をデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換器と、
    前記増幅器の歪特性を補償する歪補償装置と、を備えた増幅装置であって、
    前記歪補償装置は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の歪補償装置であることを特徴とする増幅装置。
  8. 請求項7に記載の増幅装置を備えていることを特徴とする無線通信装置。
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