(本実施形態の衝撃吸収体10の概要)
まず、図2〜図4を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体10の概要について説明する。図2は、本実施形態の衝撃吸収体10と、その衝撃吸収体10を取り付ける取付対象物20と、の全体構成例を示す図である。図3は、図2に示す衝撃吸収体10の3X-3X'線の断面構成例を示す図であり、図4は、図2に示す衝撃吸収体10の4X-4X'線の断面構成例を示す図である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、衝撃を受ける前壁3Dと、前壁3Dと対向する後壁3Aと、前壁3Dと後壁3Aとの周囲を繋ぐ周囲壁(上壁3B,第1側壁4,下壁3C,第2側壁5に相当)と、前壁3Dと後壁3Aとを通過するパーティングラインPLと、を有して構成し、図4に示すように、前壁3Dと周囲壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部に薄肉部31が形成されている。また、図2に示すように、周囲壁(第1側壁4及び第2側壁5)には、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が形成されており、図3に示すように、溝状リブ6,7に薄肉部31が形成されている。
これにより、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまった場合でも、衝撃吸収体10を構成する壁部の中で薄肉部31の箇所が優先的に座屈することになる。その結果、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまっても、衝撃を効果的に吸収することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体10について詳細に説明する。
(第1の実施形態例)
<衝撃吸収体10の取り付け例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体10の取り付け例について説明する。図1は、図2〜図11に示す衝撃吸収体10を膝受け部材106の衝撃吸収体として自動車100に取り付けた状態を示す。
図1に示す自動車100は、ドライバー101を含む乗員のための前部座席102を備える乗員車室103を有して構成しており、メータ104がハンドル105の側壁に位置している。ハンドル105は、ステアリングコラム(図示せず)と接続しており、そのステアリングコラムを支持するステアリングサポートメンバが車体内壁面に支持されて車幅方向に設けられる。
本実施形態の衝撃吸収体10(図2〜図11参照)は、ステアリングコラムの両側にステアリングコラムを挟んで運転席側の膝受け部材106として取り付けられる。但し、ステアリングコラムの両脇のスペースは、他の車両構成部材(メータ104、ナビ装置、空調機器等)の設置スペースとの関係で、縦長となるため、その縦長のスペースにおいてドライバー101の各々の膝107に隣接するように膝受け部材106が取り付けられる。これにより、自動車100が衝撃を受けた場合に、ドライバー101の膝107が各々の膝受け部材106に接触し、膝受け部材106により衝撃を吸収し、膝107に加わる衝撃を低減することにしている。なお、図1には、運転席側の膝受け部材106を示したが、助手席側にも運転席側と同様に、助手席に乗員した乗員者の膝に隣接するように膝受け部材が取り付けられることになる。
<衝撃吸収体10の構成例>
次に、図2〜図11を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体10の構成例について説明する。図2は、本実施形態の衝撃吸収体10と、その衝撃吸収体10を取り付ける取付対象物20と、の全体構成例を示す図であり、図3は、図2に示す衝撃吸収体10の3X-3X'線の断面構成例を示し、図4は、図2に示す衝撃吸収体10の4X-4X'線の断面構成例を示し、図5は、図2に示す衝撃吸収体10の5X-5X'線の断面構成例を示す図である。図6は、図2に示す衝撃吸収体10の第1側壁4側の構成例を示し、図7は、図2に示す衝撃吸収体10の第2側壁5側の構成例を示す図である。図8は、図2に示す衝撃吸収体10のA側(後壁3A側)の構成例を示し、図9は、図2に示す衝撃吸収体10のB側(上壁3B側)の構成例を示す図である。図10は、図2に示す衝撃吸収体10のC側(下壁3C側)の構成例を示し、図11は、図2に示す衝撃吸収体10のD側(前壁3D側)の構成例を示す図である。なお、本実施形態では、取付対象物20として板金を用いた場合について説明する。但し、取付対象物20は、板金に限定するものではなく、任意の部材が適用可能である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空状に成形したものであり、図3に示すように、中空部2を有する本体3の互いに対向する第1側壁4及び第2側壁5をそれぞれ他方に向けて窪ませて形成した溝状リブ6,7を複数有している。第1側壁4及び第2側壁5に形成される溝状リブ6,7は、図2に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びており、その延び方向が衝撃方向と同一方向であることが好ましい。これにより、衝撃方向からの衝撃に対する剛性を高めることができる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図11に示す前壁3Dで衝撃を受け、その前壁3Dで受けた衝撃を、前壁3Dと対向する図8に示す後壁3Aを介して取付対象物20に伝えるようにしている。本実施形態の衝撃吸収体10は、上壁3B、前壁3D、下壁3C、後壁3Aに連なってパーティングラインPLが延びており、衝撃吸収体10の剛性を高めている。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、衝撃吸収体10を割れ難くすることができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を上述した膝受け部材106として使用する場合は、衝撃吸収体10の形状が小さくなるため、衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置から上下方向や左右方向にずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度から上下方向や左右方向にずれたりし易くなる。なお、上述したずれは、左右方向よりも上下方向において顕著に発生する。このため、本実施形態の衝撃吸収体10は、上壁3B、前壁3D、下壁3C、後壁3Aに連なってパーティングラインPLが延びている。その結果、上述したずれが発生した状態において前壁3Dで衝撃を受けた場合でも、衝撃吸収体10を割れ難くすることができる。
また、前壁3Dは、図11に示すように、上端(上壁3B側)と下端(下壁3C側)とに連なってパーティングラインPLが延びており、前壁3Dの剛性を高めている。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、前壁3Dを割れ難くすることができる。
また、前壁3Dにおいて、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けられている(a1=a2,b1=b2,c1=c2)。なお、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離は、溝状リブ6,7の底部とパーティングラインPLとを結ぶ線がパーティングラインPLと直交する状態で測定した値である。前壁3Dにおいて、第1側壁4に設けられた溝状リブ6の底部からパーティングラインPLまでの距離(a1,b1,c1)と、第2側壁5に設けられた溝状リブ7の底部からパーティングラインPLまでの距離(a2,b2,c2)と、を等しくすることで、溝状リブ6,7の肉厚を一定にすることができる。このため、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、所望の荷重を安定して維持し、所望の衝撃吸収量を確保することができる。
なお、パーティングラインPLの形状は、上述した条件を満足し、上端(上壁3B側)と下端(下壁3C側)とに連なって延びていれば特に限定せず、直線形状、曲線形状等の任意の形状で構成することができる。但し、本実施形態の衝撃吸収体10は、前壁3D側で衝撃を受け、後壁3A側を取付対象物20に取り付けるため、前壁3Dと後壁3Aとを通過するパーティングラインPLには、コンプレッション部CPを残さず表面を平坦に形成し、上壁3Bと下壁3Cとを通過するパーティングラインPLには、コンプレッション部CPを残すことが好ましい。コンプレッション部CPは、衝撃吸収体10の成形時に熱可塑性樹脂を分割金型で挟み込んで溶着して形成することができる。これにより、パーティングラインPLからの割れの発生を防止すると共に、安定した衝撃吸収を実現することができる。
また、前壁3Dと後壁3Aとの間を繋ぐ周囲壁である第1側壁4及び第2側壁5には、図6、図7に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が形成されている。溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の延び方向αと、後壁3Aの表面に対して垂直な垂直方向βと、が所定の角度θをなすように、第1側壁4及び第2側壁5に形成されている。なお、所定の角度θは、後壁3Aを取付対象物20に取り付けた際に、溝状リブ6,7の延び方向αが衝撃方向と同一方向となる角度である。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、その衝撃に対する剛性を高めつつ、且つ、溝状リブ6,7で衝撃を効果的に吸収することができる。
なお、本実施形態では、図6、図7に示すように、細長形状の溝状リブ6,7を延び方向αに連なって形成したが、細長形状の溝状リブ6,7に限定するものではなく、あらゆる形状のリブを延び方向αに連なって形成することも可能である。例えば、三角形状や台形形状の溝状リブ6,7を延び方向αに連なって形成することも可能である。この場合、第1側壁4側に形成される溝状リブ6と第2側壁5側に形成される溝状リブ7とは同一形状であることが好ましい。これにより、双方の溝状リブ6,7で均等に衝撃を吸収することができる。
また、本実施形態では、細長形状の溝状リブ6,7を延び方向αに連なって連続的に形成している。しかし、延び方向αの一部に溝状リブ6,7を形成せず、延び方向αに断続的(部分的)に溝状リブ6,7を形成することも可能である。この場合も、溝状リブ6,7の延び方向αが衝撃方向と同一方向となるため、溝状リブ6,7で衝撃を効果的に吸収することができる。但し、本実施形態のように、延び方向αに連続的に連なった溝状リブ6,7を形成することが好ましい。これにより、延び方向αに連続的に形成された溝状リブ6,7を、互いに対向する第1側壁4,第2側壁5に近づく方向、または、互いに対向する第1側壁4,第2側壁5から遠ざかる方向に凸になるように屈曲させることができる。その結果、更なる衝撃吸収効果を発揮することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を構成する熱可塑性樹脂としては、公知の樹脂が適用可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミドおよびこれらの混合物など、剛性等の機械的高度の大きい樹脂で構成することができる。
また、機械的強度(耐衝撃性)を損なわない範囲において、例えば、シリカ等の充填剤、顔料、染料、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、防炎剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、滑剤など当該分野で使用されている添加剤の1種または2種以上を含有することもできる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図2に示すように、本体3の後壁3Aから突出した軸部11と、抜け防止部12,13と、を有して構成している。軸部11と抜け防止部12,13は、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けるための取付部を構成する。本体3は、上壁3B,後壁3A,下壁3C,前壁3D,第1側壁4,第2側壁5の6つの壁で構成し、上壁3B,第1側壁4,下壁3C,第2側壁5で本体3の周囲壁を構成している。本実施形態の衝撃吸収体10は、図2に示すように、第1側壁4と第2側壁5との間の間隔よりも上壁3Bと下壁3Cとの間の間隔の方が長い形状で構成している。
軸部11は、円錐台形状で構成し、図12に示すように、取付対象物20に設けられた軸部11に対応する軸穴21に軸部11を挿入し、その軸部11を回転軸として図13に示すように本体3を取付対象物20に対して回転移動するように構成している。なお、軸部11は、円錐台形状に限定するものではなく、軸部11を軸として本体3を回転することが可能な形状であれば、円筒形状等の任意の形状で構成することも可能である。
また、抜け防止部12,13は、先端部が曲がった鍵形状で構成し、図12に示すように、取付対象物20に設けられた抜け防止部12,13に対応する取付穴22,23に抜け防止部12,13を挿入し、図13に示すように、軸部11を回転軸として本体3を取付対象物20に対して回転した際に、抜け防止部12,13の先端に設けられた規制部12b,13bの一部の底面と、本体3の表面と、で取付対象物20を挟み込むように移動し、抜け防止部12,13の先端に設けられた規制部12b,13bの一部が取付対象物20と重なるようにし、抜け防止部12,13が取付穴22,23から抜けなくなるように規制している。これにより、衝撃吸収体10を自動車に取り付けることができる。但し、本実施形態の衝撃吸収体10を自動車に取り付ける場合は、取付対象物20を自動車の部品に予め装着しておく必要がある。これにより、本実施形態の衝撃吸収体10は、ビスやネジなどの取付具を用いることなく、衝撃吸収体10を自動車に容易に取り付けることができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、後壁3Aに設けられた軸部11と抜け防止部12,13とで取付対象物20に衝撃吸収体10を取り付けることができるため、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けるための設置スペースを低減することができる。例えば、従来のように、取付部を後壁3A以外の周囲壁3B,4,3C,5に設けた場合は、取付部のスペースが余分に必要になり、設置スペースも大きくなる。これに対し、本実施形態の衝撃吸収体10は、後壁3Aに取付部(軸部11、抜け防止部12,13)を設け、その取付部11,12,13で衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けるため、設置スペースを低減すると共に、限られた設置スペースを有効活用することができる。また、本実施形態の衝撃吸収体10は、後壁3Aに設けられた軸部11と抜け防止部12,13とで取付対象物20に衝撃吸収体10を取り付けるため、図3に示すように、周囲壁である第1側壁4の一部を内側に窪ませて窪み部40を形成することができる。その結果、周囲壁の領域を低減し、衝撃吸収体10を設置スペースに設置した際に、他の車両構成部材と干渉しないようにすることができる。窪み部40を形成する箇所や形状は特に限定せず、設置スペースや他の車両構成部材との設置関係を基に、任意に形成することが可能である。
本実施形態の軸部11は、図4に示すように、ブロー成形により中空状に形成し、剛性を高くしている。なお、軸部11の内部に形成される中空部8は、本体3の内部に形成される中空部2と一体になっており、本体3の中空部2と軸部11の中空部8との間で空気の流入ができるように構成している。
また、軸部11に対応する軸穴21は、軸部11の外形形状と同じ大きさの形状で構成し、軸部11を軸穴21で回転させるようにしている。例えば、軸部11を円錐台形状で構成した場合は、軸穴21は、円形状で構成することになる。
また、本実施形態の抜け防止部12,13は、図5に示すように、ブロー成形により中空状に形成し、剛性を高くしている。図5は、一方の抜け防止部13の構成例を示しているが、他方の抜け防止部12も図5に示す構成とほぼ同様に構成する。また、抜け防止部12,13の内部に形成される中空部9は、本体3の内部に形成される中空部2と一体になっており、本体3の中空部2と抜け防止部12,13の中空部9との間で空気の流入ができるように構成している。
また、抜け防止部12,13は、図6に示すように、本体3の後壁3Aと接合する接合部12a,13aと、接合部12a,13aの先端部から突出した規制部12b,13bと、を有して構成し、図12、図13に示すように、軸部11を回転軸として本体3を回転移動した際に、本体3が取付対象物20の一方の面に位置し、規制部12b,13bが取付対象物20の他方の面に位置し、接合部12a,13aが取付穴22,23に位置するように構成している。これにより、軸部11を回転軸として本体3を回転移動した際に、規制部12b,13bの一部が取付対象物20と重なり、抜け防止部12,13が取付穴22,23から抜けなくなるように規制することができる。
また、本実施形態の抜け防止部12,13は、規制部12b,13bと本体3との間に薄肉部(バリ)12c,13cが形成されており、軸部11を回転軸として本体3を回転移動した際に、取付対象物20によって薄肉部(バリ)12c,13cを変形させ、規制部12b,13bと取付対象物20の表面との間、及び、取付対象物20の裏面と本体3との間を薄肉部(バリ)12c,13cで密着させることにしている。これにより、規制部12b,13bの一部が取付対象物20に重なった状態で取付対象物20を固定することができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10をブロー成形で成形した際に、抜け防止部12,13の先端に設けられた規制部12b,13bと本体3との間に薄肉部(バリ)12c,13cが必然的に形成されるが、軸部11を回転軸として本体3を回転移動した際に、取付対象物20によって薄肉部(バリ)12c,13cを変形させることができるため、ブロー成形後に薄肉部(バリ)12c,13cを切除しなくても済み、ブロー成形後の後処理工程(バリ取りなどの仕上げ工程)を簡略化することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、上述した軸部11や抜け防止部12,13をパーティングラインPL上に設けることにしている。これにより、後壁3AのパーティングラインPLの強度を向上させることができる。その結果、衝撃吸収体10が衝撃を受けた際に、後壁3AのパーティングラインPLが割れるのを防止し、衝撃吸収性能を担保することができる。
また、本実施形態の後壁3Aは、図4、図5に示すように、取付対象物(図示せず)に向かって突出した凸部30を有している。凸部30は、後壁3Aに形成されるパーティングラインPL(軸部11や抜け防止部12,13が設けられる箇所)を挟んで両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成されていることが好ましい。これにより、後壁3Aを取付対象物に取り付けた場合に、パーティングラインPLの箇所(軸部11や抜け防止部12,13が設けられる箇所)よりも、後壁3Aの両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成された凸部30が取付対象物に当接し、本体3の支えになるため、衝撃吸収体10を倒れ難くし、衝撃吸収体10を取付対象物に対して安定して固定することができる。また、前壁3Dで衝撃を受けた場合でも、その前壁3Dに対向する後壁3Aの両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成された凸部30が取付対象物に当接するため、衝撃吸収体10の横倒れや回転を防止することができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図4、図5に示すように、前壁3Dと側壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部に薄肉部31を有している。薄肉部31の肉厚は、衝撃吸収体10の壁部の平均肉厚の30〜70%の範囲で構成している。薄肉部31は、前壁3Dと側壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部の湾曲形状を調整することで形成することができる。即ち、角部を成形するための金型の曲率半径を小さくすることで、当該角部を薄肉にすることができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図3に示すように、第1側壁4と第2側壁5とに形成される溝状リブ6,7の部分に薄肉部31を有している。この場合、溝状リブ6,7を形成する部分の樹脂の引き伸ばし量を多くすることで、薄肉部31を形成することができる。即ち、溝状リブ6,7を形成する金型の湾曲形状を急にすることで(曲率半径を小さくすることで)、薄肉部31を形成することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図4、図5に示すように、前壁3Dと側壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部や、図3に示すように、側壁(第1側壁4及び第2側壁5)に形成する溝状リブ6,7の部分に薄肉部31を有していることで、衝撃吸収体10が衝撃を受けた場合に、薄肉部31の箇所が優先的に座屈することになる。その結果、衝撃を受けた際に、衝撃吸収体10が反発することなく、座屈を開始し、効果的に衝撃を吸収することができる。また、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、薄肉部31が効果的に衝撃を受けることになるため、衝撃吸収体10の横倒れや回転を防止することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を構成する壁部の平均肉厚は、0.7〜5.0mmの範囲で構成し、上述した薄肉部31は、その平均肉厚の30〜70%の範囲で構成することが好ましい。これにより、効果的に衝撃を吸収することができる。
なお、平均肉厚については、以下のように算出することができる。
例えば、図3に示す側壁(第1側壁4及び第2側壁5)の上端側(上壁3B側)、中央、下端側(下壁3C側)の3箇所(但し、溝状リブ6,7が形成されていない箇所で、且つ、前壁3Dと側壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部ではない箇所)の断面における、2つの金型分割点を結ぶ直線の垂直二等分線と交わる部分(合計6箇所)の肉厚を、ノギスにより測定し、その6つの測定値の平均値を、平均肉厚として算出する。これにより、衝撃吸収体10を構成する壁部の平均肉厚を算出することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付ける際は、図12に示すように、軸部11を軸穴21に挿入すると共に、抜け防止部12,13を取付穴22,23に挿入する。次に、軸部11を回転軸とし、図13に示すように、本体3を取付対象物20に対して所定角度(例えば、30°)回転移動し、抜け防止部12,13の先端に設けられた規制部12b,13bの一部を取付対象物20と重なった状態にする。これにより、軸部11や抜け防止部12,13が軸穴21や取付穴22,23から抜けるのを規制し、図14〜図16に示すように、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けることができる。なお、図14〜図16は、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けた状態を示しており、図14は、衝撃吸収体10の周囲壁である第1側壁4側から見た状態を示し、図15は、前壁3D側から見た状態を示し、図16は、図14に示す16X-16X'線の断面構成例を示す図である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図14に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6が第1側壁4に形成されており、その溝状リブ6の延び方向αと、後壁3Aに垂直な垂直方向βと、が所定の角度θをなすようにしている。このため、溝状リブ6は、後壁3Aに垂直な垂直方向βに対して傾斜する方向に延びている。これにより、図14に示すように、後壁3Aを取付対象物20に取り付けた際に、溝状リブ6の延び方向αを衝撃方向と同一方向にすることができる。その結果、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、その衝撃に対する剛性を高めつつ、且つ、溝状リブ6で衝撃を効果的に吸収することができる。なお、図14は、第1側壁4側の溝状リブ6の延び方向αを示しているが、第2側壁5側の溝状リブ7の延び方向αについても第1側壁4側の溝状リブ6と同様になる。図14は、第1側壁4に直交する方向から見た状態を示し、溝状リブ6の延び方向αは、後壁3Aに垂直な垂直方向βに対して傾いている。
また、本実施形態の衝撃吸収体10の前壁3Dは、図15に示すように、上端(上壁3B側)と下端(下壁3C側)とに連なってパーティングラインPLが延びており、前壁3Dの剛性を高めている。このため、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、前壁3Dを割れ難くすることができる。また、前壁3Dにおいて、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けられている(a1=a2,b1=b2,c1=c2)。このため、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、所望の荷重を安定して維持し、所望の衝撃吸収量を確保することができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図2に示すように、軸部11と抜け防止部12,13とが一直線上になるように後壁3Aに一体形成している。これにより、図13に示すように、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付ける箇所を一直線上にすることができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10の後壁3Aは、図16に示すように、取付対象物20に向かって突出した凸部30を有しており、その凸部30は、後壁3Aに形成されるパーティングラインPL(軸部11や抜け防止部12,13が設けられる箇所)を挟んで両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成されている。これにより、後壁3Aを取付対象物20に取り付けた場合に、後壁3Aの両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成された凸部30が取付対象物20に当接し、本体3の支えになるため、衝撃吸収体10を倒れ難くし、衝撃吸収体10を取付対象物20に安定して固定することができる。また、前壁3Dで衝撃を受けた場合でも、後壁3Aの両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)に形成された凸部30が取付対象物20に当接するため、衝撃吸収体10の横倒れや回転を防止することができる。
なお、本実施形態の後壁3Aの両側に形成された凸部30は、図16に示すように、パーティングラインPL(軸部11や抜け防止部12,13が設けられる箇所)から両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)に離れるについて連続的に突出量が増加するように構成している。しかし、部分的に突出量が増加するように構成することも可能である。なお、突出量は、後壁3AにおいてパーティングラインPLが形成される箇所PL(O)と、凸部30が形成された箇所の頂点Hと、を結ぶ線L1と、衝撃吸収体10を成形する分割金型の型抜き方向L2と、のなす角度θ4が、0°〜4°の範囲になるようにすることが好ましい。なお、角度θ4が0°の場合は、突出量は0となる。パーティングラインPLを挟んで両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)の突出量が全て0の場合は、後壁3Aの両側に形成される凸部30は、平坦になり、パーティングラインPLを挟んで両側の後壁3Aの表面が、同一平面上に位置することになる。この場合も、パーティングラインPLを挟んで両側(第1側壁4側及び第2側壁5側)の後壁3Aが取付対象物20に当接するため、衝撃吸収体10の横倒れや回転を防止することができる。
本実施形態の後壁3Aに形成される凸部30は、例えば、図17(a)に示す構成例で形成することができる。図17(a)は、後壁3A側の構成例を示し、後壁3Aの一部の領域に凸部30が形成された構成例を示している。図17(a)に示す17A-17A'線上の帯状の凸部30や17C-17C'線上の帯状の凸部30は、図16に示す凸部30と同様に、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)に離れるにつれて連続的に突出量が増加するように構成することができる。また、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)まで突出量が0となるように構成することもできる。また、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)との間で突出量が不連続に変動するように構成することもできる。なお、凸部30以外の領域は、従来と同様に、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)に離れるにつれて突出量が低減するように構成したりするため、凸部30の突出量が0の状態であっても、結果的に、パーティングラインPLを挟んで両端の凸部30の部分が突出した状態を構成することができる。
また、図17(a)に示す17B-17B'線上の四角形状の凸部30は、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)までの一部の区間に形成された状態を示し、その一部の区間に形成された凸部30は、パーティングラインPL側から両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)側に向けて連続的に突出量が増加するように構成したり、パーティングラインPL側から両端側まで突出量が0(平坦形状)となるように構成したりすることができる。図17(a)に示す17B-17B'線上の後壁3Aの断面形状は、例えば、図17(b)に示すように、後壁3Aの一部の区間に任意の突出量の凸部30を形成して構成することができる。図17(b)に示す凸部30は、パーティングラインPL側から両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)側に向けて連続的に突出量が増加するように構成した場合の構成例を示す。
なお、図17(a)に示す凸部30は、後壁3Aの一部の領域に形成することにしたが、後壁3Aの全ての領域に形成することも可能である。この場合は、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)に離れるにつれて連続的に突出量が増加するように構成したり、また、パーティングラインPLから両端(第1側壁4側及び第2側壁5側)まで突出量が0となるように構成したりする。
なお、上述した横倒れや回転を防止する凸部30を有する後壁3Aを形成する場合は、図18に示すようなキャビティ面202を有する分割金型200を用いることになる。図18に示す分割金型200において上述した凸部30を有する後壁3Aを形成するキャビティ面202は、分割金型200の型抜方向と直交する直交方向Yに凹んだ凹部202A2を有して構成する。これにより、図16、図17に示す凸部30を有する後壁3Aを形成することができる。なお、凹部202A2は、パーティングラインPLを形成する食い切り部202A1から離れるにつれて分割金型200の型抜方向と直交する直交方向Yの凹み量が連続的に増加するように形成することで、キャビティ面202に凹部202A2を有して構成しても、成形品である衝撃吸収体10を分割金型200から抜き易くすることができる。
また、本実施形態の溝状リブ6,7は、図16に示すように、対向する側壁(第1側壁4,第2側壁5)から遠ざかる方向に凸になるように屈曲しており、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度と異なった場合でも、衝撃を吸収することができるようにしている。図16に示す溝状リブ6,7は、対向する第1側壁4,第2側壁5から遠ざかる方向(外側方向)に凸になるように屈曲した形状で構成しており、溝状リブ6,7の屈曲角度θ3は、1〜10°の範囲にすることが好ましい。溝状リブ6,7の屈曲角度θ3が1°未満の場合は、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度と異なった場合に衝撃吸収体10が倒れ易くなり、また、10°以上の場合は、剛性が弱くなってしまう。このため、溝状リブ6,7の屈曲角度θ3は、1〜10°の範囲にすることが好ましい。図16に示す溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部を構成する部分の第1側壁4及び第2側壁5を示している。
溝状リブ6,7の屈曲角度θ3は、溝状リブ6,7自身が屈曲している角度であり、例えば、第1側壁4側に設けられる溝状リブ6の屈曲角度θ3は、溝状リブ6の底部を構成する部分の第1側壁4と、溝状リブ6が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第1側壁4と、のなす角度(θ1,θ2)の合算(θ3=θ1+θ2)である。
溝状リブ6は、第1の溝状リブ6aと第2の溝状リブ6bとを有し、第1の溝状リブ6aと第2の溝状リブ6bとの連接部分6cで、第2側壁5から遠ざかる方向に凸になるように屈曲した部分を構成している。溝状リブ6の屈曲角度θ3は、第1の溝状リブ6aの底部を構成する部分の第1側壁4と、溝状リブ6が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第1側壁4と、のなす角度θ1、及び、第2の溝状リブ6bの底部を構成する部分の第1側壁4と、溝状リブ6が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第1側壁4と、のなす角度θ2、で構成する(θ3=θ1+θ2)。
また、第2側壁5側に設けられる溝状リブ7の屈曲角度θ3も上述した溝状リブ6の屈曲角度θ3と同様に、溝状リブ7の底部を構成する部分の第2側壁5と、溝状リブ7が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第2側壁5と、のなす角度(θ1,θ2)の合算(θ3=θ1+θ2)である。
溝状リブ7は、第1の溝状リブ7aと第2の溝状リブ7bとを有し、第1の溝状リブ7aと第2の溝状リブ7bとの連接部分7cで、第1側壁4から遠ざかる方向に凸になるように屈曲した部分を構成している。溝状リブ7の屈曲角度θ3は、第1の溝状リブ7aの底部を構成する部分の第2側壁5と、溝状リブ7が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第2側壁5と、のなす角度θ1、及び、第2の溝状リブ7bの底部を構成する部分の第2側壁5と、溝状リブ7が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の第2側壁5と、のなす角度θ2、で構成する(θ3=θ1+θ2)。
なお、本実施形態の溝状リブ6を構成する第1の溝状リブ6aと第2の溝状リブ6bとは、連接部分6cで構成する面で面対称になっている。同様に、溝状リブ7を構成する第1の溝状リブ7aと第2の溝状リブ7bとは、連接部分7cで構成する面で面対称になっている。このため、図16に示すθ1とθ2とは同じ角度(θ1=θ2)になっている。
また、溝状リブ6と溝状リブ7とは、溝状リブ6の底部と溝状リブ7の底部との間の中間点の位置の領域で構成する平面(第1側壁4及び第2側壁5と平行な平面)で面対称になっている。このため、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、溝状リブ6,7が均等に座屈し、衝撃を均一に吸収することができる。
なお、図16に示す溝状リブ6,7は、対向する第1側壁4,第2側壁5から遠ざかる方向(外側方向)に凸になるように屈曲した形状で構成しているが、対向する第1側壁4,第2側壁5に近づく方向(内側方向)に凸になるように屈曲する形状で構成することも可能である。また、図16に示す溝状リブ6,7は、中央付近の溝状リブ6,7の深さh1よりも、後壁3A側の溝状リブ6,7の深さh2や前壁3D側の溝状リブ6,7の深さh3が深くなるような形状で構成している(h1<h2、且つ、h1<h3)。しかし、図19に示すように、前壁3Dから中央付近までの溝状リブ6,7の深さを同じ深さh1にし、後壁3A側の溝状リブ6,7の深さh2を深くするような形状で構成することも可能である(h1<h2)。なお、図19に示す溝状リブ6,7の屈曲角度θ3は、第1の溝状リブ6a,7aの底部を構成する部分の側壁4,5と、溝状リブ6,7が形成されてなく、平坦な面を構成する部分の側壁4,5と、のなす角度θ1となる。
このように、前壁3Dと後壁3Aとの間を繋ぐ周囲壁である第1側壁4,第2側壁5に設けられる溝状リブ6,7が屈曲していれば、その屈曲した箇所で衝撃を効果的に吸収することができる。なお、図16、図19に示す溝状リブ6,7は、後壁3Aと前壁3Dとの中央付近において屈曲した構成例を示しているが、その屈曲する箇所は、中央付近に限定せず、任意の箇所で屈曲した構成例にすることも可能である。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、軸部11を後壁3Aの中央に設け、抜け防止部12,13を軸部11の両側に設けるようにしている。軸部11を後壁3Aの中央に設けることで、本体3の回転半径を小さくすることができ、衝撃吸収体10の取付作業に必要なスペースを小さくすることができる。例えば、軸部11を後壁3Aの一方の端部近傍に設け、少なくとも1つの抜け防止部12を後壁3Aの他方の端部近傍に設けた場合は、軸部11を回転軸として本体3を回転し、抜け防止部12をその抜け防止部12に対応する取付穴22に嵌め込むことになるため、本体3の回転半径が大きくなってしまう。これに対し、軸部11を後壁3Aの中央近傍に設け、後壁3Aの両端近傍に抜け防止部12,13を設けた場合は、軸部11を回転軸として本体3を回転し、抜け防止部12,13をその抜け防止部12,13に対応する取付穴22,23に嵌め込むことになるため、本体3の回転半径を小さくすることができる。従って、軸部11を後壁3Aの中央に設け、抜け防止部12,13を軸部11の両側に設けることで、本体3の回転半径を小さくすることができる。また、抜け防止部12,13を軸部11の両側に設けることで、本体3の回転を規制し易くすることができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図12、図13に示すように、2つの抜け防止部12,13を有し、第1の抜け防止部12と軸部11との間の距離r1と、第2の抜け防止部13と軸部11との間の距離r2と、を異ならせることにしている。なお、取付対象物20に設ける取付穴22,23も抜け防止部12,13に合わせて構成する。これにより、抜け防止部12,13の誤挿入を防止することができる。なお、本実施形態では、2つの抜け防止部12,13を同じ形状で構成しているため、軸部11との間の距離r1,r2を異ならせることにしている。しかし、2つの抜け防止部12,13を異なる形状で構成し、抜け防止部12,13の誤挿入を防止することも可能である。
なお、上述した衝撃吸収体10は、図11に示すように、第1側壁4側に設ける溝状リブ6と第2側壁5側に設ける溝状リブ7とが同一位置で互いに対向するように構成している。しかし、図20に示すように、第1側壁4側に設ける溝状リブ6と第2側壁5側に設ける溝状リブ7とが互い違いに対向するように構成することも可能である。この構成の場合であっても、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けることが好ましい(a1=a2,b1=b2,c1=c2)。これにより、前壁3Dにおいて衝撃を受ける箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度と異なったりした場合でも、所望の荷重を安定して維持することができるため、所望の衝撃吸収量を確保することができる。なお、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離は、溝状リブ6,7の底部とパーティングラインPLとを結ぶ線がパーティングラインPLと直交する状態で測定した値である。
また、上述した衝撃吸収体10は、図2に示すように、後壁3Aに軸部11と抜け防止部12,13を有し、図12に示すように、軸部11を軸穴21に挿入すると共に、抜け防止部12,13を取付穴22,23に挿入する。そして、図13に示すように、軸部11を回転軸として本体3を取付対象物20に対して回転移動し、抜け防止部12,13の規制部12b,13bの一部を取付対象物20に重ならせることで、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けることにしている。しかし、抜け防止部12,13は、少なくとも1つあれば良く、軸部11と1つの抜け防止部12との構成であっても衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けることができる。
また、上述した衝撃吸収体10は、貫通した軸穴21に軸部11を挿入することにしている。しかし、軸穴21は貫通している必要はなく、軸部11が安定して回転することが可能であればあらゆる形状の軸穴21を設けることが可能である。また、取付対象物20に軸穴21を設けず、軸部11を取付対象物20に当接させて軸部11を回転させるようにすることも可能である。また、後壁3Aに軸部11を設けずに、2つの抜け防止部12,13のみを後壁3Aに設け、その2つの抜け防止部12,13を取付穴22,23に挿入し、抜け防止部12,13を取付穴22,23の領域内で移動することで、本体3を回転させると共に、抜け防止部12,13の規制部12b,13bの一部を取付対象物20に重ならせ、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けるようにすることも可能である。
また、上述した衝撃吸収体10は、後壁3A側に軸部11を設け、取付対象物20側に軸穴21を設けることにしている。しかし、後壁3A側に軸穴21を設け、取付対象物20側に軸部11を設けることも可能である。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図21に示すように、後壁3Aから突出する係止部14と、抜け防止部12,13から突出する係止部15と、の少なくとも1つの係止部14,15を有し、係止部14,15は、図22に示すように、本体3を回転することで、係止部14,15を取付対象物20に設けられた係止穴24,25に係止して本体3の逆方向への回転を規制するように構成することも可能である。係止穴24は、後壁3Aから突出する係止部14に対応する穴であり、係止穴25は、抜け防止部12,13から突出する係止部15に対応する穴である。
なお、係止部14,15は、ブロー成形により中空状に形成し、剛性を高くするように構成する。また、後壁3Aから突出する係止部14の内部に形成される中空部は、本体3の内部に形成される中空部2と一体になっており、本体3の中空部2と係止部14の中空部との間で空気の流入ができるように構成している。また、抜け防止部12,13から突出する係止部15の内部に形成される中空部は、抜け防止部12,13の内部に形成される中空部9と一体になっており、抜け防止部12,13の中空部9と係止部15の中空部との間で空気の流入ができるように構成している。
なお、係止部14,15や係止穴24,25の形状は、係止部14,15を係止穴24,25に挿入して係止部14,15を係止穴24,25で係止し、本体3の逆方向への回転を規制することが可能であれば、あらゆる構成例が適用可能である。例えば、三角形状や円弧形状で構成したりすることが可能である。但し、本体3の逆方向への回転を規制することを鑑み、係止部14,15が係止穴24,25に当接する部分は、係止穴24,25に面で接する形状で構成することが好ましい。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図23、図24に示すように、上壁3Bと下壁3Cとを通過するパーティングラインPLの部分にコンプレッション部CPを残し、上壁3Bと下壁3Cとの溶着強度を向上させる。また、衝撃を受ける前壁3Dと取付対象物20に取り付ける後壁3Aとを通過するパーティングラインPLの部分は平坦にしておくことが好ましい。これにより、パーティングラインPLからの割れを防止すると共に安定した衝撃吸収を行うことができる。図23は、後壁3A側からみた衝撃吸収体10の斜視図であり、図24は、前壁3D側からみた衝撃吸収体10の斜視図である。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図24に示すように、周囲壁である第1側壁4の一部を内側に窪ませて窪み部40を形成することができる。その結果、周囲壁の領域を低減し、衝撃吸収体10を設置スペースに設置した際に、他の車両構成部材と干渉しないようにすることができる。
図25は、図26に示す実施例、比較例のブロー成形製の衝撃吸収体を衝突試験機にかけて得られた試験結果を示すグラフである。図25の試験結果は、実施例、比較例の衝撃吸収体において、理想的な位置から衝撃を受けた場合(α1,β1)と、理想的な位置からずれた位置から衝撃を受けた場合(α2,β2)と、理想的な進入角度と異なる進入角度で衝撃を受けた場合(α3,β3)と、の試験結果を示す。
図26(a)に示す比較例の衝撃吸収体の寸法は、前壁3Dは120mm×50mm、上壁3Bは80mm×50mm、後壁3Aは90mm×50mm、下壁3Cは70mm×50mmとした。このため、第1側壁4及び第2側壁5は、上壁3B側が80mm、下壁3C側が70mm、後壁3A側が90mm、前壁3D側が120mmとなる。また、衝撃吸収体の壁部の平均肉厚は、1.30mmとし、前壁3Dと周囲壁4,5,3B,3Cとを繋ぐ角部に形成される薄肉部31の肉厚は、0.96mmとした。また、溝状リブ6,7を直線形状にした。また、後壁3Aは、パーティングラインPLの位置が両側端(第1側壁4側及び第2側壁5側)の位置よりも取付対象物20側に突出するように構成した。
図26(b)に示す実施例の衝撃吸収体の寸法は、比較例と同じ寸法とし、衝撃吸収体の壁部の平均肉厚は、1.48mmとし、前壁3Dと周囲壁4,5,3B,3Cとを繋ぐ角部に形成される薄肉部31の肉厚は、0.48mmとした。また、溝状リブ6,7を屈曲形状にした。また、後壁3Aは、パーティングラインPLの位置よりも両側端(第1側壁4側及び第2側壁5側)の位置が取付対象物20側に突出するように構成した。
図26(b)に示す実施例の衝撃吸収体は、理想的な位置から衝撃を受けた場合(β1)に得られる衝撃吸収性能が、図26(a)に示す比較例の衝撃吸収体と同じになるように、後壁3Aの形状、溝状リブ6,7の形状、薄肉部31の肉厚を異ならせて形成した。
衝撃吸収体を構成する材料は、三井住友化学株式会社製のポリプロピレン「AD571」(曲げ弾性率1050MPa)を使用した。
衝突試験機は、保土ヶ谷技研株式会社製の衝突試験機で、質量が20kg、先端形状がφ75mm、長さが160mmの柱状の衝突子を19km/時の速度で衝突させた。
図25に示す試験結果から明らかなように、搭乗者の損傷を防止する観点から目標荷重を5KNとした場合、比較例の衝撃吸収体の場合は、理想的な位置からずれた位置から衝撃を受けた場合(α2)と、理想的な進入角度と異なる進入角度で衝撃を受けた場合(α3)と、において、衝撃吸収量が小さくなることが判明した。
これに対し、実施例の衝撃吸収体の場合は、理想的な位置からずれた位置から衝撃を受けた場合(β2)と、理想的な進入角度と異なる進入角度で衝撃を受けた場合(β3)と、においても衝撃吸収量が変化せず、安定した衝撃吸収量を確保できると判明した。なお、衝撃吸収量は、曲線の下の曲線と横軸とで囲まれる部分の面積(但し、目標荷重を超える範囲を除く)である。
従って、図26(b)に示す実施例の衝撃吸収体のように、前壁3Dと周囲壁4,5,3B,3Cとを繋ぐ角部に薄肉部31を形成し、溝状リブ6,7を屈曲形状にし、後壁3Aは、パーティングラインPLの位置よりも両側端(第1側壁4側及び第2側壁5側)の位置が取付対象物20側に突出するように構成することで、理想的な位置からずれた位置から衝撃を受けた場合や、理想的な進入角度と異なる進入角度で衝撃を受けた場合であっても、安定した衝撃吸収量を確保し、所望の衝撃吸収性能を発揮できる。
<本実施形態の衝撃吸収体10の作用・効果>
このように、本実施形態の衝撃吸収体10は、衝撃を受ける前壁3Dと、前壁3Dと対向する後壁3Aと、前壁3Dと後壁3Aとの周囲を繋ぐ周囲壁(上壁3B,第1側壁4,下壁3C,第2側壁5に相当)と、前壁3Dと後壁3Aとを通過するパーティングラインPLと、を有して構成し、図4に示すように、前壁3Dと周囲壁(第1側壁4及び第2側壁5)とを繋ぐ角部に薄肉部31が形成されている。また、図2に示すように、周囲壁(第1側壁4及び第2側壁5)には、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が形成されており、図3に示すように、溝状リブ6,7に薄肉部31が形成されている。
これにより、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまった場合でも、衝撃吸収体10を構成する壁部の中で薄肉部31の箇所が優先的に座屈することになる。その結果、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまっても、衝撃を効果的に吸収することができる。
なお、上述する実施形態では、衝撃吸収体10の抜け防止部12,13を取付対象物20に設けられた取付穴22,23に挿入することにした。しかし、取付対象物20の構成を自動車の部品に対して予め形成し、衝撃吸収体10を自動車の部品(取付対象物)に直接取り付けるようにすることも可能である。例えば、取付穴22,23を自動車の部品に対して予め形成し、衝撃吸収体10の抜け防止部12,13を自動車の部品(取付対象物)に直接取り付けるようにすることも可能である。
(第2の実施形態例)
次に、第2の実施形態例について説明する。
第1の実施形態は、膝受け部材(knee bolster)に好適な衝撃吸収体10について説明した。
第2の実施形態は、バンパーアブソーバーに好適な衝撃吸収体10について説明する。
<衝撃吸収体10の構成例>
まず、図27〜図33を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体10の構成例について説明する。図27は、本実施形態の衝撃吸収体10と、その衝撃吸収体10を取り付ける取付対象物20と、の全体構成例を示す図であり、図28は、図27に示す衝撃吸収体10の28X-28X'線の断面構成例を示し、図29は、図27に示す衝撃吸収体10の29X-29X'線の断面構成例を示す。図30は、図27に示す衝撃吸収体10の上壁3B側の構成例を示し、図31は、図27に示す衝撃吸収体10の下壁3C側の構成例を示す図である。図32は、図27に示す衝撃吸収体10のA側(後壁3A側)の構成例を示し、図33は、図27に示す衝撃吸収体10のD側(前壁3D側)の構成例を示す図である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空状に成形したものであり、図28に示すように、中空部2を有する本体3の互いに対向する上壁3B及び下壁3Cをそれぞれ他方に向けて窪ませて形成した溝状リブ6,7を複数有している。上壁3B及び下壁3Cに形成される溝状リブ6,7は、図27に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びており、その延び方向が衝撃方向と同一方向であることが好ましい。これにより、衝撃方向からの衝撃に対する剛性を高めることができる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図33に示す前壁3Dで衝撃を受け、その前壁3Dで受けた衝撃を、前壁3Dと対向する図32に示す後壁3Aを介して取付対象物20に伝えるようにしている。本実施形態の衝撃吸収体10は、第1側壁4、前壁3D、第2側壁5、後壁3Aに連なってパーティングラインPLが延びており、衝撃吸収体10の剛性を高めている。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、衝撃吸収体10を割れ難くすることができる。
また、前壁3Dは、図33に示すように、両側端(第1側壁4側及び第2側壁5側)に連なってパーティングラインPLが延びており、前壁3Dの剛性を高めている。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、前壁3Dを割れ難くすることができる。
また、前壁3Dにおいて、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けられている。前壁3Dにおいて、上壁3Bに設けられた溝状リブ6の底部からパーティングラインPLまでの距離と、下壁3Cに設けられた溝状リブ7の底部からパーティングラインPLまでの距離と、を等しくすることで、溝状リブ6,7の肉厚を一定にすることができる。このため、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、所望の荷重を安定して維持し、所望の衝撃吸収量を確保することができる。なお、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離は、溝状リブ6,7の底部とパーティングラインPLとを結ぶ線がパーティングラインPLと直交する状態で測定した値である。また、パーティングラインPLの形状は、上述した条件を満足し、両側端に連なって延びていれば特に限定せず、直線形状、曲線形状等の任意の形状で構成することができる。
また、上壁3B及び下壁3Cには、図30、図31に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が形成されている。溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の延び方向αが衝撃方向と同一方向となるように構成している。これにより、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、その衝撃に対する剛性を高めつつ、且つ、溝状リブ6,7で衝撃を効果的に吸収することができる。なお、本実施形態では、図30、図31に示すように、縦長形状や横長形状の溝状リブ6,7を延び方向αに形成したが、縦長形状や横長形状の溝状リブ6,7に限定するものではなく、あらゆる形状のリブを延び方向αに形成することが可能である。例えば、円形状の溝状リブ6,7を延び方向αに断続的に形成することも可能である。即ち、延び方向αにリブが形成されていれば、そのリブの形状は特に限定せず、任意のリブを形成することが可能である。但し、図30、図31に示すように、延び方向αに連続的に連なった溝状リブ6,7を形成することが好ましい。これにより、延び方向αに連続的に形成された溝状リブ6,7を、互いに対向する上壁3B,下壁3Cに近づく方向、または、互いに対向する上壁3B,下壁3Cから遠ざかる方向に凸になるように屈曲させることができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を構成する熱可塑性樹脂としては、公知の樹脂が適用可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミドおよびこれらの混合物など、剛性等の機械的高度の大きい樹脂で構成することができる。
また、機械的強度(耐衝撃性)を損なわない範囲において、例えば、シリカ等の充填剤、顔料、染料、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、防炎剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、滑剤など当該分野で使用されている添加剤の1種または2種以上を含有することもできる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図32に示すように、本体3の後壁3Aから突出した軸部51と、取付部52と、を有して構成している。軸部51と取付部52は、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けるための取付部を構成する。本体3は、上壁3B,後壁3A,下壁3C,前壁3D,第1側壁4,第2側壁5の6つの壁で構成し、上壁3B,第1側壁4,下壁3C,第2側壁5で本体3の周囲壁を構成している。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図27に示すように、上壁3Bと下壁3Cとの間の間隔よりも第1側壁4と第2側壁5との間の間隔の方が長い形状で構成している。
本実施形態の衝撃吸収体10は、後壁3Aから突出した軸部51を取付対象物20に設けられた軸部51に対応する軸穴61に挿入すると共に、後壁3Aから突出した取付部52を取付対象物20に設けられた取付部52に対応する取付穴62に挿入し、図34に示すように、本体3を取付対象物20に取り付けるように構成している。これにより、衝撃吸収体10を自動車に取り付けることができる。但し、本実施形態の衝撃吸収体10を自動車に取り付ける場合は、取付対象物20を自動車の部品に予め装着しておく必要がある。これにより、本実施形態の衝撃吸収体10は、ビスやネジなどの取付具を用いることなく、衝撃吸収体10を自動車に容易に取り付けることができる。
本実施形態の取付部52は、図29に示すように、ブロー成形により中空状に形成し、剛性を高くしている。また、取付部52の内部に形成される中空部9は、本体3の内部に形成される中空部2と一体になっており、本体3の中空部2と取付部52の中空部9との間で空気の流入ができるように構成している。なお、軸部51も上述した取付部52と同様に、ブロー成形により中空状に成形している。本実施形態の取付部52や軸部51の形状は特に限定せず、任意の形状で構成することが可能である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、上述した軸部51や取付部52をパーティングラインPL上に設けることにしている。これにより、後壁3AのパーティングラインPLの強度を向上させることができる。その結果、衝撃吸収体10が衝撃を受けた際に、後壁3AのパーティングラインPLが割れるのを防止し、衝撃吸収性能を担保することができる。
また、本実施形態の後壁3Aは、図29に示すように、取付対象物(図示せず)に向かって突出した凸部30を有している。凸部30は、後壁3Aに形成されるパーティングラインPL(軸部51や取付部52が設けられる箇所)を挟んで両側に形成されていることが好ましい。これにより、後壁3Aを取付対象物に取り付けた場合に、パーティングラインPLの箇所(軸部51や取付部52が設けられる箇所)よりも、後壁3Aの上下(上壁3B側及び下壁3C側)に形成された凸部30が取付対象物に当接し、本体3の支えになるため、衝撃吸収体10を倒れ難くし、衝撃吸収体10を取付対象物に対して安定して固定することができる。また、前壁3Dで衝撃を受けた場合でも、その前壁3Dに対向する後壁3Aの上下(上壁3B側及び下壁3C側)に形成された凸部30が取付対象物20に当接するため、衝撃吸収体10の上下方向への倒れを防止することができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図29に示すように、前壁3Dと上下壁(上壁3B及び下壁3C)とを繋ぐ角部に薄肉部31を有している。薄肉部31の肉厚は、衝撃吸収体10の壁部の平均肉厚の30〜70%の範囲で構成している。薄肉部31は、前壁3Dと上下壁(上壁3B及び下壁3C)とを繋ぐ角部の湾曲形状を調整することで形成することができる。即ち、角部を成形するための金型の曲率半径を小さくすることで、当該角部を薄肉にすることができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10は、図28に示すように、上壁3Bと下壁3Cとに形成される溝状リブ6,7の部分に薄肉部31を有している。この場合、溝状リブ6,7を形成する部分の樹脂の引き伸ばし量を多くすることで、薄肉部31を形成することができる。即ち、溝状リブ6,7を形成する金型の湾曲形状を急にすることで(曲率半径を小さくすることで)、薄肉部31を形成することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図29に示すように、前壁3Dと上下壁(上壁3B及び下壁3C)とを繋ぐ角部や、図28に示すように、上下壁(上壁3B及び下壁3C)に形成する溝状リブ6,7の部分に薄肉部31を有していることで、衝撃吸収体10が衝撃を受けた場合に、薄肉部31の箇所が優先的に座屈することになる。その結果、衝撃を受けた際に、衝撃吸収体10が反発することなく、座屈を開始し、効果的に衝撃を吸収することができる。また、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、薄肉部31が効果的に衝撃を受けることになるため、衝撃吸収体10の上下方向への倒れを防止することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を構成する壁部の平均肉厚は、0.3〜6.0mmの範囲で構成し、薄肉部31は、その平均肉厚の30〜70%の範囲で構成することが好ましい。これにより、効果的に衝撃を吸収することができる。
なお、平均肉厚については、以下のように算出することができる。
例えば、図28に示す上下壁(上壁3B及び下壁3C)の一端側(第1側壁4側)、中央、他端側(第2側壁5側)の3箇所(但し、溝状リブ6,7が形成されていない箇所で、且つ、前壁3Dと上下壁(上壁3B及び下壁3C)とを繋ぐ角部ではない箇所)の断面における、2つの金型分割点を結ぶ直線の垂直二等分線と交わる部分(合計6箇所)の肉厚を、ノギスにより測定し、その6つの測定値の平均値を、平均肉厚として算出する。これにより、衝撃吸収体10を構成する壁部の平均肉厚を算出することができる。
本実施形態の衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付ける際は、軸部51を取付軸穴61に挿入すると共に、取付部52を取付穴62に挿入する。これにより、図34、図35に示すように、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けることができる。なお、図34、図35は、衝撃吸収体10を取付対象物20に取り付けた状態を示しており、図34は、前壁3D側から見た状態を示し、図35は、図34に示す35X-35X'線の断面構成例を示す図である。
本実施形態の衝撃吸収体10は、図34に示すように、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が上下壁(上壁3B及び下壁3C)に形成されており、その溝状リブ6,7の延び方向αを衝撃方向と同一方向にしている。その結果、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、その衝撃に対する剛性を高めつつ、且つ、溝状リブ6,7で衝撃を効果的に吸収することができる。なお、図34は、上壁3B側の溝状リブ6の延び方向αを示しているが、下壁3C側の溝状リブ7の延び方向αについても上壁3B側の溝状リブ6と同様である。
また、本実施形態の衝撃吸収体10を構成する前壁3Dは、図34に示すように、第1側壁4側と第2側壁5側とに連なってパーティングラインPLが延びており、前壁3Dの剛性を高めている。このため、前壁3Dで衝撃を受けた場合に、前壁3Dを割れ難くすることができる。また、前壁3Dにおいて、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けられている。このため、前壁3Dにおいて衝撃を受ける負荷点の箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度からずれたりした場合でも、所望の荷重を安定して維持し、所望の衝撃吸収量を確保することができる。
また、本実施形態の衝撃吸収体10の後壁3Aは、図35に示すように、取付対象物20に向かって突出した凸部30を有しており、その凸部30は、後壁3Aに形成されるパーティングラインPL(軸部51や取付部52が設けられる箇所)を挟んで上下(上壁3B側及び下壁3C側)に形成されている。これにより、後壁3Aを取付対象物20に取り付けた場合に、後壁3Aの上下(上壁3B側及び下壁3C側)に形成された凸部30が取付対象物20に当接し、本体3の支えになるため、衝撃吸収体10を倒れ難くし、衝撃吸収体10を取付対象物20に安定して固定することができる。また、前壁3Dで衝撃を受けた場合でも、後壁3Aの上下(上壁3B側及び下壁3C側)に形成された凸部30が取付対象物20に当接するため、衝撃吸収体10の上下方向への倒れを防止することができる。
なお、本実施形態の後壁3Aの上下に形成された凸部30は、図35に示すように、パーティングラインPL(軸部51や取付部52が設けられる箇所)から上下(上壁3B側及び下壁3C側)に離れるについて連続的に突出量が増加するように構成している。しかし、部分的に突出量が増加するように構成することも可能である。なお、突出量は、後壁3AにおいてパーティングラインPLが形成される箇所PL(O)と、凸部30が形成された箇所の頂点Hと、を結ぶ線L1と、衝撃吸収体10を成形する分割金型の型抜き方向L2と、のなす角度θ4が、0°〜4°の範囲になるようにすることが好ましい。なお、角度θ4が0°の場合は、突出量は0となる。パーティングラインPLを挟んで両端の突出量が全て0の場合は、後壁3Aの上下に形成される凸部30は、平坦になり、パーティングラインPLを挟んで上下の後壁3Aの表面が、同一平面上に位置することになる。この場合も、パーティングラインPLを挟んで上下の後壁3Aが取付対象物20に当接するため、衝撃吸収体10の上下方向への倒れを防止することができる。
また、本実施形態の溝状リブ6は、図35に示すように、対向する壁(上壁3B,下壁3C)から遠ざかる方向に凸になるように屈曲しており、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度と異なった場合でも、衝撃を吸収することができるようにしている。溝状リブ6の屈曲角度θ3は、1〜10°の範囲にすることが好ましい。
なお、図35に示す溝状リブ6は、対向する下壁3Cから遠ざかる方向(外側方向)に屈曲した形状で構成しているが、対向する下壁3Cに近づく方向(内側方向)に屈曲する形状で構成することも可能である。また、図35に示す溝状リブ6は、中央付近の溝状リブ6の深さh1よりも、後壁3A側の溝状リブ6の深さh2や前壁3D側の溝状リブ6の深さh3が深くなるような形状で構成している(h1<h2、且つ、h1<h3)。しかし、前壁3Dから中央付近までの溝状リブ6の深さを同じ深さh1にし、後壁3A側の溝状リブ6の深さh2を深くするような形状で構成することも可能である(h1<h2)。このように、前壁3Dと後壁3Aとを繋ぐ周囲壁である上壁3Bに設けられる溝状リブ6が屈曲していれば、その屈曲した箇所で衝撃を効果的に吸収することができる。なお、図35に示す溝状リブ6は、後壁3Aと前壁3Dとの中央付近において屈曲した構成例を示しているが、その屈曲する箇所は、中央付近に限定せず、任意の箇所で屈曲した構成例にすることも可能である。なお、下壁3C側に設けられる溝状リブ7についても、上述した上壁3B側に設けられる溝状リブ6と同様に屈曲して構成する。
なお、上述した衝撃吸収体10は、図27に示すように、上壁3B側に設ける溝状リブ6と下壁3C側に設ける溝状リブ7とが各々異なる位置になるように構成した。しかし、上壁3B側に設ける溝状リブ6と下壁3C側に設ける溝状リブ7とが同じ位置で互いに対向するように構成することも可能である。この構成の場合であっても、溝状リブ6,7は、溝状リブ6,7の底部からパーティングラインPLまでの距離が等しくなるように設けることが好ましい。これにより、前壁3Dにおいて衝撃を受ける箇所(打点位置)が理想の位置からずれたり、前壁3Dに進入する衝撃の進入角度が理想の進入角度と異なったりした場合でも、所望の荷重を安定して維持することができるため、所望の衝撃吸収量を確保することができる。
<本実施形態の衝撃吸収体10の作用・効果>
このように、本実施形態の衝撃吸収体10は、衝撃を受ける前壁3Dと、前壁3Dと対向する後壁3Aと、前壁3Dと後壁3Aとの周囲を繋ぐ周囲壁(上壁3B,第1側壁4,下壁3C,第2側壁5)と、前壁3Dと後壁3Aとを通過するパーティングラインPLと、を有して構成し、図29に示すように、前壁3Dと、周囲壁3B,3Cと、を繋ぐ角部に薄肉部31が形成されている。また、図27に示すように、周囲壁3B,3Cには、前壁3Dから後壁3Aに向かって延びる溝状リブ6,7が形成されており、図28に示すように、溝状リブ6,7に薄肉部31が形成されている。
これにより、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまった場合でも、衝撃吸収体10を構成する壁部の中で薄肉部31の箇所が優先的に座屈することになる。その結果、衝撃吸収体10において衝撃を受ける箇所が所望の位置からずれてしまっても、衝撃を効果的に吸収することができる。
なお、上述する実施形態では、衝撃吸収体10の取付部52を取付対象物20に設けられた取付穴62に挿入することにした。しかし、取付対象物20の構成を自動車の部品に対して予め形成し、衝撃吸収体10を自動車の部品(取付対象物)に直接取り付けるようにすることも可能である。例えば、取付穴62を自動車の部品に対して予め形成し、衝撃吸収体10の取付部52を自動車の部品(取付対象物)に直接取り付けるようにすることも可能である。
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。