以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面図である。
図1に示す画像形成装置1は、原稿読取り装置(図示せず)により読取られた原稿の画像または外部から受信した画像データによって示される画像をカラーもしくは単色で用紙等の記録シートPに記録形成する画像形成部10を備えている。
画像形成部10は、露光装置11、現像装置12〜12、像担持体として作用する感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、転写部として作用する中間転写ローラ24〜24を含む中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙部として作用する給紙トレイ18、及び、排紙部として作用する排紙トレイ19、シート搬送装置20を備えている。
画像形成部10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、または、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、クリーナ装置14、帯電器15、中間転写ローラ24は各色に応じた4種類の画像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられている。
感光体ドラム13は、画像形成装置1の本体1aの上下方向におけるほぼ中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。露光装置11は、ここでは、レーザダイオード及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニットであり、帯電された感光体ドラム31表面を画像データに応じて露光して、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13上に形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像する。クリーナ装置14は、現像及び画像転写後に感光体ドラム13表面に残留したトナーを除去及び回収する。
感光体ドラム13の上方に配置されている中間転写ベルト装置16は、中間転写ローラ24に加えて、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ベルトクリーニング装置25及びテンションローラ26を備えている。
中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ローラ24、テンションローラ26は、中間転写ベルト21を張架して支持し、中間転写ベルト21を所定のシート搬送方向(図中矢印C方向)に周回移動させる。中間転写ローラ24は、中間転写ベルト21内側に回転可能に支持され、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム13に圧接されている。中間転写ベルト21は、各感光体ドラム13に接触するように設けられており、各感光体ドラム13表面のトナー像を中間転写ベルト21に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(各色のトナー像)を形成する。感光体ドラム13から中間転写ベルト21へのトナー像の転写は、中間転写ベルト21内側(裏面)に圧接されている中間転写ローラ24によって行われる。中間転写ローラ24には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
画像形成部10は、転写部として作用する転写ローラ27aを含む2次転写装置27をさらに備えている。転写ローラ27aは、中間転写ベルト21の外側に接触している。上述の様に各感光体ドラム13表面のトナー像は、中間転写ベルト21で積層され、画像データによって示されるカラーのトナー像となる。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト21と共に搬送され、2次転写装置27によって記録シートP上に転写される。中間転写ベルト21と2次転写装置27の転写ローラ27aとは、相互に圧接されて転写ニップ域を形成する。また、2次転写装置27の転写ローラ27aには、中間転写ベルト21上の各色のトナー像を記録シートPに転写させるための電圧(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
中間転写ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト21上の残留トナーを除去及び回収する。
給紙トレイ18は、記録シートPを格納しておくためのトレイであり、画像形成装置1の本体1aである画像形成部10の下側に設けられている。また、画像形成部10の上側に設けられている排紙トレイ19は、印刷済みの記録シートPをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
また、画像形成装置1の本体1aには、給紙トレイ18の記録シートPを2次転写装置27や定着装置17を経由させて排紙トレイ19に送るためのシート搬送装置20が設けられている。シート搬送装置20は、Sの字形状のシート搬送経路Sを有し、シート搬送経路Sに沿って、ピックアップローラ31、一対の分離ローラ31a,31b、レジストローラ32、レジスト前ローラ33、定着装置17及び排紙ローラ34が配置されている。
ピックアップローラ31は、給紙トレイ18のシート搬送方向における下流側端部に設けられ、給紙トレイ18から記録シートPを1枚ずつシート搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。一方の分離ローラ31aは、他方の分離ローラ31bとの間に記録シートPを通過させて1枚ずつ分離しつつシート搬送経路Sへと搬送する。レジストローラ32は、停止状態において、搬送されて来た記録シートPの先端を突き当てて、記録シートPの先端を揃え、中間転写ベルト21と2次転写装置27との間の転写ニップ域で中間転写ベルト21上のトナー像が記録シートPに転写されるように、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像と同期をとって、記録シートPをタイミングよく搬送する。レジスト前ローラ33は、記録シートPの搬送を促進補助するための小型のローラである。
定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされており、複数のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)に定着ベルト173が巻き掛けられている。定着ベルト173は、加熱ローラ172から定着ローラ171へ熱伝達できるようになっている。定着装置17は、定着ベルト173を介して定着ローラ171に加圧ローラ174が押圧されるようになっている。また、定着ベルト173は、予め定めた所定の厚み(例えば250μm)を有している。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された記録シートPを受け取り、記録シートPを定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟み込んで搬送する。各色のトナー像の定着後の記録シートPは、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。なお、定着装置17については後述する。
以上説明した画像形成装置1では、給紙トレイ18から給紙された記録シートPをシート搬送経路Sに沿って搬送している途中で、記録シートPに対して感光体ドラム13で形成されて転写ベルト21に搬送されたトナー像を2次転写装置27によって転写させ、さらに定着装置17によって定着させることで印刷処理を行う。
詳しくは、感光体ドラム13は、一方向に回転駆動され、除電装置(図示せず)により除電された表面がクリーナ装置14によりクリーニングされた後、帯電器15により均一に帯電される。露光装置11は、画像データに基づいて変調したレーザ光によって感光体ドラム13の表面を主走査方向に繰り返し走査して、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12は、トナーを感光体ドラム13の表面に供給して静電潜像を現像(顕像化)し、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13上に形成されたトナー像を転写ベルト21に転写する。2次転写装置27は、転写ベルト21上に形成されたトナー像を転写ベルト21と転写ローラ27aとの間を通過する記録シートPに転写する。定着装置17は、トナー像が形成された記録シートPを加熱及び加圧して記録シートP上のトナー像を記録シートPに定着させる。こうして、画像形成装置1は、一連の印刷動作を完了する。
なお、4つの画像形成ステーションのうち少なくとも一つを用いて、モノクロ画像を形成し、モノクロ画像を中間転写ベルト装置16の中間転写ベルト21に転写することも可能である。このモノクロ画像も、カラー画像と同様に、中間転写ベルト21から記録シートPに転写され、記録シートP上に定着される。
(定着装置17の説明)
図2及び図3は、それぞれ、本実施の形態に係るベルト定着方式の定着装置17の概略構成を示す側面図及び平面図である。なお、定着装置17の背面図は正面図とは左右が反転するだけで実質的に同じ図であるため、図2では正面図のみを示し、背面図は図示を省略している。
定着装置17は、図2及び図3に示すように、周回りの回転方向Eに回転されて表面173aが移動する無端状の定着ベルト173と、定着ベルト173を加熱する加熱手段として作用する熱源177及び加熱ローラ172と、定着ベルト173に押圧された状態で表面174aが定着ベルト173の表面173aの移動と共に移動する加圧ローラ174(加圧部材の一例)とを備え、加圧ローラ174と定着ベルト173との間に形成される定着ニップ部Nに記録シートPを搬送しつつ未定着のトナーIを記録シートPに定着させる構成とされている。
さらに詳しく説明すると、定着装置17は、定着ローラ171を含む複数(ここでは二つ)のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)と、定着ローラ171及び加熱ローラ172に巻き掛けられた無端状の定着ベルト173とを備えている。
定着ベルト173は、ここでは3層構造となっており、一層目がポリイミド樹脂で形成され、二層目がシリコンゴムで形成されている。そして、定着ベルト173の表層にはPFA等のフッ素樹脂コートが施されている。なお、定着ベルト173の材質は、前記の材質に限ったものではない。また、定着ベルト173の表層はPFAチューブなどでもよい。
定着装置17は、さらに加圧ローラ174(図2参照)を備えており、定着ベルト173を間にして定着ローラ171と加圧ローラ174とを相互に押圧した状態で、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に定着ニップ部N(定着ニップ域、図2参照)を形成するようになっている。なお、定着装置17は、図示を省略したが、加圧ローラ174を定着ローラ171に向けて押圧する押圧手段として作用する押圧装置をさらに備えている。この押圧装置は、従来公知の構成とすることができ、ここでは説明を省略する。
そして、定着ローラ171は、定着ベルト173を介して記録シートP上における未定着のトナーIに対向するようになっており、加熱ローラ172は、定着ベルト173を加熱するようになっている。
具体的には、定着ローラ171は、定着ベルト173を介在させた状態で記録シートP上における未定着のトナーIに対向し、加圧ローラ174に対して定着ベルト173を介在させた状態で定着ベルト173と加圧ローラ174との間の記録シートP上における未定着のトナーIに対向して未定着のトナーIを加圧ローラ174と共に押圧する。また、加熱ローラ172は、ハロゲンヒータ等の熱源177(図2参照)が設けられており、熱源177によって加熱されることで定着ベルト173を加熱する。定着ローラ171及び加熱ローラ172は、筒状の芯金を備えている。加熱ローラ172を加熱する熱源(ここではハロゲンヒータ)177は、加熱ローラ172の内側に設けられている。これにより、加熱ローラ172が熱源177によって加熱され、加熱ローラ172の熱が定着ベルト173に伝導され、さらに、定着ベルト173を介して定着ローラ171の表面171aに伝導されて定着ローラ171が加熱される。
定着装置17では、画像形成装置1の本体1aに装着された状態において、本体1a側のギア等の駆動機構(図示せず)が定着ローラ171の回転軸171aに設けられたギア(図示せず)に噛合され、本体1a側の駆動機構からの回転駆動力がギアを介して定着ローラ171の回転軸171aに伝達されて、定着ローラ171が所定の回転方向E1に回転駆動される。定着ローラ171の回転に伴い、定着ベルト173が定着ローラ171の回転方向E1と同じ周回りの回転方向Eに周回移動して加熱ローラ172が回転方向E1に回転し、さらに加圧ローラ174が定着ローラ171の回転方向E1とは逆方向の回転方向E2に従動回転する。そして、記録シートPは、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟まれつつ搬送されて、定着ニップ部Nで加熱及び加圧される。これにより、記録シートP上における未定着のトナーIが溶融、混合、圧接されて熱定着される。
また、定着装置17は、定着ベルト173の表面173aの幅方向Xにおける中央部(記録シートPの通過領域)L1(図3参照)の温度である定着温度ta(後述する図7参照)を検出するサーミスタ等のベルト温度検出センサ176(ベルト温度検出手段の一例)を備えている。ベルト温度検出センサ176は、定着ベルト173に接触して定着ベルト173の定着温度taを検出する接触式の温度センサであってもよいし、定着ベルト173に所定の間隔をおいて(非接触で)定着ベルト173の定着温度taを検出する非接触式の温度センサであってもよい。ここでは、ベルト温度検出センサ176は、定着ベルト173に対して非接触とし、図示を省略しているが、定着装置本体(具体的には本体フレーム)に支持部材を介して設けられている。
また、定着装置17には、加圧ローラ174の表面174aの幅方向Xにおける中央部の加圧ローラ表面温度である定着温度tb(後述する図7参照)を検出するサーミスタ等のローラ温度検出センサ178(ローラ温度検出手段の一例)を備えている。ローラ温度検出センサ178は、加圧ローラ174に接触して加圧ローラ174の定着温度tbを検出する接触式の温度センサであってもよいし、加圧ローラ174に所定の間隔をおいて(非接触で)加圧ローラ174表面の定着温度tbを検出する非接触式の温度センサであってもよい。ここでは、ローラ温度検出センサ178は、加圧ローラ174に対して接触し、図示を省略しているが、定着装置本体(具体的には本体フレーム)に支持部材を介して設けられている。
なお、定着装置17は、定着ベルト173の内側または外側に配置され、かつ、定着ベルト173の張り力を付与するように定着ベルト173に対して外側または内側へ押圧するテンションローラを備えていてもよい。定着装置17は、テンションローラに代えて或いは加えて、加熱ローラ172の回転軸172aにおける両端部に対して定着ローラ171とは反対側へ付勢力を付与する付勢部材(例えばコイルバネ)を備えていてもよい。また、定着ローラ171及び/または加圧ローラ174に、熱源177が設けられていてもよい。また、テンションローラが設けられる場合、テンションローラに熱源177が設けられていてもよい。また、定着ベルト173がさらに他のローラに巻き掛けられる場合、他のローラの少なくとも一つに熱源177が設けられていてもよい。
定着装置17は、定着ローラ171及び加熱ローラ172のうち少なくとも一つのローラに対して、回転方向Eに直交する幅方向Xにおける少なくとも一方の端部(ここでは両端部)に、幅方向Xへの定着ベルト173の移動を規制するカラーやフランジなどの規制部材(ここでは一対の規制部材175,175)が設けられている。この一対の規制部材175,175は、定着ローラ171及び加熱ローラ172の少なくとも一方の回転軸(ここでは加熱ローラ172の回転軸172a)の両端部にそれぞれ設けられており、回転方向Eの回転に伴う定着ベルト173の幅方向Xへの定着ベルト173の移動を規制する構成とされている。
(制御系の説明)
図4は、本実施の形態の画像形成装置1における制御系の概略構成を示すシステムブロック図である。
図4に示すように、画像形成装置1は、装置全体の制御を司る制御部101を備えている。制御部101は、CPU等の中央演算処理装置と、ROM及びRAM等のメモリ部とを備えて構成されており、演算処理装置がROMに予め格納された制御プログラムをRAM上にロードして実行することにより、画像形成に関わる各種処理動作を制御するようになっている。
制御部101には、ベルト温度検出センサ176の出力及びローラ温度検出センサ178の出力が接続されており、ベルト温度検出センサ176による検出温度に対応した検出信号、及びローラ温度検出センサ178による検出温度に対応した検出信号が入力されるようになっている。制御部101は、これらセンサ176,178からの検出信号に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを駆動制御し、定着ベルト173の表面173aの温度を制御する。
また、制御部101は、モータドライバ110を介して、定着ローラ駆動モータ111及びシート搬送装置20の各ローラ(具体的には、シート搬送路S上の分離ローラ31a,31b、レジスト前ローラ33、レジストローラ32等)を駆動するシート搬送ローラ駆動モータ112を駆動制御する。画像形成装置1は、記録シートの種類(普通紙、厚紙、封筒等)に応じて複数のプロセス速度を有しており、制御部101は、画像形成動作時において、設定された記録シートの種類に応じたプロセス速度となるように、モータドライバ110を介して定着ローラ駆動モータ111及びシート搬送ローラ駆動モータ112を駆動制御する。ここで、本実施の形態では、普通紙用のプロセス速度として330mm/sec、厚紙用のプロセス速度として220mm/sec、封筒や葉書用のプロセス速度として110mm/sec、の3種類のプロセス速度を有しているものとする。
また、制御部101は、図示は省略しているが、ユーザによる各種画像形成条件の設定に従って画像形成部10を制御し、画像形成部10による画像形成処理を実施させる。
また、制御部101には、本発明の特徴である定着時の定着ローラ171の温度を補正するための補正テーブル120aを格納した不揮発性メモリ等からなるメモリ部120が接続されている。
制御部101は、ウォーミングアップ時の定着ベルト173の回転速度を定着時の回転速度よりも遅い回線速度で制御する一方、ベルト温度検出センサ176による定着ベルト173の検出温度が予め設定された定着温度Taに達したとき、ベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度taと、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tbとの差分Δt(=ta−tb)を算出し、算出した差分Δtに基づく補正温度値を補正テーブル120aから取得し、ウォーミングアップ終了後の定着ベルト173の温度が加圧ローラ174の不足温度分を補償するように、前記補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御する。
ここで、本実施の形態では、定着時の回転速度は、普通紙のプロセス速度(330mm/sec)に設定されており、ウォーミングアップ時の回転速度は、これよりも遅いプロセス速度(この例では、封筒や葉書用のプロセス速度である110mm/sec)に設定されている。すなわち、ウォーミングアップ時の回転速度は、従来のウォーミングアップ時の回転速度である普通紙のプロセス速度の1/3の回転速度に設定されている。これにより、ウォーミングアップ時の回転速度は、封筒や葉書用のプロセス速度と同じであるため、ウォーミングアップ時の定着ベルトの回転速度を別途設定する必要がなく、既存の速度制御で対応できるので、定着装置の制御構成を簡素化することができる。
図5Aは、本実施の形態に係る補正テーブルの一構成例を示している。
この補正テーブル120a1は、差分Δt(=ta−tb)に応じてそれぞれ補正温度値が設定されている。この例では、差分Δtが10℃未満の場合には3℃、10℃以上〜20℃未満の場合には5℃、20℃以上〜30℃未満の場合には8℃、30℃以上の場合には10℃、がそれぞれ補正温度値として設定されている。なお、この設定値は、予め実験用のテスト装置(定着装置)を作製して実験した結果に基づいて、または、シミュレーションによる結果に基づいて設定すればよい。また、この補正温度値は、実際に搭載した画像形成装置によってウォーミングアップを行った結果に基づいて、適宜設定変更できるように構成しておいてもよい。このように構成することで、各画像形成装置に合わせた最適な温度補正値を設定することができる。
次に、上記構成の補正テーブル120a1を用いた制御部101によるウォーミングアップ時の制御動作について、図6に示すフローチャート、図7に示すウォーミングアップ時の定着ベルトと加圧ローラの温度上昇の変化を示すグラフ、図8に示す定着ベルトの回転速度とハロゲンヒータの制御動作を示す説明図を参照して詳細に説明する。
電源オン時(または、予熱モードからの立ち上げ時)、制御部101は、定着時の回転速度(330mm/sec)よりも遅いウォーミングアップ時回転速度(110mm/sec)でウォーミングアップを開始する(ステップS1)。このとき、ハロゲンヒータの制御は、図8(b)に示すように、全灯制御である。
このように、ウォーミングアップ時の定着ベルト173の回転速度を定着時の回転速度よりも遅くすることにより、定着ベルト173からの熱拡散を抑えることで、定着ベルト173が定着温度に達する時間、すなわちウォーミングアップ時間を短縮することができる。一方、定着ベルト173の回転速度を遅くしたことにより、定着ベルト173から加圧ローラ174に伝わる熱量が減少し、定着ベルト173が定着温度に達したとき、加圧ローラ174の温度は、良好な定着が行われる温度まで上がりきらない。
すなわち、このようなウォーミングアップ制御では、定着ベルト173の温度(表面温度)taと加圧ローラ174の温度(表面温度)tbとは、図7に示すように、ほぼ直線状に上昇していくが、加圧ローラ174の温度は、定着ベルト173の温度を下回って追随し、かつ、若干離れるように緩い傾斜で上昇していくことになる。
そして、時刻m1において、ベルト温度検出センサ176による定着ベルト173の温度taが定着温度Taに達すると(ステップS2でYesと判断されると)、制御部101は、その時点でウォーミングアップを終了する(ステップS3)とともに、その時点でベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度ta1と、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tb1との差分Δt1(=ta1−tb1)を算出し(ステップS4)、算出した差分Δt1に基づく補正温度値を補正テーブル120a1から取得する(ステップS5)。図7に示す例では、ta1が180℃、tb1が140℃であるから、Δt1は40℃となる。従って、制御部101は、補正テーブル120a1からΔt1=40℃に対応する補正温度値10℃を取得する。
この後、制御部101は、ウォーミングアップ完了後の定着ベルト173の温度が加圧ローラ174の不足温度分を補償するように、補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御する(ステップS6)。具体的には、定着ベルト173の温度taが、定着温度Ta+10℃(すなわち、180℃+10℃=190℃)となるように、その後の加熱制御を行う。ただし、このときの制御は、定着ベルト173の温度taが既に定着温度Taに到達しているので、図8(b)に示すように、ハロゲンヒータの制御をそれまでの全灯制御からデューティ制御(例えば、デューティ比70%)に変更する。これにより、ウォーミングアップ完了後の時刻m1以降も定着ベルト173は新たに設定された目標温度190℃に向かって加熱され、その熱が加圧ローラ174側にも伝達されることになる。
制御部101は、このような補正温度値による加熱制御を、予め設定された一定時間(例えば、150msec)ごとに行っている。すなわち、最初の差分算出から一定時間が経過すると(ステップS7でYesと判断されると)、制御部101は、再びステップS4に戻って、その時点でベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度ta2と、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tb2との差分Δt2(=ta2−tb2)を算出し、算出した差分Δt2に基づく補正温度値を補正テーブル120a1から取得する(ステップS5)。ここで、算出したΔt2が例えば25℃であった場合には、制御部101は、補正テーブル120a1からΔt2=25℃に対応する補正温度値8℃を取得し、この取得した補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御する(ステップS6)。具体的には、定着ベルト173の温度taが、定着温度Ta+8℃(すなわち、180℃+8℃=188℃)となるように、その後の加熱制御を行う。ただし、このときの制御は、ハロゲンヒータの制御をそれまでのデューティ比70%の制御から、例えばデューティ比60%の制御に変更する。これにより、定着ベルト173は新たに設定された目標温度188℃に向かって加熱され、その熱が加圧ローラ174側にも伝達されることになる。
同様にして、さらに一定時間が経過すると(ステップS7でYesと判断されると)、制御部101は、再びステップS4に戻って、その時点でベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度ta3と、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tb3との差分Δt3(=ta3−tb3)を算出し、算出した差分Δt3に基づく補正温度値を補正テーブル120a1から取得する(ステップS5)。ここで、算出したΔt3が例えば15℃であった場合には、制御部101は、補正テーブル120a1からΔt3=15℃に対応する補正温度値5℃を取得し、この取得した補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御する(ステップS6)。具体的には、定着ベルト173の温度taが、定着温度Ta+5℃(すなわち、180℃+5℃=185℃)となるように、その後の加熱制御を行う。ただし、このときの制御は、ハロゲンヒータの制御をそれまでのデューティ比60%の制御から、例えばデューティ比40%の制御に変更する。これにより、定着ベルト173は新たに設定された目標温度185℃に向かって加熱され、その熱が加圧ローラ174側にも伝達されることになる。
同様にして、さらに一定時間が経過すると(ステップS7でYesと判断されると)、制御部101は、再びステップS4に戻って、その時点でベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度ta4と、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tb4との差分Δt4(=ta4−tb4)を算出し、算出した差分Δt4に基づく補正温度値を補正テーブル1201aから取得する(ステップS5)。ここで、算出したΔt4が例えば5℃であった場合には、制御部101は、補正テーブル120a1からΔt4=5℃に対応する補正温度値3℃を取得し、この取得した補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御する(ステップS6)。具体的には、定着ベルト173の温度taが、定着温度Ta+3℃(すなわち、180℃+3℃=183℃)となるように、その後の加熱制御を行う。ただし、このときの制御は、ハロゲンヒータの制御をそれまでのデューティ比40%の制御から、例えばデューティ比30%の制御に変更する。これにより、定着ベルト173は新たに設定された目標温度183℃に向かって加熱され、その熱が加圧ローラ174側にも伝達されることになる。
このように、本実施の形態では、差分の算出と、その差分に対応する新たな補正温度値による加熱制御とを、一定時間である例えば150msecごとにきめ細かく行うことで、定着ベルト173の温度taのオーバーシュートを抑制しつつ、加圧ローラ174の温度tbが定着温度Tbに到達するまでの間、定着ベルト173の温度taによって加圧ローラ174の温度不足を補償することができる。
その結果、ウォーミングアップ完了後の時刻m2において、引き続き画像形成動作を実施したとしても、定着ベルト173の温度が、その時点で設定されている新たな目標温度(例えば、183℃)に向かって上昇しているため、加圧ローラ174の温度も定着温度Tbに向かって上昇し、かつ、定着ベルト173の上昇温度分の熱量(補足熱量)によって、加圧ローラ174の不足熱量が補償されるため、全体の熱量(総熱量)として、定着時に良好な熱量が得られることになる。すなわち、ウォーミングアップ完了後に引き続いて画像形成動作を実施しても、定着を良好に行うことが可能となる。
なお、ウォーミングアップ完了後に引き続いて画像形成動作を実施した場合(すなわち、画像形成動作を含む他のモードを実施した場合)、または、加圧ローラ174の温度tbが定着温度Tbに到達した場合には、補正テーブルを用いたウォーミングアップ時の制御動作(図6のステップS1〜ステップS7の処理動作)を終了する。
本実施の形態によれば、加圧ローラ174の不足温度分を加味した補正温度値を予め補正テーブル120a1に格納しておき、定着ベルト173が定着温度に達したとき、定着ベルト173の温度と加圧ローラ174の温度との差分Δtから補正温度値を取得し、取得した補正温度値に基づいて熱源177であるハロゲンヒータを制御して、定着ベルト173の温度をさらに上昇させることで、加圧ローラ174の温度不足(不足熱量)を定着ベルト173の上昇温度分(補正熱量)で補償する構成としている。別言すれば、定着ベルト173の熱量と加圧ローラ174の熱量とを足した総熱量が、定着時に良好な熱量となるように制御している。これにより、ウォーミングアップの時間短縮と、ウォーミングアップ完了後に引き続き行われる画像形成動作時の良好な定着動作との双方を実現することができる。
図5Bは、本実施の形態に係る補正テーブルの他の構成例を示している。
図5Aに示した補正テーブル120a1では、補正温度値として、定着ベルト173の定着温度Ta(=180℃)からの補正温度値を設定しているが、図5Bに示す補正テーブル120a2では、最初から定着ベルト173の定着温度Ta(=180℃)に補正すべき温度分を加えた値を補正温度値として設定している。すなわち、図5Bに示した補正テーブル120a2では、差分Δtが10℃未満の場合には183℃、10℃以上〜20℃未満の場合には185℃、20℃以上〜30℃未満の場合には188℃、30℃以上の場合には190℃、がそれぞれ補正温度値として設定されている。
これにより、制御部101は、ウォーミングアップを終了時点でベルト温度検センサ176により検出される定着ベルト173の検出温度ta1と、ローラ温度検出センサ178により検出される加圧ローラ174の検出温度tb1との差分Δt1(=ta1−tb1)を算出し(ステップS4)、算出した差分Δt1に基づく補正温度値を図5Bに示す補正テーブル120aから取得する(ステップS5)。具体的には、差分Δt1が40℃であった場合には、図5Bに示す補正テーブル120a2から補正温度値として190℃を取得し、定着ベルト173の温度を、補正温度値である190℃となるように、その後の加熱制御(デューティ制御)を行う。
本発明の定着装置では、制御部101は、定着ベルト173の温度が定着時の温度に達したとき、加圧ローラ174の温度が定着時の温度に達していなくても、ウォーミングアップを完了する構成としている。すなわち、定着ベルト173が定着温度に達したウォーミングアップ完了後も、定着ベルト173の加熱制御を継続して、加圧ローラ174の不足温度分を定着ベルト173の加熱によって補っているので、加圧ローラ174の温度が定着時の温度に達していな状態でウォーミングアップを完了したとしても、定着ベルト173と加圧ローラ174の総熱量は、良好な定着が可能な熱量を確保できるので、その後、良好に画像形成動作を行うことができる。
また、本発明の定着装置は、ウォーミングアップ時の定着ベルト173の回転速度は、複数のプロセス速度の中で定着時のプロセス速度よりも遅いプロセス速度(上記の例では、封筒や葉書用のプロセス速度である110mm/sec)に設定される構成としている。この構成によれば、ウォーミングアップ時の定着ベルト173の回転速度を複数のプロセス速度以外の速度に別途設定する必要がなく、既存の速度制御で対応できるので、定着装置の制御構成を簡素化することができる。
また、本発明の定着装置では、制御部101は、ウォーミングアップの完了後、熱源177であるハロゲンヒータの制御を全灯制御から、差分Δtに応じたデューティ制御に変更する構成としている。この構成によれば、熱源177であるハロゲンヒータの制御を差分Δtに応じたデューティ制御とすることで、加圧ローラ174の不足温度分を補う定着ベルト173の加熱制御を容易に行うことができる。
なお、今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。