JP5916411B2 - 蛍光体及び発光装置 - Google Patents

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本発明は、LED(Light Emitting Diode)に用いられる蛍光体及びLEDを用いた発光装置に関する。
白色発光装置に用いられる蛍光体として、βサイアロンと赤色発光蛍光体の組み合わせがあり(特許文献1参照)、特定の色座標を有する赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせた蛍光体がある(特許文献2参照)。一方、黄色蛍光体であるイットリウムアルミニウムガーネット(以後YAGと記載)系蛍光体を用いて白色を得る方法(特許文献3参照)もある。前者と区別するために、このような白色を「疑似白色」と称する。「疑似白色」を用いた発光装置は、比較的容易に高輝度が得られ易いが、演色性に劣る。また、両者とも高温や長期間使用した際の輝度低下の小さいことが求められている。
特開2007−180483号公報 特開2008−166825号公報 特開平10−242513号公報
本発明の目的は、YAG系蛍光体に比べてその高輝度な発光を損なうことなく、演色性、信頼性を改善した蛍光体を提供することにあり、この蛍光体を用いた白色発光装置を提供することにある。
本発明は、455nmの光で励起したピーク波長552nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(A)と、455nmの光で励起したピーク波長595nm、蛍光強度205%αサイアロンである酸窒化物蛍光体(B)と、455nmの光で励起したピーク波長650nmCASNである窒化物蛍光体(C)と、及び、455nmの光で励起したピーク波長537nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(D)を有し、蛍光体(A)及び蛍光体(B)の合計が30質量%以上60質量%以下、蛍光体(C)が10質量%以上17.5質量%以下、蛍光体(D)が蛍光体(C)の質量比で3.0以上6.0以下であり、蛍光体(A)が質量比で蛍光体(A)の2.0以上6.0以下である蛍光体である。
前記蛍光体は、蛍光体(A)及び(D)がβサイアロン、蛍光体(B)がαサイアロン、蛍光体(C)がCASNである
本願の他の観点からの発明は、前述の蛍光体と、当該蛍光体を発光面に搭載したLEDとを有する発光装置である。
本発明によれば、YAG系蛍光体に比べてその高輝度な発光を損なうことなく、演色性、信頼性を改善した蛍光体を提供することができ、この蛍光体を用いた白色発光装置を提供することができる。
本発明は、455nmの光で励起したピーク波長552nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(A)と、455nmの光で励起したピーク波長595nm、蛍光強度205%αサイアロンである酸窒化物蛍光体(B)と、455nmの光で励起したピーク波長650nmCASNである窒化物蛍光体(C)と、及び、455nmの光で励起したピーク波長537nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(D)を有し、蛍光体(A)及び蛍光体(B)の合計が30質量%以上60質量%以下、蛍光体(C)が10質量%以上17.5質量%以下、蛍光体(D)が蛍光体(C)の質量比で3.0以上6.0以下であり、蛍光体(A)が質量比で蛍光体(B)の2.0以上6.0以下である蛍光体である。
本発明は、蛍光体(A)と蛍光体(B)の配合によってYAGのピーク波形に類似した蛍光体混合物を作成し、この蛍光体混合物に対して、特定の赤色蛍光体(C)及び緑色蛍光体(D)を加えることで、YAG系蛍光体に比べてその高輝度な発光を損なうことなく、演色性、信頼性を改善した蛍光体を得ることができた。
本発明において、βサイアロンである酸窒化物蛍光体(A)の455nmの光で励起したピーク波長を552nmとしたのは、緑から黄色の範囲の色を発光させるためであり、その蛍光強度を254%としたのは、高輝度を得るためである。αサイアロンである酸窒化物蛍光体(B)の455nmの光で励起したピーク波長を595nmとしたのは、橙色を発光させるためであり、その蛍光強度205%としたのは、高輝度を得るためである。
窒化物蛍光体(A)及び(B)は各々高信頼性の蛍光体であるが、この二種類の蛍光体の混合物も同様に高信頼性を有する。通常、色合いの異なる蛍光体を配合した場合、各々の励起波長域と発光波長域が重なることなどから、加成性が成り立たなくなり、発光ピークは個別の蛍光体の発光ピークを合成した計算値よりも低くなるが、本発明の組み合わせでは、一方の蛍光体の発光が他方の蛍光体の励起に使われる割合が低いため、ほぼ計算値に近くなり、各々はYAGよりシャープでピーク強度が遙かに高い蛍光体なので、ピーク強度そのものはYAG系蛍光体同等以上となった。
蛍光体(A)及び蛍光体(B)の合計が30質量%以上60質量%以下であるのは、高輝度を維持しつつ高演色性を得るためである。
蛍光体(A)が質量比で蛍光体(B)の2.0以上6.0以下であるのは、混合物でYAG類似のピーク波形を得るためである。
双方の蛍光体の蛍光強度を限定したのは、高輝度を得るためである。
本発明において、CASNである窒化物蛍光体(C)の455nmの光で励起したピーク波長を650nmとしたのは赤色を発光させるためであり、βサイアロンである酸窒化物蛍光体(D)の455nmの光で励起したピーク波長を537nmとしたのは緑色を発光させるためである。
蛍光体(D)の蛍光強度を限定したのは、高輝度を得るためである。
本発明において、窒化物蛍光体(C)は10質量%以上17.5質量%以下であるのは、10質量%以上で演色性の改善効果が明確に発揮されるが、添加量が多過ぎると輝度が低下し、更に多くなると演色性が低下、甚だしい場合には白色光を示さなくなるためである。
本発明において、蛍光体(D)の配合比は、少ないと演色性が低下する傾向にあり、多いと輝度が低下する傾向にあり、特に蛍光体(C)とのバランスが重要である。蛍光体(C)に対する質量比で3.0以上6.0以下である。
蛍光体の蛍光強度は、標準試料(YAG、具体的には三菱化学株式会社製P46Y3)のピーク高さを100%とした相対値を%表示したものである。蛍光強度の測定機は、株式会社日立ハイテック社製F−7000形分光光度計を用い、測定方法は、次のものである。
<測定法>
1)試料セット:石英製セルに測定試料及び標準試料を充填し、十分にエイジングした測定機に交互にセットして測定する。充填は、相対充填密度35%程度になるようにしてセル高さの3/4程度まで充填した。
2)測定:455nmの光で励起し、400〜700nmの最大ピークの高さを読み取った。測定を5回行ない、最大、最小値を除いて残りの3点の平均値とした。
蛍光体のピーク波長は、蛍光強度の測定時に最大強度の波長として求められる。蛍光体の半価幅は、大塚電子社製のMCPD−7000瞬間マルチ測定システムにより、HALMA Company製のlabsphere(登録商標)スペクトラロン標準反射板(99%、2.0“×2.0”)を標準試料として用いる。測定方法は、アルミナ製の石板の中央部φ16mmに3mm厚さに試料を充填し、石英板で軽く押しつけ、すり切ってセットする。455nmの光で励起し、300〜800nmのピーク高さを読み取って積分強度を定め、最大値の半分の高さの幅を求める。測定は5回行って、最大、最小値を除いて残り3点の平均値とした。
本発明における蛍光体(A)は、455nmの光で励起したピーク波長552nm、蛍光強度254%の酸窒化物蛍光体である。具体的には、βサイアロンがあり、より具体的には、電気化学工業株式会社アロンブライト(登録商標)のうち、GR−LW552Fがある。これはβサイアロン蛍光体としては、ピーク波長が長波長域にあるにもかかわらず、高いピーク強度を有することと両立させた従来にない蛍光体材料である。βサイアロンでは、ピーク波長がこの波長域にあると、通常の緑色蛍光体に比べて視感度が高いため明るくなる一方、色再現性の低下は比較的小さい。
本発明における蛍光体(B)は、455nmの光で励起したピーク波長595nm、蛍光強度205%の酸窒化物蛍光体である。具体的には、αサイアロンがあり、より具体的には、電気化学工業株式会社アロンブライト(登録商標)のうち、YL595Aがある。これは橙色の蛍光体であり、赤色の蛍光体に比べて視感度が高く、通常用いられる赤色の窒化物蛍光体に比べてシャープでピーク強度が高いため、高輝度が得られ易い。また、βサイアロンに比べてやや半価幅が広いため、赤色成分を含み、蛍光体(A)と組み合わせることで、比較的高い色再現性を発現する。
本発明における蛍光体(C)は、455nmの光で励起したピーク波長650nmの窒化物蛍光体である。具体的には、CASNと略されてカズンとよばれる赤色蛍光体であり、より具体的には、Intenatix社のR6634(ピーク波長650nm)がある。また、この赤色蛍光体の添加量を超えない範囲で、ピーク波長の調整用として、Intematix社R6436(ピーク波長630nm)や三菱化学株式会社のBR−102D(ピーク波長620nm)やBR−102C、BR−102F(ピーク波長630nm)を混在させても良い
本発明における蛍光体(D)は、455nmの光で励起したピーク波長537nm、蛍光強度254%の酸窒化物蛍光体であり、具体的には、βサイアロンがあり、より具体的には、電気化学工業株式会社アロンブライト(登録商標)のうち、GR−SW535Fがある。これはβサイアロンとしては、ピーク波長が短波長であることと高いピーク強度を有することを両立させた従来にない蛍光体材料である。
高輝度かつ高信頼性を維持するためには、蛍光体(A)、蛍光体(B)、蛍光体(C)及び(D)の配合量は多い方がよく、特に高い演色性を求める用途や更に高輝度化が必要な場合には、本発明の蛍光体の合計を100質量%とした時に、15質量%を超えない範囲で他の蛍光体を外割で添加することもできる。この場合には、高信頼性の蛍光体の配合が好ましい。
蛍光体(A)、(B)、(C)及び(D)、更には他の蛍光体との混合手段は、均一に混合又は希望する混合度合いに混合できれば、適宜選択できるものである。この混合手段にあっては、不純物が混入したり、蛍光体の形状や粒度が明らかに変わったりしないことが前提である。
本願の他の観点からの発明は、上述の蛍光体と、当該蛍光体を発光面に搭載したLEDとを有する発光装置である。LEDの発光面に搭載される際の蛍光体は、封止部材によって封止されたものである。封止部材としては、樹脂とガラスがあり、樹脂としてはシリコーン樹脂がある。LEDとしては、最終的に発光される色に合わせて赤色発光LED、青色発光LED、他の色を発光するLEDを適宜選択することが好ましく、青色発光LEDの場合、窒化ガリウム系半導体で形成され、ピーク波長は440nm以上460nm以下にあるものが好ましく、さらに好ましくピーク波長は、445nm以上455nm以下である。LEDの発光部の大きさは0.5mm角以上のものが好ましく、LEDチップの大きさは、かかる発光部の面積を有するものであれば適宜選択でき、好ましくは、1.0mm×0.5mm、更に好ましくは1.2mm×0.6mmである。
本発明に係る実施例を、表及び比較例を用いて詳細に説明する。
Figure 0005916411

表1に示した蛍光体は、本発明の蛍光体における蛍光体(A)乃至(D)とその他の蛍光体である。表1の蛍光体(A)のうち、P2だけが請求項1記載の範囲内のピーク波長及び蛍光強度を有する蛍光体である。表1の蛍光体(B)のうち、P5のみが請求項1記載の範囲内のピーク波長及び蛍光強度を有する蛍光体である。表1の蛍光体(C)のうち、P8のみが請求項1記載の範囲内のピーク波長及び蛍光強度を有する蛍光体である。表1の蛍光体(D)のうち、P10のみが請求項1記載の範囲内のピーク波長及び蛍光強度を有する蛍光体である。
これら蛍光体を表2の割合で混合して、実施例、比較例に係る蛍光体を得た。
Figure 0005916411
実施例1の蛍光体は、蛍光体(A)としての表1のP2の蛍光体を20質量%、蛍光体(B)としての表1のP5の蛍光体を10質量%、蛍光体(C)として表1のP8の蛍光体を12質量%、更に蛍光体(D)として表1のP10の蛍光体を58質量%配合したものである。表1での蛍光体の構成におけるP1乃至P12の値は質量%である。蛍光体同士の混合にあっては、合計2.5gを計量してビニール袋内で混合した上、シリコーン樹脂(東レダウコーニング株式会社OE6656)47.5gと一緒に自転公転式の混合機(株式会社シンキー社株式会社あわとり練太郎ARE−310(登録商標))で混合した。表1のA+B、A/B及びD/Cは、蛍光体(A)の実施例であるP2の配合比をA、蛍光体(B)実施例であるP5の配合比をB、蛍光体(C)の実施例であるP8の配合比をC、蛍光体(D)の実施例であるP10の配合比をDとしたときの値である。但し、Cは、P8の配合量を超えない場合には、P7を含む。
LEDへの搭載は、凹型のパッケージ本体の底部にLEDを置いて、基板上の電極とワイヤボンディングした後、混合した蛍光体をマイクロシリンジから注入して行なった。搭載後、120℃で硬化させた後、110℃×10時間のポストキュアを施して封止した。LEDは、発光ピーク波長448nmで、チップ1.0mm×0.5mmの大きさのものを用いた。
表2で示した評価について説明する。
表2の初期評価として、演色性の評価を採用した。演色性の評価には色再現範囲を採用し、色座標におけるNTSC規格比の面積(%)で表した。数字が大きいほど演色性が高い。評価の合格条件は68%以上であり、70%以上は優れた色再現性、66%未満は色再現性に劣ると言える。これは一般的なLED−TV向けに採用されていると言われている条件である。
表2の輝度は25℃での輝度光束で評価した。電流90mAを10分間印加した後の測定値を取った。評価の合格条件は、26.6lm以上である。この値は測定機や条件によって変わるため、実施例との相対的な比較するために、(実施例の下限値)×90%として設定した値である。
表2の高温特性は、25℃の光束に対する減衰性で評価した。50℃、100℃、150℃での光束を測定して、25℃を100%とした時の値である。評価の合格条件は、50℃で97%以上、100℃で95%以上、150℃で90%以上である。この値も世界共通の規格値ではないが、現状、高信頼性の発光素子の目安と考えられている。
表2の長期信頼性は、85℃、85%RHに500及び2,000hrs放置後取り出して室温で乾燥した際の光束を測定し、初期値を100%としたときの光束の減衰値である。
評価の合格条件は、500hrsで96%以上、2,000hrsで93%以上である。これは高信頼性の蛍光体でなくては達成できない値である。
表2が示すように、本発明の実施例は、比較的良好な色再現性、光束値を示し、高温や高温高湿下で長期保存した際の光束の減衰も比較的小さい。
本発明の比較例1はYAGを用いたいわゆる疑似白色発光装置であり、輝度は良好であるが、演色性に劣り、実施例に比べて信頼性も低くなっている。比較例3、4、6、8、10、12及び13も、色再現性に劣り、比較例2、5、9及び11では光束値が小さい。また、蛍光体(A)に本発明の範囲外のシリケート系蛍光体を用いた比較例2乃至5、7及び8では、高温特性、長期信頼性に劣り、信頼性の低いLEDパッケージとなって、テレビやモニターなどの製品に適用することは到底望めない。
本発明の蛍光体は、白色発光装置に用いられる。本発明の白色発光装置としては、液晶パネルのバックライト、照明装置、信号装置、画像表示装置に用いられる。

Claims (2)

  1. 455nmの光で励起したピーク波長552nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(A)と、455nmの光で励起したピーク波長595nm、蛍光強度205%αサイアロンである酸窒化物蛍光体(B)と、455nmの光で励起したピーク波長650nmCASNである窒化物蛍光体(C)と、及び、455nmの光で励起したピーク波長537nm、蛍光強度254%βサイアロンである酸窒化物蛍光体(D)を有し、
    蛍光体(A)及び蛍光体(B)の合計が30質量%以上60質量%以下、
    蛍光体(C)が10質量%以上17.5質量%以下、
    蛍光体(A)が蛍光体(B)の質量比で2.0以上6.0以下、
    蛍光体(D)が蛍光体(C)の質量比で3.0以上6.0以下である蛍光体。
  2. 請求項1に記載の蛍光体と、当該蛍光体を発光面に搭載したLEDとを有する発光装置。
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