JP5916006B2 - 液体クロマトグラフィー用カラム及びその製造方法 - Google Patents

液体クロマトグラフィー用カラム及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、液体クロマトグラフィー用カラム及びその製造方法に関する。
一般的な高速液体クロマトグラフィー用カラムは、空カラム(チューブ)に樹脂粒子を充填して製造される。充填される樹脂粒子は、懸濁重合等で合成後、粒子径が均一になるよう分級操作が必要である。また、樹脂粒子を空カラムに均一に充填するためには、充填圧及び充填時間等の調整が必要である。このため、樹脂粒子の調製工程及び充填工程は、高速液体クロマトグラフィー用カラム製造上の大きな隘路となっている。
これを解決するために、直接空カラム(チューブ)内で樹脂原料(モノマー)を重合し、多孔質の樹脂(モノリス)を形成する方法が知られている(in Situ重合法)(例えば、非特許文献1参照)。モノリスは、樹脂の材質によって、シリカ系モノリスと有機ポリマー系モノリスとに大別される。有機ポリマー系モノリスは、シリカ系モノリスに比べ、耐アルカリ性に優れる等の特徴がある。
近年、オミックス研究(例えば、非特許文献2参照)の飛躍的な進展に伴い、高理論段数の高速液体クロマトグラフィー用カラムが求められている。そこで、理論段数を上げるため、長い高速液体クロマトグラフィー用カラムが必要とされている。
一般的な高速液体クロマトグラフィー用カラムでは、カラムが長くなるにつれ、空カラムに樹脂粒子を充填することが困難になるため、長い高速液体クロマトグラフィー用カラムを製造することが難しい。これに対して、モノリスカラムは、液相法によって調整するため樹脂粒子を充填する工程が不要であり、長い高速液体クロマトグラフィー用カラムの製造も比較的容易である。
Anal.Chem.68,3498(1996) 梅村知也、小島徳久、植木悠二、「有機ポリマーモノリスを用いる高速・高性能分離分析法の開発」、分析化学、日本分析化学会、2008年、Vol.57,No.7,pp.517−529
しかしながら、カラムを長くすることにより、カラム使用時に広いスペースが必要となること、カラムが液体クロマトグラフィー装置のオーブン内に収まらないこと等の問題が生じる。また、従来のモノリスカラムでは、湾曲させてコンパクトにすることにより理論段数が低下し、分離性能が低下するという問題があった。このため、カラムの長さには限界があり、例えば市販されているような、既存の高速液体クロマトグラフ装置及びカラムでは、分離することが困難である物質が多数存在している。
そこで、本発明は、湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される液体クロマトグラフィー用カラムを提供することを目的とする。本発明はまた、湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される液体クロマトグラフィー用カラムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、チューブと、該チューブの内部に形成された有機ポリマー系モノリスと、を備え、長さが0.1m以上であり、湾曲部を有しており、かつ理論段相当高さが0.3mm以下である、液体クロマトグラフィー用カラムを提供する。
上記液体クロマトグラフィー用カラムは、更に湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される。したがって、カラムを長くしても、コンパクトにまとめることができるため、カラムを液体クロマトグラフィー装置のオーブン内に収めることが可能となる。これにより、高い理論段数を得ることができ、従来は分離することが困難であった物質の分離が可能である。
上記液体クロマトグラフィー用カラムは、湾曲部の曲率半径(R)が0.5cm以上であることが好ましく、湾曲部の曲率半径(R)が6cm以上であることがより好ましく、湾曲部の曲率半径(R)が12cm以上であることが更に好ましい。上記液体クロマトグラフィー用カラムは、1旋回以上の巻回構造を有するものとすることができる。また、上記有機ポリマー系モノリスは、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂モノリスであることが好ましい。
本発明はまた、モノマーの溶液を充填したチューブが湾曲部を有する状態で、モノマーをチューブの内部で重合させて有機ポリマー系モノリスを形成する工程を備える、液体クロマトグラフィー用カラムの製造方法を提供する。上記製造方法によれば、湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される液体クロマトグラフィー用カラムを得ることができる。
上記製造方法は、上記有機ポリマー系モノリスを形成する工程において、湾曲部の曲率半径(R)が12cm以上とし、次いで、上記有機ポリマー系モノリスを形成する工程の後に、湾曲部の曲率半径が更に小さくなるように湾曲させる工程を更に備えていてもよい。
上記製造方法では、有機ポリマー系モノリスが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂モノリスであり、モノマーの溶液が、(メタ)アクリル基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(メタ)アクリル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを。体積比65:35〜95:5で含有し、かつモノマーの溶液に含まれるモノマー量の合計が20〜50体積%であることが好ましい。これにより、より一層柔軟性の高い液体クロマトグラフィー用カラムを得ることができる。
上記有機ポリマー系モノリスを形成する工程においては、有機ポリマー系モノリスを形成するときの重合温度が80℃〜100℃であることが好ましい。これにより、より低い理論段相当高さを有する液体クロマトグラフィー用カラムを得ることができる。
本発明によれば、高い理論段数を有し、かつ湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される高速液体クロマトグラフィー用カラムが提供される。また、本発明によれば、高い理論段数を有し、かつ湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される液体クロマトグラフィー用カラムの製造方法を提供することができる。本発明の液体クロマトグラフィー用カラムによれば、既存の高速液体クロマトグラフ装置及びカラムでは、分離することが困難であった物質の分離が可能である。
液体クロマトグラフィー用カラムの一実施形態を示す正面図である。 液体クロマトグラフィー用カラムの一実施形態を示す正面図である。 (A)液体クロマトグラフィー用カラムの一実施形態を示す正面図である。(B)液体クロマトグラフィー用カラムの一実施形態を示す斜視図である。 従来の液体クロマトグラフィー用カラムを示す正面図である。 実施例1により得られたクロマトグラムである。 実施例4により得られたクロマトグラムである。 実施例5により得られたクロマトグラムである。 実施例7により得られたクロマトグラムである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル又はアクリルのことを意味する。
〔液体クロマトグラフィー用カラム〕
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラム(有機ポリマー系モノリスカラム)は、チューブと、チューブの内部に形成された有機ポリマー系モノリスと、を備える。
<チューブ>
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムに用いられるチューブ(空カラム)として、従来液体クロマトグラフィー用カラムに用いられているカラムを特に制限なく用いることができる。本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制されるため、チューブとしては、湾曲させることが可能な材質で形成されていることが好ましい。このようなチューブとしては、例えば、シリコスチールチューブ、スチールチューブ、テフロン(登録商標)チューブ、ポリプロピレンチューブ及びポリエチレンチューブが挙げられる。中でも、チューブとしては、シリコスチールチューブが好ましい。シリコスチールチューブとしては市販品を用いることができ、例えば、シグマアルドリッチジャパン製又はジーエルサイエンス製のシリコスチールチューブを用いることができる。
チューブの直径(内径)は特に限定されるものではないが、チューブの直径(内径)が大きすぎると、熱収縮によりチューブと有機ポリマー系モノリスとの間に隙間ができやすくなり、チューブと有機ポリマー系モノリスとが剥離しやすい傾向にある。また、チューブの直径(内径)が小さすぎると、チューブの強度が不足し、チューブの折れ又は曲がりなどを生じやすい傾向にあるほか、チューブ内部に有機ポリマー系モノリスを形成しても液体クロマトグラフィー用としては樹脂成分が少なすぎ分離が不十分になりやすいという傾向がある。チューブの直径(内径)は、例えば、0.1φmm〜5φmmとすることができる。
液体クロマトグラフィー用カラムとして用いる場合、チューブの長さが長い方が高い理論段数が得られやすい。ただし、チューブが長すぎる場合、液体クロマトグラフィー用カラムとしての再現性が低下するおそれがある。チューブの長さは、例えば5cm〜500cmとすることができる。チューブの長さは、10cm(0.1m)以上であることが好ましい。チューブの長さの上限に特に制限はないが、分析時間が適切になるとの観点から、例えば、10m以下とすることができる。
<有機ポリマー系モノリス>
本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスとして、例えば、(メタ)アクリル系樹脂モノリス、スチレン系樹脂モノリス、及びアリル系樹脂モノリスを挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂モノリスは、重合の容易さ、官能基の修飾のしやすさの点から好ましく用いられる。本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、例えば、後述する分子内に重合性の炭素−炭素間二重結合(重合性基)を有する重合性単量体(モノマー)の重合反応によって形成することができる。
本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、架橋により3次元網目状構造を有することが好ましい。また、本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、アルキル基、水酸基、エポキシ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、及びアラルキルオキシ基等から選ばれる少なくとも1個の官能基を有していることがより好ましい。例えば、アルキル基を有する場合、アルキル鎖が疎水性であるため、疎水性高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラムとして好適に用いることができる。また、水酸基又はグリシジル基を有する場合、これらの官能基を介してアミノ基、及びスルホン酸基等を導入することができるため、それぞれ、アニオン交換、及びカチオン交換HPLC用カラムとして好適に用いることができる。
<液体クロマトグラフィー用カラム>
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、比表面積が通常0.5〜1000m/gであり、好ましくは10〜500m/gである。また、平均細孔容積が通常0.01〜2cm/gであり、好ましくは0.05〜1.5cm/gである。さらに、平均細孔径が通常5〜500Åであり、好ましくは10〜250Åである。
本明細書において、比表面積、平均細孔容積及び平均細孔径とは、BJH法により求めた値である(装置:BELSORP−mini(日本ベル)、参考文献:近藤精一ら(H13)「吸着の科学」丸善株式会社 64pp)。
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、長さが0.1m以上であって、湾曲部を有しており、0.3mm以下の理論段相当高さ(HETP:height equivalent of one theoretical plate)を呈する。
本明細書において、「理論段相当高さ」とは、溶離液として50%(v/v)アセトニトリル水溶液を用い、流速を0.05mL/分とし、10mMペンチルベンゼンを1.0μL注入したときのペンチルベンゼンのピークから求めた理論段相当高さをいう。理論段相当高さは、理論段数をカラムの長さで除した値である。本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、理論段相当高さが0.05mm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、湾曲部を有する。湾曲部の曲率半径(R)は0.5cm以上であることが好ましく、6cm以上であることがより好ましく、12cm以上であることが更に好ましい。本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、更に湾曲させてコンパクトにした状態でも理論段数の低下が抑制される(理論段相当高さの上昇が抑制される)ため、湾曲部の曲率半径(R)は最初から小さくなくてもよい。一方、本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、例えば、湾曲部において、1旋回以上の巻回構造を形成していてもよい。「巻回構造」とは、1旋回以上渦巻き状に巻回してなる構造であってもよく、1旋回の円又は楕円構造であってもよい。
図4は、従来の液体クロマトグラフィー用カラムを示す正面図である。図4に示す液体クロマトグラフィー用カラム10は、その両端に液体クロマトグラフィー装置に接続するための接続部15,16を備えており、両接続部間の長さLは通常10cm程度である(図4)。
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムを示す図である。図1に示す液体クロマトグラフィー用カラム20は、湾曲部21,22を有する(図1)。図2に示す液体クロマトグラフィー用カラム30は、湾曲部31において1旋回の円構造を形成している(図2)。図3に示す液体クロマトグラフィー用カラム40は、湾曲部41において1旋回以上の巻回構造を形成している(図3(A)及び(B))。液体クロマトグラフィー用カラム40は、その両端に液体クロマトグラフィー装置に接続するための接続部45,46を備えており、両接続部間の長さLは10cm程度とすることもできる。すなわち、液体クロマトグラフィー用カラム40は、従来の液体クロマトグラフィー用カラム10と同程度のスペースでより長いカラム長を有することができ、より高い理論段数を得ることができる。
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラムとして有用である。
〔液体クロマトグラフィー用カラムの製造方法〕
本実施形態に係る液体クロマトグラフィー用カラムは、例えば、有機ポリマー系モノリスの原料となる重合性単量体(モノマー)の溶液をチューブに充填し、チューブが湾曲部を有する状態で、モノマーを重合させて有機ポリマー系モノリスを形成する工程を備える製造方法により製造することができる。また、必要に応じて、有機ポリマー系モノリスを形成した後に、チューブを更に湾曲させる工程を備えていてもよい。
以下、上記の実施形態に係る製造方法について詳細に説明するが、本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの製造方法はこの製造方法に限定されるものではない。
本実施形態において、有機ポリマー系モノリスは、分子内に少なくとも1つの重合性の炭素−炭素間二重結合(重合性基)を有する重合性単量体(モノマー)を重合反応させることによって形成することができる。このような重合反応の例として、例えば、上記重合性基を有する非架橋性モノマー同士の上記重合性基間の重合反応、上記重合性基を有する非架橋性モノマーと、上記重合性基を有する架橋性モノマーとの上記重合性基間の共重合反応、及び上記重合性基を有する架橋性モノマー同士の上記重合性基間の重合反応が挙げられる。
本実施形態において、非架橋性モノマーは、1分子中に1個の重合性の炭素−炭素間二重結合(重合性基)を有するモノマーである。非架橋性モノマーとして、具体的には、例えば、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、及びアリル系の非架橋性モノマーが挙げられる。得られる有機ポリマー系モノリスの柔軟性を上げるには、アクリル系及びメタクリル系の非架橋性モノマーが好ましい。
非架橋性モノマーとして、アルキル基、水酸基、エポキシ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、及びアラルキルオキシ基等から選ばれる少なくとも1個の官能基を有する非架橋性モノマーを挙げることもできる。
アルキル基を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、アルキル基を有するアクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、及びメタクリル酸ラウリルが挙げられる。
水酸基を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、水酸基を有するアクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フエニルオキシプロピル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート等や、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フエニルオキシプロピル、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレート、及びネオペンチルグリコールモノメタアクリレートが挙げられる。
エポキシ基を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、エポキシ基を有するアクリル酸、メタクリル酸の誘導体、及びエポキシ基を有するスチレンの誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、グリシジルクロネート、グリシジルイタコネート、グリシジルフマレート、グリシジルマレート、及びビニルベンジルグリシジルエステルが挙げられる。
アルキルオキシ基を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、アルキルオキシ基を有するアクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール等や、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、及びメタクリル酸メトキシジプロピレングリコールが挙げられる。
アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基を有するアクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール等や、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシジエチレングリコール、及びメタクリル酸フェノキシテトラエチレングリコールが挙げられる。
さらに、その他の官能基を有する非架橋性モノマーとして、例えば、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸−N−ビニル−2−ピロリドン、及びメタクリル酸−N−ビニル−2−ピロリドンが挙げられる。
非架橋性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。なお、非架橋性モノマーは、上述した具体例に限定されるものではない。
本実施形態における架橋性モノマーは、1分子中に2個以上の重合性の炭素−炭素間二重結合(重合性基)を有するモノマーである。1分子中に2個の重合性基を有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、及び、グリコールとメタクリル酸又はアクリル酸とのジエステルが挙げられる。グリコールとメタクリル酸又はアクリル酸とのジエステルとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレ−ト、1,3−ブチレングリコールジアクリレ−ト、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、テトラメチロールメタンジメタクリレート、テトラメチロールメタンジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートが挙げられる。
1分子中に3個以上の重合性基を有するモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
架橋性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。なお、架橋性モノマーは、上述した具体例に限定されるものではない。
本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、上記架橋性モノマー及び上記非架橋性モノマーの少なくとも一方を含有する組成物(モノマーの溶液)をチューブに充填し、チューブが湾曲部を有する状態で、モノマーを重合させることにより得ることができる。組成物(モノマーの溶液)は、上記架橋性モノマー及び非架橋性モノマーの両方を含有していてもよく、又は上記架橋性モノマーのみを含有していてもよく、若しくは上記非架橋性モノマーのみを含有していてもよい。
すなわち、本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、上記非架橋性モノマーを、上記架橋性モノマーと共重合させることにより得ることができる。また、本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは、上記架橋性モノマー同士を重合させること、又は上記非架橋性モノマー同士を重合させることにより得ることもできる。中でも、有機溶剤に対する耐性に優れるため、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとを併用して共重合により有機ポリマー系モノリスを得ることが好ましい。
組成物(モノマーの溶液)における、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとの配合割合は、モノマー総量に対し、非架橋性モノマーが65〜95体積%、かつ架橋性モノマーが5〜35体積%であることが好ましい(体積比65:35〜95:5)。さらに、柔軟性と機械的強度を両立するには、非架橋性モノマーが85〜95体積%、かつ架橋性モノマーが5〜15体積%であることが好ましい(体積比85:15〜95:5)。架橋性モノマーの割合が5体積%以上であると、得られる有機ポリマー系モノリスの機械的強度がより優れたものとなるため、繰り返し使用した場合における耐久性に優れ、検知及び分析の安定性がより一層優れたものとなる。また、架橋性モノマーの割合が35体積%以下であると、より柔軟性のある有機ポリマー系モノリスが得られやすくなるため、カラムを湾曲させた場合でも分離性能を維持し易くなる。
有機ポリマー系モノリスを形成する際の重合反応には、重合開始剤を用いてもよく、組成物(モノマーの溶液)には、重合開始剤が更に含まれていてもよい。重合開始剤としては、過酸化物系ラジカル重合開始剤、及びアゾ系ラジカル重合開始剤が好ましく、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、過安息香酸2−エチルヘキシル、過酸化アセチル、過酸化イソブチリル、過酸化オクタノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジtert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、4,4,6−トリメチルシクロヘキサノンジtert−ブチルペルオキシケタール、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、シクロヘキサノンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、アセトンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、及びジイソプロピルヒドロペルオキシド等の過酸化物系ラジカル重合開始剤、並びに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、(1−フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカーボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾー2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等のアゾ系ラジカル重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。なお、重合開始剤は、上述した具体例に限定されるものではない。
重合開始剤を用いる場合、重合開始剤の配合量は、モノマーの総量100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましい。配合量が0.05質量部未満の場合、重合時間が長くなり、また未反応のモノマーが有機ポリマー系モノリス中に残存する傾向がある。一方、配合量が10質量部を超える場合、重合開始剤が無駄であるばかりでなく、重合中の発熱制御が困難な傾向があり、分子鎖長が不十分等の問題が発生しやすくなる傾向がある。
組成物(モノマーの溶液)は、有機ポリマー系モノリスの多孔性を維持するための細孔調節剤として、種々の溶媒を更に含有していてもよい。この溶媒としては、モノマーは溶解するが、得られる重合体(有機ポリマー系モノリス)は溶解しないものが好ましく、具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ヘプタノール、イソアミルアルコール、プロパノール、1,4−ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジメチル、及びフタル酸ジエチル等の脂肪族又は芳香族エステル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサン、オクタン、並びにデカン等、公知の溶媒が使用できる。これらの溶媒は得られる有機ポリマー系モノリスの原料となるモノマーの種類によって適宜使い分けられ、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒の配合割合は、得られる有機ポリマー系モノリスカラムの分離性能が向上するとの観点から、モノマーと溶媒との合計量に対して50〜80体積%であることが好ましい。この場合、モノマー(架橋性モノマー及び非架橋性モノマー)の配合割合は、モノマーと溶媒との合計量に対して、20〜50体積%である。溶媒の配合割合が80体積%を超えると、すなわち、モノマーの配合割合が20体積%より少ないと、モノマーの割合が少な過ぎて、有機ポリマー系モノリスが得られない場合がある。溶媒の配合割合が50体積%未満、すなわち、モノマーの配合割合が50体積%を超えると、モノマーの割合が多くなり過ぎて、得られる有機ポリマー系モノリスカラムの背圧が高くなり流体透過性が低下する傾向がある。
本実施形態に係る有機ポリマー系モノリスは上記のモノマー(架橋性モノマー及び非架橋性モノマー)、並びに、必要に応じて重合開始剤及び細孔調節剤を含む組成物(モノマーの溶液)を、湾曲したチューブ(例えば、シリコスチールチューブ)内で重合することにより形成することができる。
有機ポリマー系モノリスを形成する際、重合温度は80℃〜100℃が好ましい。重合温度が80℃より低いと、理論段相当高さが高くなる傾向があり、100℃より高いと、チューブ内の発熱が激しくなり、合成作業が困難となる場合がある。重合時間は3〜24時間が好ましい。
有機ポリマー系モノリスを形成する際、チューブの湾曲部の曲率半径(R)は、12cm以上であることが好ましい。曲率半径が12cm未満の場合、カラム管に溶液を十分に満たすことができず空隙が生じる場合があり、得られるモノリスカラムの理論段相当高さが高くなる傾向にある。
湾曲部の曲率半径が12cm未満の有機ポリマー系モノリスカラムを作製する場合は、有機ポリマー系モノリスを形成する工程の後、更にカラムを湾曲させることで、理論段相当高さの低い有機ポリマー系モノリスカラムを製造することができる。有機ポリマー系モノリスを形成する工程の後に更にカラムを湾曲させる場合、湾曲後の湾曲部の曲率半径(R)は、0.5〜12cmであることが好ましく、理論段相当高さが更に低い有機ポリマー系モノリスカラムを得るには、湾曲部の曲率半径(R)は、6cm〜12cmであることが好ましい。本法に従えば、再現性よく、湾曲した有機ポリマー系モノリスカラムを製造することができる。
本実施形態に係る製造方法において、上述のアルキル基を有する非架橋性モノマーを用いた有機ポリマー系モノリスカラムは、アルキル鎖が疎水性であるため、疎水性高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラムとして好適である。
また、本実施形態に係る製造方法において、水酸基又はグリシジル基を有する非架橋性モノマーを用いた有機ポリマー系モノリスカラムは、アミノ基、及びスルホン酸基等の導入が容易であり、これらの基を導入した有機ポリマー系モノリスカラムは、それぞれ、アニオン交換、及びカチオン交換HPLC用カラムとして好適である。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラムによれば、既存のHPLC装置を用いて、従来分離が困難であった物質(例えば、ベンゼン同位体)を精度良く分離することができる。また、高分解能であるHPLC装置のさらなる小型化を達成することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル36.0mL、エチレングリコールジメタクリレート4.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が35cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。
<評価>
下記の条件で高速液体クロマトグラフィー(L2000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い測定を行った。
溶離液:水/アセトニトリル50:50(体積比)
流速:0.05mL/分
オーブン温度:28℃
測定波長:214nm(セミミクロ用セル)
サンプル:ウラシル(1mM)
メチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン(各10mM)
サンプル注入量:1.0μL
HPLCによる評価結果を図5に示す。図5に示すように、実施例1のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた(図5)。図5の1で示すピークはウラシル、2で示すピークはメチルベンゼン、3で示すピークはエチルベンゼン、4で示すピークはプロピルベンゼン、5で示すピークはブチルベンゼン、6で示すピークはペンチルベンゼンであった。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.026mmであった(表1)。
〔実施例2〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル36.0mL、エチレングリコールジメタクリレート4.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が12cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、実施例2のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.026mmであった(表1)。
〔実施例3〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル36.0mL、エチレングリコールジメタクリレート4.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が7cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、実施例3のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.045mmであった(表1)。
〔実施例4〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル36.0mL、エチレングリコールジメタクリレート4.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が1.2cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。
モノリスカラムの評価は実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価結果を図6に示す。実施例4のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた(図6)。図6の1で示すピークはウラシル、2で示すピークはメチルベンゼン、3で示すピークはエチルベンゼン、4で示すピークはプロピルベンゼン、5で示すピークはブチルベンゼン、6で示すピークはペンチルベンゼンであった。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.290mmであった(表1)。
〔実施例5〕
実施例1のモノリスカラムを更に湾曲させ、曲率半径(R)を7cmとした。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価結果を図7に示す。実施例5のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた(図7)。図7の1で示すピークはウラシル、2で示すピークはメチルベンゼン、3で示すピークはエチルベンゼン、4で示すピークはプロピルベンゼン、5で示すピークはブチルベンゼン、6で示すピークはペンチルベンゼンであった。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.026mmであった(表1)。
〔実施例6〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル32.0mL、エチレングリコールジメタクリレート8.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が35cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。得られたモノリスカラムを曲率半径(R)が7cmとなるように更に湾曲させた。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、実施例6のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.050mmであった(表1)。
〔実施例7〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル108.0mL、エチレングリコールジメタクリレート12.0mL、1−プロパノール114.6mL、1,4−ブタンジオール65.4mL、及びアゾビスイソブチロトリル1.2gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ3mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が35cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。得られたモノリスカラムを曲率半径(R)が7cmとなるように更に湾曲させた。
モノリスカラムの評価は、オーブン温度を80℃としたこと以外は実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価結果を図8に示す。実施例7のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することができた(図8)。図8の1で示すピークはウラシル、2で示すピークはメチルベンゼン、3で示すピークはエチルベンゼン、4で示すピークはプロピルベンゼン、5で示すピークはブチルベンゼン、6で示すピークはペンチルベンゼンであった。また、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.020mmであった(表1)。
〔比較例1〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル24.0mL、エチレングリコールジメタクリレート16.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(シグマアルドリッチジャパン製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が35cmとなるように湾曲させて、オーブンで90℃、24時間加温した。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、比較例1のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することはできたものの、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.400mmであった(表1)。
〔比較例2〕
<モノリスカラムの作製>
メタクリル酸ラウリル36.0mL、エチレングリコールジメタクリレート4.0mL、1−プロパノール38.2mL、1,4−ブタンジオール21.8mL、及びアゾビスイソブチロトリル0.4gをフラスコ中で混合し、フラスコを超音波洗浄器中に入れ超音波処理してアゾビスイソブチロニトリルを溶解させた。内径1mm、長さ1mのシリコスチールチューブ(ジーエルサイエンス製)に上記の混合モノマー溶液を注射器で注入し、両末端を漏れないように栓をした。チューブを曲率半径(R)が35cmとなるように湾曲させて、オーブンで60℃、24時間加温した。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、比較例2のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することはできたものの、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.500mmであった(表1)。
〔比較例3〕
比較例1のモノリスカラムを更に湾曲させ、曲率半径(R)を7cmとした。
モノリスカラムの評価は、実施例1と同様にして行った。HPLCによる評価の結果、比較例3のモノリスカラムは、6成分のトップピークを分離することはできたものの、ペンチルベンゼンの理論段相当高さは0.620mmであった(表1)。
Figure 0005916006
表1に示した評価結果から明らかなように、本発明のモノリスカラムでは、作製後に曲率半径を1/5程度になるように更に湾曲させた場合であっても、理論段相当高さ及び分離状態は変わらず、分離性能が維持された(実施例1及び5の比較)が、比較例のモノリスカラムでは理論段相当高さが高くなり、分離性能が低下した(比較例1及び3の比較)。
〔分離性能の評価:ベンゼン同位体の分離〕
ベンゼンD6(ベンゼンの水素原子6個を重水素原子と置換したもの)10mLとベンゼン10mLとの混合物をサンプルとし、高速液体クロマトグラフィー(L2000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、サンプル注入量1.0μL、溶離液50%(v/v)アセトニトリル水溶液、流速0.05mL/分、オーブン温度27℃の条件で、ベンゼン同位体の分離性能を評価した。
その結果、実施例1〜7のモノリスカラムはいずれもベンゼンとベンゼンD6とを分離することができた。一方、比較例1〜3のモノリスカラムはいずれもベンゼンとベンゼンD6とを分離することができなかった。
また、製造後半年が経過した実施例1のモノリスカラムを更に湾曲させて曲率半径をそれぞれ12cm、7cmとしたモノリスカラムの分離性能を評価したところ、分離性能に低下は見られず、いずれもベンゼンとベンゼンD6とを分離することができた。
さらに、実施例7のモノリスカラムについて、ベンゼン、ベンゼンD3(ベンゼンの水素原子3個を重水素原子と置換したもの)、及びベンゼンD6をそれぞれ10mLずつ含む混合物をサンプルとし、高速液体クロマトグラフィー(L2000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、サンプル注入量1.0μL、溶離液50%(v/v)アセトニトリル水溶液、流速0.05mL/分、オーブン温度27℃の条件で、ベンゼン同位体の分離性能を評価した。その結果、実施例7のモノリスカラムは、この3成分を分離することができた。
10,20,30,40…液体クロマトグラフィー用カラム、15,16,45,46…接続部、21,22,31,41…湾曲部。

Claims (10)

  1. チューブと、該チューブの内部に形成された有機ポリマー系モノリスと、を備え、
    前記有機ポリマー系モノリスは、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとを共重合させたものであり、前記非架橋性モノマーは、1分子中に1個の重合性の炭素−炭素間二重結合を有するモノマーであり、前記架橋性モノマーは、1分子中に2個以上の重合性の炭素−炭素間二重結合を有するモノマーであり、
    長さが0.1m以上であり、湾曲部を有しており、かつ理論段相当高さが0.3mm以下である、液体クロマトグラフィー用カラム。
  2. 前記理論段相当高さが、0.05mm以下である、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  3. 前記湾曲部の曲率半径(R)が0.5cm以上である、請求項1又は2に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  4. 前記湾曲部の曲率半径(R)が6cm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  5. 前記湾曲部の曲率半径(R)が12cm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  6. 1旋回以上の巻回構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  7. 前記非架橋性モノマーが(メタ)アクリル基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、
    前記架橋性モノマーが(メタ)アクリル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフィー用カラム。
  8. モノマーの溶液を充填したチューブが湾曲部を有する状態で、前記モノマーを前記チューブの内部で重合させて有機ポリマー系モノリスを形成する工程を備え、
    前記有機ポリマー系モノリスを形成する工程において、前記湾曲部の曲率半径(R)を12cm以上とし、
    前記有機ポリマー系モノリスを形成する工程の後に、該湾曲部の曲率半径(R)が更に小さくなるように湾曲させる工程を更に備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムを製造する製造方法。
  9. 前記有機ポリマー系モノリスが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂モノリスであり、
    前記モノマーの溶液が、(メタ)アクリル基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(メタ)アクリル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを、体積比65:35〜95:5で含有し、かつ前記モノマーの溶液に含まれるモノマー量の合計が20〜50体積%である、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記有機ポリマー系モノリスを形成するときの重合温度が80℃〜100℃である、請求項8又は9に記載の製造方法。
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