JP5914948B1 - 落下防止具及び落下防止具を備えた手袋 - Google Patents
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Abstract
Description
強磁性を有する物質は、鉄、ニッケル、コバルトおよびこれらを含む合金や酸化物の類である(広辞苑第六版より)。
また、作業工具に対しては落下防止紐が存在する。
しかし、ボルトとナットの着脱作業において、ボルト又はナットの落下に対する実用化された専用の防止器具はない。ゴム部材などの摩擦係数の大きい樹脂素材を部品の把持する部分に備えた手袋が存在するが、ゴム部材の摩擦でナットを保持できるわけではない。また、汎用の落下防止ネットではナットを落下させた際にはネットで弾んで地上にまで到達してしまうことがあり、万全であるとは言い難い。
このような現状では、ボルト又はナットを落下させないように注意しながら作業を行うしかなく、万が一、落下させて人身事故となった場合には重い社会責任が発生する。
特許文献2には、目的は異なっているが、18L缶の取っ手を起こすために、磁石を装備した指サック又はゴムバンドも開示されており、これを利用することも考えられる。
特許文献1は可撓性のある板状の磁石を、特許文献2はフェライト、MK、OP又はゴム磁石片を、特許文献3はゴム板状の磁石を採用している。
強磁性体物品である部品又は工具について、高所などの作業現場において落下を防止するための落下防止具1は、複数の指FGに装着する指先装着部10と磁石モジュール20とを備える。
指先装着部10は、小型軽量の強磁性体の部品及び工具を把持する手の指FGに装着する。図1では、袋状に形成したものを示したが、バンド状又は指に巻き付ける形状のものでもよい(不図示)。
どの指にまたは何本の指に装着するか作業の内容によって異なる。後述の実施例1では、ボルトBTとナットNTの着脱作業における具体的な装着状態を示した。また、作業用手袋GVの上に装着するか、指FGに直接装着するかについても選択することが可能である。
図1では、台座22に四個の磁石21を取り付けた状態を示した。
指先装着部10の内部であって前記強磁性体物品と当接する位置に磁石モジュール20を取り付ける。
親指と他の指のサイズ差又は指のサイズの個人差に対応するために数種類のサイズの指先装着部10を用意することになるが、指先装着部10に弾性部材を用いた場合であっても、指からの抜ける可能性を有する。
そこで、指先装着部10の弾性による指FGの締付具合を抜け防止具40で調節することにより落下防止具1の指FGからの脱落を防ぐ。本実施の形態においては、面ファスナーを例に挙げたが、指FGの締付を調整できる機能を有していれば、ボタン、ホック又は他のベルト長さ調整具などでもよい。
磁石モジュール20は、指FGの腹部程度の広さの平面を有する台座22に複数の磁石21を取り付けたものである。
台座22を使用せず、指FGの腹部の広さ程度の一個の磁石21を使用することも考えられるが、磁石21は大きくなるほど破損しやすくなり、強磁性体物品を把持した際の指先の感覚の確保も難しいため小型の磁石21を複数使用することとした。
以下、磁石21の選定について説明する。
磁石21を小型にした場合、その材質によっては強磁性体物品を把持する力が確保できない場合が考えられるため、候補として、アルニコ磁石、フェライト磁石、サルマニウムコバルト磁石及びネオジム磁石を挙げ、これらの性質を比較して選定を行った。
以下、その比較表を示す。
1位10点、2位5点、3位3点、4位1点とランクに重み付けを行い、得点を合計した。
その結果、39点を獲得したネオジム磁石を第一候補とした。
ネジ締め作業において磁石21を薄い指先装着部10を介して何度も強磁性体物品に当接させること及び破損することを考慮すると機械的強度又はコストは重要項目である。
しかし、強磁性体物品の落下を防止することが本発明の第一目的であることを鑑みれば、「保磁力」が最重要項目であることは明白である。この点からもネオジム磁石が最適であると判断し採用を決定した。
角形形状で試作を行ったが、角部分の破損が多く発生したので、強磁性体物品に当接する面を円形とし円柱形状の磁石21を採用することとした。
指先の感覚の確保が可能なものとして、高さ(厚み)が底面の直径より短い長さのものを選定した。
円形であっても大きくなれば破損の可能性が高まるので、破損の頻度が少なくなる直径を選定する必要がある。
試作では、高さを3mm未満にした場合には、吸着時の衝撃により破損の頻度が高くなった。一方で、高さが3mmを超えると、指先の感覚を確保することができない。
ひとまず、高さを3mmとし、直径を種々変化させて強磁性体物品の吸着実験を行った。
直径が5mmを超えると、破損する頻度が高まった。磁石21は大きくなるほどにその磁力により吸着時の衝撃が大きくなるためである。
そこで、底面の直径5mm×高さ3mmの円柱のネオジム磁石を使用し、台座22としてアクリル板を用いて複数個のネオジム磁石の集合体とすることとした。すなわち、台座22によって、強度を確保するのである。また、当該磁石21の面積寸法は、人差し指の腹を概ね四個程度で覆うことができる寸法である。複数個使用することにより、磁力が有効に働く面積を大きく取ることができる。なお、当該寸法は一例であって、台座22であるアクリル板の厚み又は面積を調整すれば、これに限定されるものではない。
また、図4は、本発明に係る落下防止具1の断面図である。
磁石モジュール20は、指先装着部10に接着するなど直接取り付けること又はゴムコートにより固定することも可能である。本実施の形態では、指先装着部10の指腹部中央から両側面部に掛けての生地内側に収納袋30を設け、当該収納袋30内に磁石モジュール20を収めることにより取り付けるものを示した。
収納袋30の素材は特に限定するものではないが、指先装着部10と同じく弾力性を有する素材が好適である。
指先装着部10が袋状の場合には、先端部分の生地が蓋の役割を果たし磁石モジュール20が収納袋30から外部に抜け出ることはない。磁石モジュール20の取り付けは、指先装着部10を裏返したうえで磁石モジュール20を収納袋30に挿入し、再び、指先収納部を裏返して磁石モジュール20を収めた収納袋30を指先収納部の内部とすることによって行う。
磁石21が破損した場合には磁石モジュール20のみの交換が可能となり、安価である。逆に指先装着部10が破損した場合であっても、指先装着部10のみの交換が可能となる。
指先装着部10が、バンド形状又は指に巻き付ける形状のタイプでは磁石モジュール20を収めた後に収納袋30の開放部分を閉じる必要がある。
台座22は、アクリル樹脂で形成され、磁石21を嵌合させる凹部26又は嵌合孔26を有する。磁石21を台座22に取り付けるのは、複数の磁石21が互いの強力な磁力によって位置関係が変わってしまうことを防止し、所定の平面において安定して均等な磁力を得るためである。
台座22は角部を丸めた平板形状に形成される。平面部分は、指側及び強磁性体物品側に面する。台座22の厚みは、磁石21の厚みと同程度であることが望ましい。可能な限り薄く強磁性体物品を把持する感覚を確保する必要がある。磁石21の嵌合部を凹部26とした場合、磁石21の固定が容易であるが、台座22をより薄くするために嵌合孔26として厚みを磁石21と同寸法にする方がより好適である。
平面の形状も含めて角を丸めることが好適である。指先装着部10を傷つけたり、指FGに痛みが生じたりすることを軽減できるためである。
平面の形状は、円形、楕円形又は磁石21の縁に沿った形状であることが好適である。可能な限り小型にし、作業上の指先の感覚を確保するためである。
円柱形状である複数個の磁石21が、台座22の平面上に底面を法線方向に向けて略均等に配置されて固定される。
図6(a)、(b)では、四個の円柱形状の磁石21について円形又は楕円形の台座22に略均等になるように配置した。図6(a)は、面積の広い指、例えば親指の腹部に適応するように円形の台座22に磁石21を固定した。図6(b)は、縦長の指、例えば人差し指又は中指の腹部に適応するように楕円形の台座22とした。
図6(c)、(d)は、大きい指のサイズに適応させるために、面積を広げ磁石21の個数を増やす場合、又は、強い磁力を確保するために、面積を変えず磁石21の個数を増やし密度を増した場合を示した。
台座22の平面上において、バランスのとれた磁力を得られる磁石21の配置とすることが目的である。
ボルトBTとナットNTを締結する工程を説明する。
図7は、本発明に係る落下防止具1を指FGに装着した状態を示す図である。
落下防止具1は、ナットNTを把持する側の手に装着する。着脱作業はナットNTを回転させて行うことが多く、ボルトBTは概ね固定物の孔に挿入されて落下の可能性が低いためである。
装着は、指FGを指先装着部10の開口部12に挿入することにより行う。なお、より安全性確保の効果を発揮させるため両手に装着してもよい。
着脱の作業は、主に親指と人差し指で行われるため、当該二本指に装着する。
落下防止具1の磁石モジュール20は、装着された指先装着部10の親指と人差し指の第一関節より先端寄りに位置するように取り付けられている。
単にナットNTを保持している場合は3本以上の指FGで保持することがより安全である。しかし、着脱等の作業を行う際には、ナットNTを回転、移動させなければならず、3本以上の指FGを用いることは非効率であり、かえって不用意にナットNTが指FGに触れて落下する場合もある。
したがって、ナットNTを回転、移動等作業している場合には、親指と人差し指に限定することが好適である。
しかし、二本指に取り付けられた磁石21の磁力でナットNTを保持することができなければ、実用化することは妥当ではない。
そこで、試作の落下防止具1を用いてボルトBTとナットNTの着脱作業を繰りかえして行う実験を行った。着脱作業の際にナットNTを故意に把持し損じる状況も設定した。その結果、親指と人差し指への落下防止具1の装着で磁石21に保持されず落下する場合は発生しなかった。ネオジム磁石を採用した場合、強力な磁力でさらに安全性が向上し好適である。
通常、ナットNTは親指の腹部の中央及び人差し指の腹部の中央を当接させ、中指を補助として添えて把持する。前段落で述べたように、人差し指の磁石モジュール20は親指寄り腹部に位置させている。そのため、ナットNTの一部は磁石モジュール20から外れることになるが、ネオジム磁石の磁力をもってすれば、指先の力がナットNTを把持するために作用する方向から外れた場合であっても、ナットNTは磁石21に吸着され落下することはない。
台座22を弾性部材とした場合には、指FGに倣うため人差し指の腹部中央から親指側の側面部中央までにかけての大きさに形成できる。その際には、上記のようにナットNTの一部が磁石モジュール20から外れることもない。
図9では、ボルトBTとナットNTを螺合させるために雄ネジ部分と雌ネジ部分を当接させた状態を示している。
この状態での磁石モジュール20とナットNTの位置関係は、図8の場合と同じである。
図10では、雄ネジ部分と雌ネジ部分を当接させた状態からナットNTを反時計方向(ナット側から視認、以下、同じ)に回転させた際の磁石モジュール20と指先の当接状態を示している。
図9の状態から反時計回りにナットNTを回転させると、ナットNTは、人差し指の捻る動作に伴い、人差し指の腹部中央から親指寄り腹部に転がって移動する。
それに対して、親指は、腹部の同じ位置をナットNTに当接させたまま捻る動作を行う。
人差し指の磁石モジュール20の取付位置(図7を参照)は図9から図10へと変化する指先のナットNTへの当接の状態を考慮して決定された。
ボルトBTの雄ネジ部分とナットNTの雌ネジ部分が係合したならば、ナットNTを把持していた親指と人差し指を一旦ナットNTから離し、親指の腹部の中央及び人差し指の腹部の中央をナットNTに当接させ、中指を補助として添える図9の状態に戻して把持する。
その後、ナットNTを反時計方向に回転させる図10の状態に移行する。
以後、手の力で回転させることが可能な限り、図9から図10への工程を繰り返し、仮締めを行う。
仮締めの後は、スパナなどの締結工具によって緩みが発生しないように本締めを行う。
落下防止具1は、締結する場合と同じ形態に装着する(図7)。
まず、締結工具によって、ボルトBTとナットNTの締結状態を緩める。
その後、締結の工程とは逆に、ナットNTは親指の腹部の中央及び人差し指の腹部中央から親指寄り腹部を当接させて把持する。すなわち、図10の状態にナットNTを把持する。
図10の状態から時計回り(ナット側から視認、以下、同じ)にナットNTを回転させるとナットNTは親指寄り腹部から人差し指の腹部中央に移動し、図9の状態になる。
ナットNTを把持していた親指と人差し指を一旦ナットNTから離し、親指の腹部の中央及び人差し指の腹部中央から親指寄り腹部をナットNTに当接させる図10の状態に戻して把持する。
その後、ナットNTを時計方向に回転させる図9の状態に移行する。
以後、ボルトBTとナットNTが離脱するまで図10から図9への工程を繰り返す。離脱の際に、指先の力がナットNTを把持するために作用する方向から外れた場合であっても、ナットNTは磁石21に吸着され落下することはない。
図7に示した楕円形の一個の磁石モジュール20を人差し指の腹部中央から親指寄りの腹部に掛けて位置するように取り付けた場合、人差し指の中指寄りの腹部に磁力の弱い部分が生じる。また、硬質の樹脂素材を採用した際には、強磁性物品の指FGへの添い方が十分でない場合がある。ナットNTの把持の方法には、少なからず個人差を有する。
個人差を補償するために、図11に示したように、人差し指の腹部中央に磁石モジュール20を配置し、加えて、人差し指の親指寄りの腹部に磁石モジュール20を配置し、人差し指の腹部前面から親指寄りの側面にかけて磁力が働くようにしたものである。
図13は、図12に示した磁石モジュール20を取り付けた本発明に係る落下防止具1を指FGに装着した状態を示す図である。
台座22に弾性部材を採用して指FGに添うように変形する磁石モジュール20を使用した場合、実施例2に示した二個の磁石モジュール20を一個にすることが可能となる。
弾性部材である場合には、指先装着部10内部において、曲面を成している指側面に磁石モジュール20を密着するように添わせることが可能であり、強磁性体物品を把持した際に指FGの感覚を十分に確保ができる効果が生じる。
ボルトBTとナットNTの着脱作業について例示したが、作業に応じて磁石21を配置した磁石モジュール20を用意し、収納袋30内の磁石モジュール20を交換することが可能である。
10 指先装着部
12 開口部
20 磁石モジュール
21 磁石
22 台座
26 嵌合孔(凹部)
30 収納袋
40 抜け防止具
BT ボルト
FG 指
GV 手袋
HD 手
NT ナット
PF 指腹部
Claims (7)
- 高所の作業現場において使用される強磁性体の着脱部材を複数の指で把持し着脱を行う際に着脱部材の落下を防止する落下防止具であって、
指先装着部と、
磁石モジュールと、
を備え、
前記指先装着部が、
親指用指先装着部と、
人差し指用指先装着部と、
のみにより構成され、
前記磁石モジュールが、
複数の磁石と、
前記複数の磁石を固定する台座と、
を備え、
前記親指用指先装着部は、
親指第一関節より先端寄りであって、かつ、指腹部の中央部分である領域に対応するように形成された前記磁石モジュールを当該領域に配設し、
前記人差し指用指先装着部は、
人差し指第一関節より先端寄りであって、かつ、指腹部の中央部分から親指側の側面部分中央までにかけての領域にのみ対応するように形成された前記磁石モジュールを当該領域に配設すること、
を特徴とする落下防止具。 - 前記指先装着部が、
弾性部材で袋形状に形成されること、
前記台座が、
弾性部材で形成され、前記磁石を嵌合させる凹部又は嵌合孔を有すること、
を特徴とする請求項1に記載する落下防止具。 - 前記指先装着部が、
該指先装着部内側において開口部を有する前記磁石モジュールの収納袋、
を備え、
前記親指用指先装着部は、
前記収納袋を、親指第一関節より先端寄りであって、かつ、指腹部の中央部分である領域に配設し、
前記人差し指用指先装着部は、
前記収納袋を、人差し指第一関節より先端寄りであって、かつ、指腹部の中央部分から親指側の側面部分中央までにかけての領域にのみ配設して、
前記磁石モジュールが、
前記開口部を介して収納又は取り出しされること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する落下防止具。 - 複数個の前記磁石が、
底面の直径が高さを超える長さの円柱形状であって、前記台座の平面部に底面を法線方向に向けて略均等に配置されて固定されること、
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載する落下防止具。 - 前記指先装着部が、
指先から抜け落ちることを防止する抜け防止具を備えること、
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載する落下防止具。 - 前記磁石モジュールを備えた前記親指用指先装着部と前記人差し指用指先装着部とを連結紐又は前記指先装着部の生地を延長し連結して手袋形状に形成したこと、
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載する落下防止具。 - 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載する落下防止具を備えたこと、
を特徴とする手袋。
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