JP5914512B2 - ヒトワクチンとしての使用に適するジフテリアトキソイドの生成のための動物由来成分を含まない発酵培地 - Google Patents

ヒトワクチンとしての使用に適するジフテリアトキソイドの生成のための動物由来成分を含まない発酵培地 Download PDF

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Description

(発明の分野)
本発明は、Corynebacterium diphtheriaeを培養するための発酵培地に関する。本発明はまた、培養されているC.diphtheriae細菌からジフテリア毒素を得るためのプロセスにおける上記発酵培地の使用、上記プロセスにおいて得られるジフテリア毒素を使用するワクチンの調製、および上記毒素自体に関する。本発明はさらに、例えば、ワクチンに含めるために、上記毒素からジフテリアトキソイドを調製するための精製および無毒化プロセスに関する。
(背景)
Corynebacterium diphtheriaeは、ジフテリアを引き起こす。上記細菌は、毒性タンパク質であるジフテリア毒素を生成し、上記毒素は、(例えば、ホルマリンもしくはホルムアルデヒドを使用して)処理されて、注射後に防御的抗毒素抗体を誘導する能力を維持しながら、毒性が除去され得る。この処理は、「無毒化」もしくは「トキソイド化(toxoiding)」といわれ、無毒化された毒素は、「トキソイド」といわれる。ジフテリアトキソイドは、ジフテリアワクチンにおいて使用され、書籍「Vaccines」[1]の第13章およびNew Generation Vaccines[2]の第31章においてより詳細に記載されている。
ヒトに投与されかつ生物学的プロセスを使用して生成されてきた任意の治療剤は、ヒト身体に有害物質を導入する可能性を有する。このような有害物質は、上記生物学的プロセスの間に使用される培地の一部であり得る。例えば、動物由来の培地成分(例えば、ウシ胎仔血清)は、異常に折りたたまれたタンパク質(例えば、プリオン)を含むリスクがある。牛乳由来のタンパク質は、牛乳アレルギーを有する乳幼児(young children)において、特に、DTPブースターワクチンを投与した後に、重篤なアレルギー反応を引き起こすことが示唆されてきた[3]。類似のリスクが、牛肉アレルギーを有する個体においても存在し得る[4]。伝統的には、ジフテリアトキソイドは、動物由来成分(例えば、ウシの抽出物および/もしくは牛乳由来のカザミノ酸)を含む増殖培地で(例えば、LinggoudおよびFenton培地で)C.diphtheriaeを増殖させることによって得られた。
非動物起源のタンパク質性材料の使用は、このリスクを排除する。特許文献1は、酵母抽出物である非動物タンパク質性材料の乾燥重量で少なくとも20%を含む、C.diphtheriaeを培養するための培地を開示する[特許文献1]。特許文献2は、動物由来成分を実質的に含まない、ジフテリア毒素の生成のためのC.diphtheriae培養培地、および上記毒素を生成するための方法を開示する[特許文献2]。特許文献3は、非動物由来かつ非ダイズ由来タンパク質供給源を使用して、細菌毒素を生成するための発酵培地を開示する[特許文献3]。特許文献4は、ジフテリア毒素を精製する方法を開示し、上記方法は、炭素源としてグルコースを使用してジフテリア毒素を生成し得る微生物株を発酵する工程を包含する。好ましい実施形態において、この特許出願は、1%以下の酵母抽出物を含む増殖培地の使用を開示する[特許文献4]。
これら培地は、非動物由来タンパク質源に基づくので、汚染リスクを減少させ得るが、これらのうちのいずれも、工業的生成の間に(例えば、100〜600Lの範囲の発酵槽を使用して)高収量のジフテリア毒素を生じず、低収量は、これらプロセスの欠点である。よって、これらプロセスのいずれもが、上記ジフテリアトキソイドをヒトワクチン生成に適したものにするのに十分高い効力を有する、動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドを生じない。
従って、本発明の目的は、ヒトへの投与に適した高効力ワクチン生成のためのジフテリア毒素の産業スケールでの高収量製造に使用するのに適した、さらに改善された発酵培地を提供することである。
ジフテリアトキソイドを調製するための伝統的プロセスにおいて、上記毒素は、培養培地成分の存在下で、ホルムアルデヒドで処理される(例えば、参考文献2の第31章の図4を参照のこと)。上記ジフテリア毒素を架橋し、無毒化することに加えて、上記ホルムアルデヒドは、上記培地成分の共有結合的架橋を引き起こす。この架橋は、上記動物由来成分が、増殖培地中に存在する場合には、ヒトワクチン生成物へと不可逆的に閉じ込められ得ることを意味する。ワクチンに使用するためのより高純度のトキソイドは、上記ホルムアルデヒド処理前に上記毒素を精製することによって得ることが可能である。特許出願GB−969772は、ジフテリア毒素からトキソイドを生成するための方法を開示し、上記方法は、水性媒体中の上記毒素を、分子量200未満の、1級アミノ基もしくは2級アミノ基を含む脂肪族ジアミンの存在下で、ホルムアルデヒドで処理する工程を包含する[9]。Frechら[10]は、2種の精製ジフテリアトキソイドの物理化学的分析を開示する:その第1のものは、上記ジフテリア毒素をホルマリン処理し、次いで精製する従来のプロセスによって調製された;その第2のものは、まず高度に精製され、次いで無毒化された。特許文献2は、少なくとも75%純粋なジフテリア毒素の無毒化を開示する。無毒化の前の精製工程において高純度が達成されているとしても、しかしながら、上記ジフテリア毒素を調製するために使用される発酵培地の残留する動物由来成分(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよびアミノ酸)は、ホルムアルデヒドによって、無毒化工程の間に得られるジフテリアトキソイドへと架橋される。
本発明のさらなる目的は、架橋された動物由来成分を含まないジフテリアトキソイドを提供することである。本発明の別の目的は、ジフテリアトキソイドが最初に高度に精製され、次いで無毒化される、さらに改善されたプロセスを提供することである。
Metzら[11]は、ジフテリア毒素の無毒化の間のグリシンおよびホルムアルデヒドの濃度が、得られるジフテリアトキソイドの抗原性特性に影響を及ぼすことを示す。特に、無毒化の間に使用されるホルムアルデヒドの濃度は、ジフテリアトキソイドの免疫原性に直接的に影響を及ぼし、種々のジフテリアトキソイド調製物の間で効力において最大で15倍の差をもたらす。
本発明のさらなる目的は、一貫して高い効力を有しかつヒトにおける使用に適したワクチンの調製に使用され得る、架橋された動物由来成分を含まないジフテリアトキソイドを提供することである。
欧州特許第1849860号明細書 国際公開第2005/056773号 国際公開第2006/042542号 国際公開第00/50449号
(発明の要旨)
A.発酵培地
本発明は、Corynebacterium diphtheriaeを培養するための種々の培地を提供する。これら培地は、少なくとも300リットルの生成容積を有する発酵槽において産業スケールでのジフテリア毒素生成を可能にし、収量は、一貫して、200Lf/mL〜250Lf/mL(もしくはこれより高い)の範囲にある。本明細書で開示される培地およびプロセスは、ジフテリア毒素を生成するにあたって動物由来の培地で達成される収量をさらに超え得る。
一般に、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するように、Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養するのに適した発酵培地を提供し、ここで上記培地は、動物由来成分を含まず、窒素源、炭素源、鉄補充物、リン、および増殖因子を含む。上記培地は、ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためのジフテリア毒素の高収量の産業スケールの生成に有用である。
一局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するように、Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養するのに適した発酵培地を提供し、ここで上記培地は、動物由来成分を含まず、水、鉄分除去した(deferrated)酵母抽出物および炭素源として少なくとも0.08Mのジサッカリドを含む。一実施形態において、上記発酵培地は、0.08M〜0.16Mの間のジサッカリドを含む。具体的実施形態において、上記発酵培地は、0.15Mのジサッカリドを含む。
別の局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するように、Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養するのに適した発酵培地を提供し、ここで上記培地は、動物由来成分を含まず、水、鉄分除去した酵母抽出物、およびFe(III)の塩を含む。
さらなる局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するように、Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養するのに適した発酵培地を提供し、ここで上記培地は、動物由来成分を含まず、水および低マンナン酵母抽出物を含む。一実施形態において、上記低マンナン酵母抽出物は、鉄分除去される。
なおさらなる局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するように、Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養するのに適した培養培地を提供し、ここで上記培地は、動物由来成分を含まず、水、30kDaより大きい分子量を有する成分を含まない酵母抽出物、および1.5μM〜30μMの間の濃度のFe(II)もしくはFe(III)の塩を含む。
具体的実施形態において、上記発酵培地は、動物由来成分を含まず、以下:
(i)窒素源として鉄分除去した酵母抽出物;
(ii)炭素源として0.08M〜0.16Mの間の還元ジサッカリド(例えば、セロビオースもしくはマルトース);
(iii)鉄源としてゲル様沈殿物の形態にある10〜14μM 可溶性Fe2+/Fe3+
(iv)マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、ピメリン酸、ニコチン酸およびβ−アラニンを含む増殖因子の混合物;
(v)水、
を含む。
調製の間に、さらなる培地成分を添加する前に、限外濾過が代表的には使用されて、水に溶解した酵母抽出物から30kDaより大きい分子量を有するすべての成分が除去される。
B.発酵培地を調製するためのプロセス
本発明は、本発明の発酵培地を調製するためのプロセスをさらに提供し、上記プロセスは、水に、(i)窒素源、(ii)炭素源、および(iii)鉄補充物を添加する工程を包含する。
一局面において、本発明は、発酵培地を調製するためにプロセスを提供し、上記プロセスは、酵母抽出物を水に溶解して、酵母抽出物溶液を得る工程、上記酵母抽出物溶液から鉄分除去して、鉄分除去した酵母抽出物溶液を得る工程、および少なくとも0.08Mのジサッカリドを、上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加して、上記発酵培地を調製する工程を包含する。一実施形態において、0.08M〜0.16Mの間の上記ジサッカリドが、上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加される。具体的実施形態において、0.15Mの上記ジサッカリドが、上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加される。
別の局面において、本発明は、発酵培地を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、酵母抽出物を水に溶解して、酵母抽出物溶液を作製する工程;上記酵母抽出物溶液から鉄分除去して、鉄分除去した酵母抽出物溶液を得る工程、およびFe(III)の塩を上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加して、上記発酵培地を調製する工程を包含する。一実施形態において、上記Fe(III)の塩は、鉄の緩慢放出処方物の形成を促進するために、ホスフェートおよびカルシウム塩と組み合わせて上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加される。
さらなる局面において、本発明は、発酵培地を調製するためのプロセスを提供し、ここで上記プロセスは、低マンナン酵母抽出物を調製する工程、および上記低マンナン酵母抽出物を水に溶解して、上記発酵培地を調製する工程を包含する。一実施形態において、上記プロセスは、上記低マンナン酵母抽出物から鉄分除去する工程をさらに包含する。
なおさらなる局面において、本発明は、発酵培地を調製するためのプロセスを提供し、ここで上記プロセスは、酵母抽出物を水に溶解して、酵母抽出物溶液を作製する工程、上記酵母抽出物溶液を、30kDaより大きい分子量カットオフを有する膜を使用して限外濾過して、>30kDaの分子量を有するすべての成分を除去する工程、上記酵母抽出物溶液から鉄分除去して、鉄分除去した酵母抽出物溶液を得る工程、ならびにFe(II)もしくはFe(III)の塩を、終濃度1.5μM〜30μMになるように上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加して、上記発酵培地を調製する工程を包含する。
C.ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するためのプロセス
本発明は、Corynebacterium diphtheriaeを増殖させるためのプロセスをさらに提供し、上記プロセスは、Corynebacterium diphtheriaeのある株を、本発明の発酵培地で培養する工程を包含する。
一局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、本発明の発酵培地で増殖させる工程および上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を上記発酵培地から分離する工程を包含する。
別の局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、少なくとも100Lの、動物由来成分を含まない発酵培地において調製する工程、上記培養物を、上記発酵培地で、140Lf/mLの上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度へと増殖させる工程、および上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を、上記発酵培地から分離する工程を包含する。
D.ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセス
本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するための種々のプロセスを提供する。これらのプロセスは、理想的には、無毒化する前に精製を含み、それによって、上記トキソイドへの培地成分の架橋を最小限にするかもしくは回避する。酵母抽出物を、上記培養培地中で使用した場合に、上記プロセスは、適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)で処理する前に、大部分の(理想的には、すべての)残留酵母抽出物成分を上記ジフテリア毒素から除去するべきである。それによって、上記ジフテリアトキソイドへの潜在的にアレルギー性の酵母成分の架橋が回避される。高純度の最終ジフテリアトキソイドはまた、有利である。なぜなら、保存剤の添加が回避され得、このことは、ワクチン接種の間の有害反応の可能性をさらに低下させるからである。
さらに、上記精製材料が無毒化前に濃縮される場合、上記無毒化工程(例えば、ホルムアルデヒドでの処理)の間により小さい容積を利用することが可能である。この最初の濃度は、例えば、より濃縮されたジフテリア毒素溶液を生じるいくつかのダイアフィルトレーション工程によって達成され得る。上記無毒化手順の間のより小さな容積の使用は、時間と貯蔵容量を節約することから有利である。
従って、なお別の局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を本発明の発酵培地で増殖させる工程、上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素を得る工程、適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素に添加する工程、ならびに先の工程からの上記精製されたジフテリア毒素をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
さらなる局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、発酵培地中で、好ましくは、少なくとも100リットルの容積において、そして/または少なくとも140Lf/mLの毒素/誘導体の収量を提供するために、増殖させる工程;(ii)上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を、上記発酵培地から分離して、ジフテリア毒素溶液を得る工程;(iii)上記ジフテリア毒素溶液からジフテリア毒素濃縮物を調製する工程であって、ここで上記濃縮物中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度は、工程(i)の最後において得られた上記発酵培地中もしくは工程(ii)の最後に得られた上記毒素溶液中のいずれかの、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度より少なくとも20倍高い、工程;(iv)上記濃縮物に、アミンおよび適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を添加する工程、ならびに、工程(iv)の濃縮物をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。一実施形態において、工程(iii)における上記濃縮物中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度は、上記発酵培地中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度より20倍〜36倍高い。
なおさらなる局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、すべての必須アミノ酸の唯一の供給源として酵母抽出物を含む発酵培地で増殖させる工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは誘導体を上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を得る工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体に添加する工程、ならびに(iv)工程(iii)からの上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
なお別の局面において、本発明は、ヒトでの使用のためのワクチンの調製のためのジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖させる工程であって、必要に応じて、ここで上記発酵培地は、酵母抽出物を含む工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは誘導体を上記発酵培地から精製して、少なくとも1500Lf/mg窒素の純度を有する精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を得る工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体に添加する工程、ならびに(iv)工程(iii)からの上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
別の局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖させる工程であって、必要に応じて、ここで上記発酵培地は、酵母抽出物を含む工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは誘導体を上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を得る工程であって、ここで上記精製された毒素もしくは誘導体は、少なくとも85%純粋である工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体に添加する工程、ならびに(iv)工程(iii)からの上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
さらなる局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖させる工程であって、必要に応じて、ここで上記発酵培地は、酵母抽出物を含む工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは誘導体を、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を得る工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体に添加する工程、ならびに(iv)工程(iii)からの上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
1つの特定の局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)少なくとも2000Lf/mLの濃度のジフテリア毒素もしくはその誘導体の溶液を調製する工程、(ii)上記溶液に、(a)0.025M以下の終濃度のアミンおよび(b)0.5〜1%(例えば、0.75〜1%)の範囲の終濃度の適切な無毒化剤(好ましくは、ホルマリン)を添加する工程、ならびに(iii)工程(ii)からの上記溶液をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。代表的には、上記溶液中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの間の範囲にある。具体的実施形態において、工程(i)で調製される上記溶液の毒素濃度は、約5000Lf/mLである。例えば、本発明は、ジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)少なくとも2000Lf/mLの濃度のジフテリア毒素の溶液を調製する工程、(ii)上記溶液に、(a)上記ジフテリア毒素のLfあたり5nmol以下のアミンおよび(b)上記ジフテリア毒素のLfあたり12〜55nmolの間、好ましくは、18〜25nmolの間のホルムアルデヒドを添加する工程、ならびに(iii)工程(ii)からの上記溶液をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。代表的には、上記溶液中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの間の範囲にある。具体的実施形態において、工程(i)において調製される上記溶液の毒素濃度は、約5000Lf/mLである。上記アミンは、好ましくは、リジンである。
具体的実施形態において、本発明は、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、酵母抽出物を含む発酵培地で増殖させる工程、(ii)上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から精製して、ジフテリア毒素溶液を得る工程、(iii)上記ジフテリア毒素溶液中のジフテリア毒素の濃度を少なくとも2000Lf/mLへと調節して、ジフテリア毒素濃縮物を得る工程、(iv)上記濃縮物に、(a)0.025M以下の終濃度までのアミンおよび(b)0.5〜1%(例えば、0.75〜1%)の範囲の終濃度までの適切な無毒化剤(好ましくは、ホルマリン)を添加する工程、ならびに(v)工程(iv)からの上記濃縮物をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。代表的には、上記溶液中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの間の範囲にある。具体的実施形態において、上記毒素濃度は、工程(iii)において5000Lf/mLへと調節される。好ましい実施形態において、上記アミンは、リジンであり、上記無毒化剤は、ホルマリンである。
より具体的な実施形態において、本発明は、ワクチン接種に適切なジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、酵母抽出物を含む発酵培地で増殖させる工程、(ii)上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から精製して、ジフテリア毒素溶液を得る工程、(iii)上記ジフテリア毒素溶液中のジフテリア毒素の濃度を、少なくとも2000Lf/mLへと調節して、ジフテリア毒素濃縮物を得る工程、(iv)上記濃縮物に、(a)上記ジフテリア毒素のLfあたり、5nmol以下のアミンおよび(b)上記ジフテリア毒素のLfあたり、12〜55nmolの間、好ましくは18〜25nmolの間のホルムアルデヒドを添加する工程、ならびに(v)工程(iv)からの上記濃縮物をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。代表的には、上記溶液中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの間の範囲にある。具体的実施形態において、上記毒素濃度は、工程(iii)において5000Lf/mLへと調節される。上記アミンは、好ましくは、リジンである。
一実施形態において、本発明は、ヒトでの使用のための混合ワクチンを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、
(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、以下:
窒素源;
少なくとも0.08Mの炭素源;
1.5μM〜30μM 可溶性Fe2+/Fe3+
リン;および
増殖因子、
を含む、動物由来成分を含まない少なくとも100Lの発酵培地中で調製する工程;
(ii)上記培養物を、好気性条件において、上記発酵培地中で少なくとも140Lf/mLの濃度の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体へと増殖させる工程;
(iii)上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を、上記発酵培地から分離する工程であって、ここで上記分離工程は、遠心分離工程および濾過工程を包含する工程;
(iv)工程(iii)において得られる上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して精製して、精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を含む溶液を得る工程;
(v)上記溶液中の上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体の濃度を、少なくとも2000Lf/mLへと調節して、ジフテリア毒素濃縮物を得る工程;
(vi)上記濃縮物に、(a)0.025M以下の終濃度までのアミンおよび(b)0.5〜1%(例えば、0.75〜1%)の範囲の終濃度までの適切な無毒化剤(好ましくは、ホルマリン)を添加する工程;ならびに
(vii)工程(vi)からの上記濃縮物をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程、
を包含する。
E.ジフテリアトキソイド
本発明のプロセスは、現在生成されているものよりヒトワクチンとしての使用により良好に適したジフテリアトキソイドを提供する。上記トキソイドは、公知のトキソイドとは、例えば、それらの架橋によって、架橋された培地成分がないことによって、効力によって、および/もしくは純度によって、分析的に区別される。好ましい実施形態において、本明細書で開示されるプロセスによって得られるジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まず、好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない。
一局面において、本発明は、ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖させる工程、上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から分離する工程、および上記ジフテリア毒素を、適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)の存在下でインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程によって得ることが可能な、ヒトでのワクチン接種に使用するためのジフテリアトキソイドを提供する。具体的実施形態において、このようにして得ることが可能な上記ジフテリアトキソイドは、無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)によって、上記発酵培地のうちの少なくとも1種の成分に架橋される。これらの1種以上の成分としては、上記発酵培地のうちのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくはアミノ酸が挙げられ得る。特定の実施形態において、これらの成分は、分子量≦30kDaを有する。具体的実施形態において、これらの成分は、酵母由来である。
本発明はまた、ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriae細菌によって生成されるジフテリア毒素から調製されるジフテリアトキソイドを提供し、ここで上記細菌は、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖し、かつ、ここで、上記トキソイドは、上記発酵培地のうちの少なくとも1種の成分に架橋する。これらの1種以上の成分は、上記発酵培地のうちのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくはアミノ酸を含み得る。特定の実施形態において、これらの成分は、分子量≦30kDaを有する。具体的実施形態において、これらの成分は、酵母由来である。
別の局面において、本発明は、以下を包含するプロセスによって得ることが可能な、ヒトでのワクチン接種における使用のためのジフテリアトキソイドを提供する:(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない、少なくとも100Lの発酵培地で増殖させる工程であって、必要に応じて、ここで上記発酵培地は、酵母抽出物を含む工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは誘導体を上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体を得る工程であって、ここで上記精製された毒素もしくは誘導体は、少なくとも85%純粋であり、かつ/もしくは少なくとも1500Lf/mg窒素の純度を有する工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を、上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体に添加する工程、ならびに(iv)工程(iii)からの上記精製されたジフテリア毒素もしくは誘導体をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程。具体的実施形態において、このプロセスによって得られる上記ジフテリアトキソイドは、上記無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)によって、上記発酵培地のうちの少なくとも1種の成分に架橋される。これらの1種以上の成分としては、上記発酵培地のうちのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくはアミノ酸が挙げられ得る。特定の実施形態において、これらの成分は、分子量≦30kDaを有する。具体的実施形態において、これらの成分は、酵母由来である。すなわち、本発明のプロセスによって得られるジフテリアトキソイドは、上記無毒化剤によって、酵母由来成分(例えば、酵母タンパク質、酵母由来ポリペプチドなど)に架橋され得る。
具体的実施形態において、本発明は、以下を包含するプロセスによって得ることが可能な、ヒトでのワクチン接種における使用のためのジフテリアトキソイドを提供する:
(i)低マンナン酵母抽出物を水に溶解して、酵母抽出物溶液を得る工程、上記酵母抽出物溶液から鉄分除去して、鉄分除去した酵母抽出物溶液を得る工程、上記鉄分除去した酵母抽出物溶液を、30kDaより大きい分子量カットオフを有する膜を使用して限外濾過する工程、および50g/Lのマルトース、増殖因子溶液および10〜14μMの間の濃度のFe(III)の塩を、上記鉄分除去した酵母抽出物溶液に添加して、上記発酵培地を調製する工程によって、動物由来成分を含まない発酵培地を調製する工程であって、ここで上記Fe(III)の塩は、ホスフェートおよびカルシウム塩と組み合わせて添加されて、鉄の緩慢放出処方物の形成を促進する工程;
(ii)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、少なくとも100Lの上記発酵培地で調製する工程;
(iii)上記培養物を、上記発酵培地中で少なくとも140Lf/mLの濃度の上記ジフテリア毒素へと増殖させる工程;
(iv)上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から遠心分離によって分離して、ジフテリア毒素溶液を得る工程;
(v)上記ジフテリア毒素溶液を濾過滅菌して、滅菌ジフテリア毒素を得る工程;
(vi)上記滅菌ジフテリア毒素を精製して、精製されたジフテリア毒素を得る工程;
(vii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素に添加する工程;ならびに
(viii)工程(ix)からの上記精製されたジフテリア毒素をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程。
別の具体的実施形態において、本発明は、以下を包含するプロセスによって得ることが可能な、ヒトでのワクチン接種における使用のためのジフテリアトキソイドを提供する:
(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、動物由来成分および30kDaより大きい分子量を有する成分を含まない、少なくとも100Lの発酵培地で調製する工程であって、ここで上記発酵培地は、(a)水、(b)鉄分除去した低マンナン酵母抽出物、(c)50g/Lのマルトース、(d)マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、ピメリン酸、ニコチン酸およびβ−アラニンを含む増殖因子溶液、(e)10〜14μMの間の出発濃度のクエン酸鉄(III)アンモニウム、ならびに(f)ホスフェートを含む工程;
(ii)上記培養物を、好気性条件下、上記発酵培地中で少なくとも200Lf/mLの濃度の上記ジフテリア毒素へと増殖させる工程;
(iii)上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から遠心分離によって分離して、ジフテリア毒素溶液を得る工程;
(iv)上記ジフテリア毒素溶液を濾過滅菌して、滅菌ジフテリア毒素を得る工程;
(v)上記滅菌ジフテリア毒素を精製して、精製されたジフテリア毒素を得る工程;
(vi)上記精製されたジフテリア毒素を、上記発酵培地中の上記ジフテリア毒素の濃度に対して少なくとも20倍濃縮して、ジフテリア毒素濃縮物を得る工程;
(vii)ホルムアルデヒドおよびリジンを上記ジフテリア毒素濃縮物に添加する工程;ならびに
(viii)上記ジフテリア毒素濃縮物を、ホルムアルデヒドおよびリジンの存在下でインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程。
さらなる具体的実施形態において、本発明は、以下を包含するプロセスによって得ることが可能な、ヒトでのワクチン接種における使用に適したジフテリアトキソイドを提供する:
(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を発酵培地で増殖させる工程;
(ii)上記ジフテリア毒素を、上記発酵培地からアニオン交換クロマトグラフィーを使用して精製して、少なくとも2000Lf/mg窒素を有する精製されたジフテリア毒素を含む溶液を得る工程;
(iii)上記溶液中の上記精製されたジフテリア毒素の濃度を、5000Lf/mLへとダイアフィルトレーションを使用して調節して、ジフテリア毒素濃縮物を得る工程;
(iv)上記濃縮物に、(a)0.025Mの終濃度までのリジンおよび(b)1%の終濃度までのホルマリンを添加する工程;
(v)上記工程からの濃縮物をインキュベートして、ジフテリアトキソイド濃縮物を得る工程;
(vi)上記ジフテリアトキソイド濃縮物を滅菌濾過して、滅菌溶液を得る工程;
(vii)上記滅菌溶液中の上記ジフテリアトキソイドの濃度を、10000Lf/mLへとダイアフィルトレーションを使用して調節して、濃縮溶液を得る工程;ならびに
(viii)上記濃縮溶液のpHをpH7.5へと調節して、ヒトでのワクチン接種における使用に適したジフテリアトキソイドを得る工程。
別の局面において、本発明は、少なくとも2000Lf/mLの濃度を有するジフテリア毒素の無毒化(例えば、ホルムアルデヒド処理を使用して)によって得ることが可能なジフテリアトキソイドを提供する。無毒化は、(本明細書で他の箇所で開示されるように)上記毒素の溶液に、(a)0.025M以下の終濃度のアミンおよび(b)0.5〜1%(例えば、0.75〜1%)の範囲の終濃度の適切な無毒化剤(好ましくは、ホルマリン)を添加する工程を含み得る。例えば、無毒化は、(本明細書で他の箇所で開示されるように)上記毒素の溶液に、(a)上記ジフテリア毒素のLfあたり、5nmol以下のアミンおよび(b)上記ジフテリア毒素のLfあたり、12〜55nmolの間、好ましくは、18〜25nmolの間のホルムアルデヒドを添加する工程を含み得る。上記アミンは、好ましくは、リジンである。ホルムアルデヒド(および必要に応じて、アミン(例えば、リジン))のこれら量は、当該分野で公知であるが、このような高濃度での毒素の処理については公知ではない。その変化した比は、公知のトキソイドとは分子的に区別可能なトキソイドを提供する。
本発明はまた、本明細書で記載されるように、本発明のプロセスによって得ることが可能なジフテリアトキソイドを提供する。特に、本発明は、本明細書中の実施例において開示されるとおりのプロセスによって得ることが可能な(例えば、本明細書で開示されるように、表3の培地中でC.diphtheriaeを増殖させ、毒素を精製し、上記毒素を無毒化することによって得ることが可能な)ジフテリアトキソイドを提供する。
F.ヒトでのワクチン接種に適した組成物
本発明は、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まず(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まず)かつ少なくとも60 IU/mlの効力を有するジフテリアトキソイドを含むヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供する。同様に、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、動物由来成分を含まない培養培地で増殖し、かつ少なくとも60 IU/mlの効力を有する、Corynebacterium diphtheriaeから精製されたジフテリアトキソイドを含む。一実施形態において、上記組成物は、3:1〜10:1の範囲の、好ましくは、3:1〜6:1(もしくは4:1〜9:1)の範囲の上記ジフテリアトキソイドのモノマー:ダイマー比を有し、上記ジフテリアトキソイドは、4.0〜5.0の範囲の等電点を有し得る。別の実施形態において、上記トキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。さらなる実施形態において、上記組成物は、Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原を含む。例えば、上記防御抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、破傷風抗原、百日咳抗原、H.influenzae B型莢膜サッカリド、N.meningitidis莢膜サッカリド、S.pneumoniae莢膜サッカリド、およびIPVから選択され得る。
本発明はまた、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、4.0〜5.0の範囲の等電点を有しかつ架橋された動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドを含み、ここで上記トキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。本発明はまた、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、架橋された動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドを含み、ここで上記トキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。例えば、上記組成物は、ホルムアルデヒドで結合された(formaldehyde−linked)動物由来成分を含まないホルムアルデヒドで結合されたジフテリアトキソイドを含み得、ここで上記トキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。好ましくは、ヒトでのワクチン接種に適した組成物は、ホルムアルデヒドで結合された動物由来成分を含まない、4.0〜5.0の範囲の等電点を有するホルムアルデヒドで結合されたジフテリアトキソイドを含み、ここで上記トキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。上記で考察されるように、これら組成物は、C.diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原を含み得る。
モノマー形態にあるトキソイドのパーセンテージは、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定され得る。曲線下面積を使用して、以下の式を使用してモノマー形態にあるトキソイドのパーセンテージを計算する:
%モノマー=面積モノマー/(面積ダイマー+面積モノマー)×100
1つの具体的実施形態において、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)ジフテリアトキソイドおよびCorynebacterium diphtheriae以外の病原体に由来する少なくとも1種の防御抗原を含む。別の具体的実施形態において、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まず(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まず)かつ3:1〜8:1の範囲の、より好ましくは、3:1〜6:1の範囲のモノマー:ダイマー比を有するジフテリアトキソイドを含み、ここで上記ジフテリアトキソイドは、5.0〜4.0の範囲の等電点を有する。さらなる具体的実施形態において、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)ジフテリアトキソイドを含み、ここで上記ジフテリアトキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。
なお別の実施形態において、本発明は、ヒトワクチンを調製することにおいて使用するための組成物を提供し、上記組成物は、(i)ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)100〜250Lf/mlの間のジフテリアトキソイド;(ii)40〜100Lf/mlの間の破傷風トキソイドを含み;ここで上記組成物中のジフテリアトキソイド 対 破傷風トキソイドの比は、2:1〜3:1の間である。特定の実施形態において、上記組成物は、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドを除くいかなる他の抗原をも含まない。
さらなる実施形態において、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、不溶性アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)に吸着された本発明のジフテリアトキソイドを含む。例えば、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まず(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まず)かつ不溶性アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)に吸着されたジフテリアトキソイドを含む。同様に、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を提供し、上記組成物は、動物由来成分を含まない培養培地で増殖させ、かつ少なくとも60 IU/mlの効力を有し、不溶性アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)に吸着された、Corynebacterium diphtheriaeから精製されたジフテリアトキソイドを含む。
本発明のジフテリアトキソイドは、サッカリド結合体におけるキャリアタンパク質として使用され得る。従って、さらなる局面において、本発明は、細菌サッカリドおよびジフテリアトキソイドキャリアタンパク質の結合体を提供し、ここで上記ジフテリアトキソイドは、上記で種々に定義されたとおりである(例えば、ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない、もしくは好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)。
なおさらなる局面において、本発明は、本発明のジフテリアトキソイドを含むワクチン処方物およびこれを含む組成物を提供する。
具体的実施形態において、本発明は、以下を含む混合ワクチンを提供する:(i)ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まず(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まず)かつ少なくとも60 IU/mlの効力を有するジフテリアトキソイド、ならびに(ii)Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原。上記防御抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、H.influenzae B型莢膜サッカリド、およびN.meningitidis莢膜サッカリドから選択され得る。好ましくは、上記HBsAgは、動物由来成分を含まない。好ましくは、上記H.influenzae B型莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない。好ましくは、上記N.meningitidis莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない。
本発明はまた、以下を含む混合ワクチンを提供する:(i)上記に記載されるように、少なくとも2000Lf/mLの濃度を有するジフテリア毒素の無毒化(例えば、ホルムアルデヒド処理を使用する)によって得ることが可能なジフテリアトキソイド;および(ii)上記に記載されるように、Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原。
一般に、本発明はまた、本発明のジフテリアトキソイドを含むヒトワクチンを提供し、ここで(i)上記トキソイドは、不溶性アルミニウム塩アジュバントに吸着され、そして/または(ii)上記ワクチンは、C.diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原を含む。
G.ヒトでのワクチン接種に適した組成物を調製するためのプロセス
さらなる局面において、本発明は、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)ジフテリアトキソイド;(ii)動物由来成分を含まないHBsAg;(iii)動物由来成分を含まないH.influenzae B型莢膜サッカリド;および(iv)動物由来成分を含まないN.meningitidis莢膜サッカリド、を合わせる工程を包含する。
一実施形態において、本発明は、ヒトワクチンを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)ホルムアルデヒドで架橋された動物由来成分を含まない(および好ましくは、すべての架橋された動物由来成分を含まない)100〜250Lf/mLの間のジフテリアトキソイド、および(ii)40〜100Lf/mlの間の破傷風トキソイドを含み;ここで上記組成物におけるジフテリアトキソイド対破傷風トキソイドの比は、2:1〜3:1の間である組成物と、少なくとも1種のさらなる抗原含有組成物とを混合する工程を包含する。具体的実施形態において、上記プロセスは、20〜30Lf/mlの間のジフテリアトキソイドおよび5〜15Lf/mlの間の破傷風トキソイドを含むヒトワクチンを生じる。
本発明はまた、ヒトでのワクチン接種に適した組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)動物由来成分を含まない培養培地で増殖させたCorynebacterium diphtheriaeから精製されたジフテリアトキソイド;(ii)動物由来成分を含まないHBsAg;(iii)動物由来成分を含まないH.influenzae B型莢膜サッカリド;ならびに(iv)動物由来成分を含まないN.meningitidis莢膜サッカリドを合わせる工程を包含する。上記組成物は、少なくとも60 IU/mlの効力を有するジフテリアトキソイドを含み得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトでのワクチン接種に適した組成物であって、該組成物は、少なくとも1500Lf/mg ジフテリアトキソイドタンパク質窒素の比純度を有し、そして/または少なくとも60 IU/mlの効力を有する、動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドを含む、組成物。
(項目2)
前記ジフテリアトキソイドは、4.0〜5.0の範囲の等電点を有し、該ジフテリアトキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記ジフテリアトキソイドのモノマー:ダイマー比は、3:1〜8:1の範囲にある、項目1に記載の組成物。
(項目4)
Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原をさらに含む、項目1〜3に記載の組成物。
(項目5)
前記非ジフテリア防御抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、破傷風トキソイド、百日咳抗原、結合体化H.influenzae B型莢膜サッカリド、結合体化N.meningitidis莢膜サッカリド、結合体化S.pneumoniae莢膜サッカリド、および/または不活性化ポリオウイルスから選択される、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記HBsAgは、動物由来成分を含まない、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記H.influenzae B型莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない、項目5または6に記載の組成物。
(項目8)
前記N.meningitidis莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない、項目5〜7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目9)
前記組成物は、以下:

からなる、項目5〜8のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
ヒトワクチンの製造に適した組成物であって、ここで該組成物は少なくとも5Lの容積を有し、動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドを含み、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有し、ここで該ジフテリアトキソイドは、少なくとも500Lf/mLの濃度で存在し、そして/または少なくとも2000 IU/mlの効力を有する、組成物。
(項目11)
項目4〜9のいずれか1項に記載の組成物を作製するためのプロセスであって、ここで該プロセスは、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する動物由来成分を含まない架橋されたジフテリアトキソイドと、Corynebacterium
diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原とを混合する工程を包含する、プロセス。
(項目12)
少なくとも1000単回単位用量の混合ワクチンを調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(i)動物由来成分を含まずかつ少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する架橋されたジフテリアトキソイドと、Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原とを混合して、該混合ワクチンを得る工程;
(ii)該混合ワクチンを少なくとも1000単回単位用量に分ける工程;
を包含し、ここで各単回単位用量は、ヒトでの注射に適しており、かつ少なくとも20 IUの該ジフテリアトキソイドを含む、プロセス。
(項目13)
単位用量形態において混合ワクチンを調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(i)ジフテリアトキソイドバルクと、1種以上の非ジフテリア抗原のバルクとを、および必要に応じて、水性希釈剤とを混合して、バルク混合ワクチンを得る工程;ならびに
(ii)少なくとも1000単位用量の該混合ワクチンを、該バルク混合ワクチンから調製する工程、
を包含し、ここで
(a)各単位用量は、ヒトでの注射に適しており、かつ少なくとも20 IUの該ジフテリアトキソイドを含み、
(b)該ジフテリアトキソイドバルクは、架橋されたジフテリアトキソイドを含み、該架橋されたジフテリアトキソイドは、動物由来成分を含まず、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有し、少なくとも2000 IU/mlの効力を有する、プロセス。
(項目14)
ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためにジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、以下:
鉄分除去した酵母抽出物;
少なくとも0.08Mのサッカリド;
1.5μM〜30μM 可溶性Fe 2+ /Fe 3+
リン;および
増殖因子、
を含むが、動物由来成分を含まない、少なくとも100Lの発酵培地中で調製する工程;
(ii)好気性条件において、該培養物を、該発酵培地中で少なくとも140Lf/mLの該ジフテリア毒素の濃度まで増殖させる工程;
(iii)該ジフテリア毒素を該発酵培地から分離する工程;
(iv)無毒化剤を該工程(iii)において得られたジフテリア毒素に添加する工程;ならびに
(v)得られた溶液をインキュベートして、該ジフテリアトキソイドを得る工程;
を包含し、ここで該プロセスは、精製工程をさらに包含し、ここで該精製工程は、該無毒化剤を添加する前に、該工程(iii)において得られたジフテリアトキソイドに適用されるか、または該ジフテリアトキソイドに適用されるかのいずれかである、プロセス。
(項目15)
前記濃度は、少なくとも200Lf/mLの前記ジフテリア毒素もしくはその誘導体である、項目14に記載のプロセス。
(項目16)
前記濃度は、少なくとも250Lf/mLの前記ジフテリア毒素もしくはその誘導体である、項目14に記載のプロセス。
(項目17)
前記酵母抽出物は、対応する野生型株より少なくとも30%少ないマンナンを含む酵母株を使用して調製される、項目14〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目18)
前記酵母抽出物は、前記発酵培地を調製する前に、限外濾過されて、マンナンおよび他のポリサッカリドが既に除去されている、項目14〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目19)
前記サッカリドは、ジサッカリドである、項目14〜18のいずれか1項のプロセス。
(項目20)
前記ジサッカリドは、0.08M〜0.16Mの間の濃度で存在する、項目18に記載のプロセス。
(項目21)
前記鉄補充物は、Fe(III)の塩である、項目14〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目22)
前記発酵培地は、前記Fe(III)の塩を、ホスフェートおよびカルシウム塩と組み合わせて添加して、鉄の緩慢放出処方物の形成を促進することによって調製される、項目21に記載のプロセス。
(項目23)
前記工程(iii)において得られたジフテリア毒素は、少なくとも85%の純度まで精製される、項目14〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目24)
前記工程(iii)において得られたジフテリア毒素もしくは前記ジフテリアトキソイドは、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素まで精製される、項目14〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目25)
前記無毒化剤を添加する前の前記ジフテリア毒素の濃度は、少なくとも2000Lf/mLに調節される、項目14〜24のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目26)
前記無毒化剤は、0.75〜1%の範囲の終濃度のホルマリンであり、インキュベーションは、0.025M以下の終濃度のアミノ酸の存在下で行う、項目14〜25のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目27)
前記アミノ酸は、グリシンもしくはリジンである、項目26に記載のプロセス。
(項目28)
アジュバント、キャリアおよび/もしくは賦形剤を、前記ジフテリアトキソイドに添加する工程をさらに包含する、項目14〜27のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目29)
Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原を、前記ジフテリアトキソイドに添加する工程をさらに包含する、項目14〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目30)
項目14〜27のいずれか1項に記載のプロセスによって得られるヒトでのワクチン接種における使用のためのジフテリアトキソイドであって、ここで該ジフテリアトキソイドは、無毒化剤によって、発酵培地のうちの少なくとも1つの成分に架橋されている、ジフテリアトキソイド。
(項目31)
項目14〜27のいずれか1項に記載のプロセスによって得られる、ジフテリアトキソイド。
(項目32)
項目30または31に記載のジフテリアトキソイドを含む、ヒトでのワクチン接種に適した組成物。
(項目33)
ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためのジフテリアトキソイドを生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
(i)ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、発酵培地で増殖させる工程;
(ii)該ジフテリア毒素を該発酵培地から精製して、ジフテリア毒素溶液を得る工程;
(iii)該ジフテリア毒素溶液中のジフテリア毒素の濃度を、少なくとも2000Lf/mLに調節して、濃縮溶液を得る工程;
(iv)該濃縮溶液に無毒化剤を添加する工程;および
(v)得られた溶液をインキュベートして、該ジフテリアトキソイドを得る工程、
を包含する、プロセス。
(項目34)
前記工程(ii)において得られたジフテリア毒素は、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
前記発酵培地は、動物由来成分を含まない、項目33または34に記載のプロセス。
(項目36)
前記発酵培地は、動物由来成分を含む、項目33または34に記載のプロセス。
(項目37)
前記無毒化剤は、0.75〜1%の範囲の終濃度のホルマリンであり、インキュベーションは、0.025M以下の終濃度のアミノ酸の存在下で行う、項目33〜36のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目38)
前記アミノ酸は、グリシンもしくはリジンである、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
項目33〜38のいずれか1項に記載のプロセスによって得られる、ジフテリアトキソイド。
図1は、本発明に従う発酵プロセスのフローチャートを示す。 図2は、アニオン交換クロマトグラフィーの前後の上記ジフテリア毒素溶液のクロマトグラムを示す。 図3は、濃縮/ダイアフィルトレーション前後の上記ジフテリア毒素溶液のクロマトグラムを示す。 図4は、上記粗製ジフテリア毒素が、精製前に無毒化される従来のプロセスによって調製されたサンプルとの比較において、サンプル番号1、7、15、41、47および55の等電点電気泳動ゲル(electric focusing gel)を示す。 図5は、サンプル番号1、3、9、15、41、43、49および55の等電点電気泳動ゲルを示す。 図6は、サンプル番号5、25、45、11、51、17、37および57の等電点電気泳動ゲルを示す。 図7は、サンプル番号7、27、47、13、53、19、39および59の等電点電気泳動ゲルを示す。 図8は、pH7(レーン2)もしくはpH8(レーン9)において緩衝化された、無毒化前の毒素と比較した、サンプル番号21、23、29、31、33および35の等電点電気泳動ゲルを示す。 図9は、リジンの非存在下で、もしくは0.025M リジンの存在下で、1% ホルマリンでの無毒化後に500Lf/mLのジフテリア毒素出発濃度を有するサンプルのクロマトグラムを示す。 図10は、リジンの非存在下で、もしくは0.025M リジンの存在下で、1% ホルマリンでの無毒化後に2000Lf/mLのジフテリア毒素出発濃度を有するサンプルのクロマトグラムを示す。 図11は、リジンの非存在下で、もしくは0.025M リジンの存在下で、1% ホルマリンでの無毒化後に5000Lf/mLのジフテリア毒素出発濃度を有するサンプルのクロマトグラムを示す。 図12は、本発明に従う精製および無毒化プロセスのフローチャートを示す。
(発明の詳細な説明)
(発酵培地)
一局面において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を生成するためのC.diphtheriaeのある株を培養するのに適した発酵培地に関する。細菌増殖を支援するために、上記培地は、窒素源、炭素源、リン源、および増殖因子を含むべきである。上記細菌による毒素生成を支援するために、上記培地は、適切な鉄源を含むべきである。
好ましい実施形態において、上記培地は、動物由来成分を含まない。従って、上記培地中のすべての成分は、非動物源から調製されるべきである。上記成分は、例えば、植物源から(例えば、ダイズから)調製されてもよいし、合成であってもよいが、肉および乳汁の成分は使用されない。
(窒素源)
本発明の発酵培地の窒素源は、好ましくは、酵母抽出物である。酵母抽出物は、一般に、一次酵母の無塩自己消化およびその後の徹底的な精製によって得られる。このことは、上記酵母抽出物を所望でない成分(例えば、胞子およびDNA)を含まないようにする。
一実施形態において、上記酵母抽出物は、低マンナンである。低マンナン酵母抽出物を調製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、低マンナン酵母抽出物は、従来どおり調製された酵母抽出物から限外濾過を通じてポリサッカリドを除去することによって調製され得る。あるいは、低マンナン酵母抽出物は、マンナンの発現量が低下した酵母株から調製され得る。マンナンの発現量が低下した(例えば、野生型レベルの70%未満)酵母株は、その細胞壁の完全性を部分的に欠いており、その細胞内内容物を容易に放出し、従って、バッチ間の変動がほとんどない酵母抽出物を調製するのに特に適している。理想的には、低マンナン酵母株は、液体培地で増殖することができ、産業スケールでの酵母抽出物調製に適している。このような酵母株は、マンナン発現に必要とされる1種以上の遺伝子が変異した酵母株であり得る。あるいは、低レベルのマンナンを発現する、天然に存在する酵母株が、酵母抽出物を調製するために使用され得る。低マンナン含有量を有する細胞壁を有する酵母株およびこれを生成するための方法の例は、参考文献12および13に開示される。特に、天然に存在する酵母株、または化学的にもしくは物理的に変異誘発した酵母株は、グラム染色を使用して、細胞壁における低マンナン含有量についてスクリーニングされ得る。電子顕微鏡検査によって細胞壁の外層の電子密度が同様に低いグラム陽性株は、低マンナン含有量を有するようである。マンナン含有量は、化学分析によって決定され得る。あるいは、上記酵母の細胞壁の低マンナン含有量は、マンナン特異的抗体もしくはレクチン(例えば、コンカナバリンA)で確認され得る。
別の実施形態において、上記酵母抽出物は、限外濾過した酵母抽出物(例えば、粗製の酵母抽出物の限外濾過の生成物)である。例えば、限外濾過の工程は、酵母抽出物溶液の調製の間に含められ得るか、または現存の酵母抽出物溶液が、本発明の発酵培地を調製することにおいてそれを使用する前に限外濾過に供され得る。具体的実施形態において、限外濾過は、上記酵母抽出部液から30kDaより大きい分子量を有するすべての成分を除去するために使用される。高分子量成分を上記酵母抽出物から除去することによって、胞子、ならびに十分に加水分解されなかったタンパク質およびDNAが、除去され、このことは、異なる酵母抽出物調製の間でのバッチ間変動を最小限にし、非常に再現性のある発酵プロセスを保証する。
さらなる実施形態において、上記酵母抽出物は、鉄分除去される。以下で説明されるように、高い鉄濃度は、C.diphtheriaeの増殖の間に上記ジフテリア毒素の発現を阻害する。酵母抽出物から鉄分除去するための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、StainerおよびScholte[14]によって記載されるプロセスは、発酵培地でのそれの使用の前に、上記酵母抽出物から鉄を沈殿させるために使用され得る。鉄は、酵母抽出物を水に溶解し、そのpHを9.3に調節し、NaHPOおよびKHPOを上記酵母抽出物溶液に添加し、上記溶液を85℃に加熱し、そしてCaClを添加することによって、沈殿させられ得る。次いで、その沈殿物は、上記溶液をゆっくりと冷却することによって形成される。酵母抽出物を水に溶解し、そのpHを9.3に調節し、上記溶液を60℃へと加熱し、NaHPOおよびKHPOを上記酵母抽出物溶液に添加し、上記溶液を79℃へとさらに加熱し、CaClを添加し、上記溶液を85℃へとさらに加熱し、次いで、上記溶液を25℃へと3時間にわたって冷却して、鉄沈殿物を形成させることによって、特に良好な結果が達成された。上記沈殿物は、例えば、濾過もしくは遠心分離によって、除去され得る。
好ましい実施形態において、上記酵母抽出物の限外濾過および鉄分除去は、組み合わされる。上記増殖因子および鉄補充物の両方を添加する前に上記酵母抽出物の限外濾過および鉄分除去の両方を組み合わせると、C.diphtheriaeを増殖させるために使用される場合に、約200Lf/ml以上のジフテリア毒素を産する発酵培地が生じることがわかった。
別の好ましい実施形態において、上記酵母抽出物は、上記発酵培地におけるすべての必須のアミノ酸の唯一の供給源である。いくつかのアミノ酸(例えば、β−アラニンおよびL−システイン)は、上記増殖因子の一部として別個に添加され得る一方で、酵母抽出物は、C.diphtheriaeの増殖に必要とされるすべてのアミノ酸を提供し得るので、上記発酵培地を調製するために必要とされる成分の数、および化学的に規定される培地を提供する全体的コストも低下する。
さらなる実施形態において、酵母抽出物を使用する代わりに、上記発酵培地の窒素供給源は、コメ−コムギペプトン、コメペプトン、コムギペプトン、ダイズペプトン、綿ペプトン、エンドウ豆ペプトン、およびジャガイモペプトンから選択され得る。しかし、いくつかの実施形態において、発酵培地は、ダイズペプトンを含まない。他の実施形態において、本発明に従う発酵培地は、いかなる植物由来材料も動物由来材料も含まない。
本発明の発酵培地における窒素源としての酵母抽出物の使用は、特に好ましい。植物由来成分(例えば、植物ペプトン)は、農業産物であるので、適切な手順が守られなければ、それらは、外来性ウイルスを含まないことを保証できない。例えば、パルボウイルスは、それらの宿主動物(例えば、ウシ)の糞便に見いだされ得る。パルボウイルスで汚染された糞便は、肥料として使用され得るので、パルボウイルス汚染糞便の存在下で生長する植物に由来する植物ペプトンを汚染し得る。パルボウイルスは、組織培養細胞に感染し得、品質管理アッセイ(例えば、鉄分除去後にジフテリアトキソイド調製物の残留する毒性を決定するために使用されるVero細胞アッセイ)を妨害し得る。さらに、植物由来成分で調製されるジフテリアトキソイドにおけるウイルス成分の存在は、上記トキソイドを含むワクチンを受けるヒト被験体において有害反応を引き起こし得る。しかし、適切な管理が実施されている場合、植物由来成分は、使用され得る。
(炭素源)
種々の炭素源が、C.diphtheriaeを増殖させるために使用されてきた(グルコースおよびグリセロールが挙げられる)。別個の炭素源の添加は、炭素含有窒素源が使用される場合には絶対的に必要なわけではない(C.diphtheriaeは、アミノ酸から炭素を同化し得る)が、さらなる炭素源が存在する場合には、増殖速度は、発酵の間に遙かに大きい。
一般に、上記炭素源の濃度がより高くなると、培養の間に達成され得る毒素の収量がより高くなる。しかし、高濃度のモノサッカリド(例えば、グルコース)は、上記培地の増大した重量オスモル濃度に起因して問題を引き起こし得る。さらに、C.diphtheriaeは、この細菌が上記発酵プロセスの間に低酸素条件に(例えば、不十分な通気に起因して)遭遇する場合に起こり得る嫌気性発酵の副生成物として乳酸を生成する。上記炭素源としてのモノサッカリドの使用は、上記発酵培地中の乳酸の蓄積に起因して、大きなpH低下をもたらす。上記発酵培地の低pHは、毒素生成を低下させるかもしくは阻害するので、毒素の高収量が望ましい場合には回避されるべきである。上記モノサッカリドの代わりにジサッカリドを使用すると、低酸素条件下でpHのより小さな低下がもたらされるので、毒素収量が増大する。従って、発酵条件下でC.diphtheriaeの最適な増殖のための炭素源の最大量を提供するために、上記発酵培地におけるジサッカリドの使用は、好ましい。
一実施形態において、上記発酵培地は、炭素源として少なくとも0.08Mのジサッカリドを含む。別の実施形態において、上記発酵培地は、0.08M〜0.16Mの間のジサッカリドを炭素源として含む。さらなる実施形態において、上記発酵培地は、0.1M〜0.15Mの間のジサッカリドを炭素源として含む。具体的実施形態において、本発明の発酵培地におけるジサッカリドの濃度は、約0.15Mである。
種々のジサッカリドが、本発明の発酵培地でおよび上記発酵培地を調製するプロセスにおいて使用され得る。適切なジサッカリドとしては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、およびセロビオースが挙げられる。具体的実施形態において、上記発酵培地のジサッカリドは、還元ジサッカリド(例えば、セロビオースもしくはマルトース)である。特定の実施形態において、上記ジサッカリドは、マルトースである。
50g/Lのマルトースが補充された発酵培地中でC.diphtheriaeを増殖させた場合に、優れた収量のジフテリア毒素が達成された。
(リン)
ホスフェートの形態にあるリンは、多くの生体分子の必須成分である。例えば、DNA、RNAおよび細胞膜を形成するリン脂質は、ホスフェートを含む。従って、リンは、本発明の発酵培地の必須成分である。酵母抽出物が窒素源として使用されるのであれば、上記発酵培地へのリンの添加は、代表的には、不要である。なぜなら、酵母抽出物は、例えば、ヌクレオチドおよびリン脂質の形態でホスフェートの十分な供給源を含むからである。
(増殖因子)
発酵槽におけるC.diphtheriaeの迅速な増殖の間に、上記発酵の特定の成分は、律速になり得る。これらの成分を発酵培地に補充することによって、ジフテリア毒素の収量は、さらに改善され得る。従って、これらの成分は、一般には「増殖因子」といわれる。
適切な増殖因子としては、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、ピメリン酸、ニコチン酸およびβ−アラニンが挙げられる。いくつかの実施形態において、マグネシウムは、MgSO・7HOの形態で提供され、銅は、CuSO・5HOの形態で提供され、亜鉛は、ZnSO・7HOの形態で提供され、マンガンは、MnCl・4HOの形態で提供される。
(鉄源)
培養培地における高い鉄濃度は、C.diphtheriaeの増殖の間に上記ジフテリア毒素の発現を阻害する。従って、上記培地から過剰な鉄を除去することは、C.diphtheriaeの発酵の間に高収量の毒素生成を与えるために必要である。培養培地から鉄分除去するための方法は、例えば、StainerおよびScholte[14]によって記載されるように、一般に当業者に公知である。例えば、鉄は、酵母抽出物溶液から、上記溶液中に存在する鉄を沈殿させ、その沈殿物を遠心分離および/もしくは限外濾過によって除去することによって、除去され得る。
しかし、鉄のレベルが低すぎる場合、C.diphtheriaeの増殖は、負に影響を受ける。従って、鉄分除去の後、発酵培地は、増殖の間に鉄源をなお提供するべきであるが、ジフテリア毒素の生成を妨げるレベルであるべきではない。上記発酵培地における鉄の主要な供給源は、窒素源として使用される材料に由来し得る。上記材料は、伝統的には動物由来であった。酵母抽出物が窒素源として使用される場合、それは、鉄分除去されて、発酵の間に高収量のジフテリア毒素生成を可能にするレベルまで上記鉄濃度が下げられ得る。しかし、鉄レベルが、細菌増殖が妨げられるほど低い場合(例えば、完全な鉄分除去後)、上記発酵培地は、C.diphtheriaeの増殖を支援するために鉄が補助されなければならない。
一実施形態において、発酵培地は、Fe(III)の塩を含む。Fe(III)の塩の一例は、クエン酸鉄(III)アンモニウムである。別の実施形態において、上記発酵培地は、Fe(II)の塩を含む。Fe(II)の塩の一例は、硫酸鉄(II)七水和物である。一実施形態において、発酵培地における出発Fe(II)もしくはFe(III)の濃度は、1.5μM〜30μMの間である。別の実施形態において、上記出発Fe(II)もしくはFe(III)の濃度は、3〜15μMの間である。さらなる実施形態において、上記出発Fe(II)もしくはFe(III)の濃度は、5〜13μMの間である。具体的実施形態において、上記出発Fe(II)もしくはFe(III)の濃度は、10〜14μMの間である。
十分量の鉄が上記発酵プロセスの間中ずっと存在するが、毒素生成を阻害する濃度には達しないようにするために、鉄補充物が、一般には、緩慢放出処方物として添加される。従って、具体的実施形態において、上記発酵培地は、鉄の緩慢放出処方物が補充される。上記発酵培地に補充するための鉄の緩慢放出処方物は、クエン酸鉄(III)アンモニウム溶液およびホスフェート溶液を、上記発酵培地の使用前にその培地に添加することによって、および上記鉄を塩化カルシウム溶液の添加を介して沈殿させることによって、生成することができる。このことは、上記発酵プロセスの間に上記発酵培地へと鉄をゆっくりと放出するゲル様沈殿物の形成をもたらす。鉄の緩慢放出処方物を得る他の方法は、当業者に明らかであり、同様に、本発明によって包含される。
(培地形態)
発酵培地は、液体培地としてもしくは固体培地として調製され得る。あるいは、上記発酵培地は、乾燥粉末として調製され得る。一実施形態において、固体培地は、アガーを液体培地に添加することによって調製され得る。本発明に従って調製される固体培地は、C.diphtheriaeのマスターシードバンクを調製するために特に有用である。上記マスターシードは、ワーキングシードを調製するために使用されうる。次に、上記ワーキングシードを使用して、多量のC.diphtheriaeを増殖させて、ワクチンに使用するためのジフテリア毒素の調製するために、本発明の発酵培地に接種する。
(培地調製)
一局面において、本発明は、本発明の発酵培地を調製するためのプロセスに関する。一実施形態において、本発明の発酵培地を調製するためのプロセスは、水に(もしくは別の水性液体に)窒素源および炭素源を添加する工程を包含する。窒素源として使用される材料の鉄レベルに依存して、上記プロセスはまた、鉄補充物を添加する工程を包含する。さらに、上記プロセスは、増殖因子およびリンを添加する工程を包含し得る。
特定の実施形態において、本発明の発酵培地を調製するためにプロセスは、酵母抽出物を水に溶解する工程、上記酵母抽出物から鉄分除去する工程、およびジサッカリドを少なくとも0.08Mの終濃度まで添加する工程を包含する(上記を参照のこと)。
別の実施形態において、本発明は、発酵培地を調製するためのプロセスに関し、ここで上記プロセスは、酵母抽出物を水に溶解する工程、上記酵母抽出物から鉄分除去する工程、およびFe(II)もしくはFe(III)の塩を添加する工程を包含する。上記Fe(II)もしくはFe(III)の塩は、鉄の緩慢放出処方物が形成されるような方法で添加され得る(上記を参照のこと)。
別の実施形態において、本発明の発酵培地を調製するためのプロセスは、酵母抽出物を限外濾過する工程を包含し得る。
なお別の実施形態において、本発明は、発酵培地を調製するためのプロセスに関し、ここで上記プロセスは、低マンナン酵母抽出物を調製する工程および上記酵母抽出物を水に溶解する工程を包含する。
上に記載されるプロセスのうちのいずれかは、本発明の発酵培地を調製するために組み合わされ得る。例えば、酵母抽出物を水に溶解する工程、上記酵母抽出物から鉄分除去する工程、および0.08M〜0.16Mの間のジサッカリドを添加する工程に加えて、本発明の発酵培地を調製するためのプロセスは、1回以上の限外濾過工程をさらに包含し得る。代わりにもしくはさらに、Fe(II)もしくはFe(III)の塩は、上記発酵培地に、それの使用前に添加され得る。
(培地の使用)
発酵培地は、C.diphtheriaeを増殖させるためのプロセスにおいて使用され得、上記プロセスは、本発明の発酵培地でC.diphtheriaeのある株を培養する工程を包含する。種々のジフテリア毒素生成C.diphtheriae株は、本発明を実施するにあたって使用され得る。C.diphtheriae株 Park−Williamns no.8(PW8)は、多量のジフテリア毒素を例外的に生成し、代表的には、ワクチン生成において、ジフテリア毒素を得るために使用される[15]。この株は、本発明の発酵培地を使用する場合に、高収量のジフテリア毒素を達成するのに特に適している。
好ましい実施形態において、C.diphtheriaeを増殖させるためのプロセスは、本発明の発酵培地に、動物由来成分を含まずかつ動物由来成分の使用なしに調製されたワーキングシードを接種する工程を包含する。最も好ましい実施形態において、マスターシードバンクを作ってから、ワーキングシードの調製を介して発酵培地でC.diphtheriaeを増殖させるまでの全体のプロセスは、動物由来成分の非存在下で行われる。別の実施形態において、上記マスターシードバンクおよび上記ワーキングシードは、動物由来成分を含む発酵培地を使用する伝統的プロセスによって生成されたが、C.diphtheriaeの発酵は、動物由来成分を含まない培地中で行われる。
C.diphtheriaeは、好気性条件において培養される。十分な通気が、高増殖速度を達成するために重要である。十分な通気は、例えば、300L ボルテックス発酵槽中で、580〜620rpmで撹拌することによって達成される。加圧空気が、速度60L/分において上記発酵槽に加えられてもよい。消泡剤(例えば、活性シリコーンポリマー(例えば、アンチフォームA))が、撹拌に起因する発泡を防ぐために添加され得る。
過去におけるC.diphtheriaeの産業的発酵は、動物由来成分を含まない発酵培地が使用された場合に、ジフテリア毒素の高収量を達成しなかった。参考文献5は、動物由来成分を含まない(窒素源として酵母抽出物を含む)発酵培地100mL中で増殖するC.diphtheriaeは、わずか60Lf/mLのジフテリア毒素を生成したことを開示する。参考文献6は、酵母抽出物および全20種の必須アミノ酸を窒素源として含む、動物由来成分を含まない発酵培地240L中でC.diphtheriaeを増殖させ、最大で100Lf/mLのジフテリア毒素を生成したに過ぎなかった。参考文献7において、動物由来成分を含まずかつコメ−コムギペプトンを主要な窒素源として含む発酵培地7,200mLは、118Lf/mL以下のジフテリア毒素を生じた。コメ−コムギペプトンの代わりに酵母抽出物を使用した場合、その濃度は、59Lf/mLにさらに低くなった。
対照的に、本発明の発酵培地は、C.diphtheriaeを増殖させて少なくとも140Lf/mLのジフテリア毒素(もしくは誘導体)の濃度を達成するのに特に適している。慣用的には、少なくとも200Lf/mLの毒素濃度が、達成され得る。代表的な収量は、200Lf/mL〜250Lf/mLの間の範囲にある。特定の実施形態において、上記発酵培地中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度は、200Lf/mLを超え、250Lf/mL以上である。
従って、一局面において、本発明はまた、ジフテリア毒素もしくはその誘導体の、高収量での産業スケールでの生成のためのプロセスに関する。このようなプロセスは、動物由来成分を含まない100L以上の発酵培地でC.diphtheriaeのある株を培養する工程、上記培養物を増殖させて、上記発酵培地中で少なくとも140Lf/mLの毒素(もしくは誘導体)濃度を提供する工程、および上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を、上記発酵培地から分離する工程を包含する。好ましい実施形態において、このようなプロセスは、ヒトワクチン生成における使用に適したジフテリア毒素を調製するために使用される。別の実施形態において、上記プロセスは、ジフテリア毒素の誘導体(例えば、CRM197のような変異ジフテリア毒素)を調製するために使用される。
特定の実施形態において、発酵培地の少なくとも100Lの容積が、本発明で使用される。例えば、発酵培地の容積は、少なくとも200L、少なくとも250L、少なくとも300L、少なくとも500L、もしくは少なくとも600Lであり得る。これら産業スケールの容積は、ヒトワクチン生成に適している。
特定の実施形態において、本発明のプロセスは、上記発酵培地において少なくとも140Lf/mLの濃度のジフテリア毒素もしくは上記誘導体を生じる。例えば、本発明のプロセスは、上記発酵培地中で少なくとも150Lf/mL、少なくとも200Lf/mL、もしくは少なくとも250Lf/mLの濃度のジフテリア毒素もしくはその誘導体を生じ得る。
特定の実施形態において、本発明は、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を調製するためのプロセスに関し、上記プロセスは、ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株を本発明の発酵培地で増殖させる工程、および上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を上記発酵培地から分離する工程を包含する。
一実施形態において、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記発酵培地からの上記細菌の分離は、遠心分離によって達成され得る。別の実施形態において、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記発酵培地からの上記細菌の分離は、濾過によって達成される。例えば、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記発酵培地は、濾過によって滅菌され得る。いくつかの実施形態において、遠心分離および濾過がともに組み合わせて適用されて、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記発酵培地から上記細菌が分離される。特定の実施形態において、遠心分離による分離は、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記発酵培地の濾過滅菌前に行われる。一実施形態において、濾過滅菌のために使用されるフィルタは、線維を取り除く(shadding)ことはできない。別の実施形態において、濾過滅菌のために使用されるフィルタは、0.22μm以下の孔サイズを有する膜を含む。さらなる実施形態において、フェノール以外の保存剤が、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む濾過滅菌された発酵培地に添加される。好ましい実施形態において、上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を含む上記濾過滅菌された発酵培地に保存剤は何ら添加されない。
(毒素精製)
本発明の特定の局面において、ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、無毒化工程の前に精製される。トキソイド化する前に上記ジフテリア毒素を精製することは、無毒化の間に、上記ジフテリア毒素への上記発酵培地由来の成分(例えば、タンパク質および/もしくはペプチド)の架橋を低下させる。培地成分の架橋は不利である。なぜなら、このことから、均一性の低い(less homogenous)生成物がもたらされ(これは、品質管理の間に問題をもたらし得る)、上記トキソイド中にアレルゲンを捕捉する可能性を有するからである。無毒化の前に上記ジフテリア毒素を精製することは、これら欠点を低減もしくは回避する。無毒化前の精製(pre−detoxification purification)と組み合わせて、培養培地において動物由来成分を避けることは、非常に高純度の強力なトキソイドを与える。無毒化前の精製が使用された場合[10]ですら、C.diphtheriae培養培地からの残留動物由来成分はなお、このような架橋された材料が慣用的な分析アッセイによって容易に検出可能であるとは限らないとしても、トキソイド化の間に上記毒素へ共有結合的に架橋される。
本発明の一実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも85%純粋である。具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも90%純粋である。別の具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも95%純粋である。
一実施形態において、本発明に従って上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、1500Lf/mg窒素より高い純度を有する。具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも2000Lf/mg窒素の純度を有する。別の具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも2100Lf/mgの純度を有する。さらなる具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するために使用される上記ジフテリア毒素は、少なくとも2700Lf/mg窒素の純度を有する。
上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体は、当業者に公知の多くの方法において、上記発酵培地から精製され得る。一実施形態において、精製は、硫酸アンモニウム沈殿を含む方法によって行われる。特定の実施形態において、上記発酵培地からの上記ジフテリア毒素もしくは誘導体の精製は、アニオン交換クロマトグラフィーを含む方法によって、理想的には、さらなる下流のクロマトグラフィー工程が何らなしで、行われる。さらなる実施形態において、上記精製プロセスは、1回以上の限外濾過工程を含む。
さらなる実施形態において、精製後に得られる精製されたジフテリア毒素バルクは、濾過滅菌され、ダイアフィルトレーションによって濃縮される。これらの工程は、上記精製されたジフテリア毒素バルクを無毒化前に、細菌汚染に起因する分解および活性の損失なくして貯蔵することを可能にする。上記バルクを濃縮することは、必要とされる冷却貯蔵空間が少なく、エネルギーが節約されるというさらなる利点を有する。
(ジフテリア毒素およびその誘導体)
本発明は、「ジフテリア毒素もしくはその誘導体」への言及によって、本明細書で定義される。このような誘導体は、ジフテリア毒素と免疫学的に交差反応性であるものであり、すなわち、モルモットに投与される場合、上記誘導体は、ジフテリア毒素と交叉反応する抗体を誘発する。多くのこのような誘導体は、当該分野で公知であり、しばしば、番号づけられた「CRM」タンパク質(交叉反応材料)(例えば、CRM9、CRM45、CRM102、CRM103、CRM107)といわれる[8]。代表的には、このような誘導体は、野生型毒素とはわずか数個(例えば、1個、2個、3個、4個もしくは5個)のアミノ酸変異(単一アミノ酸挿入、置換もしくは欠失)によって異なるジフテリア毒素変異体であるが、短縮変異体(例えば、CRM45)もまた、公知である。これら変異は、成熟毒素のAおよび/もしくはBサブユニット中に存在し得る(上記Aサブユニットは、上記毒素の酵素活性を担うのに対して、上記Bサブユニットは、標的宿主細胞への結合を担う)。
本発明が、ジフテリア毒素誘導体を含む場合、好ましいその誘導体は、CRM197であり[16,17]、ここで上記Aサブユニットの野生型残基Gly−52は、グルタメートで置換され、このことは、上記毒素のNAD:EF2 ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性の喪失をもたらす。しかし、好ましい実施形態において、本発明は、ジフテリア毒素誘導体の生成よりむしろ、ジフテリア毒素(これは後に、トキソイド化され得る)の生成のために使用されるので、ジフテリア毒素の誘導体への言及は、無視される。
(無毒化)
一局面において、本発明は、ジフテリア毒素を無毒化して、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスに関する。一実施形態において、本発明は、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスに関し、ここで上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素を発現するC.diphtheriaeのある株の培養物を、動物由来成分を含まない発酵培地で増殖させる工程、(ii)上記ジフテリア毒素を上記発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素を得る工程、(iii)適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を上記精製されたジフテリア毒素に添加する工程、ならびに(iv)上記精製されたジフテリア毒素を、上記無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)の存在下でインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
ジフテリア毒素(例えば、CRM197)の非毒性誘導体はまた、「無毒化」に供されるが、このような状況において、適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)での架橋の目的は、一般に、毒性活性を除くことではなく、上記タンパク質を安定化させるためである。
一実施形態において、上記発酵培地は、酵母抽出物を含む。具体的実施形態において、上記酵母抽出物は、全必須アミノ酸の唯一の供給源である。さらなる具体的実施形態において、上記発酵培地は、本発明の発酵培地である。
本発明はまた、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスに関し、上記プロセスは、(i)ジフテリア毒素もしくはその誘導体を発現するC.diphtheriaeのある株を発酵培地で増殖させる工程、(ii)上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体を上記発酵培地から分離して、ジフテリア毒素溶液を得る工程、(iii)上記ジフテリア毒素溶液からジフテリア毒素濃縮物を調製する工程、(iv)上記濃縮物にアミンおよび適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)を添加する工程、ならびに(v)上記濃縮物を、上記アミンおよび上記無毒化剤の存在下でインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。
(毒素濃度)
無毒化の間の上記ジフテリア毒素もしくは誘導体の濃度は、ワクチン生成のための多量のジフテリアトキソイドを提供する合理化されかつ効率的な産業プロセスを提供するにあたって、特に重要である。安全性が理由で、無毒化は、一般に、6週間の期間にわたって行われる。従って、無毒化工程の間に容積が大きいと、さらなる貯蔵空間を必要とする。さらに、無毒化は、インキュベーター中で36±2℃で行われる。従って、小容積を使用することは、上記無毒化プロセスの間に使用されるエネルギーを徹底的に低下させる。上記無毒化工程の間の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度が高くなるほど、無毒化に使用され得る容積が小さくなる。濃度に起因して容積が20倍低下することは、300L インキュベーターからの上記ジフテリア毒素もしくは誘導体が、20Lボトルにおいて容易に処理され得るということを意味する。従って、精製後に得られた上記精製されたジフテリア毒素バルクは、好ましくは、無毒化前に濃縮される。
一実施形態において、上記濃縮物中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度は、最終発酵培地における上記ジフテリア毒素もしくは誘導体の濃度より少なくとも20倍高い。別の実施形態において、上記濃度は、少なくとも25倍高い(例えば、少なくとも30倍高いかもしくは少なくとも35倍高い)。
代表的には、上記濃縮物中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/ml〜5000Lf/mlの間の範囲にある。具体的実施形態において、無毒化される上記濃縮物中の上記ジフテリア毒素もしくは上記誘導体の濃度は、少なくとも2000Lf/mlである。さらなる具体的実施形態において、上記濃度は、少なくとも3000Lf/mLである。特定の実施形態において、上記濃度は、少なくとも5000Lf/mLである。これら濃度は、Corynebacterium diphtheriae培養物からの精製後に得られたジフテリア毒素溶液を、例えば、限外濾過もしくは当該分野で公知の他のプロセスを使用して濃縮することによって、達成され得る。
好ましい実施形態において、上記無毒化プロセスの出発材料(すなわち、上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体)は、ジフテリア毒素を発現するCorynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、動物由来成分を含まない(例えば、酵母抽出物を含む)発酵培地(例えば、本発明の発酵培地)中で増殖させることによって得られる。さらなる好ましい実施形態において、上記ジフテリア毒素は、植物由来成分も含まない発酵培地を使用して調製される。
(アミン濃度)
適切な無毒化剤(例えば、ホルムアルデヒド)での無毒化の間にアミンを含めることは、ジフテリア毒素が架橋してマルチマー複合体を与えることを防ぎ得る。しかし、高濃度のアミンは、一般に、上記無毒化剤のより高い濃度を必要とする。従って、無毒化剤(例えば、ホルムアルデヒド)の毒性に起因して、トキソイド化の間のアミンの濃度を低くすることは好ましい。なぜならこのことは、より少ない無毒化剤の使用、および、よって、ワクチン生成の間に毒性廃棄物のより少量の生成を生じるからである。
一実施形態において、無毒化の間に添加される上記アミンの濃度は、0.1M以下である。別の実施形態において、上記濃度は、0.05M以下である。さらなる実施形態において、上記濃度は、0.025M以下である。特定の実施形態において、無毒化のために使用される上記アミンの濃度は、0.025M〜0.1Mの範囲にある。具体的実施形態において、上記濃度は、約0.025Mである。
特定の実施形態において、上記アミンは、1級アミノ基もしくは2級アミノ基を含む、分子量200ダルトン未満の脂肪族ジアミンである。例えば、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、アルギニンもしくはリジン)が使用され得る。好ましくは、上記アミノ酸は、2個の塩基性アミノ基を有する。最も好ましくは、上記アミノ酸は、リジンである。リジンは、4.0〜5.0の範囲にある等電点を有するジフテリアトキソイドを調製するために特に適している。
一般に、天然に存在するアミン(例えば、アミノ酸)の使用は、それらがワクチンの一部を形成する場合に、それらのより高い生体適合性および有害反応のリスクが低いことから、好ましい。あるいは、アミン(例えば、エチレンジアミン)は、本発明の実施において使用され得る。
1%ホルマリン(40%(v/v)ホルムアルデヒド)と組み合わせて、0.025M リジンを使用すると、マルチマー複合体の形成が低下し、上記ジフテリアトキソイドの大部分がモノマー形態で存在する、特に好ましいジフテリアトキソイド組成物を生じることが見いだされた。
(無毒化剤)
ジフテリア毒素の毒性に起因するワクチン接種の間の有害反応を防止するために、毒性は、例えば、適切な無毒化剤の存在下で上記ジフテリア毒素濃縮物をインキュベートすることによって破壊される。高すぎる濃度の無毒化剤が使用される場合、上記ジフテリアトキソイドバルクで調製される最終ワクチンは、ヒトでの使用には受け入れられない上記無毒化剤のレベルを含み得る。従って、ヒトワクチンを製造することにおける使用に適したジフテリアトキソイドバルクを調製するためには、上記無毒化剤の特定の濃度範囲のみが受け入れられ得る。
微生物(例えば、ウイルスおよび細菌)の不活性化をもたらす任意の剤はまた、タンパク質の無毒化に適切であり得る。経験則として、タンパク質の無毒化のための上記剤の濃度は、例えば、ウイルスの不活性化に使用される上記剤の濃度より約10〜20倍高い。例えば、0.05% ホルマリン(40%(v/v)ホルムアルデヒド)が、ウイルスを不活性化するために十分であれば、1% ホルマリンが、ホルムアルデヒド処理によるタンパク質の無毒化に必要とされる。さらに、無毒化に使用される温度は、ウイルスを不活性化するために使用される温度より高くてもよい。しかし、タンパク質の変性をもたらす剤、濃度および温度、よって、タンパク質抗原の免疫原性の低下もしくは喪失は、ヒトでのワクチン接種において使用されるジフテリアトキソイドの調製には適切でない。
適切な無毒化剤としては、ホルムアルデヒド、アルキル化剤(例えば、グルタルアルデヒドおよびβ−プロピオラクトン(BPL))、およびペルオキシド(ヒドロペルオキシドが挙げられる)が挙げられる。特に適切な多官能性有機ペルオキシドは、参考文献18に記載される。無毒化剤としてのBPLの使用は、参考文献19により詳細に記載される。
ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、β−プロピオラクトン(BPL)およびペルオキシド(例えば、ヒドロペルオキシド)でのジフテリア毒素の処理は、分子内結合の形成を生じる。これら結合は、上記ジフテリア毒素内のアミノ酸側鎖が互いに架橋される場合に、形成される。無毒化の間に存在するアミン、および上記発酵培地に由来する残留成分はまた、上記無毒化剤の存在下でジフテリア毒素に架橋される。従って、特に適切であり、従って好ましい無毒化剤はまた、架橋剤である。
一実施形態において、無毒化の間の適切な無毒化剤(好ましくは、ホルマリン)の濃度は、0.5%〜1%の範囲にある。別の実施形態において、上記濃度は、0.75%〜1%の範囲にある。具体的実施形態において、上記無毒化剤の最終濃度は、約1%である。
無毒化悪剤としてのホルムアルデヒドの使用は好ましい。0.5〜1% ホルマリン(すなわち、40%(v/v)ホルムアルデヒド)の終濃度が、少なくとも2000Lf/mLの濃度において、上記ジフテリア毒素の毒性を破壊するために十分であることが見いだされた。5000Lf/mL ジフテリア毒素の濃度ですら、無毒化のために1% ホルマリンが使用された場合に、37℃において6週間の貯蔵後に再毒性化(retoxification)は全く認められなかった。
これら知見に基づいて、ジフテリア毒素のLfあたりのアミン濃度およびジフテリア毒素のLfあたりのホルムアルデヒド濃度は、計算され得る。従って、より具体的な実施形態において、本発明は、ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスに関し、上記プロセスは、少なくとも2000Lf/mLの濃度においてジフテリア毒素の溶液を調製する工程;上記ジフテリア毒素のLfあたり5nmol以下のアミン、ならびに上記ジフテリア毒素のLfあたり12〜55nmolの間、好ましくは、18〜25nmolの間のホルムアルデヒドを上記溶液に添加する工程;ならびに得られた溶液をインキュベートして、上記ジフテリアトキソイドを得る工程を包含する。代表的には、上記溶液中の上記ジフテリア毒素もしくはその誘導体の濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの間の範囲にある。具体的実施形態において、上記溶液中の上記ジフテリア毒素濃度は、5000Lf/mLである。上記アミンは、好ましくは、リジンである。
無毒化のためのホルムアルデヒドは、代表的には、ホルマリンの形態において(すなわち、水溶液として)使用される。ホルマリンは、代表的には、約40%(v/v)ホルムアルデヒドを含む飽和水溶液である。ホルマリンはまた、酸化および重合を制限するために、少量の安定化剤(例えば、メタノール)を含み得る。
ホルムアルデヒドが無毒化剤として使用される場合、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイド溶液は、0.2g/L以下の遊離ホルムアルデヒド(すなわち、タンパク質と架橋を形成しなかった溶液中のホルムアルデヒド)を含む。例えば、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイド溶液は、0.1〜0.15g/Lの間の遊離ホルムアルデヒドを含み得る。
(さらなる処理工程)
本発明に従ってジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスは、1回以上の濾過滅菌工程をさらに包含し得る。一実施形態において、無毒化のために使用される上記ジフテリア毒素濃縮物は、適切な無毒化剤(好ましくは、ホルムアルデヒド)の添加の前に、濾過滅菌される。別の実施形態において、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイドは、濾過滅菌される。さらなる実施形態において、上記ジフテリア毒素濃縮物および上記ジフテリアトキソイドの両方が、濾過滅菌される。上記ジフテリアトキソイドの調製の間に1回以上の濾過滅菌工程を適用することは、汚染する細菌増殖を防止するための保存剤の使用を回避し得るという利点を有する。保存剤の回避は、本発明のジフテリアトキソイドを含むワクチンがヒトに投与される場合に、上記保存剤によって引き起こされる有害反応を防ぎ得る。保存剤が、貯蔵のために上記ジフテリアトキソイドに添加される場合、フェノール以外の保存剤が好ましい。好ましい実施形態において、上記ジフテリアトキソイドには、保存剤は添加されない。
一実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスは、粒子濾過工程をさらに包含し得る。
別の実施形態において、上記プロセスは、貯蔵のために上記ジフテリアトキソイドを濃縮するための工程をさらに包含し得る。貯蔵の間の高タンパク質濃度は、好ましい。なぜなら、上記ジフテリアトキソイドバルクが希釈した形態で貯蔵される場合より上記ジフテリアトキソイドバルクの分解が少ないからである。具体的実施形態において、濃縮は、ダイアフィルトレーションによって行われる。特定の実施形態において、貯蔵のための上記ジフテリアトキソイドの終濃度は、10,000Lf/mLである。従って、本発明はまた、濃縮した水性形態でジフテリアトキソイドを(例えば、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、もしくは少なくとも3ヶ月の期間にわたって)貯蔵するための方法を提供し、ここでジフテリアトキソイドの濃度は、少なくとも5,000Lf/ml、例えば、少なくとも7,500Lf/ml、少なくとも10,000Lf/mlなどである。
いくつかの実施形態において、上記ジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスは、得られたジフテリアトキソイド溶液のpHが、6.0〜8.0の間に調節される工程をさらに包含する。このpHにおいて、上記ジフテリアトキソイドは安定であり、ヒトへの投与に適している。具体的実施形態において、最終の上記ジフテリアトキソイド溶液のpHは、7.2〜7.8に調節される。より具体的な実施形態において、最終の上記ジフテリアトキソイド溶液のpHは、7.5に調節される。
(ジフテリアトキソイド組成物)
本明細書で開示されるジフテリア毒素もしくは誘導体を無毒化するためのプロセスを使用することは、先行技術において調製されたトキソイドより高い純度であるジフテリアトキソイドの提供を生じる。特に、本発明の方法によって生成されるジフテリアトキソイドは、架橋された動物由来成分を含まない。上記発酵培地および上記無毒化手順における動物由来成分の回避は、上記最終材料が、動物由来成分を完全に含まないので、このような成分が、トキソイド化の間に上記毒素へと共有結合的に架橋され得ないことを意味するのに対して、動物由来成分を含む培地での増殖後に生成された先行技術のトキソイドは、架橋された動物由来成分が慣用的な分析アッセイによって容易に検出され得ないとしても、これら架橋された動物由来成分を必然的に含む。従って、本発明のこれらトキソイドは、それらがプリオンなどのような材料を含まない均質な組成を有するので、有利である。
いくつかの実施形態において、動物由来成分を含まないことに加えて、ジフテリア毒素の生成において使用される上記発酵培地はまた、植物由来成分(例えば、植物ペプトン)を含まない。植物由来成分を含まない発酵培地を使用すると、植物由来ペプトンを調製するために使用される植物材料の表面に存在し得る外来性ウイルスが全く導入されないというさらなる利点がある。従って、本発明の具体的実施形態において、上記ジフテリアトキソイドは、動物由来成分および植物由来成分の両方を含まない。
具体的実施形態において、ジフテリア毒素もしくは誘導体を無毒化するためのプロセスは、少なくとも90%純粋であるジフテリアトキソイドを生じる(すなわち、ジフテリアトキソイドは、例えば、HPLC分析におけるピーク面積によって評価される場合、上記精製された材料中のタンパク質の質量で少なくとも90%である)。さらなる具体的実施形態において、本明細書で開示されるジフテリア毒素もしくは誘導体を無毒化するためのプロセスは、少なくとも95%純粋であるジフテリアトキソイドを生じる。別の具体的実施形態において、本明細書で開示されるジフテリア毒素もしくは誘導体を無毒化するためのプロセスは、アレルギー反応を引き起こすには不十分な微量の酵母成分を含むジフテリア毒素を生じる。
別の実施形態において、ジフテリア毒素もしくは誘導体を無毒化するためのプロセスは、1500Lf/mg窒素超のジフテリアトキソイドを生じる。従って、本発明の無毒化プロセスから生じる好ましいジフテリアトキソイド溶液は、1500Lf/mg窒素超を含み得る。特定の実施形態において、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイド溶液は、2000Lf/mg窒素超を含む。具体的実施形態において、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイド溶液は、2100Lf/mg窒素超を含む。さらなる具体的実施形態において、本発明の無毒化プロセスから生じる上記ジフテリアトキソイド溶液は、2700Lf/mg窒素超を含む。
本発明はまた、本明細書で記載されるプロセスのうちのいずれかの組み合わせに関する。例えば、本発明の発酵培地でC.diphtheriaeのある株を培養する工程を包含するジフテリア毒素もしくはその誘導体を調製するためのプロセスは、本明細書で開示されるジフテリアトキソイドを調製するためのプロセスと組み合わされ得る。これらプロセスを組み合わせることは特に有利である。なぜなら、それは、上記プロセスにおいていかなる動物由来成分をも使用する必要なく、高度に精製され、規定されたジフテリアトキソイドを提供するための非常に高収量の産業的生成プロセスを生じるからである。
本発明のプロセスは、ヒトワクチンの製造に適した、少なくとも5Lの容積を有し、動物由来成分を含まない、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する架橋されたジフテリアトキソイドを含む、組成物を生じる。いくつかの実施形態において、このようなバルク組成物は、500Lf/mL超(例えば、≧1000Lf/mL、≧2000Lf/mL、≧3000Lf/mL、≧4000Lf/mL、≧5000Lf/mL)のジフテリアトキソイド濃度を有する。上記バルク組成物における代表的なジフテリアトキソイド濃度は、2000Lf/mL〜5000Lf/mLの範囲にある。他の実施形態において、このようなバルク組成物は、2000 IU/mL超(例えば、≧3000 IU/mL、≧5000 IU/mL、≧8000 IU/mL、≧10,000 IU/mL)の効力を有する。バルク組成物は、5L〜2000Lの間の容積、好ましくは、100〜1000Lの間の容積の範囲に及び得る。代表的なバルク容積は、例えば、50L、100L、500L、および1000Lである。特定の純度レベルを有する非常に濃縮されかつ強力なジフテリアトキソイドバルクの大きな体積は、本発明を、あらゆる先行技術のプロセス(これは、本発明のプロセスによって達成可能である容積、濃度、効力および純度レベルにあるヒトワクチンの製造に適した組成物を生じない)から区別する。
さらなる局面において、本発明は、ジフテリアトキソイドに関し、ここで上記ジフテリアトキソイドは、3:1〜8:1の範囲のモノマー:ダイマー比および4.0〜5.0の範囲の等電点を有する。一実施形態において、本発明のジフテリア毒素は、アレルギー反応を引き起こすには不十分な微量の酵母成分を含むが、別の実施形態において、本発明のジフテリアトキソイドは、動物由来成分および酵母成分の両方を本質的に含まない。特定の実施形態において、本発明のジフテリアトキソイドは、動物由来成分を含まない。好ましくは、上記ジフテリアトキソイドは、残留する遊離(すなわち、架橋されていない)無毒化剤の検出可能な量を含まない。いくつかの場合において、遊離無毒化剤の残留量が存在し得る。例えば、本発明のジフテリアトキソイドは、0.001g/L未満の遊離ホルムアルデヒドを含み得る。好ましくは、本発明のジフテリアトキソイドは、0.0001g/L未満の遊離ホルムアルデヒドを含む。
一実施形態において、本発明の組成物は、モノマー形態およびダイマー形態両方のジフテリアトキソイドを含み、ここで上記ジフテリアトキソイドのうちの少なくとも80%は、モノマー形態にあり、上記組成物は、動物由来成分を含まない。
一局面において、本発明は、架橋された動物由来成分を含まないジフテリアトキソイドを含む、ヒトでの使用のためのワクチンとして適した組成物に関し、ここで上記組成物は、単位用量あたり少なくとも30 IUの効力を有する。具体的な一実施形態において、本発明の組成物は、3:1〜8:1の範囲の上記ジフテリアトキソイドのモノマー:ダイマー比を有し、上記組成物に含まれるジフテリアトキソイドは、4.0〜5.0の範囲の等電点を有する。別の具体的実施形態において、本発明の組成物は、モノマー形態およびダイマー形態の両方のジフテリアトキソイドを含み、上記ジフテリアトキソイドのうちの少なくとも70%は、モノマー形態にある。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Corynebacterium diphtheriae以外の病原体に由来する少なくとも1種の防御抗原を含む。上記防御抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原、破傷風抗原、百日咳抗原、Hib抗原、髄膜炎菌抗原、肺炎球菌抗原、およびIPV抗原から選択され得る。
(ワクチン処方物)
本発明はまた、本発明のジフテリアトキソイドを含むか、または本発明のジフテリアトキソイドを使用するプロセスによって作製されるワクチン組成物を包含する。これら組成物において、上記ジフテリアトキソイドの効力は、単回単位用量あたり、少なくとも20 IUであるべきである。代表的な組成物において、上記ジフテリアトキソイドの効力は、少なくとも25IU/用量(例えば、少なくとも50IU/ml)である。本発明のワクチン組成物は、動物由来成分を含む培地から調製されるジフテリアトキソイドを含むワクチン組成物に対して以前に有害反応を示した患者に投与するために特に適している。本発明のワクチン組成物はまた、有害なアレルギー反応を発症するリスクがある患者への投与に適している。これは、動物由来成分にアレルギーを有すると診断された患者(例えば、牛肉アレルギーもしくは牛乳アレルギーを有する患者)を含む。
これらのワクチン組成物は、一般に、混合ワクチン(すなわち、C.diphtheriae以外の病原体に由来する少なくとも1種の防御抗原を含む)である。本発明に従って混合ワクチンを作るためのプロセスは、代表的には、動物由来成分を含まず、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する架橋されたジフテリアトキソイドと、Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原とを混合する工程を包含する。代表的には、上記ジフテリアトキソイドバルクおよび上記防御抗原を含むバルクワクチンはともに、混合する前に、水溶液として存在する。高濃度のジフテリアトキソイドを含むジフテリアトキソイドバルク組成物は、さらなる防御抗原と合わせる前に、水性成分(例えば、水もしくは緩衝液)中での希釈を必要とし得る。単回単位用量は、ジフテリアトキソイドおよび少なくとも1種の防御抗原の最終混合物を、単回用量バイアルに分けることによって、調製される。
例えば、混合ワクチンの少なくとも1000 単回単位用量を調製するためのプロセスは、動物由来成分を含まず、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有する架橋されたジフテリアトキソイドと、Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原とを混合して、上記混合ワクチンを得る工程、および上記混合ワクチンを少なくとも1000単回単位用量へと分ける工程を包含し得、それによって、この方法によって得られる各単回単位用量が、少なくとも20 IUのジフテリアトキソイドを含み、ヒトでの注射(human injection)に適切であるように注意が払われる。
本発明はまた、単位用量形態にある混合ワクチンを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、ジフテリアトキソイドバルクと、1種以上のさらなる非ジフテリア抗原のバルク(例えば、上で論じられるように、破傷風、百日咳、B型肝炎ウイルス、IPVなどの抗原)とを混合して、バルク混合ワクチンを得る工程;および上記バルク混合ワクチンから少なくとも1000単位用量(例えば、>10,000、>50,000など)の上記混合ワクチンを調製する工程を包含し、ここで(a)各単位用量は、ヒトでの注射に適しておりかつ上記ジフテリアトキソイドの少なくとも20 IUを含み;そして(b)上記ジフテリアトキソイドバルクは、動物由来成分を含まず、少なくとも1500Lf/mg タンパク質窒素の比純度を有し、少なくとも2000IU/mlの効力を有する架橋されたジフテリアトキソイドを含む。上記ジフテリアトキソイドバルクと、他の抗原(複数可)のバルクとを混合する工程はまた、水性希釈剤と混合して、所望の抗原濃度を有する材料を提供する工程を包含し得る。
さらなる上記防御抗原(複数可)は、ウイルス性および/もしくは細菌性であり得る。代表的な細菌病原体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Clostridium tetani;Bordetella pertussis;Haemophilus influenzae b型;Neisseria meningitidis(血清群A、B、C、W135および/もしくはYを含む);およびStreptococcus penumoniae(血清型6B、14、19F、および23Fを含む)。代表的なウイルス病原体としては、ポリオウイルス;A型肝炎ウイルス;麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;風疹ウイルス;および水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
(破傷風)
Clostridium tetaniは、破傷風を引き起こす。破傷風毒素は、防御トキソイドを与えるために処理され得る。上記トキソイドは、破傷風ワクチンにおいて使用され、参考文献1の第27章においてより詳細に開示される。従って、本発明の混合ワクチンは、破傷風トキソイドを含み得る。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるものである。上記破傷風トキソイドは、増殖培地(例えば、ウシカゼインから得られるLatham培地)でC.tetaniを増殖させ、続いてホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈殿によって得ることができる。次いで、上記材料は、滅菌濾過および/もしくは透析を含むプロセスによって処理され得る。
破傷風トキソイドの量は、抗毒素の1国際単位と混合した場合に、最適に凝集する混合物を生じるトキソイドの量として定義される、「Lf」単位(以下を参照のこと)で表され得る[74]。NIBSCは、測定値が較正され得る1000Lf/アンプルを含む「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For Flocculation Test」[20]を供給する。
破傷風トキソイドの免疫効力は、実験動物(代表的には、モルモット)において組成物によってもたらされる防御と、参照ワクチンとを、例えば、469 IU/アンプルを含むNIBSCの「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」[21,22]を使用して比較することによって評価される、国際単位(IU)で測定される。本発明の組成物における破傷風トキソイドの効力は、少なくとも35 IU/用量(例えば、少なくとも70 IU/ml)であるべきである。
(百日咳)
Bordetella pertussisは、百日咳を引き起こす。ワクチン中の百日咳抗原は、細胞性(全細胞(不活性化B.pertussis細胞の形態にある):「wP」)もしくは無細胞性(「aP」)のいずれかである。従って、本発明の混合ワクチンは、細胞性百日咳抗原もしくは無細胞性百日咳抗原を含み得る。
細胞性百日咳抗原の調製は、十分に記録されている(例えば、参考文献1の第21章を参照のこと)。例えば、それは、B.pertussisの第I相(phase I)培養物の熱不活性化によって得ることが可能である。無細胞性抗原が使用される場合、以下の抗原のうちの1種、2種もしくは(好ましくは)3種が含まれる:(1)無毒化百日咳毒素(百日咳トキソイド、もしくは「PT」);(2)線維状赤血球凝集素(「FHA」);(3)ペルタクチン(「69キロダルトン外膜タンパク質」としても公知)。これら3種の抗原は、好ましくは、改変Stainer−Scholte液体培地で増殖したB.pertussis培養物から単離することによって調製される。PTおよびFHAは、発酵ブロスから(例えば、ヒドロキシアパタイトゲルへの吸着によって)単離され得るのに対して、ペルタクチンは、熱処理および凝集(例えば、塩化バリウムを使用して)によって上記細胞から抽出され得る。上記抗原は、連続したクロマトグラフィー工程および/もしくは沈殿工程において精製され得る。PTおよびFHAは、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製され得る。ペルタクチンは、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製され得る。FHAおよびペルタクチンは、本発明に従って使用する前にホルムアルデヒドで処理され得る。PTは、好ましくは、ホルムアルデヒドおよび/もしくはグルタルアルデヒドでの処理によって無毒化される。この化学的無毒化手順の代替として、上記PTは、酵素活性が変異誘発によって低下させられた変異PTであり得る[23]が、化学的処理による無毒化はより通常である。
wP抗原の量は、国際単位(IU)で表され得る。例えば、NIBSCは、46 IU/アンプルを含む「Third International Standard For Pertussis Vaccine」[24]を供給する。各アンプルは、M/15 Sorensen緩衝液(pH7.0)8Lで希釈した10Lの細菌懸濁物(米国不透明度標準の観点から、180不透明度単位(opacity unit)と等価である)を含んだ水溶液の2.0mlアリコートの凍結乾燥残留物を含む。上記IUシステムの代わりに、「OU」(「濁度単位」)もまた、使用される(例えば、4 OUは、約1 IUであり得る)。本発明の組成物におけるwP抗原の濃度は、代表的には、少なくとも8 IU/ml、例えば、4 IU/用量である。
aP抗原の量は、代表的には、μgで表される。ワクチンにおけるPTの濃度は、代表的には、5μg/ml、16μg/ml、20μg/mlもしくは50μg/mlである。ワクチンにおけるFHAの濃度は、代表的には、10μg/ml、16μg/mlもしくは50μg/mlである。ワクチンにおけるペルタクチンの濃度は、代表的には、5μg/ml、6μg/mlもしくは16μg/mlである。
(Hib)
Haemophilus inflienzae b型(「Hib」)は、細菌性髄膜炎を引き起こす。Hibワクチンは、代表的には、莢膜サッカリド抗原に基づいており(例えば、参考文献1の第14章)、その調製は、十分に記録されている(例えば、参考文献25〜34)。上記H.influenzae細菌は、動物由来成分の非存在下で培養され得る。上記Hibサッカリドは、特に小児において、その免疫原性を増強するために、キャリアタンパク質に結合体化される。これらの結合体における代表的なキャリアタンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ジフテリア毒素のCRM197誘導体、もしくは血清群B髄膜炎菌由来の外膜タンパク質複合体である。従って、本発明の混合ワクチンは、キャリアタンパク質に結合体化されたHib莢膜サッカリドを含み得る。
破傷風トキソイドは、「PRP−T」と一般に言われる生成物において使用されるように、好ましいキャリアである。PRP−Tは、Hib莢膜ポリサッカリドを、臭化シアンを使用して活性化し、上記活性化されたサッカリドをアジピン酸リンカー(例えば、(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、代表的には、塩酸塩)に連結し、次いで、そのリンカー−サッカリド実体と、破傷風トキソイドキャリアタンパク質とを反応させることによって、作製され得る。上記結合体のサッカリド部分は、Hib細菌から調製される全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP)、および/もしくは全長PRPのフラグメントを含み得る。1:5(すなわち、タンパク質過剰)〜5:1(サッカリド過剰)の間のサッカリド:タンパク質比(W/W)を有する結合体が使用され得る(例えば、1:2〜5:1の間の比および1:1.25〜1:2.5の間の比)。しかし、好ましいワクチンにおいて、サッカリド対キャリアタンパク質の重量比は、1:2.5〜1:3.5の間である。破傷風トキソイドが抗原としてかつキャリアタンパク質として存在するワクチンにおいて、上記結合体におけるサッカリド対キャリアタンパク質の重量比は、1:0.3〜1:2の間であり得る[35]。上記Hib結合体の投与は、好ましくは、≧0.15μg/ml、およびより好ましくは、≧1μg/mlの抗PRP抗体濃度を生じ、これらは、標準的な応答閾値である。
Hib抗原の量は、代表的には、サッカリドのμgで表される。ワクチンにおけるサッカリドの濃度は、代表的には、10〜30μg/mlの間、例えば、20μg/mlである。
(髄膜炎菌)
Neisseria menigitidisは、細菌性髄膜炎を引き起こす。その生物の莢膜ポリサッカリドに基づいて、N.meningitidisの種々の血清群が、同定されてきた(A、B、C、H、I、K、L、29E、W135、X、YおよびZが挙げられる)。上記N.meningitidis細菌は、動物由来成分の非存在下で培養され得る。疾患と最も関連する血清群は、A、B、C、W135およびYである。血清群A、C、W135およびYに対する現在のワクチンは、莢膜サッカリド抗原に基づいているが、このアプローチは、血清群Bに関しては適切でないので、タンパク質抗原および外膜小胞が代わりに使用される[36]。上記莢膜サッカリドは、免疫原性を増強するために、キャリアタンパク質に結合体化される。代表的なキャリアタンパク質は、破傷風トキソイド(NIMENRIXTM製品におけるように)、ジフテリアトキソイド(MENACTRATM製品におけるように)、およびジフテリア毒素のCRM197誘導体(MENVEOTM製品におけるように)である。従って、本発明の混合ワクチンは、以下から選択される、キャリアタンパク質に結合体化された1種以上の(例えば、2種、3種、もしくは4種)莢膜サッカリドを含み得る:(1)血清群A N.meningitidis;(2)血清群C N.meningitidis;(3)血清群W135 N.meningitidis;および/もしくは(4)血清群Y N.meningitidis。
上記結合体のサッカリド部分は、髄膜炎菌から調製されるとおりの全長サッカリド、および/もしくはそのフラグメントを含み得る。血清群Cサッカリドは、OAc+もしくはOAc−株のいずれかから調製され得る。血清群Aサッカリドに関しては、好ましくは、マンノサミン残基のうちの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%。95%以上)が、C−3位においてO−アセチル化される。1:10(すなわち、タンパク質過剰)〜10:1(すなわち、サッカリド過剰)の間のサッカリド:タンパク質比(w/w)を有する髄膜炎菌結合体が使用され得る(例えば、1:5〜5:1の間、1:2.5〜2.5:1の間、もしくは1:1.25〜1.25:1の間の比)。結合体の投与は、好ましくは、少なくとも4倍、および好ましくは少なくとも8倍の、関連血清群に関する血清殺菌アッセイ(SBA)力価の増大を生じる。SBA力価は、仔ウサギ補体もしくはヒト補体を使用して測定され得る[37]。
髄膜炎菌抗原の量は、代表的には、サッカリドのμgで表される。ワクチンにおけるサッカリドの濃度は、代表的には、血清群あたり5〜30μg/mlの間(例えば、10μg/mlもしくは20μg/ml)である。
(肺炎球菌)
Streotococcus pneumoniaeは、細菌性髄膜炎を引き起こす。Hibおよび髄膜炎菌のように、現存のワクチンは、莢膜サッカリドに基づく。上記S.pneumoniae細菌は、動物由来成分の非存在下で培養され得る。従って、本発明の混合ワクチンは、キャリアタンパク質に結合体化された肺炎球菌莢膜サッカリドを含み得る。
S.pneumoniaeの1つより多い血清型、および特に、少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fに由来するサッカリドを含むことは好ましい。さらなる血清型は、好ましくは、1、3、4、5、7F、9Vおよび18Cから選択される。5〜11の間の異なる血清型に由来するポリサッカリドとのコンジュゲートワクチンと同じように、例えば、23の異なる血清型に由来するポリサッカリドの混合物が広く使用される[38]。例えば、PREVNARTM[39]は、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)に由来する結合体化サッカリドを含み、SYNFLORIXTMは、10の血清型(1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、23F)に由来する結合体化サッカリドを含む。サッカリドは、好ましくは、キャリアタンパク質に結合体化される[例えば、参考文献40〜42]。代表的なキャリアタンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ジフテリア毒素のCRM197誘導体、およびH.influenzae タンパク質Dである。PREVNARTM製品におけるサッカリドは、還元アミノ化によって、0.5ml用量あたり各々のサッカリド2μg(血清型6Bを4μg)と、個々に結合体化される。SYNFLORIXTMは、3種の異なるキャリアタンパク質および異なる血清群について異なるサッカリド量の混合物を使用する。
肺炎球菌抗原の量は、代表的には、サッカリドのμgで表される。肺炎球菌結合体の濃度(サッカリドとして測定される)は、代表的には、各血清型について2〜20μg/mlの間である。
(B型肝炎ウイルス)
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ウイルス性肝炎の原因である。HBVビリオンは、外側タンパク質コートもしくはカプシドによって囲まれた内側のコアからなり、上記ウイルスコアは、ウイルスDNAゲノムを含む。上記カプシドの主要成分は、HBV表面抗原もしくはより一般には、「HBsAg」として公知のタンパク質であり、これは、代表的には、分子量約24kDaを有する226アミノ酸のポリペプチドである。全ての現存のB型肝炎ワクチンは、HBsAgを含み、この抗原が、正常な、ワクチン接種を受けたヒト(vaccinee)に投与される場合には、これは、HBV感染を防御する抗HBsAg抗体の生成を刺激する。従って、本発明の混合ワクチンは、HBsAgを含み得る。
ワクチン製造に関して、HBsAgは、2つの方法で作製され得る。第1の方法は、HBV感染の間に多量のHBsAgが肝臓において合成されそして血流へと放出されるので、慢性B型肝炎キャリアの血漿から粒子形態にある上記抗原を精製することを含む。第2の方法は、組換えDNA法によって上記タンパク質を発現させることを含む。本発明の方法で使用するためのHBsAgは、酵母細胞で組換え発現されるべきである。適切な酵母としては、Saccharomyces(例えば、S.cerevisiae)、Hanensula(例えば、H.polymorpha)もしくはPichia宿主が挙げられる。上記酵母は、動物由来成分の非存在下で培養され得る。
天然のHBsAg(すなわち、血漿から精製された産物におけるような)とは異なり、酵母で発現したHBsAgは、一般には、グリコシル化されておらず、これは、本発明での使用のためのHBsAgの最も好ましい形態である。酵母で発現したHBsAgは、非常に免疫原性であり、血液生成物汚染のリスクなしに調製され得る。組換え酵母からHBsAgを精製するための多くの方法は、当該分野で公知である。
上記HBsAgは、一般に、実質的に球状の粒子(平均直径約20nm)の形態にあり、リン脂質を含む脂質マトリクスを含む。酵母で発現したHBsAg粒子は、ホスファチジルイノシトールを含み得、これは、天然のHBVビリオンには見いだされない。上記粒子はまた、免疫系を刺激するために、LPSの非毒性量を含み得る[43]。上記粒子は、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)が酵母の破壊の間に使用された場合に、これを保持し得る[44]。
上記HBsAgは、好ましくは、HBVサブタイプadw2に由来する。
HBsAg精製に好ましい方法は、細胞破壊の後に:限外濾過;サイズ排除クロマトグラフィー;アニオン交換クロマトグラフィー;超遠心分離;脱塩;および滅菌濾過を含む。
溶解物は、細胞破壊後に沈殿させられ得(例えば、ポリエチレングリコールを使用して)、溶液中のHBsAgを超遠心分離の状態にする。
精製後、HBsAgは、透析に供され得(例えば、システインで)、透析は、HBsAg調製の間に使用されている可能性のあるいかなる水銀保存剤(例えば、チメロサール)をも除去するために使用され得る[45]。
HBsAgの量は、代表的には、μgで表される。本発明の組成物におけるHBsAgの濃度は、好ましくは、60μg/ml未満(例えば、≦55μg/ml、≦50μg/ml、≦45μg/ml、≦40μg/mlなど)である。約20μg/mlの濃度が、代表的である(例えば、10μg/用量)。
(ポリオウイルス)
ポリオウイルスは、灰白髄炎を引き起こす。不活性化ポリオウイルスワクチン(IPV)は、参考文献1の第24章においてより詳細に開示されるように、何年もの間にわたって公知であった。従って、本発明の混合ワクチンは、不活性化ポリオウイルス抗原を含み得る。
ポリオウイルスは、細胞培養物において増殖させられ得、好ましい培養物は、サル腎臓由来のVero細胞系を使用する。Vero細胞は、便宜的には、培養されたマイクロキャリアであり得る。増殖後、ビリオンは、限外濾過、ダイアフィルトレーション、およびクロマトグラフィーのような技術を使用して精製され得る。動物(および特に、ウシ)材料が、細胞培養において使用される場合、それらは、伝達性海綿状脳症(TSE)がない、特に、ウシ海綿状脳症(BSE)がない供給源から得られるべきである。好ましくは、ポリオウイルスは、動物由来成分を含まない培地で培養される細胞において増殖させられる。
患者への投与前に、ポリオウイルスは不活性化されなければならず、これは、ホルムアルデヒドでの処理によって達成され得る。灰白髄炎は、3つの型のポリオウイルスのうちの1つによって引き起こされ得る。この3つの型は、類似しており、同一の症状を引き起こすが、それらは抗原性が非常に異なり、ある型による感染は、他のものによる感染を防御しない。従って、本発明で3種のポリオウイルス抗原を使用することは好ましい:ポリオウイルス 1型(例えば、Mahoney株)、ポリオウイルス2型(例えば、MEF−1株)、およびポリオウイルス3型(例えば、Saukett株)。上記ウイルスは、好ましくは、個々に増殖させられ、精製され、不活性化され、次いで、合わせられて、本発明で使用するためのバルク三価混合物を得る。IPVの量は、代表的には、「DU」単位(「D抗原単位」[46])で表される。1用量あたり1ポリオウイルス型あたり1〜100 DUの間(例えば、1型ポリオウイルスが約40 DU、2型ポリオウイルスが約8 DU、および3型ポリオウイルスが約32 DU)を使用することが好ましい(しかし、これらより低い用量を使用することも考えられる[47,48](例えば、1型については10〜20 DU、2型については、2〜4 DU、および3型については8〜20 DU))。
IPV成分が使用され、上記ポリオウイルスがVero細胞で増殖させられる場合、ワクチン組成物は、好ましくは、10ng/ml未満(好ましくは、≦1ng/ml、≦500pg/mlもしくは≦50pg/ml)のVero細胞DNAを含む(例えば、≧50塩基対長であるVero細胞DNAを10mg/ml未満)。
(混合ワクチンの調製)
ワクチンにおける使用のためのこれら病原体に由来する抗原性成分は、一般には、略称で言及される:ジフテリアトキソイドに関しては「D」;破傷風トキソイドに関しては「T」;百日咳抗原に関しては「P」であり、「Pa」は、無細胞性(例えば、少なくともPT、FHAおよびペルタクチンを含む)であり、「Pw」は、細胞性である;結合体化H.influenzae b莢膜サッカリドに関しては「Hib」;それぞれの髄膜炎菌血清群に関しては、「MenA」、「MenB」、「MenC」、「MenW」および「MenY」(別個にキャリアタンパク質に結合体化される):三価不活性化ポリオウイルスに関しては「IPV」;ならびに肺炎球菌に関しては「Spn」。
以下の混合ワクチンは、本発明の好ましい実施形態であり、ここで上記「D」成分は、本明細書で開示されるように調製されるジフテリアトキソイドである:
−D,T,HBsAg
−D,T,Pw,HBsAg
−D,T,Pw,HBsAg,Hib
−D,T,Pw,HBsAg,Hib,MenA,MenC
−D,T,Pw,HBsAg,Hib,MenA,MenC、MenW135
−D,T,Pw,HBsAg,Hib,MenA,MenC,MenY
−D,T,Pw,HBsAg,Hib,MenA,MenC、MenW135,MenY
−D,T,Pa,HBsAg
−D,T,Pa,Hib
−D,T,Pa,HBsAg,Hib
−D,T,Pa,HBsAg,IPV
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,Spn
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,MenC
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,MenC,MenA
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,MenC,MenY
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,MenC,MenW135
−D,T,Pa,HBsAg,IPV,Hib,MenC,MenA、MenW135,MenY。
これらの混合ワクチンは、上記列挙された抗原からなってもよいし、さらなる病原体に由来する抗原をさらに含んでいてもよい。従って、それらは、別個にもしくはさらなるワクチンの成分として、使用され得る。
多価組成物を調製するために抗原性成分を合わせる場合、上記抗原は、個々に添加され得るか、または前混合され得る。混合ワクチンがD抗原およびT抗原、ならびにさらなる抗原を含む場合、上記混合ワクチンの調製において前混合されたD−T成分を使用することは好ましい。この二価成分は、さらなる抗原と合わされ得る。D抗原、T抗原およびPw抗原が使用される場合、前混合されたD−T−Pw成分を使用し、次いで、この成分を、上記混合ワクチンの調製において使用することは、好ましい。
D−T混合物が使用される場合、上記混合物中のジフテリアトキソイド対破傷風トキソイドの比は、通常、2:1〜3:1の間(Lf単位で測定される)、好ましくは、2.4:1〜2.6:1の間(例えば、好ましくは、2.5:1)である。
(結合体のキャリアタンパク質)
結合体化サッカリド抗原は、キャリアタンパク質を含み、上記キャリアタンパク質に、上記サッカリドは、直接にもしくはリンカーを介してかのいずれかで共有結合される。結合体化技術に関する一般的情報は、参考文献34に見いだされ得る。
種々のタンパク質がキャリアとしての使用に関して公知であり、好ましいキャリアタンパク質は、細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイド(例えば、本発明に従って生成される)もしくは破傷風トキソイド)である。他の適切なキャリアタンパク質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のCRM197変異体[49,50]、N.meningitis外膜タンパク質[51]、合成ペプチド[52,53]、熱ショックタンパク質[54,55]、百日咳タンパク質[56,57]、サイトカイン[58]、リンホカイン[58]、ホルモン[58]、増殖因子[58]、種々の病原体由来抗原からの複数のヒトCD4 T細胞エピトープを含む人工タンパク質[59](例えば、N19[60]、H.influenzae由来のタンパク質D[61,62]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[63]、ニューモライシン[64]、鉄取り込みタンパク質[65]、C.difficile由来の毒素AもしくはB[66]、S.agalactiaeタンパク質[67]など)。
キャリアへのサッカリドの結合は、好ましくは、−NH基を介して(例えば、キャリアタンパク質におけるリジン残基の側鎖における、もしくはアルギニン残基の)である。−SH基への(例えば、システインの側鎖における)結合もまた、可能である。
1:5(すなわち、タンパク質過剰)〜5:1(すなわち、サッカリド過剰)の間のサッカリド:タンパク質比(w/w)を有する結合体が、好ましい。
組成物は、少量の遊離キャリアを含み得る。別個の抗原として含まれる任意のキャリアは無視されるものの、結合体化されていないキャリアは、好ましくは、全体として上記組成物において上記キャリアタンパク質の総量のうちの5%以下であり、より好ましくは、2重量%未満で存在する。
SYNFLORIXTM製品におけるように、組成物中に1つより多くのタイプのキャリアタンパク質を含めて、例えば、キャリア抑制のリスクを低下させることが、可能である。
結合体の量は、一般に、キャリアの選択に起因するバリエーションを回避するために、サッカリドの質量の観点から与えられる(すなわち、全体としての上記結合体の用量(すなわち、キャリア+サッカリド)は、示された用量より高い)。
(アジュバント)
本発明のワクチンは、一般に、アジュバントを含む。含めるために最も通常のアジュバントは、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウムおよび/もしくはリン酸アルミニウム)である。混合ワクチンにおける抗原は、アルミニウム塩に(部分的にもしくは全体的に)吸着され得る。
「水酸化アルミニウム」として一般に公知のアジュバントは、代表的には、アルミニウムオキシヒドロキシド塩であり、これは、通常、少なくとも部分的に結晶性である。アルミニウムオキシヒドロキシドは、式AlO(OH)によって表され得、他のアルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウムAl(OH))とは、赤外(IR)分光法によって、特に、1070cm-1での吸収(adsorption)バンドおよび3090〜3100cm-1での強いショルダーの存在によって区別され得る(参考文献68の第9章)。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶性の程度は、回折バンドの半値幅(the width of the diffraction band at half height)(WHH)によって表わされ、不十分な結晶性粒子は、より小さな結晶サイズに起因して、より大きな線の拡がりを示す。表面積は、WHHが増大するにつれて増大し、より高いWHH値を有するアジュバントは、抗原吸着についてのより高い能力を有することが認められた。線維状形態(例えば、透過型電子顕微鏡写真にいて認められるとおり)は、水酸化アルミニウムアジュバントに代表的である(例えば、直径約2nmを有する針状の粒子を有する)。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、代表的には、約11である(すなわち、上記アジュバント自体は、生理学的pHにおいて正の表面電荷を有する)。pH7.4において1.8〜2.6mgタンパク質/mg Al+++の間の吸着能が、水酸化アルミニウムアジュバントに関して報告された。
「リン酸アルミニウム」として一般に公知のアジュバントは、代表的には、アルミニウムヒドロキシホスフェートである(しばしば、少量のスルフェート(すなわち、アルミニウムヒドロキシホスフェートスルフェート)をも含む)。それらは、沈殿によって得られ得、沈殿の間の反応条件および濃度は、上記塩におけるヒドロキシルの代わりにホスフェートの置換の程度に影響を及ぼす。ヒドロキシホスフェートは、一般に、0.3〜1.2の間のPO/Alモル比を有する。ヒドロキシホスフェートは、ヒドロキシル基の存在によって、厳密なAlPOから区別され得る。例えば、(例えば、200℃まで加熱した場合)3164cm-1におけるIRスペクトルバンドは、構造ヒドロキシルの存在を示す(参考文献68の第9章)。リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比(molar ratio)は、一般に、0.3〜1.2の間、好ましくは、0.8〜1.2の間、およびより好ましくは、0.95±0.1である。上記リン酸アルミニウムは、一般に、非晶質であり、特に、ヒドロキシホスフェート塩については、非晶質である。代表的アジュバントは、0.84〜0.92の間のPO/Alモル比を有する非晶質のアルミニウムヒドロキシホスフェートであり、0.6mg Al3+/mlにおいて含まれる。上記リン酸アルミニウムは、一般に、粒状である(例えば、透過型電子顕微鏡写真で認められるように、50nmの範囲の主な粒子を有する板状形態)。上記粒子の代表的直径は、任意の抗原吸着後に、0.5〜20μmの範囲(例えば、約5〜10μm)にある。pH7.4において0.7〜1.5mg タンパク質/mg Al+++の間の吸着能が、リン酸アルミニウムアジュバントに関して報告された。
リン酸アルミニウムのPZCは、ヒドロキシルの代わりのホスフェートでの置換の程度に逆相関し、この置換の程度は、沈殿によって塩を調製するために使用される反応条件および反応物の濃度に依存して変動し得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変更することによって(より多くのホスフェート=より酸性のPZC)、またはバッファ(例えば、ヒスチジンバッファ)を添加することによって(PZCをより塩基性にする)、変化する。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、一般に、4.0〜7.0の間、より好ましくは、5.0〜6.5の間(例えば、約5.7)のPZCを有する。
患者への投与のための組成物におけるAl+++の濃度は、好ましくは、10mg/ml未満(例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなど)である。本発明の組成物におけるAl+++の好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlの間、もしくは0.3〜0.5mg/mlの間である。最大0.85mg/用量が、代表的である。
一実施形態において、ジフテリアトキソイドは、アルミニウム塩アジュバントに吸着される(例えば、水酸化アルミニウムアジュバントに吸着される)。
破傷風トキソイドを含む混合ワクチンにおいて、上記破傷風トキソイドは、水酸化アルミニウムアジュバントに吸着され得るが、これは必須ではない(例えば、全破傷風トキソイドのうちの0〜10%の間の吸着が使用され得る)。
全細胞百日咳抗原を含む混合ワクチンにおいて、上記wP抗原は、好ましくは、水酸化アルミニウムアジュバントおよび/もしくはリン酸アルミニウムアジュバントと合わせられる。
無細胞性百日咳抗原(複数可)を含む混合ワクチンにおいて、上記百日咳抗原(複数可)は、1種以上のアルミニウム塩アジュバントに吸着されてもよいし、吸着されない状態で添加されてもよい。ペルタクチンが組成物中に存在する場合、次に、それは、好ましくは、本発明のプロセスにおいて使用される前に、水酸化アルミニウムアジュバントに吸着される。PTおよびFHAは、本発明のプロセスにおいて使用される前に、水酸化アルミニウムアジュバントもしくはリン酸アルミニウムに吸着され得る。好ましい実施形態において、PT、FHAおよびペルタクチンは、別個に、本発明のプロセスにおいて使用される前に、水酸化アルミニウムに前吸着される。
Hib抗原およびアルミニウム塩を含む混合ワクチンにおいて、上記Hib結合体は、吸着されなくてもよいし、吸着されてもよい(例えば、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されてもよい[69])。この方法での吸着は、D−T−Pw−Hib−HBsAg抗原を含むワクチンにおいて特に有用である。他の結合体化抗原(例えば、髄膜炎菌、肺炎球菌)は、アルミニウム塩(例えば、ホスフェート)に同様に吸着されてもよいし、吸着されなくてもよい[70]。
IPV抗原は、代表的には、本発明のプロセスにおいて使用される前に、いかなるアジュバントにも吸着されないが、それらは、他の成分から始まって、アルミニウムアジュバント(複数可)に吸着するようになり得る。
HBsAgを含む混合ワクチンにおいて、上記HBsAgは、参考文献71に記載される方法を使用して、リン酸アルミニウムに吸着され得る。リン酸アルミニウムへの吸着は、周知のENGERIX−BTM製品と対照をなしている(ここでHBsAgは、水酸化アルミニウムに吸着される)。参考文献72において言及されるように、リン酸アルミニウムは、水酸化アルミニウムより良好なHBsAgのアジュバントであり得る。
本発明のプロセスが、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドがHBsAgと合わせられる前に混合されている成分を利用する場合、このD−T混合物は、好ましくは、上記D抗原およびT抗原がともに吸着されている水酸化アルミニウムアジュバントを含む。
本発明のプロセスが、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドおよび全細胞百日咳抗原がHBsAgと合わせられる前に混合されている成分を利用する場合、このD−T−Pw混合物は、好ましくは、水酸化アルミニウムアジュバント(これに、上記D抗原およびT抗原が吸着されている)およびリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。
アジュバントが本発明のワクチンに含まれる場合、それは、種々の段階で添加され得る。抗原は、混合ワクチンを調製するにあたって使用される前に、アジュバントと合わせられ得る(例えば、二価D−T混合物は、本発明のプロセスにおいて使用される前に、アルミニウム塩アジュバント(複数可)に吸着され得る)が、上記抗原が混合された後にアジュバントを添加するか、または一連の抗原をアジュバントに添加する(例えば、水性アジュバントで開始し、次いで、抗原を、個々にもしくは前混合してのいずれかで添加する)こともまた可能である。
(さらなる非抗原成分)
本発明のワクチン組成物は、キャリア、賦形剤、バッファなどを含み得る。
張度を制御するために、組成物は、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)を含み得る。塩化ナトリウム(NaCl)は、好ましい。上記塩化ナトリウムは、1〜20mg/mlの間で存在し得る。具体的実施形態において、上記塩化ナトリウムの濃度は、8〜9mg/mlの間(例えば、約8.5mg/ml)である。
組成物は、一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間、好ましくは、240〜360mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有し、より好ましくは、280〜320mOsm/kgの範囲内に入る。重量オスモル濃度は、ワクチン接種によって引き起こされる疼痛に影響を有しないことが以前に報告された[73]が、この範囲に重量オスモル濃度を維持することは、それにも拘わらず好ましい。
本発明の組成物は、1種以上のバッファを含み得る。代表的バッファとしては、以下が挙げられる:リン酸バッファ;トリスバッファ;ホウ酸バッファ;コハク酸バッファ;ヒスチジンバッファ;もしくはクエン酸バッファ。バッファは、代表的には、5〜20mM範囲で含まれる。
本発明の組成物は、1種以上の保存剤を含み得るが、いくつかの実施形態において、上記組成物は、保存剤を含まない。好ましい組成物は、水銀保存剤(例えば、チメロサール)を実質的に含まない。例えば、それらは、0.1μg/ml未満の水銀を含み、好ましくは、検出可能な水銀を含まない。これは、一般に、上記水銀保存剤を、抗原調製物から、本発明のプロセスにおけるその添加の前に除去することによって、または上記組成物を作製するために使用される上記成分の調製の間にチメロサールの使用を回避することによって、達成される。しかし、水銀保存剤の微量の存在は、成分(特に、HBsAg)が、本発明の組成物における使用の前に、このような保存剤で処理された場合には、不可避であり得る。しかし、安全性に関しては、最終組成物が、約25ng/ml未満の水銀を含むことは好ましい。
いくつかの実施形態において、本発明のジフテリアトキソイドを含む上記組成物は、フェノール以外の保存剤を含む。一実施形態において、上記保存剤は、チメルホネートナトリウムである。別の実施形態において、上記保存剤は、2−フェノキシエタノール(2−PE)である。2−PEが使用される場合、それは、好ましくは、(a)ジフテリアトキソイドの100Lfごとに、2.5mg〜3.5mgの間(例えば、約3mg)で、および/または(b)破傷風トキソイドの100Lfごとに、7mg〜8mgの間(例えば、約7.5mg)で存在する。本発明の組成物における3g/l〜8g/lの間(例えば、4〜6g/lの間、もしくは約5g/l)の2−PE濃度は、好ましい。特定の実施形態において、本発明の組成物は、167Lfジフテリアトキソイド;67Lf破傷風トキソイド;5mg 2−PEを含む。
本発明の組成物は、界面活性剤を実質的に含まない可能性がある。特に、本発明の組成物は、ポリソルベート80を実質的に含まない可能性がある。例えば、本発明の組成物は、0.1μg/ml未満のポリソルベート80を含み、好ましくは、検出可能なポリソルベート80を含まない。しかし、組成物がHBsAgを含む場合、上記組成物は、例えば、ポリソルベート20が酵母破壊の間に使用された場合、通常、ポリソルベート20を含む[44]。
本発明の組成物のpHは、一般に、最適な安定性のために、5.0〜7.5の間、より代表的には、5.0〜6.0の間であるか、またはジフテリアトキソイドおよび/もしくは破傷風トキソイドが存在する場合には、6.0〜7.0の間である。従って、本発明のプロセスは、包装する前に、上記バルクワクチンのpHを調節する工程を包含し得る。
本発明の組成物は、好ましくは、非発熱性(例えば、1用量あたり<1 EU(エンドトキシン単位(標準尺度);1 EUは、0.2ngのFDA参照標準エンドトキシンEC−2「RSE」に等しい)を含む)であり、好ましくは、<0.1 EU/用量である。
本発明の組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
本発明の組成物は、好ましくは、無菌である。
本発明の組成物は、好ましくは、水性形態にある。製造の間に、所望の終濃度を与えるための上記抗原の希釈は、通常、WFI(注射用水)で行われる。
個々の抗原性成分に由来する残留物質はまた、本発明の最終ワクチン組成物に微量で存在し得る。例えば、ホルムアルデヒドが、ジフテリア、破傷風および百日咳のトキソイドを調製するために使用される場合、その最終ワクチン生成物は、微量のホルムアルデヒド(例えば、10μg/ml未満、好ましくは、<5μg/ml)を維持し得る。培地もしくは安定化剤は、ポリオウイルス調製の間に使用されていてもよく(例えば、培地199)、これらは、最終ワクチンまでずっと保持され得る。同様に、遊離アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システインおよび/もしくはシスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、プロリンおよび/もしくはヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンならびに/またはバリン)、ビタミン(例えば、コリン、アスコルベートなど)、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、カルシウム、グルコース、硫酸アデニン、フェノールレッド、酢酸ナトリウム、塩化カリウムなどは、各々、≦100μg/ml、好ましくは、<10μg/mlにおいて上記最終ワクチンに保持され得る。抗原調製に由来する他の成分(ネオマイシン(例えば、硫酸ネオマイシン(特に、IPV成分に由来する))、ポリミキシンB(例えば、硫酸ポリミキシンB(特に、上記IPV成分に由来する))など)はまた、1用量あたり、ナノグラム未満の量(sub−nanogram amount)で存在してもよい。上記抗原調製に由来する、上記最終ワクチンのさらに可能性のある成分は、抗原の完全な精製に至るまでに生じる。少量のB.pertussis、C.diphtheriae、C.tetaniおよびS.cerevisiaeのタンパク質および/もしくはゲノムDNAは、従って、存在してもよい。これら残留成分の量を最小限にするために、抗原調製物は、好ましくは、上記抗原が本発明のプロセスにおいて使用される前に、上記残留成分を除去するように処理される。
(本発明の組成物のパッケージング)
本発明は、個々の用量へとパッケージするために適したバルク材料を提供し得る。次いで、これは、患者への投与のために配布され得る。上記で言及した濃度は、代表的には、最終のパッケージされた用量における濃度であるので、バルクワクチンにおける濃度は、より高くてもよい(例えば、希釈によって最終濃度へと低下させられるために)。濃縮されたジフテリアトキソイドバルク組成物は、代表的には、他の材料(例えば、他の抗原、アジュバントなど)と合わせられる前に、水性成分(例えば、水もしくは緩衝液)中で希釈される。
ヒト筋肉内ワクチンは、一般に、0.5mlの個々の投与容積として投与される。本発明のプロセスは、従って、上記混合物の0.5mlサンプルを抽出して、容器へとパッケージする工程を包含し得る。0.5ml用量への言及は、通常の変動(例えば、0.5ml±0.05ml)を含むことが理解される。複数用量の状況に関しては、複数用量の量は、抽出され、単一容器(例えば、10用量の複数用量容器に関しては5ml(もしくは10%過剰充填して5.5ml)中に一緒にパッケージされる。
本発明のプロセスは、上記ワクチンを使用のための容器へとパッケージする工程を包含し得る。適切な容器としては、バイアルおよび使い捨てシリンジ(好ましくは、滅菌したもの)が挙げられる。
本発明の組成物がバイアルへとパッケージされる場合、上記バイアルは、好ましくは、ガラスもしくはプラスチック材料から作製される。上記バイアルは、好ましくは、このバイアルに上記組成物が添加される前に滅菌される。ラテックス感受性患者に伴う問題を回避するために、バイアルは、好ましくは、ラテックスを含まないストッパーで密封される。上記バイアルは、単回用量のワクチンを含んでいてもよいし、1より多い用量(「複数用量」バイアル)、例えば、10用量を含んでいてもよい。複数用量バイアルを使用する場合、各用量は、上記バイアル内容物の汚染を回避するように注意を払って、厳密な無菌条件下で滅菌針およびシリンジで引き抜かれるべきである。好ましいバイアルは、無色のガラスから作製される。
バイアルは、予め充填されたシリンジが上記キャップの中に挿入され得るように適合されたキャップ(例えば、ルアーロック)を有し得、上記シリンジの内容物は、上記バイアルの中に排出され得(例えば、バイアル中にある凍結乾燥材料を再構成するために)、上記バイアルの内容物は、もとのシリンジの中へ取り出され得る。上記バイアルからシリンジを外した後、針が、取り付けられ得、上記組成物は、患者に投与され得る。上記キャップは、好ましくは、シールもしくはカバーの中に位置づけられ、その結果、上記シールもしくはカバーは、上記キャップにアクセスされ得る前に、取り外されなければならない。
上記組成物がシリンジへとパッケージされる場合、上記シリンジは、通常、これに取り付けられる針を有さないが、別個の針が、組み立ておよび使用のために、上記シリンジとともに供給され得る。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージおよび5/8インチ25ゲージの針が代表的である。シリンジは、記録の保持を促進するために、上記内容物のロット番号および使用期限日が印刷され得る剥離ラベルとともに提供され得る。上記シリンジにおけるプランジャーは、好ましくは、上記プランジャーが吸引の間に偶発的に外れないように、ストッパーを有する。上記シリンジは、ラテックス・ゴムキャップおよび/もしくはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単回用量のワクチンを含む。上記シリンジは、一般に、針を取り付ける前に先端を密封するための先端キャップを有し、上記先端キャップは、好ましくは、ブチルゴムから作られる。上記シリンジおよび針が別個にパッケージされる場合、上記針は、好ましくは、ブチルゴム保護物(shield)がはめられている。灰色のブチルゴムが好ましい。好ましいシリンジは、商品名「Tip−Lok」TMの下で販売されているものである。
ガラス容器(例えば、シリンジもしくはバイアル)が使用される場合、ソーダライムガラスから作られる容器よりも、ホウケイ酸ガラスから作られる容器を使用することが好ましい。
組成物が容器にパッケージされた後、上記容器は、次いで、配布用のボックス内に(例えば、厚紙のボックスの中に)封入され得、上記ボックスは、上記ワクチンの詳細(例えば、その商品名、上記ワクチン中の抗原のリスト(例えば、「B型肝炎組換え」など))、提示容器(例えば、「使い捨ての予備充填済みTip−Lok Syringe」もしくは「10×0.5ml 単回用量バイアル」)、その用量(例えば、「各々、1つの0.5ml用量を含む」)、注意書き(例えば、「成人用途のみ」もしくは「小児用途のみ」)、使用期限日、適応症、患者番号など)で標識される。各ボックスは、1より多いパッケージされたワクチン(例えば、5もしくは10のパッケージされたワクチン(特に、バイアルに関して))を含んでいてもよい。上記ワクチンが、シリンジ中に含まれる場合、上記パッケージは、上記シリンジの写真を示し得る。
上記ワクチンは、上記ワクチンの詳細(例えば、投与のための説明書、上記ワクチンの中の抗原の詳細など)を含むリーフレットと(例えば、同じボックスの中に)一緒にパッケージされ得る。上記説明書はまた、注意書き(例えば、ワクチン接種後のアナフィラキシー反応の場合に容易に入手可能なアドレナリンの溶液を保持しておくことなど)を含み得る。
パッケージされたワクチンは、好ましくは、2℃〜8℃の間で貯蔵される。それは、凍結されるべきではない。
ワクチンは、製造の間に完全な液体形態において提供されてもよい(すなわち、全ての抗原性成分が、水溶液もしくは懸濁物中にある)し、いくつかの成分が液体形態にあり、他のものが凍結乾燥形態にある形態で調製されてもよい。従って、最終ワクチンは、2種の成分:(a)水性抗原を含む第1の成分;および(b)凍結乾燥した抗原を含む第2の成分を一緒に混合することによって、使用時に即座に調製され得る。上記2種の成分は、好ましくは、別個の容器(例えば、バイアルおよび/もしくはシリンジ)中にあり、本発明は、成分(a)および(b)を含むキットを提供する。この形式は、結合体成分(特に、Hibおよび/もしくは髄膜炎菌および/もしくは肺炎球菌の結合体)を含むワクチンに特に有用である。なぜなら、これらは、凍結乾燥形態でより安定であり得るからである(対して、D成分、T成分、P成分およびHBsAg成分は、好ましくは、液体形態にある)。従って、結合体は、本発明でのそれらの使用前に凍結乾燥され得る。さらなる成分はまた、凍結乾燥する前に、例えば、安定化剤として添加され得る。含めるために好ましい安定化剤は、ラクトース、スクロースおよびマンニトール、ならびにこれらの混合物(例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物など)である。従って、上記最終ワクチンは、ラクトースおよび/もしくはスクロースを含み得る。スクロース/マンニトール混合物を使用すると、乾燥過程が加速され得る。
従って、本発明は、2容器混合ワクチンを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、以下の工程を包含する:
−上記のとおりであるが、上記1種以上の抗原が、結合体化莢膜サッカリド抗原を含まない水性混合ワクチンを調製する工程;
−上記水性混合ワクチンを第1の容器(例えば、シリンジ)にパッケージする工程;
−結合体化莢膜サッカリド抗原を凍結乾燥形態に調製する工程;
−上記凍結乾燥した抗原を第2の容器(例えば、バイアル)にパッケージする工程;ならびに
−上記第1の容器および第2の容器を、キットの中に一緒にパッケージする工程。
上記キットは、次いで、医師へと配布され得る。
(ワクチンの処置および投与のための方法)
本発明の組成物は、ヒト患者への投与に適しており、本発明は、患者における免疫応答を惹起するための方法を提供し、上記方法は、本発明の組成物を上記患者に投与する工程を包含する。本発明の組成物は、好ましくは、0.5ml用量(上記で考察されるとおり)において患者に投与される。
本発明はまた、医療における使用のために本発明の組成物を提供する。本発明はまた、C.diphtheriaeによる少なくとも感染の予防における本発明の組成物の使用を提供する。本発明の組成物は、好ましくは、C.diphtheriaeによる少なくとも感染の予防および/もしくは処置における使用のためのワクチンである。本発明の組成物は、動物由来成分に対するアレルギーを有する患者において特に有用である。例えば、牛肉アレルギーもしくは牛乳アレルギーを有する患者は、動物由来成分を含む培地から調製されたジフテリアトキソイドに応じてアレルギー反応に特に罹りやすい可能性がある。アレルギー反応は、このようなジフテリアトキソイドの最初の投与後には起こらない可能性があるが、その後のブースターワクチン接種の間でのみ起こり得る。本発明の組成物は、従って、ブースターワクチン接種のために使用される場合に特に有用である。アレルギー反応のリスクがある小児および成人はともに、本発明の組成物から利益を受ける。
本発明はまた、ワクチンの製造における使用のための本明細書で記載される抗原性成分(本発明のジフテリアトキソイドを含む)の使用を提供する。
完全な効能を有するために、小児のための代表的な一次免疫スケジュールは、1より多い用量を投与することを要し得る。例えば、投与は、0ヶ月および6ヶ月(時間0は、第1の用量である)に;0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月および6ヶ月に;0日目、21日目、次いで、6ヶ月〜12ヶ月の間に3回目の用量;2ヶ月、4ヶ月および6ヶ月に;3ヶ月、4ヶ月および5ヶ月に;6週間、10週間および14週間に;または0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月および12ヶ月に、あり得る。
組成物はまた、例えば、小児に関しては、1歳から2歳のときにブースター投与として使用され得る。
本発明の組成物は、筋肉内注射によって、例えば、腕もしくは脚に投与され得る。
本発明によって製造されるワクチンは、別個のワクチンと同時に(例えば、肺炎球菌結合体ワクチン(例えば、PrevnarTM)と同時に、インフルエンザワクチンと同時に、ロタウイルスワクチンと同時に、MMRワクチンと同時に、など)患者に投与され得る。
本発明の組成物がアルミニウムベースのアジュバントを含む場合、成分の沈殿は、貯蔵の間に起こり得る。従って、上記組成物は、患者に投与する前に振盪されるべきである。上記振盪した組成物は、混濁した白色懸濁物である。
(ジフテリアトキソイド測定のための定量的単位)
組成物中のジフテリア毒素および/もしくはトキソイドの量は、一般に、毒素/トキソイドの量として定義される、「Lf」単位(「凝集単位」、もしくは「限界凝集用量(limes flocculating dose)」、もしくは「凝集限界」)において測定され、これは、抗毒素の1国際単位と混合された場合に、最適に凝集する混合物を生じる[74,75]。例えば、NIBSCは、300Lf/アンプルを含む「Diphtheria Toxoid, Plain’[76]を供給し、また、900Lf/アンプルを含む「The 1st International Reference Reagent For Diphthelia Toxoid For Flocculation Test」[77]を供給する。組成物中のジフテリア毒素もしくはトキソイドの濃度は、このような参照試薬に対して較正された参照物質との比較によって、凝集アッセイを使用して容易に決定され得る。
タンパク質調製物の純度は、全タンパク質に対する特定のタンパク質の比によって表され得る。組成物中のジフテリア毒素/トキソイドの純度は、一般に、タンパク質(透析不能)窒素の単位質量あたりのLfジフテリアトキソイド単位で表される。例えば、非常に純粋な毒素/トキソイドは、1700Lf/mg Nより高い純度を有し得る。このことは、上記組成物中の上記タンパク質の大部分もしくは全てが、ジフテリア毒素/トキソイドであることを示す[78]。
組成物中のジフテリアトキソイドの免疫効力は、一般に、国際単位(IU)で表される。上記効力は、実験動物(代表的には、モルモット)において組成物によって与えられた防御と、IUにおいて較正された参照ワクチンとを比較することによって、評価され得る。NIBSCは、160 IU/アンプルを含み、このようなアッセイを較正するために適した「Dihptheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」[79,80]を供給する。
3希釈アッセイを使用して、本発明の組成物の効力を決定し得る。免疫後、上記モルモットから採血するか、または皮下経路もしくは皮内経路のいずれかによってチャレンジする。代替の実施形態において、マウスがモルモットの代わりに使用される。モルモットもしくはマウスから採血される場合、個々の動物の抗毒素レベルは、試験されているタイプのワクチンに対して確認されたインビボもしくはインビトロの血清学的方法を使用して行われる毒素中和試験によって、力価測定される。一実施形態において、動物由来成分を含む発酵培地中で生成されたジフテリアトキソイドは、確認のために使用される。本発明の組成物の効力は、適切な統計学的方法を使用して計算される。3希釈アッセイに関しては、効力の推定値の95%信頼区間の限界は、推定される効力の95%信頼区間の下限が、単一のヒト用量あたり30 IUより大きくなければ、上記推定される効力の50〜200%以内である。好ましい実施形態において、本発明の組成物の効力は、単回用量あたり少なくとも30 IUである。1希釈試験が行われる場合、上記試験ワクチンの効力は、ヒト用量あたり30 IUより有意に大きいことが決定される。
(一般)
用語「含む、包含する(comprising)」は、「含む、包含する(including)」および「〜からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなってもよいし、何かさらなるもの(例えば、X+Y)を含んでいてもよい。
語句「実質的に」とは、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要であれば、語句「実質的に」は、本発明の定義から省略されてもよい。
数値xに関連して用語「約」とは、例えば、x±10%を意味する。
別段述べられなければ、2種以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、いかなる特定の混合する順序をも必要としない。従って、成分は、いかなる順序でも混合され得る。3種の成分が存在する場合、2種の成分が互いに合わされ得、次いで、上記組み合わせが、第3の成分と合わされ得るなど。
抗原が、アジュバントに「吸着される」と記載されている場合、その抗原のうちの少なくとも50%(重量で)が吸着される(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%以上)ことは、好ましい。ジフテリアトキソイドおよびHBsAgがともに、少なくとも90%吸着され、理想的には、完全に吸着される(すなわち、遠心分離後に上清中に検出可能なものがない)ことは、好ましい。
本明細書で記載される組成物は、好ましくは、架橋された動物由来成分を含むジフテリアトキソイドを含まない。
(実施例1:鉄分除去された酵母抽出物溶液の調製)
PTK酵母抽出物を、Ohly GmbH(Germany)から購入し、以下の段落においてまとめられるように、参考文献14から改変したプロセスによって鉄分除去した。
溶液を、市販のPTK酵母抽出物を水に溶解することによって調製した。次いで、上記酵母抽出物溶液を60℃へと加熱し、NaHPO・2HOおよびKHPOを添加した。上記溶液のpHを、水酸化ナトリウムを添加することによって9.3に調節した。上記溶液を、79℃へとさらに加熱し、CaCl溶液を添加した。その後、上記溶液を85℃へと加熱し、10分間にわたってインキュベートした。その後、上記酵母抽出物溶液を、25℃へと3時間にわたって冷却した。
形成した任意の沈殿物を、遠心分離によって除去した。上記鉄分除去した酵母抽出物溶液のpHを、酢酸を添加することによって8.4に調節した。上記溶液を限外濾過に供し、その後、オートクレーブにおいて90分間、134℃において滅菌した。上記鉄分除去した酵母抽出物溶液の最終組成を、表1にまとめる。
(実施例2:発酵培地の調製)
上記発酵培地を調製するために、水に溶解したマルトース一水和物、乳酸ナトリウム溶液、増殖因子溶液、水およびL−システイン溶液を、上記鉄分除去した酵母抽出物に、列挙したとおりの順序で添加した。さらなる工程において、クエン酸鉄(III)アンモニウム溶液およびホスフェート溶液(同様に、列挙した通りの順序で)添加した。塩化カルシウム溶液のさらなる添加は、鉄の沈殿物および鉄含有ゲルの形成をもたらした。上記鉄含有ゲルは、毒素生成を阻害することなく、細菌増殖の間に、上記発酵培地に鉄をゆっくり放出する。最後の工程において、上記発酵培地のpHを、必要であれば、20% 酢酸溶液もしくは10% アンモニウム溶液を添加することによって、7.3に調節した。上記増殖因子溶液の組成を、表2に提供する。
上記発酵培地の最終組成を、表3に示す。全ての成分を添加した後、上記発酵培地を、オートクレーブで90分間にわたって134℃において滅菌した。上記オートクレーブにかけた発酵培地を、濾過滅菌し、2℃〜10℃において貯蔵した。
(実施例3:粗製ジフテリア毒素の調製)
上記発酵培地に、前培養物を調製するためにワーキングシードからCorynebacterium diphtheriaeを接種した。上記ワーキングシードおよび上記マスターシードはともに、上記で記載される発酵培地を使用して調製した。
300Lの全容積を有する発酵槽を、発酵培地で満たし、上記前培養物を、上記発酵培地の中へと希釈して、主要培養物を調製した。上記主要培養物を、36℃において560rpmで20時間にわたってインキュベートした。その後、インキュベーションを620rpmにおいてさらに24時間継続した。上記発酵プロセスから、200Lf/ml〜250Lf/mlの濃度のジフテリア毒素を得た。
上記培養培地を、遠心分離によって上記細菌から分離し、その培養上清を、0.5μmフィルタから始まって、0.2μmフィルタで終わる濾過カスケード(filtration cascade)に通した。次いで、クエン酸緩衝液を、上記得られた粗製ジフテリア毒素溶液に添加し、終濃度5mMのクエン酸に調節した。上記溶液を、30kDaカットオフの再生セルロース膜を使用して、5容積の5mM クエン酸(pH6.5)に対するダイアフィルトレーションによって濃縮した。これは、約300Lから約50Lへと上記容積を減少させた。保持された濃縮ジフテリア毒素溶液を、0.2μmフィルタに通した。得られた滅菌濃縮ジフテリア毒素溶液を、「ジフテリア毒素濃縮物1」と称し、さらに使用するときまで貯蔵した。
精製前に、緩衝液交換を行った。上記ジフテリア毒素濃縮物1を、5容積の25mM トリス緩衝液(pH7.5)に対して、30kDaカットオフの再生セルロース膜を使用してダイアフィルトレーションにかけた。上記トリス緩衝化溶液を、Z炭素濾過(Z carbon filtration)を使用して濾過し、0.2μmフィルタに通過させた。得られた滅菌トリス緩衝化ジフテリア毒素溶液を、「ジフテリア毒素濃縮物2」と称した。
実施例3に記載されるプロセスのフローチャートは、図1に提供される。
(実施例4:上記粗製ジフテリア毒素の精製)
先の実施例に記載される発酵プロセスにおいて生成された上記粗製ジフテリア毒素をさらに精製するために、アニオン交換クロマトグラフィーを適用した。50L発酵槽回収物は、以下に記載される方法を使用して再現性をもって精製できた。
上記ジフテリア毒素濃縮物を、Merck Chemicalsから購入したFactogel EMD TMAEアニオン交換ゲルマトリクスカラムに載せた。上記精製したジフテリア毒素を、25mM トリス/90mM NaCl緩衝液(pH7.5)で溶出した。上記カラムに載せたタンパク質のうちの80%は、上記NaCl緩衝液での単純な溶出工程によって回収できた。粗製ジフテリア毒素溶液のうちの最初の50l容積を、10lの精製ジフテリア毒素溶液へと減少させた。上記アニオン交換カラムからの溶出液は、85%を超えて純粋であった。上記アニオン交換カラムに載せる前および溶出の後の上記ジフテリア毒素溶液の代表的クロマトグラムを、図2に示す。
その後、上記溶出液を、0.1M リン酸ナトリウム(pH7.5)中でダイアフィルトレーションにかけて、90%より高い純度の、さらに濃縮しかつ緩衝化したジフテリア毒素溶液を得た。ダイアフィルトレーション前後の上記ジフテリア毒素溶液の代表的クロマトグラムを、図3に示す。
(実施例5:適切な無毒化条件の確立)
本実施例は、37℃での6週間の貯蔵後に、再毒性化を全く示さない不可逆的に無毒化したジフテリア毒素(いわゆる、トキソイド)を生じる無毒化条件を決定するための実験を記載する。
実施例4において調製された上記精製ジフテリア毒素を、PBSに対して、pH7.0、pH7.5およびpH8.0において透析した。上記毒素濃度を、濁度アッセイおよび凝集アッセイによって決定した。両方のアッセイの結果を、表4にまとめる。
(A.適切なホルムアルデヒド濃度およびリジン濃度の確立)
各pHに関して、ジフテリア毒素(500Lf/mLに対応する)を、規定された量の1M リジン(pH調節し、滅菌濾過した)と混合して、0M、0.025M、0.05Mおよび0.1Mのリジンを有する5mlサンプルを得た。無毒化を、12.5μL(0.25%)ホルムアルデヒド(FA) 40%を、それぞれ2日間、3日間もしくは4日間にわたって添加することによって行った。合計で30のホルミル化条件を、二連で試験した(表5を参照のこと)。従って、本明細書で使用される場合、終濃度0.5% ホルムアルデヒドは、40%(v/v)ホルムアルデヒドを含む飽和溶液の1:200希釈をいい、本明細書で記載される場合、終濃度1% ホルムアルデヒドは、40%(v/v)ホルムアルデヒドを含む飽和溶液の1:100希釈をいう。
上記60サンプルを、6週間にわたって撹拌することなく37℃に維持し、その後、slide−A−lysers(分子量カットオフ10.000を有する)を使用して4回交換して、1L NaCl溶液(8.5g/L NaCl)に対して透析し、滅菌濾過した。全ての分析(上記を参照のこと)を、この材料に対して行った。
(再毒性化)
ジフテリア濁度アッセイの結果に基づいて、各サンプルを、NaCl溶液(8.5g/L NaCl)で、それぞれ、50Lf/mL(小児用ワクチン)および3Lf/mL(成人用ワクチン)へと希釈し、37℃においてさらに6週間にわたって貯蔵した。3週間および6週間後、Vero細胞試験を行って、上記ジフテリア毒素調製物の毒性を決定した。
(Vero細胞試験)
無毒化後および再毒性化期間後の残留するジフテリア毒素の存在を決定するために、Vero細胞試験を開発した。Vero細胞を、72時間にわたって種々のサンプル希釈物とともにインキュベートした。その後、細胞生存性を顕微鏡で調べ、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを使用して定量した。MTTは、生きている細胞では、紫色のホルマザンに還元される。あるいは、クリスタルバイオレットを上記Vero細胞培養物に添加して、死細胞を検出した。両方の試験は、ジフテリア毒素に対して非常に感度が高いことを示した。Vero細胞の代謝は、0.001mLf/mL毒素未満で阻害された。
無毒化後、もしくは3週間および6週間の再毒性化条件の後のいずれでも、毒素は全く検出できなかった。研究した全てのホルミル化条件は、リジンなしの条件でも、不可逆的なトキソイドを与えたと結論づけられ得る。
異なる無毒化条件の間で有効性を区別するために、いくつかの他の分析法を使用した。
(アミノ酸分析)
加水分解しなかったサンプル番号3、5、7、9、13、15、19および47においては、リジンは見いだされなかった。このことは、上記透析が非常に有効であったことを示す。加水分解後のリジン含有量は、決定しなかった。
(HPLC−SEC)
TSK 3000 SWXLカラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を確立して、上記トキソイドの分子量分布をアッセイした。そのクロマトグラムは、全てのサンプルに関してかなり類似して見え、約19分後に溶出する主要なモノマーピーク(83〜95%)および17分でのより小さなダイマーピーク(5〜17%)を有した。
文献と一致して、上記FA処理は、ごく少量のジフテリアダイマーをもたらす。類似性の他に、わずかな差異が、保持時間および二量体化の程度において見いだされた(表6および表7を参照のこと)。一般に、FA濃度が高くリジン濃度が低いほど、上記主要ピークの保持時間の短縮を生じる。このことは、上記モノマーのより高い分子量に相当する。これは、FA処理が多いほど、ホルミル化の程度が高いことを意味する。
リジンの影響は、このパラメーターのより広い変動に起因して、FAの影響よりも顕著であった。研究した範囲では、pHは、影響がないようであった。
リジンを欠いているサンプルは、一般的傾向に従って挙動しなかった。それらは、0.025M リジンを有するサンプルと比較して、より長い溶出時間およびより多量のダイマーを示した。リジンの存在下では、FAは、好ましくは、N−ヒドロキシメチル化リジンを生じる。この中間体は、FA単独より上記毒素とより良好な反応性を有するようである。このことは、より良好なホルミル化および低下した二量体化から説明される。
Superdex 200 HR 10/30カラムでのサンプル番号2、3、7、15および47をみると、同じ傾向が示された。ホルミル化は、1% FA 40%および0.025M リジンで最もよく機能した。
(IEF)
等電点電気泳動(IEF)は、FA処理の程度を評価するために使用した。FAは正に荷電したアミノ基と反応するので、酸性基は、より顕著になる。結果として、pIが低下する。
選択されたサンプル番号1、7、15、41、47および55を試験した(図4を参照のこと)。それらのクロマトグラフィー挙動においてかなり大きな差異が明らかになったので、全30サンプルを、それらのpIについて研究した(図5〜8を参照のこと)。これら研究の結果を、表8にまとめる。
理論的考察と一致して、より多くのFA処理を適用したところ(高FA濃度および低リジン濃度によって達成されるとおり)、上記PIはより低下した。再び、リジンの影響はFAの影響よりも顕著であり、pH依存性は全く見いだされなかった。
リジンなしもしくはわずか0.025M リジンを含む全てのサンプルは、従来の生成(従来の生成の間では、トキソイドが精製される前に、上記粗製ジフテリア毒素が最初に無毒化される)からのトキソイドのものに匹敵するpI範囲を示した。ただし、それらの範囲はより狭かったが、このことは、おそらく、上記出発材料の純度がより高かったことを示す。
しかし、リジン濃度が高いほど、より低い程度のホルミル化がもたらされる。これらサンプルのpIパターンは、失敗したCRMサンプルのパターンに似ていた。このことは、高いpIを有するサンプルが、上記効力試験に合格しない可能性があるという仮定を提起した。
(結論)
調べた範囲では、全てのジフテリア毒素サンプルを無毒化したところ、37℃において6週間の貯蔵後に再毒性化は示されなかった。HPLCおよびIEF研究の両方は、1% FA 40%および0.025M リジンで最も良好にホルミル化が機能することに一致した。
たとえリジンなしのサンプルが、等しく良好に無毒化されることが示されたとしても、少量のリジンが、ごく低いレベルの二量体化を達成するために都合がよいようである。
(B.適切なジフテリア毒素濃度および無毒化時間の確立)
より高い毒素濃度(500〜5000Lf)での無毒化および無毒化時間(14日間、28日間および42日間)の両方を調査した。精製したジフテリア毒素濃縮物(12,500Lf/mL、20mmol/L)を、0.1mol/L リン酸緩衝液中に希釈し、濾過によって滅菌した。最終毒素濃度およびサンプル組成を、表9に示す。
各サンプルについて、容積100mLを調製した。ホルムアルデヒドの添加の2週間後、4週間後および6週間後に、各サンプル5mLを取り出し、透析し(遊離ホルムアルデヒド濃度の決定を除いて)、分析した。
12日後、28日後および42日後の濁度試験の結果を、表10に示す。
ホルムアルデヒドおよびリジンで無毒化したサンプルは、42日後ですら活性の喪失(Lf/mL)を全く示さなかった。リジンなしのサンプルは、リジンありの匹敵するサンプルより低いLf/mL値を示した。活性における最大の低下は、14日後に認められた。28日後および42日後に、上記活性は、ごく僅かに低下した。
全てのサンプルを、上記で記載されるVero細胞アッセイにおいて残留する毒性について試験し、精製毒素および標準物質と比較した。上記サンプルは、100〜300Lf/mLの間のED50値を与えた。この値は、上記毒素の値より10〜10倍高い。既存のプロセスによって生成されたジフテリアトキソイドは、50〜500Lf/mLの間の値を与える。上記無毒化プロセスの時間依存性は、全く認められなかった。無毒化は14日後に完了したようである。サンプル1〜12についての上記Vero細胞アッセイの結果を、表11にまとめる。
この知見は、遊離ホルムアルデヒドの決定後に得られる結果によっても裏付けられる。無毒化の14日後に、全てのサンプルは、最初の濃度と比較して、より低い遊離ホルムアルデヒド濃度を示したが、その後、30日間にわたってホルムアルデヒドがさらに消費されることはなかった。透析前にサンプル1〜12の遊離ホルムアルデヒド濃度を決定するためのアッセイの結果を、表12にまとめる。
SECによる上記サンプルの分析からも、14日間の無毒化の後にさらなる反応は示されなかった(図9〜11を参照のこと)。上記SEC分析は、リジンの存在下および非存在下での無毒化の間のより高い毒素濃度の影響を明らかにした。上記毒素濃度が高くなるほど、ダイマーおよびマルチマーの画分は高くなった(図9〜11を参照のこと)。ダイマーおよびマルチマー形成は、リジンの存在下および非存在下で認められた。しかし、リジンは、架橋反応を顕著に阻害し、その非存在下より遙かに少ないダイマー形成を生じた(2000Lf/mlにおいて、リジンの非存在下で33% ダイマー 対 0.025mM リジンの存在下で10%;表11、サンプル2およびサンプル6を参照のこと)。サンプル1〜12の各々におけるダイマーのパーセンテージを、表13に示す。
光散乱検出器と上記SECとを接続して、分離したピークの分子量を調べたところ、上記主要ピークが、分子量約60kDaを有するモノマーであることが確認された。小さい方のピークは、120kDaを有するダイマーであり、いくつかのサンプルでは、180kDaを有するトリマーであるか、またはさらにはマルチマーが検出できた。
(実施例6:新たなプロセスによって調製されたジフテリアトキソイドの効力)
効力研究を、欧州局方(1997, third edition, Council of Europe, Strasbourg, France, Assay of diphtheria vaccine (adsorbed), pp. 113−115)の要件に従って行った。
上記粗製ジフテリア毒素を、先の実施例に記載されるように調製した。上記粗製ジフテリア毒素をさらに精製および無毒化するために、実施例4に記載される精製プロセスを、実施例5に記載される最適化された無毒化プロセスと合わせたところ、図12に示される組み合わせプロセスを得た。
上記ジフテリア毒素を、上記に記載されるように、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。上記溶出液の毒素濃度を、5000Lf/mLに調節した。FA(40% 溶液)を、実施例5に記載されるように、0.025M リジン(終濃度)の存在下で、終濃度1%になるまで添加することによって、上記濃縮したジフテリア毒素溶液を、リン酸緩衝液(pH7.5)中で無毒化した。得られたジフテリアトキソイドを希釈し、その後、水酸化アルミニウムに吸着させた。上記最終ワクチン処方物の組成を、表14に示す。
上記ワクチン処方物の効力を、モルモットにおいて試験した。小児用ワクチンは、下側信頼限界(lower confidential limit)が少なくとも30 IU/用量である場合に、効力試験に合格する。上記効力研究の結果を、表14にまとめる。
(実施例7:ジフテリアトキソイド組成物の分析)
図12に概説されるプロセスに従って調製されたジフテリアトキソイドを含む組成物を、+2〜8℃において、0ヶ月、6ヶ月および12ヶ月にわたって貯蔵した。上記製造プロセス全体の間に、上記組成物に保存剤は全く添加しなかった。各時点の後、上記サンプルのアリコートを、効力試験、純度分析、凝集アッセイ、HPLC分析、pH測定、毒性および滅菌性試験、ならびに遊離リジン、ホルムアルデヒド、塩化ナトリウム、スルフェートおよびホスフェート含有量の化学分析のために使用した。効力および毒性を、モルモットにおいて試験した。結果を、表15にまとめる。
全ての時点において、上記組成物は、純度要件および効力要件を大きく上回っていた。同様に、残留するホルムアルデヒド濃度は、0.2mg/mlの許容限界を下回っていた。
本発明は、例示によってのみ記載されたこと、および改変は、本発明の範囲および趣旨内に保持されながらなされ得ることは、理解される。
(参考文献)

Claims (30)

  1. ヒトでのワクチン接種に適した組成物であって、該組成物は、
    (i)ホルムアルデヒドで結合された動物由来成分を含まない、ホルムアルデヒドで結合されたジフテリアトキソイド、および
    (ii)コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae以外の少なくとも1種の病原体に由来する防御抗原
    を含み、ここで、該ジフテリアトキソイドは、少なくとも60 IU/mlの効力を有し、アジュバントに吸着され、そして、該ジフテリアトキソイドは、少なくとも90%純粋であり、かつ/または少なくとも1500Lf/mg窒素の純度を有し、ここで、該ジフテリアトキソイドは、アレルギー反応を引き起こすには不十分な酵母成分を含む、組成物。
  2. 前記非ジフテリア防御抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、破傷風トキソイド、百日咳抗原、結合体化インフルエンザ菌(H.influenzaeB型莢膜サッカリド、結合体化髄膜炎菌(N.meningitidis莢膜サッカリド、結合体化ストレプトコッカス・ニューモニエ(S.pneumoniae莢膜サッカリド、および/または不活性化ポリオウイルスから選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記HBsAgは、動物由来成分を含まない、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記インフルエンザ菌(H.influenzaeB型莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない、請求項2または3に記載の組成物。
  5. 前記髄膜炎菌(N.meningitidis莢膜サッカリドは、動物由来成分を含まない、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記組成物は、以下:
    からなる、請求項2〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためのジフテリアトキソイドを作製するためのプロセスであって、
    (i)ジフテリア毒素を発現するコリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriaeのある株を、動物由来成分を含まない、少なくとも100Lの発酵培地中で増殖させる工程であって、該発酵培地が、以下:
    鉄分除去した酵母抽出物;
    少なくとも0.08Mのジサッカリド;
    1.5μM〜30μM 可溶性Fe2+/Fe3+
    リン;および
    増殖因子、
    を含む、工程;
    (ii)該ジフテリア毒素を、該発酵培地から精製して、精製されたジフテリア毒素を得る工程であって、該精製された毒素は、少なくとも85%純粋である、工程;
    (iii)ホルムアルデヒドを該精製されたジフテリア毒素に添加する工程;ならびに
    (iv)工程(iii)からの該精製されたジフテリア毒素をインキュベートして、該ジフテリアトキソイドを得る工程
    を包含する、プロセス。
  8. ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためのジフテリアトキソイドを作製するためのプロセスであって、
    (i)ジフテリア毒素を発現するコリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、動物由来成分を含まない発酵培地中で増殖させる工程であって、該発酵培地が、以下:
    鉄分除去した酵母抽出物;
    少なくとも0.08Mのジサッカリド;
    1.5μM〜30μM 可溶性Fe2+/Fe3+
    リン;および
    増殖因子、
    を含む、工程;
    (ii)該発酵培地からの該ジフテリア毒素を精製して、少なくとも85%の純度のジフテリア毒素溶液を得る工程;
    (iii)該ジフテリア毒素溶液中のジフテリア毒素の濃度を、少なくとも3000Lf/mLに調整して、濃縮された溶液を得る工程;
    (iv)該濃縮された溶液に、(a)0.025M以下の終濃度のアミノ酸、および(b)0.75〜1%の範囲の終濃度のホルマリンを加えて、無毒化溶液を得る工程;ならびに
    (v)該無毒化溶液をインキュベートして、該ジフテリアトキソイドを得る工程
    を包含する、プロセス。
  9. 前記アミノ酸が、グリシンまたはリジンである、請求項8に記載のプロセス。
  10. コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriaeのある株を培養して、ジフテリア毒素を作製するために適切な発酵培地であって、該培地は、動物由来成分を含まず、そして:
    (i)水;
    (ii)鉄分除去した酵母抽出物;
    (iii)少なくとも0.08Mの濃度のジサッカリド;
    (iv)1.5μM〜30μMの可溶性Fe2+/Fe3+を提供する鉄補充物;
    (v)リン;および
    (vi)増殖因子、
    を含み、ここで、少なくとも100Lの該発酵培地中のコリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriaeの培養物は、少なくとも140Lf/mLの該ジフテリア毒素を生成する、発酵培地。
  11. 前記コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae培養物は、少なくとも200Lf/mLの前記ジフテリア毒素を生成する、請求項1に記載の発酵培地。
  12. 前記コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae培養物は、250Lf/mLの前記ジフテリア毒素を生成する、請求項1に記載の発酵培地。
  13. 前記ジサッカリドの濃度は、0.08M〜0.16Mである、請求項1、1または1に記載の発酵培地。
  14. 前記鉄補充物は、Fe(III)の塩である、請求項1、1または1に記載の発酵培地。
  15. 前記酵母抽出物は、低マンナン含有量を有する、請求項1、1または1に記載の発酵培地。
  16. 前記酵母抽出物は、30kDaより大きい分子量を有する成分を含まず、前記鉄補充物は、1.5μM〜30μMの濃度のFe(II)もしくはFe(III)の塩である、請求項1、1または1に記載の発酵培地。
  17. 前記酵母抽出物は、低マンナン含有量を有する、請求項1、1、1、1または1に記載の発酵培地。
  18. 前記酵母抽出物は、30kDaより大きい分子量を有する成分を含まない、請求項1、1、1、1または1に記載の発酵培地。
  19. 請求項1に記載の発酵培地を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
    酵母抽出物を水に溶解する工程;
    該酵母抽出物から鉄分除去する工程;
    ジサッカリドを、少なくとも0.08Mの終濃度まで添加する工程;および
    1.5μM〜30μMの可溶性Fe2+/Fe3+を提供する鉄補充物を添加する工程を包含する、プロセス。
  20. 前記酵母抽出物は、低マンナンの酵母抽出物である、請求項19に記載のプロセス。
  21. 前記酵母抽出物を、30kDaより大きい分子量カットオフを有する膜を使用して限外濾過する工程を包含する、請求項19または2に記載のプロセス。
  22. 前記ジサッカリドは、0.08M〜0.16Mの濃度で存在する、請求項19〜2のいずれか一項に記載のプロセス。
  23. 前記鉄補充物が、Fe(III)の塩である、請求項19〜2のいずれか一項に記載のプロセス。
  24. 前記Fe(III)の塩を、ホスフェートおよびカルシウム塩と組み合わせて添加して、鉄の緩慢放出処方物の形成を促進する工程を包含する、請求項2に記載のプロセス。
  25. ヒトでの使用のためのワクチンを調製するためのジフテリア毒素を生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
    (i)ジフテリア毒素を発現するコリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriaeのある株の培養物を、以下:
    鉄分除去した酵母抽出物;
    少なくとも0.08Mのジサッカリド;
    1.5μM〜30μM 可溶性Fe2+/Fe3+
    リン;および
    増殖因子、
    を含むが、動物由来成分を含まない、少なくとも100Lの発酵培地中で調製する工程;
    (ii)好気性条件において、該培養物を、該発酵培地中で少なくとも140Lf/mLの該ジフテリア毒素の濃度まで増殖させる工程;ならびに
    (iii)該ジフテリア毒素を該発酵培地から分離する工程であって、該分離工程は、遠心分離工程および濾過工程を包含する、工程
    を包含する、プロセス。
  26. 前記濃度は、少なくとも200Lf/mLの前記ジフテリア毒素である、請求項2に記載のプロセス。
  27. 前記濃度は、250Lf/mLの前記ジフテリア毒素である、請求項2に記載のプロセス。
  28. 前記増殖因子は、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、ピメリン酸、ニコチン酸およびβ−アラニンから選択される、請求項227のいずれか一項に記載のプロセス。
  29. 請求項25〜27のいずれか一項に記載のプロセスによってジフテリア毒素を生産する工程を包含し、さらに、ホルムアルデヒドを、前記ジフテリア毒素に添加し、それをインキュベートして、ジフテリアトキソイドを得る工程をさらに包含する、プロセス。
  30. アジュバント、キャリアおよび/もしくは賦形剤を、前記ジフテリアトキソイドに添加する工程をさらに包含する、請求項29に記載のプロセス。
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