JP5914175B2 - 解体防護部材と解体防護工法 - Google Patents
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Description
それらの発明には多くの工夫が見られるが、外壁が外側へ倒れて転落するような重大事故の阻止に対して特定したような発明は見当たらない。
そのために従来は、図5に示すように、外壁aの外周に足場dを設置し、足場dの外周をシートeで覆い、外壁aの一部を解体直前になって内部の柱bや梁に繋留ワイヤーcで繋留し、内側への引き寄せ力を与えながら解体するといった方法を採用している。
<1> 外側に設置した養生足場は解体の騒音や粉塵などの飛散物を防ぐ目的のものであり、外壁のような重量物の外部側への倒壊といった不測の事態に対する防護性能は有していない。
<2> 図5に示すような繋留ワイヤーcによる転倒防止策では、ワイヤーcの取り付けは解体工事と並行して行い、補助者がその場に応じて支柱bなどに繋留する方法である。そのためワイヤーcの定着は解体中の不確かな構造体に取り付ける場合が多く、十分な締め付けや確実な定着が満足されるとは言い難い。
<3> 図5に示す繋留ワイヤーcの配置は、解体用の重機の操作と錯綜するため重機操作を誤った場合、あるいは不測の荷重を掛けた場合にワイヤーcに損傷を与える可能性がある。
<4> 外壁aを倒す際には、壁aの外側に設置してあった養生足場dとの繋ぎ材は前もって撤去してある。そのため外壁aを倒したら足場だけが壁aによる補助がない状態で空中に自立している状態となる。したがって足場dの解体までの期間は孤立状態の足場dの転倒防止性能が低下してしまう。
<5> 図5に示す繋留ワイヤcは、解体対象の外壁aの頂部が外側に倒れることを防いでいるだけである。したがって、外壁aの下部が外部に滑り出したり、破片が外部に落下するような事故に対しては防護の効果が期待できない。
また本発明の解体防護部材は、上支柱には固定腕を複数段に設け、下支柱にはその上部付近に、最下段の固定腕を設けて構成したことを特徴とするものである。
本発明の解体防護工法は、上記の解体防護部材を使用し、複数本の下支柱を未解体の階層の外側に、鉛直にかつ平行に固定し、上支柱は解体する階層の外側に位置させ、上支柱の各水平枠を水平に引き起こして隣接する水平枠間を接続して行うことを特徴としたものである。
さらに本発明の解体防護工法は、上記の工法において、下支柱の上端を解体階層の床面以上の高さに位置させ、かつ下支柱に設けた水平材を、解体階層の床面以上の高さに位置させて行うことを特徴としたものである。
<1> 本発明の解体防護工法では、外壁の外側に強固な解体防護部材を設置し、さらにその外側に養生足場を設置する工法である。したがって従来の工法に比べ二重の安全を提供することができる。
<2> 外壁の解体作業自体には特別な装置を必要とせず、従来の破砕機による最も安価な解体防護工法を採用できるから経済的である。
<3> 解体する外壁の倒壊防止対策が、解体作業の開始前にすでに完備しているから、きわめて安全である。
<4> 解体現場に残った柱や梁を探してワイヤーを取りつけるような図5に示す従来の工法に比較して、少なくとも未解体の床版の2階層の端面に2か所を取り付けた支柱で外壁の転倒、滑り出しを阻止する構造であるから、その防護機能の確実性は十分に高い。
<5> 上記の効果の相違は、いわばワイヤーでの繋留が「点」であるのに対して本発明の部材と工法は「面」で外壁を抑えるものであるから、当然大きな安全性の相違となって表れる。
<6> 外壁の内部の解体作業と輻輳した倒壊防止作業や装置、部材は一切存在しないから、解体作業の障害になることがない。
<7> 重機による解体作業と、本発明の解体防止部材とはほとんど接触する点がないので、重機操作に起因する不測の事態が発生する可能性が極めて低い。
<8> 外壁の外部の転倒を阻止できるだけでなく、外壁の下端が外側に滑り出す事故も、最下段の水平部材で阻止することができる。
<9> 解体防護部材はすべて建築物の外部に位置し、解体中の建物内部には何も存在しない。そのために解体用の重機のオペレータなども繋留ワイヤーの配置などに注意をする必要がなく、作業性が向上する。
<10> 外壁の外部への転倒を防止できるだけでなく、それに加えて外部に設置した養生足場の自立性を確保することもできる。したがってある階層の解体後に足場だけが孤立してしまうような現象が生じることがなくきわめて安全である。
<11> 解体防護部材の設置作業、外側の養生足場の組み立て作業、およびその解体作業など一連の作業が、足場とび工のみで実施できるので高い作業効率を確保できる。
<12> 解体防護部材が折りたたみ可能であるため、その運搬、揚重、設置、盛替作業がきわめて容易であり最少コストで実施できる。
本発明の解体防護部材は、鉛直方向に伸縮自在の上下の支柱1,2と、支柱に取り付けた水平枠とによって構成する。
支柱は、上支柱1と下支柱2によって構成する。
下支柱2は内径の大きい中空の、断面が円形あるいは角型の市販の鋼管を使用する。
上支柱1は外径が下支柱2の内径よりも小さい、断面が円形あるいは角型の市販の鋼管やH型鋼などの型鋼を使用する。
この上支柱1を、上記の下支柱2の中空部にスライド自在に挿入し、伸縮自在の支柱を構成する。
スライド自在のままでは形状が決まらないので、複数個所にピン穴11を開口して、水平方向からピン12を穴11に挿入することによって上支柱1を下支柱2に固定できるように構成する。
上支柱1の対向する両側側面には、支柱の軸と直交する方向に固定腕3を突設する。
この固定腕3は、上支柱1に直接取り付けるのではない。
上支柱1には、その外形より大きい内形の嵌合筒31をスライド自在に嵌装し、その嵌合筒31に固定腕3を取り付ける。
この固定腕3は、単なる鋼板を支柱の中心軸と直交する方向へ向けて嵌合筒31に溶接して構成することができる。
嵌合筒31と上支柱1との固定は、水平方向から両者を貫通して挿入するピン12によって行う。
そのために嵌合筒31にも上支柱1にもピン穴11を開口する。
上支柱1に開口したピン穴11を複数段に配置しておけば、その位置に嵌合筒31を固定できるから、その位置に固定腕3を固定することになる。
下支柱2には固定腕3を設けないこともできる。
下支柱2に固定腕3を設ける場合には、下支柱2の上部付近に設ける。
この固定腕3は、上支柱1に設けた固定腕3から数えると、最下段の固定腕3ということなる。
この固定腕3の取り付けも、嵌合筒31を介して行うことは上支柱1の場合と同様でもよいし、上支柱1に直接取り付けてもよい。
各固定腕3の端部には、回転軸41を介して支柱と直交方向に折りたたみ自在に水平枠4を取り付ける。
この水平枠4は鋼材の角パイプなどによって構成することができる。
建物の解体時に外壁が外側へ転倒しかかった場合に、上支柱1だけではなくこの水平枠4が外壁を外側から支えて、外壁の外側への転倒を阻止する機能を果たすものである。
水平枠4は、回転軸41を介して固定腕3に取り付けてあるから、水平姿勢から鉛直姿勢まで回動が自由である。
水平枠4の自由端には、連結具42を取り付ける。
この連結具42は例えば、水平枠4の端部でスライド自在の筒体で構成し、組み立て時には隣接する水平枠4の端部に筒体をスライドさせて両水平枠4の端部を一体化するような構成を採用することができる。
固定腕3の水平方向への張り出し長さは一定ではない。
上記したように固定腕3の端部には回転自在に水平枠4が取り付けてあり、それが折りたたみ自在であるから、水平枠4を鉛直に垂下した場合に、上段の水平枠4の下部が、下段の固定腕3に衝突しないことが必要である。
そのためには上段の固定腕3の水平方向の長さは、垂下した水平枠4が、それより下の段の固定腕3に衝突しない位置を確保しておく必要がある。
すなわち固定腕3の水平方向の長さは、最上段の固定腕3が最も長く、下段の固定腕3の長さを順次短く、最下段の固定腕3が最も短い寸法で構成するものである。
次に上記で説明した解体防護部材を使用して行う解体防護方法について説明する。
なお解体防護部材の設置位置は建築物の外側であるが、すでに外側には養生足場が組み立ててあり、本発明の解体防護部材は建築物と養生足場の間の空間に設置するものである。
養生足場の組み立て工程などは公知であるので説明を省略する。
上記した下支柱2の長さは、解体予定の建築物の一階層よりも多少長く構成してある。
その下支柱2の下端付近を解体予定層の下の階層の床付近に、アンカーボルト21によって固定する。
さらに下支柱2の上部は、解体予定層の下の階層の天井付近に、アンカーボルト21によって固定する。
このアンカーボルト21による固定の方法は公知の各種の方法を採用することができる。
こうしてまず下支柱2を、その上下端を建築物の解体予定階層の下の階層に固定する。
上記の工程は、クレーンで下支柱2を建築物の外部へ吊り上げ、足場からの固定作業によって行う。
下支柱2を建築物の外部に設置した状態では、下支柱2の上端が、解体予定階層の床よりも多少、例えば1m程度、高い位置に位置するように下支柱2の長さを設定しておく。
このように設定すると、下支柱2の上端とそこから水平方向に張り出した最下段の水平枠4を、解体階層の床よりも1m程度高い範囲の位置に配置することができる。
その理由は、解体階層の建築物の柱などは、その下部の1mくらいの高さの範囲の中で内側部分の一部を削り取り、そこで折曲げるようにして内側に引き倒すが、その部分の薄くなったコンクリート部分が破断して外側に飛び出す可能性があるからである。(図5)
最下段の水平枠4の取り付け高さをその高さに合わせておくことで、そのような外壁の外部へのすべり出しや、一部の飛び出しを阻止することができることになる。
建築物の外側に固定した下支柱2の上端から、その内部に収納した状態の上支柱1を引き出し、その上端の高さが解体予定階層をカバーできる高さになるように、適当な位置で固定する。
あるいはクレーンで上支柱1をつり降ろし、下支柱2に挿入して行う。
あるいは上支柱1を下支柱2から引き出して固定した状態で、建築物の外部に取り付けることもできる。
上支柱1を下支柱2に固定する方法は、前記したようにピン穴11に水平方向からピン12を挿入することによって行う。
この段階では、上支柱1に複数段に嵌合した嵌合筒31は上支柱1に固定しておらず、さらに固定腕3に回転軸41で取り付けた水平枠4は鉛直方向に垂下した状態にある。
下支柱2の固定は、複数本の下支柱2を未解体の階層の外側に、鉛直にかつ平行に固定する。
したがって建築物の未解体の階層の外部に、複数本の下支柱2が平行して多数本、並べて固定してあり、各下支柱2には上支柱1が取り付けてあるという構造になる。
建築物の外部に平行して多数本設置した上支柱1には、多数段で水平枠4を鉛直方向に垂下した状態で取り付けてある。
この水平枠4を、回転軸41を回転芯として水平に引き起こすと、隣接した水平枠4の自由端が接近して位置する。
その状態でたとえば一方の水平枠4の端部に配置した短筒状の連結具42をスライドさせて、隣接する水平枠4の端部間を接続する。
その結果、建築物の解体予定階層の外側には解体前にすでに、上支柱1と水平枠4で構成した格子状の枠体を固定することができる。
そして平行して配置した複数本の上支柱1は、すべて下支柱2によって強固に未解体階層部分で支持した状態にある。
これらの上支柱1、水平枠4、そして下支柱2の上端部が、解体する外壁などの外側への転倒を阻止する部材として機能する。
建築物の解体前には足場はつなぎ材で建築物に固定してある。
しかしある階層の解体直前にはつなぎ材を撤去するから、該当する階層の外側の足場は、建築物による支えがなくなって孤立する状態となる。
しかし本発明の場合には建築物と足場の間に、下支柱2で強固に支えた上支柱1が位置している。
したがって足場の支持は上支柱1で行うことができるから、足場が空中で孤立することがなくきわめて安全である。
2:下支柱
3:固定腕
4:水平枠
Claims (5)
- 鉛直の軸方向にスライド自在の上支柱と下支柱と、
上支柱の側面に、支柱と直交方向に突設した複数段の固定腕と、
各固定腕にピンを介して支柱と直交方向に折りたたみ自在の水平枠とによって構成し、
固定腕の水平方向の長さは、最上段の固定腕が最も長く、下段の固定腕の長さを順次短く構成したことを特徴とする、
解体防護部材。 - 請求項1記載の解体防護部材において、
上支柱には固定腕を複数段に設け、
下支柱にはその上部付近に、最下段の固定腕を設けて構成したことを特徴とする、
解体防護部材。 - 2階層分の長さの支柱の複数本を、
未解体の階層の外側に、鉛直かつ平行に固定し、
その上部を解体する階層の外側に位置させ、
解体層部分に複数段の水平枠を接続して行うことを特徴とする、
解体防護工法。 - 請求項1記載の解体防護部材を使用し、
複数本の下支柱を未解体の階層の外側に、鉛直にかつ平行に固定し、
上支柱は解体する階層の外側に位置させ、
上支柱の各水平枠を水平に引き起こして隣接する水平枠間を接続して行うことを特徴とする、
解体防護工法。 - 請求項4記載の解体防護工法において、
下支柱の上端を解体階層の床面以上の高さに位置させ、
かつ下支柱に設けた水平材を、解体階層の床面以上の高さに位置させて行うことを特徴とする、
解体防護工法。
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