JP5913670B1 - 水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1個のクラスターを構成する水分子の数をクラスター数と言い、このクラスター数は、通常の水道水では100〜140と言われている。
また、水のクラスター(水分子集合体)の分解技術は、化学工学、環境工学、食品科学、医学等の分野で注目されている。
そこで、クラスター数を小さくする方法、すなわち、水分子同士の水素結合を切断して小クラスター水を製造する方法として、次のようなものが知られている。
遠赤外線を照射して水分子を伸縮・変角振動で活性化する方法。
電気分解を利用する方法。
水に種々のパターンの衝撃圧力を加える方法(特許文献1)。
低周波電流を流したパイプ中に水を通過させる方法(特許文献2)。
磁場を印加する方法(特許文献3)。
オゾンが溶解した水に対して、触媒を用いて分解反応をさせる方法(特許文献4)。
水と金属粒子が存在する系に可視光を照射して、金属粒子のプラズモン共鳴を利用する方法(特許文献5)。
更に、超音波照射、遠赤外線照射、電気分解方法では、大規模設備を要し、ランニングコストが高くなる等の問題があった。また、オゾンを溶解させる方法、金属粒子を混在又は分散させる方法では、小クラスター水ができた後も、それらを取り除く費用と手間がかかると言った問題があった。
しかしながら、特許文献6の方法やそれに使用される装置では、減圧状態で水性混合液を撹拌する工程と、加圧した水性混合液同士を噴射し衝突させる工程は、別々の反応器で行われ、両工程は完全に分離されたものであり、低コストで効率的に大量処理することは不可能であった。すなわち、特許文献6に記載の方法は回分式であり、処理が済んだ収容液を再度装置に投入し、数度の処理の繰り返しを要し、投入・取り出しの手間がかかり、コストや処理能力の点で問題があり、低コストで効率的に大量の小クラスター水を製造する方法に応用できるものではなかった。
該低圧処理工程を経て得られた該槽内の低圧処理水の一部を、該槽から連続的に採取して加圧機構で加圧し、得られた低圧処理水の加圧水を加圧水噴射部から該槽内の低圧処理水に向けて噴射して、低圧処理水同士を衝突させる衝突処理工程、及び、
該衝突処理工程を連続的に繰り返すことによって、該槽内の低圧処理水を循環させて低圧処理水同士の衝突機会を増やす循環処理工程、
を含むことを特徴とする小クラスター水の製造方法を提供するものである。
また本発明は、上記の水性エマルジョンを含有するものであることを特徴とする水性塗料を提供するものである。
また本発明は、上記の小クラスター水の製造方法で製造された小クラスター水に、平均粒径が1μm以下の金属粒子を分散させてなるものであることを特徴とする金属粒子分散液を提供するものである。
すなわち、本発明によれば、低圧処理工程において、水の中から空気が除かれているので、該低圧処理工程を経て得られた低圧処理水同士を超高圧・超高速で衝突させることによって、小クラスター水を確実に製造することができる。また、衝突によって、クラスター内の空気が除かれ、更に容易に小クラスター水を製造することができる。
また、不純物(酸素と窒素を含有する空気)が含有されていないと言う恒久的に不変の性質を有している等のために、経時でもクラスター数を小さく保ち、安定な小クラスター水を製造することができる。
すなわち、本発明の製造方法は、槽内で低圧処理が済んだ水を、別途特殊な衝突装置に投入し、衝突処理が済んだ処理水をそのまま製品として取り出したり、該処理水を再度、槽内に戻して、上記操作を1回ずつ繰り返して製品としたりするのではなく、槽内で衝突処理をし、水を循環させることによって、連続的に(途中で取り出しをせずに)繰り返し衝突処理をすることができる。
このように、回分式(バッチ式)ではなく連続式であるので、数度の処理を繰り返す等して投入・取り出しの手間がかかることもないため、コストや処理能力の点で問題が少ない小クラスター水の製造方法を提供することができる。
従来技術は何れも、大量に小クラスター水を製造するものではなかったが、本発明によれば、低コストで、効率的に、短時間で、大量の小クラスター水を製造できる。
しかしながら、全部の水を超臨界状態にする方法のように、大掛かりな装置を必要とせずに同等(以上)の効果を奏し、更に、コスト面・安全面・生産性において優れている。
すなわち、水性エマルジョンを投入した槽内を低圧にして、水性エマルジョン中の「溶存酸素等を含む溶存空気」を除去し、得られた低圧処理水同士を衝突させることによって、小クラスター水ができるのと共に、エマルジョン樹脂の凝集塊の分離を促進させることが可能となり、その結果として、従来のレベルより高いレベルにまで水性エマルジョンの分散性を改良することができる。また、槽内の水性エマルジョンには大気圧がかかっていないために良好な分散が可能であり、その良好な分散状態が常圧(大気圧)に戻した後も維持できる。
水は、通常、水分子(H2O)同士が水素結合によって集合し、クラスターという分子集合体で存在する。
本発明において、「小クラスター水」とは、水道水、井戸水、河川の水等の「通常の水」よりクラスター数の小さい水のことを言う。ここで、「クラスター数」とは、1個のクラスターを構成する水分子(H2O)の数のこと言う。
本発明の「小クラスター水の製造方法」によって製造された小クラスター水のクラスター数は、通常の水のクラスター数より小さければ特に限定はないが、本発明によれば、100以下にできるので100以下が好ましく、50以下にできるので50以下がより好ましく、30以下にできるので30以下が特に好ましく、20以下にできるので20以下が更に好ましい。
本発明の小クラスター水の製造方法について、装置の構成を示しつつ説明する。本発明の小クラスター水の製造方法に使用する装置の例を、図1〜図5、図7に示す。
被処理物である水は、槽10と加圧機構20を、加圧水噴射部14を介して循環しており、通常の水を小クラスター水にする処理(以下、単に「処理」と書く場合がある。)は、水を循環させつつ連続的に行われる。
槽10は、必須ではないが好ましくは撹拌機構11を有し、内部に投入した水を撹拌できるようになっており、処理の開始時には槽10内には通常の水が投入される。
ここで、「通常の水」とは、小クラスター水ではない水のことを言う。槽10に投入される「通常の水」は、水道水、井戸水等でもよく特に限定されるわけではないが、脱塩水、蒸留水、これらの処理を組み合わせて得られた水等の、水に溶解した不純物を除去した水であることが好ましい。
また、該「通常の水」には、水に不溶の微粒子(水の系外に存在する分散微粒子等)が含有されていてもよい。すなわち、エマルジョン樹脂等の有機微粒子;無機微粒子等の水に溶解していない微粒子が分散している水であることは、水が小クラスター水になることに伴って、該微粒子が更に微細になったり、分散性が向上したり、エマルジョン等の分散水の性能が向上する等のために好ましい。
槽10は、低圧機構30に接続されており、槽10内は、少なくとも低圧処理の間、好ましくは、低圧処理、衝突処理及び循環処理の間、低圧機構30により所定の低圧にされる。該低圧処理の間、槽10内の圧力は、水中に含有されている溶存空気が除去される圧力に減圧される。
槽10内を減圧して低圧にすることにより、水中に溶存されている窒素や酸素が除去され、その後の衝突処理工程で小クラスター水ができ易くなる。すなわち、後述する衝突処理工程で、溶存気体が存在しない低圧処理水同士を超高速・超高圧で衝突させることによって、水分子同士の水素結合が切れ易くなる。
上記低圧処理を経験した水の一部は、槽10から採取され、加圧機構20内に入り、そこで加圧された状態で、槽10内に向けて噴射される。すなわち、本発明では、槽10内で、低圧処理後の水同士を衝突させる。
このように、溶存空気が存在しない低圧処理後の低圧処理水同士を衝突させることにより、該衝突のエネルギーが効率的に作用し、クラスターが好適に水分子(H2O)にまで解集合する。また、溶解不純物(空気)が含有されていないと言う恒久的に不変の性質を有していること等のために、経時でも安定な小クラスター水ができる。
本発明は、衝突処理工程を連続的に繰り返すことによって、該槽内の低圧処理水を循環させて低圧処理水同士の衝突機会(衝突回数)を増やす循環処理工程を有している。
「槽内水E1」には、低圧処理工程を経た水も低圧処理工程を経ていない通常の水も含まれ得るし、衝突処理工程を経て槽10に戻ってきた水も、まだ循環しておらず衝突処理工程を経ていない水も含まれ得る。
槽10内には、操作開始時に、脱塩水、蒸留水、これらの処理を組み合わせて得られた水等の「溶解不純物を除去した後の通常の水」、エマルジョン樹脂等の有機微粒子;無機微粒子等の水に溶解していない微粒子(水の系外にある微粒子)が分散している「通常の水」が投入される。該「通常の水」の投入部は、その位置や形状に特に限定はなく、位置については、投入のし易さから槽10の上部に存在していることが好ましい(図示せず)。
撹拌機構11の作動条件(回転数等)についても、特に限定はなく、槽内を均一に撹拌できる条件を適宜選択する。撹拌機構11があると、槽内水E1の組成や温度を均一にできるだけではなく、低圧処理工程時に槽内水E1の突沸や泡の発生による過度の液面上昇を避けることができる。
容積が上記の下限以上であると、十分な処理量を達成することができ、本発明の効果である大量生産、コストダウン等がより(相乗的に)図れる。また、上記の上限以下であると、装置が大き過ぎずコスト的に有利であり、作業性がよく、槽内を十分均一に撹拌し易い。
充填率が上記範囲内にあることにより、槽10の内部を十分に安定的に低圧にさせ易く、また、槽内水から溶存気体が除去される際の液面上昇や泡立ち、槽内水E1の突沸等による飛び散りも少なく、槽内を均一に撹拌することができ、処理の効率が向上する。低圧処理工程によって、槽内水E1の蒸発等で槽内水E1の体積は減少する場合があるが、その場合でも上記範囲を保持することが好ましい。
槽10は、排気部12において低圧機構30と接続されている。排気部12の位置は、槽内水E1の液面より上であれば特に限定はなく、排気部12の形状、大きさ等についても、特に限定はない。
槽10内を後述する適切な圧力、すなわち、該槽内において減圧処理される水の温度(以下、「T℃」と略記する場合がある。)における水の蒸気圧以上の圧力、かつ1気圧より低い圧力で、槽内水E1中の溶存空気を十分に除去できる圧力に安定的に保持できるようになっていればよい。
減圧により槽10内の圧力が、槽内水の温度T℃における水の飽和蒸気圧よりも低くなると、槽内水E1は沸騰し、水を循環させるという本発明の目的の達成の妨げになる場合があるので、槽10内の圧力は、水の温度T℃における飽和蒸気圧以上にする。
水の温度T(℃) T℃における水の蒸気圧(kPa)
0 0.611
4 0.841
5 0.873
10 1.23
20 2.33
30 4.24
40 7.37
50 12.3
60 19.9
70 31.2
80 47.5
100 101.3
ここで、「好適な」とは、減圧処理を開始すると、すなわち低圧処理工程の初期は、溶存空気が系外に出ていくために、槽内水E1が泡立ったり、その液面の上昇が見られたりするが、それらが、各工程に、特に水の循環に支障をきたさないことであり、また、水が蒸発すると、槽内水E1の体積が減少したり、蒸発熱で槽内水E1の温度が低下するが、それらが、各工程に、特に水の循環に支障をきたさないことである。
ただし、まず一旦、槽10内を低圧にして溶存空気を除去した後、次の段階として加圧水E3を槽10内に噴射させ循環運転をする場合には、前段階(噴射・循環前の溶存空気除去段階)における槽内水E1の温度は、上記の上限温度と下限温度より0℃以上20℃以下だけ高いことも好ましい。
温度調節に用いられる装置は、特に限定はないが、冷却器等が好ましい。該冷却器は、ジャケット型、クーリングパイプ型等の「槽10の外側に接するように設置される公知の装置」が用いられる。
一方、槽内水E1の温度の下限が上記以上であると、蒸発熱で更に温度低下して水が固体(氷)になるおそれがなく、また溶存空気(溶存酸素等)が除去され易くなる。
減圧を開始して、好ましくは上記時間経過してから噴射・循環を開始するが、減圧と噴射・循環を同時に開始してもよい。
すなわち具体的には、例えば、槽内水E1の温度が4℃の場合は、0.8kPa(6Torr)以上3.4kPa以下が好ましく、0.8kPaより大きく1.2kPa以下が特に好ましい。また、例えば、槽内水E1の温度が20℃の場合は、2.3kPa(18Torr)以上9.3kPa以下が好ましく、2.3kPaより大きく3.5kPa以下が特に好ましい。
更に、槽10内の槽内水E1の液面の位置や状態(空気が除去される状態、水が沸騰する状態)等を目視で監視できるようになっていることが好ましい。
処理の間は、槽10内の圧力や温度を計測し、低圧機構30による排気速度を調整する等の手段で、槽10内を適正な圧力に調整する必要があり、また、槽内水E1が沸騰しないように注意を払う必要がある。
この状態で、槽10内をなおも排気し続けると、槽内水E1の液面が下降し、一定時間だけ静止状態となり、その後、槽内水E1が沸騰を開始することがある。その際、作業者が液面の位置をチェックし、沸騰を開始する直前又は沸騰を開始した直後には、排気部12と低圧機構30の間のバルブを閉める等して圧力を調整することが好ましい。
槽10は、槽内水E1を循環させるために採取する槽内水採取部13を有する。槽内水E1の一部は、連続的に加圧機構20内に採取され、そこで加圧される。
図1に示すように、槽10内に槽内水採取部13は1個だけ存在していてもよいし、図2及び図5に示すように、複数個存在していてもよい。
図2及び図5に示すように、槽10内の異なる高さに複数の槽内水採取部13が存在してもよく、このような場合、槽内水E1の量等の条件に応じて、バルブ等の開閉により、採取のために使用する槽内水採取部13を変更することができる。
ノズルの先端の内径は、特に限定はないが、十分な「加圧水の速度」を得るために、0.03mm以上0.3mm以下が好ましく、0.05mm以上0.15mm以下が特に好ましい。
槽内水E1は、槽内水採取部13より、加圧機構20内に採取され、加圧機構20で加圧された加圧水E3は、加圧水噴射部14から噴射されることで槽10内に戻り、槽10内の槽内水E1と衝突することで、クラスターを形成する水分子の分離が進む。
窪み部分15は、槽10の下部、側面のどこに存在していてもよいが、図2及び図5に示したように槽10の下部に存在していることが好ましい。
加圧水E3を噴射する方向の数(加圧水噴射部の数)は、一方向(1個)、二方向(2個)、三方向(3個)又は四方向(4個)が好ましく、一方向(1個)又は二方向(2個)がより好ましく、二方向(2個)が特に好ましい。噴射する方向が多過ぎると、装置が複雑になり、コストの上昇につながるだけで、処理の効率が向上しない場合がある。
図2のように加圧水噴射部14が窪み部分15に2個設置されている場合、該加圧水噴射部14の間の距離(2個のノズルの先端間の距離)は、好ましくは1mm以上100mm以下、特に好ましくは2mm以上50mm以下である。加圧水E3同士を衝突させる場合、それぞれの加圧水E3が噴射される加圧水噴射部14の間の距離が短いと(上記上限以下であると)、大きい速度エネルギーを持ったまま加圧水E3同士を衝突させることができ、クラスター数を減らす効率が向上する。
特に槽10の側面の2か所(以上)からこのような方向に噴射することが、対称性がとり易く好ましい。
図7に、槽10の横断面概略模式図において、加圧水E3の噴射方向を矢印で示した。中心軸方向から水平方向にずらす角度、すなわち図7に示した角度αは、上記効果を奏すれば特に限定はないが、αは、20°以上80°以下が好ましく、35°以上75°以下がより好ましく、50°以上70°以下が特に好ましい。
角度αがこの範囲であれば、撹拌機構11の回転軸に衝撃を与えず、槽内水E1を撹拌することも可能であり、槽10に加圧水噴射部14を設置する際の槽10の穴開け等の加工が容易である。
水平方向又は斜め下方向の角度(水平面と噴射方向のなす角度)は、特に限定はないが、0°以上60°以下が好ましく、5°以上45°以下がより好ましく、10°以上30°以下が特に好ましい。上に噴射すると槽内水E1の液面から加圧水E3が飛び出る場合がある。
水平方向又は斜め下方向の角度(水平面と噴射方向のなす角度)は、特に限定はないが、0°以上60°以下が好ましく、5°以上45°以下がより好ましく、10°以上30°以下が特に好ましい。下に噴射すると窪み部分15の底に当たり水流が乱れたり、取り出し口16に衝撃を与えたりする場合がある。
低圧機構30の種類に特に限定はなく、槽10内を前記した適正な圧力に低圧できればよく、公知の真空ポンプ等が使用できる。低圧機構30の前に(低圧機構30と槽10との間に)、水等をトラップする機構(図示せず)を設けることが好ましい。
加圧機構20は、槽内水採取部13から採取された低圧処理水E2を加圧し、「槽内水E1に衝突させた際に小クラスター化を進めるために必要な運動エネルギーを持った加圧水E3」とするための機構であり、加圧水E3は、槽10の加圧水噴射部14から槽10内に噴射される。
図3のような場合、ピストン22を押圧運動させることにより、シリンダ21内で低圧処理水E2は加圧され、加圧水E3として、ノズル形状等を持った加圧水噴射部14から噴射される。
加圧水E3の圧力が上記範囲であると、衝突時の運動エネルギーが十分であるため、クラスターの水分子(H2O)への分解の効率がよく、また、槽10、加圧水噴射部14等に過大な負荷がかからないので、装置の故障が発生し難い。
また、加圧水の圧力は、循環(噴射)開始直後は比較的小さな圧力に設定し、徐々に上げて定常状態にすることが好ましい。
噴射された直後の速度が上記範囲であると、運動エネルギーが十分であるため、小クラスター化の効率がよく、一方で、槽10、加圧水噴射部14等に過大な負荷がかかり難い。
上記条件で衝突が起こると衝突箇所が局部的に高温になるが、槽10に設置された温度調節機構(図示せず)によって、槽内水E1は全体として一定に保たれる。
低圧処理工程後又は低圧処理工程中に、槽内水E1を連続的に加圧機構20内に採取して得られた加圧水E3を槽10内に向けて噴射し循環させておく時間は、小クラスター化が十分に行われれば特に限定はなく、処理量にも依存するが、10分以上5時間以下が好ましく、20分以上3時間以下がより好ましく、30分以上2時間以下が特に好ましい。
時間が上記下限以上であると、1個のクラスターを見ると、噴射・衝突の機会が何度もあるため小クラスター化が十分に行われ、また、噴射・衝突が1回だけの回分式装置に比較して特に有利となる。
一方、上記上限以下であると、生産性、コスト面等で有利である。
十分な時間、槽10内を低圧にしてから、低圧下に噴射・循環をしてもよく、低圧開始と同時に噴射・循環を開始してもよいが、低圧にして溶存空気を除去してから、好ましくは上記時間、低圧下に噴射・循環することが望ましい。すなわち、衝突処理工程中も、低圧処理工程を継続することが小クラスター化のために好ましい。
図5に示すように、槽内水採取部13と加圧機構20の間に、帯電機構40を設けて、槽内水E1の一部を連続的に採取した低圧処理水E2を、帯電機構40を使用して帯電させることが好ましい。
また、取り出し口16の直前又は取り出し口16の下部に帯電機構40を設けて、最終工程として、小クラスター水を帯電させると、pHが低下して小クラスター水の状態や微粒子の分散状態を安定化できるようになる。
また、水が微粒子を含有する場合、該微粒子間に作用する電気的反発力により微粒子の凝集を抑制することができる。その結果、小クラスター水の状態や、微粒子の分散状態を長期間に亘って良好に維持できるようになる。
低圧処理工程を経て、水中から溶存酸素等の溶存空気がなくなると、衝突により水分子同士の結合が弱まり易くなり、小クラスター化が起こり易くなると共に、上記現象(電気的反発力の発生等)が起こり、微粒子の分散性がより向上する。
本発明においては、微粒子が分散している水に、前記の小クラスター水の製造方法を使用することによって、該微粒子の水中での分散性を向上させることができる。
前記の小クラスター水の製造方法を使用することによって、出発物質である水(処理対象である通常の水)に微粒子を分散させておくと、小クラスター水ができるのに伴い、該小クラスター水ができることによって、該微粒子の分散性が向上する。通常は、微粒子の分散液中では、該微粒子が凝集して凝集塊ができているが、その凝集塊が個々の微粒子(又はサイズの小さい凝集塊)に分離・微細化されて分散性が向上する。
原料(出発物質)となる「通常の水」には、上記した微粒子以外に、重合開始剤、乳化剤、界面活性剤、顔料等の、分散、重合等に必要な他の物質が含有されていてもよい。
上記微粒子は、水性エマルジョン樹脂の微粒子であることが、水性エマルジョン樹脂は小さく凝集もし易いので、特に本発明の前記効果を発揮し易い。
本発明における「水性エマルジョン」とは、液体が液体(水)中に分散したものに限らず、分散媒である水の中に液体又は固体が微粒子状となって分散したものをいう。
本発明に適用される水性エマルジョンの種類には特に限定はなく、使用目的に応じて、適宜選択される。
乳化剤(界面活性剤)については、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れも使用することができる。
重合開始剤については、ラジカル重合開始剤が好ましく、熱重合開始剤が特に好ましい。
また、本発明における水性エマルジョンとしては、単純に乳化重合されたものに限らず、懸濁重合、シード重合等により重合されたものが挙げられる。また、予め調製した微粒子を水に分散させたものも挙げられる。
本発明の前記した小クラスター水の製造方法を適用し、微粒子の分散性向上方法により、分散性を改良した水性エマルジョンは、前記した理由から、水性塗料として使用する場合に、前記したような優れた性質を発揮する。
本発明における水性エマルジョンは、水性塗料、接着剤、インク、化粧品、表面処理剤等の用途として有用であるが、長期間経過してもその性質に変化が生じ難いことから、本発明における水性エマルジョンを含有する水性塗料は特に有用である。
本発明の水性エマルジョンを含有する水性塗料は、上記のような優れた特性を示すことから、具体的には、防錆、防汚、防カビ、絶縁、遮熱、着雪防止等のために使用される。
水性エマルジョン中の凝集塊を分離できる本発明の方法は、例えば、インク、接着剤、化粧品、表面処理剤等の用途にも適用することができる。
本発明の技術的範囲は、以下の記載内容の及ぶ範囲に限定されるものではないが、本発明の作用・原理については以下が考えられる。
本発明は、「低圧処理をした水」を加圧して、低圧状態になっている槽内の「低圧処理をした水」に衝突させることによって、水分子(H2O)の多数集合したクラスターを、(水分子(H2O)単位にまでした及び/又は)水分子(H2O)の少数集合した小クラスターにする。
一方、水の臨界温度と臨界圧力は、それぞれ374℃と22MPa(218気圧)であるから、衝突箇所の水は局部的に超臨界又は亜臨界になっている可能性がある。
また、水(クラスター)を衝突させる際、その水中に空気が溶解していると、超高圧・超高速衝突の運動エネルギーが空気の影響を受けて無駄に使われ、全て有効に水素結合の切断、小クラスター水の生成(クラスターを形成する水の分子数の減少)に使えないと考えられる。
また、超高圧・超高速の衝突によって、クラスター内の空気が除かれ、更に容易に小クラスター水ができたと考えられる。
更に、衝突する水には、大気圧(1気圧)がかかっていないので、より容易に小クラスター水の生成が起こったと考えらえる。
特許文献1〜特許文献6(特に特許文献1又は6)に記載の装置や方法では、たとえ小クラスター水ができたと仮定しても、1度の処理では十分ではなく、何度も処理を繰り返す必要があり、液の投入・取出に手間が発生する。
この点、本発明の方法では、連続的に処理を行うことができるため、投入と取出は1度だけで、従って処理時間を延ばすことにより、十分にクラスターを分離させることができ、この結果、効率よく大量に小クラスター水の製造が可能となる。
本発明の方法により分散性を改良(凝集塊を分離・微細化)した水性エマルジョンを含有する水性塗料は、優れた接着性や強靭性(塗膜硬度)を示すが、これは、微粒子が凝集塊を形成している場合、大きな凝集塊の形で塗布素材面と接触するのに対し(図6(a))、個々の微粒子に分離している場合、個々の微粒子の形で塗布素材面と接触するため(図6(b))、接触面積が大きいためと考えられる。
前記の小クラスター水の製造方法で製造された小クラスター水に、平均粒径が1μm以下の金属粒子を分散させてなる金属粒子分散液は、分散性・分散安定性が良好で、分散中や経時保存中に凝集塊ができ難い。平均粒径が小さい程、凝集塊が生成し易い方向であるが、本発明の前記の小クラスター水を用いれば、平均粒径が1μm以下の金属粒子でも均一に凝集塊なく分散可能である。
分散性改良幅が大きい点から、金属粒子の平均粒径は、1μm未満が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
ここで、「平均粒径」は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、MT3300型)を使用して測定した数平均粒子径である。
金属粒子を予め平均粒径1μm以下にしておく方法は、特に限定されず、公知の方法が何れも用いられる。すなわち、湿式法でも乾式法でも蒸着法でもよく、それらの併用でもよく、直接1μm以下に金属粒子を調製(生成)させる方法でもよい。
図2に示すような、加圧水噴射部14が槽10の窪み部分15に存在し、二方向から噴射された加圧水E3同士を衝突させるタイプの装置を使用し、脱塩水に対して、低圧処理工程、衝突処理工程及び循環処理工程を行った。
加圧機構20は、図4に示すような、ピストン22を備えたシリンダ21状のもの2個からなるものを使用した。
低圧機構30として真空ポンプを用いて、槽10内の減圧を開始し、槽10内が約20Torr(2.6kPa)になるように保ち、槽10内の温度は20℃で均一に保った上で、槽10内の撹拌を開始した。
20℃における水の飽和蒸気圧は17.5Torr(2.3kPa)であるから、槽10内の圧力は、水の飽和蒸気圧より少し高い程度に保たれている。
低圧処理に伴い、槽内水E1の液面が一旦上昇し、溶存空気(酸素等)が泡となって除去される様子を確認したが、槽内水E1の沸騰は起こらなかった。
加圧水E3の圧力を25.3MPa(250気圧)に設定し、槽10内の窪み部分15に設けられた2か所の加圧水噴射部14から、それぞれ加圧水E3を略水平方向に噴射し、加圧水E3同士を衝突させ、衝突処理と循環処理を開始した。加圧水E3のノズルから噴射した直後の速度は、約200m/sであった。
この状態で循環処理工程を1時間行った後、装置内の全てのバルブを閉じ、真空ポンプ、加圧機構20、及び、帯電機構40を停止して処理を完了し、槽10内の窪み部分15の下部にある取り出し口16から、処理後の水を採取した。得られた水を「水(B)」とする。
図2に示す装置に代えて、図1に示す装置(加圧水噴射部14が槽10の側面に1個だけ存在し、加圧水E3を槽内水E1に衝突させるタイプの装置)を使用し、処理時間を3時間とした以外は、実施例1と同様に、脱塩水に対して、低圧処理工程、衝突処理工程及び循環処理工程を行った。得られた水を「水(C)」とする。
鉄板の表面をクレンザーで研摩した後に水洗し乾燥させた。その表面に、「実施例1で得られた水(B)」と「水道水」とを、それぞれ1mL滴下した。その後、20℃で24時間静置し、変化を目視観察した。
図8から分かる通り、錆発生の違いが観察された。すなわち、水(B)の接触していた鉄板の表面は全く変化が見られなかったが、水道水の接触していた鉄板の表面は、黄褐色に変化し(上から見た図8(a)では色が濃く映り、斜めから見た図8(b)では色が薄く映っている)、鉄の赤錆(酸化物)が生成した。
ホウケイ酸ガラスの板の表面を中性洗剤で洗浄し、蒸留水で洗浄した後、シリカゲルの入ったデシケーター中で乾燥した。JIS R3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に従い、接触角を測定した。すなわち、そのガラス板上に、実施例1及び実施例2で出発物質として使用したものと同一の水(A)、実施例1で得られた水(B)、及び、実施例2で得られた水(C)の接触角を測定した。
その結果、水(A)の接触角は、60°〜90°の範囲であったのに対し、水(B)と水(C)は、何れも、2°〜10°の範囲であった。
5人のパネルに、実施例で出発物質として使用したものと同一の水(A)、実施例1で得られた水(B)、及び、実施例2で得られた水(C)を、それぞれ100mL渡し、味わってもらった。
その結果、水(B)と水(C)は、水(A)に比べて甘いと答えた人が多かった。
実施例1及び実施例2で原料として使用した水(A)のロットを変えて、それらのpHを15℃で測定したところ、pH=6.0〜7.5の範囲に広がっていた。すなわち、pH=7近傍の「通常の水」は、ばらつきが大きい。
一方、取り出し口16の下部に帯電機構40を設けた以外は、実施例1及び実施例2と同様にして得られた水(B’)及び水(C’)の15℃でのpHを、複数のロットで測定したところ、何れもpHが低下して、pH=5.5〜5.8の範囲に入っていた。しかも、pHの範囲にばらつきがなくなった。
更に、取り出し口16の下部に帯電機構40を設けない実施例1及び実施例2で得られた水(B)及び水(C)でも、若干、「pHの低下」と「pHのばらつき解消」が減少したが、ほぼ上記結果と同様の結果が得られた。
実施例1、2及び評価例1〜4より、水(B)、水(C)、水(B’)、水(C’)は、何れも、原料として用いた水(A)や水道水と比較して、一般に小クラスター水の物性として知られている項目において小クラスター水の物性を示したことから、水(B)、水(C)、水(B’)、水(C’)は、何れも小クラスター水であると結論される。
更に、水(B)、水(C)、水(B’)、水(C’)には、溶存空気が含有されておらず、例えば1カ月という長期間安定状態を維持できた。
図2に示す装置を使用して、水性エマルジョンに処理を施した。槽10、加圧機構20及び低圧機構30は、実施例1と同一のものを使用した。
槽10の中に、水性エマルジョンであるアクリルエマルジョン(日本エヌエスシー株式会社製、AD157)を800L投入した。
20℃における水の飽和蒸気圧は17.5Torr(2.3kPa)であるから、槽10内の圧力は、水の飽和蒸気圧より少し高い程度に保たれている。
その際、帯電機構40を作動させ、加圧機構20内に送り込まれる低圧処理水に帯電を施した。
加圧水E3の圧力を25.3MPa(250気圧)に設定し、槽10内の窪み部分15に設けられた2か所の加圧水噴射部14から、それぞれ加圧水E3を略水平方向に噴射し、加圧水E3同士を衝突させ、衝突処理と循環処理を開始した。
処理前のアクリルエマルジョンの微粒子の粒子径分布は、0.3μmから300μmまでブロードであったが、処理後の水性エマルジョンの微粒子の粒子径分布は、0.03μmから0.3μmの範囲でありシャープであった。
本発明の方法による処理後のアクリルエマルジョンの微粒子は、個々の微粒子や粒子径が1μmに達しないサイズの微粒子又は極めて小さい凝集塊となっていた。
実施例1で得られた水(B)に対して、「上記装置で測定した個数平均粒径が1μm以下にまで予め微細化した金(Au)及び銀(Ag)の金属粒子」を、通常の撹拌によって分散させたところ、水(B)にそれぞれの金属粒子が凝集することなく分散した。
一方、金属粒子(金、銀)を、水(A)に投入して同様に通常の撹拌をしたが、金属粒子は水(A)には良好に分散しなかった。
特許文献6の図1に記載の装置を使用した。特許文献6の装置は、(a)減圧状態で水性混合液を撹拌する工程と、(b)加圧した水性混合液同士を噴射し衝突させる工程が別々の機構(装置)で行われ、両工程は完全に分離されている回分式の装置である。従って、(b)工程を終えた水性混合液を、(a)工程に戻すことで連続的に処理を行うことはできない。
投入した水を全て収容容器に収容するのに、25時間の時間を要した。
具体的には、原料の脱塩水を装置に投入してから、処理後の水を取り出すまでの時間を、実施例1の1/25にすることができた。
また、実施例1及び実施例2の方が、確実に小クラスター水ができた。
10 槽
11 撹拌機構
12 排気部
13 槽内水採取部
14 加圧水噴射部
15 窪み部分
16 取り出し口
20 加圧機構
21 シリンダ
22 ピストン
30 低圧機構
40 帯電機構
E1 槽内水
E2 低圧処理水
E3 加圧水
α 水平面上での加圧水の噴射方向
Claims (10)
- 槽内を、該槽内において低圧処理される水の温度T℃における水の蒸気圧以上の圧力で、かつ1気圧より低い圧力に保ちつつ、該水の中に含有されている溶存空気を除去する低圧処理工程、
該低圧処理工程を経て得られた該槽内の低圧処理水の一部を、該槽から連続的に採取して加圧機構で加圧し、得られた低圧処理水の加圧水を先端の内径が0.03mm以上0.3mm以下のノズル形状の加圧水噴射部から該槽内の低圧処理水に向けて噴射して、低圧処理水同士を衝突させる衝突処理工程、及び、
該衝突処理工程を連続的に繰り返すことによって、該槽内の低圧処理水を循環させて低圧処理水同士の衝突機会を増やす循環処理工程、
を含み、衝突処理工程中も、低圧処理工程を継続する
ことを特徴とする水の処理方法。 - 上記加圧機構は、加圧室の構造がピストンを備えたシリンダであり、2個以上のシリンダを有しており、交互にピストンを押圧運動させ、加圧されている側のバルブを開け、加圧されていない側のバルブを閉めることによって、連続して常に、上記加圧水を上記加圧水噴射部から噴射させるものである請求項1に記載の水の処理方法。
- 上記衝突処理工程において、上記加圧機構で加圧された加圧水にかかっている圧力が、3MPa以上250MPa以下である請求項1又は請求項2に記載の水の処理方法。
- 上記衝突処理工程において、上記加圧水を槽内の低圧処理水に向けてノズルから噴射した直後の加圧水の速度が、50m/s以上1500m/s以下である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記低圧処理工程において、低圧処理される水の温度T℃が、0℃以上60℃以下である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記低圧処理工程において、上記槽内の圧力を、低圧処理される水の温度T℃における水の蒸気圧の1倍以上で4倍以下に保つ請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記槽が窪み部分を有し、該窪み部分の中の低圧処理水に向けて、上記加圧水噴射部から上記加圧水を噴射する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記槽の中の低圧処理水に向けて、上記槽の側面に設けられた加圧水噴射部から、上記加圧水を噴射する請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記槽が上記加圧水噴射部を2個以上有している請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
- 上記槽の中の低圧処理水の一部を該槽から連続的に採取した低圧処理水を、帯電機構を使用して帯電させる請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の水の処理方法。
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