JP5912556B2 - 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具 - Google Patents

医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具 Download PDF

Info

Publication number
JP5912556B2
JP5912556B2 JP2012005322A JP2012005322A JP5912556B2 JP 5912556 B2 JP5912556 B2 JP 5912556B2 JP 2012005322 A JP2012005322 A JP 2012005322A JP 2012005322 A JP2012005322 A JP 2012005322A JP 5912556 B2 JP5912556 B2 JP 5912556B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
suture
melting point
point component
medical device
sewing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2012005322A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013144009A (ja
JP2013144009A5 (ja
Inventor
泰晴 野一色
泰晴 野一色
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nicem Ltd
Original Assignee
Nicem Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nicem Ltd filed Critical Nicem Ltd
Priority to JP2012005322A priority Critical patent/JP5912556B2/ja
Publication of JP2013144009A publication Critical patent/JP2013144009A/ja
Publication of JP2013144009A5 publication Critical patent/JP2013144009A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5912556B2 publication Critical patent/JP5912556B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Prostheses (AREA)

Description

本発明は、縫合部を備えた医療用具、特に生体内植え込み用医療用具を製造する過程で用いる縫合糸に関する。また、この縫合糸の使用方法、及びこの縫合糸で縫着製造した医療用具に関する。
高機能医療用具には、その製造過程に縫合工程を持つ製品が多い。例えば枝付き人工血管では太い人工血管に細い枝の人工血管が縫着されている。人工弁では心臓壁に縫合しやすいように台座部分にポリエステル繊維製布帛が縫着されている。ステントグラフトでは金属線の拡張部材が筒状の布帛に縫着固定されている。このように縫着作業は高機能医療用具製造工程において一般的に行われている。この縫着は、縫合糸で連続的に縫い合わせる連続縫合やひと針毎に結紮して結び目を形成する結節縫合で行われる。
手術中に行われる外科医による結紮は独特な手技で緩み防止結紮が行われ、手術直後から結紮部繊維間隙に細胞が侵入するため緩み難くなる。しかし、医療用具においては、製造から使用までに一定期間があることから、製造工程における縫合部の縫い目や結び目は、製造直後から緩みが開始し臨床使用に供されるまでの間に緩みが進む可能性がある。特に心臓血管系に使用する医療用具、例えば心臓弁、人工血管、ステントグラフト等では、複雑な形状や高機能を持つことが多く、構造的には縫合箇所も多くなり、製造時から臨床使用時までの時間が長いことからその間に、縫い目や結び目が緩み始める可能性がある。そのような緩みかけた状態で臨床使用されると、生体内に植え込みによって拍動毎に強い張力がかかる場に置かれるので、縫合糸の縫い目や結び目に持続的反復的な力が掛かり、植え込み後に緩みが加速される危険性がある。縫い目や結び目が緩むと高機能医療用具は機能が発揮されず、重大な事態を招く。そこで製造工程において縫合糸は縫着後に固く何重にも糸結びされる。しかしながら製造工程において完璧な緩み問題解決策は見出されないまま今日に至っている。
具体的な一例としてステントグラフトを挙げる。ステントグラフトでは繊維製の布帛に金属製の拡張部材が縫着されて、細く折りたたまれ、細いシース内に押し込まれ、シース壁に強く押さえられつつ押し進められるので、シース内移動時に縫合糸が擦れによって緩み解れる危険性があり、金属拡張部材の位置のズレが危惧されている。そのために厳重なる縫合と同時に何重にも糸結びされるが、その結果として結び目が嵩張り、その嵩張りがシース内で引っかかり、更には嵩張るためにシース内で余計に圧迫が加わり、縫合部に予期せぬ外力が掛かって、ステントグラフトを押し進める際に擦れを助長し結び目の緩みに起因する金属部材と布帛との間のズレが生じる危険性があり、患者はいつ不具合が生じるかといった心配を抱えた状態に置かれる。そのため更に厳重に何重にも糸結びが行われるが、ステントグラフトを細く折り畳む趣旨から嵩張る厳重な何重もの糸結びは敬遠される。つまり結び目が緩まないように厳重な糸結びを行いたいが弊害が生じるので厳重な糸結びは行いたくない、というディレンマを抱えたままとなっており、隠れた未解決問題として恐れられている。
医療用具以外の他の領域では、縫合部を緩ませない先行技術がすでに報告されている。例えば、特開2010−70868号公報(特許文献1)には、関節等の屈伸パッドのシート材を複数分割し、隣接したシート材同士を糸で縫合されたパットを有するサポータが開示されており、縫合糸には熱融着糸が好ましいと記載されている。更に縫合糸としては、非熱融着糸(例えばレーヨン)であることで複数分割されたシート材を耐熱補強することが出来、また、縫合糸が熱融着糸(例えばナイロン)であることで加熱により溶けた縫合糸同士が融着することで解れ難くなり、スポーツや運動に長時間耐えられる信頼性の高いサポータとなると記載されている。この先行技術は熱で融着する低融点成分のみからなる縫合糸の繊維が糊となって付着することで布構造を崩さずに融着させる工夫である。従って使用する縫合糸の繊維自体は熱によって溶かされ、繊維形状を維持しない。つまり特許文献1に記載の先行技術の縫合糸は融着のみを行い、縫合糸自体は形状も強度も維持できない。
特開2011−136091号公報(特許文献2)には、複数本の生体親和性材料からなる縫合糸を備え、外方格子が、その長手方向に間隔を開けた位置に置いて互いに部分的に接合されていることにより2つの接合部を形成している骨移植縫合具が開示されている。この骨移植縫合具での熱融着性繊維の使用においても、熱で融着する低融点成分のみからなる糸が糊となって付着することで布構造を崩さない工夫である。従って使用する繊維は熱によって溶かされ、縫合糸の繊維は形状も強度も維持しない。
これらの先行技術では、縫合糸の繊維自体が溶融され糊として活用されることから、縫合部は熱融着され繊維は消失する。ところが生体内では縫合糸に張力が拍動毎に繰り返しかかることが既に知られており、拍動ごとの張力を受けるに十分な強度を患者の生涯にわたって保持することが縫合糸には要求されている。つまり生体内の植え込みに使用される医療用具では縫合糸には丈夫さとその強度維持と縫い目やむすび目の緩み阻止の両方が要求される。その理由から、繊維が消失する縫合糸は医療用具製造の場では使用できない。
特開平6−7387号公報(特許文献3)には、端部が解れ難い布帛製人工血管、すなわち、部分的に融着用繊維を編み込んだり、織り込んだり、組み込んだり或いは絡め込んだ管状の布帛を、加熱して融着用繊維を融解して繊維同士を融着さて、解れ難くした人工血管が記載されている。そして、融着用繊維として、人工血管を構成する通常のポリエステル系繊維よりも融点が低いポリエステル共重合体の繊維が例示され、更に、ポリオレフィン系繊維を使用したいわゆるポリエステル/ポリオレフィンの芯鞘型複合繊維、ポリエステル/ポリオレフィンのサイドバイサイド型複合繊維が挙げられている。これは、融着用繊維を布帛に混入し、その後加熱する融着処理して、布帛の解れを防ぐものである。
熱融着繊維の応用に関しWO2006/088163号公報(特許文献4)には前記人工血管に使用したと同じ芯鞘構造の繊維をシートベルトに織り込むことで型崩れしにくい技術が報告されており、特開2000−80550号公報(特許文献5)には不織布に混在させる技術が紹介され、特開平10−53926号公報(特許文献6)には繊維の軸としてコアヤーンへの応用が記載されているが、それらの技術は医療用具製造に耐える丈夫な縫合糸への転用が難しい。以上の先行技術から、熱融着によるほつれ防止の工夫は見ることはできるが、縫合糸としての十分な強度と形状を維持しつつ、縫合部の緩みを阻止する工夫は見出せない。
特開2010−70868号公報 特開2011−136091号公報 特開平6−7387号公報 WO2006/088163号公報 特開2000−80550号公報 特開平10−53926号公報
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、縫合部を有する医療用具の製造に用いる縫合糸について、縫合工程が安全確実に行え、繊維形状と強度とを維持しながら嵩張ることなく緩むことのない縫い目、結び目を得ることのできる縫合糸を提供すること、またこの縫合糸の使用方法、及びこの縫合糸で縫合した縫着部を有する医療用具を提供することを目的する。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、融点差が30℃以上の高融点成分と低融点成分からなる2成分かなる縫合糸が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明で使用する縫合糸は、融点差30℃以上の高融点成分と低融点成分の2成分からなる医療用具縫着用縫合糸であって、前記低融点成分が、長さ方向全体にわたって、糸表面に露出していることを特徴とする医療用具縫着用縫合糸である。この縫合糸は、高融点成分フィラメントと低融点成分フィラメントとを組み合わせたマルチフィラメント糸が好ましい。
また、この縫合糸は、高融点成分と低融点成分との複合フィラメントであって、該複合フィラメントは並列(サイド・バイ・サイド)型、海島型、分割型、芯鞘型からなる群から選ばれたものが好ましい。また、この縫合糸は、低融点成分で被覆及び/又は含浸された高融点成分からなる糸が好ましい。また、この縫合糸は熱収縮性を有するのが好ましい。本発明に係る縫合糸には、針が取り付けられている。この針の取り付けは、尾部が筒状の針の筒状部に、前記の縫合糸の一端を挿入して加締めて固定する。
また本発明は、布帛製もしくは膜製の医療材料を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合した後、高融点成分を融解させることなく低融点成分が融解可能となる温度で加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法である。また、本発明は、予め前記の医療用具縫着用縫合糸を組み込ませた布帛製もしくは膜製の医療材料を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、その後、高融点成分は融解されずに低融点成分が融着可能となる温度にまで加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法である。また、本発明は、布帛製もしくは膜製の医療材料と、該医療材料とは異なる医療材料とを、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合した後、高融点成分は融解されずに低融点成分が融解可能となる温度にまで加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法である。
また、本発明は、前記した医療用具縫合部融着固定法で融着固定した縫合部位を有する医療用具である。すなわち、本発明は、ポリエステル繊維製布帛とニチノール線材とを前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を前記の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるステントグラフトである。また、本発明は、前記の医療用具縫着用縫合糸を組み込んだポリエステル繊維製布帛に、ニチノール線材を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を前記の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるステントグラフトである。
また、本発明は、ポリエステル繊維製人工血管に分岐部及び/又は側枝を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を前記の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるポリエステル繊維製人工血管である。また、本発明は、ポリエステル繊維製人工血管に、前記の医療用具縫着用縫合糸を吻合予定部に組み込んだ分岐部及び/又は側枝を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を前記の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるポリエステル繊維製人工血管である。また、本発明は、人工心臓弁の台座部に、ポリエステル繊維布を、前記の医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を前記の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなる人工心臓弁である。
本発明に係る医療用具縫着用縫合糸は、融点差が少なくとも30℃以上の高融点成分と低融点成分とを含有する2成分からなり、低融点成分が長さ方向全体にわたって糸表面に露出しているので、この縫合糸で縫合した後、加熱処理して、高融点成分を融解させることなく低融点成分のみを融解させることで、縫い目や結び目を融着固定し、これらの緩みを防止することができる。また、融着後も、高融点成分は繊維形状を維持し、強度を維持しているので、縫い目や結び目の強度を維持することができる。また、本発明の縫合糸が熱収縮性を有すると、加熱処理で結び目がより締まりかつ熱融着も強固となる。
医療用具製造工程において、本発明の縫合糸を使用して、連続縫合や結節縫合で縫合した後に、縫合糸の高融点成分を融解させることなく低融点成分のみを融解させることにより、縫合部の縫い目や結び目を熱融着によって固定して、緩み防止効果を発揮させることで、安全な医療用具が製造できる。具体的には、人工心臓弁では台座部分のメッシュが外れる危惧がなくなり、人工血管では側枝の縫着は確実となり、ステントグラフトでは拡張部材金属線材の固定が強固となり、シース壁内面の過剰の擦れも生じさせず、従って、ほどける危惧がなく、結び目部分がかさばらず、細いシースへの挿入性が優れる。また、本発明の針が取り付けられた縫合糸は、取り扱い性が優れ、針穴が広がる恐れもなく、ステントグラフトや人工血管の分岐部の縫着では針穴から出血を防止し、拍動によっても緩むことのない確実な縫着が得られる。
図1は、従来の一般的なマルチフィラメント縫合糸の一例を示す斜視図。
図2は、本発明の医療用具縫着用縫合糸の一例で、マルチフィラメント糸の例を示す斜視図。
図3は、本発明の医療用具縫着用縫合糸の一例で、高融点成分からなる糸に、低融点成分を被覆含浸させた糸の例を示す斜視図。
図4〜図7は、本発明の医療用具縫着用縫合糸に用いる複合フィラメントの斜視図。
図8は、本発明の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸の一例を示す正面図。
図9は、縫合糸の結び目の状態を示す斜視図。
図10は、縫合糸の結び目が緩み始めた状態を示す斜視図。
図11は、本発明の医療用具縫着用縫合糸の結び目の融着固定状態を示す斜視図。
図12は、低融点成分を被覆含浸させた、高融点成分からなる糸同士が交わるところを示す模式図。
図13は、図12の糸同士が交点で融着した状態を示す模式図。
図14は、高融点成分フィラメントと低融点成分フィラメントとからマルチフィラメント糸同士が交わるところを示す模式図。
図15は、図14のマルチフィラメント糸同士が交点で融着した状態を示す模式図。
図16は、芯鞘型複合フィラメンで構成された本発明の医療用具縫着用縫合糸の一例の斜視図。
図17は、図16に示した縫合糸を、低融点成分が溶け、高融点成分は溶けない温度で加熱した後の状態を示す斜視図。
図18は、図16に示した縫合糸同士が交わるところを示す模式図。
図19は、図18に示した縫合糸同士の交点が融着した状態を示す模式図。
図20は、図16に示した縫合糸と通常のマルチフィラメント糸の交点の模式図。
図21は、図20に示した交点が融着した状態を示す模式図。
図22は、筒状の布帛に拡張部材の金属ステントを縫合したステントグラフトのイメージ図。
図23は、図22の縫合部を従来法で逢着したステントグラフトのイメージ図。
図24は、図22の縫合部を本発明方法で逢着したステントグラフトのイメージ図。
図25は、筒状の布帛52に拡張部材の金属ステント53を縫着固定する箇所の斜視図。
図26は、筒状の布帛52に金属ステント53を連続縫合で縫着固定する箇所の斜視図。
図27は、本発明の医療用具縫着用縫合糸61を予め組み込んだステントグラフト布帛52に、金属ステント53を連続縫合で縫着固定する箇所の斜視図。
図28は、本発明の医療用具縫着用縫合糸61を予め組み込んだステントグラフト布帛52に、金属ステント53を本発明方法で逢着したステントグラフトのイメージ図。
図29は、ポリエステル布製人工血管と側枝を示す斜視図。
図30は、ポリエステル布製人工血管に側枝を従来法で縫合した斜視図。
図31は、ポリエステル布製人工血管に側枝を本発明方法で縫着するときの斜視図。
図32は、ポリエステル布製人工血管に側枝を本発明方法で縫合した斜視図。
本発明は、融点差30℃以上の高融点成分と低融点成分の2成分からなり、該低融点成分が、長さ方向全体にわたって、糸表面に露出している医療用具縫着用縫合糸である。この縫合糸を用いて縫合した後、加熱処理することによって、縫い目や結び目の縫合糸の低融点成分が融解し、縫い目部分や結び目部分が融着固定されて一体化する。その結果、縫い目や結び目が緩むのを阻止すると同時に、一方の高融点繊維は融解せずに繊維状を維持して残ることで、縫合形状や結び目の状態を保ち、力学的な強度の維持を得ることができる。
本発明の医療用具縫着用縫合糸では、上記のように、該縫合糸で縫合した後に、加熱処理して低融点成分を融解させて、縫い目や結び目における該縫合糸同士、或いは該縫合糸と近接する他の糸とを融着固定させるので、該縫合糸のどの部分でもかかる機能が発揮されるように、該縫合糸の長さ方向全体にわたって、すなわち該縫合糸の全長にわたって、糸表面に低融点成分を露出させる。要するに、縫合糸全体でみれば、低融点成分が長さ方向に連続して糸表面に露出するように、低融点成分を配置させる。そして、この低融点成分の露出部分が多いほど、融着を円滑に行いやすいが、縫合糸の横断面についてみたとき、低融点成分を断面の全表面に露出するように配置していてもよいし、低融点成分が横断面の表面の一部を占めるように配置してもよい。低融点成分の露出部分の割合は、縫合糸の全表面の5〜100%、好ましくは、10〜100%である。
本発明に係る医療用具縫着用縫合糸を構成する高融点成分と低融点成分は、一般的に医療材料に使用される生体内における安定性、生体適合性に優れる素材であれば如何なる素材でも適応可能である。ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンなどが好ましい。これら高分子物質の場合には、融点差が30℃以上の別種の高分子物質を選び組み合わせて使用してもよいし、また共重合成分を変えて融点差30℃以上にした同種の高分子物質を選び組み合わせて使用してもよい。
本発明の医療用具縫着用縫合糸の製造方法について説明する。その第一の方法は、まず高融点成分からなるフィラメントを準備し、これとは別に融点差が30℃以上離れた低融点成分からなるフィラメントを準備し、これら2種類のフィラメントを組み合わせて縫合糸にする手法である。この2種類のフィラメントの組み合わせ方は、組紐構造で糸にする方法、編構造で糸にする方法、撚り構造で糸にする方法が好ましく、具体的には、一般的な撚り糸や、経編、横編、三軸編、袋編などで糸にすることができる。どのような手法でフィラメントを組み合わせてもかまわないが、縫合糸の長さ方向全体にわたって、低融点成分を縫合糸表面に露出させ、融着効果をよくさせる。一方の高融点成分は融解されず、縫合糸の形状と強度を維持する。
第二の方法は、高融点成分からなる糸を準備し、この糸を融点差が30℃以上離れた低融点成分で被覆する手法である。高融点成分は、縫合糸として十分に丈夫で取扱い性に優れていれば、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。マルチフィラメントの場合は被覆の工程で低融点成分は高融点成分の繊維間隙に入り込み、表面のみならず、内部にまで浸透し、含浸の程度によっては全体としてモノフィラメント化し、縫合糸にコシが出て縫合糸として使用しやすい程度の剛軟度が得られる。浸透の程度が少なければコシが弱くなり柔軟となる。浸透の度合いは縫合糸の太さで調整が可能である。いずれにしても被覆した低融点成分が融着に効果を発揮する。そして高融点成分は融解されず、縫合糸の形状と強度を維持する。低融点成分を被覆させる方法は、該成分を溶剤に溶解して液状でコートするか、低融点成分を熱溶融した状態でナイフコーターやグラビアコーターなどを用いてコートする方法がある。内部まで浸透させたいときは液状のコートもしくは含浸が好ましい。しかし用いる溶剤に依っては高融点成分の特性を損なう恐れがあるので、このような場合は溶融コートが望ましい。
第三の方法は、高融点成分と低融点成分を1本のフィラメントに持たせた2成分複合フィラメント、すなわち高融点成分と低融点成分との複合フィラメントを、縫合糸として使用可能な太さと強度を持たせたマルチフィラメントにして用いる手法である。複合フィラメントの断面形状型は、はり合わせ型(サイド・バイ・サイド型)、海島型、分割型、芯鞘型などであり、WO2006/088163号公報(特許文献4)に記載の形状の繊維を用いることも可能である。太いモノフィラメントとしての使用も可能である。複合フィラメントを用いた場合は、低融点成分の一部は縫合糸表面の一部を占め融着に効果を発揮せしめるようにする。例えば、芯鞘型や海島型の例では、芯や島成分に高融点成分を、鞘や海成分に低融点成分を用いる。並列型や分割型ではフィラメント表面が高融点成分と低融点成分とで交互に占められる状態となり、低融点成分の表面露出度が落ち、融着性能が不十分な場合が生じる。この場合は低融点成分の割合を増やすことも考慮する必要がある。複合フィラメントを用いる利点の一つは、医療材として毒性や生体内での劣化が懸念される強度維持用の高融点成分も使用可能にすることが出来る。即ち、芯鞘型や海島型の芯や島にかかる高融点成分を用い、鞘や海に生体への毒性や劣化の少ない低融点成分を用いることにより、高融点成分を低融点成分が完全に覆って生体との直接的接触を防ぐことが出来る。
本発明でいう高融点及び低融点とは相対的意味合いであって、両者の融点の差が少なくとも30℃以上あるものをさす。しかし、実際的観点からは、高融点成分の融解温度が220℃以上、好ましくは250℃以上であることが好ましい。低融点成分では120℃〜220℃が好ましく、更には170℃〜210℃が好ましいが、必ずしもこれにとらわれるものでない。具体的な高融点成分としては、医療材料に使用されるポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンなどが好ましいが、それらに限らず、生体内における安定性、生体適合性に優れる素材であれば如何なる素材でも本発明は適応可能である。低融点成分は、原則的には上記条件にあった公知の低融点成分が使用可能であるが、この中でもポリエステル共重合体、特にアジピン酸、セバチン酸、イソフタル酸、ポリエーテルグリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等を共重合成分に用いたポリエステル共重合体、ポリオレフィン及びその共重合体などがあげられる。
本発明の縫合糸は、繊度30〜3000デシテックス(dtex)、フィラメント数1〜500のモノフィラメント又はマルチフィラメントが好ましいが、縫合糸であるので現実的には日本薬事法に定める規格では6-0号から4号程度の太さが使い勝手が良く、その太さは53〜5300dtex程度の太さ、抗張力強度は2〜50ニュートンの範囲が好ましい。それらは使用勝手の良いモノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもかまわない。縫合糸のコシの強さに関しては、一般的に使い勝手という表現で示されるが、カンチレバー方式を用いるとコシの強さを数値で表現可能である。本発明での縫合糸のコシの強さは、縫合糸の太さによっても異なるが、一般的にはカンチレバー方式で3〜15cmの範囲が好ましく、更には4〜10cmの範囲が好ましい。
本発明では、本発明の縫合糸を用いて縫合した医療用具、例えば人工血管や心臓弁、ステントグラフとなどを、その後、高融点成分の特性を損なわず、かつ低融点成分が融解する温度で熱処理するが、その温度と時間などの加熱条件は、低融点成分がほぼ完全に融解し相互に一体化する状態から部分的に接着している状態など目的によって選択可能で、試行錯誤で最適な条件を決め得る。処理する装置は一般的な熱風乾燥機、ヒートブラスター、感熱滅菌器、など適当に加熱できるものなら何でもよい。また、本発明の更なる好まし態様は縫合糸に熱収縮性をもたせることである。この縫合糸で結び目を形成した後に熱収縮させることで、結び目がより締まりかつ熱融着も強固となる。この目的としての熱収縮率は5%以上好ましくは10%以上がよい。かかる収縮率を有する縫合糸を得るには、紡糸時に低温で延伸したフィラメントを使用するか、共重合したポリマーからなるフィラメントを用いるなどが有効である。
従来技術では、縫合部を有する医療用具の製造工程で用いる縫合糸について、縫い目や結び目の緩みを防止する工夫がほどこされていなかった。本発明では、医療用具、特に繰り返し張力がかかり続ける循環器系の医療用具において、その製造工程で使用される縫合糸として、あくまでも糸にかかる張力を受けても切れることなく強度と形状を維持し、それでいて縫い目や結び目部分の緩みを阻止することを重視して、上述の縫合糸に熱融着性を付与する技術を導入した。なお、本発明における布帛製の医療材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維の編織物、不織布などである。膜製の医療材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレートのフィルム、シートなどである。図を用いて、本発明を更に詳しく説明する。
図1は、従来の従来の縫合糸の一例を示したものである。1はマルチフィラメント縫合糸を構成する繊維束を示し、2はその断面を示す。ナイロンやポリプロピレン繊維のモノフィラメント縫合糸以外は、一般的縫合糸はこのような編構造を持っている。これに対し、図2は、本発明のマルチフィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸の一例である。3は高融点成分からなる丈夫なマルチフィラメントを示し、5はその断面であり、4は低融点成分からなるマルチフィラメントを示し、6はその断面である。高融点成分からなるマルチフィラメント3と低融点成分からなるマルチフィラメント4とが編みこまれて一本の縫合糸を形成している。そして、低融点成分からなるマルチフィラメント4は2束使用され、この2束が交互に糸表面に露出するので、この低融点成分からなるマルチフィラメント4は長さ方向全体にわたって糸の表面に露出している。この縫合糸の断面をみると、低融点成分4を、糸の断面における表面の一部分を占めるように配置している。
図3は、本発明のマルチフィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸の別の一例であり、7は、高融点成分からなる丈夫なマルチフィラメントで、9はその断面である。8は、低融点成分で、マルチフィラメント全体を覆っている。10はその断面である。低融点成分8は、高融点成分マルチフィラメントの表面のみならず、個々のフィラメント間隙にまで含浸している。低融点成分8は、長さ方向全体にわたって糸の表面に露出している。また、この縫合糸の断面をみると、低融点成分8が、糸の断面における全表面に露出するように配置されている。
図4は、高融点成分と低融点成分からなる分割型の複合フィラメントの一例を示す。11は繊維断面である。この繊維は切断面がミカンの輪切り状態の如き形状を持つ。12は高融点成分であり、13は低融点成分である。加熱することで12の三角形様の断面をもつ高融点成分の繊維が縫合糸の強度と形状を維持し、13の低融点成分は溶解することによって近接する他の繊維と融着する。図5は、高融点成分と低融点成分からなる海島型の複合フィラメントの一例を示す。14はその断面で、海の中に多数の島があるが如き形状を持つ。島部分15は高融点成分であり、海部分16は低融点成分である。加熱することで15の島部分に相当する高融点成分の繊維が残り、16に示す海部分に相当する低融点成分が溶解して近接する他の繊維と融着する。
図6は、高融点成分と低融点成分からなる並列型の複合フィラメントの一例を示す。17はその断面で、2つの半円状の分割繊維が背中合わせになった如き形状を持つ。18は高融点成分であり、19は低融点成分である。加熱することで18に示す半分の繊維である高融点成分が残り、19に示すもう一つの半円状部分に相当する低融点成分の溶解によって近接する他の繊維と融着する。図7は、高融点成分と低融点成分からなる芯鞘型の複合フィラメントの一例を示す。20にその断面で、芯軸と鞘が合わさった如き形状を持つ。21は高融点成分であり、22は低融点成分である。加熱することで21の芯軸部分に相当する高融点成分が残り、22に示す鞘部分に相当する低融点成分の溶解によって近接する他の繊維と融着する。
図2〜7に示すごとく、本発明の医療用具縫着用縫合糸は、高融点と低融点の2成分からなる。図4〜7に示す如く複合フィラメントを、モノフィラメント或はマルチフィラメントの形態で縫合糸として使用することが可能である。また、図2に示す如く高融点成分と低融点成分からなるマルチフィラメントで編みや撚りの技術を用いて1本の縫合糸に仕上げてもよいし、更には図3に示す如く、高融点成分からなるマルチフィラメント糸を低融点成分で被覆及び/又は含浸させることで、糸全体として2成分となす形状を取ることも可能である。これらのいずれの形態をとるにしても、高融点成分は丈夫であり、縫合糸としての強度を持ち、更には周囲との接着効率を上げるために該低融点成分が該縫合糸表面の少なくとも一部を占めることが必須である。
図8は、針が取り付けられた本発明の医療用具縫着用縫合糸である。23は金属製の針、24は医療用具縫着用縫合糸である。本発明の医療用具縫着用縫合糸のみでも使用可能であるが、縫合を行う際には針が取り付けられていることが利便性を増すことから本発明では図8に示すように針付き縫合糸の形状を取ることも推奨する。この形状を持たせることによって縫着作業が楽になり針が通過した後の針穴を最小限のサイズに抑えることが可能となる。この針の取り付けは、尾部が筒状である針23を用い、この尾部の筒状部に縫合糸24の一端を挿入して加締める方法で行える。
図9は、縫合糸で形成した結び目の斜視図である。26に示す縫合糸と27に示す縫合糸とが糸結びされ結び目25を形成している。図10は、図9に示した結び目がほつれかけている状態で、28はほつれかけた結び目部分である。29に示す縫合糸と30に示す縫合糸とからなる結び目が緩むと、ほつれて縫着機能が発揮できなくなる。
図11は、本発明の医療用具縫着用縫合糸を用いて図9に示した結び目を形成させ、その後に高融点成分は融解されずに低融点成分が融解される温度まで高めて熱処理を行った結果、低融点成分によって融着された状態の結び目を示す。図11に見るように、32に示す縫合糸と33に示す縫合糸とで形成された結び目部分31は、低融点成分の融解によって一体化され、また、このとき、縫合糸の切断端は表面張力によって近接する糸に接着する。このような状態で温度が下がると、結び目部分は熱融着によって強固に接着されて緩まなくなる。即ち、図9に示すごとく縫合糸を糸結びして結び目を形成した場合、図10に示すような結び目部分の緩みが危惧されるが、本発明によれば、縫合糸を構成する低融点部分のみが融解し、高融点部分はあくまでも糸の形状と強度とを維持することで、縫合糸としての機能を維持し、結び目部分の緩みを阻止できる。
図12は、図3に示した医療用具縫着用縫合糸同士の交点の断面を示す。34は、マルチフィラメント糸が低融点成分によって被覆された形態の縫合糸を示す。35は低融点成分樹脂を示し、36は高融点成分フィラメントを示す。断面は、一本一本の高融点成分フィラメントがそれぞれ低融点成分樹脂に被覆されている状態を示す。低融点樹脂による被覆はフィラメント間隙をすべて占める必要はなく、マルチフィラメント糸全体の表面がおおわれると本発明の効果は発揮される。
図13は、図12の低融点成分樹脂で被覆したマルチフィラメントを、低融点成分が融解し、高融点成分は融解しない温度にまで加熱した後の状態を模式図で示す。37は融着状態の断面部分を示す。35は低融点成分であり、36は高融点成分を示す。38は低融点成分が融解した後に温度を下げて固化させた状態であって、2本のマルチフィラメントを融着させている。この状態になっても内部には高融点成分35があって、低融点成分も付着したままであることから縫合糸としての強度は弱体化しない。
図14は、図2に示した医療用具縫着用縫合糸同士の交点の断面を示す。39はマルチフィラメント中の低融点成分フィラメントを示す。40は高融点成分からなるフィラメントを示す。断面にはそれらが混在している。図15は、図14に示した交点を、低融点成分が溶け高融点成分は溶けない温度にまで加熱した後の状態を模式図で示す。41は融着状態の断面部分を示す。42は低融点成分であり、40は高融点成分を示す。42は低融点成分が融解した後に温度を下げて固化させた状態であって、2本のマルチフィラメントを融着させている。この状態になっても内部には高融点成分40があって、低融点成分も付着したままであることから縫合糸としての強度は弱体化しない。
図16は、高融点成分と低融点成分との複合フィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸の一例の断面を示す。ここでは、並列型(サイド・バイ・サイド型)、海島型、分割型、芯鞘型などの複合フィラメントの代表として、図7に示した芯鞘型の複合フィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸を例に用いて説明する。図16ではマルチフィラメント状態の縫合糸を示すが、太いモノフィラメントでも本発明は効果を発揮する。44がマルチフィラメント部分を示す。一本一本がそれぞれ芯軸とカバーが合わさった如き形状を持つ。その内部の芯軸部分45は高融点成分からなり、その外周の鞘部分46は低融点成分からなる。
図17は、図16に示した芯鞘型の複合フィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸を、低融点成分が溶け、高融点成分は溶けない温度にまで加熱した後の状態を模式図で示す。47はその断面部分を示す。49は低融点成分が溶融した後に温度を下げて固化させた状態の低融点成分であって、全体としてはモノフィラメント状態48となるが、内部には芯軸部分である高融点成分45が残り、低融点成分も付着したままであることから縫合糸としての強度は弱体化しない。
図18は、図16に示した芯鞘型複合フィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸44が2本交わったところの断面図を示す模式図である。それぞれに高融点成分の芯軸部分45と低融点成分の鞘部分46を持つ。図19は、図18に示した医療用具縫着用縫合糸同士の交わったところを、低融点成分が融解し、高融点成分は融解しない温度まで加熱した後の断面の模式図を示す。高融点成分の芯軸部分を低融点成分の鞘部分で被覆した形状を示していた複合糸は、高融点成分45を内部に残し、周囲を低融点成分48が融解しあって、高融点成分45を低融点成分48が覆った一体化状態となり、モノフィラメント化している。この現象により、縫合糸が交わった箇所を加熱することで、縫合糸を結び合わせなくとも、クロスさせるだけで確実に融合一体化できる。勿論、結び合わせれば、結び目部分の複合糸が溶融し一体化して、強固な結合が得られる。
図20は、図16に示した芯鞘型複合フィラメントからなる医療用具縫着用縫合糸44と複合糸ではない通常のマルチフィラメント49との交点を示す。加熱前であることから医療用具縫着用縫合糸44は芯軸と鞘部分が合わさった如き形状を維持している。45は高融点成分である芯軸部分を示し、46は低融点成分である鞘部分を示す。通常のマルチフィラメント49は熱融着性を持つ医療用具縫着用縫合糸44の芯軸部分45と同程度の高融点を有する。
図21に示すように、本発明の縫合糸と通常の低融点成分を持たないフィラメント49との交点においては、加熱することによって低融点成分46が融解し、一部は通常の低融点成分を持たないフィラメント49を取り込み、フィラメント間隙へも浸入した状態で固化することから、通常の低融点成分を持たないフィラメントとの交点でも、加熱後は交点が離れなくなる特性を発揮する。48は個々の鞘部分である低融点成分が溶融されて一体化し、モノフィラメント状となった状態を示す。また、48の内部には芯軸部分であった高融点成分45が残っている。48は鞘部分であった低融点成分が熱融解した後に固化した状態をしめす。複合糸同士が互いに溶け合い一体化すると同時に、融解した低融点成分の一部が、通常のマルチフィラメント49のフィラメント間隙に入り込んだ後に固化することから、通常のマルチフィラメント49の一部50は融解によってマルチフィラメント49間隙に入り込んだ低融点成分51によって複合糸48と一体化している。この現象により、熱融着性の複合糸とこれに接した通常の非熱融着性のマルチフィラメントとは、結び合わせなくても結合することが可能となる。勿論、複合糸と通常フィラメントとを結び合わせれば、結び目の複合糸の低融点成分51が融解して、マルチフィラメント49間隙に入り込んでより一体化する。
図22は、筒状の布帛52に拡張部材である金属ステント53を縫合したステントグラフトのイメージ図を示す。一般的には布帛はポリエステル繊維で作られ、拡張部材のステントはニチノール合金で作成されている。異質の両者を縫合糸で縫合することが一般的に行われている。図23は、筒状の布帛52に拡張部材である金属ステント53を縫合したステントグラフトのイメージ図で、従来技術による縫着方式を示す。54に示すとおり、布帛52に金属ステント53を、結節縫合(ひと針毎に結紮して結び目を形成する縫合)で縫着する。この手法は一箇所の結び目が解れても、他の部分に解れが及ばない特徴があるが、結び目部分が多くなることから全体に嵩張る欠点がある。これとは別に55に示すとおり、連続して縫着する手法も採択されている。この場合は結び目箇所が少ないので嵩張らず有利であるが、一部が解れると全体が緩む危険性がある。そのため、所々に結節縫合54を交えるのが一般的である。それでも狭いシース内にステントグラフトを小さく折りたたんで挿入するときに、結び目部のほつれや緩みが生じる危険性がある。
図24は、本発明技術により、筒状の布帛52に拡張部材である金属ステント53を縫合したステントグラフトのイメージ図を示す。布帛52に金属ステント53を縫着するが、図23の結節縫合54に類似したやり方であっても56に示すとおり、ひと針毎に結び目を形成する必要がない。この理由を図25で説明する。図25は、本発明技術により、筒状の布帛52に拡張部材である金属ステント53を結節縫合に類似した縫着方法で固定する箇所の模式図を示す。布帛52に金属ステント53を縫着するが、結節縫合に類似したやり方であっても図に示すとおり結び目を形成しなくても、縫合糸59が交わる箇所60が熱融着されるので緩まない。したがって、ひと針毎に結び目を形成する必要がない。本発明の熱融着性の縫合糸を使用すると、図25に示すごとく結び目を形成しなくとも、あるいは数箇所の結び目の形成のみでも、緩むことの無い縫着を得る。図25に示すごとく結節縫合のような操作でも効果を発揮するとともに、図26のごとく、連続縫合手法を採択しても、縫合糸の端において縫合糸をクロスさせると、クロス部位が融着し、外れなくなる効果を発揮する。
図27は、本発明技術により、筒状の布帛52に拡張部材である金属ステント53を連続縫合に類似した縫着方法で固定する箇所の他の例の模式図を示す。この筒状の布帛52には、本発明の縫合糸61が予め組み込まれている。この筒状の布帛52に金属ステント53を縫着するが、連続縫合に類似したやり方であっても、図に示すとおり結び目を形成しない。熱融着性を持つ本発明の縫合糸59が予め組み込まれた縫合糸61と交わると、その交わる箇所60が熱融着されるので、結び目を形成する必要がない。また、連続縫合様に布帛52を通過する熱融着性をもつ本発明の縫合糸は図21に示す如く通常の非熱融着性のマルチフィラメントとも熱融着されるので、糸が緩む恐れがない。
図28はステントグラフト布帛52の一部に、本発明の縫合糸61を予め組み込んだ場合に生じる金属ステント53の固定状態のステントグラフトを模式図で示す。布帛内部の本発明の複合糸61は金属ステントを縫合した縫合糸59,63と、その交点62で接し、熱融着されることから、図に示すように、布帛内部に、予め、融着性を有する本発明の縫合糸を組み込んでおくと、縫合に使用した本発明の縫合糸はあたかも布帛内部に根を張ったように強固な熱融着結合となる。そのため、連続縫合63であっても決して緩むことのない固定を得る。
実際にその効果がステントグラフト作成時にどのように発揮させるか、図28を用いて説明すると、本発明の熱融着性の縫合糸を布帛の経糸もしくは緯糸の一部に予め組み込んでおけば、拡張部材を縫合した後に加熱することで、縫合に用いた縫合糸と予め組み込んでいた縫合糸とが融着しあって拡張部材を強固に固定させ、緩みを生じなくする。しかも結び目部分がほとんど無いことから嵩張ることも無く、従ってステントグラフトを小さく折りたたむことが容易となり、細いシース内に挿入することも容易となって、シース内で移動させても拡張部材が布帛から外れたり、位置がずれたりするような不都合は生じ得ない。
図29はポリエステル布製人工血管64に側枝65を縫着するときの模式図である。人工血管および枝の人工血管には図に示すとおり、それぞれ熱セットによって蛇腹構造が付与されている。側枝を縫い合わす際には、人工血管の側壁に穴66を開け、側枝の血管の切断端のサイズに合わせて、両者を縫着する。図30はポリエステル布製人工血管64に側枝65を縫合したときの模式図で、人工血管の側壁に開けた穴66に側枝の血管の切断端を合わせて、両者を通常の縫合糸を用いて縫合68する。この手法はごく一般的に行われているが、人工血管の切断端がほつれたり、縫い目が緩むことのないように、きつくしっかりと縫合する。そのために、縫合部は厚く硬くなり、人工血管の柔軟性が失われる。しかし、柔軟性を出すところまで緩やかに縫合すれば、縫い目が緩む危険性が出る。その場合、吻合部の縫着は通常のポリエステル繊維を用いた縫合糸が使用され、縫合部が緩まぬように、入念な縫合が行われる。その結果、縫合部が硬くなり、人工血管の柔軟性は失われやすい。
図31は、本発明方法によって、ポリエステル布製人工血管64に側枝65を縫着するときの模式図である。側枝65を縫着する際に、人工血管の側壁に穴66の布周囲に、本発明の縫合糸69をあらかじめ縫いこんでおく。更には、側枝65の切断端で縫合予定箇所にも本発明の縫合糸70をあらかじめ縫い込んでおく。このような準備を行った後に、両者を本発明の縫合糸を用いて縫合する。図32は、本発明方法によって、ポリエステル布製人工血管64に枝65を縫合したときの模式図である。上記の準備をした後に、両者を本発明の縫合糸71を用いて縫合する。その後に低融点成分が溶融するまで温度を上昇させ、低融点成分を溶かすことによって、吻合部の通常繊維のみならず、本発明の縫合糸同士も融着しあうことで、すべての繊維が一体化する。その結果、縫合部の緩みが無くなる。その結果、従来技術で行っていたようながんじがらめの縫合吻合操作は不要となり、吻合部における人工血管の柔軟性が維持可能となる。
以下、本発明を、具体例を実施例として説明するが、これらの例に限らず本発明の縫合糸を使用して縫合することで、緩むことの無い縫い目、結び目を得るのが本発明の特徴であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
低融点成分として東レ株式会社製の融点180℃のケミット樹脂(登録商標:ポリエステル共重合体)を採択した。一方の高融点ポリエステル樹脂としてユニチカ株式会社製の融点260℃のNES-2040樹脂(ポリエチレンテレフタレート)を使用した。
まずケミット樹脂を用いて紡糸し、熱水中で3倍延伸し30dtexのフィラメントを得た。次にNES-2040樹脂を用いて紡糸し、熱水中で3倍延伸して10dtexのフィラメントを得た。次に、それぞれを10本ずつ束にして、前者を2束、後者を8束合わせて10束組で、図2に示すごとき編み込みで、編糸の縫合糸を作成した。縫合糸の表面には、長さ方向全体にわたって、低融点成分のケミット繊維が露出していた。作成した縫合糸のカンチレバー値は5cmであった。縫合糸の抗張力は5.8ニュートンであった。太さは薬事法による規格でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、5.8ニュートンであり、結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次に結び目を形成した縫合糸を190℃まで加熱したところ、低融点成分が融解し結び目部分は熱融着された。また、結び目以外の部位の低融点成分が融解し、高融点成分の糸は融解せずに残り、低融点成分が周囲にしっかりと融着していた。そこで抗張力を測定したところ、5.6ニュートンであり、低下の程度は無視できる範囲であった。低融点成分が解け落ちることなく、高融点成分に付着することから、繊維全体としての強度低下はほとんど見られなかった。このようにして結び目を形成し、融着させた縫合糸をBose振動負荷加速試験機を用いて繰り返し張力がかかる状況に置き、60倍の加速試験を行った。振動数は3,200万回に設定した。生体内では約1年間の拍動数に相当する。その結果、10本の縫合糸の結び目はすべて緩むことなく元の状態を維持した。
〔比較例1〕
高融点ポリエステル樹脂のみで縫合糸を作成した。前述のユニチカ製NES-2040樹脂を用いたフィラメントを用いて、10本ずつの束を作り、15束からなる編糸を作成した。作成した糸のカンチレバー値は4cmであり、抗張力は8.0ニュートンであり、太さは薬事法による企画でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、7.8ニュートンであり、結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次にこのようにして結び目を形成した縫合糸をBose振動負荷加速試験機を用いて繰り返し張力がかかる状況に置いた。振動数は3,200万回に設定した。生体内では約1年間の拍動数に相当する。その結果、10本の縫合糸の結び目はすべて緩んでいた。つまり熱融着性を持たない縫合糸では、結び目部分に繰り返し張力がかかると、結び目が緩むことを示した。
〔比較例2〕
実施例1における低融点成分である東レ株式会社製の融点180℃のケミット樹脂の代わりに融点235℃のケミット樹脂(登録商標:ポリエステル共重合体)を用いて実施例1と同様の縫合糸を作成した。高融点成分との温度差は25℃である。作成した縫合糸の抗張力は6.0ニュートンであった。太さは薬事法による分類でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、5.9ニュートンであり結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次に結び目を形成した縫合糸を235℃まで加熱したが、低融点成分の融解がほとんど見られなかった。そこで次に結紮した状態で240℃まで加熱したところ、低融点成分が融解し結び目部分は熱融着された。また、結び目以外の部位の低融点成分が融解し、高融点成分の糸は融解せずに残り、低融点成分が周囲にしっかりと融着していた。そこでこの状態で抗張力を測定したところ、4.6ニュートンであった。その結果、高温にすることで高融点成分の繊維にも何らかの影響が生じ、抗張力が低下していることが判明した。このようなことから、低融点成分は温度差30℃以上離れた低温であることが好ましい。
〔比較例3〕
実施例1に用いた融点260℃のポリエステル繊維と融点180℃の低融点ポリエステル繊維を用い、低融点成分が糸の軸になるような縫合糸を作成した。すなわち、それぞれの繊維を10本ずつ束にして、前者を2束、後者を8束合わせて、前者が軸になり、その外側を後者で取り巻くような編み方の糸である。このようにして、低融点成分が表面に出ない構造の縫合糸を作成した。作成した縫合糸のカンチレバー値は5cmであった。縫合糸の表面はすべて高融点成分であり、低融点成分は表面には出ていない。縫合糸の抗張力は5.8ニュートンであった。太さは薬事法による規格でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、5.8ニュートンであり結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次に結び目を形成した状態で200℃まで加熱したところ、繊維は硬くなったが、結び目部分は熱融着されなかった。高融点成分の糸は融解せずに残り内部に融解した低融点成分を抱え込む状態であった。そこでこの状態で抗張力を測定したところ、5.6ニュートンであり、低下の程度は無視できる範囲であった。このようにして結び目を形成し、熱融着した縫合糸をBose試験機にて繰り返し張力がかかる状況に置いた。振動数は3,200万回に設定した。生体内では約1年間の拍動数に相当する。その結果、10本の縫合糸の結び目はすべて緩んでいた。すなわち、低融点成分が少なくとも縫合糸の表面の一部に連続して露出していなければ、結び目部位での縫合糸交点の融着が効果的とならない。
高融点成分からなるマルチフィラメントを低融点成分樹脂で被覆する手法を実施する。まず高融点ポリエステル樹脂のみでフィラメントを作り、比較例1と同様の編糸のマルチフィラメントとした。次にこの編糸を低融点成分のセバチン酸を共重合成分にしたポリエチレンテレフタレート共重合体(融点130℃)の溶融樹脂を回転ロールを用いて付与し編糸周囲に低融点成分を被覆させた。顕微鏡観察ではマルチフィラメント糸表面はほぼ完全に低融点成分に覆われ、外見からはモノフィラメント様であったが、断面の観察では、低融点成分は糸の表面付近にあって、内部の高融点成分のフィラメント間隙に一部に染み込みがみられるのみであって、全体的にはマルチフィラメントの様相であった。作成した縫合糸のカンチレバー値は5cmであった。縫合糸の抗張力は8.1ニュートンであった。太さは薬事法による企画でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、8.0ニュートンであり、結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次に結び目を形成した状態で190℃まで加熱したところ、低融点成分が融解し結び目部分は熱融着された。また、結び目以外の部位の低融点成分が融解し、高融点成分の糸は融解せずに残り、低融点成分が周囲にしっかりと融着していた。そこでこの状態で抗張力を測定したところ、8.0ニュートンであり、低下の程度はなかった。低融点成分が解け落ちることなく、高融点成分に付着することから、全体としての強度低下が見られないと理解された。このようにして結び目を形成し熱融着した縫合糸をBose振動負荷加速試験機を用いて繰り返し張力がかかる状況に置いた。振動数は3,200万回に設定した。生体内では約1年間の拍動数に相当する。その結果、10本の縫合糸の結び目はすべて緩むことなく元の状態を維持した。
高融点成分NES-2040樹脂を芯成分に、低融点成分ケミット樹脂を鞘成分として、芯/鞘比80部/20部で芯鞘型複合フィラメントを紡糸し、熱水中で3倍延伸し30dtexの複合フィラメントを得た。作成したフィラメントを10本ずつ引きそろえて束にし、8束を用いて編糸の縫合糸を作成した。作成した縫合糸のカンチレバー値は4.5cmであった。縫合糸の表面はすべて低融点成分のケミット繊維が出ていた。縫合糸の抗張力は5.6ニュートンであった。太さは薬事法による企画でおおよそ4−0糸に相当した。作成した縫合糸に外科結紮法で結び目を作り抗張力を測定したところ、5.5ニュートンであり結び目形成による抗張力の低下は見られなかった。次に結び目を形成した縫合糸を180℃まで加熱したが、低融点成分の融解がほとんど見られなかった。次に、結び目を形成した状態で190℃まで加熱したところ、低融点成分が融解し結び目部分は熱融着された。また、結び目以外の部位の低融点成分が融解し、高融点成分の糸は融解せずに残り、低融点成分が周囲にしっかりと融着していた。そこでこの状態で抗張力を測定したところ、5.5ニュートンであり、全体としての強度低下は見られなかった。このようにして結び目を形成し熱融着した縫合糸をBose振動負荷加速試験機を用いて繰り返し張力がかかる状況に置いた。振動数は3,200万回に設定した。生体内では約1年間の拍動数に相当する。その結果、10本の縫合糸の結び目は、すべて緩むことなく元の状態を維持した。
実施例1で得た縫合糸に針を取り付けた。針の尾部は筒状であり、この尾部の筒状部に縫合糸の一端を挿入して加締めるやり方で固定した。針のサイズは長さ13mmで3/8の湾曲を持つ。このようにして作成した針付き縫合糸で市販のポリエステル繊維製人工血管InterVascular LPを縫合したところ、針孔は縫合糸で占められ、縫合糸の横には針孔のスペースが認識できなく、血液漏れの危惧がなかった。すなわち、この針付きの縫合糸であれば針孔を狭くすることに効果のあることが判った。
実施例2及び実施例3で得た縫合糸に、それぞれ実施例4と同様の針を取り付け、実施例4と同様にポリエステル繊維製人工血管InterVascular LPを縫合したところ、実施例4と同様に、針孔は縫合糸で占められ、縫合糸の横には針孔のスペースが認識できなく、血液漏れの危惧がなかった。
〔比較例5〕
比較例1で得た縫合糸を裁縫用の縫い針に通してポリエステル製人工血管InterVascular LPを縫合したところ、縫合糸が通過した穴には縫合糸があるにもかかわらず、縫合糸の横には針が通過した穴のスペースが認められ、血液漏れの危惧が予測された。
布製医療用材料に金属材料を縫着させて医療用具を製造する例である。1.2dtexのポリエステル繊維からなる市販の糸を用いて内径32mmの筒を平織で作成し、ステントグラフト用布帛とした。透水率は200mlであった。線径0.3mmのニチノール線材で6山を両端に持つZ型ステントを作成した。この作成したステントを、前記ステントグラフト用布帛に、実施例4で得た針付き縫合糸を用いて連続縫合で縫合し、次いで190℃で加熱したところ、縫合部で縫合糸は熱融着し、完全に縫合部分は固定された。次に機械的に揉む操作を10回行ったが、一か所も緩みやほつれの箇所はなかった。次に縫着後のステントグラフトを内径5mmの鞘(15Fシース)に挿入し引き出す操作を10回繰り返したが、縫合部の緩みは全く見られなかった。
〔比較例6〕
実施例で使用したステントグラフト用の布帛とZ型ステントを準備し、比較例5で使用した針に通した縫合糸で両者を縫着させた。縫着には連続縫合の手法を採択し、結び目部分はしっかりと外科結紮の手法を採用して結んだ。このようにして作成したステントグラフトに対して縫着後に機械的に揉む操作を10回行ったところ、三か所の結紮部分で緩みが見られた。次に縫着後のステントグラフトを内径5mmの鞘(15Fシース)に挿入し引き出す操作を10回繰り返したところ、縫合糸の結び目のすべての個所に緩みを認め、Z型ステントの6山のステントのうちで4山においてステントが布帛から外れていた。その結果、従来通りの縫合糸を用いた縫着手法では負荷をかけると結び目にゆるみが生じ、ステントが布帛から外れる危惧のあることが判明した。
1.2dtexのポリエステル繊維からなる市販の糸で内径32mmの筒を平織で作成した。この作成時に、経糸の一部に、10本に1本の割合に、実施例1で得た高融点成分繊維と低融点成分繊維とを2;1の比率で混在させた120dtexの糸を組み込み、内部に熱融着性繊維を持つ布帛製の筒を得た。次に、この布帛製の筒に、実施例で使用したステントを実施例4で得た針付き縫合糸で連続縫合手法にて縫合し、その後190℃に加熱することで縫合糸の熱融着を行った。その結果、縫合部はすべて熱融着され固定された。次に機械的に揉む操作を10回行ったが、一か所も緩みやほつれの箇所はなかった。次に縫着後のステントグラフトを内径5mmの鞘(15Fシース)に挿入し引き出す操作を10回繰り返したが、縫合部の緩みは全く見られなかった。このステントグラフトを走査型電子顕微鏡で観察したところ、縫合糸は布帛を構成する熱融着性を持たない繊維にも一部には融着しており、布帛内部にある熱融着性成分とは更にしっかりと熱融着され、縫合糸があたかも布帛内部に根を張ったような状態となっていた。そのため、どのような機械的な刺激を与えようとも、縫合部の緩み、更にはステントが外れるような危惧のないことが判明した。
市販のポリエステル繊維製人工血管InterVascular LPの内径30mmの側面に穴をあけ、その部に同じ人工血管の内径8mmの製品をT字型に縫合した。この時に実施例4で作成した針付き縫合糸を用いて連続縫合で縫合し、次いで190℃で加熱したところ、縫合部で縫合糸は熱融着し、完全に縫合部分は固定された。次に縫合部を機械的に揉む操作を10回行ったが、一か所も緩みやほつれの箇所はなかった。
〔比較例7〕
市販のポリエステル繊維製人工血管InterVascular LPの内径20mmの側面に穴をあけ、その部に同じ人工血管の内径8mmの製品をT字型に縫合した。縫着には比較例5で使用した針に通した縫合糸で両者を縫着させた。縫着には連続縫合の手法を採択し、結び目は外科結紮の手法でしっかりと結んで形成した。このようにして作成した枝付き人工血管の縫合部に対して機械的に揉む操作を10回行ったところ、二か所の結び目部分で緩みが見られた。その結果、従来通りの縫合糸を用いた縫着手法では負荷をかけると縫合部が緩む危惧のあることが判明した。
実施例の如く、内径30mmの人工血管の側面に穴をあけると同時に、あけた穴部分に実施例4で得た本発明の針付き縫合糸で穴を一周するように縫い付けを行った。次にその部に縫着予定の内径8mmの人工血管の断端部にも同様に実施例4で示した針付き縫合糸で穴を一周するように縫い付けを行った。次に、そのようにして準備した2つの人工血管を実施例4で示した針付き縫合糸で縫合し、その後190℃に加熱した。その結果、縫合部で縫合糸は熱融着し、完全に縫合部分は固定された。このようにして縫着された部位を走査型電子顕微鏡で観察したところ、縫合糸は布帛を構成する熱融着性を持たない通常繊維とも熱融着するとともに、布帛内部に予め縫い込んだ熱融着性縫合糸とは更にしっかりと熱融着され、縫合糸があたかも布帛内部に根を張ったような状態となっていた。そのため、どのような機械的な刺激を与えようとも、縫合部の緩みの危惧のないことが判明した。
心臓弁の台座部分のポリエステル繊維布を熱融着性縫合糸で縫着する例を示す。パイライトカーボン製の2葉弁人工心臓弁の台座部分に網目サイズ0.5mmのポリエステルメッシュを、実施例4で示した針付き縫合糸で縫合した。縫着には、連続縫合の手法を採択し、結び目部分は外科結紮の手法でしっかりと結んで形成した。次いで190℃に加熱した。その結果、結び目の縫合糸は熱融着され固定された。このようにして作成した心臓弁台座部分の縫合部に対して機械的に揉む操作を10回行ったが、緩みやほつれの箇所はなかった。
〔比較例8〕
パイライトカーボン製の2葉弁人工心臓弁の台座部分に、網目サイズ0.5mmのポリエステルメッシュを、比較例5で示した針付き縫合糸で縫合した。縫着には、連続縫合の手法を採択し、結び目部分は外科結紮の手法でしっかりと結んで形成した。このようにして作成した心臓弁台座部分の縫合部に対して機械的に揉む操作を10回行ったところ、二か所の結び目部分で緩みが見られた。その結果、従来通りの手法や縫合糸では負荷をかけると結び目が緩む危険性のあることが判明した。
海島複合繊維において、低融点成分のポリエチレン/ポリプロピレン/ポリブテンの共重合ポリオレフィン樹脂(融点145℃)を海に、高融点成分にポリエチレンテレフタレート(湯点260℃)を島に用い、島数16、海/島比率=25/75の繊維を得た。これを非接触型感熱延伸機で80℃で延伸して、75dtex−16フィラメント、熱収縮率9%の繊維を得た。この繊維を用い、実施例1と同様の編みたて縫合糸を得た。この縫合糸を用い実施例10と同様な実験を行なったところ、結び目部も均一に良く締まり機械的に揉んだ後のゆるみは全く見られなかった。
3、7、12、15、18、21、36、40、45、 高融点成分
4、8、13,16、19、22、35、39、46、 低融点成分
23 針、24 縫合糸、25、28、31 結び目、
52 筒状布帛、53 金属ステント、54、56 結節縫合部、55、57 連続縫合部
64 人工血管、65 人工血管側枝、66 穴、68 縫合部、69、70、71 縫合糸

Claims (14)

  1. 融点差30℃以上の高融点成分と低融点成分の2成分からなり、前記低融点成分が、長さ方向全体にわたって、糸表面に露出している医療用具縫着用縫合糸の一端を、尾部が筒状の針の筒状部に、挿入して加締めて固定したことを特徴とする、針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸。
  2. 医療用具縫着用縫合糸が、高融点成分フィラメントと低融点成分フィラメントとを組み合わせたマルチフィラメント糸である請求項1記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸。
  3. 医療用具縫着用縫合糸が、高融点成分と低融点成分との複合フィラメントからなる糸であって、該複合フィラメントは並列(サイド・バイ・サイド)型、海島型、分割型、芯鞘型からなる群から選ばれたものである請求項1記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸。
  4. 医療用具縫着用縫合糸が、低融点成分で被覆及び/又は含浸された高融点成分からなる糸である請求項1記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸。
  5. 医療用具縫着用縫合糸が熱収縮性を有する請求項1〜4のいずれかの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸。
  6. 布帛製もしくは膜製の医療材料を、請求項1〜のいずれかの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸で縫合した後、高融点成分を融解させることなく低融点成分が融解可能となる温度で加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法。
  7. 予め請求項1〜のいずれかの項に記載の縫合糸を組み込ませた布帛製もしくは膜製の医療材料を、請求項1〜のいずれかの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸で縫合し、その後、高融点成分は融解されずに低融点成分が融着可能となる温度にまで加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法。
  8. 布帛製もしくは膜製の医療材料と、該医療材料とは異なる医療材料とを、請求項1〜のいずれかの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸で縫合した後、高融点成分は融解されずに低融点成分が融解可能となる温度にまで加熱処理し、縫合部位を融着固定することを特徴とする医療用具縫合部融着固定法。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の医療用具縫合部融着固定方法で融着固定した縫合部位を有する医療用具。
  10. ポリエステル繊維製布帛とニチノール線材とを請求項1〜のいずれかの項に記載の縫合糸で縫合し、該縫合部位を請求項のいずれかの項に記載の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるステントグラフト。
  11. 請求項1〜のいずれかにの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸を組み込んだポリエステル繊維製布帛に、ニチノール線材を、請求項1〜のいずれかの項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を請求項のいずれかの項に記載の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるステントグラフト。
  12. ポリエステル繊維製人工血管に分岐部及び/又は側枝を、請求項1〜のいずれか項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫着糸で縫合し、該縫合部位を請求項のいずれかの項に記載の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるポリエステル繊維製人工血管。
  13. ポリエステル繊維製人工血管に、請求項1〜のいずれか項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸を吻合予定部に組み込んだ分岐部及び/又は側枝を、請求項1〜のいずれか項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸で縫合し、該縫合部位を請求項のいずれかの項に記載の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなるポリエステル繊維製人工血管。
  14. 人工心臓弁の台座部に、ポリエステル繊維布を、請求項1〜のいずれか項に記載の針を取り付けた医療用具縫着用縫合糸縫合糸で縫合し、該縫合部位を請求項のいずれかの項に記載の医療用具縫合部融着固定法で融着固定してなる人工心臓弁。
JP2012005322A 2012-01-13 2012-01-13 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具 Expired - Fee Related JP5912556B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012005322A JP5912556B2 (ja) 2012-01-13 2012-01-13 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012005322A JP5912556B2 (ja) 2012-01-13 2012-01-13 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2013144009A JP2013144009A (ja) 2013-07-25
JP2013144009A5 JP2013144009A5 (ja) 2015-02-26
JP5912556B2 true JP5912556B2 (ja) 2016-04-27

Family

ID=49040224

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012005322A Expired - Fee Related JP5912556B2 (ja) 2012-01-13 2012-01-13 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5912556B2 (ja)

Families Citing this family (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10314696B2 (en) 2015-04-09 2019-06-11 Boston Scientific Scimed, Inc. Prosthetic heart valves having fiber reinforced leaflets
JP6487783B2 (ja) * 2015-06-08 2019-03-20 日本毛織株式会社 人工血管用組紐
US10716671B2 (en) * 2015-07-02 2020-07-21 Boston Scientific Scimed, Inc. Prosthetic heart valve composed of composite fibers
US10413403B2 (en) * 2015-07-14 2019-09-17 Boston Scientific Scimed, Inc. Prosthetic heart valve including self-reinforced composite leaflets
EP3457989B1 (en) 2016-05-19 2021-09-29 Boston Scientific Scimed, Inc. Prosthetic valves, valve leaflets and related methods
JP7360944B2 (ja) * 2016-12-29 2023-10-13 ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド ポリマー繊維から形成された医療装置
EP3615097A1 (en) 2017-04-25 2020-03-04 Boston Scientific Scimed, Inc. Biocompatible polyisobutylene-fiber composite materials and methods
JP7097044B2 (ja) * 2017-06-12 2022-07-07 ユニチカ株式会社 防蟻用メッシュシート
JP7236730B2 (ja) * 2019-03-29 2023-03-10 ユニチカ株式会社 防蟻シート
US20220241064A1 (en) * 2019-06-19 2022-08-04 SB-Kawasumi Laboratories, Inc. Stent graft
WO2021065039A1 (ja) * 2019-09-30 2021-04-08 テルモ株式会社 人工血管、及び人工血管の製造方法
US20210154006A1 (en) * 2019-11-26 2021-05-27 Boston Scientific Limited Composite web-polymer heart valve
CN113367834B (zh) * 2020-03-10 2024-02-27 上海微创医疗器械(集团)有限公司 覆膜支架及其制备方法
CN114635208B (zh) * 2022-03-11 2023-04-21 罗莱生活科技股份有限公司 涤纶/海岛纤维非弹力包芯纱及其面料

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03244445A (ja) * 1990-02-22 1991-10-31 Matsutani Seisakusho Co Ltd 医療用縫合針
US6368348B1 (en) * 2000-05-15 2002-04-09 Shlomo Gabbay Annuloplasty prosthesis for supporting an annulus of a heart valve
JP4583881B2 (ja) * 2004-11-01 2010-11-17 テルモ株式会社 接合方法
WO2006053270A2 (en) * 2004-11-10 2006-05-18 Boston Scientific Limited Atraumatic stent with reduced deployment force, method for making the same and method and apparatus for deploying and positioning the stent
AU2007240867A1 (en) * 2006-04-18 2007-11-01 Tornier, Inc. Multicomponent fused suture loop and apparatus for making same
JP2013188235A (ja) * 2010-06-28 2013-09-26 Terumo Corp 人工弁

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013144009A (ja) 2013-07-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5912556B2 (ja) 医療用具縫着用縫合糸、その使用法及び該縫合糸を使用して縫着した医療用具
US11202702B2 (en) Artificial vascular graft and method for making same
JP5369187B2 (ja) 管状の移植可能なコード
EP0744162B1 (en) Textile surgical implants
JP4197842B2 (ja) 強化移植片
JP3390450B2 (ja) 自己拡張型管腔内ステントグラフト
US20120239145A1 (en) Strong porous trans-tendon repair device with suture tails
JP2013144009A5 (ja)
EP2739242B1 (en) Connective tissue repair pad
US20020052660A1 (en) Leak and tear resistant grafts
EP2739241B1 (en) Connective tissue repair
JPH06506369A (ja) 人工血管
JP2011517289A (ja) 移植可能な人工コード
EP4165239A1 (en) Stabilized fabric material for medical devices
US20210045868A1 (en) Stabilized fabric material for medical devices
US20140222038A1 (en) Connective tissue repair
JP6830433B2 (ja) ステントグラフト
WO2000078250A1 (en) Attachment tether for stent grafts
JP3090439B2 (ja) 円環状人工靱帯
US12011162B2 (en) Suture release constructs and methods of tissue fixation
JPH067387A (ja) 人工血管およびその製造方法
WO2021257149A2 (en) Suture device
JPH01107756A (ja) 医用補綴物

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150108

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150108

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20150223

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150223

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151027

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160303

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160401

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5912556

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees