JP5908771B2 - 医療用チューブ - Google Patents

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本発明は、軟質かつ薬剤定量性やポンプ適性、耐キンク性、耐鉗子性に優れ、さらに耐熱性を有し、可塑剤の溶出の恐れがなく焼却の際有毒なガスを発生されることのない医療用チューブに関する。
一般に医療用チューブには、軟質性、透明性、耐折り曲げ性(耐キンク性)に加えて、薬剤の吸着吸収が少なく定量的に輸送できる薬剤定量性や輸液 ポンプ回路に適する耐しごき性(形状回復性、耐摩耗性等)、さらには滅菌のためのガンマ線や電子線に対する耐放射線性に優れることが要求される。更に操作に耐えうる強度、適度の伸び弾性及び粘着性、いわゆるコシがあることが求められる。従来の医療用チューブは軟質塩ビ系材料を用い製造されることが多い。また、近年では医療用成形体のディスポーザブル化が進められてきており、バイオハザード防止のために使用後に焼却処理されることが多くなってきている。軟質塩ビを使用した医療用チューブは焼却時に塩素化合物をガスとして発生するため環境への負荷が考慮されてきており、軟質塩ビ製の医療用チューブは代替が検討されている。さらには、フタレート系等の可塑剤の溶出がない非軟質塩ビ系の医療用チューブに対する要求もある。
柔軟性に優れる医療用チューブとして、オレフィン系樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物及びスチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物からなる樹脂組成物からなるチューブ(特許文献1)や1、2ポリブタジエン樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添加物の樹脂組成物からなるチューブが提案されている(特許文献2)。このチューブは柔軟性に優れた成形体を与え、しかも焼却しても有毒ガスの発生を伴わない、可塑剤が実質的に含まれないという特徴を有している。しかしながら、かかる樹脂組成物を用いて得られる成形体は軟質塩ビに比べコスト的に不利でありディスポーザブル化には向かない。また輸液(チューブラー)ポンプに対する適性(耐しごき性)にも課題を有している。ポリブタジエン系の樹脂は、ポリマー鎖中に二重結合が残存している。またスチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添加物であっても、少量ながら二重結合が残留している。そのためこれら樹脂を用いる場合には、長期保存時のチューブ物性の変化や、チューブ成形加工時のゲル化、不溶化を防ぐため保存条件、加工条件が制約されたり、安定剤を添加したりしなければならず、さらに近年採用されることが多いガンマ線滅菌や電子線滅菌に対応させるためにも特殊な安定剤の添加が必要で、医療用チューブとしての安全性を必ずしも満足するものではなかった。
一方、高い耐熱性と耐高圧蒸気滅菌性を特徴とした、ポリプロピレンと水素化したスチレン−ブタジエンブロック共重合体またはスチレン−イソプレンブロック共重合体の樹脂組成物からなる医療用多層チューブが提案されている(特許文献3)。中心層(支持層)はポリプロピレン含量を下げ軟質化し、内層及び外層は耐熱性を付与させるためポリプロピレン含量を上げた構成を有する。中心層は軟質であるが、内層、外層は比較的固く、チューブ全体としての軟質性、フレキシブル性には改善の余地があると考えられる。これら公知文献から、医療用チューブにおいて、軟質性と耐キンク性、耐鉗子性、そして耐熱性の両立は困難な課題である。
一方、スチレン-エチレン共重合体またはスチレン-エチレン共重合体鎖を含むブロック共重合体(以下クロス共重合体と記載する)を用いた医療用チューブが提案されている(特許文献4〜6)。スチレン-エチレン共重合体やクロス共重合体は、柔軟性、透明性、薬剤の低吸着吸収性に加え、ポンプ回路に適する耐しごき性(形状回復性、耐摩耗性等)を有し、キンクが発生しにくく、主鎖の中に本質的に二重結合を有しないため科学的に安定で、滅菌のためのガンマ線や電子線に対する耐放射線性も高いという特徴がある。しかしながら、充分な柔軟性を有するクロス共重合体は耐熱性が十分ではなく、例えばエチレンオキサイド滅菌や長期保存の際にはチューブ同士のブロッキングが起こる懸念があり、さらにオートクレーブ滅菌は困難であった。
特開平4−159344号公報 特開平6−184360号公報 特開2001−001432号公報 特開2001−161813号公報 特開2001−316431号公報 WO99/45980公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、フタル酸エステル等の可塑剤の溶出がなく、非塩化ビニル樹脂材料であり、柔軟性、透明性、薬剤の低吸着吸収性、ポンプ回路適性、化学的安定性、さらには耐折り曲げ(キンク)性に優れ、各種滅菌に耐える耐熱性を有する医療用チューブを提供することである。
本発明は、特定のクロス共重合体からなる単層チューブ、またはクロス共重合体からなる支持層を含みその厚さはチューブの全層の50%以上を占める多層チューブで、かつ本チューブは成形後、エネルギー線(電子線)照射により架橋されていることを特徴とする医療用チューブである。
本発明の多層医療用チューブは、フタル酸エステル等の可塑剤の溶出がなく、非塩化ビニル樹脂材料であり、柔軟性、透明性、薬剤の低吸着吸収性、ポンプ回路適性、化学的安定性、さらには耐折り曲げ(キンク)性に優れ、充分な耐熱性を有する
本発明はクロス共重合体からなる単層チューブ、またはクロス共重合体からなる支持層を含みその厚さはチューブの全層の50%以上を占める多層チューブで、かつ本チューブは成形後、エネルギー線照射により架橋されていることを特徴とする医療用チューブである。
ここでクロス共重合体は、25℃における貯蔵弾性率が1MPa以上30MPa未満の範囲であり、かつ1mm厚さのシートで測定した全光線透過率が75%以上、好ましくは80%以上であり、さらに以下の(1)から(4)の条件をすべて満足するクロス共重合体であることを特徴とする医療用多層チューブである。
(1)配位重合工程とこれに続くアニオン重合工程からなる重合工程からなる製造方法により得られ、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行い、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレンユニット含量であるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成する。次にアニオン重合工程として、このエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することで得られる。
(2)配位重合工程で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量が3万以上20万以下、好ましくは3万以上15万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上4以下である。
(3)クロス共重合体の0℃〜150℃までに観測される結晶融解熱(ΔH)が25J/g以下である。
(4)クロス共重合体中に含まれるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の含量が70質量%以上95質量%以下の範囲にある。
用いられるクロス共重合体の25℃における貯蔵弾性率が1MPa未満の場合、チューブの力学的強度が不足し、チューブが外力あるいは自身の重さによりにより潰れ閉塞しやすくなる恐れがある。30MPa以上の場合はチューブ自体の軟質性が不足し、ハンドリング性が低下し、耐折り曲げ性が悪化してしまう可能性がある。1mm厚さのシートで測定した全光線透過率が上記未満では、チューブ内部の液面や泡の視認性が低下する可能性がある。
クロス共重合体とは上記のごとく、配位重合により得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体及び芳香族ビニル化合物モノマーの共存下でアニオン重合を行うことにより得られる共重合体であり、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体鎖(主鎖と記載される場合もある)と芳香族ビニル化合物重合体鎖(側鎖と記載される場合もある)を有する共重合体である。本クロス共重合体及びその製造方法は、その全体の記載をそれぞれ出典明示によりここに援用する、WO2000−37517、USP6559234、またはWO2007−139116に記載されている。
ここで芳香族ビニル化合物としては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。
ここでオレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンが挙げられる。本発明においてはオレフィンの範疇に環状オレフィンも含まれ、本環状オレフィンの例としては、ビニルシクロヘキサンやシクロペンテン、ノルボルネン等が挙げられる。好ましくは、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンすなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の混合物が用いられ、更に好ましくは、エチレンが用いられる。
用いられる芳香族ポリエンとは、10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し配位重合可能なモノマーであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がアニオン重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、o−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン及びm−ジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
本発明に最も好ましく用いられるクロス共重合体は、配位重合により得られるエチレン−芳香族ビニル化合物(以下代表としてスチレンと記載)−芳香族ポリエン(以下代表としてジビニルベンゼンと記載)共重合体及び芳香族ビニル化合物(以下代表としてスチレンと記載)モノマーの共存下でアニオン重合を行うことにより得られる共重合体であり、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖(主鎖と記載される場合もあり、軟質成分)とポリスチレン鎖(側鎖と記載される場合もあり、硬質成分)を有する共重合体である。本発明の25℃における貯蔵弾性率及び透明性に関する条件を満たすクロス共重合体は、条件(1)〜(4)を満たす必要がある。クロス共重合体に関する前記出典(公開特許公報)に記載されている情報を基に本条件を満たすクロス共重合体を製造することができる。特に本クロス共重合体の25℃における貯蔵弾性率は、その軟質成分(ソフトセグメント)であるエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖のスチレン含量、本軟質成分と硬質成分の含まれる比率、軟質成分鎖と硬質成分鎖を結合するジビニルベンゼン成分の含量、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖やポリスチレン鎖の分子量と前記ジビニルベンゼン含量により規定されるクロス共重合体全体の分子流動性(MFR値)という様々なパラメーターにより決定される。貯蔵弾性率は主に、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖のスチレン含量が高くなりエチレン鎖の結晶性が下がるほど、あるいは軟質成分であるエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖の含量が増加するほど低下する。以上から、目的の貯蔵弾性率のクロス共重合体を得ることや、目的に合わせたその調整を容易に行うことができる。
本発明の医療用チューブはクロス共重合体からなるシンプルな単層チューブが経済性の点で好ましい。しかし、様々な機能を付与、改善するために上記クロス共重合体層を支持層とし、これに加え、さらに内層及び/または外層を有することができる。本支持層は、チューブの全層の厚さの少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上を占め、その力学物性、医療用チューブとして必要な機能性(柔軟性、透明性、薬剤の低吸着吸収性、ポンプ回路適性、化学的安定性、耐キンク性)を決定する重要な層である。
本内層に用いられる樹脂は、好ましくはポリオレフィン、水素化スチレン-ジエンブロック共重合体、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、ウレタン、またはクロス共重合体から選ばれる樹脂であり、これらの樹脂組成物であってもよく、その25℃における貯蔵弾性率が30MPaより高く300MPa以下の範囲であり、かつ1mm厚さのシートで測定した全光線透過率が75%以上、好ましくは80%以上であることを特徴とする医療用多層チューブである。また、本内層は少なくともチューブの全層の厚さに対し1%以上50%未満、チューブ全体の軟質性の観点からはより薄いことが好ましく、好ましくはチューブの全層の厚さに対し1%以上30%未満、特に好ましくは1%以上10%未満である。である。本内層を設けることで、チューブ内面の自己粘着性を抑制し、折り曲げ時(キンク発生時)や鉗子などでクランプした場合の内壁同士の密着を低下させ、閉塞や流量低下を防ぐことが可能となる。さらに、この機能を向上させるために、内層の接液面にはシボ、すじ等任意の構造の凹凸をつけることが好ましい。
ここで、ポリオレフィンとは、エチレン系共重合体やポリプロピレン系共重合体、ポリブテン系共重合体が挙げられる。好ましくは、エチレン-αオレフィン共重合体が用いられる。各社から出されているポリオレフィンの物性表から、本発明に適する貯蔵弾性率(25℃)の樹脂を適宜選択して使用することができる。特にLLDPE等のエチレン-αオレフィン共重合体の場合、好ましくはその密度が0.87g/cm以上0.91g/cm以下である。医療用チューブに応用した例は特開2005−318949号公報、特許3251601号公報に記載されている。
ここで、水素化スチレン-ジエンブロック共重合体の好適な例としては、アニオン重合により得られるスチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体を水素化したもので、SEBS、SEPSとも記載される。ブロック構造は、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、スタ−ブロックあるいはテ−パ−ドブロック構造でもよい。ブロック共重合体は、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、3万以上25万以下が好ましい。このような樹脂を医療用チューブに応用した例は、たとえば特開2001−001432、特許公報4179644号に記載されている。シンジオタクチック1,2-ポリブタジエンの例としては特開2003−102827号公報、特開2005−253721号公報に記載されている。ウレタンの使用はたとえば特開05−084293号公報に記載されている。各社から出されているこれら樹脂の物性表から、本発明に適する貯蔵弾性率(25℃)の樹脂を適宜選択して使用することができる。クロス共重合体は上記と同じく、WO2000/37517、USP6559234、またはWO2007/139116に記載されているものを使用することができる。
内層に用いる樹脂としては、ポリオレフィン、特にエチレン-αオレフィン共重合体、水素化スチレン-ジエンブロック共重合体やクロス共重合体を用いることが好ましい。なぜならこれらの樹脂は支持層であるクロス共重合体との接着性が良好であるために、特に接着層を設ける必要がなく構成がシンプルで経済的に有利であるからである。
さらにクロス共重合体を内層に用いる場合、耐摩耗性が良好で輸液ポンプ適性が高く、薬品吸着性が低いことから最も好ましい。本クロス共重合体は少なくとも以下の(A)と(B)の条件を共に満足し、かつ(C)または(D)の条件の少なくともいずれか一方の条件を満たすことが好ましい。
(A)配位重合工程とこれに続くアニオン重合工程からなる重合工程からなる製造方法により得られ、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行い、芳香族ビニル化合物ユニット含量8モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレンユニット含量であるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成する。次にアニオン重合工程として、このエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することで得られる。
(B)配位重合工程で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量が3万以上20万以下、分子量分布((Mw/Mn)が1.8以上4以下である。
(C)クロス共重合体の0℃〜150℃までに観測される結晶融解熱(ΔH)が25J/gより大きい、好ましくは30J/gより大きい。
(D)クロス共重合体中に含まれるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の含量が40質量%以上70質量%未満である。
芳香族ビニル化合物としてはスチレン、芳香族ポリエンがジビニルベンゼンであることが、経済性、物性の点から好ましい。本貯蔵弾性率範囲と透明性を満たすクロス共重合体は、少なくとも(A)と(B)の条件を共に満足し、かつ(C)または(D)の条件のいずれか一方の条件を満たすことで得ることができる。さらに上記のように公知文献の記載に従い、必要であれば少数回の試験を行うことで容易に得ることができる。あるいは前記支持層に使用される(1)から(4)の条件を満足するクロス共重合体に対して、1)そのエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖のスチレン含量を低下させ、エチレン鎖に由来する結晶性を増加させる、あるいは2)軟質成分であるエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖の含量を低下させることで、本発明の内層に適した貯蔵弾性率範囲を満たすクロス共重合体を容易に製造することができる。
クロス共重合体の0℃〜150℃までに観測される結晶融解熱(ΔH)が80J/gより高い場合は、樹脂の貯蔵弾性率が上記範囲よりも高くなりすぎてしまう恐れがある。また、クロス共重合体中に含まれるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の含量が40質量%未満の場合も同様である。
本内層に用いられるクロス共重合体の25℃における貯蔵弾性率が30MPaより高く300MPa以下の範囲であるためには、例えば支持層に使用される軟質なクロス共重合体に、これと相溶し透明となる硬質樹脂を適宜添加してもよい。本内層に対し、滑り性を出すために、シリコーン系樹脂等の滑材を塗布したり、混錬したりすることもできる。
本発明の医療用多層チューブには必要に応じて任意の外層を有することができる。また、本外層はチューブの全層の厚さに対し1%以上、50%以下、チューブ全体の軟質性の観点からはより薄いことが好ましく、好ましくはチューブの全層の厚さに対し1%以上20%以下、特に好ましくは1%以上10%以下である。さらにその外層が内層と同じ樹脂成分からなる2種3層構造が構成の上では単純で好ましい。本外層を設けることは、チューブ同士の粘着性が抑制される点で好ましい。
本外層、または支持層が最外部にある場合は該層には、チューブ同士の粘着を防ぐため、あるいはハンドリングした際の滑りを防ぐために適当なシボや凹凸を付けることができる。
さらに、原料樹脂のMFR値(200℃、荷重98N)は特に限定されるものではないが、一般的には1g/10分以上100g/10分以下である。共押出法による多層チューブ成形を考慮すると、支持層と内層のそれぞれの樹脂のMFR値は近いことが好ましく、両者のMFR値の比は好ましくは3倍以内、特に好ましくは2倍以内である。
単層、多層にかかわらず本医療用チューブに用いられる原料樹脂は、上記軟質性以外に一般的な力学強度として、10MPa以上の引張破断強度、300%以上の引張破断伸びを有することが好ましい。本発明に用いられるクロス共重合体等の原料樹脂には必要に応じて、酸化防止剤、安定化剤、滑剤等の通常本用途に使用される公知の添加剤を添加してもよい。本発明に用いられるクロス共重合体と添加剤または他の樹脂との組成物を得る方法は特に制限はなく、公知の手法を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラー等でドライブレンドを行うことも可能であり、1軸または2軸の押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、コニーダー、ロール等で溶融混合を行ってもよい。必要に応じて、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。形状は粉体、ペレット状、ストランド状、チップ状等選ぶことができる。
本発明の医療用チューブは、多層押出し成形やコーティング法等の公知の手法により得ることができる。チューブの形状、直径、長さならびに他の形状については、使用目的に応じて選択されるものであって、特に制限されない。
<エネルギ−線架橋>
本発明の医療用チューブは、単層、多層にかかわらず、チューブ形状に成形後、各種エネルギ−線を用いて架橋する。ここで用いられるエネルギー線としては、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては電子線(EB)、α線、電磁波としては紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)がその経済性において工業的に好ましい。本明細書における架橋の定義は下記に示すゲル分である。すなわち、本発明のクロス共重合体からなる医療用チューブのエネルギー線架橋物は25質量%〜80質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%の範囲のゲル分を有する。本発明の医療用チューブが多層チューブの場合には、主要な層である支持層に用いられるクロス共重合体のエネルギー線架橋物が25質量%〜80質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%の範囲のゲル分を有する。この下限以上のゲル分ではより効果的に耐熱性を示すことができ、上限以下のゲル分は、架橋体の伸びの低下を抑え、他の部材との接着性を保つことができる。
これらのエネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。以下本明細書においてはエネルギー線架橋のなかで最も好ましい電子線架橋について記述する。電子線(EB)の場合の加速電圧としては一般的に100kV〜10MV、照射線量としては10〜500kGyの範囲が好適に用いられる。本加速電圧は、チューブの厚さ、形状により適切に制御する。電子線の到達距離は限られるので、チューブは回転させながら全面に電子線が当たるように照射することが好ましい。表面から接液面まで電子が到達するためには、概ねチューブの層厚さが0.25mmでは目安としいて概ね加速電圧250kV以上、シ−ト厚さ0.5mmでは概ね500kV以上、シ−ト厚さ1.0mmでは概ね1000kV以上の加速電圧が好適に用いられる。チューブを回転させずに上から1回の照射でチューブ全体を架橋しようとする場合、チューブ下面まで十分に電子線が透過し架橋が進行する必要があり、この場合は上記加速電圧よりも高い加速電圧が必要となる。チューブ両面から電子線を照射してもよい。架橋にあたって、特に下記に示す架橋助剤を用いずに架橋を行うことが、安全性等、残留するこれら薬剤に対する配慮が必要ない点で好ましい。クロス共重合体を用いることで、低照射線量で架橋を行うことが可能となり生産性が向上する点で好ましい。具体的な照射線量は、チューブ形状、厚さ、照射法により様々であり特定できないが、チューブ全体を架橋しようとする場合、上記の加速電圧を満たした条件で、好ましくは40kGy以上、500kGy以下、より好ましくは50kGy以上、300kGy以下、特に好ましくは50kGy以上、150kGy以下程度の低照射線量で架橋を行うことができる。この上限以下の照射線量で架橋を行う場合、過度な架橋の可能性を低く抑え、成形加工時や使用時の伸びを十分に保つことができ、また基材や他のシートへの接着性が低下してしまう可能性も抑えることができる。
本発明のクロス共重合体及びその樹脂組成物には、必要に応じて架橋助剤をさらに配合することができる。使用できる架橋助剤には、これに限定されるものではないが、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−フェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの架橋助剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。架橋助剤を配合する場合、その含有量に特に制限はないが、通常、合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲であるのが好ましい。
上記架橋助剤を配合することにより、上記の加速電圧下、より低い照射線量で架橋させることが可能である。この場合、例えば、10kGy以上100kGy以下の照射線量で十分な架橋を行うことができ、工業的に好ましい。
本発明に用いられるクロス共重合体は、上記条件で電子線架橋を行なった後であっても、適切な軟質性である25℃における貯蔵弾性率が1MPa以上30MPa未満の範囲を維持し、本医療用チューブに用いられる原料樹脂として必要な一般的な力学強度である10MPa以上の引張破断強度、300%以上の引張破断伸びを有することができる。さらに、本発明の医療用チューブのエネルギー線架橋物は、改善された耐熱性を有することが出来る。本耐熱性は、粘弾性スペクトル測定で得られる貯蔵弾性率で評価することができる。すなわちエネルギー線架橋物では、1Hz、昇温速度4℃/分で測定した粘弾性スペクトル測定において121℃で貯蔵弾性率(E’)が0.4MPa以上を示すことができる。本条件を満たすことで、各種滅菌工程後において、チューブの形状を維持し、あるいはチューブ同士のブロッキングを防止することが可能となる。
エネルギー線架橋物のシボ保持性は、簡易的に以下のような試験により確認することができる。シボ型を用い熱プレス法によりシートを作成し、エネルギー線架橋を行い、そのシートの光沢をJISK7105に従い、受光角60°で測定し評価する。その後、オートクレーブ(スチームクッカー)で121℃、30分間加熱処理した後で、同様にして光沢を測定し、加熱処理前(初期値)と比較して光沢の発生が抑えられていることを確かめる。例えば、初期値+5%以下、好ましくは初期値+3%以下に保持されることがシボ保持性という観点からは好ましい。本発明のチューブの接液面および/または外表面に成形時に付与された凹凸が、高温処理後でも保持されることは、耐キンク性、耐鉗子性、保存時や各種滅菌時チューブ間のブロッキング防止性を高めることに効果がある。たとえばエチレンオキサイド滅菌の際にも60℃程度の温度で処理されるので、耐熱性が高く凹凸が保持されることはブロッキング防止の観点から好ましい。
得られたチューブは、一般的には輸液に使用する点滴筒等の他の部品と接合した後、包装および滅菌される。滅菌方法としては上記のような高圧水蒸気滅菌の他に、エチレンオキサイドガス滅菌、あるいはγ線滅菌、電子線滅菌が選択される。本発明に用いられるクロス共重合体は、耐久性に優れ、また滅菌に用いられるガンマ線や電子線に対しても高い耐性を示し、変色や劣化が起こりづらい特徴がある。そのため、ブタジエン系樹脂と異なり、リン系酸化防止剤、たとえばビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の安定化剤を含有しない状態でも、γ線あるいは電子線滅菌可能である。電子線滅菌については、上記電子線架橋と同時に行える点で経済的価値は大きい。
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
<原料樹脂>
実施例、比較例に用いた原料樹脂は以下の通りである。
下記クロス共重合体は、出典明示により全内容をここに援用するWO2000/37517またはWO2007/139116号公報記載の製造方法で製造したもので、下記組成は、同様にこれら公報記載の方法で求めた。これらのクロス共重合体は、配位重合により得られるエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体とスチレンモノマーの共存下でアニオン重合を行うことにより得られる、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖を有する共重合体である。
以下、クロス共重合体を規定するために、用いられるエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量、ジビニルベンゼン含量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、クロス共重合体中のエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量、ポリスチレン鎖の分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を示す。
・クロス共重合体1:
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量17モル%、
ジビニルベンゼン含量0.04モル%、
Mw(重量平均分子量)=91000、Mw/Mn=2.2、
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量88質量%、
ポリスチレン鎖のMw=30000、Mw/Mn=1.2
・クロス共重合体2:
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量24モル%、
ジビニルベンゼン含量0.03モル%、
Mw=115000、Mw/Mn=2.2
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量77質量%、
ポリスチレン鎖のMw=26000、Mw/Mn=1.2
・クロス共重合体3
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量28モル%、
ジビニルベンゼン含量0.07モル%、
Mw=95000、Mw/Mn=2.2
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量70質量%、
ポリスチレン鎖のMw=29000、Mw/Mn=1.2
・クロス共重合体4:
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量24モル%、
ジビニルベンゼン含量0.03モル%、
Mw=103000、Mw/Mn=2.2
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量52質量%、
ポリスチレン鎖のMw=35000、Mw/Mn=1.2
・クロス共重合体5:
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量10モル%、
ジビニルベンゼン含量0.03モル%、
Mw=95000、Mw/Mn=2.3
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量90質量%、
ポリスチレン鎖のMw=25000、Mw/Mn=1.1
・クロス共重合体6:
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量29モル%、
ジビニルベンゼン含量0.05モル%、
Mw=240000、Mw/Mn=2.6
エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の含量78質量%、
ポリスチレン鎖のMw=30000、Mw/Mn=1.1
・エチレン-スチレン共重合体
特開平11−130808号公報記載の製造方法で製造したスチレン−エチレン共重合体スチレン含量25モル%、Mw=197000、分子量分布2.2
これら樹脂のMFR、透明性(全光線透過率)、A硬度、力学物性(引張試験結果)、結晶融解熱の総和、貯蔵弾性率は表1にまとめて示した。
<共重合体の組成>
共重合体中のスチレンユニット含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度比較で行った。
<共重合体の分子量>
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
<結晶融解熱(ΔH)>
DSC測定により求めた。測定は、窒素気流下で行った。すなわち樹脂組成物10mgを用い、昇温速度10℃/分で−50℃から240℃まで測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。
<シート作製>
物性測定用のサンプルシートは、加熱プレス法(温度180℃、時間3分間、圧力50kg/cm)により成形した所定の厚さのシートを用いた。
<混練およびペレット化>
二軸押出機(PCM30mm池貝社製)を用い、配合に従い混練を行い、得られたストランドを切断してコンパウンドペレットを得た。
<A硬度>
硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
<引張試験>
JISK−6251に準拠し、得られた厚さ1mmのシートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて初期引張弾性率、破断点伸び、破断強度を測定した。
<シートへの電子線照射>
得られた0.5mm厚さのシートに対し、750kVの加速電圧で75kGyの電子線照射を1回実施した。
<貯蔵弾性率>
上記加熱プレス法により得た厚み約0.5mmのフィルムから測定用サンプル(3mm×40mm)を切り出し、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA−III)を使用し、周波数1Hz、温度領域−50℃〜+150℃の範囲で測定し、25℃または121℃における貯蔵弾性率
(E’)を求めた。その他測定パラメ−タ−は以下の通り
測定周波数1Hz
昇温速度4℃/分
測定長さ部分10mm
25℃の貯蔵弾性率は、チューブの軟質性の指標であり、1MPa以上30MPa未満の範囲である必要がある。121℃の貯蔵弾性率は、チューブの耐熱性の指標であり、0.1MPa以上3MPa未満の範囲であることが好ましい。
<シボ保持性>
シボ型を用い熱プレス法により0.5mm厚さのシートを作成し、エネルギー線架橋を行い、そのシートの光沢をJISK7105に従い、受光角60°で測定し評価する。その後、オートクレーブ(スチームクッカー)で121℃、30分間加熱処理した後で、同様にして光沢を測定し、加熱処理前(初期値)と比較する。オートクレーブ処理後の光沢値が初期値+5%以下、好ましくは初期値+3%以下に保持されることがシボ保持性という観点からは好ましい。

実施例および比較例において、各測定項目は次のようにして測定した。
<チューブの軟質性>
20cmの長さに切断した試作チューブと比較用の軟質塩ビ製医療用単層チューブを、目隠しをした被験者に触らせ、触感が柔らかい方を選ぶ。試作チューブが軟質塩ビ製医療用単層チューブより軟質であれば◎、略同等であれば○、試作チューブが明らかに固ければ×とした。
<透明性>
チューブに生理食塩液を流し、液面、泡等が肉眼で視認できるかどうかを観察した。容易に観察できる場合を○とし、観察が困難な場合を×とした。
<電子線照射耐性>
電子線照射後のチューブを肉眼で観察し、着色、変形、割れ等の有無を調べた。
<ゲル分>
チューブを長さ3mmに細断し、約1gを精秤し、100メッシュ金属網で作製した袋に入れ封じさらに質量を精秤する。袋を沸騰キシレン中で8時間処理したのちに取り出し、充分乾燥させたのちに質量を精秤する。ゲル分の質量%=袋残留物の質量/最初の質量×100として求めた。
<チューブ熱変形>
チューブを長さ100mmに切断し、オートクレーブにて121℃、30分間高圧水蒸気滅菌を行った。その後チューブを取出し、室温に戻ったところで、外観を観察し、長さを測った。
チューブの閉塞がなくかつ長さ方向の変形量が10%以下の場合は合格で、○と記載した。
<ブロッキング性>
長さ10cmの2本のチューブを5cm平行に重ねて紙テープで縛り、高圧水蒸気滅菌(121℃、30分)を行なった。その後縛った紙テープを除き、チューブ間のせん断剥離強度を測定した。
指標とした。せん断剥離強度は、引張試験機にてテストスピード100mm/分の条件で最大値を採用した。10N未満を合格とした。
以下のpH、重金属、過マンガン酸カリウム還元性物質、蒸発残留物の試験液は以下のようにして得た。滅菌済み輸液セット基準による溶出物試験:チューブ部分10gを約1cm長に細断し、蒸留水100mlで30分間煮沸した。蒸留水を加えて正確に100mlとし、試験液とした。同時に蒸留水のみでも同様に30分間煮沸し、空試験液とした。
<pH>
試験液および空試験液をそれぞれ20mlとり、これらに塩化カリウム1.0gを水に溶かして1000mlとした液1.0mlずつを加え、日本薬局方一般試験法のpH測定法により、pH変化を測定した。pHの差は2.0以下であれば合格とした。
<重金属>
試験液10mlをとり、日本薬局方の重金属試験法の第1法によって試験を実施。空試験液には鉛標準液2.0mlを加え、同様に試験を行った。空試験液と比較して、色が濃くなければ合格とした。
<過マンガン酸カリウム還元性物質>
試験液10mlを共栓三角フラスコにとり、0.002mol/l過マンガン酸カリウム液20.0mlおよび希硫酸1mlを添加し密栓、ふり混ぜて10分間放置した後に、0.01mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬デンプン試液5滴)。別に空試験液10mlを用い同様に操作する。試験液および空試験液の0.002mol/l過マンガン酸カリウム液消費量の差は2.0ml以下であれば合格とした。
<蒸発残留物>
試験液10mlを水浴上で蒸発乾固し、残留物を105℃で1時間乾燥するとき、その質量が1.0mg以下であれば合格とした。
<キンク開始半径>
20cmのチューブを各曲率半径に曲げ、1分後にチューブの折れ曲がりの発生が確認された曲率半径を求めた。キンク開始半径は、10mm以下が好ましい。
<耐鉗子性>
40℃において、生理食塩液を満たしたチューブを医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外しチューブ内側が形状を回復し貫通する時間を測定し、チューブの耐鉗子性の指標とした。
<薬剤吸着性>
ニトログリセリン収着性:ニトログリセリン注射液(有効成分50mg/100ml、ミリスロール注、日本化薬株式会社製)60mlを日本薬局方生理食塩水1Lに注入し、静かに攪拌した。ただちに注射針付注射筒でサンプリングし、ブランクとした。輸液セットのチューブを流量調節用クランプで閉塞し、点滴筒をゴム栓に刺通した。点滴筒をポンピングすることで点滴筒の下半分を当該溶液で満たした。流量調節用クランプを徐々にゆるめ、チューブの中を当該溶液で満たした後に輸液ポンプにセットした。流量を36ml/hに設定し、流量調節用クランプを開放、スイッチをONにし、輸液を開始した。先端より流出する溶液を経時的にサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーで濃度を測定した。輸液は180分行い、最初の60分は5分おき、それ以後は15分おきにサンプリングした。ブランクの濃度と比較して、濃度低下が10%以内であれば合格とした。
<輸液ポンプ適性>
流量調節用クランプでチューブを閉塞し、点滴筒を日本薬局方生理食塩水のゴム栓に刺通した。点滴筒をポンピングすることで点滴筒の下半分を当該食塩水で満たした。流量調節用クランプを徐々にゆるめ、チューブの中を当該食塩水で満たした後に、輸液ポンプにセットした。流量を250ml/時に設定し、流量調節用クランプを開放、スイッチONにし輸液を開始した。この直後に先端より流出する一分間あたりの生理食塩水量を測定し、初期流量とした。24時間経過後、再び同様に1分間当たりの流量を測定した。24時間後の流量変化率が10%以内であれば合格とした。
ポンプ輸液終了後のチューブ状態:上記ポンプ流量安定性終了後に、チューブのしごき部分について、表面状態、チューブ径の変化、亀裂の有無を観察した。
クロス共重合体1〜5、エチレン-スチレン共重合体を用い、以下のようにしてチューブを作成し評価を行った。ただし、クロス共重合体6は透明性が悪く、チューブの試作は行わなかった。
実施例1〜4
まず、プレス成型で得た各クロス共重合体の0.5mm厚さシートに対し、加速電圧750kV、線量75kGyの条件で電子線照射を行った。照射後のサンプルの力学物性(引っ張り試験)結果、貯蔵弾性率、しぼ保持性を表2に示す。


電子線照射による架橋では力学物性に大きな変化は認められず、医療用チューブ材料としての基準をクリアしている。照射後は架橋の進行により耐熱性が向上しており、オートクレーブ処理後のしぼ保持性についても基準を満足した。
次に実施例1〜3ではクロス共重合体1〜3を用い、押出成形により単層チューブを作成した。単層チューブのサイズはいずれも外径φ3.6mm、内径2.4mm、チューブ厚さ0.6mmであった。実施例4では、多層押出成形により支持層にクロス共重合体2を、内層にクロス共重合体5を用い、それぞれ0.5mm、0.1mmの厚さの多層チューブを作成した。得られたチューブに対し、750kVの加速電圧で75kGyの電子線照射を照射し、さらにチューブを断面から見て180度回転し同条件で照射した。すなわちチューブに対し、上下面から75kGyで計2回照射を実施した。チューブの一部を細断し、ゲル分を測定した。さらに医療用チューブとしての各種の評価を実施した。またチューブを、オートクレーブで、121℃、30分間滅菌処理を行った。初期長さ10cmのチューブの、オートクレーブ処理後の長さ方向の変形率を求め、さらにブロッキング性を評価した。結果を表3に示す。

比較例1
クロス共重合体2を用い、実施例と同様に単層チューブを試作し、電子線照射を行わずに各種評価を実施した。
比較例2、3、4
クロス共重合体4、5およびエチレン-スチレン共重合体を用い、実施例と同様に単層チューブを試作し、電子線照射を行った。クロス共重合体4および5のチューブは軟質性の評価で×評価であったので以降の評価は行わなかった。エチレン-スチレン共重合体のチューブは、ゲル分およびチューブ熱変形が基準を満たさなかったので以降の評価は行わなかった。
比較例5として軟質塩ビ製の単層チューブの結果も示す。軟質塩ビ製チューブは、電子線照射を行わずに各種評価を行った。実施例1〜3のチューブは、軟質性、透明性に優れ、電子線照射耐性を示しながら十分な電子線架橋が進行し、照射後のチューブは高いゲル分、耐熱性を示し、ブロッキング性が改善された。pH、重金属、過マンガン酸カリウム還元性物質、蒸発残留物の基準を満たし、性能試験では、良好なキンク開始半径(折り曲げ)性、耐鉗子性、低薬剤吸着性、輸液ポンプ適性を示し、医療用チューブへの要求を満たしている。


本発明は、フタル酸エステル等の可塑剤の溶出がなく、非塩化ビニル樹脂材料であり、軟質性、透明性、電子線照射耐性、薬剤の低吸着吸収性、ポンプ回路適性、耐折り曲げ(キンク)性に優れ、自己粘着性が少なくチューブ復元性(耐鉗子性)に優れ、さらに良好な耐熱性を有するチューブであり、医療用チューブ、例えば輸液チューブ、輸血チューブ、血液回路、人工血管等や、血液透析器、血液成分分離器、人工肺等の医療器具内のチューブにも好適に使用可能である

Claims (4)

  1. シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行い、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレンユニット含量であるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を配位重合する工程と、
    エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下に、アニオン重合開始剤を用いてアニオン重合によりクロス共重合体(1)を製造する工程と、
    クロス共重合体(1)からなる単層チューブ、またはクロス共重合体(1)からなる支持層を含みその厚さはチューブの全層の50%以上を占める多層チューブを成形する工程と、
    成形後に、加速電圧100kV〜10MV、照射線量が40〜500kGyの電子線照射により前記単層チューブまたは前記多層チューブを架橋する工程と、
    を含む医療用チューブの製造方法であり、かつクロス共重合体(1)は、以下(2)〜(5)の条件を全て満たす。
    (2)配位重合工程で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量が3万以上20万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上4以下である。
    (3)クロス共重合体の0℃〜150℃までに観測される結晶融解熱(ΔH)が25J/g以下である。
    (4)クロス共重合体中に含まれるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の含量が70質量%以上95質量%以下の範囲にある。
    (5)クロス共重合体は、25℃における貯蔵弾性率が1MPa以上30MPa未満であり、かつ1mm厚さのシートで測定した全光線透過率が75%以上である。
  2. 電子線照射により架橋されたクロス共重合体のゲル分が25質量%〜80質量%であることを特徴とする請求項1記載の医療用チューブの製造方法
  3. さらに内層を有し、本内層に用いられる樹脂は、ポリオレフィン、水素化スチレン-ジエンブロック共重合体、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、ウレタン、またはクロス共重合体から選ばれる樹脂または、これらの樹脂組成物であり、これら樹脂または樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が30MPaより高く300MPa以下の範囲であり、かつ1mm厚さのシートで測定した全光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の医療用チューブの製造方法
  4. 内層に用いられるクロス共重合体が以下の(A)と(B)の条件を共に満足し、かつ(C)または(D)の条件の少なくともいずれか一方の条件を満たすことを特徴とする請求項記載の医療用チューブの製造方法
    (A)シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行い、芳香族ビニル化合物ユニット含量8モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレンユニット含量であるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を配位重合する工程と、
    エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下に、アニオン重合開始剤を用いてアニオン重合によりクロス共重合体を製造する工程と、
    クロス共重合体からなる多層チューブを成形する工程と、
    を含み、
    (B)配位重合工程で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量が3万以上20万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上4以下である。
    (C)クロス共重合体の0℃〜150℃までに観測される結晶融解熱(ΔH)が25J/gより大きい。
    (D)クロス共重合体中に含まれるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の含量が40質量%以上70質量%未満である。
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