JP5906734B2 - 含窒素化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、炭化水素とアンモニアと酸素含有ガスとを含む原料ガスを用い、気相流動層反応によって不飽和ニトリル類を製造する方法はアンモ酸化反応による製造方法として知られており、中でもプロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造は、工業的に広く実施されている。
腐食部分を新規の部品と交換するにはプラントを停止させなければならないだけでなく、加えて、部品代や工事費など、コスト的にも多大な負担を強いられることになる。
これまでに窒化腐食の問題を解決するため数多くの検討が行われ、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1〜3には、ガス供給導管の材料を耐窒化材料に置き換える方法が開示されている。
また、特許文献4には、不飽和ニトリル化合物の製造において、アンモニア供給導管内にある間のガス状アンモニアの温度をアンモニアの解離温度以下に維持する、あるいは、アンモニア供給導管の内面の温度を窒素が導管と反応して窒化物を形成することができる温度以下に維持する方法が開示されている。
ここで、前記ガス供給導管内に導入する水蒸気の量が、ガス状アンモニア1モルに対し、0.01〜2.0モルであることが好ましい。
本発明の含窒素化合物の製造方法は、前記ガス状化合物がプロピレンおよび/またはプロパンであり、前記気相反応がアクリロニトリルを合成する反応である場合、または前記ガス状化合物がイソブチレンおよび/またはイソブタンであり、前記気相反応がメタクリロニトリルを合成する反応である場合に好適である。
本発明の含窒素化合物の製造方法は、炭素数1〜6の炭化水素から選ばれる少なくとも一つのガス状化合物と、ガス状アンモニアと、酸素含有ガス(以下、これらを総称して「原料ガス」という場合がある。)とを反応器内に供給し、気相反応により含窒素化合物を製造する方法である。
ガス状アンモニアを反応器内に供給するガス供給導管内に水蒸気を導入することにより、窒化腐食を防止するメカニズムについては現在のところ明らかではないが、ガス供給導管内のアンモニア濃度が低下すること、および、水蒸気を共存させることでアンモニアの反応性が低下することにより、ガス供給導管や反応器の窒化腐食防止効果が得られると考えられる。
また、ガス供給導管内での混合ガスの温度は、混合ガスが凝縮しない温度以上、かつ反応器内での気相反応温度以下が好ましい。
上述したように、ガス状アンモニアは水蒸気と混合された状態で反応器内に供給されるので、原料ガスを反応器内に供給する際は、ガス状アンモニアおよび水蒸気を含む混合ガスと、酸素含有ガスとを別々に供給するのが好ましい。また、ガス状化合物は単独で供給されてもよいし、ガス状アンモニアおよび水蒸気と混合された状態で供給されてもよい。
なお、反応器内に供給される原料ガスは、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや飽和炭化水素、アルコール類等で希釈してもよく、また、酸素濃度を高めて用いてもよい。
含窒素化合物の製造に用いられる反応装置としては特に限定されず、流動層反応装置、固定床反応装置などが挙げられる。中でも、流動層反応装置が好ましく用いられる。
反応器や、反応器にガス状アンモニアなどの原料ガスを供給するガス供給導管を構成する金属材料としては特に限定されるものではないが、気相反応が高温条件下で実施されることなどの理由から、炭素鋼などが好ましく用いられる。
図1に示す反応装置1は流動層反応装置であり、内部に触媒流動層11を備えた反応器10を主体として構成されている。
この例の反応器10は縦型円筒型流動層反応器であり、反応器10には、反応器10内にガス状化合物、ガス状アンモニア、および水蒸気を供給するガス供給導管20と、反応器10内に酸素含有ガスを供給するガス供給口30と、ガス供給口30から供給された酸素含有ガスを反応器10内に分散させるガス分散板40と、反応生成物(含窒素化合物)を含むガスと触媒とを分離するサイクロン50とが設けられている。
ガス供給口30は反応器10の底部に設けられ、ガス分散板40はガス供給口30とガス供給導管20との間に設けられている。
まず、ガス状化合物とガス状アンモニアを蒸発器(図示略)で気化し、それぞれ過熱器(図示略)により所定の温度に過熱した後、ガス供給導管20内で水蒸気と混合する。そして、ガス供給導管20からガス状化合物とガス状アンモニアと水蒸気とを含む混合ガスを、内部に触媒流動層11を備えた反応器10内に供給する。
別途、ガス供給口30から酸素含有ガスを反応器10内に供給し、ガス分散板40で分散させる。
反応器10内に供給された混合ガスおよび酸素含有ガスは、反応器10内を上昇する。このとき、気相反応が進行する。
反応開始後、反応器10内は反応生成物(含窒素化合物)を含む反応生成ガスと、未反応の原料ガスおよび水蒸気と、触媒とが混ざり合った状態となる。第一のサイクロン50aの流入口51aに流入したこれらの混合物は、第一のサイクロン50a内を高速旋回する間に、反応生成物を含むガスと触媒とに分離される。分離された反応生成物を含むガスは第一のサイクロン50aのガス流出管52aから第二のサイクロン50bに流入する。一方、触媒は第一のサイクロン50aのディップレグ53aを介して触媒流動層11に返送される。
第二のサイクロン50bに流入した反応生成物を含むガスは、第二のサイクロン50bを高速旋回する間に、僅かに残留する触媒が分離された後、第二のサイクロン50bのガス流出管52bから第三のサイクロン50cに流入する。一方、触媒は第二のサイクロン50bのディップレグ53bを介して触媒流動層11に返送される。
第三のサイクロン50cに流入した反応生成物を含むガスは、第三のサイクロン50cを高速旋回する間に、僅かに残留する触媒が分離された後、第三のサイクロン50cのガス流出管52cから反応器10の外に導出される。一方、触媒は第三のサイクロン50cのディップレグ53cを介して触媒流動層11に返送される。
従って、本発明によれば、反応器やガス供給導管を構成する金属材料、特に、高濃度のガス状アンモニアを含有する原料ガスと接触するガス供給導管の窒化腐食を防止できるので、プラントを経済的に、かつ、長期間にわたって安定運転することができる。
各例で用いた反応装置、および測定方法は以下の通りである。
反応装置としては、図1に示す反応装置1を用いた。
反応器10としては、内径8.0mの縦型円筒型流動層反応器を使用した。
また、反応器10およびガス供給導管20には、炭素鋼を使用した。
触媒としては、粒子径1〜200μmのシリカに担持された複合酸化物触媒を使用した。
JIS Z 2244のビッカース硬さ試験に準拠して、以下のようにしてビッカース硬さを測定した。
ダイヤモンド製の正四角錐圧子を用い、ガス供給導管表面に圧子を押し付けた際の試験荷重F[N]を、押し付けた跡に残ったピラミッド型窪みの対角線長さd[mm]より求めた表面積で割った値をビッカース硬さ[HV]として、下記式(1)より算出した。
ビッカース硬さ=0.1891×F/(d2) ・・・(1)
木槌を用いてガス供給導管のニップル部を打撃し、目視にて割れを確認した。
図1に示す反応装置1を用い、反応温度420〜465℃において、複合酸化物触媒の存在下、ガス状プロピレンとガス状アンモニアと酸素含有ガスと水蒸気を反応器10内に供給し、プロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの合成反応を行った。
酸素含有ガスとしては空気を用い、反応器10の底部に設けられたガス供給口30から反応器10内に供給し、ガス分散板40を通じて反応器10内に分散させた。
別途、プロピレンとアンモニアをそれぞれ蒸発器(図示略)で気化し、さらにそれぞれ過熱器(図示略)により40℃以上まで過熱した後、ガス供給導管20内で水蒸気と混合し、ガス供給導管20のニップル部23において混合ガスの流れを整えた後に、50〜70cm/secのガス流速で反応器10内へ供給した。
反応器10内に供給する原料ガスの組成は、ガス状プロピレン/ガス状アンモニア/酸素=1/1.0〜1.3/1.7〜2.5であった。
ガス供給導管20に導入する水蒸気の量は、ガス状アンモニア1モルに対し、0.05〜0.5モルであった。また、ガス供給導管20内で混合されたプロピレンとガス状アンモニアと水蒸気との混合ガスの温度は40℃であった。
ガス供給導管20およびその枝管部21について、炭素鋼材の健全性確認のためにビッカース硬さの測定を実施した。結果を表1に示す。
また、木槌を用いてニップル部23を打撃し、割れが認められた部分がニップル部23全数に占める割合を求めた。結果を表1に示す。
ガス供給導管20に導入する水蒸気の量を、ガス状アンモニア1モルに対し、1.0〜2.0モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてプロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの合成反応を行い、ビッカース硬さの測定および打撃試験を実施した。結果を表1に示す。
ガス供給導管20に導入する水蒸気の量を、ガス状アンモニア1モルに対し、0.01〜0.02モルに変更した以外は、実施例1と同様にしてプロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの合成反応を行い、ビッカース硬さの測定および打撃試験を実施した。結果を表1に示す。
ガス供給導管20へ水蒸気を導入しなかった以外は、実施例1と同様にしてプロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの合成反応を行い、ビッカース硬さの測定および打撃試験を実施した。結果を表1に示す。
また、打撃試験の結果は、実施例1の場合がニップル部全数の2%以下に硬度上昇による割れが認められ、実施例2の場合が全数の5%以下に硬度上昇による割れが認められ、実施例3の場合が全数の25%に硬度上昇による割れが認められた。そこで、割れが認められたニップル部のみ新規なものと交換した。
また、打撃試験の結果は、ニップル部全数の53%に硬度上昇による割れが認められた。そのため、ニップル部および枝管部を含むガス供給導管全てを交換せざるを得なくなった。
Claims (4)
- 炭素数1〜6の炭化水素から選ばれる少なくとも一つのガス状化合物と、ガス状アンモニアと、酸素含有ガスとを流動層反応器内に供給し、気相反応により含窒素化合物を製造する方法において、
前記流動層反応器には、少なくともガス状アンモニアを前記流動層反応器内に供給するガス供給導管と、酸素含有ガスを前記流動層反応器内に供給するガス供給口とがそれぞれ別々に設けられ、前記流動層反応器およびガス供給導管が金属材料から構成され、
前記ガス供給導管内に、少なくともガス状アンモニアと水蒸気とを導入し、該ガス供給導管からガス状アンモニアと水蒸気を含む混合ガスを前記流動層反応器内に供給することを特徴とする含窒素化合物の製造方法。 - 前記ガス供給導管内に導入する水蒸気の量が、ガス状アンモニア1モルに対し、0.01〜2.0モルであることを特徴とする請求項1に記載の含窒素化合物の製造方法。
- 前記ガス状化合物がプロピレンおよび/またはプロパンであり、前記気相反応がアクリロニトリルを合成する反応であることを特徴とする請求項1または2に記載の含窒素化合物の製造方法。
- 前記ガス状化合物がイソブチレンおよび/またはイソブタンであり、前記気相反応がメタクリロニトリルを合成する反応であることを特徴とする請求項1または2に記載の含窒素化合物の製造方法。
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