JP5903853B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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本発明はエンジンの制御装置に関する。
エンジンの吸気弁のバルブ特性を可変にする動弁装置として、同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置が知られている。例えば特許文献1では、相対的な位相を変更可能なアウタカム軸およびインナカム軸を備え、アウタカム軸が有する第1動弁カムによって開閉される第1機関弁と、インナカム軸が有する第2動弁カムによって開閉される第2機関弁とを第1および第2吸気弁とする動弁装置が開示されている。
特許文献1では、この動弁装置が駆動軸およびアウタカム軸間の相対的な位相を変更可能な第1位相制御機構と、アウタカム軸およびインナカム軸間の相対的な位相を変更可能な第2位相制御機構とを備えることが開示されており、この場合に第1および第2吸気弁の位相を互いに独立して変更することができるようになっている。
特開2009−144521号公報
同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置では、複数の吸気弁のうち、一部の吸気弁の位相と他の吸気弁の位相とを個別に変更することができる。そしてこれにより、例えば一部の吸気弁の位相よりも他の吸気弁の位相を大幅に遅角させることで、実圧縮比よりも膨張比を大幅に高めた超高膨張比サイクルによる運転を行い、燃費の向上を図ることができる。
ところがこの場合には、一部の吸気弁および他の吸気弁のうち、いずれか一方のみが開弁している期間が存在しており、この期間では双方が開弁している期間よりも実際に開口している開口面積の割合が小さくなることから、吸気の流動損失が大きくなる。そして、この場合に過給機が吸気を過給すると吸気の流量が多くなる分、流動損失がさらに大きくなる。結果、燃費が大幅に悪化する虞がある。以下、この点について具体的に説明する。
図8はクランク角度に応じた各種のパラメータの変化の一例を過給がある場合と過給がない場合とについて比較して示す図である。図9はクランク角度に応じた流動損失の変化の一例を過給がある場合と過給がない場合とについて比較して示す図である。図8(a)は各種のパラメータとして一部の吸気弁である吸気弁51および他の吸気弁である吸気弁52のリフト量の変化を示す。図8(b)は吸気弁51の通過流量の変化を示す。図8(c)は吸気弁52の通過流量の変化を示す。図8(d)はインテークマニホールド内の圧力から筒内圧を引いたこれらの差圧の変化を示す。図8(a)から図8(d)および図9の横軸は互いに共通のクランク角度を示す。図8、図9では過給圧が70kPaの場合の各種のパラメータの変化を示す。図8、図9において、ケースC11は過給がある場合を示し、ケースC12は過給がない場合を示す。
図8(a)に示すように、吸気弁51、52の位相は吸気弁51のほうが吸気弁52よりも相対的に早く開くように設定されている。図8(b)に示すように吸気弁51の通過流量に関しては、ケースC11の場合にはケースC12の場合よりも、プラス領域での増加で示されるように吸入量が増加する。
図8(c)に示すように吸気弁52の通過流量に関しては、ケースC11の場合にはケースC12の場合よりも、プラス領域での増加で示されるように吸入量が増加する。また、マイナス領域での減少に示されるように吹き戻し量が増加する。図8(d)に示すように差圧に関しては、ケースC11の場合にはケースC12の場合よりも吸気弁51開弁時にプラス領域で差圧が大きくなる。また、吸気弁52が単独で開弁している期間にマイナス領域で低下する差圧の低下が早まる。
一方、吸気の流動損失は次の式(1)で表される。
F=∫(P/ρ)×Qdθ・・・(1)
ここでFは流動損失、Pはインテークマニホールド内の圧力から筒内圧を引いたこれらの差圧、ρは吸気密度、Qは吸気流量、θはクランク角度である。式(1)から流動損失は差圧と吸気流量とに応じて変化することがわかる。このため、ケースC11の場合にはケースC12の場合よりも次に示すように流動損失が増大する。
すなわち、ケースC11の場合には図9に示すように吸気弁51が単独で開弁している期間T1に、差圧のプラス領域での増加および吸気弁51、52の通過流量のプラス領域での増加(吸入量の増加)に応じて流動損失が増大する。また、吸気弁52が単独で開弁している期間T2に、差圧のマイナス領域での減少および吸気弁52の通過流量のマイナス領域での減少(吹き戻し量の増加)に応じて流動損失が増大する。このため、ケースC11の場合にはケースC12の場合よりも燃費が大幅に悪化する虞がある。
本発明は上記課題に鑑み、同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置を備える過給機付きのエンジンで過給を行うにあたって、吸気の流動損失による燃費の悪化を抑制可能なエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
本発明は同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置を備える過給機付きのエンジンに対して設けられ、
前記エンジンの運転状態に応じて前記複数の吸気弁のうちの一部の吸気弁と他の吸気弁との間に位相差を設けて実圧縮比よりも膨張比を高めた運転を行い、
過給要求がある場合に、前記一部の吸気弁と他の吸気弁との間の位相差が所定値よりも小さい場合に前記過給機による過給を行い、前記過給要求がある場合であって前記位相差が前記所定値以上の場合には、前記過給機による過給を行わずに前記位相差が前記所定値よりも小さくなるように前記動弁装置を制御する制御装置である。
本発明は前記位相差が前記所定値以上の場合に、前記一部の吸気弁および前記他の吸気弁のうち、相対的に早く開くほうの吸気弁の位相よりも相対的に遅く開くほうの吸気弁の位相を優先して変更することで、前記位相差が小さくなるように前記動弁装置を制御する構成とすることができる。
本発明によれば、同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置を備える過給機付きのエンジンで過給を行うにあたって、吸気の流動損失による燃費の悪化を抑制できる。
エンジンおよびその周辺の全体構成図である。 エンジンのバルブ配置図である。 ECUの制御動作をフローチャートで示す図である。 クランク角度に応じた各種のパラメータの変化の一例を位相差が互いに異なる場合それぞれについて比較して示す図である。 位相差に応じた各種のパラメータの変化の一例を示す図である。 位相差に応じた各種のパラメータの変化の一例を相対的に早く開くほうの吸気弁の位相を優先して変更した場合と相対的に遅く開くほうの吸気弁の位相を優先して変更した場合とについて比較して示す図である。 エンジンの回転数に応じた各種のパラメータの変化の一例を示す図である。 クランク角度に応じた各種のパラメータの変化の一例を過給がある場合と過給がない場合とについて比較して示す図である。 クランク角度に応じた流動損失の変化の一例を過給がある場合と過給がない場合とについて比較して示す図である。
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
図1はエンジン50およびその周辺の全体構成図である。図2はエンジン50のバルブ配置図である。図1に示す各構成は車両に搭載されている。図1に示すように、吸気系10はエアフロメータ11とインタークーラ12とインテークマニホールド13とを備えている。エアフロメータ11は吸入空気量を計測する。インタークーラ12は吸気を冷却する。インテークマニホールド13はエンジン50の各燃焼室Eに吸気を分配する。排気系20はエキゾーストマニホールド21と触媒22とを備えている。エキゾーストマニホールド21は各燃焼室Eからの排気を下流側で一つの排気通路に合流させる。触媒22は排気を浄化する。
過給機30はエンジン50に吸気を過給する。過給機30は排気駆動式の過給機であり、コンプレッサ部31とタービン部32とウェストゲートバルブ(以下、WGVと称す)33とを備えている。コンプレッサ部31は吸気系10に、タービン部32は排気系20にそれぞれ介在するようにして設けられている。WGV33はタービン部32を迂回する排気通路に設けられている。WGV33は開弁時にタービン部32を流通しようとする排気を迂回させることで、過給機30による過給が行われないようにする。
エンジン50は過給機30が上述のように設けられた過給機付きのエンジンとなっている。エンジン50は例えばエンジン50の出力で駆動する機械式の過給機が設けられることで、過給機付きのエンジンとなっていてもよい。図2に示すように、エンジン50は吸気弁51、52とカムシャフト60とVVT65とを備えている。エンジン50には同一の燃焼室Eに対して2つの吸気ポートIn1、In2が設けられている。そして、エンジン50では吸気ポートIn1を開閉する吸気弁51と吸気ポートIn2を開閉する吸気弁52とが複数の吸気弁として同一の燃焼室Eに対して設けられている。
カムシャフト60は二重構造のカムシャフトであり、外部カムシャフト61と、内部カムシャフト62と、第1のカム63と、第2のカム64とを備えている。外部カムシャフト61は中空構造を有している。内部カムシャフト62は外部カムシャフト61の内部に相対回転可能に挿入されている。第1のカム63は外部カムシャフト61に設けられている。第2のカム64は内部カムシャフト62に結合されており、外部カムシャフト61上を周方向に摺動可能に設けられている。第2のカム64は例えば外部カムシャフト61に周方向に沿って設けられた長穴を通じて、内部カムシャフト62とピンで結合できる。第1のカム63は吸気弁51に、第2のカム64は吸気弁52にそれぞれ対応させて設けられている。
VVT65は位相可変機構であり、エンジン50の図示しないクランクシャフトと同期して回転する。VVT65はクランクシャフトに対する外部カムシャフト61の相対的な位相を変更できるように構成されている。また、外部カムシャフト61に対する内部カムシャフト62の相対的な位相を変更できるように構成されている。VVT65は例えば油圧式の位相可変機構である。VVT65は電動式の位相可変機構であってもよい。カムシャフト60およびVVT65は吸気弁51、52の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置に相当する。動弁装置は例えば吸気弁51、52の駆動を電磁駆動化した場合の電磁駆動装置それぞれを有した構成として実現することもできる。
エンジン50に対してはECU1が設けられている。ECU1はエンジンの制御装置に相当する電子制御装置であり、図1、図2に示すようにECU1にはWGV33やVVT65が制御対象として電気的に接続されている。またエアフロメータ11や、エンジン50に対する加速要求を行うためのアクセル開度センサ80や、エンジン50の回転数NEを検出可能なクランク角センサ81や、外部カムシャフト61と内部カムシャフト62との間の位相差Δθを検出可能な位相センサ82がセンサ・スイッチ類として電気的に接続されている。
ECU1ではCPUがROMに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、各種の機能部が実現される。この点、ECU1では例えば以下に示す制御部が機能的に実現される。
制御部は過給要求がある場合に、複数の吸気弁である吸気弁51、52のうち、一部の吸気弁である吸気弁51と他の吸気弁である吸気弁52との間の位相差Δθに基づき過給機30による過給を行うか否かを判断する。具体的には制御部は位相差Δθが所定値αよりも小さい場合に過給機30による過給を行うと判断する。所定値αは回転数NEに応じた可変値となっている。所定値αは具体的には回転数NEが高い場合ほど小さくなるように設定される。
制御部は位相差Δθが所定値αよりも大きい場合(具体的にはここでは所定値α以上である場合)に位相差Δθが小さくなるようにVVT65を制御する。このとき、制御部は吸気弁51、52のうち、相対的に早く開くほうの吸気弁51の位相よりも相対的に遅く開く方の吸気弁52の位相を優先して変更することで、位相差Δθが小さくなるようにVVT65を制御する。この点、制御部は吸気弁51の位相よりも吸気弁52の位相を大幅に遅角させるようにVVT65を制御することで、実圧縮比よりも膨張比を大幅に高めた超高膨張比サイクルによる運転を機関運転状態に応じて行うようになっている。
制御部は過給要求がない場合にはWGV33を開弁する。そしてこれにより、過給機30による過給が行われないようにする。また、過給要求があり、且つ過給機30による過給を行うと判断した場合にWGV33を閉弁する。そしてこれにより、過給要求があり、且つ過給機30による過給を行うと判断した場合に過給機30による過給を可能にする。
次にECU1の制御動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。ECU1は過給要求があるか否かを判定する(ステップS1)。過給要求があるか否かは例えばアクセル開度センサ80の出力に基づき判定できる。否定判定であればECU1はWGV33を開弁し(ステップS5)、VVT65を通常制御する(ステップS6)。ステップS6では例えば機関運転状態に応じてVVT65を制御することができる。ステップS6の後には本フローチャートを一旦終了する。
ステップS1で肯定判定であれば、ECU1は位相差Δθが所定値αよりも小さいか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2で肯定判定であれば、ECU1は過給機30による過給を行うと判断する。このためこの場合には、WGV33を閉弁する(ステップS3)。そしてこれにより、過給機30による過給を可能にする。ステップS3の後には本フローチャートを一旦終了する。
ステップS2で否定判定であれば、ECU1は過給機30による過給を行わないと判断する。この場合、ECU1は位相差Δθが小さくなるようにVVT65を制御する(ステップS4)。ステップS4では、具体的には吸気弁52の位相を優先的に変更することで、位相差Δθが小さくなるようにVVT65を制御する。ステップS4の後には本フローチャートを一旦終了する。この場合、引き続き過給要求があれば、その後のルーチンにおいてステップS2で肯定判定されるまでの間、ステップS4で位相差Δθが小さくなるようにVVT65が制御される。そして、ステップS2で肯定判定された場合にステップS3で過給機30による過給が可能にされる。
次にECU1の作用効果について説明する。図4はクランク角度に応じた各種のパラメータの変化の一例を位相差Δθが互いに異なる場合それぞれについて示す図である。図4(a)は各種のパラメータとして吸気弁51、52のリフト量の変化を示す。図4(b)は筒内容積変化を示す。図4(c)は吸気弁51の通過流量の変化を示す。図4(d)は吸気弁52の通過流量の変化を示す。図4(e)はインテークマニホールド13内の圧力から筒内圧を引いたこれらの差圧の変化を示す。図4(f)は吸気の流動損失の変化を示す。図4(a)から図4(f)の横軸は互いに共通のクランク角度を示す。図4では過給圧が70kPaの場合の各種のパラメータの変化を示す。ケースC21は位相差Δθを縮小している場合を示し、ケースC22は位相差Δθを縮小していない場合を示す。
まずケースC22の場合について説明する。ケースC22の場合には図4(b)に示す筒内容積変化との関係上、図4(c)に示すように吸気弁51の通過流量に関しては、筒内容積変化の大きさが大きい場合に対応して吸入量が大きくなっている。また、図4(d)に示すように吸気弁52の通過流量に関しては、筒内容積変化の大きさが大きい場合に対応して吹き戻し量が大きくなっている。この点、このように吹き戻し量が大きくなっているのは、ケースC22の場合には超高膨張比サイクルによる運転で筒内容積変化が最小となる位相を超えて吸気弁52の位相が遅角されているためである。
これに対し、ケースC21の場合には図4(a)に示すように、ケースC22の場合よりも吸気弁52の位相が進角される結果、吸気弁51、52の位相が同相に近づいている。結果、図4(c)に示すように吸気弁51の通過流量に関しては、吸気弁51、52の位相が同相の場合に近づくようにして吸入量が減少する。また、図4(d)に示すように吸気弁52の通過流量に関しては、吸気弁51、52の位相が同相の場合に近づくようにして吸入量が増大するとともに吹き戻し量が減少する。そしてこれにより、筒内に残留する空気が増加することで出力が増大する。図4(e)に示すように、ケースC21の場合にはケースC22の場合よりも早い段階で筒内圧が高まることで、マイナス領域での差圧の低下が早まる。
これらの結果、図4(f)に示すようにケースC21の場合にはケースC22の場合よりも吸入量としての吸気弁51、52の通過流量が吸気弁51、52の位相が同相の場合に近づくようにして変化することで、流動損失が減少する。また、ケースC21の場合にはケースC22の場合よりも吹き戻し量としての吸気弁52の通過流量が吸気弁51、52の位相が同相の場合に近づくようにして減少することで、流動損失が減少する。そしてこれにより、流動損失による燃費悪化の抑制(熱効率の向上)が図られる。次にこの点について説明する。
図5は位相差Δθに応じた各種のパラメータの変化の一例を示す図である。図5(a)は各種のパラメータとしてエンジン50の出力の変化を示す。図5(b)は吸気の流動損失の変化を示す。図5(c)は出力に対する流動損失の割合の変化を示す。図5(a)から図5(c)の横軸は互いに共通の位相差Δθを示す。図5では過給圧が70kPa、回転数NEが2000rpmの場合の各種のパラメータの変化を示す。
図5(a)に示すように出力は位相差Δθが縮小するほど高くなる。図5(b)に示すように流動損失は位相差Δθが縮小するほど小さくなる。すなわち、これらから位相差Δθが縮小するほど出力は高まり、流動損失は小さくなることがわかる。結果、図5(c)に示すように出力に対する流動損失の割合は位相差Δθが縮小するほど小さくなる。したがって、熱効率は位相差Δθが縮小するほど高まることになる。
これに対し、ECU1は過給要求がある場合に位相差Δθに基づき過給機30による過給を行うか否かを判断する。このため、ECU1は過給を行うにあたって吸気の流動損失による燃費の悪化を抑制できる。具体的にはECU1は位相差Δθが所定値αよりも小さい場合に過給機30による過給を行うと判断し、これにより過給要求があり、且つ過給機30による過給を行うと判断した場合に過給機30による過給を可能にすることで、過給を行うにあたって吸気の流動損失による燃費の悪化を抑制できる。
ECU1は位相差Δθが所定値αよりも大きい場合に次に示すようにして位相差Δθを小さくすることで、位相差Δθが所定値αよりも小さくなった場合に吸気の流動損失による燃費の悪化を好適に抑制しつつ、過給機30による過給を可能にすることもできる。
図6は位相差Δθに応じた各種のパラメータの変化の一例を吸気弁51の位相を優先して変更した場合と吸気弁52の位相を優先して変更した場合とについて比較して示す図である。図6(a)は各種のパラメータとしてエンジン50の出力の変化を示す。図6(b)は吸気の流動損失の変化を示す。図6(c)は出力に対する流動損失の割合の変化を示す。図6(a)から図6(c)の横軸は互いに共通の位相差Δθを示す。
図6(a)に示すように、吸気弁51優先の場合には位相差Δθが縮小しても出力はほとんど変化しない。一方、吸気弁52優先の場合には位相差Δθが縮小するほど出力が高まる。図6(b)に示すように、吸気弁51優先の場合には位相差Δθが縮小しても流動損失はほとんど減少せず、その後増大に転じる。これは、吸気弁51優先の場合には吸気行程開始時の開口面積が小さくなる結果、差圧が高まるためである。一方、吸気弁52優先の場合には位相差Δθが縮小するほど流動損失が減少する。
これらの結果、図6(c)に示すように吸気弁51優先の場合には位相差Δθが縮小しても出力に対する流動損失の割合はほとんど減少せず、その後増大に転じる。一方、吸気弁52優先の場合には位相差Δθが縮小するほど出力に対する流動損失の割合が減少する。したがって、吸気弁51優先の場合よりも吸気弁52優先の場合のほうが、熱効率の向上に対する影響が大きい分、効果的であることがわかる。これは、吸気の吹き戻しが発生する吸気弁52の場合には位相差θの縮小が出力と流動損失の両方に影響するためである。
これに対し、ECU1は位相差Δθが所定値αよりも大きい場合に吸気弁51、52のうち、吸気弁51の位相よりも吸気弁52の位相を優先して変更することで、位相差Δθが小さくなるようにVVT65を制御する。そしてこれにより、位相差Δθが所定値αよりも小さくなった場合に吸気の流動損失による燃費の悪化を好適に抑制しつつ、過給機30による過給を可能にすることもできる。
このようにVVT65を制御するECU1はVVT65が油圧式の位相可変機構である場合には以下の点でも好適である。すなわち、VVT65が油圧式の位相可変機構である場合には吸気弁51、52の位相をともに変更しようとすると、油量の減少により位相可変動作が遅くなる。これに対し、ECU1はこのようにVVT65を制御することで、吸気弁51、52の位相をともに変更する場合と比較して過給機30による過給を素早く可能にすることもできる。
ECU1は次のようにして吸気の流動損失による燃費の悪化を好適に抑制することもできる。図7は回転数NEに応じた各種のパラメータの変化の一例を示す図である。図7(a)はエンジン50の出力の変化を示す。図7(b)は吸気の流動損失の変化を示す。図7(c)は出力に対する流動損失の割合の変化を示す。図7(a)から図7(c)の横軸は互いに共通の回転数NEを示す。図7では過給圧が70kPaの場合の各種のパラメータの変化を位相差ΔθがΔθ1からΔθ5の場合(Δθ1<Δθ2<Δθ3<Δθ4<Δθ5)それぞれについて示す。
図7(a)に示すように、出力は各場合ともに回転数NEが上昇しても大幅には増加しない。図7(b)に示すように、流動損失は各場合ともに回転数NEが上昇するほど大きくなる。結果、図7(c)に示すように、出力に対する流動損失の割合は各場合ともに回転数NEが上昇するほど大きくなる。これに対し、ECU1は所定値αを回転数NEに応じた可変値とすることで、出力に対する流動損失の割合を回転数NEによらず同等にすることもできる。
この点、ECU1は具体的には例えば図7(c)に示す破線Lに対応させるようにして(すなわち、出力に対する流動損失の割合につき、所定の割合に対応させて)、回転数NEが高い場合ほど値が小さくなるように所定値αを設定することで、出力に対する流動損失の割合を回転数NEによらず同等にすることができる。
所定値αは例えば位相差Δθを小さくすることで、吸気弁52が単独で開弁している間に発生する流動損失が飽和し始める(流動損失の変化がフラットになる)値に設定されてもよい。この場合には、位相差θを必要以上に縮小することなく、流動損失による燃費の悪化を抑制できる点で、吸気の流動損失による燃費の悪化を好適に抑制できる。かかる値は例えば30°CA以下であり、マップデータで予め準備しておくことができる。
過給を行うにあたって流動損失による燃費の悪化が生じる事態は具体的には例えば吸気弁51の位相よりも吸気弁52の位相を遅角させるようにVVT65を制御することで、実圧縮比よりも膨張比を高める運転を行う結果、位相差θが設けられる場合に発生する。このため、ECU1はエンジン50が具体的にはかかる運転を行うエンジンである場合に好適である。この点、かかる運転で筒内容積変化が最小となる位相を超えて吸気弁52の位相が遅角される場合には、流動損失による燃費の悪化が特に大きく発生することになる。このため、ECU1はかかる場合に特に好適である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば一部の吸気弁は位相が互いに同様に設定される複数の吸気弁であってもよい。これは他の吸気弁についても同様である。
ECU 1
吸気系 10
排気系 20
過給機 30
エンジン 50
吸気弁 51、52
カムシャフト 60
VVT 65

Claims (2)

  1. 同一の燃焼室に対して設けられた複数の吸気弁の位相を互いに独立して変更可能な動弁装置を備える過給機付きのエンジンに対して設けられ、
    前記エンジンの運転状態に応じて前記複数の吸気弁のうちの一部の吸気弁と他の吸気弁との間に位相差を設けて実圧縮比よりも膨張比を高めた運転を行い、
    過給要求がある場合に、前記一部の吸気弁と他の吸気弁との間の位相差が所定値よりも小さい場合に前記過給機による過給を行い、前記過給要求がある場合であって前記位相差が前記所定値以上の場合には、前記過給機による過給を行わずに前記位相差が前記所定値よりも小さくなるように前記動弁装置を制御するエンジンの制御装置。
  2. 請求項1記載のエンジンの制御装置であって、
    前記位相差が前記所定値以上の場合に、前記一部の吸気弁および前記他の吸気弁のうち、相対的に早く開くほうの吸気弁の位相よりも相対的に遅く開くほうの吸気弁の位相を優先して変更することで、前記位相差が小さくなるように前記動弁装置を制御するエンジンの制御装置。
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