JP5901489B2 - 四輪駆動車両の駆動力伝達装置 - Google Patents

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本発明は、駆動源からの駆動力を主駆動輪及び副駆動輪に伝達する四輪駆動車両において、駆動源と副駆動輪との間に配置されたビスカスカップリングと、副駆動輪に伝達する駆動力を配分するディファレンシャル機構とを備える四輪駆動車両の駆動力伝達装置に関する。
従来、駆動源からの駆動力を主駆動輪及び副駆動輪に伝達する四輪駆動車両では、駆動源と副駆動輪との間のプロペラシャフト(回転軸)上に配置したビスカスカップリング(VC)を備えると共に、ビスカスカップリングに隣接する位置に副駆動輪に伝達する駆動力を配分するためのディファレンシャル機構(差動機構)を備えるものがある。
このような四輪駆動車両では、主駆動輪と副駆動輪の車輪速差がプロペラシャフト上のビスカスカップリングに対する入力差回転数となり、四輪駆動トルク(4WDトルク)を出力する構造である。すなわち、例えば、車両のフロント側にエンジン及びトランスミッションを配置し、前輪を主駆動輪とし後輪を副駆動輪とする前輪駆動車(FF車)では、車両が低摩擦抵抗(低摩擦係数)の路面を走行中にドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ場合、まず、前輪に駆動トルクが伝達される。そして、前輪が路面のグリップ限界を超えて空転するとビスカスカップリングに差回転が入力されて後輪に駆動トルクが伝達される。
上記のような四輪駆動車両では、通常走行時には、主駆動輪と副駆動輪の回転差によりビスカスカップリングに差回転が入力され続ける四輪駆動(4WD)状態である。しかしながら、車両の走行状態に関わらずこのような四輪駆動状態が継続すると、駆動伝達系における各部の損失や走行抵抗の増大による車両の燃費(燃料消費率)の悪化を招く一因となる。また、転舵旋回など前後輪差で発生する4WDタイトターンブレーキング現象が顕著に出るため、車両の走行性能(走行商品性)の悪化も招くおそれがある。さらには、低摩擦抵抗の路面でのABS(Anti-lock Braking System)作動時のカスケードロックを誘発することでも知られている。
そこで、上記の各種問題に対する従来の手法として、車両の走行状態に応じてカップリング装置による副駆動輪へのトルク伝達量を可変する機構が採用されている。このような機構として、電気的にクラッチのオンオフ制御を行うもの(特許文献1)や、手動で異なるトルク特性のビスカスカップリングの切替を行うもの(特許文献2)がある。
しかしながら、特許文献1,2に記載の従来技術は、対応する制御回路を備えた電子制御ユニット(ECU)や、操作用のレバーなどの付帯物が必要となることで、車両の構造の複雑化や部品点数の増加、制御処理の煩雑化につながる。そのため、車両のコスト・重量・サイズ増を招くという問題がある。また、車速が所定以上の高速域では、ビスカスカップリングなどのカップリング装置による副駆動輪へのトルク伝達の必要性が減少するところ、電子制御により副駆動輪へのトルク伝達量を可変するもの以外は、高速域での伝達トルクを適切に低減することができない、という問題もある。
特開2009−144779号公報 特開平2−60842号公報
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を少なく抑えた簡単な構成で、かつ電子制御や手動操作などを行うことなく、車両の走行状態に応じた副駆動輪への適切なトルク伝達が可能となる四輪駆動車両の駆動力伝達装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、駆動源(3)からの駆動力を主駆動輪(W1,W2)及び副駆動輪(W3,W4)に伝達する駆動力伝達経路における前記駆動源(3)と前記副駆動輪(W3,W4)との間に配置された回転差応動型のトルク伝達部(18)を有するトルク伝達装置(30)と、前記副駆動輪(W3,W4)に伝達する駆動力を配分するためのディファレンシャル機構(30)と、を備える四輪駆動車両の駆動力伝達装置であって、前記トルク伝達装置(30)は、前記トルク伝達部(18)からのトルクが伝達される回転部材(17)と、前記副駆動輪(W3,W4)側に駆動力を伝達する出力軸(12)と、前記回転部材(17)と前記出力軸(12)との間でのトルク伝達の有無を切り替えるトルク伝達切替機構(60)と、を備え、前記ディファレンシャル機構(30)は、前記出力軸(12)に連結されたピニオンシャフト(36)と、前記ピニオンシャフト(36)の端部に設けられて前記副駆動輪(W3、W4)側のギヤ(34)に噛合するピニオンギヤ(35)と、少なくとも前記ピニオンギヤ(35)と前記ピニオンシャフト(36)を収容してなるケーシング(41)と、前記ピニオンシャフト(36)を前記ケーシング(41)に回転自在に支持するベアリング(38,39)と、前記副駆動輪(W3,W4)側のギヤ(34)の回転で掻き上げられた潤滑油を前記ベアリング(38,39)に導くためのガイド部(42)と、を備え、前記トルク伝達切替機構(60)は、前記出力軸(12)上に相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設置されたピストン(61)と、該ピストン(61)を収容すると共に前記ディファレンシャル機構(30)の潤滑油を充填してなる収容室(63)と、前記回転部材(17)に設けたドグ歯(17)と、前記ピストン(61)に設けたドグ歯(61)と、前記収容室(63)内で摺動可能に設置されたスプールバルブ(65)と、を備え、前記ベアリング(38,39)に導かれた潤滑油を該ベアリング(38,39)の回転に伴う排出圧で前記トルク伝達切替機構(60)の前記収容室(63)に導入し、該収容室(63)から前記ケーシング(41)内に戻すように構成すると共に、前記スプールバルブ(65)が前記車両の慣性力に応じて前記収容室(63)内を移動すると、前記ピストン(61)にかかる油圧が変化することで、前記ピストン(61)のドグ歯(61)と前記回転部材(17)のドグ歯(17)との係合・非係合が切り替わるように構成したことを特徴とする。
本発明にかかる四輪駆動車両の駆動力伝達装置によれば、ピニオンシャフトを支持するベアリングが吐出するディファレンシャル機構の潤滑油の背圧を利用して、当該潤滑油をビスカスカップリングのトルク伝達切替機構へ送るように構成すると共に、トルク伝達切替機構において、スプールバルブが車両の慣性力で収容室内を移動することで、収容室内の潤滑油の油圧が変化し、当該油圧の変化によりピストンが移動して該ピストンのドグ歯と回転部材のドグ歯との係合・非係合が切り替わるように構成した。これにより、油圧ポンプなどの機構を別途に設けることなく、トルク伝達切替機構によるトルク伝達の有無の切り替えが可能となる。したがって、車両の走行状態に応じて二輪駆動(2WD)状態と四輪駆動(4WD)状態との切り替えを自動的に行うことができるようになる。
また、上記の駆動力伝達装置では、前記スプールバルブ(65)が車両の前方向への加速度で前側へ移動したときに、前記収容室(63)内の油圧で前記ピストン(61)のドグ歯(61)が前記インナーハブ(17)のドグ歯(17)と噛合する係合位置へ前記ピストン(61)が移動し、前記スプールバルブ(65)が車両の後方向への加速度で後側へ移動したときに、前記ピストン(61)のドグ歯(61)と前記インナーハブ(17)のドグ歯(17)との噛合が解除される非係合位置へ前記ピストン(61)が移動するように構成してよい。

この構成によれば、従動輪側のトルクを必要とする登坂を含めた車両の発進領域では、ピストンが係合位置へ移動して該ピストンのドグ歯と回転部材のドグ歯とが係合することで、トルク伝達装置によるトルク伝達が行われる状態となる。その一方で、車両の定常走行時及び減速時には、ピストンが非係合位置に保持されるので、ピストンのドグ歯と回転部材のドグ歯とが係合しないことで、トルク伝達装置によるトルク伝達が行われない状態とすることができる。
また、上記の駆動力伝達装置では、前記ベアリング(38,39)は、前記ピニオンシャフト(36)の軸方向に対して傾斜する軸上を転動するローラ(38a,39a)を備えたテーパローラベアリング(38,39)であってよい。テーパローラベアリングは、ローラの傾角の作用により、ローラの回転に比例した潤滑油の吸排を行うポンプ効果を有する。したがって、本発明にかかる駆動力伝達装置では、このポンプ効果にてベアリングから排出された潤滑油の油圧を利用して、潤滑油流通路に潤滑油を流通させることができる。これにより、別途のポンプ構造などを設けることなく、部品点数を少なく抑えた簡単な構成で、潤滑油流通路を通してディファレンシャル機構の潤滑油をビスカスカップリングのトルク伝達切替機構に流通させることが可能となる。
また、上記の駆動力伝達装置では、前記ベアリング(38,39)を収容したベアリング室(37)内の潤滑油を前記ケーシング(41)内に戻す戻し油路(40)と、該戻し油路(40)に設置した開閉弁(46)とを備え、前記開閉弁(46)は、前記戻し油路(40)を流通する潤滑油の油圧が所定以上になると開くことで、前記ベアリング室(37)の油圧を所定圧以下に調圧するようにしてよい。
この構成によれば、ベアリング室の油圧を所定圧以下に調圧することができるので、潤滑油流通路でトルク伝達切替機構に供給される潤滑油の油圧を安定させることができる。したがって、トルク伝達切替機構によるトルク伝達の有無の切り替えをより確実に行うことが可能となる。
また、上記の駆動力伝達装置では、前記トルク伝達部(18)は、前記駆動源(3)からの駆動力が伝達される回転軸(7)に接続されたハウジング(11)と、前記出力軸(12)上に相対回転可能に設置されたインナーハブ(17)と、前記ハウジング(11)と前記インナーハブ(17)との間に画成した粘性流体を充填してなる作動室(16)と、前記ハウジング(11)に連結されて前記回転軸(7)の軸方向に沿って積層した複数の第1プレート部材(13)と、前記インナーハブ(17)に連結された複数の第2プレート部材(14)と、を備え、前記作動室(16)内で前記回転軸(7)の軸方向に沿って前記第1プレート部材(13)と前記第2プレート部材(14)とが交互に配列された構成であってよい。
なお、上記で括弧内に記した参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素に付した符号を参考のために例示したものである。
本発明にかかる四輪駆動車両の駆動力伝達装置によれば、部品点数を少なく抑えた簡単な構成で、かつ電子制御や手動操作などを行うことなく、車両の走行状態に応じた副駆動輪への適切なトルク伝達が可能となる。
本発明の一実施形態にかかる駆動力伝達装置を備える四輪駆動車両の概略構成を示す図である。 ビスカスカップリング及びディファレンシャル機構を示す側断面図である。 トルク伝達切替機構の詳細構成を示す図で、図2のX部分の部分拡大図である。 車速に対するフラップ弁の開度(リターン油路の開口量)Sとベアリング室の発生油圧Pとの関係を示すグラフである。 テーパローラベアリングの回転数と排出圧(背圧)との関係を示すグラフである。 ベアリング室の発生油圧Pとピストンの推力Fとの関係を示すグラフである。 車両の定常走行時におけるトルク伝達切替機構の状態を示す図である。 車両の急加速時におけるトルク伝達切替機構の状態を示す図である。 車両の登坂発進時におけるトルク伝達切替機構の状態を示す図である。 車両の後進発進時におけるトルク伝達切替機構の状態を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる駆動力伝達装置の潤滑構造を備えた四輪駆動車両の概略構成を示す図である。同図に示す四輪駆動車両1は、車両の前部に搭載したエンジン(駆動源)3と、エンジン3と一体に設置したトランスミッション(変速機)4と、エンジン3からの駆動力を前輪W1,W2及び後輪W3,W4に伝達するための駆動力伝達経路2とを備えている。
エンジン3の出力軸(図示せず)は、トランスミッション4、フロントディファレンシャル5、左右のフロントドライブシャフト6,6を介して、主駆動輪である左右の前輪W1,W2に連結されている。さらに、エンジン3の出力軸は、トランスミッション4、フロントディファレンシャル5、プロペラシャフト7、ビスカスカップリング10、リアディファレンシャル(ディファレンシャル機構)30、左右のリアドライブシャフト9,9を介して副駆動輪である左右の後輪W3,W4に連結されている。なお、以下の説明で軸方向というときは、車両の進行方向(前後方向)に沿って延伸するプロペラシャフト7の軸方向を指すものとする。また、前又は後というときは、当該軸方向の前(車両の前進方向)及び後(後進方向)を指すものとする。
プロペラシャフト7上には、ビスカスカップリング(トルク伝達装置)10が設置されている。ビスカスカップリング10は、駆動力伝達経路2において後輪W3,W4に配分するトルクを制御するための回転差応動型のトルク伝達装置である。ビスカスカップリング10の後側に隣接する位置には、リアディファレンシャル30が設置されている。
図2は、ビスカスカップリング10及びリアディファレンシャル30を示す側断面図である。同図に示すように、リアディファレンシャル30は、ディファレンシャルケース31に収容された差動部32と、ディファレンシャルケース31に固定されたリングギヤ34と、リングギヤ34と互いの軸線が交差するよう噛み合うピニオンギヤ35と、テーパローラベアリング(円錐ころ軸受)38,39を介してピニオンシャフト36を回転自在に支持するディファレンシャルキャリヤ41とを含んで構成されている。ここでは、ピニオンギヤ35の支持の剛性を確保するために、ピニオンギヤ35を支持するベアリングとして、ピニオンシャフト36の軸方向に対して傾斜する軸上を転動するローラ38a,39aを備えたテーパローラベアリング38,39を使用している。
リングギヤ34は、かさ歯車、ハイポイドギヤなどの軸角が90度をなす歯車からなり、リングギヤ34の軸線とピニオンギヤ35の軸線とが直交するようピニオンギヤ35と噛み合っている。ピニオンギヤ35に伝達された動力がリングギヤ34を介して減速され、差動部32に伝達されるようになっている。
ピニオンギヤ35は、リングギヤ34と同様のかさ歯車、ハイポイドギヤなどの軸角が90度をなす歯車で、その一端(前側の端部)には、一体的に形成されたピニオンシャフト36が連結されている。ピニオンシャフト36は、テーパローラベアリング38,39を介してディファレンシャルキャリヤ41に回転自在に支持されている。
ディファレンシャルキャリヤ41は、テーパローラベアリング38,39を収容するベアリング室37を画成してなるガイド部(ホルダー部)42を含む。そして、ガイド部42には、リングギヤ34が掻き上げた潤滑油をベアリング室37に供給するための油路44が設けられている。また、リアディファレンシャル30のガイド部42とビスカスカップリング10のカバー部材15との間には、それらの隙間を密封するためのオイルシール43が設置されている。さらに、ベアリング室37からリアディファレンシャル30のディファレンシャルキャリヤ41内に通じるリターン油路(戻し油路)40と、該リターン油路40を開閉するためのフラップ弁(開閉弁)46とを備えている。フラップ弁46は、回転軸に対して回動可能に設置されたフラップ板46aと、回転軸上に設置したねじりコイルバネ46bとを備えており、ねじりコイルバネ46bの付勢力(ねじり方向の付勢力)でフラップ板46aがリターン油路40を閉じる位置へ付勢されている。そして、ベアリング室37内の潤滑油の油圧が所定圧以上になると、当該油圧でフラップ板46aが押されることで、ねじりコイルバネ46bの付勢力に抗してフラップ弁46が開かれるようになっている。
ビスカスカップリング10のトルク伝達部18は、プロペラシャフト7(図1参照)と一体に回転する筒状のハウジング11と、ハウジング11内において該ハウジング11と同一軸線回りで回転するインプットシャフト(ビスカスカップリング10の出力軸)12と、インプットシャフト12の外周に相対回転可能に設置された中空筒状のインナーハブ17と、ハウジング11の内周面に所定間隔で相対回転不能に係合する複数のアウタープレート(第1プレート部材)13と、インナーハブ17の外周面に所定間隔で相対回転不能に係合し、アウタープレート13と軸方向に交互に配置される複数のインナープレート(第2プレート部材)14と、ハウジング11とインプットシャフト12との間を閉塞するカバー部材15と、ハウジング11の内径側に画成された作動室16とを備える。
作動室16内には、シリコーンオイルなどの粘性流体が充填されていると共に、上記複数のアウタープレート13と複数のインナープレート14とが交互に積層されている。インプットシャフト12は、中空円筒状の部材であって、ピニオンシャフト36の外周にスプライン係合してピニオンシャフト36と一体に回転するようになっている。
また、ビスカスカップリング10は、インナーハブ17からインプットシャフト12へのトルク伝達の有無を切り替えるためのトルク伝達切替機構60を備えている。図3は、トルク伝達切替機構60の詳細構成を示す図で、図2のX部分の部分拡大図である。トルク伝達切替機構60は、スプライン係合部61eを介してインプットシャフト12上に相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設置されたピストン61と、リアディファレンシャル30からの潤滑油が流通すると共にピストン61を収容してなる収容室63と、インナーハブ17の後端に設けたドグ歯17dと、ピストン61の前端に設けたドグ歯61dと、収容室63内で前後方向に摺動可能に設置されたスプールバルブ65と、を備える。
ピストン61は、収容室63内の前側に設置した径寸法の小さな板状の小径部61aと、後側に設置した径寸法の大きな板状の大径部61bと、小径部61aと大径部61bを連結してなる連結部61cと、連結部61cを径方向に貫通する通路61fとを備える。そして、ピストン61は、インプットシャフト12と収容室63内に設置した仕切壁66a,66bとの間に介在しており、大径部61bと仕切壁66bとの間、及びインプットシャフト12との間にはそれぞれ、それらの隙間を密封するためのOリング(シール部材)73a,73bが介在しており、小径部61aと仕切壁66aとの間、及び小径部61aとインプットシャフト12との間にはそれぞれ、それらの隙間を密封するためのOリング(シール部材)74a,74bが介在している。また、大径部61bと仕切壁66bとの間、及び大径部61bとインプットシャフト12との間にはそれぞれ、それらの隙間を密封するためのOリング(シール部材)73a,73bが介在している。ピストン61は、仕切壁66a,66bとインプットシャフト12との間で前後方向に摺動(移動)するようになっている。ピストン61の大径部61bと小径部61aとの間には、収容室63に連通する第2油路53が開通している。なお、インナーハブ17とインプットシャフト12との間には、それらの隙間を密封するためのOリング(シール部材)68が介在しており、カバー部材15の内周とインナーハブ17との間には、それらの隙間を密封するためのOリング(シール部材)69が介在している。
そして、ピストン61は、大径部61bと小径部61aとの隙間に設けた中間油室72の油圧と、大径部61bの背面側(大径部61bと側壁64aとの間)に設けた背面側油室71の油圧との差圧によって前後方向に移動する。そして、ピストン61が前側に移動した位置で、ピストン61のドグ歯61dがインナーハブ17のドグ歯17dに係合(噛合)するようになっている。一方、ピストン61が後側に退避した位置で、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合(噛合)が解除されるようになっている。なお、ピストン61は、中間油室72と背面側油室71との差圧が所定以下の場合には、Oリング73,74の密着による摩擦力(フリクション)で、前後方向に移動しないように保持される。
スプールバルブ65は、収容室63内の後側に設置した径寸法の小さな板状の小径部65aと、前側に設置した径寸法の大きな板状の大径部65bと、小径部65aと大径部65bを連結してなる連結部65cとを備える。
スプールバルブ65は、車両にかかる慣性力で、収容室63内で仕切壁66a,66bの外径側(ドレンポート63cの内径側)を前後方向に移動する。スプールバルブ65が前側に移動した位置で、スプールバルブ65によって中間油室72とドレンポート63cとの間が塞がれ、背面側油室71とドレンポート63cが連通した状態となる。一方、スプールバルブ65が後側に移動した位置で、スプールバルブ65によって中間油室72及び背面側油室71とドレンポート63cとの間が塞がれた状態となる。なおこのとき、中間油室72と背面側油室71は連通した状態となる。
また、収容室63には、ベアリング室37から排出された潤滑油を導入する第2油路53と、潤滑油をドレン油路56へ導出する第3油路55とが設けられている。第2油路53は、収容室63内の中間油室72に潤滑油を導入する。中間油室72に導入された潤滑油は、仕切壁66a,66bの間を通ってスプールバルブ65に導かれる。この潤滑油は、スプールバルブ65のポジションによってピストン61の背面側に導出されるか、ドレンポート63cに導出される。ドレンポート63cの潤滑油は、第3油路55を通って収容室63の外部へ排出される。
そして、スプールバルブ65が後側の側壁64bに当接する位置では、第2油路53から中間油室72に導入された潤滑油はm背面側油室71に導かれる。背面側油室71の油圧でピストン61が前側に押圧されて移動する。これにより、ピストン61のドグ歯61dがインナーハブ17のドグ歯17dに係合する。その一方で、スプールバルブ65が前側の側壁64cに当接する位置では、第2油路53から中間油室72に導入された潤滑油は、中間油室72に封入された状態となる。このとき、背面側油室71の潤滑油は、ドレンポート63cを介して排出される。これにより、背面側油室71と中間油室72から大径部61bにかかる差圧でピストン61は後側の位置に戻される。したがって、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合が外れた状態となる。
このように、スプールバルブ65の移動による収容室63内の潤滑油の流れ変化によって、ピストン61が前後に移動して該ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合・非係合が切り替わる。これにより、ビスカスカップリング10を介しての後輪(副駆動輪)W3,W4へのトルク伝達の有無が切り替わるように構成している。
なおここでは、スプールバルブ65には、リターンスプリングなどの付勢手段を設けておらず、収容室63内の潤滑油の油圧のみでスプールバルブ65が移動するように構成している。これにより、収容室63内の潤滑油の油圧が比較的に低い油圧でもスプールバルブ65が確実に作動するように構成している。
また、図2に示すように、ハウジング11の内周面とインプットシャフト12の外周面との間には、それらの隙間をシールするシール部材20が設置されている。また、インプットシャフト12の外周面とカバー部材15の内周面との間には、それらの隙間をシールするシール部材21が設置されている。また、ハウジング11の内周面とカバー部材15の外周面との間には、それらの隙間をシールするシール部材22が設置されている。また、ハウジング11の内周面とインプットシャフト12の外周面との間には、軸受23が介装されている。カバー部材15の内周面とインプットシャフト12の外周面との間には、軸受24が介装されている。
次に、リアディファレンシャル30の潤滑油をビスカスカップリング10のトルク伝達切替機構60に流通させる潤滑油流通路50について説明する。この潤滑油流通路50は、図2に示すように、インプットシャフト12の後端部において該インプットシャフト12の外周から内周に通じる第1油路51と、インプットシャフト12の内周面とピニオンシャフト36の外周面との間において、インプットシャフト12とピニオンシャフト36をスプライン嵌合させるスプライン嵌合部の隙間に形成された第1ポート52と、インプットシャフト12から径方向の外側へ延びてカバー部材15内まで延伸し、トルク伝達切替機構60の収容室63に連通する第2油路53と、トルク伝達切替機構60の収容室63から出てインプットシャフト12を貫通し、インプットシャフト12とピニオンシャフト36の隙間に形成された第2ポート54に連通する第3油路55と、第2ポート54からピニオンシャフト36の内部を軸方向に沿って後側へ延びてピニオンギヤ35の後端からディファレンシャルケース31内に連通しているドレン油路56とを備えている。なお、第2ポート54の軸方向の両側におけるインプットシャフト12とピニオンシャフト36との隙間には、Oリングなどのシール部材57が設置されている。
図4(a)は、車速Vに対するフラップ弁46の開度(リターン油路40の開口量)Sを示すグラフであり、(b)は、車速Vに対するとベアリング室37の発生油圧Pを示すグラフである。同図のグラフに示すように、フラップ弁46は、設定圧P1以上で自動的に開くように構成している。このようなフラップ弁46をリターン油路40に設けたことで、ベアリング室37の発生油圧Pが設定油圧P1に達する車速V1以上の車速領域では、ベアリング室37内の油圧を略一定の油圧に保持できる構造としている。これにより、潤滑油の油温の変化などで車速Vによる潤滑油の流量が異なる場合でも、トルク伝達切替機構60に供給される潤滑油の油圧(作動油圧)を確保することができる。
図5は、テーパローラベアリング38,39の回転数と潤滑油の排出圧との関係を示すグラフである。同図のグラフには、潤滑油の油温TがT=T1の場合とT=T2の場合(T1<T2)が示されている。潤滑油の油温が高いほど、テーパローラベアリング38,39による排出圧が高くなる。また、図6は、ベアリング室37の発生油圧とピストン61の推力との関係を示すグラフである。図5のグラフに示すように、テーパローラベアリング38,39の背圧によるベアリング室37の発生油圧Pは、テーパローラベアリング38,39の回転数Nと潤滑油の油温Tに応じて変化する。そのため、フラップ弁46によるリターン油路40の開閉によりベアリング室37の発生油圧Pを調整できるようにしている。
しかしながらベアリング室37の発生油圧Pは、テーパローラベアリング38,39の背面側にあるオイルシール43の耐圧以内に抑える必要がある。そのため、比較的低油圧に設定しなければならない。そこで、本実施形態では、トルク伝達切替機構60のピストン61が潤滑油から圧力を受ける面積(受圧面積)を十分に確保することで、比較的に低油圧でもピストン61の推力を確保できるようにしている。すなわち、図6に示すように、ベアリング室37の発生油圧Pの領域内でピストン61推力F1が必要推力F1となるように設定する。
次に、上記構成のビスカスカップリング10による駆動力の伝達について説明する。図1に示すエンジン3から出力されたトルクがトランスミッション4を介してフロントディファレンシャル5に伝達される。フロントディファレンシャル5に伝達されたトルクの一部は、フロントドライブシャフト6,6を介して前輪W1,W2に伝達され、前輪W1,W2の駆動力により車両が走行する。また、フロントディファレンシャル5に伝達されたトルクの一部はプロペラシャフト7に伝達される。プロペラシャフト7に伝達されたトルクは、ビスカスカップリング10のハウジング11に伝達される。
一方、車両1の走行中は、後輪W3,W4から入力されるトルクが、リアディファレンシャル30を介してインプットシャフト12に伝達される。そして、ハウジング11の回転数とインプットシャフト12の回転数とが等しい場合は、アウタープレート13の回転数とインナープレート14の回転数が等しく、プロペラシャフト7のトルクは後輪W3,W4には伝達されない。これにより、車両は二輪駆動(前輪駆動)により走行する。
前輪W1,W2がスリップしてハウジング11とインプットシャフト12に差回転が生じた場合は、アウタープレート13とインナープレート14とに差動回転が生じ、その回転差に応じて作動室16内の粘性流体にせん断力が発生する。このせん断力により、プロペラシャフト7からハウジング11に伝達されたトルクがインプットシャフト12に伝達されるとともに、リアディファレンシャル30を介して後輪W3,W4に伝達される。これにより、車両は四輪駆動状態になる。このように、ビスカスカップリング10では、ハウジング11へ入力された回転によりプレート13,14間の差動が発生し、シリコーンオイルの粘性抵抗をインプットシャフト12が受けトルク伝達が行われる。
また、エンジン3が始動すると、エンジン3から出力される動力は、トランスミッション4からプロペラシャフト7及びビスカスカップリング10を経由して、図2に示すピニオンギヤ35に伝達され、ピニオンギヤ35が回転する。これにより、リングギヤ34が回転する。リングギヤ34の回転により、リアディファレンシャル30の差動部32に駆動力が伝達されて、差動部32から後輪W3,W4に駆動力が伝達される。
次に、潤滑油流通路50における潤滑油の流れについて説明する。まず、車両の発進と同時に回転を開始したリングギヤ34によって掻き上げられた潤滑油貯留部45内の潤滑油が、ガイド部42の油路44に沿ってベアリング室37に流入する。ここで、ピニオンギヤ35を支持しているテーパローラベアリング38,39には、ローラの傾角の作用により、回転に比例した潤滑油の吸排を行うポンプ効果が発生する。これにより、テーパローラベアリング38,39の背面側に排出された潤滑油がベアリング室37内に充満する。そして、ベアリング室37の潤滑油の油圧Pが設定圧P1(図4参照)に到達したときに、フラップ弁46が開かれるので、ベアリング室37の潤滑油がリターン油路40を介してリリーフされる。こうして、ベアリング室37の油圧が略一定の油圧に保たれるようになっている。
一方、テーパローラベアリング39の背面側(軸方向の前側)に排出された潤滑油は、テーパローラベアリング39の回転に伴う排出圧で、第1油路51から第1ポート52に導かれる。第1ポート52でインプットシャフト12とピニオンシャフト36との間のスプライン嵌合部の潤滑が行われる。第1ポート52を出た潤滑油は、第2油路53を通ってトルク伝達切替機構60の収容室63に導入される。トルク伝達切替機構60の収容室63を出た潤滑油は、第3油路53、第2ポート54、ドレン油路56をこの順に通ってピニオンギヤ35の後端部からディファレンシャルケース31内に戻される。
このように、本実施形態の駆動力伝達装置では、テーパローラベアリング39の背面側に排出された潤滑油の油圧を利用して、該潤滑油を潤滑油流通路50でビスカスカップリング10のトルク伝達切替機構60の収容室63に導入することで、ビスカスカップリング10を介したトルク伝達の有無を切り替えるようにしている。以下、このトルク伝達切替機構60によるトルク伝達の有無の切り替えについて、詳細に説明する。
(1)定常走行時
図7は、車両1の定常走行時におけるビスカスカップリング10及びトルク伝達切替機構60の状態を示す図である。定常走行時のピストン61は、後側の退避位置にあり、背面側油室71の油圧及びOリング73,74の摩擦力にてこの位置で保持される。したがって、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合が切り離された状態となる。そのため、インナーハブ17からインプットシャフト12へのトルク伝達が遮断される。
例えば、車両の走行中はピストン61が受圧した潤滑油の圧力によりピストン61が上記の退避位置に保持される。その一方で車両の停車時は、Oリング73,74の摩擦力にて退避位置に保持される。このとき、スプールバルブ65は、受圧面積の大きい大径部65b側(前側)へ付勢され、このスプールバルブ65によって背面側油室71に潤滑油が流れ込まないように閉鎖される。また、収容室63のドレンポート63cは開放されるため、ピストン61の背面側油室71の潤滑油は、ドレンポート63cから第3油路55を通って収容室63の外部へ排出される。したがって、収容室63内の潤滑油の油圧がピストン61のストロークの妨げとならずに済む。
(2)急加速時
図8は、車両の急加速時におけるビスカスカップリング10及びトルク伝達切替機構60の状態を示す図である。同図に示すように、車両の急加速による加速度に応じた慣性力がスプールバルブ65に作用すると、潤滑油から受ける受圧面積の差による推力との合力により、スプールバルブ65が小径部65a側(後側)へ移動する。すると、ピストン61の背面側油室71に油圧が供給されることで、受圧面積の大きい大径部61bの推力が押し勝ち、ピストン61が前側の係合位置へ移動する。これにより、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとが噛み合い、インナーハブ17からインプットシャフト12へのトルク伝達が行われる。したがって、ビスカスカップリング10を介したトルクが後輪W3,W4側へ伝達される状態(四輪駆動状態)となる。その一方で、車両の加速度が弱まると、スプールバルブ65が前側の位置へ戻る。これにより、収容室63内の作動油の状態が定常状態へ復帰し、背面側油室71の油圧が抜けるため、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合が切り離されて、ビスカスカップリング10を介したトルクが後輪W3,W4側へ伝達されない状態(二輪駆動状態)となる。
(3)登坂発進
図9は、車両の登坂発進時におけるビスカスカップリング10及びトルク伝達切替機構60の状態を示す図である。登坂発進においても、車両1の傾斜角により作用する慣性力でスプールバルブ65が小径部65a側へ移動し、背面側油室71及び中間油室72とドレンポート63cとの間が閉鎖される。これにより、ピストン61が係合位置へ移動するような油圧が供給されるが、極低車速では、この供給油圧が低くなる。しかし、登坂路での停車前に当該供給油圧が十分な油圧である間に、ピストン61が前側の係合位置へ移動することで、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとが噛み合うように設定されている。そのため、背面側油室71の残圧とOリング73,74の摩擦力とによりピストン61が係合位置に保持される。これにより、次回の車両発進時にビスカスカップリング10を介したトルク伝達が行えるようスタンバイしておくことができる。車両の発進後は、前輪(駆動輪)W1,W2のスリップが収まりビスカスカップリング10の伝達トルクが十分に小さくなれば、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合部分に加わる荷重が低減する。そのため、走行路の傾斜度が平地に戻り次第、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの係合が切り離される。
(4)後退発進
図10は、車両1の後進発進時におけるビスカスカップリング10及びトルク伝達切替機構60の状態を示す図である。車両1の後進では、急勾配での発進時には走破性を必要とするため四輪駆動(4WD)状態となるが、定常状態での発進時には、二輪駆動(2WD)である。そして、車両の傾斜角による慣性力がピストン61に作用し、車両の停車時は、背面側油室71の油圧がゼロの状態で反力が無いため、ピストン61が係合位置へ移動する。これにより、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとが噛み合った状態でのスタンバイが可能となる。発進後は、車速の増加に伴うテーパローラベアリング38,39の回転数増加によって上昇した背面側油室71の油圧がピストン61を非係合位置へ押し戻すよう作用する。そのため、前輪(駆動輪)W1,W2のスリップが収まり、ビスカスカップリング10の伝達トルクが十分に小さくなれば、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの噛合部分に加わる荷重が低減するため、ドグ歯61dとドグ歯17dの係合が切り離される。このとき、スプールバルブ65は、大径部65b側(前側)に位置するため、ピストン61の背面側油室71は、ドレンポート63cに連通して解放されている。したがって、収容室63内の潤滑油の油圧がピストン61の作動を妨げることはない。
以上説明したように、本実施形態の四輪駆動車両の駆動力伝達装置では、ビスカスカップリング10のトルク伝達切替機構60は、インプットシャフト12上に相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設置されたピストン61と、該ピストン61を収容すると共にリアディファレンシャル30の潤滑油を充填してなる収容室63と、インナーハブ17に設けたドグ歯17dと、ピストン61に設けたドグ歯61dと、収容室63内で摺動可能に設置されたスプールバルブ65とを備える。そして、テーパローラベアリング38,39に導かれた潤滑油を該ベアリング38,39の回転に伴う排出圧でトルク伝達切替機構60の収容室63に導入し、該収容室63からケーシング41内に戻すように構成すると共に、スプールバルブ65が車両の慣性力に応じて収容室63内を移動すると、ピストン61にかかる油圧が変化することで、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17aとの係合・非係合が切り替わるように構成している。
これにより、リアディファレンシャル30の潤滑油を、ピニオンシャフト36を支持するテーパローラベアリング39が吐出する潤滑油の背圧を利用して、ビスカスカップリング10のトルク伝達切替機構60へ送るように構成した。これにより、油圧ポンプなど別途の機構を追加することなく、トルク伝達切替機構60によるトルク伝達の切り替えが可能となる。したがって、簡単な構成で、車両の走行状態に応じて二輪駆動(2WD)状態と四輪駆動(4WD)状態との切り替えを自動的に行うことが可能となる。
また、上記の駆動力伝達装置では、スプールバルブ65が車両の前方向への加速度で前側へ移動したときに、収容室63内の油圧でピストン61のドグ歯61dがインナーハブ17のドグ歯17dと噛合する係合位置へピストン61が移動し、スプールバルブ65が車両の後方向への加速度で後側へ移動したときに、ピストン61のドグ歯61dとインナーハブ17のドグ歯17dとの噛合が解除される非係合位置へピストン61が移動するように構成している。
これによれば、後輪(従動輪)W3,W4側のトルクを必要とする登坂を含めた車両の発進領域では、ピストン61が係合位置へ移動することで、ビスカスカップリング10による後輪W3,W4へのトルク伝達が行われる状態となる。その一方で、車両の定常走行時及び減速時には、ピストン61が非係合位置に保持されるので、ビスカスカップリング10による後輪W3,W4へのトルク伝達が行われない状態となる。
また、テーパローラベアリング38,39は、ローラ38a,39aの傾角の作用により、ローラ38a,39aの回転に比例した潤滑油の吸排を行うポンプ効果を有する。したがって、本実施形態の駆動力伝達装置では、このポンプ効果にてテーパローラベアリング38,39から排出された潤滑油の油圧を利用して、潤滑油流通路50に潤滑油を流通させることができる。これにより、別途のポンプ構造などを設けることなく、部品点数を少なく抑えた簡単な構成で、潤滑油流通路50を通してリアディファレンシャル30の潤滑油をビスカスカップリング10に流通させることが可能となる。
また、上記の駆動力伝達装置では、テーパローラベアリング38,39を収容したベアリング室37内の潤滑油をディファレンシャルキャリヤ41内に戻すリターン油路40と、該リターン油路40に設置したフラップ弁46とを備え、フラップ弁46は、リターン油路40を流通する潤滑油の油圧が所定以上になると開くことで、ベアリング室37の油圧を所定圧以下に調圧するようにしている。
この構成によれば、ベアリング室37の油圧を所定圧以下に調圧することができるので、潤滑油流通路50でトルク伝達切替機構60に供給される潤滑油の油圧を安定させることができる。したがって、トルク伝達切替機構60によるビスカスカップリング10を介したトルク伝達の有無の切り替えをより確実に行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
1 四輪駆動車両
2 駆動力伝達経路
3 エンジン
4 トランスミッション
5 フロントディファレンシャル
6,6 フロントドライブシャフト
7 プロペラシャフト
9,9 リアドライブシャフト
10 ビスカスカップリング
11 ハウジング
12 インプットシャフト
13 アウタープレート(第1プレート部材)
14 インナープレート(第2プレート部材)
15 カバー部材
16 作動室
17 インナーハブ
17d ドグ歯
30 リアディファレンシャル(ディファレンシャル機構)
31 ディファレンシャルケース
32 差動部
34 リングギヤ
35 ピニオンギヤ
36 ピニオンシャフト
37 ベアリング室
38,39 テーパローラベアリング
38a,39a ローラ
40 リターン油路(戻り油路)
41 ディファレンシャルキャリヤ(ケーシング)
42 ガイド部
43 オイルシール
44 油路
45 潤滑油貯留部
46 フラップ弁(開閉弁)
46a フラップ板
46b コイルバネ
50 潤滑油流通路
51 第1油路
52 第1ポート
53 第2油路
54 第2ポート
55 第3油路
56 ドレン油路
57 シール部材
60 トルク伝達切替機構
61 ピストン
61a 小径部
61b 大径部
61c 連結部
61d ドグ歯
61e スプライン係合部
61f 通路
63 収容室
63c ドレンポート
65 スプールバルブ
65a 小径部
65b 大径部
65c 連結部
71 背面側油室
72 中間油室
73,74 Oリング(シール部材)
W1,W2 前輪(駆動輪)
W3,W4 後輪(従動輪)

Claims (5)

  1. 駆動源からの駆動力を主駆動輪及び副駆動輪に伝達する駆動力伝達経路における前記駆動源と前記副駆動輪との間に配置された回転差応動型のトルク伝達部を有するトルク伝達装置と、前記副駆動輪に伝達する駆動力を配分するためのディファレンシャル機構と、を備える四輪駆動車両の駆動力伝達装置であって、
    前記トルク伝達装置は、前記トルク伝達部からのトルクが伝達される回転部材と、前記副駆動輪側に駆動力を伝達する出力軸と、前記回転部材と前記出力軸との間でのトルク伝達の有無を切り替えるトルク伝達切替機構と、を備え、
    前記ディファレンシャル機構は、前記出力軸に連結されたピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトの端部に設けられて前記副駆動輪側のギヤに噛合するピニオンギヤと、少なくとも前記ピニオンギヤと前記ピニオンシャフトを収容してなるケーシングと、前記ピニオンシャフトを前記ケーシングに回転自在に支持するベアリングと、前記副駆動輪側のギヤの回転で掻き上げられた潤滑油を前記ベアリングに導くためのガイド部と、を備え、
    前記トルク伝達切替機構は、前記出力軸上に相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設置されたピストンと、該ピストンを収容すると共に前記ディファレンシャル機構の潤滑油を充填してなる収容室と、前記回転部材に設けたドグ歯と、前記ピストンに設けたドグ歯と、前記収容室内で摺動可能に設置されたスプールバルブと、を備え、
    前記ベアリングに導かれた潤滑油を該ベアリングの回転に伴う排出圧で前記トルク伝達切替機構の前記収容室に導入し、該収容室から前記ケーシング内に戻すように構成すると共に、
    前記スプールバルブが前記車両の慣性力に応じて前記収容室内を移動すると、前記ピストンにかかる油圧が変化することで、前記ピストンのドグ歯と前記回転部材のドグ歯との係合・非係合が切り替わるように構成した
    ことを特徴とする四輪駆動車両の駆動力伝達装置。
  2. 前記スプールバルブが車両の前方向への加速度で前側へ移動したときに、前記収容室内の油圧で前記ピストンのドグ歯が前記回転部材のドグ歯と噛合する係合位置へ前記ピストンが移動し、
    前記スプールバルブが車両の後方向への加速度で後側へ移動したときに、前記ピストンのドグ歯と前記回転部材のドグ歯との噛合が解除される非係合位置へ前記ピストンが移動するように構成した
    ことを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車両の駆動力伝達装置。
  3. 前記ベアリングは、前記ピニオンシャフトの軸方向に対して傾斜する軸上を転動するローラを備えたテーパローラベアリングである
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の四輪駆動車両の駆動力伝達装置。
  4. 前記ベアリングを収容したベアリング室内の潤滑油を前記ケーシング内に戻す戻し油路と、該戻し油路に設置した開閉弁とを備え、
    前記開閉弁は、前記戻し油路を流通する潤滑油の油圧が所定以上になると開くことで、前記ベアリング室の油圧を所定圧以下に調圧するように構成した
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の四輪駆動車両の駆動力伝達装置。
  5. 前記トルク伝達部は、前記駆動源からの駆動力が伝達される回転軸に接続されたハウジングと、前記出力軸上に相対回転可能に設置された前記回転部材であるインナーハブと、前記ハウジングと前記インナーハブとの間に画成した粘性流体を充填してなる作動室と、前記ハウジングに連結されて前記回転軸の軸方向に沿って積層した複数の第1プレート部材と、前記インナーハブに連結された複数の第2プレート部材と、を備え、
    前記作動室内で前記回転軸の軸方向に沿って前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とが交互に配列された構成である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の四輪駆動車両の駆動力伝達装置。
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