以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1から図3を参照して、光スキャナ1の構成について説明する。図1の上側、下側、左斜め上側、右斜め下側、左斜め下側、および右斜め上側を、それぞれ、光スキャナ1の上側、下側、前側、後側、左側、および右側という。図1および図2に示すように、光スキャナ1は構造体2および基台4を有する。なお図2の平面図では、構造体2と基台4とが重なる重複領域37を明示するために、構造体2を点線で示している。
構造体2について説明する。構造体2は、SUS等の金属によって形成される平面視矩形の板状部材である。構造体2は、ミラー部21、一対の支持部22、本体部23、および圧電素子5等を含む。
本体部23は、左右方向を長手方向とする平面視略長方形の平板である。本体部23は、第一中空部24を備える。第一中空部24は、前後方向を長手方向とする長方形状の穴である。第一中空部24は、本体部23の左右方向略中央に設けられる。第一中空部24は、後述するミラー部21が共振揺動するための空間である。
第一中空部24の前側の辺の左右方向略中央部分と、後側の辺の左右方向略中央部分との間に、一対の支持部22が架け渡される。一対の支持部22は、前後方向に延びる細長い平板上の部材である。一対の支持部22の前後方向略中央部分の上面に、ミラー部21が固定される。一対の支持部22は、ミラー部21との接続部分から前側に延びる第一支持部22A、および、ミラー部21との接続部分から後側に延びる第二支持部22Bを備える。一対の支持部22は、ミラー部21を弾性的に支持する。一対の支持部22の延びる位置および方向に揺動軸Oを定義した場合、ミラー部21は、この揺動軸Oを中心として共振揺動する。一対の支持部22は、ミラー部21を、揺動軸Oを中心として揺動可能に支持するトーションバーとして機能する。なお、一対の支持部22の形状は変更できる。例えば一対の支持部22は、棒状部材によって形成してもよい。一対の支持部22は、前後方向に分割されてもよい。第一支持部22Aおよび第二支持部22Bは、それぞれ、ミラー部21の前後端の側面から前後方向に延びていてもよい。
ミラー部21の形状は、平面視矩形である。ミラー部21は、レーザ等の光を反射する反射面211を上面に備える。ミラー部21が静止した状態では、反射面211と、構造体2および基台4の平面とは平行になる。反射面211は、アルミニウム、銀等の金属薄膜が成膜されたサファイヤ、ダイヤモンド等の誘電体を、反射面211としてミラー部21の表面に貼り付けることによって形成される。なお、ミラー部21の形状は変更できる。例えば、ミラー部21を平面視円形、楕円形、多角形等に形成してもよい。また、反射面211の形成方法は変更できる。例えば反射面211は、誘電体の別部材を設けることなく、ミラー部21の表面が鏡面研磨されることで形成されてもよい。
本体部23は、第一中空部24の左側および右側に一対の素子固定部27を備える。素子固定部27の上面に、ミラー部21を共振揺動させるための駆動部である圧電素子5が接合される。圧電素子5は、例えば、厚さ30μm〜100μmの平板状に成形されたチタン酸ジルコン酸鉛等の圧電材料の両面に、0.2μm〜0.6μmの金、白金等が電極層として積層されることで形成される。圧電素子5は、導電性接着剤で素子固定部27に接着される。圧電素子5の上面には、金等の金属細線(図示せず)がワイヤボンディング等で接続される。
本体部23は、第一中空部24および一対の素子固定部27の前側および後側に、一対の対辺30を備える。一対の対辺30は、本体部23の前側および後側の辺に沿って左右方向に延びる。一対の対辺30は、第一中空部24および一対の素子固定部27を間に挟むように配置される。一対の対辺30の内側(第一中空部24に面する側)に、一対の支持部22の外側(ミラー部21と接続する側と反対側)の端部が固定される。一対の対辺30は、一対の支持部22およびミラー部21を保持する。
一対の対辺30のそれぞれは、第二中空部25を備える。第二中空部25は、対辺30の前後方向略中央部分を左右方向に延びる。第二中空部25は節連結部31を備える。節連結部31は、第二中空部25のうち第一中空部24側(内側)の長辺と、第一中空部24側と反対側(外側)の長辺とを連結する、細長い平板状の部材である。節連結部31は、揺動軸Oと同一直線上に配置される。節連結部31は、ミラー部21および一対の支持部22の上下方向の変位を抑制する。なお、第二中空部25は、複数の節連結部を備えてもよい。この場合、節連結部31を除く他の節連結部を、揺動軸Oに対して対称に配置するとよい。また、第二中空部25の形状は変更できる。
基台4について説明する。図1および図2に示すように、基台4の形状は矩形枠状である。基台4の左右方向および前後方向の長さは、構造体2の左右方向および前後方向の長さよりも長い。図3に示すように、基台4の厚みは構造体2の厚みに比べて大きい。従って、構造体2が振動しても、基台4は殆ど変形することなく構造体2を支持する。基台4は、構造体2と同様、SUS等の金属によって形成される。なお、基台4の形状は変更できる。例えば、揺動軸Oに垂直な方向に延びる一対の対辺のみによって基台を構成してもよい。基台4を構成する枠状の部材に、内側へ突出して構造体2を支持する突出部を形成してもよい。
図1および図2に示すように、構造体2における一対の対辺30のそれぞれのうち、第二中空部25の外側(ミラー部21側とは反対側)が、基台4の上面に接続される。従って、図2に示すように、構造体2と基台4とが上下方向において重なる重複領域37は、構造体2の前後方向両端部における矩形の領域となる。本実施形態では、矩形枠状の基台4を構成する4つの内辺のうち前後方向に延びる2つの内辺の間隔は、構造体2の左右方向の内辺の長さよりも長い。従って構造体2は、素子固定部27と基台4との間に隙間が生じた状態で基台4に接続される。なお、基台4に対する構造体2の接続構造は変更できる。例えば、構造体2の左右方向における両端部が基台4に固定されてもよい。
基台4に対する構造体2の接続構造について説明する。図1および図2に示すように、構造体2は、レーザスポット溶接によって形成される複数の溶接痕35、36によって、基台4に接続される。溶接痕35は、2つの重複領域37の各々における左右方向の両端部に対するレーザスポット溶接によって形成される。溶接痕36は、2つの重複領域37の各々における左右方向の略中央部に対するレーザスポット溶接によって形成される。
溶接痕36(第一溶接痕36Aおよび第二溶接痕36B)は、一対の支持部22のうちミラー部21と接続する側と反対側の端部の外側近傍に配置する。具体的には、溶接痕36は、一対の対辺30のうち第二中空部25の外側の領域、且つ、一対の支持部22のそれぞれの外側の端部に最も近接した領域に配置される。第一溶接痕36Aは、第一支持部22Aの前端よりも前側に配置され、第二溶接痕36Bは、第二支持部22Bの後端よりも後側に配置される。
溶接痕35、36は、それぞれ、一定間隔をおいて左右方向に3つずつ並ぶ痕跡を含む。溶接痕35に含まれる痕跡の数は同一となる。また、第一溶接痕36Aに含まれる痕跡の数と、第二溶接痕36Bに含まれる痕跡の数とは同一となる。それぞれの痕跡の形状は略円形である。溶接痕35に含まれる複数の痕跡の形状は略同一である。一方、第一溶接痕36Aに含まれる3つの痕跡のうち、中央の痕跡と、左右の痕跡とでは、形状が異なる場合がある。同様に、第二溶接痕36Bに含まれる3つの痕跡のうち、中央の痕跡と、左右の痕跡とでは、形状が異なる場合がある。理由は、レーザスポット溶接後、第一溶接痕36Aに含まれる痕跡の一部または全部、または、第二溶接痕36Bに含まれる痕跡の一部または全部に対してレーザが再度照射され、一方の溶接痕36に含まれる痕跡のうち一部の形状が変形する場合があるためである。詳細は後述する。
溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち中央に配置する痕跡の左右中心を、揺動軸Oが通過する。第一溶接痕36Aおよび第二溶接痕36Bのそれぞれの形状は、揺動軸Oを対称軸とした場合に対称となる。また、揺動軸Oの軸線上のうち第一溶接痕36Aおよび第二溶接痕36Bから等距離にある点、即ちミラー部21の中心を通って揺動軸Oと直交する平面を対称面とした場合、第一溶接痕36Aの形状と第二溶接痕36Bの形状とは非対称になる。その理由は、上述したように、痕跡に対するレーザの再照射によって、第一溶接痕36Aに含まれる痕跡のうち少なくとも一部の形状、または、第二溶接痕36Bに含まれる痕跡のうち少なくとも一部の形状が変形するためである。
なお、溶接痕35、36の配置は変更できる。例えば溶接痕35は、2の重複領域37のそれぞれの左右方向の両端部以外の部分に配置されてもよい。また例えば溶接痕36は、2つの重複領域37のそれぞれの前後方向中央に配置されてもよいし、前側又は後側に配置されてもよい。溶接痕35、36に含まれる痕跡の数は変更できる。例えば溶接痕35、36に含まれる痕跡の数は、1、2、および4以上であってもよい。痕跡の形状は、レーザスポット溶接によって形成される形状であれば円形以外であってもよい。なお溶接痕36に含まれる痕跡の数が3つ以外である場合、その形状は、揺動軸Oを対称軸とした場合に対称となる。また、第一溶接痕36Aの形状と第二溶接痕36Bの形状とは、対象面に対して非対称になる。
図1、図3、および図4に示すように、構造体2と基台4の重複領域37(図2参照)における隙間には、接着剤32が設けられる。接着剤32は弾性を有するため、ミラー部21の振動によって生じる構造体2から基台4への衝撃を緩衝する。光スキャナ1の製造工程では、構造体2と基台4の隙間に対して接着剤32が充填される。
光スキャナ1の動作について説明する。圧電素子5は、揺動軸Oを中心として一対の支持部22を共振揺動させる。一対の支持部22の共振揺動に伴い、一対の支持部22に支持されたミラー部21は共振揺動する。レーザ等の光が、ミラー部21の反射面211に照射される。反射面211によって反射された光は、ミラー部21の揺動に伴って左右方向(主走査方向)に射出する。光スキャナ1は、光の射出方向を左右方向に往復移動させることによって、光を主走査方向に走査する。
第一支持部22Aおよび第二支持部22Bが、ミラー部21に対して非対称となる場合がある。非対称性は主に、一対の支持部22のそれぞれが上下方向に撓み、且つ、撓みの程度が第一支持部22Aおよび第二支持部22Bで異なることによって生じる。一対の支持部22が撓む理由の一つとして、光スキャナ1の製造過程で一対の支持部22に力や熱等が加えられることが考えられる。ミラー部21は一対の支持部22の揺動に伴って動作するため、一対の支持部22のそれぞれがミラー部21に対して非対称となった場合、反射面211によって反射される光は、主走査方向だけでなく前後方向(副走査方向)にも射出される。ミラー21は、揺動軸Oを中心として揺動すると同時に、揺動軸Oと直交する軸である直交軸を中心として揺動することになる。この場合、射出された光の軌跡は、主走査方向に延びる直線上に配置せず、副走査方向に幅を持つことになる。
このように、反射面211で反射された光が主走査方向だけでなく副走査方向に揺らいで射出される現象を、ウォブル現象という。副走査方向への光の射出の程度を示す値を、ウォブル値という。ウォブル値は、反射面211で反射した光が主走査方向にのみ射出された状態を基準とした場合の、副走査方向に射出する光の角度(単位 角度秒、1秒=(1/3600)度)によって示される。ミラー部21が共振揺動した場合に測定される複数のウォブル値のうち最大のウォブル値と最小のウォブル値との差分を、ウォブル量という。ウォブル量の増加は、光スキャナ1の特性を劣化させる。このため、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bの撓みの程度の差異を小さくすることによって、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bの非対称性を抑制し、ウォブル量を小さくすることが好ましい。
本実施の形態では、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bの撓みの程度の差異を小さくするために、第一溶接痕36Aまたは第二溶接痕36Bに含まれる痕跡のうち少なくとも一部にレーザが照射される。詳細は後述するが、溶接痕36にレーザが照射された場合、この溶接痕36の近傍に端部が配置する支持部22(第一支持部22Aまたは第二支持部22B)は、上下方向に更に大きく撓む。例えば第一溶接痕36Aに対してレーザが照射された場合、第一溶接痕36Aの近傍に前端部が配置する第一支持部22Aは上下方向に更に大きく撓む。第二溶接痕36Bに対してレーザが照射された場合、第二溶接痕36Bの近傍に後端部が配置する第二支持部22Bは上下方向に更に大きく撓む。従って、撓みの程度が小さい支持部22の外側端部の近傍に配置する溶接痕36にレーザを照射し、撓みの程度を大きくすることによって、一対の支持部22の撓みの程度の差異を小さくすることができる。これによってウォブル量は小さくなるので、光スキャナ1の特性は向上する。
図5および図6を参照し、光スキャナ1の製造工程について説明する。以下、静止した状態のミラー部21の反射面211と同一面上に仮想的に定義した平面を、基準平面という。一対の支持部22のうち、基準平面から最も上下方向に離隔した部分を、突出部という。第一支持部22Aの突出部を第一突出部といい、第二支持部22Bの突出部を第二突出部という。
はじめに図5を参照し、光スキャナ1の製造工程の第一例について説明する。第一例では、基準平面に対して直交する方向を高さ方向とした場合の、基準平面から第一突出部および第二突出部までの距離(以下、単に「高さ」という。)が測定される。双方の高さの差分が大きい場合、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bの上下方向の撓みの程度の差異は大きいことになる。この場合、ウォブル量は大きくなり、光スキャナ1は良好な特性を示さない可能性がある。従って、双方の高さの差分を小さくするために、溶接痕36にレーザが照射される。以下詳説する。
製造工程が開始されると、はじめに構造体2が作成される(S11)。詳細には、構造体2を構成する金属板(例えば、SUS430)が、構造体2の外形と等しい大きさに分割される。分割された金属板のうち、本体部23(一対の支持部22、一対の素子固定部27、および一対の対辺30)に対応する位置に、マスキングのためのレジスト膜が形成される。ウェットエッチングによって構造体2が形成され、レジスト膜が除去される。なお、構造体2の外形よりも十分大きい金属板に、複数の構造体2を形成してもよい。ウェットエッチングでなく、プレス加工等の機械的な除去加工によって構造体2を形成してもよい。
次に、構造体2に圧電素子5が接合される(S13)。例えば、予め両面に電極層が積層された圧電素子5が、導電性接着剤によって構造体2に接合される。導電性接着剤には、エポキシ系、アクリル系、シリコン系等の合成樹脂材料に金属フィラー等の導電材を含有させたもの等を用いることができる。より具体的には、本体部23に導電性接着剤が塗布され、塗布された導電性接着剤の上に圧電素子5が設置される。その後、100℃〜200℃の雰囲気に保たれた加熱炉内に、構造体2が30分〜60分間挿入されることで、導電性接着剤が硬化して圧電素子5が接合される。なお、圧電素子5と構造体2との間の接着部分の線膨張係数が不均一である場合、加熱処理によって一対の支持部22が撓む可能性がある。圧電素子5の上面に、金属細線がワイヤボンディングによって接続される(S15)。次に、一対の支持部22の前後方向中央に、反射面211が予め形成されたミラー部21が固定される(S17)。
基台4が作成される。基台4の外形は、構造体2の場合と同様に、金属板に対してエッチング、プレス等の除去加工が行われることで形成される。次いで、S11〜S17の工程によって準備された構造体2を、基台4の所定位置に重ね、構造体2と基台4の重複領域37に対してレーザスポット溶接が行われる。これによって、溶接痕35、36が形成され、構造体2は基台4に接続される(S19)。
レーザスポット溶接によって構造体2と基台4が接続された後、接続された構造体2と基台4との隙間に接着剤32が充填される(S21)。具体的には、構造体2と基台4における重複領域37の輪郭部分に、接着剤32が塗布される。輪郭部分に塗布された接着剤32は、毛管現象によって重複領域の内部まで充填される。接着剤32の塗布後、毛管現象によって接着剤32を重複領域37の内部まで十分に充填させるために必要な時間(待機時間)分待機される。充填待機時間が経過すると、接着剤32は硬化する。
圧電素子5に対して分極処理が施される(S23)。分極処理は、圧電素子5に対して一定方向に高電圧(約200V)を印加することにより行われる。分極処理によって圧電体の分極方向が揃えられる。これによって圧電素子5は、圧電特性を示すようになる。以上までで、光スキャナ1の準備は完了する。
一対の支持部22のそれぞれの撓みの程度の差異を抑制するために、次の工程が実行される(S25〜S29)。はじめに、S11〜S23の工程によって準備された光スキャナ1が、顕微鏡によって観察される。一対の支持部22のそれぞれのうち突出部(第一突出部および第二突出部)が特定される。次に、基準平面から第一突出部および第二突出部までの高さが測定される(S25)。具体的には次のようにして測定される。顕微鏡において、観測対象物(例えば、光スキャナ1の基台4の上面)にピントを合わせた状態での対物レンズと観測対象物との間の距離(第一距離)が予め実測される。また、構造体2、基台4、およびミラー部21の厚さを加算した値が、基台4の下面から基準平面までの間の距離(第二距離)として予め実測される。顕微鏡によって光スキャナ1が観察され、一対の支持部22の突出部に対するピントが合う状態となるように、顕微鏡の支持台の高さが調節される。突出部に対するピントが合った状態での支持台と対物レンズとの間の距離(第三距離)が特定される。第三距離から、第一距離および第二距離が減算される。算出された距離が、突出部の高さに相当する。なお、突出部の高さを測定する方法は変更できる。例えば、ミクロメータが使用された顕微鏡で、光スキャナ1を側面から観察することによって、基準平面から突出部までの高さが直接測定されてもよい。
測定された第一突出部の高さおよび第二突出部の高さのうち、大きい側から小さい側が減算されることによって、第一突出部の高さおよび第二突出部の高さの差分(以下、単に「高さの差分」という。)が算出される。算出された高さの差分と、所定の第一しきい値Th1(例えば4μm)とが比較される(S27)。高さの差分が第一しきい値Th1よりも小さい場合(S27:NO)、一対の支持部22のそれぞれの撓みの程度の差異は十分小さいため、ウォブル量は小さい。この場合、光スキャナ1の特性は良好であることになるので、そのまま製造工程は終了する。
一方、高さの差分が第一しきい値Th1以上である場合(S27:YES)、一対の支持部22のそれぞれの撓みの程度の差異は大きいため、ウォブル量は大きい。この場合、第一突出部および第二突出部のうち、高さがより低い側を含む支持部22が特定される。特定された支持部22の外側の端部に近接する溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡に対して、レーザが照射される(S29)。例えば、第一突出部の高さが第二突出部の高さよりも小さい場合、第一溶接痕36Aに含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡に対してレーザが照射される。一方、第二突出部の高さが第一突出部の高さよりも小さい場合、第二溶接痕36Bに含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡に対して、レーザが照射される。なお、レーザの光源および照射条件は、S19でレーザスポット溶接が行われる場合の光源および照射条件と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
溶接痕36の痕跡に対するレーザの照射後、S25の工程に戻る。第一突出部および第二突出部の位置が再度特定され、第一突出部および第二突出部の高さが再度測定される(S25)。S29の工程でのレーザ照射によって、一対の支持部22のうちいずれかの撓みの程度が大きくなり、高さの差分が第一しきい値Th1未満になったとする(S27:NO)。この場合、溶接痕36の痕跡に対するレーザ照射によってウォブル量が抑制されたことになるので、製造工程は終了する。
S29の工程で、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡にレーザが照射された後も、高さの差分が第一しきい値Th1以上である場合(S27:YES)、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち左右に配置する2つの痕跡に対してレーザが照射される(S29)。処理はS25の工程に戻り、第一突出部および第二突出部の高さが再度測定される(S25)。高さの差分が第一しきい値Th1未満になった場合、製造工程は終了する。
一方、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のすべてに対してレーザが照射された後も、高さの差分が第一しきい値Th1以上である場合、S29の工程では、中央の痕跡→左右の痕跡→中央の痕跡の順で、レーザが繰り返し照射される。この工程は、高さの差分が第一しきい値Th1未満となるまで繰り返される。
なお、S29の工程で痕跡にレーザを照射する順番は変更できる。例えば最初に、溶接痕36に含まれる痕跡のうち左右の痕跡に対してレーザが照射され、高さの差分が第一しきい値Th1以上である場合に、次いで中央の痕跡に対してレーザが照射されてもよい。また例えば、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のすべてに対して同時にレーザが照射される処理が繰り返されてもよい。
また、高さの差分と第一しきい値Th1とを比較する工程は、例えば次に示す別の方法によって行われてもよい。顕微鏡によって光スキャナ1が観察され、第一突出部に対するピントが合う状態での支持台の高さと、第二突出部に対するピントが合う状態での支持台の高さとが特定される。特定された2つの支持台の高さの差分が算出される。算出された高さの差分と第一しきい値Th1とが比較される。この方法によっても、前述と同様、第一突出部の高さおよび第二突出部の高さの差分を第一しきい値Th1と比較することができる。
次に、図6を参照して、光スキャナ1の製造工程の第二例について説明する。第二例では、ウォブル量が直接算出される。算出されたウォブル量が大きい場合、一対の支持部22のそれぞれの撓みの程度の差異は大きいことになる。この場合、高さの差分を小さくしてウォブル量を抑制するために、溶接痕36にレーザが照射される。以下詳説する。なお、第二例の工程のうちS11〜S23の工程については、第一例の工程(図5参照)と同一であるので、説明を省略する。
一対の支持部22のそれぞれの撓みの程度の差異を抑制するために、次の工程が実行される(S31〜S37)。はじめに、S11〜S23の工程によって準備された光スキャナ1のウォブル値が測定される。ウォブル値は、ミラー部21の反射面211で反射した光の、主走査方向を基準とした場合の副走査方向の角度を、反射面211によって反射された光の通過位置を特定することによって測定される。光の通過位置は、光スキャナ1の周囲に配置したCCDラインセンサが検出した光の位置に基づいて特定される。具体的には、副走査方向に整列した複数の画素を有するCCDラインセンサが、主走査方向の所定の角度位置に配置される。この状態でミラー部21を共振揺動させ、所定の角度位置における副走査方向の走査位置が計測される。主走査方向のそれぞれの角度位置に対して、ミラー部21が共振揺動する場合の副走査方向の走査位置が複数回測定され、主走査方向のそれぞれの角度位置におけるウォブル値とされる。
次に、複数回測定されたウォブル値のうち最大のウォブル値と最小のウォブル値との差分が、ウォブル量として算出される(S31)。算出されたウォブル量と、所定の第二しきい値Th2(例えば200角度秒(1/18度))とが比較される。ウォブル量が第二しきい値Th2よりも小さい場合(S33:NO)、光スキャナ1の特性は良好であることになるので、そのまま製造工程は終了する。
一方、ウォブル量が第二しきい値Th2以上である場合(S33:YES)、光スキャナ1の特性を改善させるために次の工程(S35、S37)が実行される。はじめに、S11〜S23の工程によって準備された光スキャナ1が、顕微鏡によって観察され、一対の支持部22のそれぞれのうち突出部(第一突出部および第二突出部)が特定される。次に、第一突出部および第二突出部の高さが測定される(S35)。第一突出部および第二突出部の高さは、第一例と同一の方法で測定される(S25、図5参照)。第一突出部および第二突出部のうち、高さがより低い側を含む支持部22が特定される。特定された支持部22の外側の端部に近接する溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡に対して、レーザが照射される(S37)。
溶接痕36の痕跡に対するレーザの照射後、S31の工程に戻り、ウォブル値が再度測定され、ウォブル量が算出される(S31)。ウォブル量が第二しきい値Th2未満になった場合(S33:NO)、光スキャナ1の特性は改善されたことになるので、製造工程は終了する。一方、S37の工程で、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡にレーザが照射された後も、ウォブル量が第二しきい値Th2以上である場合(S33:YES)、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち左右に配置する2つの痕跡に対してレーザが照射される(S37)。処理はS31の工程に戻る。ウォブル量が第二しきい値Th2未満になった場合(S33:NO)、製造工程は終了する。一方、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のすべてに対してレーザが照射された後も、ウォブル量が第二しきい値Th2以上である場合、S37の工程では、中央の痕跡→左右の痕跡→中央の痕跡の順で、レーザが繰り返し照射される。この工程は、ウォブル量が第二しきい値Th2未満となるまで繰り返される。
なお、第一例(図5参照)における説明で例示した変形例を、第二例に対しても同様に適用することが可能であることはいうまでもない。
上述した第一例に基づいて光スキャナ1を作成し評価した結果について、図7から図10を参照して説明する。以下、S19(図5参照)の工程において行われる、レーザスポット溶接を行うためのレーザ照射を、「第一照射」という。S29(図5参照)およびS37(図6参照)の工程において行われる、第一突出部および第二突出部の高さの差分を小さくするためのレーザ照射を、「第二照射」という。構造体2および基台4として、SUS430が用いられた。第一照射および第二照射のための光源として、周波数1064nmのYAGレーザが使用された。レーザ強度0.7kW、および、スポット径0.5mmの条件で2ms間、レーザが照射されることによって、第一照射および第二照射が行われた。
図7は、第一照射によって形成された第二溶接痕36Bに対し、第二照射によってレーザが照射された場合に、第一突出部および第二突出部の高さが変化する様子を示している。図7の横軸は、第一支持部22Aの前側の端部の位置を基準位置(0mm)とした場合の、後方向の距離を示している。図7の縦軸は、一対の支持部22の基準平面に対する高さを示している。基準位置からの距離が0〜8mmである場合の高さは、第一支持部22Aの高さを示している。基準位置からの距離が10〜18mmである場合の高さは、第二支持部22Bの高さを示している。第一支持部22Aの高さのうち最大となる点(点41)は、第一突出部の高さを示し、第二支持部22Bの高さのうち最大となる点(点42)は、第二突出部の高さを示している。なお、基準位置からの距離が8〜10mmである部分については、ミラー部21の位置に相当するため、高さは省略されている。
S11〜S23(図5参照)の工程によって準備された光スキャナ1を用いた測定結果(一点鎖線)から、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bが上方に撓んでいることがわかった。また、第一突出部の高さは約10.5μmであり、第二突出部の高さは約5.5μmであることがわかった。この場合、第一突出部の高さと第二突出部の高さとの差分は約5.0μmになる。
次に、S29(図5参照)の工程により、溶接痕36Bに含まれる3つの痕跡のうち中央の痕跡に対して第二照射が行われた状態の光スキャナ1について、一対の支持部22のそれぞれの高さが測定された(点線)。結果、第二突出部の高さは約9.5μmに増加し、第一突出部の高さ(約12μm)と第二突出部の高さとの差分は約2.5μmに縮まった。この結果から、第二照射が行われた溶接痕36Bの近傍に後端が配置する第二支持部22Bは、第二照射によって撓みの程度が大きくなることが明らかになった。なお、第二突出部の高さだけでなく第一突出部の高さも増加した理由は、第二照射によって第二支持部22Bが上方向に撓んだことに追従し、第一支持部22Aも上方向に移動したためであることが推察される。
次に、2度目のS29(図5参照)の工程が実行された結果、溶接痕36Bに含まれる3つの痕跡のすべてに対して第二照射が行われた状態の光スキャナ1について、一対の支持部22のそれぞれの高さが測定された(実線)。結果、第二突出部の高さは約14μmに増加し、第一突出部の高さ(約13μm)と第二突出部の高さとの差分は約1.0μmに更に縮まった。以上の結果から、溶接痕36Bに含まれる複数の痕跡に対して選択的に第二照射を行うことによって、第二突出部の上方への撓みの程度を調節することが可能であることがわかった。
図8および図9は、溶接痕36に含まれる痕跡が、構造体2側から観察された様子を示している。図8は、第一照射によって形成された溶接痕36に含まれる痕跡を示し、図9は、第二照射後の痕跡を示している。図8で示される痕跡には、レーザの照射によって年輪状の模様が痕跡内に形成されている。この模様は、構造体2と基台4とを構成する材料(SUS430)がレーザ照射による熱で一旦溶解した後、外側から徐々に冷却することによって形成されたものと推察される。
一方、図9で示される痕跡は、図8の痕跡と比較して、外径が上側に大きくなった。このことは、第一照射によって形成された痕跡が、第二照射によってさらに溶解し、上側に広がったことを示している。このように、第一照射によって形成された痕跡に対して第二照射が行われた場合、痕跡の形状は変形することがわかった。なお、一対の支持部22の撓みの程度が第二照射によって大きくなる理由は、第一照射によって形成された痕跡の形状が、第二照射によって変形することに起因しているものと推察される。
図10は、一対の支持部22のそれぞれの突出部の高さの差分と、ウォブル値との関係を示している。なお、図10における各プロットは、矢印44の両端に配置する二つの囲み点線45で囲まれるプロットを除き、それぞれ、別々の光スキャナ1を用いて測定された結果を示している。一方、二つの囲み点線45で示される二つのプロットは、同一の光スキャナ1を用いて測定された結果を示している。矢印43で示されるように、高さの差分が大きくなるに従い、ウォブル値も大きくなる傾向があることが確認された(矢印43)。従って、第二照射によって高さの差分を小さくする(矢印44(約5.0μm→約1.0μm、図7参照))ことによって、ウォブル値を抑制できることがわかった。なお、ウォブル値が抑制される場合、その差分として算出されるウォブル量も抑制されることになるので、以上の結果から、溶接痕36に対して第二照射を行い、一対の支持部22のそれぞれの高さの差分を小さくすることによって、ウォブル量を抑制でき、光スキャナ1の特性を向上させることが可能であることがわかった。
上述した第二例に基づいて光スキャナ1を作成し評価した結果について、図11および図12を参照して説明する。図11および図12は、ミラー部21の反射面211によって反射された光の通過位置を測定した結果を示している。横軸は、静止したミラー部21の反射面211に対して直交する方向を基準方向(0deg)とした場合の、ミラー部21の揺動角度を示している。縦軸は、ミラー部21の反射面211によって反射された光の射出方向を、通過位置として示している。
通過位置は、ウォブル値を測定する場合と同様の測定系を用いて測定された。即ち、光スキャナ1の周囲に配置したCCDラインセンサが検出した光の位置に基づいて、通過位置が特定された。通過位置は、ミラー部21が共振揺動する場合の角度毎に複数回測定された。図11は、第二照射が行われていない状態の光スキャナ1を用いて評価が行われた結果を示している。図12は、第二溶接痕36Bに含まれる3つの痕跡の全てに対して第二照射が行われた状態の光スキャナ1を用いて評価が行われた結果を示している。
図11では、通過位置は最小約3.3mmから最大約3.65mmの間で推移した。通過位置の平均は約3.45mmとなった。通過位置の最小値と最大値との差分は約0.35mmとなった。一方、図12では、通過位置は最小約3.55mmから最大約3.7mmの間で推移した。通過位置の平均は約3.6mmとなった。通過位置の最小値と最大値との差分は約0.15mmとなり、第二照射前の差分(約0.35mm)と比較して、約0.20mm小さくなった。なお、通過位置とウォブル値とは同一の測定系で測定されており、双方には相関関係がある。このため、通過位置の最小値と最大値との差分が小さい程、ウォブル量も小さくなる。従って以上の結果から、溶接痕36の痕跡に対して第二照射を行うことによって、ウォブル量を抑制できることがわかった。
また図10で示されたように、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bの高さの差分が大きくなる程、ウォブル値も大きくなる傾向にある。またウォブル値が大きい場合、その差分として算出されるウォブル量も大きくなる。このため、光スキャナ1の製造方法の第二例(図6参照)で示されるように、算出されたウォブル量が大きい場合に溶接痕36に対して第二照射を行うことによって、第一突出部および第二突出部の高さの差分が大きい場合にこの差分を小さくすることができることになる。従って、光スキャナ1の製造方法の第二例では、ウォブル量を効果的に抑制し、光スキャナ1の特性を効率的に向上させることが可能であることが明らかになった。
以上説明したように、本実施形態における光スキャナ1の製造方法の第一例(図5参照)では、一対の支持部22のそれぞれの突出部の高さの差分が大きい場合に、溶接痕36にレーザが照射される。レーザが照射された溶接痕36の近傍に配置する支持部22は、基準平面に対して高さ方向に高くなる。このため、一対の支持部22のそれぞれの突出部の高さ方向の差分は、第二照射前と比較して小さくなる。従って、ウォブル現象の発生は抑制されるので、光スキャナ1の性能を向上させることが可能となる。
また、本実施形態における光スキャナ1の製造方法の第二例(図6参照)では、ウォブル量が大きい場合に、溶接痕36にレーザが照射される。レーザが照射された溶接痕36の近傍に配置する支持部22は、基準平面に対して高さ方向に高くなる。このため、一対の支持部22のそれぞれの突出部の高さ方向の差分は、第二照射前と比較して小さくなる。従って、ウォブル現象の発生は抑制されるので、第一例と同様、光スキャナ1の性能を向上させることが可能となる。
また、本実施形態における光スキャナ1の製造方法の第一例および第二例では、第一照射によって形成された溶接痕36に対して第二照射が行われる。ここで、溶接痕36以外の部分に対して第二照射が行われた場合、構造体2と基台4との間に充填された接着剤32が周囲に飛散するスパッタ飛散が生じる可能性がある。飛散したスパッタが光スキャナ1に付着した場合、光スキャナ1の光学的、機械的特性を変化させる懸念がある。これに対し、第一照射によって形成された溶接痕36に対して第二照射が行われることによって、スパッタ飛散を抑制することができるので、溶接によって光スキャナの光学的、機械的特性が変化することを防止できる。
また、本実施形態における光スキャナ1の製造方法に基づいて作成された光スキャナ1における溶接痕36の形状は、揺動軸Oを対称軸とした場合に対称となる。理由は、第二照射の際、揺動軸Oに対して対称位置にある痕跡に対しては、レーザが同時期に照射され、一方にのみレーザが照射されることがないためである。このため、第二照射によって痕跡の形状が変形しても、溶接痕36の形状は対称軸に対して対称となる。従って、溶接痕36によって一対の支持部22に働く力は、左右方向で均等になるので、反射面211で反射した光の射出方向が副走査方向に向くことを抑制できる。従って、ウォブル量を抑制することができるので、光スキャナ1の特性を向上させることができる。
また光スキャナ1の第一溶接痕36Aの形状と第二溶接痕36Bの形状とは、対称面に対して非対称となる。この理由は、第一溶接痕36Aに含まれる痕跡、または、第二溶接痕36Bに含まれる痕跡に対して第二照射が実行されることによって、いずれか一方の溶接痕36に含まれる痕跡の形状が変形するためである。第二照射によって突出部の高さの差分は小さくなるので、ウォブル量を抑制することができ、光スキャナ1の特性を向上させることができる。
なお、光スキャナ1のうち第一溶接痕36Aと第二溶接痕36Bとで、含まれる痕跡の数は等しくなる。このため、構造体2と基台4との接続条件を、第一支持部22Aおよび第二支持部22Bとで均一化させることが可能となる。これによって、第一突出部および第二突出部の高さの差分を最小限に押えることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。上述で説明した光スキャナ1の製造方法の第一例では、一対の支持部22の突出部の上方向の高さが測定された。本発明では、一対の支持部22の突出部の基準平面に対する下方向の位置が測定されてもよい。そして、測定された下方向の位置がより基準平面に近い支持部22の近傍に配置する溶接痕36に対して、S29(図6参照)の工程でレーザが照射されてもよい。
上述で説明した光スキャナ1の製造方法の第一例における第一しきい値Th1、および、第二例における第二しきい値Th2は、一対の支持部22の材質、形状、および、溶接痕36の形成条件、数量等に応じて切り替えられてもよい。
上述で説明した光スキャナ1の製造方法の第二例において、ウォブル量は他の方法で取得されてもよい。例えばウォブル量は、通過位置とウォブル量とが対応付けられたテーブルに基づいて特定されてもよい。具体的には、ウォブル値の代わりに通過位置が測定された後、測定された通過位置に対応するウォブル位置がテーブルに基づいて特定されてもよい。さらに本発明は、通過位置(図11、図12参照)の差分をウォブル量として測定してもよい。
上述で説明した光スキャナ1の製造方法の第一例において、高さの差分に応じて、レーザを照射する痕跡を変更してもよい。例えば、高さの差分が第三しきい値Th3以上第四しきい値Th4未満(Th1<Th3<Th4)である場合には、溶接痕36に含まれる3つの痕跡のうち左右の痕跡に対してはじめにレーザが照射されてもよい。また、高さの差分が第四しきい値Th4以上第五しきい値Th5未満(Th4<Th5)である場合には、3つの痕跡のうち中央の痕跡にレーザがはじめに照射されてもよい。また、高さの差分が第五しきい値Th5以上である場合に、3つの痕跡の全てに対して同時にレーザが照射されてもよい。揺動軸Oからレーザの照射位置までの距離に応じて、レーザ照射時の突出部の高さ方向への移動量は変化する。具体的には、揺動軸Oに近い位置にある痕跡に対してレーザが照射された場合、揺動軸Oから遠い位置にある痕跡に対してレーザが照射された場合と比較して、支持部22の更なる撓みの程度は大きくなる。このため上述のように、高さの差分に応じてレーザの照射位置を調整することによって、一対の支持部22のそれぞれの突出部の高さ方向の位置を、差分が小さくなるように効率的に調整できる。なお同様に、上述で説明した光スキャナ1の製造方法の第二例において、ウォブル量に応じて、レーザを照射する痕跡を変更してもよい。
上述の実施形態では、レーザスポット溶接によって形成された溶接痕36に対し、必要に応じて再度レーザが照射された。これに対し、構造体2および基台4を貫通する固定部材によって、構造体2および基台4が接続されてもよい。また、ウォブル現象の発生を抑制する目的で照射されるレーザは、この固定部材によって照射されてもよい。
上述の実施形態では、ミラー部21を共振揺動させるための駆動部として、圧電素子5が用いられた。しかし、駆動部の構成は、ミラー部21を共振揺動させることが可能であれば、圧電素子5に限定されない。たとえば、ミラー部21の下面にコイルパターン及び磁石の一方が設けられ、ミラー部21の下面に対向する位置にコイルパターン及び磁石の他方が設けられるような、電磁駆動方式が採用されてもよい。あるいは、ミラー部21に対向する位置に電極が設けられ、ミラー部21と電極との間に電圧を印加されるような静電駆動方式が採用されてもよい。
なお、S11〜S23の工程が本発明の「準備工程」に相当する。S25の工程が本発明の「解析工程」に相当する。S29、およびS37の工程が本発明の「照射工程」に相当する。S31の工程が本発明の「取得工程」に相当する。S19の工程が本発明の「接続工程」に相当する。S21の工程が本発明の「充填工程」に相当する。S29、およびS37でレーザを照射する位置を調整する工程が本発明の「調整工程」に相当する。