JP5898852B2 - 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、側縁部が切断された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法として、溶融した熱可塑性樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、冷却ロールに巻き掛けて冷却し、熱可塑性樹脂フィルムを得る方法がある。この製造方法は、連続生産性に優れるものの、フィルム側縁部における厚み制御が難しく、フィルム側縁部に厚みのバラツキが発生し易いため、冷却後にフィルム側縁部を切断し、フィルム中央部のみを製品として用いることが多い。
一方、特許文献1には、周速度が互いに等しい上下一対の丸刃によって写真フィルムを切断する方法が記載されている。この特許文献1に記載されている切断方法を用いれば、効率よく熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断できてよいとも考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、周速度が互いに等しい上下一対の丸刃によって熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断すると、切断面にクラックが発生し易く、さらに熱可塑性樹脂フィルムがフィルム幅方向に破断され易く、歩留りが低下するという問題があった。
特開2000−108082号公報
本発明の課題は、側縁部が切断された熱可塑性樹脂フィルムを歩留りよく製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
(1)溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、
次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.114とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(2)溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.005〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(3)溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を7.180m/分以下とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(4)上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.114とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
(5)上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.005〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
(6)上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.030とし、前記上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を7.180m/分以下とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
なお、本発明における前記「側縁部」は、側縁のみに限定されるものではなく、厚みにバラツキが発生して切断する必要のある側縁近傍をも含む概念である。
本発明によれば、上下一対の丸刃によってフィルム側縁部を切断する際に熱可塑性樹脂フィルムがフィルム幅方向に破断されるのを抑制し、歩留りよく側縁部が切断された熱可塑性樹脂フィルムを製造することができるという効果がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法にかかる一実施形態を示す概略説明図である。 図1に示す切断ユニット近傍を示す部分拡大概略説明図である。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、汎用の熱可塑性樹脂であってもよいし、エンジニアリングプラスチックであってもよく、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、セルロースアセテート樹脂、エチレン−ビニルアセテート共重合体樹脂、アクリル−塩素化ポリエチレン共重合体樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン・ブタジエンブロックポリマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン樹脂、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
例示したこれらの中でも光学特性が良好であることから、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂およびポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムを積層構成とする場合には、積層される各々の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂およびポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
アクリル系樹脂としては、透明性に優れ、かつ剛性も高いメタクリル系樹脂が好適である。メタクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸メチル単位を主成分とするもの、具体的にはメタクリル酸メチル単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むメタクリル酸メチル樹脂が好ましく用いられる。メタクリル酸メチル樹脂としては、例えばメタクリル酸メチル単位100重量%のメタクリル酸メチル単独重合体の他、メタクリル酸メチルおよびこれと共重合し得る他の単量体との共重合体等が挙げられる。
メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類が挙げられ、その具体例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
また、他の単量体としては、アクリル酸エステル類も挙げられ、その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
さらに、他の単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類、無置換のスチレンや、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類およびビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類のような置換スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。例示したこれらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、スチレン系樹脂とは、スチレン系単官能単量体単位を主成分とする重合体であり、具体的には、スチレン系単官能単量体単位を50重量%以上含む重合体である。スチレン系樹脂は、スチレン系単官能単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合体であってもよい。
スチレン系単官能単量体としては、例えばスチレンの他、置換スチレン等が挙げられる。置換スチレンとしては、例えばクロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類等が挙げられる。すなわちスチレン系単官能単量体は、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する化合物である。
スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有し、この二重結合でスチレン系単官能単量体と共重合可能な化合物であって、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、アクリロニトリル等が挙げられ、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類が好ましく用いられ、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂としては、特に限定されるものではなく、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンを所望の割合で塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂には、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレン以外に、これらと共重合し得る他の単量体が共重合されていてもよい。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法、溶融エステル交換法により重合させて得られるものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させて得られるもの、環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるもの等が挙げられる。
二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
例示したこれらの中でもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンが好ましく、特にビスフェノールAの単独使用や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる少なくとも1種との併用が好ましい。
カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、ジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられる。
上述した熱可塑性樹脂は、例えば光拡散剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、耐衝撃剤、高分子型帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、染料や顔料等の着色剤、アクリル系ゴム粒子等を含有していてもよい。
特に、熱可塑性樹脂がアクリル系ゴム粒子を含有していると、熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させることができる。アクリル系ゴム粒子としては、少なくとも2層以上の多層構造からなるゴム含有重合体であるのが好ましい。層数としては、通常2〜4層程度であるが、これに特に限定されるものではない。次に、ゴム含有重合体について、2層構造からなる場合と、3層構造からなる場合を例に挙げて説明する。
2層構造からなるゴム含有重合体としては、例えば弾性共重合体層の表面に所定の重合層を少なくとも1層結合してなるゴム含有重合体が挙げられる。具体的には、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体を重合して得られる層からなる弾性共重合体層100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を重合させることにより、後者の単量体からなる重合層を前記弾性共重合体層の表面に少なくとも1層結合してなるゴム含有重合体が好ましい。この際、重合条件を変更することにより、平均粒子径の異なるものを製造することができる。
2層構造からなるゴム含有重合体は、例えば次のようにして製造することができる。まず、弾性共重合体用の上述した成分を乳化重合法等により少なくとも一段の反応で重合させて弾性共重合体層を得る。次いで、この弾性共重合体層の存在下、上述したメタクリル酸エステルを含む単量体を乳化重合法等により少なくとも一段の反応で重合させることにより、ゴム含有重合体を得ることができる。このような複数段階の重合により、メタクリル酸エステルを含む単量体が弾性共重合体層にグラフト共重合され、グラフト鎖を有する架橋弾性共重合体が生成する。すなわち、このゴム含有重合体は、アクリル酸アルキルエステルをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体となる。
なお、弾性共重合体層の重合を二段以上で行う場合、またはその後のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体の重合を二段以上で行う場合にはいずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が上述した範囲内にあればよい。
弾性共重合体層におけるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアルキル基の炭素数が1〜8のものが挙げられ、特にアクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアルキル基の炭素数が4〜8のものが好ましい。
弾性共重合体層におけるアクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
弾性共重合体層における共重合性の架橋性単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多価カルボン酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン等が挙げられる。特に、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多価カルボン酸のポリアルケニルエステルが好ましい。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、または必要により2種以上組み合わせて使用することができる。
重合層におけるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、前記アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えばスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
重合層における単量体、すなわちグラフトさせる単量体は、弾性共重合体層100重量部に対して10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部であり、少なくとも一段以上の反応で重合させるのが好ましい。なお、グラフトさせる単量体の使用量を10重量部以上にすると、弾性共重合体層の凝集が生じ難く、透明性が良好となる。
3層構造からなるゴム含有重合体としては、前記弾性共重合体層の内側に、例えばメタクリル酸エステルを主体とする硬質層を設けることにより、3層構造からなるゴム含有重合体とすることができる。すなわち、このゴム含有重合体は、硬質層(最内層)と、該硬質層の表面に形成される前記弾性共重合体層(中間層)と、該弾性共重合体層の表面に形成される前記重合層(最外層)で構成される3層構造からなる。
3層構造のゴム含有重合体は、例えば次のようにして製造することができる。まず、最内層を構成する硬質層の単量体を重合し、得られた硬質重合体の存在下で、上述の弾性共重合体を構成する単量体を重合し、さらに得られる弾性共重合体の存在下で、上述のメタクリル酸エステルを主体とし、グラフトさせる単量体を重合させればよい。
ここで、最内層となる硬質層は、メタクリル酸エステル70〜100重量%と、それと共重合可能な他のビニル単量体0〜30重量%とからなる単量体を重合させたものが好ましい。この際、他のビニル単量体の1つとして、メタクリル酸アリル等の共重合性の架橋性単量体を用いるのも有効である。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸アルキルエステル、特にメタクリル酸メチルが有効である。このような3層構造のゴム含有重合体は、例えば特公昭55−27576号公報に記載されている。特に、同公報の実施例3に記載のものは、好ましい組成の一つである。
上述したアクリル系ゴム粒子の含有量としては、熱可塑性樹脂およびアクリル系ゴム粒子の合計100重量%を基準にして、通常3〜50重量%、好ましくは4〜40重量%である。
アクリル系ゴム粒子の平均粒子径としては、0.05〜0.40μmであるのが好ましく、0.06〜0.3μmであるのがより好ましく、0.1〜0.25μmであるのがさらに好ましい。平均粒子径があまり大きいと、熱可塑性樹脂フィルムの透明性が低下するおそれがある。また、平均粒子径があまり小さいゴム粒子は、生産し難いので好ましくない。
アクリル系ゴム粒子の平均粒子径は、ゴム粒子を単独でメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において、酸化ルテニウムによるゴム成分の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された粒子外層部の直径から求めることができる。
一方、上述した熱可塑性樹脂からなる本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、押出成形法により製造することができる。次に、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法にかかる一実施形態について、図1および図2を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、まず、上述した熱可塑性樹脂を押出機1および/または押出機2で溶融混練し、溶融状態の熱可塑性樹脂をダイ3からフィルム状に押出す。熱可塑性樹脂フィルムを積層構成とする場合には、共押出成形法を採用するのが好ましい。すなわち押出機1で熱可塑性樹脂を溶融混練してダイ3に供給し、押出機2で他の熱可塑性樹脂を溶融混練してダイ3に供給し、それぞれをダイ3から共押出しして、積層一体化すればよい。
押出機1,2としては、例えば一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。なお、押出機の数は2台に限定されるものではなく、3台以上の複数台にしてもよい。ダイ3としては、通常、Tダイが用いられ、熱可塑性樹脂を単層で押出す単層ダイの他、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイ等のように、それぞれ独立して押出機1,2から圧送された2種以上の熱可塑性樹脂を積層して共押出しする多層ダイ等を採用することもできる。
ダイ3から押出したフィルム状物10を、冷却ユニット4によって成形・冷却する。冷却ユニット4は、略水平方向に対向配置された3本の冷却ロールで構成されている。3本の冷却ロールは、矢印Aに示すフィルム引取り方向に沿って順に配設された第1冷却ロール4a、第2冷却ロール4bおよび第3冷却ロール4cからなる。これら第1〜第3冷却ロール4a〜4cは、少なくとも1つの冷却ロールが電動モータ等の回転駆動手段に接続されており、各冷却ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。
第1〜第3冷却ロール4a〜4cとしては、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の冷却ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロール、スパイラルロール、金属弾性ロール、ゴムロール等が挙げられる。第1〜第3冷却ロール4a〜4cの表面状態は、例えば鏡面であってもよいし、模様や凹凸等があってもよい。
冷却ユニット4による成形・冷却は、フィルム状物10を、まず第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bとの間に挟み込み、次いで第2冷却ロール4bに巻き掛けながら第2冷却ロール4bと第3冷却ロール4cとの間に挟み込み、最後に第3冷却ロール4cに巻き掛けることによって行われる。
冷却ユニット4によってフィルム状物10を成形・冷却すると、フィルム状成形体11が得られる。本実施形態では、このフィルム状成形体11の側縁部を、切断ユニット5によって切断する。
具体的に説明すると、切断ユニット5は、上丸刃5aおよび下丸刃5bを備えている。上丸刃5a,下丸刃5bは、図2に示すように、略同一の直径を有しているとともに、互いの刃先同士が摺接するように上下一対に配設されている。上丸刃5a,下丸刃5bの各々は、電動モータ等の回転駆動手段に接続されており、上丸刃5a,下丸刃5bの各々が、所定の周速度で独立して矢印B方向に回転できるように構成されている。したがって、上丸刃5a,下丸刃5bの各々を回転状態にし、この回転状態の上丸刃5a,下丸刃5bの間にフィルム状成形体11を通過させれば、フィルム状成形体11の側縁部を切断することができ、側縁部が切断された熱可塑性樹脂フィルム12を得ることができる。切断する側縁部、すなわち側縁からフィルム内方に向かう距離Lとしては、フィルム状成形体11の幅と、所望する熱可塑性樹脂フィルム12の幅とから適宜設定すればよいが、通常、10〜200mm、好ましくは20〜100mmとするのがよい。距離Lがあまり大きくなると、歩留りが低下するので好ましくない。また、距離Lがあまり小さくなると、フィルム状成形体11の側縁部における厚みのバラツキが、得られる熱可塑性樹脂フィルム12の側縁部にも及ぶおそれがあるので好ましくない。
ここで、上丸刃5a,下丸刃5bを、互いに異なる周速度で回転させる必要がある。これにより、側縁部を切断する際にフィルム状成形体11がフィルム幅方向に破断されるのを抑制することができ、歩留りよく側縁部が切断された熱可塑性樹脂フィルム12を得ることができる。
上丸刃5aの周速度および下丸刃5bの周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.125とするのが好ましく、1.001〜1.102とするのがより好ましい。周速度比(S1/S2)があまり大きくなると、切断面にクラックが発生するか、上丸刃5a,下丸刃5bに切断屑である切粉が付着し易くなる傾向にあるので好ましくない。
上丸刃5a,下丸刃5bの各々の周速度としては、通常、1.000〜10.000m/分であり、1.100〜9.500m/分であるのが好ましく、この数値範囲内で、互いに異なる周速度で回転させるのが好ましい。周速度の調整は、例えば入力電力換算による速度設定方式や、実際の速度をエンコーダー等で測定して速度調整を行うインバーター制御方式等によって行うことができ、より正確な速度調整が可能な上で、インバーター制御方式で行うのが好ましい。
上丸刃5a,下丸刃5bの間にフィルム状成形体11を通過させる際の速度、すなわち引取り速度としては、通常、1.000〜10.000m/分であり、1.100〜9.500m/分であるのが好ましい。
上述した上丸刃5a,下丸刃5bを備えている切断ユニット5の数は、フィルム状成形体11の一方の側縁部のみを切断できるように1つであってもよいし、フィルム状成形体11の両側縁部を切断できるように2つであってもよい。本実施形態では、フィルム状成形体11の両側縁部を切断できるように2つの切断ユニット5,5を備えている。
得られる熱可塑性樹脂フィルム12の厚さとしては、20〜800μmであるのが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム12の厚さは、例えばダイ3から押出したフィルム状物10の厚みや、第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bとの間隔等を調節することによって調整することができる。また、得られた熱可塑性樹脂フィルム12には、必要に応じて、その表面に硬化被膜を形成したり、反射防止処理を施してもよい。
熱可塑性樹脂フィルム12は、各種用途に用いることができ、中でも導光板、タッチパネル基板、液晶ディスプレイ保護板として好適に使用される。かかるタッチパネルや液晶ディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。
以上、本発明にかかる好ましい実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において、種々の改善や変更が可能である。
例えば上述した一実施形態では、上丸刃5a,下丸刃5bが、略同一の直径を有している場合について説明したが、互いに異なる周速度で回転させることができ、かつ本発明の効果を奏することが可能な限り、上丸刃および下丸刃の各々の直径は、互いに異なっていてもよい。
また、上述した一実施形態では、冷却ロールの数は3本であるが、4本以上にしてもよい。すなわち第3冷却ロール以降に複数本の冷却ロールを追加してもよい。追加する冷却ロールの数は、通常、2〜4本程度が適当である。また、冷却ロールの種類についても、全て同じもので統一する必要はない。
また、上述した一実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム12を製造する過程において、フィルム状成形体11の側縁部を切断する場合について説明したが、製造後の熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する場合にも、本発明を適用することができる。すなわち、互いに異なる周速度で回転させている上丸刃および下丸刃の間に熱可塑性樹脂フィルムを通過させて熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断すれば、側縁部を切断する際に熱可塑性樹脂フィルムがフィルム幅方向に破断されるのを抑制しつつ、熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断することができる。その他の構成は、上述した一実施形態と同様である。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記しないかぎり重量基準である。
以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
押出機1:スクリュー径60mmの一軸押出機(日立造船(株)製)を用いた。
押出機2:スクリュー径40mmの一軸押出機(日立造船(株)製)を用いた。
ダイ3:リップ幅800mmのTダイ(日立造船(株)製)を用いた。
冷却ユニット4:各々が、横型、面長1400mm、直径300mmであり、ステンレス鋼製のスパイラルロールからなる第1〜第3冷却ロール4a〜4cを用いた。
切断ユニット5:各々の直径が150mmである上丸刃5aおよび下丸刃5bを用いた。上丸刃5a,下丸刃5bは、電動モータに接続し、各々が所定の周速度で独立して回転するように構成した。周速度の調整は、上述したインバーター制御方式で行った。
以下の実施例および比較例で使用した熱可塑性樹脂は、以下の3種類である。
樹脂1:メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体のバルク重合により得られたガラス転移温度104℃のメタクリル系樹脂のペレットを用いた。なお、ガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
樹脂2:樹脂1と同じ組成からなるメタクリル系樹脂のペレット70重量部と、アクリル系ゴム粒子30重量部とをスーパーミキサーで混合した後、二軸押出機で溶融混錬して得た熱可塑性樹脂のペレットを用いた。アクリル系ゴム粒子には、最内層がメタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性共重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/中間層/最外層の重量割合が35/45/20であり、中間層の弾性共重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法による球形3層構造のアクリル系ゴム粒子を用いた。
なお、樹脂2におけるアクリル系ゴム粒子の平均粒子径は、次のようにして得た値である。まず、アクリル系ゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬してゴム粒子部分(弾性重合体の層に該当する部分)を染色した。次いで、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色されたゴム粒子部を選択し、その各々の粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
樹脂3:住友ダウ(株)製のポリカーカーボネート樹脂「カリバー301−10」を用いた。
[実施例1〜6,8,9および比較例1]
<熱可塑性樹脂フィルムの作製>
まず、押出機1、ダイ3、冷却ユニット4および切断ユニット5を図1および図2に示すように配置した。切断ユニット5は、フィルム状成形体11の両側縁部を切断できるように2つ配置し、各切断ユニット5に備えられている上丸刃5a,下丸刃5bを、表1に示す周速度で回転させた。
次いで、表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、溶融状態の熱可塑性樹脂を、ギアポンプを経てダイ3から表1に示す厚さのフィルム状に押出すとともに、ダイ3から押出されたフィルム状物を、冷却ユニット4によって成形・冷却した。
具体的には、ダイ3から押出されたフィルム状物を、まず第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bとの間に挟み込み、次いで第2冷却ロール4bに巻き掛けながら第2冷却ロール4bと第3冷却ロール4cとの間に挟み込み、最後に第3冷却ロール4cに巻き掛けることによってフィルム状物を成形・冷却し、フィルム状成形体を得た。
得られたフィルム状成形体を、表1に示す引取り速度で引取りつつ、所定の周速度で回転させている上丸刃5a,下丸刃5bの間にフィルム状成形体を通過させ、これによりフィルム状成形体の両側縁部を切断し、表1に示す厚さの単層構成からなる熱可塑性樹脂フィルムを得た。
<評価>
得られた熱可塑性樹脂フィルムについて、破断、クラックおよび切粉の評価を行った。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
(破断評価方法)
フィルム状成形体の両側縁部を切断する際に、フィルム状成形体がフィルム幅方向に破断したか否かを目視観察することによって評価した。評価基準は、以下のものを用いた。
○:フィルム状成形体がフィルム幅方向に破断されなかった。
×:フィルム状成形体がフィルム幅方向に破断された。
(クラック評価方法)
フィルム状成形体の両側縁部を切断した際に、破断することなく得られた熱可塑性樹脂フィルムについて、任意に選定した一方の側縁部における切断面を、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープによって倍率100倍で1mにわたり観察し、クラックの発生の有無を評価した。評価基準は、以下のものを用いた。
○:切断面にクラックが全く確認されなかった。
△:切断面にクラックが1〜9本確認された。
×:切断面にクラックが10本以上確認された。
(切粉評価方法)
フィルム状成形体の両側縁部を切断した際に、破断することなく得られた熱可塑性樹脂フィルムについて、フィルム状成形体の両側縁部の切断を10分間連続して行った後に、上丸刃5a,下丸刃5bに切粉が付着したか否かを目視観察することによって評価した。評価基準は、以下のものを用いた。
○:上丸刃5a,下丸刃5bに切粉が殆ど付着していなかった。
△:上丸刃5a,下丸刃5bに切粉が少量付着していた。
×:上丸刃5a,下丸刃5bに切粉が多量に付着していた。
[実施例7および実施例10]
押出機2を図1に示すようにさらに配置し、表1に示す種類の樹脂を押出機1,2でそれぞれ溶融混練し、ギアポンプを経てフィードブロック方式によって、押出機1で溶融混練された樹脂の両面に、押出機2で溶融混練された樹脂を積層一体化した後、ダイ3からフィルム状に共押出しした以外は、上述した実施例1〜6,8,9と同様にしてフィルム状成形体を得た。
そして、得られたフィルム状成形体を、表1に示す引取り速度で引取りつつ、回転状態の上丸刃5a,下丸刃5bの間にフィルム状成形体を通過させることによって、フィルム状成形体の両側縁部を切断し、押出機1で溶融混練された樹脂からなる層の両面に、押出機2で溶融混練された樹脂からなる層を備え、各層の厚さが表1に示す厚さである3層構成からなる熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、表1中、押出機2における「厚み」の欄に記載されている値は、「一方の層の厚み/他方の層の厚み」を示している。
得られた熱可塑性樹脂フィルムについて、破断、クラックおよび切粉の評価を上述した実施例1〜6,8,9と同様にして行った。その結果を、表1に示す。
Figure 0005898852
表1から明らかなように、上丸刃5a,下丸刃5bを、互いに異なる周速度で回転させた実施例1〜10では、側縁部を切断する際にフィルム状成形体がフィルム幅方向に破断されるのを抑制できているのがわかる。また、周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.102に調整すると、クラックが発生し難く、切粉も付着し難い傾向を示した。
一方、上丸刃5a,下丸刃5bを、互いに同じ周速度で回転させた比較例1では、側縁部を切断する際にフィルム状成形体がフィルム幅方向に破断された。
1,2 押出機
3 ダイ
4 冷却ユニット
4a 第1冷却ロール
4b 第2冷却ロール
4c 第3冷却ロール
5 切断ユニット
5a 上丸刃
5b 下丸刃
10 フィルム状物
11 フィルム状成形体
12 熱可塑性樹脂フィルム

Claims (6)

  1. 溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.114とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  2. 溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.005〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 溶融したアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂をダイからフィルム状に押出すとともに、少なくとも1本の冷却ロールに接触させてフィルム状成形体を得、次いで上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に前記フィルム状成形体を通過させ、該フィルム状成形体の側縁部を切断して、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を7.180m/分以下とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  4. 上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.114とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
  5. 上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.005〜1.030とし、上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を1.000〜10.000m/分とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
  6. 上下一対に配設された上丸刃および下丸刃の間に、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂からなり、厚みが20〜800μmである熱可塑性樹脂フィルムを通過させ、該熱可塑性樹脂フィルムの側縁部を切断する方法であって、
    前記上丸刃および下丸刃を、互いに異なる周速度で回転させ、前記上丸刃の周速度および下丸刃の周速度のうち、速い方の周速度をS1、遅い方の周速度をS2とするとき、前記S1およびS2の周速度比(S1/S2)を、1.001〜1.030とし、前記上丸刃および下丸刃の間にフィルム状成形体を通過させる際の引取り速度を7.180m/分以下とすることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの側縁部切断方法。
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