JP5898483B2 - ローラーカッター用カッターホルダ - Google Patents

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Description

本発明はローラーカッター用カッターホルダに関し、特にトンネル掘削機の前端部のカッターヘッドに装備されるローラーカッターをカッターヘッドの後側から交換可能なカッターホルダに関する。
従来、トンネル掘削機においては、胴体の前側にカッターヘッドが装備され、胴体と共にカッターヘッドが前進駆動され、カッターヘッドが回転駆動されて、前方の地山を掘削してトンネルを掘削していく。固い地盤を掘削するトンネル掘削機では、複数のローラーカッターを前面部に装備したカッターヘッドが適用される。トンネルの掘削途中に、ローラーカッターが磨耗して掘削能力が低下した場合、その磨耗したローラーカッターを新しいローラーカッターに交換する必要が生じ、特に、長距離のトンネルを連続的に掘削するトンネル掘削機では、ローラーカッターを交換する頻度が多くなる。
ここで、カッターヘッドの前側からローラーカッターを着脱可能に固定したものでは、ローラーカッターを交換する場合に、カッターヘッドとその前方の地山(切羽)との間にカッター交換間隙を形成し、そのカッター交換間隙に作業者が入って交換作業を行う必要がある。しかし、こうしたローラーカッターの交換作業の負荷は非常に大きく時間もかかり、また、カッター交換間隙に作業者が入ることになるが出水の発生等の危険を伴う作業となる。そこで、カッターヘッドの後側からローラーカッターを交換する技術が実用に供されている。
例えば、特許文献1の技術では、カッターヘッドに各ローラーカッターに対応する1対の取付座が対向状に固定され、各取付座に前側に向って開放状の半円弧部にロータリーディスクが係合されている。取付座の前端部に半円弧状の押え部材の両端部がボルトで固定され、この押え部材にロータリーディスクが係合されて、ロータリーディスクが回動可能に支持されている。このロータリーディスクには中心部から外周端まで延びるU字状の切欠部が形成され、この切欠部にローラーカッターの支軸端部が係脱可能に係合される。
トンネルを掘削可能な使用状態では、切欠部の内端部にローラーカッターの支軸端部が係合され、切欠部の内端部以外の部分にスペーサが挿入され、切欠部の開放端をカッターヘッドの前側に向けて、前記ボルトを締めることで、ロータリーディスクが押え部材により押さえられてローラーカッターの支軸端部が固定される。ローラーカッターの掘削反力はロータリーディスクを介して取付座の半円弧部で受け止められる。ローラーカッターを交換する場合には、前記ボルトを弛めてロータリーディスクを180度回動させ、切欠部の開放端をカッターヘッドの後側に向け、切欠部を取付座に形成された挿入溝と連通させ、ローラーカッターを後方へ移動させて取り外す。ローラーカッターを取り付ける場合は、前記と逆の手順で作業を行う。
特開昭58−189497号公報
特許文献1の技術では、ローラーカッターを交換するために、作業者が工具等を使用して、ローラーカッターと共に1対のロータリーディスクを180度回動させなければならない。しかし、ローラーカッターは非常に重く(例えば、約100〜300kg)、また、これら回転部の隙間への土砂の噛み込み等が発生するため、ローラーカッターと1対のロータリーディスクを180°回動させる回動作業に多大の労力と時間がかかる(例えば、1個のローラーカッターにつき1時間程度)。
また、ローラーカッターの交換後も同様に、ローラーカッターと共に1対のロータリーディスクを180°回動させなければならないが、上述のようにこれらの回動作業に多大の労力と時間がかかる。また、ロータリーディスクを回動させる機構や回り止めする機構が必要となり構造も複雑化する。
本発明の目的は、カッターヘッドの後方からの操作(作業)でローラーカッターを後方へ取り外す交換作業を簡単化し、交換作業の時間を短縮することができるローラーカッター用カッターホルダを提供すること、従来のものと比較しても同等の強度を確保できる簡単な構造のローラーカッター用カッターホルダを提供すること、等である。
請求項1のローラーカッター用カッターホルダは、トンネル掘削機の前端部のカッターヘッドに装備されるローラーカッターを支持するローラーカッター用カッターホルダにおいて、前記ローラーカッターを回転自在に支持するローラ軸の端部の1対の係合軸部を支持し且つ前記係合軸部が係合する係合部を夫々有する1対のホルダー部材と、前記各ホルダー部材に形成されるL形溝であって、前記係合部の後方側端部に連なる一端部分から前記カッターヘッドの軸心を中心とするローラーカッターの周回方向と平行方向へ直線的に延び且つ前記係合軸部の前後幅以上の前後幅をする収容溝と、この収容溝の他端部分から後方側へ延び前記ホルダー部材の後端側に開放し且つ前記係合軸部が前後方向に通過可能な開放溝とを有するL形溝と、前記収容溝に収容されて前記係合軸部と前記収容溝の前記一端部分の後端壁面との間に挟着されるロック部材と、前記ロック部材をロック位置に締結する楔機構とを備えたことを特徴としている。
請求項2のローラーカッター用カッターホルダは、請求項1の発明において、前記楔機構は、前記ロック部材に形成され且つ前端側程前記楔機構を挟んで対向する前記収容溝の側壁面に接近するように傾斜した傾斜面と、前記収容溝内で前記傾斜面と前記側壁面との間に嵌合される楔部材と、この楔部材を締結方向へ駆動可能なボルト部材とを有することを特徴としている。
請求項3のローラーカッター用カッターホルダは、請求項1又は2の発明において、前記ホルダー部材は、前記カッターヘッドに取り付けられ且つ前記L形溝が形成されたホルダー本体と、このホルダー本体の前部に固定され且つ前記係合部が形成された押え部材とを備え、前記押え部材は、前記ホルダー本体の後側から操作可能な1対のボルトにより前記ホルダー本体に固定されたことを特徴としている。
請求項4のローラーカッター用カッターホルダは、請求項2の発明において、前記ボルト部材と前記楔部材とを取り外してから前記ロック部材を前記収容溝と前記開放溝とを通過させて取り外し、その後、前記係合軸部を前記収容溝と前記開放溝とを通過させて取り外すことで、前記ローラーカッターを前記ホルダー部材の後方へ取り外し可能に構成したことを特徴としている。
請求項5のローラーカッター用カッターホルダは、請求項4の発明において、前記係合軸部を前記収容溝内を移動させる際に、前記ローラーカッターの前記収容溝と平行方向への移動を許容する為のローラーカッター移動用スペースを設けたことを特徴としている。
請求項1の発明(ローラーカッター用カッターホルダ)によれば、ローラーカッターの掘削反力を、楔機構に作用させずに、ロック部材を介して1対のホルダー部材で受け止めることができ、ローラーカッターの抜け落ちを防止することができる。この結果、従来のものと同等の強度を確保できる上、簡単な構造のローラーカッター用カッターホルダを提供することができる。
また、ローラーカッターを交換する場合は、カッターヘッドの後方から楔機構によるロック部材の締結を解除して、楔機構、ロック部材をL形溝からローラーカッターと干渉することなく順次後方へ取り外しできる。その後、ローラーカッターの係合軸部を後方からL形溝を通過させて、ローラーカッターを後方へ移動させて取り外すことができる。
そして、新たなローラーカッターの係合軸部をL形溝を通過させて、ローラーカッターを前側へ移動させ、ローラーカッターの係合軸部を係合部に係合させてから、ロック部材、楔機構を後方からL形溝の収容溝にローラーカッターと干渉することなく、順次装着することができる。
この結果、ローラーカッターとカッターホルダとの間に土砂が噛み込んでしまい、ローラーカッターが回動不能な状態であっても、ローラーカッターの1対の係合軸部を回動させずに取り外し可能なので、交換に支障をきたすことがない。従来のようにロータリーディスクを回動させる機構等や回り止めする機構が不要になるため、構造を簡単化することができる。また、ローラーカッターの交換作業が簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。
請求項2の発明によれば、楔部材がボルト部材により締結方向(ロック部材をロック位置に締結する方向)へ駆動されることで、楔部材とロック部材の傾斜面との楔作用により、楔部材とロック部材を収容溝に押圧して、楔部材とロック部材をホルダー部材に確実に一体化させることが期待できる。また、楔部材は、収容溝内でロック部材の傾斜面と側壁面との間に嵌合されるので、楔部材を容易に後方へ取り外すことができる。さらに、楔部材はローラーカッターの掘削反力を直接受けないので、ボルト部材の外れ止めを防止することができる。
請求項3の発明によれば、押え部材は、ホルダー本体の後側から操作可能な1対のボルトによりホルダー本体に固定されたので、カッターヘッドの後方から1対のボルト部材を操作して、押え部材をホルダー本体に固定することで、ローラーカッターの係合軸部をホルダー本体の前部に確実に固定することができる。また、押え部材と楔機構による協働によりローラーカッターをホルダー部材に支持する構成なので、トンネル掘削時の振動による各種固定ボルトの緩みを防止することが期待できる。
請求項4の発明によれば、ボルト部材と楔部材とを取り外してからロック部材を収容溝と開放溝とを通過させて取り外し、その後、係合軸部を収容溝と開放溝とを通過させて取り外すことで、ローラーカッターをホルダー部材の後方へ取り外し可能に構成したので、ローラーカッターの交換作業が簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができる。
請求項5の発明によれば、係合軸部を収容溝内を移動させる際に、ローラーカッターの収容溝と平行方向への移動を許容する為のローラーカッター移動用スペースを設けたので、ローラーカッターを他の部材と干渉させることなくスムーズに移動させて交換することができる。
実施例1に係るトンネル掘削機の前端部のカッターヘッドの正面図である。 ローラーカッター用カッターホルダの後面図である。 図2のIII-III線断面図である。 ローラーカッター用カッターホルダの分解状態の縦断面図である。 実施例2に係る押え部材を取り外した状態のローラーカッター用カッターホルダの正面図である。 図5のVI-VI線断面図である。 部分的変更形態に係るローラーカッター用カッターホルダの縦断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
本実施例は、カッターヘッド2にローラーカッター3を有するトンネル掘削機1に本発明を適用した場合の例である。尚、以下適宜、図3,図4の矢印Aが示す方向をトンネル掘削機1の前方とし、図1〜図4の矢印Bが示す方向をローラーカッター3の周回方向(カッターヘッド2の軸心を中心としたローラーカッター3の周回方向)とし、図1,図2の矢印Cが示す方向をカッターヘッド2の径方向(カッターヘッド2の中心から外側に延びる放射方向)として説明する。
図1には、トンネル掘削機1のカッターヘッド2のみ図示してある。このトンネル掘削機1には、基本的に、カッターヘッド2、このカッターヘッド2が回動可能に前側に支持された掘削機本体(図示略)、カッターヘッド2の背面側のチャンバ(図示略)、カッターヘッド2を回転駆動するための回転駆動機構(図示略)、複数のシールドジャッキ(図示略)等を有し、カッターヘッド2の前面部に複数のローラーカッター3が装備された一般的な構造のものである。
このトンネル掘削機1では、カッターヘッド2が複数のシールドジャッキにより前進駆動されると共に回転駆動機構により回動されて、前方の地山を掘削してトンネルを掘削していく。そして、このカッターヘッド2には、複数のローラーカッター3を夫々カッターヘッド2の後側から着脱可能に装備する為の複数のローラーカッター用カッターホルダ5(以下、カッターホルダ5という)が設けられている。
ここで、カッターヘッド2は、例えば、ヘッド中央部2aと、このヘッド中央部2aから半径方向へ延びる複数のカッタースポーク2bと、これらカッタースポーク2bの外周端に連結された外周リング2cとを有し、これらに、複数のローラーカッター3がほぼ一様に、且つローラ軸3aを径方向に向けて取り付けられている。
カッターヘッド2のうち各ローラーカッター3を取り付ける部分には、カッタースポーク2bの一部である1対の取付板部4が設けられている。1対の取付板部4は、ローラーカッター3のカッターリング3cの直径よりも大きな間隔を隔てて対面状に配設され、これら取付板部4にカッターホルダ5が設けられている(図2参照)。
次に、カッターホルダ5について説明する。
図2〜図4に示すように、カッターホルダ5は、トンネル掘削機1の前端部のカッターヘッド2に装備されるローラーカッター3を回転可能に支持する為のものであり、ローラーカッター3を回転自在に支持するローラ軸3aの端部の1対の係合軸部3bを支持する1対のホルダー部材9と、各ホルダー部材9に夫々形成されたL形溝12と、各ホルダー部材9に設けられたロック部材13と楔機構14とを備えている。尚、以下の説明では、このカッターホルダ5は、カッターヘッド2の軸心と直交する平面部分(中心部分)に取り付けられたものを例にして説明する。
次に、ホルダー部材9について説明する。
各カッターホルダ5において、1対のホルダー部材9は、カッターヘッド2に取り付けられ且つL形溝12が夫々形成された1対のホルダー本体10と、このホルダー本体10の前部に固定され且つ係合部21が夫々形成された1対の押え部材11とを備え、1対の取付板部4の間において取付板部4と直交するように且つローラーカッター3のハブ3dのローラ軸方向幅よりも僅かに大きな間隔を隔てて対面状に対称に配設されている。この1対のホルダー部材9に、ローラーカッター3の1対の係合軸部3bが、夫々着脱可能に固定されている。
次に、ホルダー本体10について説明する。
各ホルダー本体10は、ローラーカッター3の係合軸部3bの長さの約1.5倍のカッターヘッドの径方向(ローラ軸方向)の厚さを有すると共に、径方向から視て略矩形の形状に形成されている。各ホルダー本体10の周回方向両端部が1対の取付板部4の内側面にブロック部材4aとボルト部材4b及び溶接等で固定されている。各ホルダー本体10の前端部は取付板部4よりも少し前方へ台形状に張り出し、ホルダー本体10で支持されるローラーカッター3は、ホルダー本体10よりも前方へ突出した状態になる。
さらに、各ホルダー本体10のうち、図2における内面側からローラーカッター3の係合軸部3bの長さと略同じ径方向の厚さ部分において、図3における前部に前方開放状の嵌入凹部15と、この嵌入凹部15の後端に連なるL形溝12とが形成されている。L形溝12は、押え部材11に形成された係合部21の後方側端部に連なる一端部分からローラーカッター3の周回方向と平行方向へ直線的に延び且つ前記係合軸部3bの前後幅以上の前後幅を有する収容溝16と、この収容溝16の周回方向の他端部分(図3,図4では上端側部分)から後方側へ延びホルダー本体10の後端側に開放した開放溝17であって
前記係合軸部3bが前後方向に通過可能な開放溝17からなる。L形溝12の溝幅(開放溝17と収容溝16の溝幅)は、ローラーカッター3の係合軸部3bのより僅かに大きく形成されている。開放溝17と収容溝16は同じ深さに形成されている。
尚、カッターホルダ5には、ローラーカッター3の係合軸部3bを、ホルダー本体10のL形溝12の収容溝16内を移動させる際に、ローラーカッター3の収容溝16と平行方向(周回方向)への移動を許容する為のローラーカッター移動用スペース18を、1対のホルダー本体10の間であってローラーカッター3を取り出す際の移動方向側の取付板部4の近傍部に設けてある(図2参照)。
次に、押え部材11について説明する。
図2〜図4に示すように、1対の押え部材11が、各ホルダー本体10の嵌入凹部15に着脱可能に夫々装着されている。各ホルダー本体10の後側から操作可能な1対のボルト19がボルト挿通孔10aに夫々挿通されて1対の押え部材11に螺合され、これら1対のボルト19によりホルダー本体10に押え部材11が夫々固定されている。各押え部材11の前端部は、ホルダー本体10の前端部の形状と一致するように取付板部4よりも少し前方へ台形状に張り出している。
押え部材11は、その後端部に形成され且つローラーカッター3の係合軸部3bが後方から係脱可能な係合部21を有している。押え部材11が嵌入凹部15に固定されている状態で、押え部材11の係合部21の後端にL形溝12の収容溝16の前端側部分が連なった状態になる。ホルダー本体10に押え部材11が装着された状態では、押え部材11の後端面と嵌入凹部15の後端壁面との間に僅かな隙間11bが形成される。それ故、押え部材11の係合部21に係合された係合軸部3bを、ロック部材13に確実に当接して保持することができる。
次に、ロック部材13について説明する。
図2〜4に示すように、ロック部材13は、L形溝12の深さと略同じローラ軸方向(径方向)の厚さを有し、ローラ軸方向から視て台形の形状に形成されている。ロック部材13は、収容溝16の周回方向の一端部分(図3,図4では下端側部分)に収容されて係合軸部3bと収容溝16の前記一端部分の後端壁面16aとの間に後方移動不能に挟着されている。ロック部材13は、係合軸部3bに後方から当接して、押え部材11の係合部21に係合軸部3bを保持する。
ロック部材13の周回方向における長さは、開放溝17の周回方向の長さ(溝幅)より僅かに小さく形成されている。それ故、ロック部材13を開放溝17を通過させて収容溝16に着脱することができる。
ロック部材13の周回方向の一端面(図3,図4では上端面)には、前端側程楔機構14を挟んで対向する収容溝16の側壁面16bに接近するように傾斜した傾斜面13aが形成されている。この傾斜面13aの両端には、楔部材23側へ少し突出した突縁部13bが形成され、ロック部材13のローラーカッター3側への移動を規制している。
次に、楔機構14について説明する。
図2〜図4に示すように、楔機構14は、収容溝16内においてロック部材13をロック位置に締結する為のものであり、ロック部材13に形成された上述の傾斜面13aと、収容溝16内で傾斜面13aと収容溝16の側壁面16bとの間に嵌合される楔部材23と、この楔部材23を押え部材11に接近する方向(ロック部材13をロック位置に締結する締結方向)へ駆動可能なボルト部材24とを有している。
楔部材23は、L形溝12の深さと略同じローラ軸方向(径方向)の厚さを有し、ローラ軸方向から視て台形の形状に形成されている。楔部材23の周回方向における長さは、開放溝17の周回方向の長さ(溝幅)より僅かに小さく形成され、それ故、楔部材23を開放溝17を通過させて、収容溝16内でロック部材13の傾斜面13aと収容溝16の側壁面16bとの間に嵌合することができる。
楔部材23のロック部材13の傾斜面13aに対向する側面には、傾斜面13aと同方向へ傾斜したテーパ部23aが形成されている。このテーパ部23aには係合凸部23bが形成され、この係合凸部23bがロック部材13の傾斜面13aに当接されている。係合凸部23bと突縁部13bにより、楔部材23の径方向(ローラ軸方向)への移動を規制することができる。楔部材23には、前後方向に延びるボルト挿通孔23cが形成されている。
この楔機構14によれば、ロック部材13と楔部材23とが収容溝16に収容された状態で、楔部材23のボルト挿通孔23cに後方からボルト部材24が挿通され、先端部が押え部材11のボルト孔に螺合されて、このボルト部材24により楔部材23を押え部材11に接近する方向へ挿入すると、ロック部材13の傾斜面13aと楔部材23のテーパ部23aとの楔作用により、楔部材23とロック部材13とが収容溝16の側壁面16b,16cの間に押圧され嵌入されて固定状態となり、ロック部材13をロック位置に締結することができる。
次に、本発明のカッターホルダ5の作用及び効果について説明する。
トンネルを掘削可能な使用状態では、ローラーカッター3の係合軸部3bが、ホルダー本体10に固定された押え部材11の係合部21に係合され、ロック部材13がホルダー本体10の収容溝16の開放溝側とは反対側部分に装着され、楔部材23が収容溝16の開放溝側部分であってロック部材13の傾斜面13aと収容溝16の側壁面16bとの間に嵌合されている。このとき、楔機構14においては、ロック部材13の傾斜面13aと楔部材23のテーパ部23aが係合され、楔部材23がボルト部材24で押え部材11に締結されて固定されている 。
こうして、ロック部材13が、係合軸部3bと収容溝16の後端壁面16aとの間に挟着されるので、前後方向への移動が規制され、楔部材23がボルト部材24により締結されることで、ロック部材13の傾斜面13aと楔部材23のテーパ部23aとの間に楔作用を奏する。このため、楔部材23とロック部材13とが収容溝16の側壁面16b,16cの間に押圧され嵌入されて固定状態となり、ロック部材13をロック位置に締結し、ロック部材13により係合軸部3bが係合部21に保持されるので、ローラーカッター3の掘削反力は、ロック部材13を介してホルダー本体10で受け止められ、楔機構14には作用しない。
ローラーカッター3を交換する場合には、カッターヘッド1の後方からボルト部材24と1対のボルト19を弛めて、ボルト部材24と楔部材23とを開放溝17から後方へ取り外してから、ロック部材13を収容溝16と開放溝17とを通過させて後側へ取り外す。この場合、L形溝12の開放溝17は、後方開放状に形成されているため、楔部材23とロック部材13とを、ローラーカッター3と干渉することなく後方へ取り外すことができ、また、ロック部材13の傾斜面13aに楔部材23のテーパ部23aを係合させているため、傾斜面13aと側壁面16bとの間から楔部材23を後方へ容易に取り外すことができる。
その後、ローラーカッター3の係合軸部3bを収容溝16と開放溝17とを通過させて後側へ取り外すことで、ローラーカッター3をホルダー本体10の後方へ取り外すことができる(図4参照)。このとき、ローラーカッター移動用スペース18が設けられているので、ローラーカッター3が取付板部4に干渉することなく取り外すことができる。
次に、新たなローラーカッター3の係合軸部3bをL形溝12を通過させて、ローラーカッター3を前側へ移動させ、係合軸部3bを係合部21に係合させる。その後、前記と逆の手順で、ロック部材13をL形溝12の収容溝16の開放溝側とは反対側部分(係合軸部側部分)に後方から装着し、楔部材23を収容溝16の開放溝側部分に後方から装着する。この場合、ロック部材13の傾斜面13aと楔部材23のテーパ部23aにより、楔部材23を傾斜面13aと側壁面16bとの間に簡単に挿入することができる。
そして、1対のボルト19を締めて押え部材11を後方に引き寄せて、押え部材11をホルダー本体10に固定し、ボルト部材24を締めて楔部材23を押え部材11に締結してロック部材13をロック位置に締結することで、ローラーカッター3の係合軸部3bを最終的に固定して、ローラーカッター3の交換作業が完了する。
このように、ローラーカッター3の掘削反力を、楔機構14に作用させずに、ロック部材13を介してホルダー本体10で受け止めることができ、楔機構14におけるボルト部材24が緩むことがない。そのため、ローラーカッター3の抜け落ちを防止することができる。この結果、従来のものと比較して同等の強度を確保できる上、簡単な構造のカッターホルダ5を提供することができる。
ローラーカッター3とカッターホルダ5との間に土砂が噛み込んでしまい、ローラーカッター3が回動不能な状態であっても、ローラーカッター3の1対の係合軸部3bを回動させずに取り外し可能なので、交換に支障をきたすことがない。しかも、カッターホルダ5の構造を簡単化することもできる。
ローラーカッター3の交換作業が簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、特に、非常に固い地盤(硬岩部)を掘削する場合、また、長距離のトンネルを連続的に掘削する場合でも、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。さらに、押え部材11と楔機構14による協働によりローラーカッター3をホルダー部材9に支持する構成なので、トンネル掘削時の振動による各種固定ボルトの緩みを防止することが期待できる。
楔部材23がボルト部材24によりロック部材13をロック位置に締結する締結方向へ駆動されることで、楔部材23とロック部材13の傾斜面13aとの楔作用により、楔部材23とロック部材13を収容溝16に押圧して、楔部材23とロック部材13をホルダー部材9に確実に一体化させることができる。また、楔部材23は、収容溝16内で傾斜面13aと収容溝16の側壁面16bとの間に嵌合されるので、楔部材23を容易に後方へ取り外すことができる。楔部材23はローラーカッター3の掘削反力を直接受けないので、ボルト部材24の外れ止めを防止することができる。
押え部材11は、ホルダー本体10の後側から操作可能な1対のボルト19によりホルダー本体10に固定されたので、カッターヘッド2の後側から1対のボルト19を操作して、押え部材11をホルダー本体10に固定することで、ローラーカッター3の係合軸部3bをホルダー本体10の前部に確実に固定することができる。
係合軸部3bを収容溝16内を移動させる際に、ローラーカッター3の収容溝16と平行方向への移動を許容する為のローラーカッター移動用スペース18を設けたので、ローラーカッター3を他の部材と干渉させることなくスムーズに移動させて交換することができる。
次に、実施例1のカッターホルダ5を部分的に変更した変更形態について説明するが、実施例1と同様の構成には同様の参照符号を付して説明は省略する。
図5,図6に示すように、カッターホルダ5Aは、1対のホルダー部材9Aと、各ホルダー部材9Aに夫々形成されたL形溝12Aと、各ホルダー部材9Aに設けられたロック部材13A及び楔機構14Aとを備えている。
1対のホルダー部材9Aは、L形溝12Aが夫々形成された1対のホルダー本体10Aと、各ホルダー本体10Aの前部にボルト19Aを介して固定された1対の押え部材11とを備えているが、L形溝12Aの形状が実施例1のものと異なる以外は、ホルダー本体10Aと押え部材11は実施例1と基本的に同じ構造であるので、以下の説明では、L型溝12Aについてのみ説明する。
次に、L形溝12Aについて説明する。
図6に示すように、L形溝12Aは、実施例1の収容溝16より周回方向に長く形成された収容溝16Aと、この収容溝16Aの周回方向の他端部分(図6では上端側部分)から後方側へ延びホルダー本体10Aの後端側に開放した実施例1の開放溝17より幅広の開放溝17Aからなる。収容溝16Aは、嵌入凹部15の周回方向における長さの1/2〜2/3倍程度の長さを有し、押え部材11がホルダー本体10Aに固定されている状態では、係合部21の後端は収容溝16Aの前端側の途中部分に連なった状態になる。
次に、ロック部材13Aについて説明する。
図5,図6に示すように、ロック部材13Aは、L形溝12Aの深さと略同じローラ軸方向(径方向)の厚さを有し、ローラ軸方向及び前方から視て細長い台形の形状に形成されている。ロック部材13Aは、収容溝16Aに収容されて係合軸部3bと収容溝16Aの一端部分の後端壁面16Aaとの間に後方移動不能に挟着され、係合軸部3bに後方から当接して、押え部材11の係合部21に係合軸部3bを保持する。
ロック部材13Aの長手方向(周回方向)における長さは、開放溝17Aの周回方向の長さ(溝幅)より僅かに小さく形成されている。それ故、ロック部材13Aを図6に示す姿勢のままでも開放溝17Aを通過させて収容溝16Aに着脱することができる。
ロック部材13Aの周回方向の一端面(図6では上端面)には、傾斜面13Aaが形成されている。この傾斜面13Aaは、前端側程楔機構14Aを挟んで対向する収容溝16Aの側壁面16Abに接近するように傾斜し(図6参照)、且つ、ローラーカッター3側程楔機構14Aを挟んで対向する収容溝16Aの側壁面16Abに接近するように傾斜している(図5参照)。
ロック部材13Aの周回方向の他端面(図6における下端面)には、収容溝16Aの側壁面16Acに当接する平坦面13Acが形成され、この平坦面13Acを挟んで後側には径方向に延びる傾斜面13Adが形成され、反対側の前側には緩やかにカーブした湾曲面13Aeが形成されている。
このロック部材13Aによれば、ロック部材13Aを収容溝16Aに挿入する場合、ロック部材13Aを収容溝16Aに対して直交する姿勢で開放溝17Aに挿入しても、湾曲面13Aeにより押え部材11や係合軸部3bに引っかかることなく、ロック部材13AをL形溝12A内でスムーズに方向変換して収容溝16Aに挿入することができ、依って、ロック部材13Aの取り付け作業がスムーズになる。
また、ロック部材13Aの締結を解除する場合、楔部材23Aを取り外した後に、ホルダー本体10Aのネジ孔32に後方からボルト31を螺入し、このボルト31の先端部でロック部材13Aの傾斜面13Adを押圧すると、ロック部材13Aが締結解除側(図6における上側)に押圧されて移動させることができ、依って、ロック部材13Aを収容溝16Aから容易に取り外し可能となる。
次に、楔機構14Aについて説明する。
図5,図6に示すように、楔機構14Aは、収容溝16A内においてロック部材13Aをロック位置に締結する為のものであり、ロック部材13Aに形成された上述の傾斜面13Aaと、収容溝16A内で傾斜面13Aaと収容溝16Aの側壁面16Abとの間に前側部分が嵌合される楔部材23Aと、この楔部材23Aを押え部材11に接近する方向(ロック部材13Aをロック位置に締結する締結方向)へ駆動可能な1対のボルト部材24Aとを有している。
楔部材23Aは、L形溝12の深さと略同じローラ軸方向(径方向)の厚さを有し、ローラ軸方向から視て凸状の形状に形成されている。楔部材23Aの鍔部23Abを除く部分の周回方向における長さは、開放溝17Aの周回方向の長さより僅かに小さく形成されている。それ故、楔部材23Aを開放溝17aに挿入して、その前側部分を収容溝16a内でロック部材13Aの傾斜面13Aaと収容溝16Aの側壁面16Abとの間に嵌合することができる。
テーパ部23Aaは、楔部材23Aのロック部材13Aの傾斜面13Aaに対向する前側部分の側面に形成され、傾斜面13Aaと同方向へ傾斜している。楔部材23Aの後端部には、周回方向に突出した鍔部23Abが形成されている。この鍔部23Abの両端部には1対のボルト挿通孔23Acが形成されている。
この楔機構14Aによれば、ロック部材13Aと楔部材23Aとが収容溝16Aに収容された状態で、楔部材23Aの1対のボルト挿通孔23Acに後方から1対のボルト部材24Aが挿通され、先端部がホルダー本体10Aの1対のボルト孔に夫々螺合されて、この1対のボルト部材24Aにより楔部材23Aを押え部材11Aに接近する方向へ挿入する。
すると、ロック部材13Aの傾斜面13Aaと楔部材23Aのテーパ部23Aaとの楔作用により、楔部材23Aとロック部材13Aとが収容溝16Aの側壁面16Ab,16Acの間に押圧され嵌入されて固定状態となる。また、このとき、ロック部材13Aは僅かにローラーカッター3側に移動して固定されるので、ロック部材13Aのガタツキを押さえた状態でロック位置に締結することができる。その他の作用及び構成は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
次に、前記実施例1,2を部分的に変更した形態について説明する。
[1]図7に示すように、カッターホルダ5Bの各ホルダー部材9Bのように、前記ホルダー本体10,10Aと前記押え部材11とを一体的に構成しても良い。この構成よると、押え部材11を省略することで、カッターホルダ5Bの構成部材数を低減することができ、カッターホルダ5Bを容易に組み立てることができる。
[2]前記1対の押え部材11の前面部分に対して、溶接ビードで肉盛りしたハード・フェーシングを形成しても良い。
[3]前記ボルト挿通孔23cを、ボルト部材24よりも大径のボルト孔に形成しても良い。この構成によると、楔部材23を取り外す際にボルト部材24を取り外した後に、楔部材23が収容溝16に強固に固定されている場合であっても、前記ボルト孔に対応するボルトを締結して、このボルトを介して楔部材23を後方へ引き抜くことで、楔部材23を収容溝16から容易に取り外し可能となる。
[4]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例の種々の変更を付加した形態で実施可能で、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
1 トンネル掘削機
2 カッターヘッド
3 ローラーカッター
3a ローラ軸
3b 係合軸部
5,5A,5B ローラーカッター用カッターホルダ
9,9A,9B ホルダー部材
10,10A ホルダー本体
11 押え部材
12,12A L形溝
13,13A ロック部材
13a,13Aa 傾斜面
14,14A 楔機構
16,16A 収容溝
16a,16Aa 後端壁面
16b,16Ab 側壁面
17,17A 開放溝
18 ローラーカッター移動用スペース
19,19A ボルト
21 係合部
23,23A 楔部材
24,24A ボルト部材

Claims (5)

  1. トンネル掘削機の前端部のカッターヘッドに装備されるローラーカッターを支持するローラーカッター用カッターホルダにおいて、
    前記ローラーカッターを回転自在に支持するローラ軸の端部の1対の係合軸部を支持し且つ前記係合軸部が係合する係合部を夫々有する1対のホルダー部材と、
    前記各ホルダー部材に形成されるL形溝であって、前記係合部の後方側端部に連なる一端部分から前記カッターヘッドの軸心を中心とするローラーカッターの周回方向と平行方向へ直線的に延び且つ前記係合軸部の前後幅以上の前後幅をする収容溝と、この収容溝の他端部分から後方側へ延び前記ホルダー部材の後端側に開放し且つ前記係合軸部が前後方向に通過可能な開放溝とを有するL形溝と、
    前記収容溝に収容されて前記係合軸部と前記収容溝の前記一端部分の後端壁面との間に挟着されるロック部材と、
    前記ロック部材をロック位置に締結する楔機構と、
    を備えたことを特徴とするローラーカッター用カッターホルダ。
  2. 前記楔機構は、前記ロック部材に形成され且つ前端側程前記楔機構を挟んで対向する前記収容溝の側壁面に接近するように傾斜した傾斜面と、前記収容溝内で前記傾斜面と前記側壁面との間に嵌合される楔部材と、この楔部材を締結方向へ駆動可能なボルト部材とを有することを特徴とする請求項1に記載のローラーカッター用カッターホルダ。
  3. 前記ホルダー部材は、前記カッターヘッドに取り付けられ且つ前記L形溝が形成されたホルダー本体と、このホルダー本体の前部に固定され且つ前記係合部が形成された押え部材とを備え、
    前記押え部材は、前記ホルダー本体の後側から操作可能な1対のボルトにより前記ホルダー本体に固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のローラーカッター用カッターホルダ。
  4. 前記ボルト部材と前記楔部材とを取り外してから前記ロック部材を前記収容溝と前記開放溝とを通過させて取り外し、その後、前記係合軸部を前記収容溝と前記開放溝とを通過させて取り外すことで、前記ローラーカッターを前記ホルダー部材の後方へ取り外し可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載のローラーカッター用カッターホルダ。
  5. 前記係合軸部を前記収容溝内を移動させる際に、前記ローラーカッターの前記収容溝と平行方向への移動を許容する為のローラーカッター移動用スペースを設けたことを特徴とする請求項4に記載のローラーカッター用カッターホルダ。

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