JP5898450B2 - 冷菓の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アイスミルクやアイスクリーム等をチョコレート等の油脂原料でコーティングした、油脂原料からなる外殻を有する冷菓の製造方法に関する。
アイスミルクやアイスクリーム等をチョコレート等の油脂原料でコーティングした、油脂原料からなる外殻を有する冷菓が知られている。
通常、このような冷菓は、アイスミルクやアイスクリームの原料である冷菓ミックスをモールドに充填し、冷却固化させた後、固化した冷菓をモールドから取り出し、温調して液状としたチョコレート等の油脂原料に浸漬して、冷菓の周りに油脂原料をまとわせる方法で、製造されている。
また、従来、冷菓の分野の当業者においては、冷菓を製造する際のモールドは、金属製であるという技術常識があった。
他方、ジャム等のゲル状食品を冷菓で包む方法として、冷媒に浸漬させたモールドに、冷菓ミックスを充填し、最外層を凍結させ、シェルを形成させた後、未凍結冷菓ミックスを取り出さずに、このミックス内に冷菓ミックスよりも比重が大きく、かつ冷却によりゲル化する異種食品(ジャム等)を注入し、比重の差により異種食品を降下させ未凍結冷菓ミックスを押上げて凍結することを特徴とする冷菓の製造方法が知られている(特許文献1)。
また、冷菓を、内側にチョコレート層を有する冷菓の殻(シェル)で包んだものの製造方法であって、冷媒に浸漬したモールドに冷菓ミックスを充填し最外層を凍らせてその内部の未凍部分を吸引除去するシェル形成工程と、シェル内側の底部にチョコレート液を充填するチョコレート充填工程と、上記充填されたチョコレート液の上から、上記チョコレート液よりも比重の大きい冷菓ミックスを充填してチョコレート液をシェル内壁に沿って上昇させ硬化させるチョコレート薄層形成工程と、上記充填冷菓ミックスを凍らせる冷菓層形成工程とを備えることを特徴とする冷菓の製法が知られている(特許文献2)。
ところで、冷菓以外の分野ではジャムやキャラメル等をチョコレートの殻で包んだ菓子が知られ、その製造方法の一つとして、複数種の流動性食品材料の流体原料をモールドへ充填する工程と、充填した流動性食品材料の流体原料を固化する工程と、固化した流動性食品材料をモールドより取り出す工程とからなる装飾した食品の製造装置において、前記充填する工程と固化する工程との間に、充填工程によりモールドへ同時充填された未だ固化しない前記流動性食品材料の流体原料中へ筒状ノズルで該流体原料とは別の流状食材を内部充填して膨らませる工程を付加した複合食品の製造方法が知られている(特許文献3)。
また、この文献では、前記モールドを販売容器とすることも提案されている。
特許第3656935号公報 特公平3−75134号公報 特許第3658505号公報
冷菓のような嗜好品の開発において、味や食感のみならず見た目にもきれいな商品を提供することは、重要な課題の一つである。更に、このような商品の製造コストを低減し、より求めやすい価格の商品を市場に提供することも重要な課題の一つである。
従来の、アイスクリーム等をチョコレートでコーティングした冷菓の製造方法は、上述したようにモールド内で凍結したアイスクリーム等を一旦取り出し、液状のチョコレートに浸漬するという工程が必須であり、浸漬のための装置及び当該装置への搬送手段が必要であった。また、浸漬を効率よく行うために、コーティング量以上の大量のチョコレートを液状で保持する必要があり、その管理コストについても見直しの余地があった。
また、特許文献1や特許文献2に記載されるように、冷菓を最外層(外殻)とし、内部にジャムやチョコレート等を充填した食品の製造方法は知られているが、何れも、最外層となる冷菓ミックスをモールド内で一旦凍結させた後、ジャムやチョコレート等の内部の原料を充填し、再度凍結させるというものであり、当該製造方法を、チョコレートを最外層(外殻)として有する冷菓にそのまま適用することはできない。
更に、凍結したアイスクリーム等を一旦モールドから取り出す工程を省くことを目的として、特許文献3に記載されるように、モールドと販売容器を兼ねることも考えられる。しかしながら、冷菓を製造する際には、凍結時の体積変化や、モールド内での冷菓表面の融解による容器(モールド)への付着の問題等を考慮する必要があり、冷菓のきれいな形状を保持したまま、消費者が容器(モールド)から簡単に取り出せるように設計するためには、種々の検討が必要である。
そこで、本発明は、アイスクリーム、アイスミルク等をチョコレート等の油脂原料でコーティングした冷菓の製造方法であって、従来の製造方法に比して簡便な製造方法を提供することを課題とする。特に、工場での大量生産に適した製造方法を提供することを課題とする。
更に、本発明は、冷菓の製造に用いられるモールドをそのまま冷菓を収容する容器として利用することを前提とし、きれいな形状を保持したまま消費者が容器(モールド)から冷菓を簡単に取り出せるような製品を提供することを課題とする。
本発明者は、チョコレート等の油脂原料からなる外殻を有する冷菓の製造方法として、従来の方法とは異なる方法について模索してきた。
その結果、本発明者は、チョコレート等の油脂原料をモールドに注入した後、これが固化する前に、モールド内の油脂原料の上から冷菓ミックスを注入し、その際の冷菓ミックスの注入圧力で油脂原料をモールド内壁に沿って延伸することにより、チョコレート等の油脂原料からなる外殻を有する冷菓を製造することに成功し、本発明を完成させた。
また、上記製造工程において、冷菓ミックスの注入条件を工夫することで、モールド内の冷菓にピックを刺して持ち上げるだけで、簡単に冷菓をモールドから取り出すことができること、更には、このようにして取り出した冷菓は、見た目にもきれいであることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決する本発明は、油脂原料からなる外殻を有する冷菓の製造方法であって、モールド内に油脂原料を注入する油脂原料注入工程と、前記油脂原料を注入したモールド内に、前記油脂原料が固化する前に冷菓ミックスを注入する冷菓ミックス注入工程と、前記油脂原料と冷菓ミックスを固化させる固化工程と、を有し、前記冷菓ミックス注入工程では、冷菓ミックスの注入圧力を利用して、前記モールド内の油脂原料をモールド内壁に沿って延伸させる、ことを特徴とする。
このような冷菓の製造方法によれば、モールド内で凍結したアイスクリーム等の冷菓を一旦モールドから取り出し、液状のチョコレートに浸漬するという工程を行うことなく、チョコレートの外殻を有する冷菓を製造することが可能であり、冷菓の製造ラインを簡素化することができる。また、少なくとも、注入と固化という工程で冷菓を製造することができるため、その観点からも製造ラインを簡素化することが可能となる。
本発明の好ましい形態において、前記冷菓ミックスの注入時における、前記冷菓ミックスの粘度は、前記油脂原料の粘度より大きいことを特徴とする。
このように、冷菓ミックスの粘度を、外殻の原料である油脂原料の粘度より大きくすることにより、冷菓ミックスを注入した際に、冷菓ミックスが油脂原料と混ざることを極力抑制し、油脂原料と冷菓ミックスの界面をきれいに作ることができる。その結果、油脂原料からなる外殻をきれいに形成することが可能となる。
本発明の好ましい形態では、前記固化工程は、前記油脂原料を収縮させることを含む。固化工程において、油脂原料からなる外殻を収縮させることで、モールドと油脂原料からなる外殻内面との間に隙間を形成し、製造した冷菓がモールドから取り出しやすくなる。
本発明の好ましい形態では、前記冷菓ミックスの注入時における、該冷菓ミックスのオーバーランが3〜30%であり、かつ該冷菓ミックスの温度が−4.0〜−5.5℃である。
冷菓ミックスの注入時における、冷菓ミックスのオーバーラン及び温度を上記範囲に調節することにより、冷菓ミックスの粘度が適度となり、モールド底面に接する外殻に厚みを持たせることができ、流通や保管時の冷菓ミックスの一部溶融等による油脂原料表面への浸み出しを防ぐことができる。その結果、モールド内壁に冷菓ミックスが付着することを抑制し、冷菓のモールドからの取り出しが容易となる。
本発明の好ましい形態では、前記冷菓ミックスの注入は、ノズルを用いて行い、前記ノズルの吐出口面積は、前記モールドの底面積の1/5〜1/12である。
モールドの底面積に対し、一定の比率の吐出口面積のノズルを用いて、冷菓ミックスの注入を行うことにより、冷菓ミックスの注入圧力が、モールドの底面に存在する油脂原料の適当な範囲にかかり、油脂原料をモールド内壁に効率よく延伸することができる。
本発明の好ましい形態では、前記冷菓ミックスの注入は、流量2〜6ml/s、及び流速5〜15cm/sで行う。
このような流量、及び流速で冷菓ミックスを注入することにより、冷菓ミックスの注入圧力を制御し、油脂原料をモールド内壁に高い均一性で延伸することができ、均一性の高い油脂原料からなる外殻を形成することができる。
本発明の好ましい形態では、前記冷菓ミックスの比重が、前記油脂原料の比重に対し、0.8〜1.2倍である。
このように、冷菓ミックスの比重と油脂原料の比重をほぼ同じとすることで、冷菓ミックスの浮上によって、外殻のモールド底面に接する部分が厚くなりすぎることや、冷菓ミックスの沈降によって、外殻のモールド底面に接する部分が薄くなりすぎることを防ぐことができ、高い均一性を有する外殻を形成することができる。
上記のような高い均一性を有する油脂原料からなる外殻を形成するために、比重を上記のとおり調節する好ましい方法として、前記冷菓ミックスのオーバーランを、3〜30%とすることが挙げられる。
本発明の好ましい形態として、前記モールドは、前記冷菓の収容部を有する容器を兼ねていることを特徴とする。
このような形態とすることで、製造ラインにおいて、モールドから冷菓を取り出す工程を経ずに、流通又は保管可能な製品とすることが可能となる。
本発明の好ましい形態では、前記固化工程後に、前記冷菓を前記容器に収容した状態で包装する包装工程を行うことを特徴とする。
このような包装工程を行うことで、冷菓を容器(モールド)に収容した状態で流通、保管することができ、製造ラインを簡素化することができる。また、このようにして包装された製品は、消費者が購入して家庭でそのまま保管することができ、好きな時に簡単に容器(モールド)から冷菓を取り出すことができる。
本発明の冷菓の製造方法によれば、モールド内で凍結したアイスクリーム等の冷菓を一旦モールドから取り出し、液状のチョコレート等に浸漬するという工程を行うことなく、チョコレート等からなる外殻を有する冷菓を製造することが可能である。また、少なくとも、注入と固化という工程で冷菓を製造することができるため、製造ラインを簡素化することが可能となる。
また、本発明の冷菓の製造方法の好ましい形態では、製造に用いたモールドを、冷菓を収容する容器として利用することで、製造ラインを簡素化できる。そして、このような製品を購入した消費者は、家庭で製品を食する際には、きれいな外観を保持した状態で冷菓を容器(モールド)から簡単に取り出すことができるという利点を得ることができる。
本発明の冷菓の製造方法における油脂原料注入工程を示す説明図である。 本発明の冷菓の製造方法における油脂原料注入工程を示す説明図である。 本発明の冷菓の製造方法における冷菓ミックス注入工程を示す説明図である。 本発明の冷菓の製造方法における冷菓ミックス注入工程を示す説明図である。 本発明の冷菓の製造方法における固化工程を示す説明図である。 本発明の冷菓の製造方法におけるトッピング工程を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図1〜6を参照しながら説明する。
<油脂原料注入工程>
本発明では、図1に示すように、まず、モールド1内に油脂原料2を注入する油脂原料注入工程を行う。
本発明において、油脂原料とは、油脂を主要な原料として含む冷菓原料である。具体的には、油脂原料全体に対して、油脂を20質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上含む原料である。油脂原料に含まれる油脂としては、パーム油やヤシ油等の植物油等、通常冷菓において使用されているものであれば特に制限されない。油脂原料としては、通常冷菓において使用されるものであって、冷却により固化し外殻を形成し得るものであれば特に制限されない。このような油脂原料として、カカオバターを含むチョコレート、バター加工品、植物油脂加工品等が挙げられる。なお、チョコレートには、ホワイトチョコレート等、カカオパウダーを含有しないものも含まれる。油脂原料は、好ましくは25〜35℃の何れかの範囲において流体である。
本発明に用いられる油脂原料として、好ましくは準チョコレートが挙げられる。
また、本発明の油脂原料は、油脂原料全体に対して、ヤシ油を、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上含む。ヤシ油を上記の範囲で含有することにより、後述する固化工程において、油脂原料からなる外殻が適度に収縮し、モールドからの取り出しがより容易になる。
油脂原料注入工程では、上記油脂原料2を、これが外殻21(図5参照)を形成するのに必要な量、モールド1内へ注入する。注入量の目安としては、図2に示すように、モールド1の容量の10〜40%程度、好ましくは20〜35%程度が挙げられる。油脂原料の注入は、図示しない充填機のノズル31を利用して行うことができる。ノズル31は、食品分野において、液体原料を容器に充填する際などに用いられる通常の形態のものを用いることができる。
モールド1としては、金属製、プラスチック製等種々の材質のものを用いることができる。モールド1は、前記冷菓の収容部を有する容器を兼ねていることが好ましい。また、このような容器は、図1に示すように複数の収容部(1a)を有することも好ましい。モールド1の容量としては、好ましくは5〜20ml、さらに好ましくは7〜15mlである。このような容量のモールドを用いることにより、後述する冷菓ミックス注入工程及び固化工程を経て、油脂原料2から外殻21を形成することが容易になる。また、このようなモールドを用いることで、いわゆるひと口サイズの冷菓を製造することができる。
油脂原料2は、モールド1内へ注入される際、取扱い性の観点から流体であることが好ましい。例えば、油脂原料2を、好ましくは25〜40℃程度、さらに好ましくは30〜35℃程度に保持することが好ましい。
モールド内へ注入された油脂原料2は、例えば、図2に示すような状態となる。このような油脂原料2は、少なくとも後述する冷菓ミックス4(図3参照)を注入する際には、それを延伸させることができるよう流体である必要がある。
<冷菓ミックス注入工程>
油脂原料注入工程の後、図3に示すように、前記油脂原料2を含むモールド内に冷菓ミックス4を注入する、冷菓ミックス注入工程を行う。この前記冷菓ミックス注入工程では、図4に示すように冷菓ミックス4の注入圧力を利用して、前記モールド1内の油脂原料2をモールド1の内壁に沿って延伸させる。すなわち、この冷菓ミックス注入工程を行う際、前記モールド1内に注入された油脂原料2は流体の状態であり、冷菓ミックス4の注入圧力によって容易に変形し得る状態となっている。このような状態の油脂原料2の上から、冷菓ミックス4を注入することで、油脂原料2が冷菓ミックス4によりモールドの周方向に押し退けられ、油脂原料2がモールド1の内壁の側面上方へとせりあがる。
冷菓ミックス4は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの製造に用いられるものを特に制限なく用いることができる。
冷菓ミックス4の注入量(体積)は、冷菓ミックス4及び油脂原料2の総体積に対し、好ましくは35〜85%、さらに好ましくは50〜70%程度である。このような注入量とすることで、適度な厚みの外殻21を製造することが可能となる。
ここで、前記冷菓ミックス4の粘度は、前記油脂原料2の粘度より大きいことが好ましい。
上記のように、冷菓ミックス4の粘度を、外殻21の原料である油脂原料2の粘度より大きくすることにより、冷菓ミックスを注入した際に、油脂原料と冷菓ミックスの界面をきれいに作ることができる。また、モールド底面11側の外殻21に厚みを持たせることができ、流通や保管時の油脂原料2の表面への浸み出しを防ぐことができる。これにより、モールド1の内壁に冷菓5の表面が付着することを防ぎ、冷菓5のモールド1からの取り出しが容易となる。
これらの原料の粘度は、例えば、汎用の粘度計によって測定すればよい。
冷菓ミックス4を注入する際の冷菓ミックス4の温度としては、好ましくは−4.0℃〜−5.5℃程度、さらに好ましくは−4.5℃〜−5.5℃程度に保持することが好ましい。同時に、この際の油脂原料2の温度としては、25〜50℃程度、好ましくは30〜35℃程度に保持されていることが好ましい。冷菓ミックス4の温度が高すぎると、冷菓ミックス4を注入した際に、冷菓ミックス4と油脂原料2が混ざってしまい、これらの界面がきれいに形成されない場合がある。一方、冷菓ミックス4の温度が低すぎると、冷菓ミックス4の注入が終了した際に、冷菓ミックス4の上面中心部が盛り上がってしまい、外観がいびつになってしまう場合がある。
また前記冷菓ミックス4の比重は、前記油脂原料2の比重に対し、好ましくは0.8〜1.2倍、さらに好ましくは0.85〜0.95倍である。このように、冷菓ミックス4の比重と油脂原料2の比重をほぼ同じとすることで、固化工程が完了するまでの間に、冷菓ミックス4の浮上によって、外殻21のモールド底面に接する部分が厚くなりすぎることや、冷菓ミックス4の沈降によって、外殻21のモールド底面に接する部分が薄くなりすぎることを防ぐことができ、高い均一性を有する外殻21を形成することができる。更に、前記冷菓ミックス4の比重を多少小さく設定することで、更に高い均一性を有する外殻21を形成することができる。
上記のような比重を達成するためには、例えば、冷菓ミックス4のオーバーランを3〜30%、好ましくは5〜15%とすることが挙げられる。
また、このようなオーバーランの範囲に調節することで、冷菓ミックスの粘度を適度に高めることもできる。
また、このようなオーバーランの範囲に調節することで、油脂原料2の比重に対する冷菓ミックス4の比重も、上述したように適当な範囲に調整することができる。
また、冷菓ミックス4の注入時の冷菓ミックス4のオーバーランを上記の範囲とし、かつ冷菓ミックス4を注入する際の冷菓ミックス4の温度を−4.0℃〜−5.5℃程度、好ましくは−4.5〜5.5℃程度とすることで、冷菓ミックスの粘度をさらに適度に調節することができる。これにより、モールド底面に接する外殻に厚みを持たせることができ、流通や保管時の冷菓ミックスの一部溶融等による油脂原料表面への浸み出しを防ぐことができる。その結果、モールド内壁に冷菓ミックスが付着することを抑制し、冷菓のモールドからの取り出しが容易となる。
冷菓ミックス4の注入は、図示しない別の充填機のノズル32を利用して行うことができる。ノズル32は、食品分野において、液体原料を容器に充填する際等に用いられる通常の形態のものを用いることができる。この際、吐出口32aの面積は、前記モールド1の底面積の1/5〜1/12、或いは1/5〜1/8とすることが好ましい。このような面積の比率とすることにより、図4に示すように、冷菓ミックス4の注入圧力が、モールド1内に存在する油脂原料2の適当な範囲にかかり、油脂原料をモールド内壁に沿って効率よく延伸することができる。また、この場合、ノズル32の吐出口32aは、モールド底面11のほぼ中央に位置決めされ、冷菓ミックス4の注入圧力は、モールド1内に存在する油脂原料2の界面の中央部から周囲に向けてかけられることとなる。
また、前記冷菓ミックス4の注入における冷菓ミックス4の流量は、好ましくは2〜6ml/s、さらに好ましくは3〜5ml/sが挙げられる。また、この場合において、冷菓ミックス4の流速は、好ましくは5〜15cm/s、さらに好ましくは8〜12ml/sが挙げられる。
このような流量、及び流速で冷菓ミックス4を注入することにより、冷菓ミックス4の注入圧力を制御し、油脂原料をモールド内壁に沿って高い均一性で延伸することができ、均一性の高い外殻21を形成することができる。
<固化工程>
モールド1内へ注入された油脂原料2と冷菓ミックス4は、図5に示すような状態で凍結され固化する。前記冷菓ミックス注入工程終了後、固化工程を開始するまでの時間は、好ましくは3分以内、より好ましくは1分以内、さらに好ましくは45秒以内である。このように、冷菓ミックス注入工程終了から固化工程開始までの時間を短くすることにより、冷菓ミックス注入工程時の油脂原料の外殻の形状を極力維持することができる。凍結は、−20℃以下で行えばよい。例えば、−25〜−35℃で20〜40分程度冷却することにより行うことが好ましい。このような凍結によって、上述した油脂原料2は、固化することにより、油脂結晶が整列しその体積が小さくなる。それにより、モールド1の内壁表面と油脂原料2からなる外殻21の表面との間に、わずかな隙間(図示しない)が形成される。このような隙間が形成されることで、固化した冷菓5をモールドから取り出しやすくなるのである。
ここで、モールドの材質としてプラスチックを用いることにより、冷菓5のモールド1からの剥離性が特に良好となり、取り出しやすくなる。
<トッピング工程>
上述した各工程を経て、目的とする製品を得ることができるが、例えば、固化工程の前又は後に、図6に示すように、冷菓にトッピング6を施すトッピング工程を設けても良い。トッピングは、特に制限なく用いることができ、例えば、ナッツ類やチョコチップ類、ジャム等が挙げられる。また、上記油脂原料と同様の原料を用いることもできる。トッピング6は、図示しないさらに別の充填機のノズル33を利用して行うことができる。ノズル33は、食品分野において、固体原料を容器に充填する際等に用いられる通常の形態のものを用いることができる。
トッピング工程を、前記固化工程の前に行った場合には、トッピング工程終了後、図6に示すような状態で速やかに凍結固化される。
<包装工程>
上記のようにして得られた冷菓5は、モールド1から取り出して、必要に応じて容器に収容した後、包装しても良いし、モールド1が冷菓5を収容する容器を兼ねる場合には、この容器ごと冷菓5を包装しても良い。包装は、プラスチックフィルムや紙を用いたピロー包装のほか、紙箱での包装等任意の形態をとることができる。
モールドが冷菓を収容する容器を兼ねる場合に、容器ごと冷菓を包装した場合には、そのまま流通させることができる。容器から冷菓を取り出すには、例えば、冷菓にピックを刺して持ち上げる要領で行えばよい。
本発明の冷菓の製造方法は、ひと口で食することができる程度の大きさの、いわゆるひと口タイプの冷菓の製造に特に好適である。もちろん、本発明の冷菓の製造方法は、このような大きさの冷菓の製造に限定されるわけではなく、モールドの大きさや注入の条件を適宜調節することにより、より大きい冷菓に適用できることは言うまでもない。
<実施例1>
以下のチョコレートコーチング(油脂原料)及びクリーム(冷菓ミックス)を用い、本発明の方法により冷菓を製造した。
Figure 0005898450
まず、チョコレートコーチング(比重1.1)を30℃に温調した。このチョコレートコーチングを、ノズルを用いて、冷菓の収容部を複数備えたプラスチック製容器の収容部に、注入した。注入量は約2.7mlであった。なお収容部1つあたりの容量は、10mlであった。
続いて、フリーザーで−5.0℃にフリージングしたクリーム(オーバーラン10%、比重1.0)を、前記収容部内のチョコレートコーチングの上から口径約7mmのノズルを用いて注入した。注入量は約4.5mlであった。また、注入の際の流量は約3.0ml/s、流速は約8cm/sであった。なお、チョコレートコーチングの温度はほぼ30℃に保持されていた。
続いて、マス充填機で、トッピング(クランチ、ローストアーモンド)をクリームの上から充填した。
充填後、1分以内に−30℃程度で30〜40分かけて急速冷凍した。
冷凍後、直ちにプラスチックフィルムでプラスチック製容器ごとピロー包装し、容器入り製品を製造した。
このようにして製造した容器入り製品について、包装を開封した後、プラスチック製容器の収容部の開口から、冷菓にプラスチック製のピックを刺して持ち上げることで、冷菓を取り出したところ、スムーズに取り出すことができた。また、取り出した冷菓の表面を観察したところ、滑らかなチョコレートコーチング面が形成されていた。
<実施例2>
上記実施例と同じ原材料を用い、クリームのフリージングの温度を−4.0℃として、同様の方法により容器入り製品を製造した。
このようにして製造した容器入り製品について、同様にピックを用いて冷菓を取り出そうとしたところ、概ねスムーズに取り出すことはできたが、多少抜けにくいと感じるものがあった。このような冷菓について表面を観察したところ、クリームの一部がわずかに外殻から浸み出していた。
以上の結果から、オーバーランが10%程度(例えば5〜15%程度)の冷菓ミックスの注入時における冷菓ミックスの温度は、−4.0℃でも問題ないものの、−4.5℃〜−5.5℃程度とすることが、より好ましいことが分かった。
本発明は、チョコレートの外殻を有する冷菓の工業生産に応用できる。
1 モールド
11 モールド底面
1a 収容部
2 油脂原料
21 外殻
31、32、33 ノズル
32a 吐出口
4 冷菓ミックス
5 冷菓
6 トッピング

Claims (8)

  1. 油脂原料からなる外殻を有する冷菓の製造方法であって、
    モールド内に油脂原料を注入する油脂原料注入工程と、
    前記油脂原料を注入したモールド内に、前記油脂原料が固化する前に冷菓ミックスを流量2〜6ml/s、及び流速5〜15cm/sで注入する冷菓ミックス注入工程と、
    前記油脂原料と冷菓ミックスを固化させる固化工程と、を有し、
    前記冷菓ミックスの比重が前記油脂原料の比重以下であり、
    前記冷菓ミックス注入工程では、冷菓ミックスの注入圧力を利用して、前記モールド内の油脂原料をモールド内壁に沿って延伸させる、ことを特徴とする冷菓の製造方法。
  2. 前記冷菓ミックスの比重が、前記油脂原料の比重に対し、0.8倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の冷菓の製造方法。
  3. 前記冷菓ミックスの注入時における、前記冷菓ミックスの粘度が、前記油脂原料の粘度より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷菓の製造方法。
  4. 前記固化工程は、前記油脂原料を収縮させることを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
  5. 前記冷菓ミックスの注入時における、該冷菓ミックスのオーバーランが3〜30%であり、かつ該冷菓ミックスの温度が−4.0〜−5.5℃であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
  6. 前記冷菓ミックスの注入は、ノズルを用いて行い、
    前記ノズルの吐出口面積が、前記モールドの開口面積の1/5〜1/12である、請求項1〜5の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
  7. 前記モールドは、前記冷菓の収容部を有する容器を兼ねていることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
  8. 前記固化工程後に、前記冷菓を前記容器に収容した状態で包装する包装工程を行うことを特徴とする、請求項に記載の冷菓の製造方法。
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