JP5898450B2 - 冷菓の製造方法 - Google Patents
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Description
通常、このような冷菓は、アイスミルクやアイスクリームの原料である冷菓ミックスをモールドに充填し、冷却固化させた後、固化した冷菓をモールドから取り出し、温調して液状としたチョコレート等の油脂原料に浸漬して、冷菓の周りに油脂原料をまとわせる方法で、製造されている。
また、従来、冷菓の分野の当業者においては、冷菓を製造する際のモールドは、金属製であるという技術常識があった。
また、この文献では、前記モールドを販売容器とすることも提案されている。
従来の、アイスクリーム等をチョコレートでコーティングした冷菓の製造方法は、上述したようにモールド内で凍結したアイスクリーム等を一旦取り出し、液状のチョコレートに浸漬するという工程が必須であり、浸漬のための装置及び当該装置への搬送手段が必要であった。また、浸漬を効率よく行うために、コーティング量以上の大量のチョコレートを液状で保持する必要があり、その管理コストについても見直しの余地があった。
更に、本発明は、冷菓の製造に用いられるモールドをそのまま冷菓を収容する容器として利用することを前提とし、きれいな形状を保持したまま消費者が容器(モールド)から冷菓を簡単に取り出せるような製品を提供することを課題とする。
また、上記製造工程において、冷菓ミックスの注入条件を工夫することで、モールド内の冷菓にピックを刺して持ち上げるだけで、簡単に冷菓をモールドから取り出すことができること、更には、このようにして取り出した冷菓は、見た目にもきれいであることを見出し、本発明を完成させた。
このような冷菓の製造方法によれば、モールド内で凍結したアイスクリーム等の冷菓を一旦モールドから取り出し、液状のチョコレートに浸漬するという工程を行うことなく、チョコレートの外殻を有する冷菓を製造することが可能であり、冷菓の製造ラインを簡素化することができる。また、少なくとも、注入と固化という工程で冷菓を製造することができるため、その観点からも製造ラインを簡素化することが可能となる。
このように、冷菓ミックスの粘度を、外殻の原料である油脂原料の粘度より大きくすることにより、冷菓ミックスを注入した際に、冷菓ミックスが油脂原料と混ざることを極力抑制し、油脂原料と冷菓ミックスの界面をきれいに作ることができる。その結果、油脂原料からなる外殻をきれいに形成することが可能となる。
冷菓ミックスの注入時における、冷菓ミックスのオーバーラン及び温度を上記範囲に調節することにより、冷菓ミックスの粘度が適度となり、モールド底面に接する外殻に厚みを持たせることができ、流通や保管時の冷菓ミックスの一部溶融等による油脂原料表面への浸み出しを防ぐことができる。その結果、モールド内壁に冷菓ミックスが付着することを抑制し、冷菓のモールドからの取り出しが容易となる。
モールドの底面積に対し、一定の比率の吐出口面積のノズルを用いて、冷菓ミックスの注入を行うことにより、冷菓ミックスの注入圧力が、モールドの底面に存在する油脂原料の適当な範囲にかかり、油脂原料をモールド内壁に効率よく延伸することができる。
このような流量、及び流速で冷菓ミックスを注入することにより、冷菓ミックスの注入圧力を制御し、油脂原料をモールド内壁に高い均一性で延伸することができ、均一性の高い油脂原料からなる外殻を形成することができる。
このように、冷菓ミックスの比重と油脂原料の比重をほぼ同じとすることで、冷菓ミックスの浮上によって、外殻のモールド底面に接する部分が厚くなりすぎることや、冷菓ミックスの沈降によって、外殻のモールド底面に接する部分が薄くなりすぎることを防ぐことができ、高い均一性を有する外殻を形成することができる。
このような形態とすることで、製造ラインにおいて、モールドから冷菓を取り出す工程を経ずに、流通又は保管可能な製品とすることが可能となる。
このような包装工程を行うことで、冷菓を容器(モールド)に収容した状態で流通、保管することができ、製造ラインを簡素化することができる。また、このようにして包装された製品は、消費者が購入して家庭でそのまま保管することができ、好きな時に簡単に容器(モールド)から冷菓を取り出すことができる。
また、本発明の冷菓の製造方法の好ましい形態では、製造に用いたモールドを、冷菓を収容する容器として利用することで、製造ラインを簡素化できる。そして、このような製品を購入した消費者は、家庭で製品を食する際には、きれいな外観を保持した状態で冷菓を容器(モールド)から簡単に取り出すことができるという利点を得ることができる。
本発明では、図1に示すように、まず、モールド1内に油脂原料2を注入する油脂原料注入工程を行う。
本発明において、油脂原料とは、油脂を主要な原料として含む冷菓原料である。具体的には、油脂原料全体に対して、油脂を20質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上含む原料である。油脂原料に含まれる油脂としては、パーム油やヤシ油等の植物油等、通常冷菓において使用されているものであれば特に制限されない。油脂原料としては、通常冷菓において使用されるものであって、冷却により固化し外殻を形成し得るものであれば特に制限されない。このような油脂原料として、カカオバターを含むチョコレート、バター加工品、植物油脂加工品等が挙げられる。なお、チョコレートには、ホワイトチョコレート等、カカオパウダーを含有しないものも含まれる。油脂原料は、好ましくは25〜35℃の何れかの範囲において流体である。
本発明に用いられる油脂原料として、好ましくは準チョコレートが挙げられる。
モールド1としては、金属製、プラスチック製等種々の材質のものを用いることができる。モールド1は、前記冷菓の収容部を有する容器を兼ねていることが好ましい。また、このような容器は、図1に示すように複数の収容部(1a)を有することも好ましい。モールド1の容量としては、好ましくは5〜20ml、さらに好ましくは7〜15mlである。このような容量のモールドを用いることにより、後述する冷菓ミックス注入工程及び固化工程を経て、油脂原料2から外殻21を形成することが容易になる。また、このようなモールドを用いることで、いわゆるひと口サイズの冷菓を製造することができる。
油脂原料2は、モールド1内へ注入される際、取扱い性の観点から流体であることが好ましい。例えば、油脂原料2を、好ましくは25〜40℃程度、さらに好ましくは30〜35℃程度に保持することが好ましい。
モールド内へ注入された油脂原料2は、例えば、図2に示すような状態となる。このような油脂原料2は、少なくとも後述する冷菓ミックス4(図3参照)を注入する際には、それを延伸させることができるよう流体である必要がある。
油脂原料注入工程の後、図3に示すように、前記油脂原料2を含むモールド内に冷菓ミックス4を注入する、冷菓ミックス注入工程を行う。この前記冷菓ミックス注入工程では、図4に示すように冷菓ミックス4の注入圧力を利用して、前記モールド1内の油脂原料2をモールド1の内壁に沿って延伸させる。すなわち、この冷菓ミックス注入工程を行う際、前記モールド1内に注入された油脂原料2は流体の状態であり、冷菓ミックス4の注入圧力によって容易に変形し得る状態となっている。このような状態の油脂原料2の上から、冷菓ミックス4を注入することで、油脂原料2が冷菓ミックス4によりモールドの周方向に押し退けられ、油脂原料2がモールド1の内壁の側面上方へとせりあがる。
上記のように、冷菓ミックス4の粘度を、外殻21の原料である油脂原料2の粘度より大きくすることにより、冷菓ミックスを注入した際に、油脂原料と冷菓ミックスの界面をきれいに作ることができる。また、モールド底面11側の外殻21に厚みを持たせることができ、流通や保管時の油脂原料2の表面への浸み出しを防ぐことができる。これにより、モールド1の内壁に冷菓5の表面が付着することを防ぎ、冷菓5のモールド1からの取り出しが容易となる。
これらの原料の粘度は、例えば、汎用の粘度計によって測定すればよい。
また、このようなオーバーランの範囲に調節することで、冷菓ミックスの粘度を適度に高めることもできる。
また、このようなオーバーランの範囲に調節することで、油脂原料2の比重に対する冷菓ミックス4の比重も、上述したように適当な範囲に調整することができる。
このような流量、及び流速で冷菓ミックス4を注入することにより、冷菓ミックス4の注入圧力を制御し、油脂原料をモールド内壁に沿って高い均一性で延伸することができ、均一性の高い外殻21を形成することができる。
モールド1内へ注入された油脂原料2と冷菓ミックス4は、図5に示すような状態で凍結され固化する。前記冷菓ミックス注入工程終了後、固化工程を開始するまでの時間は、好ましくは3分以内、より好ましくは1分以内、さらに好ましくは45秒以内である。このように、冷菓ミックス注入工程終了から固化工程開始までの時間を短くすることにより、冷菓ミックス注入工程時の油脂原料の外殻の形状を極力維持することができる。凍結は、−20℃以下で行えばよい。例えば、−25〜−35℃で20〜40分程度冷却することにより行うことが好ましい。このような凍結によって、上述した油脂原料2は、固化することにより、油脂結晶が整列しその体積が小さくなる。それにより、モールド1の内壁表面と油脂原料2からなる外殻21の表面との間に、わずかな隙間(図示しない)が形成される。このような隙間が形成されることで、固化した冷菓5をモールドから取り出しやすくなるのである。
ここで、モールドの材質としてプラスチックを用いることにより、冷菓5のモールド1からの剥離性が特に良好となり、取り出しやすくなる。
上述した各工程を経て、目的とする製品を得ることができるが、例えば、固化工程の前又は後に、図6に示すように、冷菓にトッピング6を施すトッピング工程を設けても良い。トッピングは、特に制限なく用いることができ、例えば、ナッツ類やチョコチップ類、ジャム等が挙げられる。また、上記油脂原料と同様の原料を用いることもできる。トッピング6は、図示しないさらに別の充填機のノズル33を利用して行うことができる。ノズル33は、食品分野において、固体原料を容器に充填する際等に用いられる通常の形態のものを用いることができる。
トッピング工程を、前記固化工程の前に行った場合には、トッピング工程終了後、図6に示すような状態で速やかに凍結固化される。
上記のようにして得られた冷菓5は、モールド1から取り出して、必要に応じて容器に収容した後、包装しても良いし、モールド1が冷菓5を収容する容器を兼ねる場合には、この容器ごと冷菓5を包装しても良い。包装は、プラスチックフィルムや紙を用いたピロー包装のほか、紙箱での包装等任意の形態をとることができる。
モールドが冷菓を収容する容器を兼ねる場合に、容器ごと冷菓を包装した場合には、そのまま流通させることができる。容器から冷菓を取り出すには、例えば、冷菓にピックを刺して持ち上げる要領で行えばよい。
以下のチョコレートコーチング(油脂原料)及びクリーム(冷菓ミックス)を用い、本発明の方法により冷菓を製造した。
続いて、フリーザーで−5.0℃にフリージングしたクリーム(オーバーラン10%、比重1.0)を、前記収容部内のチョコレートコーチングの上から口径約7mmのノズルを用いて注入した。注入量は約4.5mlであった。また、注入の際の流量は約3.0ml/s、流速は約8cm/sであった。なお、チョコレートコーチングの温度はほぼ30℃に保持されていた。
続いて、マス充填機で、トッピング(クランチ、ローストアーモンド)をクリームの上から充填した。
充填後、1分以内に−30℃程度で30〜40分かけて急速冷凍した。
冷凍後、直ちにプラスチックフィルムでプラスチック製容器ごとピロー包装し、容器入り製品を製造した。
上記実施例と同じ原材料を用い、クリームのフリージングの温度を−4.0℃として、同様の方法により容器入り製品を製造した。
このようにして製造した容器入り製品について、同様にピックを用いて冷菓を取り出そうとしたところ、概ねスムーズに取り出すことはできたが、多少抜けにくいと感じるものがあった。このような冷菓について表面を観察したところ、クリームの一部がわずかに外殻から浸み出していた。
11 モールド底面
1a 収容部
2 油脂原料
21 外殻
31、32、33 ノズル
32a 吐出口
4 冷菓ミックス
5 冷菓
6 トッピング
Claims (8)
- 油脂原料からなる外殻を有する冷菓の製造方法であって、
モールド内に油脂原料を注入する油脂原料注入工程と、
前記油脂原料を注入したモールド内に、前記油脂原料が固化する前に冷菓ミックスを流量2〜6ml/s、及び流速5〜15cm/sで注入する冷菓ミックス注入工程と、
前記油脂原料と冷菓ミックスを固化させる固化工程と、を有し、
前記冷菓ミックスの比重が前記油脂原料の比重以下であり、
前記冷菓ミックス注入工程では、冷菓ミックスの注入圧力を利用して、前記モールド内の油脂原料をモールド内壁に沿って延伸させる、ことを特徴とする冷菓の製造方法。 - 前記冷菓ミックスの比重が、前記油脂原料の比重に対し、0.8倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックスの注入時における、前記冷菓ミックスの粘度が、前記油脂原料の粘度より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷菓の製造方法。
- 前記固化工程は、前記油脂原料を収縮させることを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックスの注入時における、該冷菓ミックスのオーバーランが3〜30%であり、かつ該冷菓ミックスの温度が−4.0〜−5.5℃であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックスの注入は、ノズルを用いて行い、
前記ノズルの吐出口面積が、前記モールドの開口面積の1/5〜1/12である、請求項1〜5の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。 - 前記モールドは、前記冷菓の収容部を有する容器を兼ねていることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の冷菓の製造方法。
- 前記固化工程後に、前記冷菓を前記容器に収容した状態で包装する包装工程を行うことを特徴とする、請求項7に記載の冷菓の製造方法。
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