JP5897278B2 - 甘柿の保存方法 - Google Patents

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Description

この発明は、甘柿の硬度、果皮の色、食味を長期間に渡って維持したまま保存できる甘柿の保存方法に関する。
果物、特に柿、なし、りんごなどの果物は露地栽培であるため、産地によって若干の違いはあるものの、収穫期は限られている。一方、消費者の果実への需要は年間を通じてある。そのため、生産者は、消費者の需要に応じて、果実を収穫期以外に比較的高値で提供することを希望している。そこで、従来から、収穫した果実を長期間に渡って保存する方法が検討されている。
具体的には、収穫した果実を冷蔵庫に長期間保存する方法、収穫した果実をポリエチレンなどからなる袋に入れて常温で保存する方法、及びこれらを組み合わせた方法が開発されている(非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3を参照。)。
しかし、これらの方法では、果物は保存している間に軟化してしまうため、硬度を保ったまま保存することはできず、保存している間に変色して、食味が変わる、との問題点があった。そのため、例えば、富有柿、次郎柿、西村早生などの甘柿の場合、4月〜6月の間(収穫から約半年後)に生食用として販売すれば、大きな需要が認められるにもかかわらず、販売することができなかった。
文室政彦ら、「短期脱渋、個装及び冷蔵技術を用いたカキ‘平核無’果実の長期貯蔵の実用化」、園芸学雑誌71(2):300−302(2002). Bibi N, et al.,"Phenolics and physico-chemical characteris- tics of persimmon during post-harvest storage.", Nahrung. 2001 Apr;45(2):82-86 "流通利用研究室成果情報"、「長期貯蔵かき『富有』の氷温貯蔵による果皮黒斑の発生抑制」、[online]、生産環境研究所・流通加工部・流通利用研究室、[平成23年7月21日検索]、インターネット<URL: http://farc.pref.fukuoka.jp/farc/seika/seika15/8seino07.htm>
この発明は、簡単、安価に、長期間に渡って、甘柿の硬度、果皮の色、食味を維持した
まま保存できる甘柿の保存方法を提供することを課題とする。
この発明は、甘柿を特定の材質・厚さのフィルムからなる保存袋に収容して、保存袋を脱気・密封したのち、冷蔵保存することを最も主要な特徴とする。
この発明の甘柿の保存方法により、甘柿の硬度、果皮の色、食味を維持したまま長期間保存することができる。これによって、甘柿の需要はあるものの供給が低下する端境期に、甘柿を出荷できるようになり、甘柿の生産者である農家の収入の向上に貢献できる。
図1は、保存袋の材質や厚さが、甘柿の硬度変化(軟化率)に与える影響を経時的に調べた結果を示す図である。
この発明の甘柿の保存方法は、(1)収納工程と、(2)脱気工程と、(3)密封工程と、(4)冷蔵工程とを備えている。そこで、以下に工程の詳細について説明する。
(1)収納工程
収納工程は、甘柿を人手や機械によって保存袋に収納する工程である。ここで、甘柿としては、例えば生食できることから富有柿、次郎柿、西村早生などの甘柿が好ましい。
また、保存袋としては、40μmポリプロピレンフィルムを重ね合わせ、その3辺を熱などの公知の方法によって袋状に接着させたもの、具体的には、特開平9−59402号公報に記載されているように活性処理したポリプロピレンフィルムからなる保存袋、商品名「オーラパック」(ベルグリーンワイズ製)を使用する。なお、ポリプロピレンフィルムの厚さが、40μm未満では外気の影響により、甘柿を長期保存することが難しい。また、ポリプロピレンフィルムの厚さの上限は特に限定する必要はないが、市販品の厚さの上限は60μmである。
(2)脱気工程
甘柿を収納した保存袋から、公知の手段、例えば吸引ポンプ等を使用して空気を脱気する工程である。なお、脱気は、保存袋と甘柿とが密着する程度であればよく、保存袋内が完全に真空になる必要はない。
(3)密封工程
甘柿を収納して脱気した保存袋を、公知の手段、例えば、ポリシーラーや接着剤などによって密封する工程である。なお、市販の真空脱気シーラーを利用すれば、(2)脱気工程と(3)密封工程を同じ装置で行える。
(4)冷蔵工程
甘柿を密封した保存袋を、1〜5℃の温度下で冷蔵保存する工程である。甘柿を1℃未満
で保存すると凍結して解凍しなければならなくなり(これによって食味や食感が大きく損なわれる)、5℃を超える温度で甘柿を保存すると甘柿の硬度、果皮の色、食味を維持し
たまま長期間保存できない。なお、冷蔵保存は、甘柿の保存に使用する市販の冷蔵庫、冷蔵室、冷蔵倉庫を使用して、通常の方法で行えばよい。
以下、この発明を実施例に基づいてより詳しく説明するが、この発明の特許請求の範囲は如何なる意味においても下記の実施例により限定されるものではない。
11月末に採取した富有柿を使用して、この発明にかかる甘柿の保存方法の効果を調べた。その詳細を、工程ごとに以下に示す。
(1)収納工程
原料と厚さが異なる樹脂フィルムからなる保存袋(30cm×30cm)に、柿を3個ずつ収納した。ここで、保存袋を構成する樹脂フィルムの材質、厚さは、
(a)ポリプロピレン 40μm(商品名:オーラパック、ベルグリーンワイズ製)
(b)ポリプロピレン 25μm(商品名:オーラパック、ベルグリーンワイズ製)
(c)ポリプロピレン 20μm(商品名:オーラパック、ベルグリーンワイズ製)
(d)ポリエチレン 50μm,60μm(佐藤ポリエチレン商会製)
(e)ナイロンポリエチレン 70μm,80μm(商品名:複合フィルム、スズキ紙工製)
である。なお、(a)〜(e)はそれぞれ2セットずつ作製した。
(2)脱気工程及び(3)密封工程
柿を収容した保存袋を、脱気シーラー(NPC製)で脱気して密封した。密封する際の脱気シーラーのヒーター温度は、各フィルムの材質に併せて適切な値を設定した。
(4)冷蔵工程
密封した保存袋を、1℃と5℃に調温した冷蔵庫(三洋電機製)で冷蔵した。また、冷蔵開始から、90日、120日、150日、180日に保存袋に収納されている柿の硬度を、目視と触感によって測定し、冷蔵開始時を100%とする相対値(軟化率)で評価した。
(5)実験結果
図1に軟化率の変化を示す。なお、図1(A)は1℃で冷蔵した場合の結果を示し、図1(B)は5℃で冷蔵した場合の結果を示している。
図1から、(a)ポリプロピレン40μmを使用した場合には、何れの冷蔵温度においても、180日が過ぎても果実は殆ど軟化しておらず、冷蔵開始時と同じ硬度を保つことが、確認できた。なお、果皮の色、食味の何れの点においても、収穫直後と同じであることも確認できた。
また、(b)〜(d)を使用した場合には、冷蔵開始120日後(5℃)又は150日以後(1℃)には果実が50%程度軟化し、180日後には何れの冷蔵温度においても果実がほぼ100%軟化することが確認できた。
さらに、(e)を使用した場合には、冷蔵温度が1℃であれば、120日まで果実の軟化度が50%程度で抑えられてはいるものの、150日を過ぎると何れの冷蔵温度においてもほぼ完全に軟化し、180日では完全に軟化することが確認できた。
以上の結果から、保存袋の材質と厚さによって、軟化率の変化に大きな違いがあることが確認できた。そして、この発明の保存方法によって甘柿の硬度、果皮の色、食味を維持したまま180日間の長期間保存できること、が分かった。

Claims (1)

  1. (1)厚さが40μmポリプロピレンフィルムからなる保存袋(商品名「オーラパック」、ルグリーンワイズ製)で果物を包む収納工程と、
    (2)保存袋から空気を脱気する脱気工程と、
    (3)保存袋を密封する密封工程と、
    (4)1〜5℃の温度下で冷蔵する冷蔵工程と、
    を含む甘柿の保存方法。
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