JP5896679B2 - オオオバボタル由来ルシフェラーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、オオオバボタル(Lucidina accensa)に由来するルシフェラーゼに関する。
細胞内のシグナル伝達および遺伝子発現といった細胞の活動を解析するために、蛍光色素および蛍光タンパク質といった蛍光プローブ並びにルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を利用する発光プローブが用いられている。特に遺伝子の発現調節の解析には、励起光による細胞のダメージが生じず且つ自家発光の問題が生じない、定量性に優れた発光計測が用いられる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞を観察する場合、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を測定することで、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べることができる。発光量の測定は、最初に細胞を溶解して細胞溶解液を作製し、その後この細胞溶解液にルシフェリンおよびATP等を添加し、光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量するという手順で行われる。すなわち、発光量の測定は細胞を溶解した後に行われる。このため、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、細胞全体の平均値として測定される。ルシフェラーゼ遺伝子等の発光遺伝子をレポーター遺伝子として導入する方法として、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法等を使用でき、各方法は目的および細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流または下流に目的のDNA断片を繋ぎ、ルシフェラーゼの発現量を分析することで、当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることが可能となる。また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子と目的の遺伝子とを共発現させることで、当該遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることが可能となる。
時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を分析するには、生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。このような測定は、ルミノメーターを備えたインキュベーターにて細胞を培養し、全細胞集団からの発光量を一定時間ごとに定量することで行われる。これにより、一定の周期性をもった発現リズム等を分析することができ、細胞全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができる。
近年、生物学および医学の研究において、生きた試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察の必要性が高まってきている。蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子機能を動的に捉えるために、タイムラプスまたは動画撮像が行われている。従来技術では、蛍光試料を用いた経時的観察(例えば、蛍光分子を付したタンパク質1分子の動画観察)が行われている。
一方、経時的観察のために発光試料を用いる場合、発光試料の発光強度は極めて小さいため、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラを用いて観察する必要がある。また最近では、発光試料を観察するための光学系を有した顕微鏡も開発されている(特許文献1および2)。
特開2006−301599号公報 国際公開第06/088109号
本発明が解決しようとする課題は、有用な新規のルシフェラーゼを提供することである。
実施形態に係るルシフェラーゼは、オオオバボタル(Lucidina accensa)に由来する。
本発明により、有用な新規のルシフェラーゼが提供される。
図1は、実施形態に係るオオオバボタルルシフェラーゼの各pHにおける発光スペクトルである。 図2は、各ルシフェラーゼのKm値をプロットした図である。 図3は、実施形態に係る野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび変異型オオオバボタルルシフェラーゼ並びにPhotinus pyralis由来のルシフェラーゼの発光強度を比較する図である。 図4は、実施形態に係るオオオバボタルルシフェラーゼおよびオバボタルルシフェラーゼのタンパク質分解に対する安定性を比較する図である。 図5は、実施形態に係る野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび変異型(M249K)オオオバボタルルシフェラーゼ並びにオバボタル由来のルシフェラーゼの発光強度を比較する図である。 図6は、種々のpH環境下にて、実施形態に係る変異型(F294Y、V323LおよびE354V)オオオバボタルルシフェラーゼを酵素として使用した発光反応において得られる発光スペクトルである。 図7は、種々のpH環境下にて、実施形態に係る変異型(E322W)オオオバボタルルシフェラーゼを酵素として使用した発光反応において得られる発光スペクトルである。 図8は、55℃の環境下においた野生型オオオバボタルルシフェラーゼまたは変異型(F294Y、V323LおよびE354V)オオオバボタルルシフェラーゼを発現する大腸菌から生じる発光を観察した画像をモノクロにて示した図である。 図9は、55℃の環境下においた野生型オオオバボタルルシフェラーゼまたは変異型(E322W)オオオバボタルルシフェラーゼを発現する大腸菌から生じる発光を観察した画像をモノクロにて示した図である。
本発明の一実施形態は、オオオバボタル(Lucidina accensa)に由来するルシフェラーゼに関する。
「ルシフェラーゼ」とは、一般に、発光が生じる化学反応を触媒する酵素を指す。当該酵素の基質となる物質はルシフェリンと呼ばれる。ATPの存在下、ルシフェラーゼの触媒作用により、ルシフェリンが化学変化を起こす際に発光する。現在、ルシフェラーゼは、ホタルに由来するものおよびバクテリアに由来するものが取得されている。実施形態に係るルシフェラーゼも、上述の通り定義されるルシフェラーゼと同義であるが、後述するホタルから初めて取得された新規のルシフェラーゼである。
実施形態に係るルシフェラーゼは、オオオバボタル(学名:Lucidina accensa)に由来する。オオオバボタルとは、節足動物門・昆虫綱・甲虫目・ホタル科・オバボタル属に属すホタルであり、本州、四国および九州の主に山間部に生息することが確認されている。なお、オオオバボタルの近縁種としてオバボタル(学名:Lucidina biplagiata)というホタルが存在しており、これは北海道、本州、四国および九州の主に平野部に生息していることが確認されている。これらのホタルは、地域によって両種が混生することも確認されている。オバボタルと比較して体長が大きいことから「オオ」オバボタルとの和名が付されている。なお、ここにいう「由来する」とは、オオオバボタルが有する野生型のルシフェラーゼに加えて、その変異体をも含むことを意味する。
発光強度が小さい発光試料を顕微鏡により撮像する場合、鮮明な画像を撮影するために必要な露出時間は長くなる。このような発光試料は、使用できる研究用途が制限される。例えば、発光強度の小ささのために30分間の露出時間が必要となる場合、30分間隔での経時的撮影は可能であっても、より短い間隔での撮影、さらにはリアルタイムでの撮影は不可能である。また、画像の取得に当って、発光する細胞に焦点を合わせるために複数枚の画像を取得し比較する必要があるが、発光強度の小ささのために長い露出時間を必要とする場合、1枚の画像を取得するだけでも手間と時間を要することになる。
実施形態に係るルシフェラーゼは、既知のルシフェラーゼと比較して高い発光強度を示し得る。この場合、実施形態に係るルシフェラーゼは、タンパク質のイメージングのためのレポーターとしての利用において有利な効果を奏する。すなわち、実施形態に係るルシフェラーゼは、少量でも高い発光量を提供できるため、発現量が低いタンパク質の良好な検出を可能とする。また、実施形態に係るルシフェラーゼは、発光強度が高いことにより検出に必要な露出時間を短縮できる。このため、実施形態に係るルシフェラーゼを経時的観察のためのレポーターとして利用すれば、撮影間隔を短くすることが可能となり、よりリアルタイムに近い観察が可能となる。
実施形態に係るルシフェラーゼは、例えば、オバボタルに由来するルシフェラーゼ(配列番号30または31)による発光強度の1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上または5.5倍以上の発光強度を示し得る。また、実施形態に係るルシフェラーゼは、例えば、Photinus pyralis(主に北米に生息するホタル)に由来するルシフェラーゼ(配列番号33)9による発光強度の1.1倍以上、1.5倍、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上または4倍以上の発光強度を示し得る。
実施形態に係るルシフェラーゼは、500nmから700nmの間の波長において高い発光強度を示す発光スペクトルを有し得る。特に、550nmから650nmの間において高い発光強度を示し得る。さらに、実施形態に係るルシフェラーゼの最大発光波長は、周囲の環境のpHに応じてシフトし得る。例えば、pH8.0からpH7.5の環境下において564nm付近の最大発光波長を示し、pH7.0の環境下において605nm付近の最大発光波長を示し、pH6.5からpH5.5の環境下において614nm付近の最大発光波長を示す。なお、「最大発光波長」とは、ルシフェラーゼが関与する発光反応において、測定波長範囲内において発光強度が最大となる波長を意味する。
実施形態に係るルシフェラーゼは、既知のルシフェラーゼと比較して高い分解安定性を示し得る。「分解安定性」とは、ルシフェラーゼが使用される環境における、当該ルシフェラーゼの分解の生じにくさを意味する。また、「分解安定性」とは、タンパク質分解酵素による分解に対する安定性のみでなく、タンパク質分解酵素が関与しない分解、例えば熱や機械的刺激に起因した分解等に対する安定性をも含む。ルシフェラーゼが使用される環境とは、溶液中、培養液中、細胞外液中、細胞内等を意味する。特に、培養液、細胞外液および細胞中にはタンパク質分解酵素が多数存在する場合があり、実施形態に係るルシフェラーゼはそのような環境下であっても分解に強い。すなわち、実施形態に係るルシフェラーゼは、そのような環境下であっても分解されず、高い発光強度を維持できる。実施形態に係るルシフェラーゼは、例えば、オバボタルに由来するルシフェラーゼと比較して、タンパク質分解に対する安定性が高い。
実施形態に係るルシフェラーゼの一例は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むルシフェラーゼである。このルシフェラーゼはオオオバボタルから取得されたものであり、何ら変異処理を受けていない。本願では、当該ルシフェラーゼを、野生型オオオバボタルルシフェラーゼと称する。
図1に、この野生型オオオバボタルルシフェラーゼの発光スペクトルを示す。この図から示されるとおり、pHに応じて最大発光波長がシフトする。特に、pH8の環境下で最も高い強度の発光を示し、このとき最大発光波長は564nm付近である。図2に、この野生型オオオバボタルルシフェラーゼのATPに関するKm値およびD−ルシフェリンに関するKm値を示す。図3および5に、既知のホタルルシフェラーゼとの発光強度の比較を示す。図3の左および中央のグラフの比較から、野生型オオオバボタルルシフェラーゼが、P.pyralis由来ルシフェラーゼと比較して約1.1倍以上の発光強度を示すことがわかる。また、図5の左3つのグラフの比較から、野生型オオオバボタルルシフェラーゼが、オバボタル由来ルシフェラーゼと比較して少なくとも約5.5倍以上の発光強度を示すことがわかる。図4に、この野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび既知のホタルルシフェラーゼの分解安定性を比較した結果を示す。この結果は、各々のルシフェラーゼを大腸菌中に発現させて、そのライセートをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することで得られたものである。野生型オオオバボタルルシフェラーゼ(中央のレーン)では70kDa付近に一本のバンドが現れている。一方、オバボタル由来ルシフェラーゼ(左および右のレーン)では、同じく70kDa付近のバンドが最大サイズのバンドとして現れ、さらにそれよりも小さなバンドが複数現れている。このことは、野生型オオオバボタルルシフェラーゼでは、ほとんど分解が進んでいないのに対し、オバボタル由来ルシフェラーゼでは、分解が進んでいることを意味する。
実施形態に係る野生型オオオバボタルルシフェラーゼ(配列番号1)は、既知のホタルルシフェラーゼとは異なる新規の配列を有する。実施形態に係る野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、文献(Oba Y, Furuhashi M, Inouye S. (2010) Identification of a functional luciferase gene in the non-luminous diurnal firefly, Lucidina biplagiata. Molecular Insect Biology 19(6):737-743.)により報告されているオバボタルのアミノ酸配列(配列番号30)および本発明者らによってクローニングされたオバボタルのアミノ酸配列(配列番号31)との間で以下の表1に示されるアミノ酸残基の差異を有する。なお、文献により報告されたオバボタルの配列と本発明者らのクローニングにより示されたオバボタルの配列とは、249番目のアミノ酸がそれぞれリジンおよびメチオニンである点で異なっている。
Figure 0005896679
表1に示される配列の差異に関して、次のように表現することができる。すなわち、実施形態に係るルシフェラーゼは、オバボタル由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号30)との間で相同性検索を行った場合に、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の13番目のアラニンに対応するアミノ酸残基がプロリンであること、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の211番目のトレオニンに対応するアミノ酸残基がアスパラギンであること、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の227番目のフェニルアラニンに対応するアミノ酸残基がチロシンであること、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の249番目のリジンに対応するアミノ酸残基がメチオニンであること、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の530番目のロイシンに対応するアミノ酸残基がイソロイシンであること、および配列番号30に記載されるアミノ酸配列の542番目のアラニンに対応するアミノ酸残基がバリンであることの少なくとも1つを満足するアミノ酸配列を有する。なお、この実施形態に係るルシフェラーゼでは、配列番号30に記載されるアミノ酸配列の13番目、211番目、227番目、249番目、530番目および542番目に対応するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基については、特に限定されず、配列番号30に記載のアミノ酸配列との間で対応するアミノ酸残基が異なってもよい。
実施形態に係るルシフェラーゼは、野生型オオオバボタルルシフェラーゼだけでなく、このルシフェラーゼのアミノ酸配列の一部に変異が生じた変異型オオオバボタルルシフェラーゼを含む。以降、野生型オオオバボタルルシフェラーゼを「野生型ルシフェラーゼ」または「野生型」と記載し、変異型オオオバボタルルシフェラーゼを「変異型ルシフェラーゼ」または「変異型」と記載する場合がある。
そのような変異型オオオバボタルルシフェラーゼを得るための変異とは、ルシフェラーゼの性質に変化を与えない変異であってよい。例えば、発光反応に対する寄与率の高い配列またはドメインにおいては変化がなく、発光反応に対する寄与率の低い配列またはドメインについて変化が生じる変異であってよい。具体的には、例えば、発光反応にあまり関与しない部位を削る変異、そのような部位に特定の配列を挿入する変異、末端に特定の配列を付加する変異等であってよい。
また、変異型オオオバボタルルシフェラーゼを得るための変異とは、ルシフェラーゼとしての発光活性以外の性質を変化させる変異であってよい。例えば、実験的な操作性を向上させる変異であってよい。具体的には、例えば、野生型ルシフェラーゼが哺乳細胞内において低い可溶性を示す場合にその可溶性を高める変異であってよい。
さらに、変異型オオオバボタルルシフェラーゼを得るための変異とは、発光反応に関する性質を向上させる変異であってよい。例えば、発光強度を高める変異、最適pHを変更する変異、最適温度を変更する変異、分解安定性を向上させる変異等であってよい。
野生型オオオバボタルルシフェラーゼと比較して発光強度が高まる変異を受けたルシフェラーゼの一例は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する変異型オオオバボタルルシフェラーゼである。この変異型オオオバボタルルシフェラーゼは、図3に示されるように、Photinus pyralisに由来するルシフェラーゼによる発光強度の約4倍以上の発光強度を示し、野生型オオオバボタルルシフェラーゼによる発光強度の約3.6倍以上の発光強度を示す。
変異の別の例は、発光スペクトルの最大発光波長がシフトする変異である。このような変異型オオオバボタルルシフェラーゼを発光反応の酵素として用いた場合、野生型を用いた場合と比較して、最大発光波長がシフトした発光スペクトルが得られる。pH7.0の環境下において野生型オオオバボタルルシフェラーゼを用いた場合、最大発光波長が605nm付近となる発光が生じるが、このような変異によって、最大発光波長が長波長側または短波長側にシフトする。このような変異を有する変異型ルシフェラーゼにおいて、最大発光波長のシフトは、発光反応におけるpH条件を特定のpHにした場合にのみ生じてもよい。例えば、pH6.5未満の範囲およびpH7.0を超える範囲ではシフトが生じないものの、pH6.5からpH7.0の範囲においてシフトが生じてよい。この変異型ルシフェラーゼを野生型ルシフェラーゼまたはその他の変異型ルシフェラーゼとともに細胞内に発現させた場合、これらのルシフェラーゼを、最大発光波長の差異に基づいて区別することができる。したがって、マーカーとしてこれらのルシフェラーゼを利用する研究において、最大発光波長がシフトした変異型ルシフェラーゼを使用することで、マーカーの選択肢を増やすことができる。
変異のさらに別の例は、発光強度の温度依存性が変化する変異である。すなわち、特定の温度における発光反応に対する触媒活性が野生型と比較して高くなり、その結果、その温度における発光強度が高くなる変異である。この変異は、特定の温度範囲のみにおいて発光強度が高くなる変異であってよい。例えば、ある温度において野生型と同等または野生型よりも低い発光強度を示すものの、別の温度では野生型よりも高い発光強度を示すようになる変異であってよい。このような変異型の例は、一般的に使用される温度では野生型と同等の活性を示すものの、それよりも高い温度または低い温度では、野生型が活性を下げるのとは対照的に、活性を維持するようなルシフェラーゼである。この変異型ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼを使用できない温度域でも使用できるため、オオオバボタルルシフェラーゼの用途を広げることができる。
上記のような発光強度を高める変異、最大発光波長がシフトする変異および発光強度の温度依存性が変化する変異は、任意の組み合わせで同時に導入することができ、または互いに独立して導入することができる。
実施形態に係る変異型オオオバボタルルシフェラーゼの一例は、配列番号34に示されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼである。配列番号34に記載のアミノ酸配列は、野生型ルシフェラーゼが有する配列番号1に示されるアミノ酸配列において294番目のフェニルアラニン(F)残基をチロシン(Y)残基に置換し(F294Y)、323番目のバリン(V)残基をロイシン(L)残基に置換し(V323L)、および354番目のグルタミン酸(E)残基をバリン(V)残基に置換した(E354V)ものである。この変異型ルシフェラーゼをコードする核酸は、例えば、配列番号35または38に示される塩基配列を有する核酸である。配列番号38に示される塩基配列は、野生型ルシフェラーゼをコードする配列番号3に対して、対応するアミノ酸配列上で上述の3つの置換が生じるような変異を入れたものである。配列番号35に示される塩基配列は、野生型ルシフェラーゼをコードする配列番号3に対して、後述のような哺乳細胞における発現に対するコドン最適化を施し、更に、対応するアミノ酸配列上で上述の3つの置換が生じるような変異を入れたものである。
配列番号34に記載のアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼと比較して、特定のpHにおいて最大発光波長のシフトが生じている。具体的には、この変異型ルシフェラーゼは、pH7.0から8.0の任意のpH環境下において、611から615nmの最大発光波長を有する発光を示す発光反応を触媒する。これに対し、野生型ルシフェラーゼを用いて得られる最大発光波長は、後述するように、pH7.0の環境下で605nm付近、pH7.5の環境下で567nm付近およびpH8.0の環境下で564nm付近である。したがって、この変異型ルシフェラーゼを用いて得られる発光の最大発光波長を野生型と比較すると、少なくともpH7.0から8.0において長波長側にシフトしている。長い波長を有する光は、生体内での透過性がより優れている。そのため、この変異型ルシフェラーゼを用いることにより、組織、胚および個体を測定の対象とする場合のように、ルシフェリンから光の検出手段までの間に遮蔽物が多く介在する場合であっても、発光強度の低下を抑えて発光を検出することができる。
また、配列番号34に記載のアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼと比較して、発光強度の温度依存性が変化している。具体的には、常温より高い温度において、野生型よりも高い触媒活性を示す。例えば、55℃において、この変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌において発光反応を生じさせると、野生型ルシフェラーゼの場合よりも高い発光を示す。
実施形態に係る変異型オオオバボタルルシフェラーゼの一例は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼである。配列番号36に記載のアミノ酸配列は、野生型ルシフェラーゼが有する配列番号1に示されるアミノ酸配列において322番目のグルタミン酸(E)残基をトリプトファン(W)残基に置換した(E322W)ものである。この変異型ルシフェラーゼをコードする核酸は、例えば、配列番号37または39に示される塩基配列を有する核酸である。配列番号39に示される塩基配列は、野生型ルシフェラーゼをコードする配列番号3に対して、対応するアミノ酸配列上で上述の1つの置換が生じるような変異を入れたものである。配列番号37に示される塩基配列は、野生型ルシフェラーゼをコードする配列番号3に対して、後述のような哺乳細胞における発現に対するコドン最適化を施し、更に、対応するアミノ酸配列上で上述の1つの置換が生じるような変異を入れたものである。
配列番号36に記載のアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼと比較して、特定のpH環境下において最大発光波長のシフトが生じている。具体的には、この変異型ルシフェラーゼは、pH6.8から7.0の任意のpH環境下において、568から572nmの最大発光波長を有する発光を示す発光反応を触媒する。これに対し、野生型ルシフェラーゼを用いて得られる最大発光波長は、後述するように、H6.5の環境下で612nm付近およびpH7.0の環境下で605nm付近である。したがって、この変異型ルシフェラーゼを用いて得られる発光の最大発光波長を野生型と比較すると、少なくともpH6.8から7.0において短波長側にシフトしている。
また、配列番号36に記載のアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼと比較して、発光強度の温度依存性が変化する変異している。具体的には、常温より高い温度において、野生型よりも高い触媒活性を示す。例えば、55℃において、この変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌において発光反応を生じさせると、野生型ルシフェラーゼの場合よりも高い発光を示す。
配列番号2、配列番号34および配列番号36に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有する3種の変異型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列と、野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列との間の差異を、以下の表2にまとめる。なお表2には、既知のオバボタルのアミノ酸配列との間の差異についても示す。
Figure 0005896679
表2に示されるとおり、上記変異型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列は、野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列との間で、50番目および530番目のアミノ酸が異なる。
さらに、実施形態に係るルシフェラーゼには、上述したような野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(配列番号1または2)のアミノ酸配列に変異(例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または付加等)が生じたルシフェラーゼが含まれる。このような変異を受けたルシフェラーゼとは、例えば、上述の野生型または変異型ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1または2)の1以上のアミノ酸、好ましくは、1から20のアミノ酸、1から15のアミノ酸、1から10のアミノ酸または1から5のアミノ酸に変異を受けたルシフェラーゼである。あるいは、このような変異を受けたルシフェラーゼとは、好ましくは、上述の野生型または変異型ルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1または2)との間で75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の相同性を有するルシフェラーゼである。特に、このような変異を受けたルシフェラーゼが、発光反応に関して、上述したような野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(配列番号1または2)と同様の性質を示すことが好ましい。
本発明の一実施形態は、実施形態に係るルシフェラーゼをコードする塩基配列を含む核酸に関する。すなわち、当該核酸は、オオオバボタルに由来するルシフェラーゼ遺伝子を含む核酸である。核酸とは、例えばDNAまたはRNAを指す。また、ルシフェラーゼの「遺伝子」とは、主として、mRNAに転写される領域、すなわち構造遺伝子を意味する。実施形態に係る核酸がコードするルシフェラーゼは、野生型および変異型のルシフェラーゼを含む。
実施形態に係る核酸の一例は、配列番号3に記載される塩基配列を含む核酸である。この配列を有する遺伝子は、オオオバボタルからクローニングされており、野生型オオオバボタルルシフェラーゼをコードする。また、実施形態に係る核酸の別の例は、配列番号32に記載される塩基配列を含む核酸である。この配列を有する遺伝子は、オオオバボタルからクローニングされた塩基配列に変異を加えたものであり、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(配列番号2)をコードする。
実施形態に係る核酸は、上述のような塩基配列に対してさらに変異を加えたものであってよい。そのような塩基配列に対する変異には、コードされるアミノ酸配列に変化が生じない変異が含まれる。この変異を受けた核酸からは、変異導入前と同じアミノ酸配列を有するルシフェラーゼが発現する。そのようなアミノ酸配列に変化が生じない変異の例は、遺伝子中に存在する特定の制限酵素の認識配列を無効にする変異である。この変異によって、遺伝子を含む核酸は当該制限酵素によって切断されなくなるものの、当該遺伝子は変異前と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードできる。このような変異は、制限酵素の認識配列を構成するコドンを、異なる塩基配列の同義コドンに変換することで達成できる。このような変異は、遺伝子組み換えに使用する制限酵素の認識配列が当該遺伝子中に存在する場合に有用である。この場合、予め遺伝子中の認識配列を無効にしておくことで、制限酵素で処理した場合に遺伝子を含む核酸が断片化することを防ぐことができ、結果として組み換えが容易になる。特定の制限酵素の認識配列を無効にした例は、配列番号4に示される塩基配列である。当該配列は、塩基配列1に示されるオオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列においてEcoRIの認識配列を無効にする変異を導入したものである。
また、コードされるアミノ酸配列に変化が生じない変異の別の例は、遺伝子のコドンを特定の生物種における発現に最適化させる変異である。ここにいう「最適化」とは、核酸に含まれる遺伝子のコドンを、特定の生物種においてコドン出現頻度が高いコドンに代えることを意味する。最適化を行った場合、特定の生物種における遺伝子の発現は、最適化をしない場合に比べて高まる。実施形態に係るルシフェラーゼ遺伝子はホタルから取得されたものであるため、当該遺伝子を導入しようとする生物種が分類学的にホタルから遠い程、最適化の効果はより高いと考えられる。特定の生物種とは、例えば細菌細胞、酵母細胞および哺乳細胞である。更に哺乳細胞は、例えばマウスの細胞、サルの細胞およびヒトの細胞である。このようなコドンが最適化された核酸の一例は、配列番号5に示される塩基配列を含む核酸である。当該核酸は、BamHIおよびEcoRIの認識配列が無効にされており、且つ哺乳細胞における発現にコドンが最適化されている。
実施形態に係る核酸は、Kozak配列が付与されたルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列を含む核酸を含む。Kozak配列とは、開始コドンとその前後の複数の塩基配列から成る配列であり、Kozak配列が存在することで、その遺伝子の発現量が増大することがわかっている。Kozak配列は、生物種または生物群ごとに共通配列が見出されている。実施形態に係るKozak配列を含む核酸は、それを導入する生物種に対応したKozak配列を有する。例えば哺乳細胞に導入される場合、核酸は、Kozak配列としてgccrccatgg(rはグアニンまたはアデニンを意味する)の配列を含む。Kozak配列を付与するルシフェラーゼ遺伝子は、野生型遺伝子であってもよいが、上述のようなコドンの最適化を行った変異型遺伝子であってもよい。
本発明の一実施形態は、上述の核酸を含むベクターを含む。当該ベクターには、ルシフェラーゼをコードする核酸以外に、発現を調節するための配列またはマーカー遺伝子の配列を含む核酸等を含んでよい。
本発明の一実施形態は、実施形態に係るルシフェラーゼを利用して細胞内の機能を解析する方法に関する。当該方法は、実施形態に係るルシフェラーゼを細胞内に導入する工程、および前記ルシフェラーゼの発光をイメージング装置により検出する工程を含む。例えば、DNA中の特定の発現調節領域の下流に実施形態に係るルシフェラーゼ遺伝子を導入し、ルシフェラーゼの発現を、それによる発光の有無によって検出することで、発現調節領域の機能を調べることが可能である。
本発明の一実施形態は、実施形態に係るルシフェラーゼを利用して細胞内タンパク質を解析する方法に関する。当該方法は、実施形態に係るルシフェラーゼと解析の対象とするタンパク質とから成る融合タンパク質を細胞内に導入する工程;および、前記ルシフェラーゼの発光をイメージング装置により検出する工程を含む。
当該方法は、解析の対象とするタンパク質の細胞内の局在の観察、および、その局在の時間変化の観察(タイムラプス)を含む。また、当該方法は、タンパク質の局在だけでなく、そのタンパク質が単に発現したか否かの確認をも含む。使用される細胞に特別な限定はなく、細胞のイメージングの分野において通常使用できる細胞であってよい。また、解析の対象とするタンパク質も特別に限定はなく、研究の目的に応じたタンパク質を選択することができる。当該タンパク質は、使用する細胞内に本来存在するタンパクであってよく、または細胞内に本来存在しない異種性のまたは改変したタンパク質であってよい。
融合タンパク質を細胞内に導入する場合、既知の導入方法を使用することができる。1つの方法は、細胞外で精製した融合タンパク質を細胞内に直接導入する方法である。例えば、マイクロインジェクション法によって融合タンパク質を細胞内に直接注入することができる。または、融合タンパク質を含む培養液にて細胞をインキュベートさせて、エンドサイトーシスによって融合タンパク質を細胞に取り込ませることができる。また別の方法は、まず融合タンパク質をコードする塩基配列を含む核酸を導入し、その後細胞内で融合タンパク質を発現させる方法である。例えば、当該核酸を含む発現ベクターを、リン酸カルシウム法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法等によって細胞内に導入し、発現ベクターから融合タンパク質を発現させることができる。ここにおいて、融合タンパク質の遺伝子は、実施形態に係るルシフェラーゼ遺伝子と解析の対象とするタンパク質の遺伝子とを含む遺伝子であり、ここにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子とタンパク質遺伝子とは、それぞれ正常に翻訳されるよう連結されている。
ルシフェラーゼの発光をイメージング装置により検出する工程は、既知の検出方法を使用することができる。例えば、ルシフェラーゼを含む融合タンパク質を発現する細胞に、ルシフェリン、ATPおよびMg2+イオン等を適宜与えてルシフェラーゼによる発光反応を生じさせ、発生した発光をイメージング装置により検出することができる。イメージング装置とは、例えば発光を捉えるためのフィルターを備えた顕微鏡である。顕微鏡を使用することで、細胞内における発光の位置を特定して、この情報をもとにタンパク質の局在を特定することが可能となる。また、イメージング装置として、経時的に撮像できる機能を備えた顕微鏡を使用することができ、この顕微鏡によって経時的観察も可能となる。
[実施例1:オオオバボタル由来のルシフェラーゼ遺伝子のクローニング]
1.材料
材料として東京都で採集したオオオバボタル(Lucidina accensa)の幼虫を用いた。
2.トータルRNAの抽出とcDNAの合成
ホタルの幼虫からハサミを用いて発光器を切り取った。組織および細胞のホモジナイズ用のビーズを含むチューブであるLysing Matrix Dチューブ(MP−Biomedicals社)に、採取した発光器および1mLのトータルRNA抽出試薬TRIzol Reagent(インビトロジェン社)を入れた。このチューブを組織細胞破砕装置FastPrep 24(MP−Biomedicals社)またはFastPrep FP100A(MP−Biomedicals社)に装着し、振動速度6.5m/sおよび振動時間45秒の条件で、ホタルの発光器を試薬中にて破砕した。完了後、チューブを破砕装置から取り出し、30分間氷上に置いた。その後、もう一度同じ条件で破砕を実施した。
次に、トータルRNA抽出試薬TRIzol Reagentの説明書に従って、破砕した溶液からトータルRNAの分離精製を行った。得られたmRNA溶液100μlを、エタノール沈殿法によって沈殿濃縮した。次に、完全長cDNA合成試薬GeneRacer(インビトロジェン社)をマニュアルに従って使用して、沈殿濃縮したトータルRNAから完全長cDNAを合成した。得られたcDNA溶液20μlをホタル完全長cDNAライブラリーとして以下の遺伝子実験に用いた。
3.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側の同定
3−1.RACE(Rapid Amplification of cDNA End)法に用いるプライマーの作製
オオオバボタルのルシフェラーゼ遺伝子のクローニングをPCR(Polymerase chain reaction)法によって行った。このPCRに使用するプライマーは、既知の近縁生物由来のルシフェラーゼ遺伝子のアミノ酸配列に基づいて、以下の通り作製した。
ホタルルシフェラーゼにおいてよく保存されているアミノ酸領域を確認するために、既に公開されている10種類のホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列を、配列情報解析ソフトウェアDNASIS Pro(日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社)を用いて比較した。比較に用いた近縁生物は、ラムフィリス・ノクティルカ(Lampyris noctiluca)(登録番号CAA61668)、ルキオラ・クルシアタ(Luciola cruciata)(登録番号P13129)、ルキオラ・ラテラリス(Luciola lateralis)(登録番号Q01158)、ルキオラ・ミングレリカ(Luciola mingrelica)(登録番号Q26304)、ホタリア・パルヴラ(Hotaria parvula)(登録番号AAC37253)、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis)(登録番号BAF48390)、フォトゥリス・ペンシルヴァニカ(Photuris pennsylvanica)(登録番号Q27757)、ピロコエリア・ミヤコ(Pyrocoelia miyako)(登録番号AAC37254)、ピロコエリア・ルファ(Pyrocoelia rufa)(登録番号AAG45439)およびラハゴフタルムス・オーバイ(Rhagophthalmus ohbai)(登録番号BAF34360)である。
その結果、ホタルルシフェラーゼのC末端側440残基付近に位置するL−I−K−Y−K−G−Y−Q−V(配列番号6)のアミノ酸配列がよく保存されていることがわかった。この9つのアミノ酸配列をコードするコドンから塩基配列を予測し、5’末端RACE PCRに用いる12種類のホタルルシフェラーゼ特異的混合プライマーを設計した。このプライマーの名称および配列は以下の通りである(プライマー配列中のY、RおよびNは混合塩基を示す):flexLuc5−ATA(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTA AT−3’:配列番号7)、flexLuc5−ATG(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTG AT−3’:配列番号8)、flexLuc5−ATT(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAT TTT AT−3’:配列番号9)、flexLuc5−ACA(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTA AT−3’:配列番号10)、flexLuc5−ACG(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTG AT−3’:配列番号11)、flexLuc5−ACT(5’−ACY TGR TAN CCY TTA TAC TTT AT−3’:配列番号12)、flexLuc5−GTA(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTA AT−3’:配列番号13)、flexLuc5−GTG(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTG AT−3’:配列番号14)、flexLuc5−GTT(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAT TTT AT−3’:配列番号15)、flexLuc5−GCA(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTA AT−3’:配列番号16)、flexLuc5−GCG(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTG AT−3’:配列番号17)、flexLuc5−GCT(5’−ACY TGR TAN CCY TTG TAC TTT AT−3’:配列番号18)。これらのプライマーの合成はライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託して行った。
3−2.5’−RACE PCRによる、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側のクローニング
上述の通り作製したホタル完全長cDNAライブラリーを鋳型として用い、上述の通り作製した12種類の特異的混合プライマーおよび5’末端特異的プライマーであるGeneRacer5’Primer(5’−CGA CTG GAG CAC GAG GAC ACT GA−3’:配列番号19)およびGeneRacer5’Nested Primer(5’−GGA CAC TGA CAT GGA CTG AAG GAG TA−3’:配列番号20)を用いて5’−RACE PCRを行った。GeneRacer5’ PrimerおよびGeneRacer5’ Nested Primerは、完全長cDNA合成試薬GeneRacerキット(インビトロジェン社)に含まれているものを使用した。5’−RACE PCRによって効率的にルシフェラーゼ遺伝子を増幅させるため、一度PCRによって増幅した遺伝子を鋳型にし、内側のプライマー対でさらに特異的に遺伝子増幅させるnested PCRを行った。PCRにはポリメラーゼEx−Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。
一度目のPCRとして、上述の通り作製した12種類の特異的混合プライマーのいずれかとGeneRacer5’ Primerとから成る12通りのプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子を増幅した。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度が1.0μMの12種類プライマーの内1つおよび最終濃度が0.3μMのGeneRacer3’ Primerを含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへホタル完全長cDNAライブラリー溶液を0.2μl加えた。なお、ホタル完全長cDNAライブラリー溶液の濃度は未定量であった。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、45℃30秒および72℃90秒を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%トリス酢酸緩衝液(TAE)アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。12の反応溶液の全てにおいてわずかに遺伝子増幅が認められたため、これらのPCR反応溶液を鋳型としてそれぞれnested PCR反応を次の通り実施した。
nested PCRとして、一度目のPCRで使用した12種類プライマーのうちの4つとGeneRacer3’ Nested Primerとから成る4通りのプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.005U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度が1.0μMの12種類プライマーの内1つおよび最終濃度が0.3μMのGeneRacer3’ Primerを含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として1度目のPCR反応溶液を滅菌水で10倍希釈した溶液を1.0μl加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、45℃30秒および72℃90秒を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。約1.4kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせ条件を確認した。
3−3.5’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列の決定
5’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列を読み取るため、ゲル抽出によるPCR産物の精製、サブクローニングおよびダイレクトシークエンスを実施した。詳細を以下に示す。
約1.4kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせでPCR(最終容量20μl)を実施し、ゲル抽出の手法を用いて目的とする遺伝子片を回収した。ゲル抽出はWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。TAクローニングの手法を用いて、ゲルから抽出したPCR産物のサブクローニングを実施した。TAクローニングはpGEM−T Easy Vector System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。その後、このベクターDNAを大腸菌(TOP10株またはDH5α株)に形質転換し、青・白スクリーニングの手法を用いてインサートポジティブコロニーを選択した。選択されたコロニーをダイレクトコロニーPCRに供し、遺伝子が導入されていることを確認した。ダイレクトコロニーPCRには、M13−F(−29) Primer(5’−CAC GAC GTT GTA AAA CGA C−3’:配列番号21)とM13 Reverse(5’−GGA TAA CAA TTT CAC AGG−3’:配列番号22)とから成るプライマー対を用いた。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー対を含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として少量の大腸菌コロニーを加えた。PCR反応は、最初に94℃1分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を25サイクル繰り返し、最後に72℃2分間の伸長反応を行った。PCR反応後、2μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。
増幅が確認できたPCR反応溶液について、ダイレクトシークエンシング法を用いてその遺伝子の塩基配列の決定を行った。PCR産物精製キットExoSAP−IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて、PCR反応溶液に含まれる余剰なdNTPおよびプライマーを除去し、PCRダイレクトシークエンシングのための鋳型を調製した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を用いて、この鋳型を含むシークエンシング反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いてシークエンシング反応を行った。PCR産物の精製およびシークエンシングはそれぞれマニュアルに従って実施した。シークエンシング反応後、反応産物の精製を次の通りに行った。反応溶液に2.5倍量の100%エタノールを加え、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。次に、上精を取り除いた後、70%エタノールを加えて沈殿を洗浄し、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。最後に、上精を取り除いた後、沈殿を乾燥させた。精製した沈殿にHi−Di Formamide(アプライドバイオシステムズ)を15μl加え、溶解させた。この溶液を94℃2分間の熱変性させ、更に氷上で急冷して、塩基配列を決定するためのサンプルとした。このサンプルをApplied Biosystems 3130xl ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ)を用いて塩基配列を読み取った。塩基配列の解析方法はマニュアルに従って実施した。
シークエンシングによって得られた遺伝子配列(配列番号23)を、配列情報解析ソフトウェア DNASIS Proの「シークエンス連結」機能を用いて解析した。この配列をNational Center for Biotechnology Information (以下NCBIと略す)が提供するblastxサーチを利用して相同性検索を実施し、既知ホタルルシフェラーゼの塩基配列と高い相同性を示すことを確認した。以上の実験および解析で得られた塩基配列を新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側であると決定した。
4.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の3’Race PCRおよび完全長cDNAの取得
4−1.3’Race PCRに用いるプライマーの設計
5’Race PCRの実験で得られたホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端側非翻訳領域の配列を基にして、3’RACEに用いるプライマーおよびNested PCRに用いるプライマーを作成した。プライマーの合成はライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託した。
4−2.ホタルルシフェラーゼ遺伝子の完全長cDNA取得のための3’Race PCR
上述の通り作成したホタル完全長cDNAライブラリーを鋳型として用い、目的とするホタルルシフェラーゼの5’末端側非翻訳領域の塩基配列から作製したプライマー(名称:JP−Ohoba−Full−F1、配列番号24)およびGeneRacer3’ Primer(5’−GCT GTC AAC GAT ACG CTA CGT AAC G−3’:配列番号25)およびGeneRacer3’ Nested Primer(5’−CGC TAC GTA ACG GCA TGA CAG TG−3’:配列番号26)を用いて3’−RACE PCRを行った。GeneRacer3’ PrimerおよびGeneRacer3’ Nested Primerは、完全長cDNA合成試薬GeneRacerキット(インビトロジェン社)に含まれているものを使用した。3’−RACE PCRによって効率的にルシフェラーゼ遺伝子を増幅させるため、一度PCRによって増幅した遺伝子を鋳型にし、内側のプライマー対でさらに特異的に遺伝子増幅させるnested PCRを行った。PCRにはポリメラーゼEx−Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。
一度目のPCRとして、5’末端側非翻訳領域の塩基配列から作製したプライマーとGeneRacer3’ Primerとから成るプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)および最終濃度がそれぞれ0.3μMのプライマーを含む20μlのPCR反応溶液を作製し、そこへホタル完全長cDNAライブラリー溶液を0.4μl加えた。なお、ホタル完全長cDNAライブラリー溶液の濃度は未定量であった。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。わずかに遺伝子増幅が認められたため、このPCR反応溶液を鋳型としてそれぞれnested PCR反応を実施した。
Nested PCRとして、Nested PCR用のプライマー(名称:JP−Ohoba−Full−F2、配列番号27)とGeneRacer3’ Nested Primerとから成るプライマー対を用いてルシフェラーゼ遺伝子の増幅を行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)および最終濃度がそれぞれ0.3μMのプライマーを含む20μlのNested PCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として1度目のPCR反応溶液を滅菌水で10倍希釈した溶液を1.0μl加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を30サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。約2kbp付近に効率よく遺伝子が増幅していることを確認した。
4−3.3’−Raceで増幅した遺伝子の塩基配列の決定
3’−RACEで増幅した遺伝子の塩基配列を読み取るため、ゲル抽出によるPCR産物の精製、サブクローニングおよびダイレクトシークエンスを実施した。詳細を以下に示す。
約2kbp付近に効率よく遺伝子が増幅したプライマーの組み合わせでPCR(最終容量20μl)を実施し、ゲル抽出の手法を用いて目的とする遺伝子片を回収した。ゲル抽出はWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。TAクローニングの手法を用いて、ゲルから抽出したPCR産物のサブクローニングを実施した。TAクローニングはpGEM−T Easy Vector System(プロメガ株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。その後、このベクターDNAを大腸菌(TOP10株またはDH5α株)に形質転換し、青・白スクリーニングの手法を用いてインサートポジティブコロニーを選択した。選択されたコロニーをダイレクトコロニーPCRに供し、遺伝子が導入されていることを確認した。ダイレクトコロニーPCRには、M13−F(−29) PrimerとM13 Reverseとから成るプライマー対を用いた。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)、最終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー対を含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として少量の大腸菌コロニーを加えた。PCR反応は、最初に94℃1分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を25サイクル繰り返し、最後に72℃2分間の伸長反応を行った。PCR反応後、2μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。
増幅が確認できたPCR反応溶液について、ダイレクトシークエンシング法を用いてその遺伝子の塩基配列の決定を行った。PCR産物精製キットExoSAP−IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて、PCR反応溶液に含まれる余剰なdNTPおよびプライマーを除去し、PCRダイレクトシークエンシングのための鋳型を調製した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を用いて、この鋳型を含むシークエンシング反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いてシークエンシング反応を行った。シークエンスに用いたプライマーはベクタープライマーまたは遺伝子特異的なプライマーを用いた。PCR産物の精製およびシークエンシングはそれぞれマニュアルに従って実施した。シークエンシング反応後、反応産物の精製を次の通りに行った。反応溶液に2.5倍量の100%エタノールを加え、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。次に、上精を取り除いた後、70%エタノールを加えて沈殿を洗浄し、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。最後に、上精を取り除いた後、沈殿を乾燥させた。精製した沈殿にHi−Di Formamide(アプライドバイオシステムズ)を15μl加え、溶解させた。この溶液を94℃2分間の熱変性させ、更に氷上で急冷して、塩基配列を決定するためのサンプルとした。このサンプルをApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ)を用いて塩基配列を読み取った。塩基配列の解析方法はマニュアルに従って実施した。
シークエンシングによって完全長ホタルルシフェラーゼ遺伝子を獲得した。この塩基配列(配列番号3)またはアミノ酸(配列番号1)へ翻訳した配列について、NCBIが提供するblastxまたはblastpサーチを利用して相同性検索を実施した。それぞれの検索で既知ホタルルシフェラーゼの塩基配列と高い相同性を示すことを確認した。以上の実験および解析で得られた塩基配列を新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の完全長cDNA配列であると決定した。以下に、この塩基配列およびアミノ酸配列を記載する。
塩基配列:
ATGGAAGAGGATAAAAATATTCTGCGCGGCCCAGCGCCATTCTATCCTTTAGAAGATGGAACTGCAGGCGAACAATTACATAGAGCGATGAAAAGATATGCCTTAATTCCAGGAACCATCGCTTTCACGGACGCTCATGCGGGAGTAAATATCACGTACTCCGAATATTTCGAAATGGCATGCCGATTAGCTGAAAGTTTGAAAAGATACGGACTTGGATTACAGCACAGAATTGTTGTGTGTAGTGAAAATTCTCTACAATTTTTTATGCCCGTCGTGGGTGCCCTATTTATTGGAGTGGGGGTCGCACCAGCAAATGATATTTATAACGAGCGTGAATTACTCAATAGCATGACCATATCGCAGCCCACCTTAGTCTTCTGCTCCAGAAAAGGATTGCAAAAAATTTTGAACGTACAGAAAAAATTACCAGTAATTCAAAAAATTATTATTCTGGATACTAAAGAGGATTATATGGGATTTCAGTCAATGTACTCATTTGTTGACTCGCAATTACCAGTAGGTTTCAACGAATATGATTATGTACCGGACTCCTTCGACCGCGATCAAGCAACGGCACTTATAATGAACTCCTCTGGATCTACTGGGTTGCCGAAAGGGGTGGAGCTTAACCACACGAGTGTTTGTGTCAGATTTTCGCATTGCAGAGATCCTGTTTATGGGAATCAAATTATTCCCGATACTGCAATTTTAAGTGTTATCCCATTCCATCATGGATTTGGGATGTTTACAACGCTAGGATATTTAATATGTGGATTTCGAGTTGTGCTGATGTATAGATTTGAAGAAGAACTATTTTTGCGATCCCTTCAAGATTATAAAATTCAGAGTGCGTTACTAGTACCCACCCTATTTTCGTTCTTTGCGAAAAGCACTCTAATTGACAAGTACGATTTATCCAATTTACATGAAATTGCGTCTGGTGGTGCTCCCCTCGCAAAAGAAGTTGGAGAAGCAGTGGCAAAACGCTTTAACCTTCGAGGTATACGGCAAGGGTACGGCTTGACCGAAACTACATCGGCCGTTATTATTACACCTGAGGGAGATGATAAGCCAGGTGCAGTCGGTAAGGTTGTACCCTTCTTTTCGGCAAAAGTTGTTGATCTCGACACCGGGAAAACTTTGGGAGTTAATCAAAGGGGCGAATTGTGTCTGAAAGGCCCCATGATTATGAAAGGTTATGTAAATAACCCTGAAGCTACAAATGCCTTGATCGATAAAGATGGATGGCTACACTCTGGTGATATATCATACTGGGACGAAGACGGTCACTTCTTCATTGTTGATCGCTTGAAATCTTTGATTAAATATAAAGGGTACCAGGTACCGCCCGCTGAATTGGAATCCATTTTGCTGCAACATCCCTTTATCTTCGATGCAGGGGTGGCTGGAATTCCCGACGATGAAGCCGGTGAATTGCCCGCTGCCGTTGTTGTTTTAGAGGAAGGAAAAACTATGACTGAAAAAGAAATCATGGATTATGTGGCAGGTCAGGTAACTACAGCAAAACGGCTACGTGGAGGTGTCGTATTCGTCGATGAAGTGCCGAAGGGTCTCACTGGGAAAATCGATGCACGAAAAATTAGAGAAATACTTGTGAAAGTAAAGAAAACCAAATCAAAATTGTAA(配列番号3)
アミノ酸配列:
MEEDKNILRGPAPFYPLEDGTAGEQLHRAMKRYALIPGTIAFTDAHAGVNITYSEYFEMACRLAESLKRYGLGLQHRIVVCSENSLQFFMPVVGALFIGVGVAPANDIYNERELLNSMTISQPTLVFCSRKGLQKILNVQKKLPVIQKIIILDTKEDYMGFQSMYSFVDSQLPVGFNEYDYVPDSFDRDQATALIMNSSGSTGLPKGVELNHTSVCVRFSHCRDPVYGNQIIPDTAILSVIPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSFFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLAKEVGEAVAKRFNLRGIRQGYGLTETTSAVIITPEGDDKPGAVGKVVPFFSAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCLKGPMIMKGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDISYWDEDGHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESILLQHPFIFDAGVAGIPDDEAGELPAAVVVLEEGKTMTEKEIMDYVAGQVTTAKRLRGGVVFVDEVPKGLTGKIDARKIREILVKVKKTKSKL*(配列番号1)
以下、この新規のルシフェラーゼをオオオバボタルルシフェラーゼと称する。
[実施例2:新規ルシフェラーゼの酵素学的なパラメータの測定]
1.新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子のタンパク質発現
ホタルルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌でタンパク質発現させるため、pRSET−Bベクター(インビトロジェン)に導入した。遺伝子発現ベクターの構築は標準的な方法に従い以下のように実験を実施した。
1−1.新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の制限酵素認識部位の改変
上述の通り決定した塩基配列によれば、新規ルシフェラーゼ遺伝子はEcoRIの制限酵素認識配列を含む。ルシフェラーゼのアミノ酸配列を維持しつつ、これらの塩基配列におけるこれらの認識配列を除去する遺伝子改変を実施した。この処理は、後述するルシフェラーゼ遺伝子の発現ベクターへの導入を容易にするために行った。遺伝子変異の導入は、多比良和誠編「遺伝子の機能阻害実験法―簡単で確実な遺伝子機能解析から遺伝子治療への応用まで」(羊土社、2001年発行、p.17−25)に示される方法に従った。変異導入後の配列は、配列番号4に示される塩基配列である。
1−2.新規ホタルルシフェラーゼ遺伝子の遺伝子発現ベクターへの導入
ルシフェラーゼ遺伝子を、pRSET−Bベクターの制限酵素サイトBamHI−EcoRI間に導入するため、開始コドンおよびその前に制限酵素BamHI認識配列GGATCCを含むプライマー、並びに終始コドンおよびその後ろに制限酵素EcoRI認識配列GAATTCを含むプライマーを作成した。このプライマー対を用いて、ルシフェラーゼ遺伝子の両端に上述の制限酵素認識部位を含んだ断片の増幅を行った。PCRにはポリメラーゼKOD−Plus−(東洋紡績株式会社)を用いて、マニュアルに従って実施した。
最終濃度が等倍の10×PCR Buffer、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が1.0mMのMgSO、最終濃度が0.02U/μlのTOYOBO KOD−Plus−(1U/μl)、最終濃度がそれぞれ0.3μMのプライマー対を含む20μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型としてBamHIとEcoRI認識配列を持たないルシフェラーゼ遺伝子の溶液を0.4μl加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、55℃30秒および68℃2分を30サイクル繰り返し、最後に68℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。遺伝子増幅が認められたため、このPCR反応溶液を通常のエタノール沈殿法により沈殿濃縮し、制限酵素処理用10×H Bufferを4μl、制限酵素BamHI(東洋紡績株式会社)および制限酵素EcoRI(東洋紡績株式会社)を各2μlならびに滅菌脱イオン水32μlを加えて溶解し、37℃で2時間保温して制限酵素処理した。その後、この反応溶液をエタノール沈殿法により沈殿濃縮した後、滅菌脱イオン水に溶解した。この溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色を行った。紫外線照射下において確認されるDNAバンドを含むゲルを、ナイフを用いて切り出した。この切り出したゲルからWizard(R) SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ)を用いてDNAを抽出した。これらの操作はマニュアルに従って実施した。その後、Ligation Pack(ニッポンジーン)をマニュアルに従って用いて、あらかじめ同様の方法で制限酵素BamHIと制限酵素EcoRIで処理したpRSET−Bベクターに抽出したDNAを導入した。このベクターDNAを大腸菌JM109(DE3)株に形質転換し、コロニーを形成させた。
得られたコロニーを鋳型としてダイレクトコロニーPCRを実施し、pRSET−Bに導入したルシフェラーゼ遺伝子を増幅した。ダイレクトコロニーPCRは、T7 promoter Primer(5’−TAA TAC GAC TCA CTA TAG GG−3’:配列番号28)およびT7 Reverse Primer(5’−CTA GTT ATT GCT CAG CGG TGG−3’:配列番号29)のプライマー対を用いて行った。最終濃度が等倍の10×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)、最終濃度が各0.2mMのdNTP Mixture(各2.5mM)、最終濃度が0.05U/μlのTaKaRa Ex Taq(5U/μl)および最終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマーを含む10μlのPCR反応溶液を作製し、そこへ鋳型として少量の大腸菌コロニーを加えた。PCR反応は、最初に94℃2分間の熱変性を行った後、94℃30秒、50℃30秒および72℃2分を25サイクル繰り返し、最後に72℃5分間の伸長反応を行った。PCR反応後、1μlのPCR反応溶液を、1%TAEアガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射下で増幅遺伝子のバンドを観察した。
増幅が確認できたPCR反応溶液について、ダイレクトシークエンシング法を用いてその遺伝子の塩基配列の決定を行った。PCR産物精製キットExoSAP−ITを用いて、PCR反応溶液に含まれる余剰なdNTPおよびプライマーを除去し、PCRダイレクトシークエンシングのための鋳型を調製した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitを用いて、この鋳型を含むシークエンシング反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いてシークエンシング反応を行った。シークエンスには、ベクタープライマーまたは遺伝子特異的なプライマーを用いた。PCR産物の精製およびシークエンシングはそれぞれマニュアルに従って実施した。シークエンシング反応後、反応産物の精製を次の通りに行った。反応溶液に2.5倍量の100%エタノールを加え、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。次に、上精を取り除いた後、70%エタノールを加えて沈殿を洗浄し、遠心機を用いて核酸を沈殿させた。最後に、上精を取り除いた後、沈殿を乾燥させた。精製した沈殿にHi−Di Formamide(アプライドバイオシステムズ)を15μl加え、溶解させた。この溶液を94℃2分間の熱変性させ、更に氷上で急冷して、塩基配列を決定するためのサンプルとした。このサンプルをApplied Biosystems 3130xl ジェネティックアナライザを用いて塩基配列を読み取り、正常に遺伝子発現ベクターpRSET−Bに導入されていることを確認した。
2.発光タンパク質の精製
JM109(DE3)を含む大腸菌溶液50μlにルシフェラーゼ発現ベクター0.5μlを添加し、氷上で10分、その後42℃で1分、最後に氷上で2分インキュベートした。その後、大腸菌溶液50μlをSOC培地200μlに加えた。その大腸菌/SOC培地混合溶液を37℃で20分間振とうしながらインキュベートした。インキュベート後のサンプル100μlをLB培地プレート(100μg/mlアンピシリンを含む)にストリークし、37℃で一晩インキュベートした。翌日得られたコロニーをピックアップし、500mlスケールのLB培地で培養した。培養は37℃で24時間、18℃で24時間行った。合計48時間の培養の後、遠心分離で菌体を回収し、0.1M Tris−HCl溶液(pH8.0)に再度懸濁して超音波破砕した。菌体破砕液を遠心分離(15000rpm、10分)し、沈査を除去して上清を回収した。ベッドボリューム2mlのカラムにNi−Agar懸濁液500μlと0.1M Tris−HCl2mlを加え、カラムを平衡化した。回収した上清をカラムに添加し、自然落下させた。上清の全量がカラムを通過するまでの間の操作は全て4℃の条件で行った。25mMイミダゾール/0.1M Tris−HCl溶液2mlでカラムを洗浄した。洗浄後のカラムに500mMイミダゾール/0.1M Tris−HCl溶液を2ml加え、ルシフェラーゼを溶出した。溶出されたサンプルをゲルろ過カラムPD−10(GEヘルスケア)でろ過し、脱塩した。脱塩後のサンプルをVivaspin6(ザルトリウス)で限界ろ過し、濃縮されたサンプルにグリセリンを添加して、50%グリセリン溶液とした。保存は−20℃で行った。
3.発光スペクトルの測定
測定のための装置としてLumiFlSpectroCapture(ATTO)を用い、0.1Mクエン酸/0.1M NaHPO buffer(pH5.5−8.0)に1mM D−ルシフェリン、2mM ATPおよび4mM MgClを含む溶液に、精製酵素を1μg/mlの最終濃度で添加し、酵素添加後15秒経過時点で発光スペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。
図1より、取得されたルシフェラーゼは、pH8.0の環境において564nm付近に最大発光波長を示した。また、pH7.5において567nm付近、pH7.0において605nm付近、pH6.5において612nm付近、pH6.0において614nm付近およびpH5.5において616nm付近にそれぞれ最大発光波長を示した。
4.速度論的解析
4−1.D−ルシフェリンおよびATPの濃度の決定
D−ルシフェリン溶液中のD−ルシフェリン濃度およびATP溶液中のATP濃度を以下の通りに決定した。
UV−Visible Spectrometer(Hitachi)を用いて、D−ルシフェリン溶液およびATP溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定し、この測定結果と以下のε値とから濃度を算出した。
D−ルシフェリン:λmax 328nm、ε18200、pH5.0
ATP:λmax 259nm、ε15400、pH7.0。
測定はそれぞれ10回ずつ行い、吸光度の平均値を濃度算出に用いた。このように濃度を決定したD−ルシフェリン溶液およびATP溶液を用いて、以下のKm値算出を行った。
4−2.D−ルシフェリンに対するKm値の測定
様々なD−ルシフェリン濃度の環境下において、得られたルシフェラーゼによる発光の強度を測定した。測定結果に基づいて、D−ルシフェリンに対するKm値を決定した。
D−ルシフェリンを0.1M Tris−HCl(pH8.0)に添加して、異なる濃度の8種類のDールシフェリン溶液を作製した。これらの溶液は、D−ルシフェリンの終濃度がそれぞれ0.625、1.25、2.5、5、10、20、40および80μMとなるようにD−ルシフェリンを含む。これらのD−ルシフェリン溶液を96穴マイクロプレートに50μlずつ分注した。各種精製ルシフェラーゼ、4mM ATPおよび8mM MgSOを含む0.1M Tris−HCl(pH8.0)溶液をルミノメーターの標準ポンプに接続し、当該溶液をウェルに50μl添加すると同時に測定を行った。測定にはLuminescensor(ATTO)を使用した。測定は各ルシフェリン濃度について3回ずつ行った。
得られたフォトンカウント値のピーク強度を初速度Vとして、ルシフェリン濃度Sに対してプロットした。このプロットにミカエリス・メンテン型のカーブフィッティングを行い、Km値を算出した。カーブフィッティングは非線形の最小二乗法で行い、パラメータの探索にはニュートン法を用いた。
4−3.ATPに対するKm値の測定
様々なATP濃度の環境下において、得られたルシフェラーゼによる発光の強度を測定した。測定結果に基づいて、ATPに対するKm値を決定した。
ATPを0.1M Tris−HCl(pH8.0)に添加して、異なる濃度の8種類のATP溶液を作製した。これらの溶液は、ATPの終濃度がそれぞれ10、20、40、80、160、320、480および640μMとなるようにATPを含む。これらのATP溶液をそれぞれ96穴マイクロプレートに50μlずつ分注した。各種精製ルシフェラーゼ、1mM D−ルシフェリン、8mM MgSOを含む0.1M Tris−HCl(pH8.0)溶液をルミノメーターの標準ポンプに接続し、当該溶液をウェルに50μl添加すると同時に測定を行った。測定は各ATP濃度について3回ずつ行った。
得られたフォトンカウント値のピーク強度を初速度Vとして、ATP濃度Sに対してプロットした。このプロットにミカエリス・メンテン型のカーブフィッティングを行い、Km値を算出した。カーブフィッティングは非線形の最小二乗法で行い、パラメータの探索にはニュートン法を用いた。
上記のようにして決定されたD−ルシフェリンに対するKm値およびATPに対するKm値を表3に示す。表3には、同様に測定した既知のルシフェラーゼの各Km値も示される。GL3とはP.pyralis由来のルシフェラーゼである。また、ELuc、CBGおよびCBRとは既知のコメツキムシ由来のルシフェラーゼである。これらの既知のルシフェラーゼは市販のものを使用した。
Figure 0005896679
さらに、これらの結果について、縦軸をATPに対するKm値とし、横軸をD−ルシフェリンに対するKm値としてプロットした図を図2として示す。
[実施例3:P.pyralis由来ルシフェラーゼとの間の発光強度の比較]
野生型オオオバボタルルシフェラーゼ、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(N50D、I530R)およびP.pyralis由来ルシフェラーゼ(配列番号33)をそれぞれHeLa細胞に発現させ、発光強度を測定して比較した。
野生型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子を含む発現ベクターは次の通りに作製した。すなわち、野生型オオオバボタルルシフェラーゼにおいて、哺乳細胞での発現に最適化した遺伝子を含む核酸(配列番号5)にKozak配列を付与し、pF9A CMV hRLuc neo Flexi vector(Promega)のマルチクローニングサイトのSgfIおよびPmeIのサイト間に挿入した。以下にこの塩基配列を記載する。
ATGGAAGAGGACAAGAACATCCTGAGAGGCCCTGCCCCATTCTACCCCCTGGAAGATGGCACAGCCGGCGAGCAGCTGCACCGGGCCATGAAGAGATACGCCCTGATCCCCGGCACAATCGCCTTCACAGACGCCCACGCCGGAGTGAACATCACCTACAGCGAGTACTTCGAGATGGCCTGTAGACTGGCCGAGAGCCTGAAGAGATATGGCCTGGGACTGCAGCATCGGATCGTGGTCTGCAGCGAGAACAGCCTGCAGTTCTTCATGCCCGTGGTCGGAGCCCTGTTCATCGGAGTGGGCGTGGCCCCTGCCAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGACCATCAGCCAGCCCACCCTGGTGTTCTGCAGCCGGAAGGGCCTGCAGAAAATCCTGAACGTGCAGAAAAAGCTGCCCGTGATCCAGAAGATCATCATCCTGGACACCAAAGAGGACTACATGGGCTTCCAGAGCATGTACAGCTTCGTGGACAGCCAGCTGCCTGTGGGCTTCAACGAGTACGACTACGTGCCCGACAGCTTCGACCGGGATCAGGCCACCGCCCTGATCATGAACAGCAGCGGCAGCACCGGCCTGCCCAAGGGCGTGGAACTGAACCACACCAGCGTGTGCGTGCGGTTCAGCCACTGCAGGGACCCCGTGTACGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCCATCCTGAGCGTGATCCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACCTGATCTGCGGCTTCCGGGTGGTGCTGATGTACAGATTCGAGGAAGAACTGTTCCTGCGGAGCCTGCAGGACTACAAGATCCAGAGCGCCCTGCTGGTGCCTACCCTGTTCAGCTTCTTCGCCAAGAGCACACTGATCGATAAGTACGACCTGAGCAACCTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGAGCCCCCCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAGGCCGTCGCCAAGCGGTTCAACCTGCGGGGCATCAGACAGGGCTACGGCCTGACCGAGACAACCAGCGCCGTGATCATCACCCCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCGTGGGCAAGGTGGTGCCATTCTTCAGCGCCAAGGTGGTGGACCTGGACACCGGCAAGACCCTGGGCGTGAACCAGAGGGGCGAGCTGTGCCTGAAGGGCCCCATGATCATGAAGGGCTACGTGAACAACCCCGAGGCCACCAATGCCCTGATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCAGCTACTGGGACGAGGACGGCCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCCATCCTGCTGCAGCACCCCTTCATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGAATCCCCGATGATGAAGCCGGCGAACTGCCTGCCGCCGTGGTGGTGCTGGAAGAGGGAAAGACCATGACCGAGAAAGAAATCATGGACTACGTGGCCGGACAGGTCACAACCGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGGTGTTCGTGGACGAGGTGCCAAAGGGACTGACCGGCAAGATCGACGCCCGGAAGATCCGCGAGATCCTGGTGAAAGTGAAAAAGACCAAGAGCAAGCTGTGA(配列番号5)
変異型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子を含む発現ベクターは次の通りに作製した。まず、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子を作製した。上記の通り作製したコドン最適化後の野生型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子(配列番号5)に対し、変異用のプライマーを用いて2ヶ所の変異を導入した。遺伝子変異の導入は、多比良和誠編「遺伝子の機能阻害実験法―簡単で確実な遺伝子機能解析から遺伝子治療への応用まで」(羊土社、2001年発行、p.17−25)に示される方法に従った。この変異の導入により、その遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列において、50番目のアミノ酸残基がアスパラギンからアスパラギン酸に変更され(N50D)、530番目のアミノ酸残基がイソロイシンからアルギニンに変更される(I530R)。この変異導入後の変異型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子(配列番号32)にKozak配列を付与し、pF9A CMV hRLuc neo Flexi vectorのマルチクローニングサイトのSgfIおよびPmeIのサイト間に挿入した。以下にこの塩基配列を記載する。
ATGGAAGAGGACAAGAACATCCTGAGAGGCCCTGCCCCATTCTACCCCCTGGAAGATGGCACAGCCGGCGAGCAGCTGCACCGGGCCATGAAGAGATACGCCCTGATCCCCGGCACAATCGCCTTCACAGACGCCCACGCCGGAGTGGACATCACCTACAGCGAGTACTTCGAGATGGCCTGTAGACTGGCCGAGAGCCTGAAGAGATATGGCCTGGGACTGCAGCATCGGATCGTGGTCTGCAGCGAGAACAGCCTGCAGTTCTTCATGCCCGTGGTCGGAGCCCTGTTCATCGGAGTGGGCGTGGCCCCTGCCAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGACCATCAGCCAGCCCACCCTGGTGTTCTGCAGCCGGAAGGGCCTGCAGAAAATCCTGAACGTGCAGAAAAAGCTGCCCGTGATCCAGAAGATCATCATCCTGGACACCAAAGAGGACTACATGGGCTTCCAGAGCATGTACAGCTTCGTGGACAGCCAGCTGCCTGTGGGCTTCAACGAGTACGACTACGTGCCCGACAGCTTCGACCGGGATCAGGCCACCGCCCTGATCATGAACAGCAGCGGCAGCACCGGCCTGCCCAAGGGCGTGGAACTGAACCACACCAGCGTGTGCGTGCGGTTCAGCCACTGCAGGGACCCCGTGTACGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCCATCCTGAGCGTGATCCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACCTGATCTGCGGCTTCCGGGTGGTGCTGATGTACAGATTCGAGGAAGAACTGTTCCTGCGGAGCCTGCAGGACTACAAGATCCAGAGCGCCCTGCTGGTGCCTACCCTGTTCAGCTTCTTCGCCAAGAGCACACTGATCGATAAGTACGACCTGAGCAACCTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGAGCCCCCCTGGCCAAAGAAGTGGGAGAGGCCGTCGCCAAGCGGTTCAACCTGCGGGGCATCAGACAGGGCTACGGCCTGACCGAGACAACCAGCGCCGTGATCATCACCCCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCGTGGGCAAGGTGGTGCCATTCTTCAGCGCCAAGGTGGTGGACCTGGACACCGGCAAGACCCTGGGCGTGAACCAGAGGGGCGAGCTGTGCCTGAAGGGCCCCATGATCATGAAGGGCTACGTGAACAACCCCGAGGCCACCAATGCCCTGATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCAGCTACTGGGACGAGGACGGCCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCCATCCTGCTGCAGCACCCCTTCATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGAATCCCCGATGATGAAGCCGGCGAACTGCCTGCCGCCGTGGTGGTGCTGGAAGAGGGAAAGACCATGACCGAGAAAGAAATCATGGACTACGTGGCCGGACAGGTCACAACCGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGGTGTTCGTGGACGAGGTGCCAAAGGGACTGACCGGCAAGAGAGACGCCCGGAAGATCCGCGAGATCCTGGTGAAAGTGAAAAAGACCAAGAGCAAGCTGTGA(配列番号32)
P.pyralis由来ルシフェラーゼ遺伝子を含む発現ベクターは次の通りに作製した。すなわち、既知のP.pyralis由来ルシフェラーゼ遺伝子を哺乳細胞における発現に最適化させ、さらにKozak配列を付与し、pF9A CMV hRLuc neo Flexi vectorのマルチクローニングサイトのSgfIおよびPmeIのサイト間に挿入した。
なお、pF9Aベクターは、内部コントロールとしてウミシイタケ由来ルシフェラーゼ遺伝子を含んでおり、マルチクローニングサイトに挿入された発光遺伝子の発光強度をウミシイタケ由来ルシフェラーゼの発光強度との比として算出することが可能である。
このようにして得られた3種のプラスミドを、24穴のプレートに播種したHeLa細胞にそれぞれリポフェクション法で遺伝子導入し、24時間後PBSで細胞を洗浄した。24穴プレートの各ウェルに2mM D−ルシフェリン/CO2 Independent Medium(Invitrogen)を500μlずつ添加し、25℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensor(ATTO)を用いて90分間発光強度を測定した。90分経過時点の発光強度を野生型オオオバボタルルシフェラーゼ、変異型オオオバボタルルシフェラーゼおよびP.pyralis由来ルシフェラーゼの発光強度とした。各ウェル内の培養液を除去した後、PBSで各ウェルを3回洗浄した。次に各ウェルに10μMセレンテラジン/CO2 Independent Mediumを500μlずつ添加し、25℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensorを用いて30分間発光強度を測定した。セレンテラジン添加後、5分経過時点の発光強度を内部コントロールであるウミシイタケルシフェラーゼの発光強度とした。野生型オオオバボタルルシフェラーゼ、変異型オオオバボタルルシフェラーゼおよびP.pyralis由来ルシフェラーゼの発光強度をウミシイタケルシフェラーゼの発光強度で除算した値を計算し、算出されたその値を各ルシフェラーゼの発光強度としてグラフ化した。その結果を図3に示す。
P.pyralis由来ルシフェラーゼ、野生型オオオバボタルルシフェラーゼおよび変異型オオオバボタルルシフェラーゼは、それぞれ6.6、7.3および26.5の発光強度を示した。すなわち、野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、P.pyralis由来ルシフェラーゼによる発光強度の1.1倍以上の発光強度を示した。変異型オオオバボタルルシフェラーゼは、P.pyralis由来ルシフェラーゼによる発光強度の4倍以上の発光強度を示した。変異型オオオバボタルルシフェラーゼは、野生型オオオバボタルルシフェラーゼによる発光強度の3.6倍以上の発光強度を示した。
[実施例4:安定性の検討]
野生型オオオバボタルルシフェラーゼの分解に対する安定性を、既知であるオバボタルルシフェラーゼとの間で比較した。
オバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列は文献(Oba Y, Furuhashi M, Inouye S. (2010) Identification of a functional luciferase gene in the non-luminous diurnal firefly, Lucidina biplagiata. Molecular Insect Biology 19(6):737-743.)に報告されている(配列番号30:以降、この配列を「文献配列」と称する)。一方、本発明者等は、東京都八王子市で採集したオバボタルの成虫からオバボタルルシフェラーゼをクローニングし、そのアミノ酸配列を特定した(配列番号31:以降、この配列を「クローニング配列」と称する)。これらのアミノ酸配列を比較したところ、249番目のアミノ酸が、文献配列ではリジンであったのに対し、クローニング配列ではメチオニンであった。以下にこの塩基配列を記載する。
MEEDKNILRGPAAFYPLEDGTAGEQLHRAMKRYALIPGTIAFTDAHAGVNITYSEYFEMACRLAESLKRYGLGLQHRIVVCSENSLQFFMPVVGALFIGVGVAPANDIYNERELLNSMTISQPTLVFCSRKGLQKILNVQKKLPVIQKIIILDTKEDYMGFQSMYSFVDSQLPVGFNEYDYVPDSFDRDQATALIMNSSGSTGLPKGVELTHTSVCVRFSHCRDPVFGNQIIPDTAILSVIPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSFFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLAKEVGEAVAKRFNLRGIRQGYGLTETTSAVIITPEGDDKPGAVGKVVPFFSAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCLKGPMIMKGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDISYWDEDGHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESILLQHPFIFDAGVAGIPDDEAGELPAAVVVLEEGKTMTEKEIMDYVAGQVTTAKRLRGGVVFVDEVPKGLTGKLDARKIREILVKAKKTKSKL*(配列番号31)
これらのオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列と、野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列とを比較したところ、以下の表4に示されるような差異があった。オバボタルルシフェラーゼの文献配列(配列番号30)と野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)とを比較すると、6残基のアミノ酸が異なっており、98.9%の相同性であった。
Figure 0005896679
これら3種の遺伝子を発現ベクターに導入し、大腸菌に発現させた。発現の方法は、大腸菌株BL21(DE3)コドンプラス(ストラタジーン社)を用い、それに適した培養を行った以外は実施例2と同様に行った。
それぞれの遺伝子が発現した大腸菌からライセートを作製し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。そのゲルを染色した結果を図4に示す。3種全てのタンパク質において、最大サイズのバンドとして70kDa付近に一本のバンドを確認できた。野生型オオオバボタルルシフェラーゼ(中央のレーン)では、それ以外のバンドを確認できなかった。一方、オバボタルルシフェラーゼ(左および右のレーン)では、70kDaよりも小さなバンドを複数確認できた。特に、文献配列のオバボタルルシフェラーゼ(左レーン)では、70kDaよりも小さい領域において、ゲルがスメア状に染色された。
図4の結果は、野生型オオオバボタルルシフェラーゼの分解はほとんど生じていないのに対し、オバボタルルシフェラーゼの分解がかなり進んでいることを意味する。すなわち、野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、オバボタルルシフェラーゼと比較してタンパク質分解に対する安定性が高いことがわかった。
[実施例5:オバボタルルシフェラーゼとの間の発光強度の比較]
野生型オオオバボタルルシフェラーゼ(配列番号1)の発光強度を、文献配列を有するオバボタルルシフェラーゼ(配列番号30)およびクローニング配列を有するオバボタルルシフェラーゼ(配列番号31)との間で比較した。さらに、文献配列とクローニング配列との間の違いに着目し、野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列の249番目のアミノ酸残基をメチオニンからリジンに変更することで、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(M249K)を作製し、それを発光強度の測定に用いた。
4種類のルシフェラーゼにおいて、哺乳細胞での発現に最適化した遺伝子を含む核酸にKozak配列を付与し、pF9A CMV hRLuc neo Flexi vector(Promega)のマルチクローニングサイトのSgfIおよびPmeIのサイト間に挿入した。pF9Aベクターは内部コントロールとしてウミシイタケ由来ルシフェラーゼ遺伝子をベクター配列に含んでおり、マルチクローニングサイトに挿入された発光遺伝子の発光強度をウミシイタケ由来ルシフェラーゼの発光強度との比として算出することが可能である。
このようにして得られた4種類のルシフェラーゼのプラスミドを、48穴のプレートに播種したHeLa細胞にそれぞれリポフェクション法で遺伝子導入し、24時間後PBSで細胞を洗浄した。48穴プレートの各ウェルに2mM D−ルシフェリン/CO2 Independent Medium(Invitrogen)を500μlずつ添加し、37℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensor(ATTO)を用いて90分間発光強度を測定した。90分経過時点の発光強度を各ルシフェラーゼの発光強度とした。各ウェル内の培養液を除去した後、PBSで各ウェルを3回洗浄した。次に各ウェルに10μMセレンテラジン/CO2 Independent Mediumを500μlずつ添加し、37℃、各ウェルあたり1秒間測定の条件でLuminescensorを用いて30分間発光強度を測定した。セレンテラジン添加後、5分経過時点の発光強度を内部コントロールであるウミシイタケルシフェラーゼの発光強度とした。各ルシフェラーゼの発光強度をウミシイタケルシフェラーゼの発光強度で除算した値を算出し、各ルシフェラーゼの発光強度とした。その結果を以下の表5および図5にまとめる。なお、各ルシフェラーゼにおいて複数の測定を同時に行い、発光強度の値は平均値として算出した。
Figure 0005896679
野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、クローニング配列を有するオバボタルルシフェラーゼの発光強度の5.5倍以上の発光強度を示した。また、野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、文献配列を有するオバボタルルシフェラーゼの発光強度の29倍以上の発光強度を示した。このことから、野生型オオオバボタルルシフェラーゼは、既知のオオバボタルルシフェラーゼと比較して、非常に高い発光強度を示すことがわかった。
また、アミノ酸配列の249番目のアミノ酸残基の違いに着目すると、野生型オオオバボタルルシフェラーゼ(249番目はメチオニン)は、M249K変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(249番目はリジン)の発光強度の34.8倍以上の発光強度を示した。さらに、クローニング配列を有するオバボタルルシフェラーゼ(249番目はメチオニン)は、文献配列を有するオバボタルルシフェラーゼ(249番目はリジン)の発光強度の5.25倍以上の発光強度を示した。このことから、アミノ酸配列において249番目のメチオニン残基がルシフェラーゼの発光活性に重要であることが示唆された。
[実施例6:最大発光波長がシフトした変異型の取得]
野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列の294番目のフェニルアラニン(F)残基をチロシン(Y)残基に置換し(F294Y)、323番目のバリン(V)残基をロイシン(L)残基に置換し(V323L)、および354番目のグルタミン酸(E)残基をバリン(V)残基に置換(E354V)することで、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)を作製した。
また、野生型オオオバボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列の322番目のグルタミン酸(E)残基をトリプトファン(W)残基に置換(E322W)することで、変異型オオオバボタルルシフェラーゼ(E322W)を作製した。
具体的には、野生型オオオバボタルルシフェラーゼ遺伝子に対し、変異用のプライマーを適宜用いて変異を導入することで、2種の変異型ルシフェラーゼの遺伝子を取得した。遺伝子変異の導入は、多比良和誠編「遺伝子の機能阻害実験法―簡単で確実な遺伝子機能解析から遺伝子治療への応用まで」(羊土社、2001年発行、p.17−25)に示される方法に従った。
作製した変異型ルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)のアミノ酸配列は、
MEEDKNILRGPAPFYPLEDGTAGEQLHRAMKRYALIPGTIAFTDAHAGVNITYSEYFEMACRLAESLKRYGLGLQHRIVVCSENSLQFFMPVVGALFIGVGVAPANDIYNERELLNSMTISQPTLVFCSRKGLQKILNVQKKLPVIQKIIILDTKEDYMGFQSMYSFVDSQLPVGFNEYDYVPDSFDRDQATALIMNSSGSTGLPKGVELNHTSVCVRFSHCRDPVYGNQIIPDTAILSVIPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSYFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLAKELGEAVAKRFNLRGIRQGYGLTETTSAVIITPVGDDKPGAVGKVVPFFSAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCLKGPMIMKGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDISYWDEDGHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESILLQHPFIFDAGVAGIPDDEAGELPAAVVVLEEGKTMTEKEIMDYVAGQVTTAKRLRGGVVFVDEVPKGLTGKIDARKIREILVKVKKTKSKL(配列番号34)
であり、
作製した変異型ルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)遺伝子の塩基配列は、
ATGGAAGAGGATAAAAATATTCTGCGCGGCCCAGCGCCATTCTATCCTTTAGAAGATGGAACTGCAGGCGAACAATTACATAGAGCGATGAAAAGATATGCCTTAATTCCAGGAACCATCGCTTTCACGGACGCTCATGCGGGAGTAAATATCACGTACTCCGAATATTTCGAAATGGCATGCCGATTAGCTGAAAGTTTGAAAAGATACGGACTTGGATTACAGCACAGAATTGTTGTGTGTAGTGAAAATTCTCTACAATTTTTTATGCCCGTCGTGGGTGCCCTATTTATTGGAGTGGGGGTCGCACCAGCAAATGATATTTATAACGAGCGTGAATTACTCAATAGCATGACCATATCGCAGCCCACCTTAGTCTTCTGCTCCAGAAAAGGATTGCAAAAAATTTTGAACGTACAGAAAAAATTACCAGTAATTCAAAAAATTATTATTCTGGATACTAAAGAGGATTATATGGGATTTCAGTCAATGTACTCATTTGTTGACTCGCAATTACCAGTAGGTTTCAACGAATATGATTATGTACCGGACTCCTTCGACCGCGATCAAGCAACGGCACTTATAATGAACTCCTCTGGATCTACTGGGTTGCCGAAAGGGGTGGAGCTTAACCACACGAGTGTTTGTGTCAGATTTTCGCATTGCAGAGATCCTGTTTATGGGAATCAAATTATTCCCGATACTGCAATTTTAAGTGTTATCCCATTCCATCATGGATTTGGGATGTTTACAACGCTAGGATATTTAATATGTGGATTTCGAGTTGTGCTGATGTATAGATTTGAAGAAGAACTATTTTTGCGATCCCTTCAAGATTATAAAATTCAGAGTGCGTTACTAGTACCCACCCTATTTTCGTACTTTGCGAAAAGCACTCTAATTGACAAGTACGATTTATCCAATTTACATGAAATTGCGTCTGGTGGTGCTCCCCTCGCAAAAGAACTTGGAGAAGCAGTGGCAAAACGCTTTAACCTTCGAGGTATACGGCAAGGGTACGGCTTGACCGAAACTACATCGGCCGTTATTATTACACCTGTGGGAGATGATAAGCCAGGTGCAGTCGGTAAGGTTGTACCCTTCTTTTCGGCAAAAGTTGTTGATCTCGACACCGGGAAAACTTTGGGAGTTAATCAAAGGGGCGAATTGTGTCTGAAAGGCCCCATGATTATGAAAGGTTATGTAAATAACCCTGAAGCTACAAATGCCTTGATCGATAAAGATGGATGGCTACACTCTGGTGATATATCATACTGGGACGAAGACGGTCACTTCTTCATTGTTGATCGCTTGAAATCTTTGATTAAATATAAAGGGTACCAGGTACCGCCCGCTGAATTGGAATCCATTTTGCTGCAACATCCCTTTATCTTCGATGCAGGGGTGGCTGGGATTCCCGACGATGAAGCCGGTGAATTGCCCGCTGCCGTTGTTGTTTTAGAGGAAGGAAAAACTATGACTGAAAAAGAAATCATGGATTATGTGGCAGGTCAGGTAACTACAGCAAAACGGCTACGTGGAGGTGTCGTATTCGTCGATGAAGTGCCGAAGGGTCTCACTGGGAAAATCGATGCACGAAAAATTAGAGAAATACTTGTGAAAGTAAAGAAAACCAAATCAAAATTGTAA(配列番号:38)
である。
さらに、哺乳細胞での発現に最適化した遺伝子を含む変異型ルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)遺伝子を作製した。その塩基配列は、
ATGGAAGAGGACAAGAACATCCTGAGAGGCCCTGCCCCATTCTACCCCCTGGAAGATGGCACAGCCGGCGAGCAGCTGCACCGGGCCATGAAGAGATACGCCCTGATCCCCGGCACAATCGCCTTCACAGACGCCCACGCCGGAGTGAACATCACCTACAGCGAGTACTTCGAGATGGCCTGTAGACTGGCCGAGAGCCTGAAGAGATATGGCCTGGGACTGCAGCATCGGATCGTGGTCTGCAGCGAGAACAGCCTGCAGTTCTTCATGCCCGTGGTCGGAGCCCTGTTCATCGGAGTGGGCGTGGCCCCTGCCAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGACCATCAGCCAGCCCACCCTGGTGTTCTGCAGCCGGAAGGGCCTGCAGAAAATCCTGAACGTGCAGAAAAAGCTGCCCGTGATCCAGAAGATCATCATCCTGGACACCAAAGAGGACTACATGGGCTTCCAGAGCATGTACAGCTTCGTGGACAGCCAGCTGCCTGTGGGCTTCAACGAGTACGACTACGTGCCCGACAGCTTCGACCGGGATCAGGCCACCGCCCTGATCATGAACAGCAGCGGCAGCACCGGCCTGCCCAAGGGCGTGGAACTGAACCACACCAGCGTGTGCGTGCGGTTCAGCCACTGCAGGGACCCCGTGTACGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCCATCCTGAGCGTGATCCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACCTGATCTGCGGCTTCCGGGTGGTGCTGATGTACAGATTCGAGGAAGAACTGTTCCTGCGGAGCCTGCAGGACTACAAGATCCAGAGCGCCCTGCTGGTGCCTACCCTGTTCAGCTaCTTCGCCAAGAGCACACTGATCGATAAGTACGACCTGAGCAACCTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGAGCCCCCCTGGCCAAAGAAcTGGGAGAGGCCGTCGCCAAGCGGTTCAACCTGCGGGGCATCAGACAGGGCTACGGCCTGACCGAGACAACCAGCGCCGTGATCATCACCCCCGtGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCGTGGGCAAGGTGGTGCCATTCTTCAGCGCCAAGGTGGTGGACCTGGACACCGGCAAGACCCTGGGCGTGAACCAGAGGGGCGAGCTGTGCCTGAAGGGCCCCATGATCATGAAGGGCTACGTGAACAACCCCGAGGCCACCAATGCCCTGATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCAGCTACTGGGACGAGGACGGCCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCCATCCTGCTGCAGCACCCCTTCATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGAATCCCCGATGATGAAGCCGGCGAACTGCCTGCCGCCGTGGTGGTGCTGGAAGAGGGAAAGACCATGACCGAGAAAGAAATCATGGACTACGTGGCCGGACAGGTCACAACCGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGGTGTTCGTGGACGAGGTGCCAAAGGGACTGACCGGCAAGATCGACGCCCGGAAGATCCGCGAGATCCTGGTGAAAGTGAAAAAGACCAAGAGCAAGCTGTGA(配列番号35)
である。
また、作製した変異型ルシフェラーゼ(E322W)のアミノ酸配列は、
MEEDKNILRGPAPFYPLEDGTAGEQLHRAMKRYALIPGTIAFTDAHAGVNITYSEYFEMACRLAESLKRYGLGLQHRIVVCSENSLQFFMPVVGALFIGVGVAPANDIYNERELLNSMTISQPTLVFCSRKGLQKILNVQKKLPVIQKIIILDTKEDYMGFQSMYSFVDSQLPVGFNEYDYVPDSFDRDQATALIMNSSGSTGLPKGVELNHTSVCVRFSHCRDPVYGNQIIPDTAILSVIPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSFFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLAKWVGEAVAKRFNLRGIRQGYGLTETTSAVIITPEGDDKPGAVGKVVPFFSAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCLKGPMIMKGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDISYWDEDGHFFIVDRLKSLIKYKGYQVPPAELESILLQHPFIFDAGVAGIPDDEAGELPAAVVVLEEGKTMTEKEIMDYVAGQVTTAKRLRGGVVFVDEVPKGLTGKIDARKIREILVKVKKTKSKL(配列番号36)
であり、
作製した変異型ルシフェラーゼ(E322W)遺伝子の塩基配列は、
ATGGAAGAGGATAAAAATATTCTGCGCGGCCCAGCGCCATTCTATCCTTTAGAAGATGGAACTGCAGGCGAACAATTACATAGAGCGATGAAAAGATATGCCTTAATTCCAGGAACCATCGCTTTCACGGACGCTCATGCGGGAGTAAATATCACGTACTCCGAATATTTCGAAATGGCATGCCGATTAGCTGAAAGTTTGAAAAGATACGGACTTGGATTACAGCACAGAATTGTTGTGTGTAGTGAAAATTCTCTACAATTTTTTATGCCCGTCGTGGGTGCCCTATTTATTGGAGTGGGGGTCGCACCAGCAAATGATATTTATAACGAGCGTGAATTACTCAATAGCATGACCATATCGCAGCCCACCTTAGTCTTCTGCTCCAGAAAAGGATTGCAAAAAATTTTGAACGTACAGAAAAAATTACCAGTAATTCAAAAAATTATTATTCTGGATACTAAAGAGGATTATATGGGATTTCAGTCAATGTACTCATTTGTTGACTCGCAATTACCAGTAGGTTTCAACGAATATGATTATGTACCGGACTCCTTCGACCGCGATCAAGCAACGGCACTTATAATGAACTCCTCTGGATCTACTGGGTTGCCGAAAGGGGTGGAGCTTAACCACACGAGTGTTTGTGTCAGATTTTCGCATTGCAGAGATCCTGTTTATGGGAATCAAATTATTCCCGATACTGCAATTTTAAGTGTTATCCCATTCCATCATGGATTTGGGATGTTTACAACGCTAGGATATTTAATATGTGGATTTCGAGTTGTGCTGATGTATAGATTTGAAGAAGAACTATTTTTGCGATCCCTTCAAGATTATAAAATTCAGAGTGCGTTACTAGTACCCACCCTATTTTCGTTCTTTGCGAAAAGCACTCTAATTGACAAGTACGATTTATCCAATTTACATGAAATTGCGTCTGGTGGTGCTCCCCTCGCAAAATGGGTTGGAGAAGCAGTGGCAAAACGCTTTAACCTTCGAGGTATACGGCAAGGGTACGGCTTGACCGAAACTACATCGGCCGTTATTATTACACCTGAGGGAGATGATAAGCCAGGTGCAGTCGGTAAGGTTGTACCCTTCTTTTCGGCAAAAGTTGTTGATCTCGACACCGGGAAAACTTTGGGAGTTAATCAAAGGGGCGAATTGTGTCTGAAAGGCCCCATGATTATGAAAGGTTATGTAAATAACCCTGAAGCTACAAATGCCTTGATCGATAAAGATGGATGGCTACACTCTGGTGATATATCATACTGGGACGAAGACGGTCACTTCTTCATTGTTGATCGCTTGAAATCTTTGATTAAATATAAAGGGTACCAGGTACCGCCCGCTGAATTGGAATCCATTTTGCTGCAACATCCCTTTATCTTCGATGCAGGGGTGGCTGGGATTCCCGACGATGAAGCCGGTGAATTGCCCGCTGCCGTTGTTGTTTTAGAGGAAGGAAAAACTATGACTGAAAAAGAAATCATGGATTATGTGGCAGGTCAGGTAACTACAGCAAAACGGCTACGTGGAGGTGTCGTATTCGTCGATGAAGTGCCGAAGGGTCTCACTGGGAAAATCGATGCACGAAAAATTAGAGAAATACTTGTGAAAGTAAAGAAAACCAAATCAAAATTGTAA(配列番号:39)
である。
さらに、哺乳細胞での発現に最適化した遺伝子を含む変異型ルシフェラーゼ(E322W)遺伝子を作製した。その塩基配列は、
ATGGAAGAGGACAAGAACATCCTGAGAGGCCCTGCCCCATTCTACCCCCTGGAAGATGGCACAGCCGGCGAGCAGCTGCACCGGGCCATGAAGAGATACGCCCTGATCCCCGGCACAATCGCCTTCACAGACGCCCACGCCGGAGTGAACATCACCTACAGCGAGTACTTCGAGATGGCCTGTAGACTGGCCGAGAGCCTGAAGAGATATGGCCTGGGACTGCAGCATCGGATCGTGGTCTGCAGCGAGAACAGCCTGCAGTTCTTCATGCCCGTGGTCGGAGCCCTGTTCATCGGAGTGGGCGTGGCCCCTGCCAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGACCATCAGCCAGCCCACCCTGGTGTTCTGCAGCCGGAAGGGCCTGCAGAAAATCCTGAACGTGCAGAAAAAGCTGCCCGTGATCCAGAAGATCATCATCCTGGACACCAAAGAGGACTACATGGGCTTCCAGAGCATGTACAGCTTCGTGGACAGCCAGCTGCCTGTGGGCTTCAACGAGTACGACTACGTGCCCGACAGCTTCGACCGGGATCAGGCCACCGCCCTGATCATGAACAGCAGCGGCAGCACCGGCCTGCCCAAGGGCGTGGAACTGAACCACACCAGCGTGTGCGTGCGGTTCAGCCACTGCAGGGACCCCGTGTACGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCCATCCTGAGCGTGATCCCTTTCCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACCCTGGGCTACCTGATCTGCGGCTTCCGGGTGGTGCTGATGTACAGATTCGAGGAAGAACTGTTCCTGCGGAGCCTGCAGGACTACAAGATCCAGAGCGCCCTGCTGGTGCCTACCCTGTTCAGCTTCTTCGCCAAGAGCACACTGATCGATAAGTACGACCTGAGCAACCTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGAGCCCCCCTGGCCAAAtggGTGGGAGAGGCCGTCGCCAAGCGGTTCAACCTGCGGGGCATCAGACAGGGCTACGGCCTGACCGAGACAACCAGCGCCGTGATCATCACCCCCGAGGGCGACGATAAGCCTGGCGCCGTGGGCAAGGTGGTGCCATTCTTCAGCGCCAAGGTGGTGGACCTGGACACCGGCAAGACCCTGGGCGTGAACCAGAGGGGCGAGCTGTGCCTGAAGGGCCCCATGATCATGAAGGGCTACGTGAACAACCCCGAGGCCACCAATGCCCTGATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCAGCTACTGGGACGAGGACGGCCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGTCCCTGATCAAGTACAAGGGCTACCAGGTGCCCCCTGCCGAGCTGGAATCCATCCTGCTGCAGCACCCCTTCATCTTCGATGCCGGCGTGGCCGGAATCCCCGATGATGAAGCCGGCGAACTGCCTGCCGCCGTGGTGGTGCTGGAAGAGGGAAAGACCATGACCGAGAAAGAAATCATGGACTACGTGGCCGGACAGGTCACAACCGCCAAGAGACTGAGAGGCGGCGTGGTGTTCGTGGACGAGGTGCCAAAGGGACTGACCGGCAAGATCGACGCCCGGAAGATCCGCGAGATCCTGGTGAAAGTGAAAAAGACCAAGAGCAAGCTGTGA(配列番号37)
である。
その後、実施例2に記載の方法と同様に、作製した遺伝子(配列番号38および39)をそれぞれpRSET−Bベクターに導入し、大腸菌JM109(DE3)株に形質転換し、変異型ルシフェラーゼを発現させ、大腸菌から変異型ルシフェラーゼを精製した。さらに、実施例2に記載の方法と同様に、種々のpH環境下で、変異型ルシフェラーゼが触媒する発光反応によって生じる発光のスペクトルを測定した。
図6に、種々のpH環境下において、変異型ルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)を酵素として使用した発光反応によって得られる発光スペクトルを示す。各スペクトルの最大発光波長は、pHの記載に続く括弧の中に記載される。図6から、この変異型ルシフェラーゼでは、pH7.4の環境下において、最も強度の高い最大発光波長が得られ、その波長は615nm付近であることがわかる。また、pHの違いによる最大発光波長の変化は、図1に示される野生型の場合と比較して小さいことがわかる。さらに、図1に示される野生型の場合と比較すると、特にpH7.0以上のスペクトルにおいて、最大発光波長の長波長側へのシフトが顕著であることがわかる。
図7に、種々のpH環境下において、変異型ルシフェラーゼ(E322W)を酵素として使用した発光反応において得られる発光スペクトルを示す。各スペクトルの最大発光波長は、pHの記載に続く括弧の中に記載される。図7から、この変異型ルシフェラーゼでは、pH8.0の環境下において、最も強度の高い最大発光波長が得られ、その波長は557nm付近であることがわかる。また、pH6.8、pH6.6およびpH6.4の環境下にて得られた発光スペクトルは、2つのピークが重なったような形を有していることがわかる。そして、pHが下がるほど、最大発光波長は長波長側にシフトしていることがわかる。さらに、図1に示される野生型の場合と比較すると、特にpH6.8およびpH7.0のスペクトルにおいて、最大発光波長の短波長側へのシフトが顕著であることがわかる。
[実施例7:発光強度の温度依存性の検討]
実施例6にて取得された2つの変異型ルシフェラーゼについて、発光強度の温度依存性を検討した。
野生型オオオバボタルルシフェラーゼの遺伝子および実施例6にて取得した2種の変異型の遺伝子をそれぞれpRSET−Bベクターに導入し、大腸菌JM109(DE3)株に形質転換し、コロニーを形成させた。得られたコロニーを培養し、LB寒天培地に塗布し、24時間かけて再度コロニーを形成させた。そして、55℃で1時間熱処理し、1時間室温で放置した後に、0.5mMのD−ルシフェリンを含む液体を噴霧した後、CCDカメラ(DP70、オリンパス製)で1分間撮影した。
図8には、野生型ルシフェラーゼと変異型ルシフェラーゼ(F294Y、V323LおよびE354V)との比較を示す。但し、この図に含まれる画像は、カラーにて取得された画像をモノクロに変換したものである。図中、「赤色変異型」と記された画像が、この変異型ルシフェラーゼの画像である。図8から、55℃において、この変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌において生じる発光反応は、野生型ルシフェラーゼの場合よりも高い発光を示すことがわかる。すなわち、この変異型ルシフェラーゼは、55℃においても触媒活性を保持している。なお、カラーにて取得された画像によると、野生型ルシフェラーゼを発現する大腸菌は橙色がかった黄色に発光しているのに対し、変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌は赤色に発光していることがわかる。
図9には、野生型ルシフェラーゼと変異型ルシフェラーゼ(E322W)との比較を示す。但し、この図に含まれる画像は、カラーにて取得された画像をモノクロに変換したものである。図中、「緑色変異型」と記された画像が、この変異型ルシフェラーゼの画像である。図8から、55℃において、この変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌において生じる発光反応は、野生型ルシフェラーゼの場合よりも高い発光を示すことがわかる。すなわち、この変異型ルシフェラーゼは、55℃においても触媒活性を保持している。なお、カラーにて取得された画像によると、野生型ルシフェラーゼを発現する大腸菌は橙色がかった黄色に発光しているのに対し、変異型ルシフェラーゼを発現する大腸菌は黄緑色に発光していることがわかる。

Claims (13)

  1. i)配列番号1に記載のアミノ酸配列、および、ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
    配列番号31に記載されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼが触媒する発光反応における発光強度と比較して、5.5倍以上の発光強度を示す発光反応を触媒する、オオオバボタル(Lucidina accensa)に由来するルシフェラーゼ。
  2. i)配列番号2に記載のアミノ酸配列、および、ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列と99%以上の同一性を有し、且つ50番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がアスパラギン酸であり、530番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がアルギニンであるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、オオオバボタルに由来するルシフェラーゼ。
  3. i)配列番号34に記載のアミノ酸配列、および、ii)配列番号34に記載のアミノ酸配列と99%以上の同一性を有し、且つ294番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がチロシンであり、323番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がロイシンであり、354番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がバリンであるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、オオオバボタルに由来するルシフェラーゼ。
  4. i)配列番号36に記載のアミノ酸配列、および、ii)配列番号36に記載のアミノ酸配列と99%以上の同一性を有し、且つ322番目のアミノ酸またはそれに対応するアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、オオオバボタルに由来するルシフェラーゼ。
  5. 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼが触媒する発光反応における発光強度と比較して、4倍以上の発光強度を示す発光反応を触媒する請求項に記載のルシフェラーゼ。
  6. 配列番号30または31に記載されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼと比較して、タンパク質分解に対する安定性が高い請求項に記載のルシフェラーゼ。
  7. 請求項1からの何れか1項に記載のルシフェラーゼであって、
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の13番目のアラニンに対応するアミノ酸残基がプロリンであること、
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の211番目のトレオニンに対応するアミノ酸残基がアスパラギンであること、
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の227番目のフェニルアラニンに対応するアミノ酸残基がチロシンであること、
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の249番目のリジンに対応するアミノ酸残基がメチオニンであること、
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の530番目のロイシンに対応するアミノ酸残基がイソロイシンまたはアルギニンであること、および
    配列番号30に記載されるアミノ酸配列の542番目のアラニンに対応するアミノ酸残基がバリンであること
    の少なくとも1つを満足するアミノ酸配列を有するルシフェラーゼ。
  8. pH7.0から8.0の任意のpH環境下において、611から615nmの最大発光波長を有する発光を示す発光反応を触媒する請求項に記載のルシフェラーゼ。
  9. pH6.8から7.0の任意のpH環境下において、568から572nmの最大発光波長を有する発光を示す発光反応を触媒する請求項に記載のルシフェラーゼ。
  10. 配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するルシフェラーゼと比較して、55℃以上の環境下において、より高い発光強度を示す発光反応を触媒する請求項8または9に記載のルシフェラーゼ。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載のルシフェラーゼをコードする塩基配列を含む核酸。
  12. 前記ルシフェラーゼの遺伝子のコドンが哺乳類における発現に最適化された請求項11に記載の核酸。
  13. 配列番号3、4、5、32、35、37、38または39に記載される塩基配列を含む請求項11または12に記載の核酸。
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