第1の態様に係る誘導加熱調理器は、
鍋を誘導加熱する加熱コイルと、当該加熱コイルに並列に接続された共振コンデンサとを備えた共振回路と、
前記共振コンデンサに直列に接続されたスイッチング素子と、
交流電源から整流回路を介して前記共振回路に入力される入力電流を検出する入力電流検出回路と、
前記共振回路への複数の入力電力設定値の中から1つの入力電力設定値を選択するための入力電力設定手段と、
前記スイッチング素子を、所定のデューティ周期で通電状態と停止状態を繰り返すように制御する制御回路とを備えた誘導加熱調理器において、
前記制御回路は、前記検出される入力電流を前記各デューティ周期期間において積算し、当該各デューティ周期期間の積算後の入力電流の平均値が、前記選択された入力電力設定値に対応するように予め設定された値になるように、前記スイッチング素子の通電時間を制御することを特徴とする。
従って、通電開始から、入力電力が設定電力に到達するまでの所要時間に、負荷によって長短が発生して、この間の平均電力に差が生じた場合にも、負荷に応じて通電時間を可変させて対応することができるため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
第2の態様に係る誘導加熱調理器は、第2の態様に係る加熱調理器において、
前記鍋の材質を判定する鍋材質判定手段をさらに備え、
前記制御回路は、前記判定された鍋の材質に応じて前記スイッチング素子の通電時間を制御することを特徴とする。
従って、動作開始から、入力電流が通電開始から、通電状態と停止状態を切り替えるための所定の積算入力電力に到達するまでの所要時間に、負荷によって長短が発生して、所要時間中に発生する平均電力に差が生じた場合や、連続動作時の電力制御方法如何によっては通電状態の入力電力そのものが異なる場合にも、負荷に応じて通電時間を可変させて対応することができる。このため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
第3の態様に係る誘導加熱調理器は、
鍋を誘導加熱する加熱コイルと、当該加熱コイルに並列に接続された共振コンデンサとを備えた共振回路と、
前記共振コンデンサに直列に接続されたスイッチング素子と、
前記共振回路への複数の入力電力設定値の中から1つの入力電力設定値を選択するための入力電力設定手段と、
前記鍋の材質を判定する鍋材質判定手段と、
前記スイッチング素子を、所定のデューティ周期で通電状態と停止状態を繰り返すように制御する制御回路とを備えた誘導加熱調理器において、
前記制御回路は、前記判定された鍋の材質に基づいて、前記各デューティ周期期間における入力電力の平均値が前記選択された入力電力設定値に対応する値になるように予め決定された前記スイッチング素子の通電時間を設定することを特徴とする。
従って、鍋の材質によってはデューティ制御動作を行うときの入力電力そのものが変化してしまい、設定電力と実際の平均入力電力との間に差が発生してしまう場合にも、設定電力に相当する平均入力電力を得ることができる時間比(デューティ周期時間に対する通電時間の比)を負荷の材質に応じて設定することができるため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。
図1において、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、加熱コイル1と、共振コンデンサ2と、スイッチング素子4と、フライホイールダイオード5と、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8と、マイクロコンピュータである制御回路9と、スイッチング素子駆動回路10と、電源回路11と、ゼロボルトパルス検出回路12と、入力電流検出回路13と、入力電力設定手段16とを備えて構成される。また、制御回路9は、パルス回数加算回路14と、入力電流加算回路15とを含む。
加熱コイル1と、当該加熱コイル1に並列に接続された共振コンデンサ2とは、共振回路を構成している。負荷としての鍋3は加熱コイル1の近傍に配置される。スイッチング素子4は共振回路に直列に接続され、スイッチング素子4に並列に接続されたフライホイールダイオード5とともに共振回路に高周波電流を供給する。交流電源からの交流電力を整流する整流素子6で整流された電力は、チョークコイル7及び平滑コンデンサ8により構成される平滑回路で平滑され、共振回路とスイッチング素子4に供給される。ここで、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8とは、整流回路を構成する。また、制御回路9は、誘導加熱調理器全体を制御し、スイッチング素子駆動回路10は、制御回路9からの命令に従ってスイッチング素子4を高速で駆動する。さらに、電源回路11は、誘導加熱調理器全体に直流安定化電源を供給する。ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生してパルス回数加算回路14に出力する。入力電流検出回路13は、カレントトランスを用いて、交流電源から整流回路を介して共振回路に入力される入力電流を検出し、当該検出された入力電流に対応する電圧レベルを有する検出信号を入力電流加算回路15に出力する。また、パルス回数加算回路14は、ゼロボルトパルス検出回路12からのゼロボルトパルスをカウントし、カウント結果を示すデータを格納データとして格納する。さらに、入力電流加算回路15は、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルに対応する値を積算することにより、入力電流検出回路13によって検出された入力電流を加算(積算)し、積算結果を示すデータを格納データとして格納する。なお、入力電流検出回路13によって検出される電流は入力電力に対応しており、入力電流加算回路15の格納データは積算電力に対応している。使用者は、入力電力設定手段16を操作して、共振回路への複数の入力電力設定値の中から1つの入力電力設定値を選択して設定する。
以上説明したように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作および作用を説明する。なお、本実施の形態に係る誘導加熱調理器と、図15を参照して説明した特許文献1記載の従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点は、入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法、すなわち鍋3への加熱動作と停止を所定のデューティ周期により繰り返す(すなわち、スイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動する通電状態と、スイッチング素子4をオフする停止状態とを、所定のデューティ周期により繰り返す。)デューティ制御(間欠動作)による制御方法のみである。それ以外の場合、例えば入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合、およびデューティ制御中の加熱動作時の制御方法は、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様である。具体的には、電圧共振形インバータを用いて、加熱コイル1に発生する高周波磁界により加熱コイル1上に載置された鍋3に発生する渦電流損によって鍋3を誘導加熱する。また、用いられる電力制御方法は、スイッチング素子4をオンする時間(オン時間)の値によって加熱コイル1に流れる電流を変化させて、鍋3に与えられる高周波電流を制御して電力を可変させる周波数制御である。さらに、制御方法を周波数制御とデューティ制御との間で切り替えるときの入力電力設定値の決定方法は、従来技術に係る決定方法と同様である。具体的には、低電力状態でのスイッチング素子4のオン損失の著しい増加の発生を防止することを目的として、冷却構成によりスイッチング素子4の破壊を回避することができる最小入力電力に基づいて、周波数制御を行う入力電力設定値の範囲を決定する。以下、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様の構成、動作及び設定方法についての詳細な説明は省略し、本実施の形態に係る誘導加熱調理器と従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点のみを説明する。
入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、入力電力設定値が1に設定されたときの本発明の実施の形態1に係るデューティ制御処理のフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1に係る入力電力設定値と、設定電力と、電力制御方法との関係を示すテーブルである。図4は、本発明の実施の形態1における鍋3への入力電力と入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYとの関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器によれば、使用者は、入力電力設定手段16により、入力電力設定値「1」から「5」までの5段階の入力電力設定値のうち所望の入力電力設定値を選択して設定する。ここで、図3に示すように、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wである。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行う。
図2において、入力電力設定手段16により入力電力設定値が「1」に設定されると、制御回路9は、入力電力設定値「1」を含む信号を入力電力設定手段16から受信する(S1)。これに応答して、制御回路9は、まず始めに、制御回路9内のパルス回数加算回路14および入力電流加算回路15の各格納データを0にリセットする(S2およびS3において、初期値0をセットする)。
次に、制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値に720をセットし(S4)、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に15120をセットする(S5)。なお、周期時間到達可否判定値および通電時間到達可否判定値の設定方法は、後述する。
次に、制御回路9は、スイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。
ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミング、すなわち正負電圧の反転タイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生する。例えば、交流電源が単相3線式の200V/60Hzの商用周波電源である場合は、ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧の1周期(1/(60×2)=約16ミリ秒)でゼロボルトタイミングを2回検出する。
ゼロボルトパルス検出回路12は、ゼロボルトタイミングを検出すると制御回路9にゼロボルトパルスを送信する。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S7でYES)、制御回路9内のパルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S8)。例えば、直前の格納データが0であるときは、加算後はパルス回数加算回路14に1がセットされる。
入力電流検出回路13は、交流電源からの入力電流(電源電流)を、カレントトランスを用いて検出し、検出した入力電流を当該入力電流に対応する電圧レベルを有する検出信号に変換して制御回路9に出力する。制御回路9(マイクロコンピュータ)は、入力電流検出回路13からの検出信号を電圧レベル(アナログ値)に応じて0から255ディジットまでのデジタル値に変換する。前述のとおり、本実施の形態における誘導加熱調理器の最大入力電力設定値は「5」、すなわち最大設定電力は「1200W」であるため、制御回路9は、加熱停止状態(入力電力0W=入力電流0A)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを0ディジットに変換し、最大設定値「5」(入力電力1200W)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを255ディジットに変換する。さらに、0Wから1200Wまでの入力電力においては、入力電力をXとし、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルをYとした場合に、Y=0.2125Xなる線形性を有するように、鍋3への入力電力と電圧レベルYとの関係を設定する(図4参照。)。
制御回路9は、ゼロボルトパルスの検出後、入力電流検出回路13から検出信号を受信し、当該検出信号の電圧レベルに対応する値(ディジット)を、入力電流加算回路15の直前の格納データに対して加算する(S9)。ここで、加熱動作開始時は、共振回路の共振周波数から大きく離れた動作周波数(共振周波数<動作周波数とする)で動作させて低電力状態とするため(ソフトスタート制御)、例えば、加熱動作開始時の入力電力を200Wに設定した場合には、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルは前述の線形式によりY=0.2125×200≒43ディジットとなり、直前の格納データは0であったため入力電流加算回路15に43がセットされる。
制御回路9は、入力電流加算回路15の格納データに入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルに対応する値を加算した後、入力電流加算回路15の格納データが通電時間到達可否判定値(15120)に到達したか否かを判定する(S10)。
以下、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値及び入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値の設定方法について説明する。前述のとおり、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「1」および「2」では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定してデューティ制御動作を行う。簡単にいうと、例えば入力電力設定値「1」の場合には、入力電力を600Wに設定して1秒間だけ通電させて5秒間だけ通電を停止させることにより平均電力100Wを得るという制御を行う。言い換えれば、6秒ごとの平均電力は、入力電力100Wで連続動作させた場合の平均電力と全く同じである(デューティ制御での平均電力は、600×1/6=100Wであり、連続動作時の平均電力は100×6/6=100Wである。)。
パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は、通電と通電停止の繰り返しのデューティ周期時間(6秒)に対応する値に設定される。具体的には、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数に等しく、2回×60Hz×6秒=720回に設定される。また、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値はスイッチング素子4の(通電)時間に対応しており、入力電力設定値に対応する設定電力で、上述した繰り返しデューティ周期時間だけ連続して通電したときの入力電流加算回路15の格納データの値に設定される。具体的には、前述のとおり制御回路9はゼロボルトパルスの検出後に入力電流加算回路15の格納データへの加算処理を行うため、6秒間での入力電流加算回路15の格納データへの加算処理の総回数は6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数に等しく、2回×60Hz×6秒=720回となる。また、入力電力が100Wの場合、入力電流検出回路13からの検出信号の受信電圧レベルYはY=0.2125×100≒21ディジットであり、入力電力を100Wに設定して6秒間だけ連続動作させた場合の入力電流加算回路15の格納データの加算結果は21×720=15120ディジットとなる。従って、入力電力を600Wに設定してデューティ制御を行う場合にも、通電開始から6秒経過したときの入力電流加算回路15の格納データの加算結果が15120ディジットであれば、平均電力は100Wとなる。従って、入力電力設定値が「1」の場合には、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に15120をセットする。入力電力設定値「2」の場合についても、入力電力設定値「1」の場合と同様に、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に45360をセットする(図3参照。)。
図2において、制御回路9は、入力電流加算回路15の格納データが通電時間到達可否判定値(15120)に到達したか否かを判定し(S10)、もし通電時間到達可否判定値に到達していなければ(S10でNO)図2のフローチャートに従って通電状態を継続する一方、通電時間到達可否判定値に到達していれば(S10でYES)通電状態から停止状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に停止信号を送信してスイッチング素子4を停止させ、鍋3への加熱動作を停止する(S11)。
加熱動作を停止後、ゼロボルトパルス検出回路12がゼロボルトタイミングを検出するとゼロボルトパルス検出回路12から制御回路9にゼロボルトパルスが送信される。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S12でYES)、パルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S13)。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データへの加算後、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値(720)に到達したか否かを判定する(S14)。パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は、デューティ制御の周期時間である6秒に相当する値に設定される。前述したとおり、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数は2回×60Hz×6秒=720回であり、ゼロボルトタイミングが検出される毎にパルス回数加算回路14の格納データは1ずつ加算されていくため、6秒間の加算結果は720となる。従って、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は720に設定される。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達したか否かを判定し、もし周期時間到達判定値に到達していなければ(S14でNO)図2のフローチャートに従って停止状態を継続する。一方、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達していれば(S14でYES)、パルス回数加算回路14および入力電流加算回路15の各格納データを0にリセットした後(S2およびS3において初期値0をセットする)、停止状態から通電状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。以下、これまで説明した一連の動作(S2〜S14)を、入力電力設定手段16を用いて加熱動作の終了が選択されるまで繰り返す。
従って、図2の処理によれば、制御回路9は、スイッチング素子4を、所定のデューティ周期で通電状態と停止状態を繰り返すように制御するとき、入力電流検出回路13により検出される入力電流を各デューティ周期期間において積算し、当該各デューティ周期期間の積算後の入力電流の平均値が、入力電力設定手段16を用いて選択された入力電力設定値に対応するように予め設定された値になるように、スイッチング素子4の通電時間(通電時間到達可否判定値に対応する。)を制御する。
図5は、本発明の実施の形態1におけるデューティ制御中の入力電力の時間変化を示すグラフであり、図2のフローチャートに従う加熱動作制御を行ったときの入力電力の時間変化を示す。図5に示すように、本実施の形態によれば、パルス回数加算回路14及び入力電流加算回路15の各格納データがゼロにリセットされるタイミングから入力電力が600Wになるまでの期間の長さによらず、入力電力設定値が「1」であるときのデューティ制御周期(6秒)内での積算入力電力(図5の領域Aの面積)は、入力電力設定値「1」に対応する設定電力(100W)でデューティ制御周期時間だけ連続して通電したときの積算入力電力(図5の領域Bの面積)と等しい。すなわち、入力電力設定値が「1」であるときの平均入力電力は、100Wの設定電力で連続して通電するときの平均入力電力と等しい。
以上説明したように、本実施の形態においては、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流素子6と、高周波磁界を発生して鍋3を加熱する加熱コイル1と、加熱コイル1と共に共振回路を構成する共振コンデンサ2と、共振回路に接続されて共振電流を生成するスイッチング素子4と、共振回路への入力電流を検出する入力電流検出回路13と、入力電流検出回路13による検出結果を加算する入力電流加算回路15と、所定の電力を出力するためにスイッチング素子4のオン時間を任意に変更する制御回路9と、入力電力設定手段16とを備えて構成される。ここで、制御回路9は、入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合には鍋3を連続的に加熱する一方、入力電力設定値が所定値未満の場合には加熱動作と停止を所定のデューティ周期により繰り返す間欠動作を行い、且つ間欠動作では入力電流加算回路15による加算結果の格納データが入力電力設定値毎にあらかじめ定められた通電時間到達可否判定値に到達した時点で加熱動作から停止へと状態を変化させる。
本実施の形態において、入力電力設定値が所定値(本実施の形態では3である。)未満の場合のデューティ制御は、パルス回数加算回路14の格納データに基づいて、デューティ周期時間6秒で行われる。また、デューティ制御時の通電状態から停止状態への切り替えは、入力電流加算回路15の格納データが、入力電力設定値に対応する設定電力で6秒間通電したときの積算電流に対応する所定の通電時間到達可否判定値に到達した時点で行われる。このため、通電開始から、入力電力が設定電力に到達するまでの所要時間に、負荷によって長短が発生して、この間の平均電力に差が生じた場合にも、負荷に応じて通電時間を可変させて対応することができるため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
なお、本実施の形態では、入力電力設定値は「1」から「5」までの5段階であり、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wであった。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行ったが、本発明はこれに限られない。上述した入力電力設定値の段階数およびそれに対応する設定電力に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行い、通電状態から停止状態への切り替えを判定する入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値を15120に設定し、周期時間6秒を検出するためのパルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値を720に設定したが、本発明はこれに限られない。上述した通電時間到達可否判定値および周期時間到達可否判定値に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、設定値「3」から「5」の入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行ったが、動作周波数を固定した状態で導通比率を変更することにより入力電力を制御する導通比制御を行っても、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。
図6において、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、加熱コイル1と、共振コンデンサ2と、スイッチング素子4と、フライホールダイオード5と、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8と、マイクロコンピュータである制御回路9と、スイッチング素子駆動回路10と、電源回路11と、ゼロボルトパルス検出回路12と、入力電流検出回路13と、入力電力設定手段16と、共振電圧検出回路17とを備えて構成される。また、制御回路9は、パルス回数加算回路14と、入力電流加算回路15と、鍋材質判定回路18とを含む。
加熱コイル1と、当該加熱コイル1に並列に接続された共振コンデンサ2とは、共振回路を構成している。負荷としての鍋3は加熱コイル1の近傍に配置される。スイッチング素子4は共振回路に直接に接続され、スイッチング素子4に並列に接続されたフライホイールダイオード5とともに共振回路に高周波電流を供給する。交流電源からの交流電力を整流する整流素子6で整流された電力は、チョークコイル7及び平滑コンデンサ8により構成される平滑回路で平滑され、共振回路とスイッチング素子4に供給される。ここで、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8とは、整流回路を構成する。また、制御回路9は、誘導加熱調理器全体を制御し、スイッチング素子駆動回路10は、制御回路9からの命令に従ってスイッチング素子4を高速で駆動する。さらに、電源回路11は、誘導加熱調理器全体に直流安定化電源を供給する。ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生してパルス回数加算回路14に出力する。入力電流検出回路13は、カレントトランスを用いて、交流電源から整流回路を介して共振回路に入力される入力電流を検出し、当該検出された入力電流に対応する電圧レベルを有する検出信号を入力電流加算回路15および鍋材質判定回路18に出力する。また、パルス回数加算回路14は、ゼロボルトパルス検出回路12からのゼロボルトパルスをカウントして、カウント結果を示すデータを格納データとして格納する。さらに、入力電流加算回路15は、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルに対応する値を積算することにより、入力電流検出回路13によって検出された入力電流を加算(積算)し、積算結果を示すデータを格納データとして格納する。なお、入力電流検出回路13によって検出される電流は入力電力に対応しており、入力電流積算回路15の格納データは積算電力に対応している。またさらに、共振電圧検出回路17は、共振コンデンサに発生する共振電圧を検出し、鍋材質判定回路18は、入力電流検出回路13と共振電圧検出回路17による各検出結果に基づいて鍋3の材質を判定する。なお、入力電流検出回路13と、共振電圧検出回路17と、鍋材質判定回路18とは、鍋3の材質を判定する鍋材質判定手段を構成する。使用者は、入力電力設定手段16を操作して、共振回路への複数の入力電力設定値の中から1つの入力電力設定値を選択して設定する。
以上説明したように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作および作用を説明する。なお、本実施の形態に係る誘導加熱調理器と、図15を参照して説明した特許文献1記載の従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点は、入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法、すなわち鍋3への加熱動作と停止を所定のデューティ周期により繰り返す(すなわち、スイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動する通電状態と、スイッチング素子4をオフする停止状態とを、所定のデューティ周期により繰り返す。)デューティ制御(間欠動作)による制御方法のみである。それ以外の場合、例えば入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合、およびデューティ制御中の加熱動作時の制御方法は、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様である。具体的には、電圧共振形インバータを用いて、加熱コイル1に発生する高周波磁界により加熱コイル1上に載置された鍋3に発生する渦電流損によって鍋3を誘導加熱する。また、用いられる電力制御方法は、スイッチング素子4をオンする時間(オン時間)の値によって加熱コイル1に流れる電流を変化させて、鍋3に与えられる高周波電流を制御して電力を可変させる周波数制御である。さらに、制御方法を周波数制御とデューティ制御との間で切り替えるときの入力電力設定値の決定方法は、従来技術に係る決定方法と同様である。具体的には、低電力状態でのスイッチング素子4のオン損失の著しい増加の発生を防止することを目的として、冷却構成によりスイッチング素子4の破壊を回避することができる最小入力電力に基づいて、周波数制御を行う入力電力設定値の範囲を決定する。
さらに、鍋材質判定回路18は、公知の技術を利用して、入力電流検出回路13と共振電圧検出回路17による各検出結果に基づいて鍋3の材質を判定する。具体的には、鍋材質判定回路18は、例えば鍋3の材質によって入力電流検出回路13によって検出される入力電流と共振電圧検出回路17によって検出される共振電圧とが大きく異なることを利用して、鍋3の材質が、鉄および非磁性ステンレス鋼のいずれであるかを判定する。以下、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様の構成、動作及び設定方法についての詳細な説明は省略し、従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点のみを説明する。
入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法について、図7A、図7B、図8及び図9を用いて説明する。図7A及び図7Bは、入力電力設定値が1に設定されたときの本発明の実施の形態2におけるデューティ制御処理のフローチャートである。図8は、本発明の実施の形態2に係る入力電力設定値と、設定電力と、電力制御方法との関係を示すテーブルである。図9は、本発明の実施の形態2における鍋3への入力電力と入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYとの関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器によれば、使用者は、入力電力設定手段16により、入力電力設定値「1」から「5」までの5段階の入力電力設定値のうち所望の入力電力設定値を選択して設定する。ここで、図3に示すように、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wである。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行う。
図7Aにおいて、入力電力設定手段16により入力電力設定値が「1」に設定されると、制御回路9は、入力電力設定値「1」を含む信号を入力電力設定手段16から受信する(S1)。これに応答して、制御回路9は、まず始めに、制御回路9内のパルス回数加算回路14および入力電流加算回路15の各格納データを0にリセットする(S2およびS3において、初期値0をセットする)。
次に、制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値に720をセットする(S4)。なお、周期時間到達可否判定値の設定方法は、後述する。
次に、制御回路9は、スイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。
次に、制御回路9は、入力電流検出回路13からの検出信号および共振電圧検出回路17からの検出信号を受信して、制御回路9内の鍋材質判定回路18により鍋3の材質を判定し(S21)、判定結果に応じて入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値を設定する(S22およびS32)。
以下、周期時間到達可否判定値および通電時間到達可否判定値の設定方法について説明する。
入力電流検出回路13は、交流電源からの入力電流(電源電流)を、カレントトランスを用いて検出し、検出した入力電流を当該入力電流に対応する電圧に変換し、当該電圧のピーク電圧をピークホールド回路により検出し、検出結果の電圧レベルを有する検出信号を制御回路9に出力する。制御回路9(マイクロコンピュータ)は、入力電流検出回路13からの検出信号を電圧レベル(アナログ値)に応じて0から255ディジットまでのデジタル値に変換する。前述のとおり、本発明の実施の形態における誘導加熱調理器の最大入力電力設定値は「5」、すなわち最大設定電力は「1200W」であるため、鉄材質の代表的な鍋であるホーロー鍋(以下、鉄製のホーロー鍋を、ホーロー鍋という。)を加熱動作させた場合において、加熱停止状態(入力電力0W=入力電流0A)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを0ディジットに変換し、最大設定値「5」(入力電力1200W)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを255ディジットに変換する。さらに、0Wから1200Wまでの入力電力においては、入力電力をXとし、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルをYとした場合に、Y=0.2125Xなる線形性を有するように、鍋3への入力電力と電圧レベルYとの関係を設定する(図9参照。)。
入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「1」および「2」では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定してデューティ制御動作を行う。簡単にいうと、例えば入力電力設定値「1」の場合には、入力電力を600Wに設定して1秒間だけ通電させて5秒間だけ通電を停止させることにより平均電力100Wを得るという制御を行う。言い換えれば、6秒ごとの平均電力は、入力電力100Wで連続動作させた場合の平均電力と全く同じである(デューティ制御での平均電力は、600×1/6=100Wであり、連続動作時の平均電力は100×6/6=100Wである。)。後述するが、制御回路9はゼロボルトパルスの検出後に入力電流加算回路15の格納データへの加算処理を行うため、6秒間での入力電流加算回路15の格納データへの加算処理の総回数は、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数に等しい。
ここで、ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミング、すなわち正負電圧の反転タイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生する。例えば、交流電源が単相3線式の200V/60Hzの商用周波電源である場合は、交流電源からの交流電圧の1周期(1/(60×2)=約16ミリ秒)でゼロボルトタイミングを2回検出する。従って、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数は2回×60Hz×6秒=720回となる。
入力電力を100Wに設定してホーロー鍋を加熱するとき、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYはY=0.2125×100≒21ディジットであり、入力電力を100Wに設定して6秒間だけ連続動作させた場合の入力電流加算回路15の格納データの加算結果は21×720=15120ディジットとなる。従って、入力電力を600Wに設定してデューティ制御を行う場合にも、通電開始から6秒経過したときの入力電流加算回路15の格納データが15120ディジットであれば、平均電力は100Wとなる。従って、入力電力設定値が「1」に設定され、かつ鍋3の材質が鉄と判定された場合には入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に15120をセットする(S22)。なお、入力電力設定値「2」の場合についても、入力電力設定値「1」の場合と同様に、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に45360をセットする(図8参照。)。
ところが、本来、入力電力は入力電流の実効値及び位相と、入力電圧の実効値及び位相とに基づいて求められるものであり、入力電流の最大値が同じでも入力電流の実効値が異なる負荷の場合には、入力電力は同じとはならない。例えば、非磁性材質の代表的な鍋である非磁性ステンレス鋼(非磁性SUS(Steel Use Stainless))製の鍋(以下、非磁性ステンレス鍋という。)を、入力電力設定値を「3」に設定して、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルが128ディジットになるように加熱した場合には、実際の入力電力は640Wとなり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力600Wの1.06倍の電力が入力されてしまう(図9参照。)。従って、図9に示すように、鉄製のホーロー鍋にてY=0.2125Xにて表された鍋3への入力電力と入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYとの間の関係は、非磁性ステンレス鍋ではY=0.2Xで表される(0.2≒0.2125/1.06)。
一方、入力電力を600Wに設定してホーロー鍋を加熱するとき、入力電流検出回路13からの検出信号の制御回路9による受信電圧レベルはY=0.2125×600≒127ディジットであるため、周期時間6秒に対して通電時間は6×(15120/127)/720≒0.99秒になる。非磁性ステンレス鍋を加熱する場合に、鉄材質での入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値を用いることは、ホーロー鍋を加熱するときの通電時間で通電することと等しいため、平均電力は640×0.99/6≒106Wとなり設定電力(100W)との間の差が発生してしまう。これを防止するためには、非磁性ステンレス鍋の場合と、ホーロー鍋の場合とで、通電時間到達可否判定値を変えればよい。入力電力を100Wに設定して非磁性ステンレス鍋を加熱するとき、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYはY=0.2×100≒20igitであるため、入力電力を100Wに設定して6秒間だけ連続動作させた場合の入力電流加算回路15の格納データの加算結果は20×720=14400ディジットとなる。従って、入力電力設定値が「1」に設定され、かつ鍋3の材質が非磁性ステンレス鋼と判定された場合には、通電時間到達可否判定値に14400をセットする(S32)。この場合、平均電力は640×(14400/127)/720≒101Wとなり、平均入力電力と設定電力(100W)との間の差を実質的になくすことができる。なお、入力電力設定値「2」の場合についても、入力電力設定値「1」の場合と同様に、入力電流加算回路15の格納データの通電時間到達可否判定値に43200をセットする(図8参照。)。
次に、ゼロボルトパルス検出回路12は、ゼロボルトタイミングを検出すると制御回路9にゼロボルトパルスを送信する。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S23又はS33でYES)、制御回路9内のパルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S24およびS34)。例えば、直前の格納データが0であるときは、加算後はパルス回数加算回路14に1がセットされる。
制御回路9は、ゼロボルトパルスの検出後、入力電流検出回路13から検出信号を受信し、当該検出信号の電圧レベルに対応する値(ディジット)を、入力電流加算回路15の直前の格納データに対して加算する(S25およびS35)。ここで、加熱動作開始時は、共振回路の共振周波数から大きく離れた動作周波数(共振周波数<動作周波数とする)で動作させて低電力状態とするため(ソフトスタート制御)、例えば、加熱動作開始時の入力電力を200Wに設定した場合には、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルは前述の線形式によりY=0.2125×200≒43ディジットとなり、直前の格納データは0であったため入力電流加算回路15に43がセットされる。
次に、制御回路9は、入力電流加算回路15の格納データが通電時間到達可否判定値(鍋3の材質が鉄の場合は15120であり、鍋3の材質が非磁性ステンレス鋼の場合は14400である。)に到達したか否かを判定し(S26およびS36)、もし通電時間到達可否判定値に到達していなければ図7Aのフローチャートに従って通電状態を継続する一方、通電時間到達判定値に到達していれば通電状態から停止状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に停止信号を送信してスイッチング素子4を停止させ、鍋3への加熱動作を停止する(S11)。
加熱動作を停止後、ゼロボルトパルス検出回路12がゼロボルトタイミングを検出するとゼロボルトパルス検出回路12から制御回路9にゼロボルトパルスが送信される。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S12でYES)、パルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S13)。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データへの加算後、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値(720)に到達したか否かを判定する(S14)。パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は、デューティ制御の周期時間である6秒に相当する値に設定される。前述したとおり、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数は2回×60Hz×6秒=720回であり、ゼロボルトタイミングが検出される毎にパルス回数加算回路14の格納データは1ずつ加算されていくため、6秒間の加算結果は720となる。従って、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は720に設定される。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達したか否かを判定し、もし周期時間到達可否判定値に到達していなければ(S14でNO)図7A及び図7Bのフローチャートに従って停止状態を継続する。一方、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達していれば(S14でYES)、パルス回数加算回路14および入力電流加算回路15の各格納データを0にリセットした後(S2およびS3において初期値0をセットする)、停止状態から通電状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。以下、これまで説明した一連の動作(S2〜S14)を、入力電力設定手段16を用いて加熱動作の終了が選択されるまで繰り返す。
従って、図7Aおよび図7Bの処理によれば、制御回路9は、スイッチング素子4を、所定のデューティ周期で通電状態と停止状態を繰り返すように制御するとき、入力電流検出回路13により検出される入力電流を各デューティ周期期間において積算し、当該各デューティ期間の積算後の入力電流の平均値が、入力電力設定手段16を用いて選択された入力電力設定値に対応するように予め設定された値になるように、スイッチング素子4の通電時間(通電時間到達可否判定値に対応する。)を制御する。さらに、制御回路9は、鍋3の材質に応じてスイッチング素子4の通電時間を制御する。
図7Aおよび図7Bのフローチャートに従う加熱動作制御を行うと、入力電力は、実施の形態1と同様に、図5のように時間変化する。
以上説明したように、本実施の形態においては、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流素子6と、高周波磁界を発生して鍋3を加熱する加熱コイル1と、前記加熱コイル1と共に共振回路を構成する共振コンデンサ2と、前記共振回路に接続されて共振電流を生成するスイッチング素子4と、前記共振回路への入力電流を検出する入力電流検出回路13と、前記共振コンデンサ2に発生する共振電圧を検出する共振電圧検出回路17と、前記入力電流検出回路13による検出結果を加算する入力電流加算回路15と、前記入力電流検出回路13と前記共振電圧検出回路17による検出結果から鍋材質を判定する鍋材質判定手段である鍋材質判定回路18と、所定の電力を出力するために前記スイッチング素子4のオン時間を任意に変更する制御回路9と、入力電力設定手段16とを備えて構成される。ここで、前記制御回路9は、前記入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合には鍋3を連続的に加熱する一方、入力電力設定値が所定値未満の場合には加熱動作と停止を所定のデューティ周期により繰り返す間欠動作を行い、更に間欠動作では入力電流加算回路15による加算結果の格納データが、入力電力設定値毎に定められて且つ鍋材質判定回路18による判定結果により異なる値とした通電時間到達可否判定値に到達した時点で加熱動作から停止へと状態を変化させる。
本実施の形態において、入力電力設定値が所定値(本実施の形態では3である。)未満の場合のデューティ制御は、パルス回数加算回路14の格納データに基づいて、デューティ周期時間6秒でより行わる。また、デューティ制御時の通電状態から停止状態への切り替えは、入力電流加算回路15の格納データが、入力電力設定値に対応する設定電力で6秒間通電したときの積算電流に対応する所定の通電時間到達可否判定値に到達した時点で行い、更には負荷の材質(種類)に応じて、同一の設定電力でも平均電力への到達判定条件(通電時間到達可否判定値)を変更する。従って、本実施の形態によれば、動作開始から、入力電流が通電開始から、通電状態と停止状態を切り替えるための所定の積算入力電力に到達するまでの所要時間に、負荷によって長短が発生して、所要時間中に発生する平均電力に差が生じた場合や、連続動作時の電力制御方法如何によっては通電状態の入力電力そのものが異なる場合にも、負荷に応じて通電時間を可変させて対応することができる。このため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
なお、本実施の形態では、入力電力設定値は「1」から「5」までの5段階であり、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wであった。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行ったが、本発明はこれに限られない。上述した入力電力設定値の段階数およびそれに対応する設定電力に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行い、通電状態から停止状態への切り替えを判定する入力電流加算回路15の格納データの到達可否判定値をホーロー鍋(鉄製)では15120に設定し、非磁性ステンレス鍋(非磁性ステンレス鋼製)では14400に設定した。さらに、周期時間6秒を検出するためのパルス回数加算回路14の格納データの到達可否判定値を720に設定した。しかしながら、本発明はこれに限られない。上述した通電時間到達可否判定値および周期時間到達可否判定値に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、設定値「3」から「5」の入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行ったが、動作周波数を固定した状態で導通比率を変更することにより入力電力を制御する導通比制御を行っても、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、鍋材質判定回路18は、鍋3の材質が鉄および非磁性ステンレス鋼の2種類の材質のうちいずれであるかを判定したが、本発明はこれに限られない。例えば、アルミ鍋を加熱可能な誘導加熱調理器の場合は、アルミニウムであることをさらに判定してもよく、鍋材質判定回路18の判定内容によらず、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。
図10において、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、加熱コイル1と、共振コンデンサ2と、スイッチング素子4と、フライホールダイオード5と、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8と、マイクロコンピュータである制御回路9と、スイッチング素子駆動回路10と、電源回路11と、ゼロボルトパルス検出回路12と、入力電流検出回路13と、入力電力設定手段16と、共振電圧検出回路17とを備えて構成される。また、制御回路9は、パルス回数加算回路14と、鍋材質判定回路18とを含む。
加熱コイル1と、当該加熱コイル1に並列に接続された共振コンデンサ2とは、共振回路を構成している。負荷としての鍋3は加熱コイル1の近傍に配置される。スイッチング素子4は共振回路に直列に接続され、スイッチング素子4に並列に接続されたフライホイールダイオード5とともに共振回路に高周波電流を供給する。交流電源からの交流電力を整流する整流素子6で整流された電力は、チョークコイル7及び平滑コンデンサ8により構成される平滑回路で平滑され、共振回路とスイッチング素子4に供給される。ここで、整流素子6と、チョークコイル7と、平滑コンデンサ8とは、整流回路を構成する。また、制御回路9は、誘導加熱調理器全体を制御し、スイッチング素子駆動回路10は、制御回路9からの命令に従ってスイッチング素子4を高速で駆動する。さらに、電源回路11は、誘導加熱調理器全体に直流安定化電源を供給する。ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生してパルス回数加算回路14に出力する。入力電流検出回路13は、カレントトランスを用いて、交流電源から整流回路を介して共振回路に入力される入力電流を検出し、当該検出された入力電流に対応する電圧レベルを有する検出信号を鍋材質判定回路18に出力する。また、パルス回数加算回路14は、ゼロボルトパルス検出回路12からのゼロボルトパルスをカウントして、カウント結果を示すデータを格納データとして格納する。またさらに、共振電圧検出回路17は、共振コンデンサに発生する共振電圧を検出し、鍋材質判定回路18は、入力電流検出回路13と共振電圧検出回路17による各検出結果に基づいて鍋3の材質を判定する。なお、入力電流検出回路13と、共振電圧検出回路17と、鍋材質判定回路18とは、鍋3の材質を判定する鍋材質判定手段を構成する。使用者は、入力電力設定手段16を操作して、共振回路への複数の入力電力設定値の中から1つの入力電力設定値を選択して設定する。
以上説明したように構成された誘導加熱調理器について、以下その動作および作用を説明する。なお、本実施の形態に係る誘導加熱調理器と、図15を参照して説明した特許文献1記載の従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点は、入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法、すなわち鍋3への加熱動作と停止を所定のデューティ周期により繰り返す(すなわち、スイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動する通電状態と、スイッチング素子4をオフする停止状態とを、所定のデューティ周期により繰り返す。)デューティ制御(間欠動作)による制御方法のみである。それ以外の場合、例えば入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合、およびデューティ制御中の加熱動作時の制御方法は、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様である。具体的には、電圧共振形インバータを用いて、加熱コイル1に発生する高周波磁界により加熱コイル1上に載置された鍋3に発生する渦電流損によって鍋3を誘導加熱する。また、用いられる電力制御方法は、スイッチング素子4をオンする時間(オン時間)の値によって加熱コイル1に流れる電流を変化させて、鍋3に与えられる高周波電流を制御して電力を可変させる周波数制御である。さらに、制御方法を周波数制御とデューティ制御との間で切り替えるときの入力電力設定値の決定方法は、従来技術に係る決定方法と同様である。具体的には、低電力状態でのスイッチング素子4のオン損失の著しい増加の発生を防止することを目的として、冷却構成によりスイッチング素子4の破壊を回避することができる最小入力電力に基づいて、周波数制御を行う入力電力設定値の範囲を決定する。
さらに、鍋材質判定回路18は、公知の技術を利用して、入力電流検出回路13と共振電圧検出回路17による各検出結果に基づいて鍋3の材質を判定する。具体的には、鍋材質判定回路18は、例えば鍋3の材質によって入力電流検出回路13によって検出される入力電流と共振電圧検出回路17によって検出される共振電圧とが大きく異なることを利用して、鍋3の材質が、鉄および非磁性ステンレス鋼のいずれであるかを判定する。以下、従来技術に係る誘導加熱調理器と同様の構成、動作及び設定方法についての詳細な説明は省略し、従来技術に係る誘導加熱調理器との間の相違点のみを説明する。
入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値未満の場合の制御方法について、図11A、図11B、図12および図13を用いて説明する。図11Aおよび図11Bは、入力電力設定値が1に設定されたときの本発明の実施の形態3におけるデューティ制御処理のフローチャートである。図12は、本発明の実施の形態3に係る入力電力設定値と、設定電力と、電力制御方法との関係を示すテーブルである。図13は、本発明の実施の形態3における鍋3への入力電力と入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYとの関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器によれば、使用者は、入力電力設定手段16により、入力電力設定値「1」から「5」までの5段階の入力電力設定値のうち所望の入力電力設定値を選択して設定する。ここで、図3に示すように、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wである。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行う。
図11Aにおいて、入力電力設定手段16により入力電力設定値が「1」に設定されると(S1)、制御回路9は、入力電力設定値「1」を含む信号を入力電力設定手段16から受信する。これに応答して、制御回路9は、まず始めに、制御回路9内のパルス回数加算回路14および入力電流加算回路15の各格納データを0にリセットする(S2において初期値0をセットする)。
次に、制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値に720をセットする(S4)。なお、周期時間到達可否判定値の設定方法は、後述する。
次に、制御回路9は、スイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。
次に、制御回路9は、入力電流検出回路13からの検出信号および共振電圧検出回路17からの検出信号を受信して、制御回路9内の鍋材質判定回路18により鍋3の材質を判定し(S21)、判定結果に応じてパルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値を設定する(S41およびS43)。
以下、周期時間到達可否判定値および通電時間到達可否判定値の設定方法について説明する。
入力電流検出回路13は、交流電源からの入力電流(電源電流)を、カレントトランスを用いて検出し、検出した入力電流を当該入力電流に対応する電圧に変換し、当該電圧のピーク電圧をピークホールド回路により検出し、検出結果の電圧レベルを有する検出信号を制御回路9に出力する。制御回路9(マイクロコンピュータ)は、入力電流検出回路13からの検出信号を電圧レベル(アナログ値)に応じて0から255ディジットまでのデジタル値に変換する。前述のとおり、本発明の実施の形態における誘導加熱調理器の最大入力電力設定値は「5」、すなわち最大設定電力は「1200W」であるため、鉄材質の代表的な鍋であるホーロー鍋(以下、鉄製のホーロー鍋を、ホーロー鍋という。)を加熱動作させた場合において、加熱停止状態(入力電力0W=入力電流0A)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを0ディジットに変換し、最大設定値「5」(入力電力1200W)での入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルを255ディジットに変換する。さらに、0Wから1200Wまでの入力電力においては、入力電力をXとし、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルをYとした場合に、Y=0.2125Xなる線形性を有するように、鍋3への入力電力と電圧レベルYとの関係を設定する(図13参照。)。
ところが、本来、入力電力は入力電流の実効値及び位相と、入力電圧の実効値及び位相とに基づいて求められるものであり、入力電流の最大値が同じでも入力電流の実効値が異なる負荷の場合には、入力電力は同じとはならない。例えば、非磁性ステンレス鍋を、入力電力設定値を「3」に設定して、入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルが128ディジットになるように加熱した場合には、実際の入力電力は640Wとなり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力600Wの1.06倍の電力が入力されてしまう(図9参照。)。従って、図9に示すように、鉄製のホーロー鍋にてY=0.2125Xにて表された鍋3への入力電力と入力電流検出回路13からの検出信号の電圧レベルYとの間の関係は、非磁性ステンレス鍋ではY=0.2Xで表される(0.2≒0.2125/1.06)。デューティ制御の場合についても同様である。
前述のとおり、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「1」および「2」では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定してデューティ制御動作を行う。簡単にいうと、例えば入力電力設定値「1」の場合には、入力電力を600Wに設定して1秒間だけ通電させて5秒間だけ通電を停止させることにより平均電力100Wを得るという制御を行う。
このとき、非磁性ステンレス鍋の場合には、実際には640Wの入力電力でデューティ制御が行われるため、平均電力は640/6≒107Wとなり、実際の入力電力と設定電力との間に差が発生してしまう。これを防止するためには、非磁性ステンレス鍋の場合と、ホーロー鍋の場合とで、通電時間到達可否判定値を変えればよい。具体的には、ホーロー鍋の場合に最適な通電時間1秒に対して、非磁性ステンレス鍋の場合の通電時間を、入力電力比1.06を考慮した時間である1/1.06≒0.94秒に設定すればよい。
ここで、ゼロボルトパルス検出回路12は、交流電源からの交流電圧のゼロボルトタイミング、すなわち正負電圧の反転タイミングを検出し、当該検出タイミングにおいてゼロボルトパルスを発生する。例えば、交流電源が単相3線式の200V/60Hzの商用周波電源である場合は、交流電源からの交流電圧の1周期(1/(60×2)=約16ミリ秒)でゼロボルトタイミングを2回検出する。従って、1秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数は2回×60Hz×1秒=120回であり、ゼロボルトタイミングが検出される毎にパルス回数加算回路14の格納データは1ずつ加算されていくため、1秒間の加算結果は120となる。同様に、0.94秒間での加算結果は2回×60Hz×0.94秒=113回となる。従って、入力電力設定値が「1」の場合には、鍋材質判定回路18により鍋3の材質が鉄であると判定されたときはパルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値に120をセットし(S41)、非磁性ステンレス鋼であると判定されたときはパルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値に113をセットする(S43)。入力電力設定値が「2」の場合には、入力電力設定値が「1」の場合と同様に、鍋3の材質が鉄であると判定されたときはパルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値に360をセットし、非磁性ステンレス鋼であると判定されたときはパルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値に338をセットする(図12参照。)。
次に、ゼロボルトパルス検出回路12は、ゼロボルトタイミングを検出すると制御回路9にゼロボルトパルスを送信する。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S23又はS33でYES)、制御回路9内のパルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S24およびS34)。例えば、直前の格納データが0であるときは、加算後はパルス回数加算回路14に1がセットされる。
次に、制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データが通電時間到達可否判定値(鍋3の材質が鉄の場合は120であり、鍋3の材質が非磁性ステンレス鋼の場合は113である。)に到達したか否かを判定し(S42およびS44)、もし通電時間到達可否判定値に到達していなければ図11Aのフローチャートに従って通電状態を継続する一方、通電時間到達可否判定値に到達していれば通電状態から停止状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に停止信号を送信してスイッチング素子4を停止させ、鍋3への加熱動作を停止する(S11)。
加熱動作を停止後、ゼロボルトパルス検出回路12がゼロボルトタイミングを検出するとゼロボルトパルス検出回路12から制御回路9にゼロボルトパルスが送信される。制御回路9は、ゼロボルトパルスを検出すると(S12でYES)、パルス回数加算回路14の直前の格納データに対して1を加算する(S13)。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データへの加算後、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値(720)に到達したか否かを判定する(S14)。パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は、デューティ制御の周期時間である6秒に相当する値に設定される。前述したとおり、6秒間でのゼロボルトタイミングの発生回数は2回×60Hz×6秒=720回であり、ゼロボルトタイミングが検出される毎にパルス回数加算回路14の格納データは1ずつ加算されていくため、6秒間の加算結果は720となる。従って、パルス回数加算回路14の格納データの周期時間到達可否判定値は720に設定される。制御回路9は、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達したか否かを判定し(S14)、もし周期時間到達可否判定値に到達していなければ(S14でNO)図7A及び図7Bのフローチャートに従って停止状態を継続する。一方、パルス回数加算回路14の格納データが周期時間到達可否判定値に到達していれば(S14でYES)、パルス回数加算回路14の格納データを0にリセットした後(S2において初期値0をセットする)、停止状態から通電状態に移行し、すなわちスイッチング素子駆動回路10に駆動信号を送信してスイッチング素子4をデューティ周期より十分に短い所定のスイッチング周期で駆動させ、通電状態に移行し、鍋3への加熱動作を開始する(S6)。以下、これまで説明した一連の動作(S2〜S14)を、入力電力設定手段16を用いて加熱動作の終了が選択されるまで繰り返す。
従って、図11Aおよび図11Bの処理よれば、制御回路9は、スイッチング素子4を、所定のデューティ周期で通電状態と停止状態を繰り返すように制御するとき、鍋3の材質に基づいて、各デューティ周期期間における入力電力の平均値が入力電力設定手段16を用いて選択された入力電力設定値に対応する値になるように予め決定されたスイッチング素子4の通電時間(通電時間到達可否判定値に対応する。)を設定する。
図14は、本発明の実施の形態3におけるデューティ制御中の入力電力の時間変化を示すグラフであり、図11Aおよび図11Bのフローチャートに従う加熱動作制御を行ったときの入力電力の時間変化を示す。図14に示すように、本実施の形態によれば、パルス回数加算回路14の格納データがゼロにリセットされるタイミングから入力電力が600Wになるまでの期間の長さによらず、入力電力設定値が「1」であるときのデューティ制御周期(6秒)内での積算入力電力(図14の領域Aの面積)は、入力電力設定値「1」に対応する設定電力(100W)でデューティ制御周期時間だけ連続して通電したときの積算入力電力(図14の領域Bの面積)と等しい。すなわち、入力電力設定値が「1」であるときの平均入力電力は、100Wの設定電力で連続して通電するときの平均入力電力と等しい。
以上説明したように、本実施の形態においては、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流素子6と、高周波磁界を発生して鍋3を加熱する加熱コイル1と、加熱コイル1と共に共振回路を構成する共振コンデンサ2と、共振回路に接続されて共振電流を生成するスイッチング素子4と、共振回路への入力電流を検出する入力電流検出回路13と、共振コンデンサ2に発生する共振電圧を検出する共振電圧検出回路17と、入力電流検出回路13と共振電圧検出回路17による検出結果から鍋材質を判定する鍋材質判定回路18と、所定の電力を出力するためにスイッチング素子4のオン時間を任意に変更してなる制御回路9と、入力電力設定手段16とを備えて構成される。ここで、制御回路9は、入力電力設定手段16によって設定された入力電力設定値が所定値以上の場合には鍋3を連続的に加熱する一方、入力電力設定値が所定値未満の場合には加熱動作と停止を入力電力設定値に応じた時間比により繰り返す間欠動作を行い、且つ間欠動作では鍋材質判定回路18による判定結果により同一の入力電力設定値において時間比を変化させる。
本実施の形態によれば、鍋の材質によってはデューティ制御動作を行うときの入力電力そのものが変化してしまい、設定電力と実際の平均入力電力との間に差が発生してしまう場合にも、設定電力に相当する平均入力電力を得ることができる時間比(デューティ周期時間に対する通電時間の比)を負荷の材質に応じて設定することができるため、負荷によらずに、従来技術に比較して平均入力電力と設定電力との間の差を小さくできる。
なお、本実施の形態では、入力電力設定値は「1」から「5」までの5段階であり、入力電力設定値「1」に対応する設定電力は100Wであり、入力電力設定値「2」に対応する設定電力は300Wであり、入力電力設定値「3」に対応する設定電力は600Wであり、入力電力設定値「4」に対応する設定電力は900Wであり、入力電力設定値「5」に対応する設定電力は1200Wであった。また、制御回路9は、「3」から「5」までの入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行い、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行ったが、本発明はこれに限られない。上述した入力電力設定値の段階数およびそれに対応する設定電力に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、本実施の形態では、「1」および「2」の入力電力設定値範囲では、入力電力設定値「3」に対応する設定電力(600W)で、デューティ周期時間を6秒に設定して、デューティ制御動作を行い、入力電力設定値が「1」のときの通電時間を、ホーロー鍋(鉄材質)では1秒に設定し、非磁性ステンレス鍋(非磁性材質)では0.94秒に設定するために、パルス回数加算回路14の格納データの通電時間到達可否判定値をそれぞれ120および113に設定した。さらに、周期時間6秒を検出するためのパルス回数加算回路14の格納データの到達可否判定値を720に設定した。しかしながら、本発明はこれに限られない。上述した通電時間到達可否判定値および周期時間到達可否判定値に限定されずとも、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、設定値「3」から「5」の入力電力設定値範囲では周波数制御による連続動作を行ったが、動作周波数を固定した状態で導通比率を変更することにより入力電力を制御する導通比制御を行っても、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。
また、本実施の形態では、鍋材質判定回路18は、鍋3の材質が鉄および非磁性ステンレス鋼の2種類の材質のうちいずれであるかを判定したが、本発明はこれに限られない。例えば、アルミ鍋を加熱可能な誘導加熱調理器の場合は、アルミニウムであることをさらに判定してもよく、鍋材質判定回路18の判定内容によらず、本実施の形態と同様の効果が得られるのは言うまでもないことである。