JP5893923B2 - 溶接部近傍の硬さ予測方法、及び溶接部近傍の保全方法 - Google Patents

溶接部近傍の硬さ予測方法、及び溶接部近傍の保全方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラントの配管をはじめとする構造部材の溶接部近傍の硬さ予測方法、及びこの溶接部近傍の硬さ予測方法を適用した溶接部近傍の保全方法に関するものである。
原子力プラントの配管等は、耐食性及び高温強度が良好なオーステナイト系ステンレス鋼で構成されているが、応力腐食割れが生じる事例がこれまでに報告されており、対策が進められている。
オーステナイト系ステンレス鋼は、引張残留応力を有した状態で高温水に接して使用されると、応力腐食割れが発生することが知られている。この応力腐食割れは、ステンレス鋼で構成された構造部材においては、溶接部の近傍において顕著に生じる。これは、溶接部近傍においては、溶接金属が凝固の際に収縮することによって、溶接部近傍が引張りの応力を受け、溶接部近傍に局所的な変形が生じたり、残留応力が発生したりするためである。
構造部材の耐応力腐食割れ性を評価する方法として、例えば、特許文献1には、応力腐食割れ感受性を示すようになる限界硬度である限界硬度情報を定めておき、この限界硬度情報に基づいて、測定した構造部材の硬さから耐応力腐食割れ性を評価する方法が提案されている。
また、特許文献2には、構造部材の応力分布・強度分布のいずれか一方、またはその両方を評価し、この評価結果に基づいて構造部材の応力腐食割れ性が必要な領域を判定する方法が提案されている。
特開2004−340898号公報 特開2007−178157号公報
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載されている方法では、実際に使用されている構造部材から直接硬さを測定している。溶接部近傍においては、板厚内部が特に硬化するため、板厚内部における硬さを測定して耐応力腐食割れ性を評価する必要がある。
しかしながら、板厚内部の硬さを測定するための試験を行うには、溶接部近傍を切断しない限り実施することはできない。また、構造部材を切断すると、保全に必要なコストが増加したり、所要時間が長くなったりする等の問題がある。
このような理由から、溶接部近傍において、構造部材を切断することなく板厚内部の硬さを予測する手法が要求されている。しかし、従来、オーステナイト系ステンレス鋼においては、硬さを予測する手法が確立されておらず、精度良く硬さを予測する方法が求められている。
この発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、プラントの配管をはじめとする構造部材の溶接部近傍において、評価の対象となる構造部材を破壊することなく、精度良く硬さを予測可能な溶接部近傍の硬さ予測方法、及びこの予測方法を用いた溶接部近傍の保全方法を提供することを目的とする。
前述の課題を解決するために、本発明は、ステンレス鋼で構成され、溶接された構造部材の溶接部近傍の硬さ予測方法であって、条件を変えて溶接された前記構造部材の溶接部近傍における硬さと、前記構造部材における少なくとも一つ以上の溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子と、について測定を行い、前記硬さと前記因子の測定値を用いて統計処理を行い、溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成し、作成した該指標に基づいて前記溶接部近傍の硬さを予測し、前記因子のパラメータとして、鋼種、引張強さ、溶接方法、溶接始終端有無、及び板厚×パス数、を抽出することを特徴としている。
本発明の溶接部近傍の硬さ予測方法によれば、構造部材の溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子を測定し、この因子の測定値から統計処理の結果に基づいて硬さを予測する指標を作成するので、溶接部近傍の硬さを予測する指標を得ることができ、溶接部近傍の硬さを予め把握することが可能となる。また、この溶接部近傍の硬さを予測する指標(予測指標)に基づいて、評価の対象となる構造部材を破壊することなく、硬さを予測することができる。
また、前記統計処理として、重回帰分析を用いても良い。
この場合には、溶接部近傍の硬さと、溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子の測定値を用いて、重回帰分析を行うので、測定値に基づいて容易に溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成することができる。
また、前記因子として、溶接条件、化学成分、及び機械的特性のうちから少なくとも一つ以上選択することとしても良い。
この場合、溶接部近傍の硬さに影響する溶接条件、化学成分、機械的特性を測定し、この測定に基づいて硬さを予測する指標を作成するので、予測精度の高い溶接部近傍の硬さを予測する指標を得ることができ、より正確な硬さを把握することが可能となる。
また、前記溶接条件として、溶接方法、溶接量、溶接始終端有無、パス数、板厚、総入熱量、(総入熱量/板厚)、(溶接量/板厚)、及び板厚×パス数のパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択しても良い。
また、前記化学成分として、鋼種、C含有量、Si含有量、Mn含有量、P含有量、Cr含有量、Ni含有量、Mo含有量、のパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択しても良い。
さらに、前記機械的特性として、0.2%耐力及び引張強さのパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択しても良い。
溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子として、このようなパラメータを選択することによって、より精度の高い溶接部近傍の硬さ予測方法とすることが可能となる。
また、前記統計処理を行う前に、前記因子のパラメータに対して相関係数を算出し、該算出した相関係数に基づいて、前記重回帰分析で用いる前記因子のパラメータを抽出しても良い。
この場合、相互関係が強い複数のパラメータの中から統計処理に用いるパラメータを選択するので、溶接部近傍の硬さの予測指標の精度をさらに向上させることが可能となる。
前記因子のパラメータの測定値を用いて前記統計処理を行い、変数減少法を用いて溶接部近傍の硬さに及ぼす影響が大きい前記パラメータを抽出して、該抽出したパラメータの測定値を用いて前記統計処理をすることを少なくとも一回以上行った後に、前記溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成しても良い。
この場合、溶接部近傍の硬さを予測する指標に用いるパラメータを選択し、より精度の高い硬さの予測指標を得ることが可能となる。
また、前記溶接部近傍の硬さを予測する指標は、(硬さ)=10(Z={A+(鋼種)+(引張強さ)+(溶接方法)+(溶接始終端有無)+(板厚×パス数)}、A:定数、a、b、c、d、e:各因子の係数、鋼種:ステンレス鋼の種類により定義される数値、溶接方法:溶接の方法により定義される数値、溶接始終端有無:溶接始終端であるかどうかで定義される数値)とされても良い。
この場合、溶接部近傍の硬さを予測する指標を上記のような数式で表すことができるので、容易に溶接部近傍の硬さを予測することが可能となる。
さらに、本発明の溶接部近傍の保全方法は、上記の溶接部近傍の硬さ予測方法を、オーステナイト系ステンレス鋼で構成された配管の溶接部近傍に適用することで前記溶接部近傍の硬さを予測し、該予測した硬さが所定の硬さを上回っている場合には応力腐食割れが発生すると判定し、前記構造部材の保全の時期を把握することを特徴としている。
本発明の溶接部近傍の保全方法によれば、構造部材を破壊することなく溶接部近傍の硬さを予測し、所定の硬さを上回っている場合には、応力腐食割れが発生すると判定し、予め保全の時期を把握し効率的に保全を行うことが可能となる。
本発明によれば、プラントの配管をはじめとする構造部材の溶接部近傍において、評価の対象となる構造部材を破壊することなく、精度良く硬さを予測可能な溶接部近傍の硬さ予測方法、及びこの予測方法を用いた溶接部近傍の保全方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る溶接された構造部材の概略説明図である。 一実施形態に係る溶接部近傍の硬さ予測方法を説明するフロー図である。 一実施形態に係る溶接部近傍の予測硬さと実測された硬さを比較した図である。
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態は、ステンレス鋼で構成されたプラントの配管をはじめとする構造部材の溶接部近傍の硬さ予測方法、及び溶接部近傍の保全方法に関するものである。
本実施形態の溶接部近傍の硬さ予測方法が評価の対象とする配管及び溶接部は、図1で示すように、配管10と配管20が溶接部30を介して接合されている。
配管10及び配管20は、原子力プラント等の配管であり、高温・高圧環境で使用される。これらの配管10、20は、高強度かつ耐食性が良好なステンレス鋼で構成されており、本実施形態では、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼とされている。なお、図1の配管10、20の下方側が配管の内面側、上方側が配管の外面側となっている。
溶接部30は、ステンレス系の溶接金属で構成されており、配管10と配管20を接合するものである。本実施形態では、配管10、20はV型開先とされており、TIG溶接やSMAW溶接等を用いて肉盛溶接を行うことにより溶接部30は形成される。なお、本実施形態においては、溶接部近傍とは、溶接部30と接する配管10、20側の領域を意味している。
溶接部近傍は、溶接時において、溶接金属が凝固の際に収縮することに起因して、引張の応力が負荷されることに加えて、溶接熱によりステンレス鋼中の析出状態が変化し、配管10、20の板厚内部が硬化する。これによって、溶接部近傍においては、耐応力腐食割れ性が劣化することとなる。上記の硬さは、溶接条件、化学成分(ステンレス鋼の成分)、溶接前の機械的特性等によって変化する。
次に、本実施形態の溶接部近傍の硬さの予測方法の手順について説明する。本実施形態の溶接部近傍の硬さ予測方法は、図2で示すフロー図に従って、溶接された構造部材の溶接部近傍の硬さ、及び溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子の測定値を用いて統計処理を行い、溶接部近傍の硬さを予測する指標(予測指標)を作成するものである。この溶接部近傍の硬さ予測方法は、例えば、測定工程S11と、相関係数算出工程S12と、統計処理工程S13と、予測指標作成工程S14と、を備えている。
(測定工程S11)
まず、溶接された構造部材の溶接部近傍の硬さ、及び溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子について測定を行う。本実施形態では、この溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子は、溶接条件、化学成分、溶接前の機械的特性とされている。
本実施形態では、溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子(条件)を種々変えて構造部材(ステンレス鋼)に溶接を行ったサンプルを30個作成した。そして、構造部材における溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子を変更し、さらにサンプルの溶接部近傍における硬さについて測定を行った。
硬さ試験については、配管の内表面から板厚の1/3位置について、溶接部から10mmまでの範囲を1mmごとにビッカース硬さ試験機を用いて測定し、測定された硬さの最大値をそれぞれのサンプルの硬さとした。
溶接条件として具体的には、溶接方法、溶接量、溶接始終端有無、(総入熱量/板厚)、(溶接量/板厚)、板厚×パス数、を硬さに影響を及ぼすパラメータとして測定した。
溶接方法は、手動溶接または自動溶接かの区分である。後述する統計処理を行う場合には、手動溶接と自動溶接に対して数値を定義することによって統計処理を行えば良い。本実施形態では、手動溶接は1、自動溶接は0と定義されている。
溶接量は、溶接時に溶接される溶接金属の量である。溶接量が多い場合には、溶接部近傍に入熱する熱量が大きく、溶接部近傍が特に硬化する。
溶接始終端有無は、測定箇所が溶接始終端であるかどうかの区分である。後述する統計処理を行う場合には、溶接始終端の場合と溶接始終端でない場合に対して数値で定義することによって統計処理を行えば良い。本実施形態では、溶接始終端である場合は0、溶接始終端でない場合は1と定義されている。
(総入熱量/板厚)は、総入熱量を板厚で除したものを2乗したものである。総入熱量は、電流×電圧/溶接速度、で表される。
(溶接量/板厚)は、溶接量を板厚で除したものを2乗したものである。
板厚×パス数は、板厚と溶接時のパス数の積である。パス数が多いほど、溶接時における溶接部近傍に負荷される応力が大きくなり、溶接部近傍が硬化する。
化学成分として具体的には、鋼種、C含有量、Si含有量、Mn含有量、P含有量、Cr含有量、Ni含有量、Mo含有量、を硬さに影響を及ぼすパラメータとして測定した。
鋼種は、例えば、SUS304、SUS316等の配管の構成材料の区分であり、後述する統計処理を行う場合には、鋼種ごとに数値を定義すれば良い。本実施形態では、SUS304は1、SUS316は0と定義されている。
C含有量、Si含有量、Mn含有量、P含有量、Cr含有量、Ni含有量、Mo含有量は、配管を構成するステンレス鋼の成分含有量である。表1中の各元素の含有量は質量%で表されている。各成分の含有量は、例えば、蛍光X線分析やICP等の元素分析により測定すれば良い。
機械的特性として具体的には、0.2%耐力、引張強さを硬さに影響を及ぼすパラメータとして測定した。
0.2%耐力、及び引張強さは、配管を構成するステンレス鋼の引張試験で得られる強度特性である。この引張試験はJIS規格に基づいて、適宜最適な方法で試験を行えば良い。
Figure 0005893923
このようにして各パラメータの測定工程S11で測定された硬さ、及び硬さに影響を及ぼすパラメータの値を、表1に示す。表1では硬さについては左端の列に示しており、硬さと各パラメータとの対応が行ごとに並べられている。なお、表1においては、行と列の一部を省略して記載している。
(相関係数算出工程S12)
相関係数算出工程S12は、各パラメータ間(変数間)の相関係数を算出する工程である。相関係数とは、2つの変数の間の相関を示す統計学的な指標である。この相関係数の絶対値が大きいほど、2つの変数間に強い相関があることを意味する。
本実施形態では、各パラメータ間の従属・独立を調査するために、すべてのパラメータの組み合わせについて相関係数を算出した。この相関係数を算出した結果、総入熱量、板厚×パス数、(総入熱量/板厚)、溶接量、(溶接量/板厚)、について強い相関(相互関係)が確認された。
算出した相関係数に基づいて、パラメータ間の相関係数が高いものについては、後述する統計処理においてそれぞれ一つのみを選択する。具体的には、総入熱量、板厚×パス数、(総入熱量/板厚)、溶接量、(溶接量/板厚)、のパラメータの中から、一つのみを選択すれば良い。
(統計処理工程S13)
統計処理工程S14は、硬さと各パラメータを対応付けて統計処理を行う工程である。相関係数算出工程で相互関係が強いことが確認された総入熱量、板厚×パス数、(総入熱量/板厚)、溶接量、及び(溶接量/板厚)、については、このうちから一つのみを選択して統計処理を行う。
本実施形態では、硬さと13個のパラメータ(鋼種、C含有量、Si含有量、Mn含有量、P含有量、Cr含有量、Ni含有量、Mo含有量、0.2%耐力、引張強さ、溶接方法、及び溶接始終端有無と、上述のようにして選択された一つのパラメータ)について、重回帰分析を行う。この重回帰分析は、回帰係数の有意確率(P値)が大きい変数から順次省いていく変数減少法によって、最適モデル(最適な溶接部近傍の硬さの予測指標)を選択する方法を適用した。
重回帰分析の結果の具体例として表2に、板厚×パス数をパラメータとして選択した場合の各パラメータの回帰係数と補正Rを示す。補正Rは0から1の範囲内の数値をとり、補正Rが0.5よりも大きい場合は、その重回帰モデルが良好であることを意味する。
Figure 0005893923
1回目の回帰分析において、補正Rは0.74となっており良好な回帰モデルとなっていることが分かる。また、0.2%耐力は有意確率が大きいため、2回目の回帰分析では、0.2%耐力を除外して残りの12個のパラメータで回帰分析を行った。3回目以降も同様にして、有意確率が大きいものを除外して繰り返し回帰分析を行い、6回目の回帰分析では、パラメータとして、鋼種、Cr含有量、Ni含有量、Mo含有量、引張強さ、溶接方法、溶接始終端有無、板厚×パス数が選択されている。
なお、総入熱量、(総入熱量/板厚)、溶接量、及び(溶接量/板厚)をパラメータとして選択した場合についても、同様にして回帰分析を行うと、Rは0.5以上であり、良好な重回帰モデルとなっている。
(予測指標作成工程S14)
予測指標作成工程S14は、上述した統計処理工程S13で行った統計処理の解析結果に基づいて溶接部近傍の硬さの予測指標を作成する工程である。
統計処理工程S13の重回帰分析の解析結果に基づいて、切片、各パラメータの回帰係数を用いて予測指標(式)を導出すれば良い。本実施形態では、補正Rが大きいので、予測精度が良好な溶接部近傍の硬さの予測式を得ることが可能である。
以下に、予測指標導出の具体例として、鋼種、引張強さ、溶接方法、溶接始終端有無、板厚×パス数をパラメータとして抽出し、溶接部近傍の硬さの予測指標(式)を導出したときの例について示す。これらをパラメータとしたときの回帰係数及びRは、表3のようになっている。表3からRが大きく、これらをパラメータとしたときの回帰モデルは良好であることが分かる。
Figure 0005893923
上記の5つのパラメータの回帰係数に基づいて、溶接部近傍の硬さを予測する指標(式)を導出すると次の式のようになる。(硬さ)=10(Z={A+(鋼種)+(引張強さ)+(溶接方法)+(溶接始終端有無)+(板厚×パス数)}、A:定数、a、b、c、d、e:各因子の回帰係数、鋼種:ステンレス鋼の種類ごとに定義される数値(本実施形態においては、0または1)、溶接方法:溶接の方法ごとに定義される数値(本実施形態においては、0または1)、溶接始終端有無:溶接始終端であるかどうかで定義される数値(本実施形態においては、0または1))で表される。
この溶接部近傍の硬さの予測指標により算出される予測硬さと、実際に測定した硬さとを比較したグラフを図3に示す。直線40は各プロット点を近似した直線である。図3より、上述のようにして算出された硬さの予測値と実際の硬さの値は、直線40で示されるように、ほぼ一致しており、精度良く硬さを予測できていることが分かる。
そして、この溶接部近傍の硬さの予測指標(式)を用いて、オーステナイト系ステンレス鋼で構成されたプラント等の配管の溶接部近傍における硬さを予測し、硬さの予測結果に基づいて保全を実施することが可能である。例えば、溶接部近傍の硬さの予測指標を用いた保全方法として、予測された硬さがある規定値よりも高い場合には、応力腐食割れが通常よりも早く進行すると判定し、早い時期に配管の交換を行う等の対策をすること等が挙げられる。
本実施形態に係る溶接部近傍の硬さ予測方法によれば、条件を変えて溶接された構造部材(サンプル)の溶接部近傍の硬さと、構造部材における溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子と、を測定し、この測定値を用いて重回帰分析を行い、重回帰分析の結果に基づいて硬さを予測する指標を作成している。そのため、評価の対象となる構造部材を破壊することなく、溶接部近傍の硬さの予測値を算出し、構造部材の溶接部近傍における硬さを予め把握することが可能となる。
また、本実施形態では、また、溶接部の硬さに影響を及ぼす因子として、溶接条件、化学成分、機械的特性を選択し、これらの測定値に基づいて溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成しているので、硬さの予測精度をさらに向上させることができる。また、本実施形態では、これらの因子として、複数のパラメータを測定する構成としているので、精度の高い硬さの予測指標を得ることが可能である。
また、本実施形態では、相関係数を算出し、相互関係が強いパラメータから一つを選択して回帰分析をする構成としているので、溶接部近傍の硬さの予測指標の予測精度をさらに向上させ、より正確な硬さを把握することが可能である。
また、本実施形態では、変数減少法を用いて溶接部近傍の硬さの予測指標の重回帰モデルの最適化を行っているので、より精度の高い溶接部近傍の硬さの予測指標を得ることが可能である。
また、本実施形態では、パラメータとして、鋼種、引張強さ、溶接方法、溶接始終端有無、板厚×パス数を選択している。これらのパラメータは、容易に測定値を取得することができるので、回帰分析を短時間かつ低コストで実施することが可能である。特に、板厚×パス数のデータについては、総入熱量と比較して容易にデータを入手することができ、容易に回帰分析を実施することが可能である。
また、本実施形態では、パラメータの測定値を用いて作成される溶接部近傍の硬さの予測指標は、(硬さ)=10(Z={A+(鋼種)+(引張強さ)+(溶接方法)+(溶接始終端有無)+(板厚×パス数)}で表される。このような式で表すことにより、容易かつ短時間で溶接部近傍の硬さを把握することが可能である。
さらに、本発明の溶接部近傍の保全方法によれば、溶接部近傍の硬さを予測し、所定の硬さを上回っている場合には、応力腐食割れが発生すると判定し、予め保全の時期を把握し効率的に保全を行うことが可能となる。また、構造部材を破壊することなく溶接部近傍の硬さを予測できるので、低コストかつ容易に硬さを把握し、予測された硬さに基づいて保全を行うことができる。
以上、本発明の一実施形態である、溶接部近傍の硬さ予測方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、この発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上記実施の形態では、溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子として、溶接条件、化学成分、機械的特性の3つを測定する構成しているが、3つすべてを測定する必要はなく、一つ以上を測定する構成であっても良い。また、測定する因子は、これらの因子に限定するものではなく、硬さに影響を及ぼす因子であれば、例えば析出物の分布状態など、他の因子を選択しても良い。
また、パラメータとして、上述のようなパラメータを選択したが、硬さに影響を及ぼすものであれば他のパラメータを選択しても良い。
また、上記実施の形態では、回帰分析の前に相関係数を算出する場合について説明したが、相関係数を算出しない構成としても良い。また、上記実施の形態では、変数減少法を用いて溶接部近傍の硬さの予測指標に用いるパラメータを選択する場合について説明したが、変数減少法を用いなくても良く、Rが0.5よりも大きく、妥当な重回帰モデルと判定されれば、そのモデルに基づいて溶接部近傍の硬さの予測指標を作成しても良い。
また、上記実施の形態では、硬さと硬さに影響を及ぼす因子の値を用いた回帰分析により溶接部近傍の硬さの予測指標を作成する場合について説明したが、予測指標が得られる統計処理方法であれば、他の統計処理に基づいて予測指標を得る構成としても良い。
また、上記の実施の形態では、条件を変えて作成した溶接された構造部材のサンプルは30個である場合について説明したが、これに限定されることはなく、妥当な予測指標が得られるサンプル数であれば良い。
また、上記の実施の形態では、パラメータとして13個を選択した場合について説明したが、これに限定されることがなく、パラメータのうちから少なくとも一つ以上選択すれば良い。また、6個以上のパラメータを選択することがより好ましい。
また、上記実施の形態では、硬さ試験の測定位置を配管の内表面から1mm位置について測定したが、これに限定するものではなく、構造部材の板厚方向において、構造部材が溶接により硬化している位置を適宜選択して測定すれば良い。
また、本実施形態では、V型開先の形状の配管を溶接する構成について説明したが、特にこれに限定するものではなく、適宜最適な形状を選択すれば良い。
10、20 配管(構造部材)

Claims (10)

  1. ステンレス鋼で構成され、溶接された構造部材の溶接部近傍の硬さ予測方法であって、
    条件を変えて溶接された前記構造部材の溶接部近傍における硬さと、前記構造部材における少なくとも一つ以上の溶接部近傍の硬さに影響を及ぼす因子と、について測定を行い、
    前記硬さと前記因子の測定値を用いて統計処理を行い、溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成し、
    作成した該指標に基づいて前記溶接部近傍の硬さを予測し、
    前記因子のパラメータとして、鋼種、引張強さ、溶接方法、溶接始終端有無、及び板厚×パス数、を抽出することを特徴とする溶接部近傍の硬さ予測方法。
  2. 前記統計処理として、重回帰分析を行うことを特徴とする請求項1に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  3. 前記因子として、溶接条件、化学成分、及び機械的特性、のうちから少なくとも一つ以上選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  4. 前記溶接条件として、溶接方法、溶接量、溶接始終端有無、パス数、板厚、総入熱量、(総入熱量/板厚)2、(溶接量/板厚)2、及び板厚×パス数、のパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択することを特徴とする請求項3に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  5. 前記化学成分として、鋼種、C含有量、Si含有量、Mn含有量、P含有量、Cr含有量、Ni含有量、及びMo含有量、のパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  6. 前記機械的特性として、0.2%耐力、及び引張強さ、のパラメータのうちから少なくとも一つ以上選択することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  7. 前記統計処理を行う前に、前記因子のパラメータに対して相関係数を算出し、
    該算出した相関係数に基づいて、前記統計処理で用いる前記因子のパラメータを抽出することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  8. 前記因子のパラメータの測定値を用いて前記統計処理を行い、変数減少法を用いて溶接部近傍の硬さに及ぼす影響が大きい前記パラメータを抽出して、該抽出したパラメータの測定値を用いて前記統計処理をすることを少なくとも一回以上行った後に、前記溶接部近傍の硬さを予測する指標を作成することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  9. 前記溶接部近傍の硬さを予測する指標は、(硬さ)=10Z(Z={A+(鋼種)a+(引張強さ)b+(溶接方法)c+(溶接始終端有無)d+(板厚×パス数)e}、A:定数、a、b、c、d、e:各因子の係数、鋼種:ステンレス鋼の種類ごとに定義される数値、溶接方法:溶接の方法ごとに定義される数値、溶接始終端有無:溶接始終端であるかどうかで定義される数値)であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法。
  10. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の溶接部近傍の硬さ予測方法を、オーステナイト系ステンレス鋼で構成された配管の溶接部近傍に適用することで前記溶接部近傍の硬さを予測し、該予測した硬さが所定の硬さを上回っている場合には応力腐食割れが発生すると判定し、前記構造部材の保全の時期を把握することを特徴とする溶接部近傍の保全方法。
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