JP6022421B2 - 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法 - Google Patents

原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6022421B2
JP6022421B2 JP2013152720A JP2013152720A JP6022421B2 JP 6022421 B2 JP6022421 B2 JP 6022421B2 JP 2013152720 A JP2013152720 A JP 2013152720A JP 2013152720 A JP2013152720 A JP 2013152720A JP 6022421 B2 JP6022421 B2 JP 6022421B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
content
steel
crude oil
corrosion
corrosion rate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013152720A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015021933A (ja
Inventor
真司 阪下
真司 阪下
吉田 誠司
誠司 吉田
敬祐 小澤
敬祐 小澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2013152720A priority Critical patent/JP6022421B2/ja
Publication of JP2015021933A publication Critical patent/JP2015021933A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6022421B2 publication Critical patent/JP6022421B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Testing Resistance To Weather, Investigating Materials By Mechanical Methods (AREA)

Description

本発明は、原油を輸送するタンカーなどの原油タンクに用いられる原油タンク用鋼材の推計腐食速度を簡易な方法で求めることができる原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法に関するものである。
近年、原油を輸送するタンカーなどの原油タンクでは、原油由来のS(硫黄)など、および海水由来のClなどの腐食性物質などに起因する原油タンク内の腐食が問題になっている。特に、原油タンクの底板では、定期検査において深さが10mmにも及ぶ孔食が発見されることもある。その結果、原油タンクの底板等の鋼材に形成される孔明きを原因とする原油流出事故の発生も懸念されている。従って、原油タンクに用いられる底板等の鋼材には、耐食鋼を用いることや内面に耐食塗装を施すといった防食対策が必要不可欠となっている。
それら防食対策の中でも、エポキシ樹脂系塗料などの塗装による防食は塗膜が健全な限りは非常に効果的な対策法であると考えられる。しかし、この方法では塗装時の施工不良や塗装後の疵付きなど塗膜欠陥が形成される可能性が高く、その結果、素地鋼材が露出してしまうことが多い。このような素地鋼材の露出部においては、当然ながら防食効果を得ることができなくなる。そのため、耐食塗装を施した原油タンクであっても、安全性確保の観点から実船の原油タンク内の腐食の状態を定期的に検査することが必要となっている。
一方で、CuやNiなどの添加元素によって耐食性を向上させた低合金鋼材(耐食鋼)が実用されており、原油タンクの底板に適用した場合に孔食の成長を大きく抑制する効果があることが実証されつつある。しかしながら、腐食をゼロにすることは工学的には難しく、また非現実的であるため、許容される程度に腐食を抑制した耐食鋼が実用されているのが現状である。従って、耐食鋼を用いた原油タンクにおいても、万が一の腐食の可能性を考慮して、安全性確保の観点から耐食鋼適用時にも実船の腐食の状態を定期的に検査することが必要となっている。
例えば、原油タンクの底板に発生する孔食は、同じ条件下でも必ず同様に発生・成長することはなく、ばらつきが非常に大きな現象である。この孔食の発生・成長状況は、原油タンク毎、期間毎、船毎に異なっており、次のような様々な事例が報告されている。
定期検査において、最大深さが10mmの孔食が発生したタンクの隣のタンクでは孔食の最大深さが5mmであったという事例、定期検査において、最大深さが10mmの孔食が発生したタンクは次回の定期検査では孔食の最大深さが5mmであったという事例、A船の最大孔食深さは10mmであるが、B船の最大孔食深さは5mmであるという事例等、様々な事例が報告されている。
以上のような原油タンクの底板等に発生する孔食のばらつきを考慮すると、より安全側で今後起こりうる腐食を推計することが必要と考えられる。また、原油タンカーでは原油タンクの鋼材が途中で交換される場合があるが、鋼材の交換時期などを想定すると、今後起こりうる腐食をある程度推計することが防食対策を決定する上でも有効であると考えられる。
油タンクの腐食予測あるいは評価法に関しては幾つかの先行技術が提案されている。例えば、特許文献1では、タンク底の滞留水中の塩素イオンや硫化物濃度の測定を行う方法が、特許文献2では、アコースティックエミッションによる方法が提案されている。しかしながら、これらの先行技術は、何れもが燃料油の貯蔵を目的とした地下タンクに関する提案であり、鋼材の耐食性を考慮したものではない。従って、本発明が目的とする原油を輸送するタンカーなどの原油タンクに用いられる原油タンク用鋼材の推計腐食速度を求める方法に、これら先行技術を適用したとしても精度が不十分となる。
特開2005−76070号公報 特開2006−250823号公報
本発明は、上記従来の問題を解消せんとしてなされたもので、原油を輸送するタンカーなどの原油タンクに用いられる原油タンク用鋼材の推計腐食速度を、計算式を用いて簡単に求めることができる原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.10%、Cu:1.0%以下(0%を含む)、Ni:1.0%以下(0%を含む)、Cr:1.0%以下(0%を含む)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法であって、前記各元素の含有量が前記した範囲内にあり、且つCu,Ni,Crのうち少なくとも一つの元素の含有量が異なる複数種の調査用鋼材を用いて、原油タンク内の定常時の温度:20〜40℃、原油中に含まれるS含有量:0.01〜5質量%の腐食環境下における、各調査用鋼材毎の最大孔食深さと、前記腐食環境下に曝された期間を調べると共に、前記各調査用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を調べ、前記各調査用鋼材毎の実際の腐食速度を、(最大孔食深さ)/(腐食環境下に曝された期間)から求めた後、前記各調査用鋼材毎の実際の腐食速度と、前記各調査用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量、並びに前記各調査用鋼材中のCu,Ni,およびCrの含有量との関係をもとに、推計腐食速度Zを求める下記式(1)における係数a,b,c,d,e,fの値を決めておき、下記式(1)に、腐食速度を推計しようとする原油タンク用鋼材中のCu,Ni,Crの含有量、および前記原油タンク用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を代入することにより、原油タンク用鋼材の推計腐食速度Zを求めることを特徴とする原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法である。
Z=a×exp(b×<%S>+c×<%Cl>+d×[%Cu]+e×[%Ni]+f×[%Cr])・・・(1)
但し、<%S>および<%Cl>は夫々錆中のS含有量(質量%)およびCl含有量(質量%)を表し、[%Cu]、[%Ni]および[%Cr]は夫々鋼中のCu含有量(質量%)、Ni含有量(質量%)およびCr含有量(質量%)を表す。
請求項2記載の発明は、前記複数種の各調査用鋼材と、前記腐食速度を推計しようとする前記原油タンク用鋼材中の各元素の含有量の差が、Cで±0.05%以内、Siで±0.10%以内、Mnで±0.10%以内、Pで±0.005%以内、Sで±0.005%以内、Alで±0.010%以内である請求項1記載の原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法である。
本発明によると、原油を輸送するタンカーなどの原油タンクに用いられる原油タンク用鋼材の推計腐食速度を、腐食速度を推計しようとする原油タンク用鋼材中のCu,Ni,Crの含有量、および前記原油タンク用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を計算式に代入するだけで、精度良く簡単に求めることができる。
原油タンク用鋼材(調査用鋼材A,B,C)の、腐食速度と環境の腐食性を表すパラメータX(S+5Cl)の関係を示すグラフ図である。 原油タンク用鋼材(調査用鋼材A,B,C、原油タンク用鋼材A,B)の、腐食速度と、環境の腐食性を表すパラメータXおよび材料の耐食性を表すパラメータYより求めたX−10Yの関係を示すグラフ図である。
本発明者らは、原油を輸送するタンカーなどの原油タンクに用いられる原油タンク用鋼材(以下、単に鋼材と説明することがある。)の推計腐食速度を精度良く簡単に求める方法を見出すために鋭意検討を行った。原油を輸送するタンカーなどの原油タンク内における腐食因子として、SやClが支配的であることは既に知られていたが、本発明者らは、SやClではあるが、その中でも鋼材に発生する錆中に蓄積するSおよびClに着目した。その着目に基づき鋭意検討を行った結果、錆中に蓄積するS含有量およびCl含有量を計測することによって、より正確に環境条件等による腐食性を評価できることを見出した。
錆中に蓄積するS含有量およびCl含有量を計測することで、腐食性をより正確に評価できる理由は、SやClは、原油タンク用鋼材の表面に濃縮して腐食反応に作用するため、滞留水中のSやClの含有量や、油中のSやClの含有量を計測するより、錆中に蓄積したSやClを計測した方が、鋼材の腐食性を確実に評価することができるからである。
また、原油タンク内における鋼材の耐食性にとっては、添加される元素のうちでもCu,Ni,Crの影響が特に大きく、これら元素の添加量が原油タンク用鋼材の耐食性に支配的であることを見出した。鋼材中のCu,Ni,Crの含有量(添加量)を、前記した鋼材の錆中に蓄積するS含有量およびCl含有量と併せて用いることで、更に確実に原油タンク用鋼材の腐食性を評価することが可能になる。
鋼材中のCu,Ni,Crの含有量は、鋼材に添加したこれらの元素量から求めることができるが、錆中に蓄積するS含有量およびCl含有量は、鋼材に生成した錆を採取することで求めなければならない。尚、本発明の原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法においては、複数種の調査用鋼材を用いるため、実船の原油タンク毎に鋼材の錆を採取して分析する必要がある。錆中のSおよびClの分析方法としては、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、燃焼抽出−イオンクロマトグラフ法、酸化分解−電量滴定法などを採用することができる。また、原油タンクの底板の錆には腐食に対して不活性な油分がある程度混入するため、油分として炭素濃度を除去したSおよびClの含有量で評価する。
本発明で、原油タンク用鋼材の推計腐食速度を求めるにあたり調査用鋼材として用いる複数種の鋼材は、一般的な原油タンカー用の低合金鋼材である。具体的には、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜1.0%、Al:0.005〜0.10%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cu:1.0%以下(0%を含む)、Ni:1.0%以下(0%を含む)、Cr:1.0%以下(0%を含む)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材である。
また、これら各元素の好ましい含有量の範囲は、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.50%、Al:0.015〜0.080%、Mn:0.80〜1.60%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Cu:0.50%以下(0%を含む)、Ni:0.50%以下(0%を含む)、Cr:0.30%以下(0%を含む)である。
更に、前記した必須添加元素に加えて、原油タンクの強度向上などの種々の目的に合わせて、下記の元素を1種以上選択的に添加した鋼材を用いても構わない。選択添加元素およびそれら元素の含有量は、質量%で、Mo:0.5%以下、Co:0.5%以下、W :0.5%以下、Ti:0.20%以下、Nb:0.20%以下、V :0.20%以下、Zr:0.20%以下、Hf:0.20%以下、Sb:0.20%以下、Sn:0.20%以下、Bi:0.20%以下、Se:0.20%以下、Mg:0.02%以下、Ca:0.02%以下、La:0.02%以下、Ce:0.02%以下、B :0.02%以下である。
本発明では、原油タンク用鋼材の推計腐食速度を求めるにあたり調査用鋼材として用いる複数種の鋼材の金属組織については特に限定しないが、一般的な原油タンカー用の低合金鋼材と同様に、面積率で、パーライト:30%以下、ベイナイト:20%以下、マルテンサイト:10%以下、残部フェライトであることが好ましい。
また、原油タンク用鋼材の推計腐食速度を求めるにあたり調査用鋼材として用いる複数種の鋼材はどのような方法で製造されたものであっても構わないが、例えば以下の方法により、製造することができる。転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、成分調整・温度調整を含む二次精錬を行う。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とする。次いで得られた鋼塊を熱間圧延により所望の寸法形状にすれば良い。尚、熱間圧延の加熱温度、圧延時の加工率、熱間圧延終了温度、熱間圧延後の冷却速度などの諸条件は所定の強度特性を考慮して決定することができる。
本発明では、以上説明したような複数種の調査用鋼材を用いて、原油タンク内の定常時の温度:20〜40℃、原油中に含まれるS含有量:0.01〜5質量%、の腐食環境下における、各調査用鋼材毎の最大孔食深さと、前記腐食環境下に曝された期間を調べると共に、前記各調査用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を調べる。尚、前記した腐食環境は実船の原油タンク内の環境を具体的に示したものである。次に、前記各調査用鋼材毎の実際の腐食速度を、(最大孔食深さ)/(腐食環境下に曝された期間)から求める。
その後、各調査用鋼材毎の実際の腐食速度と、各調査用鋼材の表面に生成した錆中のS含有量およびCl含有量、各調査用鋼材中のCu,Ni,Crの含有量の関係をもとに、推計腐食速度Zを求める式(1):Z=a×exp(b×<%S>+c×<%Cl>+d×[%Cu]+e×[%Ni]+f×[%Cr])の係数a,b,c,d,e,fの値を決定する。これら係数a,b,c,d,e,fは、温度や原油の性状など腐食に影響する諸条件によって変化するパラメータである。尚、式(1)中、<%S>および<%Cl>は夫々錆中のS含有量(質量%)およびCl含有量(質量%)を表し、[%Cu]、[%Ni]および[%Cr]は夫々鋼中のCu含有量(質量%)、Ni含有量(質量%)およびCr含有量(質量%)を表す。
また、より精度を高めるためには、複数種の各調査用鋼材と、腐食速度を推計しようとする原油タンク用鋼材中の各添加元素の含有量の差を、Cで±0.05%以内、Siで±0.10%以内、Mnで±0.10%以内、Pで±0.005%以内、Sで±0.005%以内、Alで±0.010%以内に収めるか、これに加えて、好ましくはC,Si,Mnなどの基本元素の含有量を一致させれば良く、また、前記腐食環境は、原油タンク内の定常時の温度差を10℃以内、原油中に含まれるS含有量の差を2質量%以内に収めれば良い。尚、係数a,b,c,d,e,fは、10点以上のデータを用いて、重回帰分析法などで決定することが推奨される。
尚、C,Si,Mnの含有量などの成分系が大きく異なる鋼材では、化学的な添加元素の相互作用のため、式(1)では推計腐食速度Zを表せない可能性がある。しかしながら、対象を本発明で規定した成分範囲に限定した場合には、添加元素の相互作用の影響が無視できるため、多少C,Si,Mn,P,Sの含有量などが異なる鋼材に対しても、式(1)は成立し、推計腐食速度Zを精度良く表すことができる。
原油タンク用鋼材の腐食速度を推計しようとする場合は、以上説明したように、係数a,b,c,d,e,fの値を事前に決めておいた式(1)に、腐食速度を推計しようとする鋼材中のCu,Ni,Crの含有量、および鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を代入すれば、原油タンク用鋼材の推計腐食速度Zを、精度良く簡単に求めることができる。
また、Ti,Mo,W,Sb,Sn,Mg,Caなどの、Cu,Ni,Cr以外の添加元素も、多少ではあるが鋼材の耐食性に影響するため、これらの元素を添加した場合には、式(1)に、鋼中のそれらの元素の含有量を組み込むことも可能である。
尚、Cu,Ni,Cr、そしてこれら添加元素に加えて、Ti,Mo,W,Sb,Sn,Mg,Caなどの添加元素については、予めラボ試験などでその影響度合いを定量化しておくことも可能である。
原油タンク内に防食塗装を施す場合があるが、この場合は分析するのに十分な量の錆が採取できない可能性が高い。よって、原油タンク内に防食塗装を施した場合には、ダミーの裸鋼材の試験片をタンク内に設置しておくことによって、その錆分析からタンク内の腐食性を評価することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
タンカーIの原油タンクを構成する3種の鋼材(底板)を調査用鋼材A,B,Cとし、夫々の調査用鋼材A,B,Cの表面に生成した錆中のS含有量およびCl含有量(但し、油分としての炭素濃度除去後の含有量)を調べると共に、最大孔食深さ(mm)を測定により求めた。用いた調査用鋼材A,B,Cは、0.11%C−0.25%Si−1.0%Mn鋼をベースとし、Cu,Ni,Crを異なる含有量とした鋼材である。調査用鋼材A,B,C毎のCu,Ni,Crの具体的な含有量は表1に示す。
また、調査用鋼材A,B,Cが、原油タンク内の定常時の温度:20〜40℃、原油中に含まれるS含有量:0.01〜5質量%の腐食環境下に曝された期間は2.5年であり、この年数と最大孔食深さ(mm)から腐食速度(mm/y)を求めた。以上の結果を表1に示す。尚、表1の記載を含め本実施例に記載した%は、全て質量%を示す。
腐食速度と錆中のS含有量およびCl含有量との関係を、予めラボ試験により、10点のデータを用いて重回帰分析で解析した結果、腐食速度に対して、Cl含有量はS含有量の5倍の影響があることが確認できた。そこで、環境の腐食性を表すパラメータXとして、式(2)を設定した。
X=<%S>+5<%Cl>・・・(2)
図1は、タンカーIの原油タンクを構成する各調査用鋼材A,B,Cについて、錆中のS含有量<%S>およびCl含有量<%Cl>より求まるパラメータXと腐食速度との関係をプロットしたものである。夫々の鋼材について、パラメータXと腐食速度とは相関関係にあり、パラメータXが環境の腐食性を表す指標であることが確認できた。
鋼材中のCu含有量[Cu]、Ni含有量[Ni]、およびCr含有量[Cr]の腐食速度への影響を、予めラボ試験により、10点のデータを用いて重回帰分析で解析した結果、各成分の影響度は同等であることが確認できた。そこで、鋼材の添加元素が腐食速度に及ぼす影響、すなわち、材料の耐食性を表すパラメータYとして、式(3)を設定した。
Y=[%Cu]+[%Ni]+[%Cr]・・・(3)
環境の腐食性を表すパラメータXおよび材料の耐食性を表すパラメータYと、腐食速度との関係をカーブフィッティングにより解析した結果、図2に示すように、X−10Yと腐食速度Zに相関関係を認めることができ、式(4)を得ることができた。
Z=0.696exp{0.0751(X−10Y)}・・・(4)
式(4)を書き直すと、Z=0.696exp(0.0751×<%S>+0.3755×<%Cl>−10×[%Cu]−10×[%Ni]−10×[%Cr])となり、a=0.696、b=0.0751、c=0.3755、d=−10、e=−10、f=−10が得られた。
このように、係数a,b,c,d,e,fは、夫々の鋼材について腐食速度と、<%S>および<%Cl>、並びに[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]との関係を調べることによって決定することができる。
次に、タンカーIIの原油タンクを構成する2種の鋼材(底板)を原油タンク用鋼材A,Bとし、夫々の原油タンク用鋼材A,Bの表面に生成した錆中のS含有量およびCl含有量(但し、油分除去後の含有量)を調べると共に、最大孔食深さ(mm)を測定により求めた。用いた原油タンク用鋼材A,Bは、前記したタンカーIの原油タンクを構成する調査用鋼材A,Bと同一成分の鋼材である。更に調査用鋼材A,Bと同じ方法で腐食速度(mm/y)を求めた。以上の結果を表2に示す。
以上の結果を、先の図2にオーバープロットした結果、式(4)を示すグラフと略一致する位置にプロットされることを確認した。
以上の結果から、原油タンクを構成する鋼材に発生している孔食の全てを計測しなくても、腐食速度を推計しようとする原油タンク用鋼材中のCu,Ni,Crの含有量、および前記原油タンク用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を調べるだけで、腐食速度Zを簡単に推計できることが確認できた。
また、原油タンクを構成する鋼材を途中で交換する場合は、対象の原油タンクに発生した錆中のS含有量およびCl含有量を調べるだけで、許容される腐食速度を満足するためのCu、Ni、Crの含有量を求めることができるため、経済的な鋼材の選定が可能である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.10%、Cu:1.0%以下(0%を含む)、Ni:1.0%以下(0%を含む)、Cr:1.0%以下(0%を含む)を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法であって、
    前記各元素の含有量が前記した範囲内にあり、且つCu,Ni,Crのうち少なくとも一つの元素の含有量が異なる複数種の調査用鋼材を用いて、
    原油タンク内の定常時の温度:20〜40℃、原油中に含まれるS含有量:0.01〜5質量%の腐食環境下における、各調査用鋼材毎の最大孔食深さと、前記腐食環境下に曝された期間を調べると共に、前記各調査用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を調べ、
    前記各調査用鋼材毎の実際の腐食速度を、(最大孔食深さ)/(腐食環境下に曝された期間)から求めた後、
    前記各調査用鋼材毎の実際の腐食速度と、前記各調査用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量、並びに前記各調査用鋼材中のCu,Ni,およびCrの含有量との関係をもとに、推計腐食速度Zを求める下記式(1)における係数a,b,c,d,e,fの値を決めておき、
    下記式(1)に、腐食速度を推計しようとする原油タンク用鋼材中のCu,Ni,Crの含有量、および前記原油タンク用鋼材に生成した錆中のS含有量およびCl含有量を代入することにより、原油タンク用鋼材の推計腐食速度Zを求めることを特徴とする原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法。
    Z=a×exp(b×<%S>+c×<%Cl>+d×[%Cu]+e×[%Ni]+f×[%Cr])・・・(1)
    但し、<%S>および<%Cl>は夫々錆中のS含有量(質量%)およびCl含有量(質量%)を表し、[%Cu]、[%Ni]および[%Cr]は夫々鋼中のCu含有量(質量%)、Ni含有量(質量%)およびCr含有量(質量%)を表す。
  2. 前記複数種の各調査用鋼材と、前記腐食速度を推計しようとする前記原油タンク用鋼材中の各元素の含有量の差が、Cで±0.05%以内、Siで±0.10%以内、Mnで±0.10%以内、Pで±0.005%以内、Sで±0.005%以内、Alで±0.010%以内である請求項1記載の原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法。
JP2013152720A 2013-07-23 2013-07-23 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法 Expired - Fee Related JP6022421B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013152720A JP6022421B2 (ja) 2013-07-23 2013-07-23 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013152720A JP6022421B2 (ja) 2013-07-23 2013-07-23 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015021933A JP2015021933A (ja) 2015-02-02
JP6022421B2 true JP6022421B2 (ja) 2016-11-09

Family

ID=52486490

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013152720A Expired - Fee Related JP6022421B2 (ja) 2013-07-23 2013-07-23 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6022421B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6635135B2 (ja) * 2017-03-24 2020-01-22 Jfeスチール株式会社 腐食センサの設計方法および腐食センサの製造方法
CN108680519A (zh) * 2018-04-11 2018-10-19 陕西省石油化工研究设计院 一种石油产品中铜片平均腐蚀速率的定量测定方法
CN114660159B (zh) * 2022-03-21 2024-04-05 中国石油化工股份有限公司 一种减缓醋酸乙烯装置精馏系统腐蚀的方法
CN114777698B (zh) * 2022-06-21 2022-08-30 南通市通州区袁灶燃气有限公司 一种储油罐腐蚀检测方法及系统

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4243863B2 (ja) * 2004-11-10 2009-03-25 住友金属工業株式会社 原油タンク用溶接継手及び原油タンク
JP5771011B2 (ja) * 2011-01-18 2015-08-26 株式会社神戸製鋼所 耐食性に優れた構造部材用鋼材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015021933A (ja) 2015-02-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2377963B1 (en) Corrosion-resistant steel material for crude oil tanker
JP6022421B2 (ja) 原油タンク用鋼材の腐食速度推計方法
JP4868917B2 (ja) 耐食性に優れた原油タンク底板用鋼材
JP4695560B2 (ja) 石油類容器用低合金鋼材の局部腐食性評価方法
Wang et al. Grooving corrosion of electric-resistance-welded oil well casing of J55 steel
JP5527228B2 (ja) 耐薬品性に優れたステンレスクラッド鋼
JP4243863B2 (ja) 原油タンク用溶接継手及び原油タンク
Priceputu et al. Delta ferrite influence in AISI 321 stainless steel welded tubes
Besghaier et al. Heat exchanger failure analysis in the simulated marine environment: Prediction of the fouling removal temperature
CN102605277A (zh) 耐腐蚀性优异的结构构件用钢材
JP4690962B2 (ja) 石油類容器用金属材料の局部腐食性評価方法
Genchev et al. Role of molybdenum in corrosion of iron‐based alloys in contact with hydrogen sulfide containing solution
EP3744872A1 (en) Steel for mooring chain, and mooring chain
EP3744871A1 (en) Net for mooring chain, and mooring chain
EP1361290B1 (en) Use of a steel for chemical tank, excellent in sulfuric acid corrosion resistance and pitting corrosion resistance
Khan et al. Development and Performance of Ochre (Anhyd. Fe2O3) Added CaO–CaF2–TiO2–SiO2 Fluxes for Welding Electrode
Prifiharni et al. Corrosion rate of low carbon steel in simulated feed water for heat exchanger in ammonia plant
JP5893923B2 (ja) 溶接部近傍の硬さ予測方法、及び溶接部近傍の保全方法
Hoffman et al. Probability-Based Corrosion Control for High Level Waste Tanks
Hoffmann et al. Pitting corrosion in the wet section of the automotive exhaust systems
Hall et al. Corrosion rate measurement using electrochemical technique
Peter et al. Corrosion effects on low carbon steel marine heat exchanger
Hollins Corrosion rate measurement using electrochemical technique
Khan et al. Electrochemical Corrosion Behavior of Spirally-welded API X-70 Line-pipe Steel in Acidic and Salt Media
Brisenmark et al. Evaluation of the Effect of Non-Metallic Inclusions on the Corrosion Resistance of Stainless Steels and Nickel-based Alloys

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150901

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160412

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160413

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160509

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160606

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20160713

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161004

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161005

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6022421

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees