JP5892579B2 - カビ培養抽出物の製造方法およびカビ - Google Patents
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Description
このペニシリウム属のカビを培養して、得られた培養液を有機溶媒により抽出する。この抽出液から1,3−ジヒドロキシベンゼン環を有する10員環マクロライドが得られることが知られている。
そして前記10員環マクロライドをヒトの疾患や動物の疾患の治療のための医薬品として使用することが提案されている。
[1]ユーロチウム属のカビを培養する培養工程と、
前記培養工程により得られたカビおよびカビの培養物を有機溶媒により抽出する抽出工程と、
前記抽出工程により得られた抽出液から有機溶媒に対する不溶分を除去する除去工程と、を少なくとも有し、
前記ユーロチウム属のカビが、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託された受託番号NITE P−1083、微生物の識別の表示ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、カビ培養抽出物の製造方法を提供するものである。
[2]ユーロチウム属のカビを培養した後、カビおよびカビの培養物からカビ培養抽出物を有機溶媒により抽出し、
前記ユーロチウム属のカビが、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託された受託番号NITE P−1083、微生物の識別の表示ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、カビ培養抽出物の抽出方法を提供するものである。
[3]独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託されたカビであって、
受託番号が、NITE P−1083であり、
微生物の識別の表示が、ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、ユーロチウム属のカビを提供するものである。
また前記ユーロチウム属のカビを培養することにより得られるカビ培養抽出物は、ガン細胞に対する細胞傷害性を有する。
本発明に使用するカビは、ユーロチウム属に属するものである。前記カビはアムステロダミ種に属するものであれば好ましい。
前記ユーロチウム属のカビは一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記26Sのリボソームとしては、例えば、前記26Sのリボソームに含まれるDNAの塩基配列の部分配列が、配列表の配列番号1に示される塩基配列と一致するものを有するものが挙げられる。
植物、動物由来のでんぷん、抽出液等、
エタノール、グリセリン等の水酸基含有化合物等を挙げることができる。
また培養に使用するリン源としては、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等を挙げることができる。
また培養に使用するカリウム源としては、塩化カリウム、硝酸カリウム等を挙げることができる。
前記ユーロチウム属のカビの培養を行うときの時間は、6時間〜60日の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜30日の範囲であり、さらに好ましくは3〜20日の範囲である。
この様な親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル類等が挙げられる。
取り扱い性の面から本発明に使用する有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類であればより好ましい。
この抽出操作により、前記ユーロチウム属のカビと、前記ユーロチウムのカビを培養することにより得られた培養物とから有機溶媒に溶解する成分が抽出される。
前記混合物を攪拌する操作は、例えば、前記混合物を含む抽出用容器を回転させる方法、前記混合物を含む抽出用容器に磁気式または機械式の攪拌手段を設置して混合物を混ぜる方法、前記混合物を含む抽出用容器を震盪する方法等が挙げられる。
なお、前記震盪する方法には、前記混合物に対して超音波により振動を加える方法が含まれる。
前記有機溶媒に溶けない成分を除去する方法としては、例えば、遠心分離、濾過等の方法を挙げることができる。
前記混合物から有機溶媒に溶けない成分を除去することにより、カビ培養抽出物の有機溶液を得ることができる。
前記有機溶媒を留去する方法に限定はなく、例えば、前記カビ培養抽出物の有機溶液を常圧下または減圧下に前記有機溶媒の沸点以上の温度に加温する方法等を挙げることができる。
前記ガン細胞としては、例えば、肺癌患者由来のリンパ球細胞とリンパ腫細胞であるNAT−30細胞とを融合して作製したハイブリドーマ、ヒト大腸癌由来細胞、マウス大腸癌由来細胞、ヒト末梢血リンパ球等の一種もしくは二種以上が挙げられる。
ここで、肺癌患者由来のリンパ球細胞とリンパ腫細胞であるNAT−30細胞とを融合して作製したハイブリドーマとしては、HB4C5、HF10B4等を挙げることができる。HB4C5は、培養及び細胞活性の測定が容易であるという理由から好ましい。
かつお節からユーロチウム属のカビをマルトモ社の研究所にて採取した。この採取したユーロチウム属のカビ(以下、「No.145株」という)をビーズストックにより冷凍保存した。
ビーズストックにはイワキ社製のマイクロバンクを用いた。No.145株を下記に示す方法により培養し、保存サンプルとした。なおマイクロバンクを用いたNo.145株の保存温度はマイナス40℃である。
(1)生育温度
25〜30℃の範囲で良好に生育する。
(2)生育pH
pH3.0〜pH8.0の範囲で生育が可能である。
(3)培地選択性
寒天培地上で、ツァペック・ドッグス培地、PDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)、MY20培地(ぶどう糖200g、ペプトン5g、麦芽エキス3g、酵母エキス3gおよび蒸留水1リットルの組成)、サブロー培地で生育が可能であったが、コーンミール培地で生育させることはできなかった。
(4)顕微鏡を使用した形態観察結果
ホウキ状に配列した梗子をもち、その先端に分生子の数珠上の連鎖を生じる形態が観察された。
(5)MY20寒天培地上でのコロニーの様子
観察開始初期には白色の毛足の長いコロニーを形成した。その後、次第に黄色の毛足の短いコロニーへと変化することが確認された。
前記No.145株をMY20(ぶどう糖200g、ペプトン5g、麦芽エキス3g、酵母エキス3gおよび蒸留水1リットルの組成)を使用した寒天培地の培養プレートに植菌し、30℃で7日間培養を行った。
次に前記培養プレート内のシングルコロニーを回収し、新しいMY20を使用した寒天培地の培養プレートに移した。これを同様に30℃で7日間(合計14日間)培養を行った。
なお目視観察により、明らかに生育が遅いものについては、合計14日間培養を行ったものと同様となるまで培養期間を延長した。
前記No.145株の培養プレートをスパチュラで崩しながら試験管に詰めてメタノールを添加した。
次にシリコーンにより前記試験管に栓をして、室温で30分間超音波を加えて抽出を行った。なお超音波の処理には市販の超音波洗浄機を使用した。
次にメタノールを含む混合物を濾過し、濾過液を回収した。
濾過により得られたメタノールに対する不溶物を試験管に戻し、再度新しいメタノールを添加し、数回試験管を振った。この混合液を再度濾過し、後に得られた濾過液を先に得られた濾過液と合わせた。
次にロータリーエバポレーターにて、合わされた濾過液からメタノールを留去し、カビ培養抽出物1(No.145株)を得た。
試験細胞として下記の細胞を使用した。
・正常細胞:マウス胎児由来繊維芽細胞(日本SLC社より購入したBALB/cマウスを交配し、母胎より摘出した胎児より調製した。)
・ガン細胞:HeLa(ヒト子宮頸ガン、American Typical Type Collectionより購入した。)、Colon26(マウス大腸ガン、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより分譲されたもの。)、HepG2(ヒト肝臓ガン、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 研究資源バンクより分譲されたもの。)
それぞれの培養プレートを30℃で48時間培養した。
生存率の測定は、測定用溶媒のみを使用した場合の吸光光度を100%として行った。
結果を図1〜4に示す。
図1は、正常細胞であるマウス胎児由来繊維芽細胞に対するカビ培養抽出物の濃度と生細胞数との関係を示したグラフである。
図2は、ヒト子宮頸ガン細胞であるHeLaに対するカビ培養抽出物の濃度と生細胞数との関係を示したグラフである。
図3は、ヒト肝臓ガンであるHepG2に対するカビ培養抽出物の濃度と生細胞数との関係を示したグラフである。
図4は、マウス大腸ガン細胞であるColon26に対するカビ培養抽出物の濃度と生細胞数との関係を示したグラフである。
なお各グラフの添加濃度(%)は、細胞培地に添加したカビ培養抽出物の終濃度を容積比として示したものである。
また図2〜4により、カビ培養抽出物1のみが特異的にガン細胞に対して細胞傷害を有することが分かる。
特にカビ培養抽出物1の添加濃度が0.1%以上でガン細胞は著しく減少し、0.5%でほぼ死滅することが分かる。
なおゲノム抽出は、塩化ベンジル法で実施した。またシーケンス解析はダイターミネータ法により、Applied Biosystems社製の3130 Generic analyzerを使用して実施した。
株菌の同定はリボソマールDNA領域を対象として行った。
得られたデータをデータベース(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)と比較した。
その結果、最も近い菌株としてEurotium amstelodami strain UWFP1115(菌株情報データベース番号:GenBank Accession no. AY213699)が存在し、相同性は99%であることが判明した。
実施例1の場合で使用したNo.145株に代えて、かつお節枯節に育成したカビをマルトモ社の研究所にて単離した。この単離されたカビ(以下、「MK82株」という)を使用した他は全く同じ条件で実験を行った。
結果を図1〜4に示す。カビとしてMK82株を使用した場合、カビ培養抽出物にはガン細胞に対する濃度依存性が認められないことが判明した。
実施例1の場合で使用したNo.145株に代えて、かつお節枯節に育成したカビをマルトモ社の研究所にて単離した。この単離されたカビ(以下、「No.115株」という)を使用した他は全く同じ条件で実験を行った。
結果を図1〜4に示す。カビとしてNo.115株株を使用した場合、カビ培養抽出物にはガン細胞に対する濃度依存性が認められないことが判明した。
実施例1の場合で使用したNo.145株に代えて、かつお節枯節に育成したカビをマルトモ社の研究所にて単離した。この単離されたカビ(以下、「No.125株」という)を使用した他は全く同じ条件で実験を行った。
結果を図1〜4に示す。カビとしてNo.125株を使用した場合、カビ培養抽出物にはガン細胞に対する濃度依存性が認められないことが判明した。
実施例1の場合で使用したNo.145株に代えて、かつお節枯節に育成したカビをマルトモ社の研究所にて単離した。この単離されたカビ(以下、「No.135株」という)を使用した他は全く同じ条件で実験を行った。
結果を図1〜4に示す。カビとしてNo.135株を使用した場合、カビ培養抽出物にはガン細胞に対する濃度依存性が認められないことが判明した。
2 比較例1
3 比較例2
4 比較例3
5 比較例4
Claims (3)
- ユーロチウム属のカビを培養する培養工程と、
前記培養工程により得られたカビおよびカビの培養物を有機溶媒により抽出する抽出工程と、
前記抽出工程により得られた抽出液から有機溶媒に対する不溶分を除去する除去工程と、を少なくとも有し、
前記ユーロチウム属のカビが、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託された受託番号NITE P−1083、微生物の識別の表示ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、カビ培養抽出物の製造方法。 - ユーロチウム属のカビを培養した後、カビおよびカビの培養物からカビ培養抽出物を有機溶媒により抽出し、
前記ユーロチウム属のカビが、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託された受託番号NITE P−1083、微生物の識別の表示ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、カビ培養抽出物の抽出方法。 - 独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに対し寄託されたカビであって、
受託番号が、NITE P−1083であり、
微生物の識別の表示が、ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami) MK145である、ユーロチウム属のカビ。
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