<実施形態>
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係るシート搬送装置10を備えた画像形成装置100を正面側からみた概略構成図である。ここで、正面側とは、タッチパネルや操作キーなどの操作手段が設けられており、ユーザが画像形成装置100を操作するときに相対する面である。これに対して、背面側とは正面側とは反対方向の面である。画像形成装置100は、大別して、シート搬送装置10と、給紙部20と、画像形成部30と、画像読取部40とで構成される。シート搬送装置10は、原稿として読取られる用紙を画像読取部40の読取り位置まで搬送し、画像読取後の用紙を排出する。原稿として読取られる用紙は、本発明に係るシートの一例である。給紙部20は、画像形成部30における画像形成位置まで用紙を給紙する。画像形成部30は、帯電、露光、現像、転写、定着といった電子写真方式の各工程を経て、給紙部20から給紙された用紙に画像を形成する。画像形成部30は、本実施形態においてはカラーの画像を形成する手段であるが、モノクロの画像を形成する手段であってもよい。画像読取部40は、シート搬送装置10において読取り位置まで搬送されてきた原稿上の画像を読取り、読取り結果を図示しない制御部に供給する。制御部は必要に応じて読取り結果を画像形成部30に供給し、画像形成部30は、供給された読取り結果に応じた画像を用紙に形成する。画像読取部40は、本発明に係る画像読取手段の一例である。また、少なくともシート搬送装置10と画像読取部40とを備える機器は、本発明に係る画像読取装置の一例である。
シート搬送装置10は、原稿積載部11と、排出用紙積載部12と、搬送部13とを備える。原稿積載部11は、原稿として読取られる用紙を載せ置く皿状部材である。搬送部13は、複数のローラで構成されており、これらのローラの回転により原稿を搬送する。シート搬送装置10は、例えば蝶番などの図示しない支持手段を介して、画像読取部40の画像読取面410に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能に支持されている。シート搬送装置10のうち、画像読取部40と接触する面の一部には、スリットガラス14が嵌めこまれている。搬送部13によって原稿がスリットガラス14上に搬送されると、画像読取部40によって、スリットガラス14を透過して、原稿上の画像の読取りが行われる。画像の読取りが行われた原稿は、搬送部13によって排出用紙積載部12に排出される。
給紙部20は、用紙を収納する用紙収納部21と、用紙収納部21に収納された用紙を画像形成部30における画像形成位置まで搬送する複数のローラから構成される給紙手段22とを備える。
画像形成部30は、いわゆる中間転写方式によって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを用いて画像を形成するものである。画像形成部30は、感光体ドラム31と、帯電器32と、露光装置33と、現像器34と、トナーカートリッジ35Y、35M、35C、35Kと、中間転写ベルト36と、定着装置37とを備える。なお、図1に示す構成要素のうち、符号の末尾にアルファベット(Y、M、C又はK)を付したものは、当該構成要素が上記4色のいずれかに対応するものであることを示している。これらの構成要素は、使用するトナーの色が異なるものの、主要な構成や機能は共通している。そこで、以下においては、これらの構成要素の説明において、互いを区別する必要がない場合には、「トナーカートリッジ35」というように、符号の末尾を省略してこれらを総称するものとする。
感光体ドラム31は、表面に光導電膜を積層して軸を中心に回転する円筒状の部材であり、表面に形成された静電潜像を保持する像保持体である。帯電器32は、感光体ドラム31を決められた帯電電位に帯電させる。露光装置33は、感光体ドラム31を露光して静電潜像を形成する。現像器34は、トナーを静電潜像に供給することで、この静電潜像を現像して感光体ドラム32の表面に画像を形成する。トナーカートリッジ35は、各色のトナーを収容し、これを必要に応じて現像器34に供給する。中間転写ベルト36は、感光体ドラム31から転写されたトナー像を保持する手段である。中間転写ベルト36は、複数の支持ロールにより支持されて、その外周面は図中の矢印A1が示す方向に周回しながら移動する。定着装置37は、中間転写ベルト36から画像が転写された用紙に対して加熱及び加圧を行うことで、この画像を用紙に定着させる。感光体ドラム31と、帯電器32と、露光装置33と、現像器34と、中間転写ベルト36と、定着装置37は、本発明に係る画像形成手段の一例である。また、画像形成装置100のうちシート搬送装置10を除く部分を、複写装置50という。
図2は、シート搬送装置10及び複写装置50のハードウェア構成を表すブロック図である。シート搬送装置10は、制御部101と、記憶部102と、通信部103とを備える。各部はバスによって電気的に接続されている。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び時刻を計測する計時部を有する。CPUは、ROM又は記憶部102に記憶されている制御プログラムを実行することにより制御部101と接続されている各部を制御する。制御部101は、本発明に係る制御手段の一例である。記憶部102は、例えばフラッシュメモリのような記憶装置であって、例えば制御プログラムを記憶する。通信部103は、制御部101の制御の下で、画像形成装置100本体の通信部183と通信を行う。
複写装置50は、制御部181と、記憶部182と、通信部183と、UI部184と、画像形成部30とを備える。各部はバスによって接続されている。制御部181は、CPU、ROM及びRAMを有する。CPUは、ROM又は記憶部182に記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部181と接続されている各部を制御する。記憶部182は、例えばハードディスクのような記憶装置であって、例えば制御プログラムや画像データを記憶する。通信部183は、制御部181の制御部の元で、シート搬送装置10の通信部103や、ユーザの操作する通信端末と通信を行う。UI(User Interface)部184は、例えばタッチパネルや複数のキーを備え、ユーザの操作に基づく指示を制御部181に通知する。制御部181は、UI部184から通知された指示に従って処理を行う。画像形成部30は、上述したとおり、画像データに基づく画像を用紙に形成する。
図3は、シート搬送装置10における搬送部13を正面側から拡大した模式図である。以降、図3において本実施形態に係る要部についてのみ説明を行い、その他の部分については説明を省略する。搬送部13は、ピックアップローラ111と、フィードローラ112と、排出ローラ113と、従動ローラ114と、通常搬送路130と、連係搬送路131と、反転搬送路132と、上部搬送ガイド135と、下部搬送ガイド136とを備える。さらに、搬送部13は、図3に図示するような複数のローラを備えるほかに、これらのローラを駆動させるための駆動機構(図3において非図示)も備えているが、説明の便宜上、まず、搬送部13の要部と各ローラについて説明を行ってから、駆動機構について説明を行う。
通常搬送路130は、原稿が、ピックアップローラ111からフィードローラ112に向けて搬送された後に、複数のローラによってスリットガラス14の位置まで搬送されて、この位置で原稿上の画像が読取られた後に、排出ローラ113の位置まで搬送されるときの経路である。スリットガラス14の位置は、原稿上の画像が画像読取部40によって読取られる読取り位置である。一方、連係搬送路131は、通常搬送路130において画像読取り位置よりも用紙搬送方向の上流側の或る位置(接続箇所L2)とその下流側の或る位置(接続箇所L1)とを結んだ搬送路である。つまり、通常搬送路130において、接続箇所L2は、接続箇所L1よりも用紙搬送方向における上流側に位置する。以降において、単に「用紙搬送方向」といった場合、通常搬送路130において原稿が排出ローラ113に向けて搬送される方向を指す。反転搬送路132は、用紙搬送方向において接続箇所L1よりも下流に向かって位置する搬送路であり、反転搬送路132において用紙の搬送方向が反転される。
ピックアップローラ111は、通常搬送路130において、用紙搬送方向における最上流に位置し、フィードローラ112は、通常搬送路130において、ピックアップローラ111よりも用紙搬送方向下流側に位置し、駆動源が発生させた駆動力によって回転する。ピックアップローラ111とフィードローラ112とには無端ベルトが掛け渡されており、フィードローラ112の回転に伴いピックアップローラ111も回転し、原稿積載部11に置かれている原稿を搬送部13の内部に引き込む。フィードローラ112は、ピックアップローラ111により引き込まれた原稿を搬送する。フィードローラ112には、後述する電磁クラッチが接続されており、この電磁クラッチにより、駆動源からの駆動力の伝達が制御される。以降において、電磁クラッチにおける電磁石のオンオフ制御により、電磁クラッチの駆動側を非駆動側に接続した状態を、電磁クラッチを接続状態にさせるといい、電磁クラッチの駆動側を非駆動側に接続しない状態を、電磁クラッチを非接続状態にさせるという。つまり、この電磁クラッチが非接続状態であるときには、フィードローラ112は回転せず、それに伴いピックアップローラ111も回転しない。ピックアップローラ111は、本発明に係るローラの一例である。
排出ローラ113は、反転搬送路132上に位置し、駆動源が発生させた駆動力によって回転して原稿を搬送する。排出ローラ113は、画像読取部40によって画像の片面読取り、もしくは両面読取りが完了した原稿を排出用紙積載部12に排出するときは、正転方向に回転する。排出ローラ113は、画像の両面読取り時において原稿を反転させるときは逆転方向に回転してこの原稿を連係搬送路131に沿って搬送する。排出ローラ113の回転方向は、制御部101が駆動力の回転方向を制御することにより切り替えられる。従動ローラ114は、排出ローラ113と対向する位置に設けられ、排出ローラ113の回転に伴って従動で回転する。
上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136は、通常搬送路130に沿って原稿の搬送方向を案内する案内部材である。原稿は、搬送されるときに、上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136によりその進行方向を案内される。上部搬送ガイド135は、鉛直方向において下部搬送ガイド136の上側に位置している。下部搬送ガイド136は、上部搬送ガイド135よりも用紙搬送方向の上流側で、通常搬送路130に沿って原稿の搬送を案内する。上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136は、排出ローラ113から遠い側の端部どうしが接する位置において、連結部137によってお互いに連結されている。
図4は、上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136を正面側からみた斜視図である。上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136は、連結部137に近い側の端部において、ともに櫛歯形状を有している。連結部137においてこの櫛歯どうしが噛み合った状態で、奥行き方向に延びる回転軸により上部搬送ガイド135及び下部搬送ガイド136が連結されている。これにより、上部搬送ガイド135は、連結部137における回転軸を中心として下部搬送ガイド136から遠ざかる方向に回転可能である。例えば、シート搬送装置10において紙詰まりが発生すると、ユーザは、上部搬送ガイド135を下部搬送ガイド136から遠ざかる方向に回転させて、上部搬送ガイド135を開いて通常搬送路130を外部に露出した状態にし、詰まっている原稿を取り除く。シート搬送装置10が開かれた状態では、制御部101は、モータ140および電磁クラッチ143への電力供給を停止しており、電磁クラッチ143における電磁石がオフに制御され、電磁クラッチ143が非接続状態となる。次に、駆動機構について説明する。
図5は、搬送部13の駆動機構を正面側からみたときの拡大図である。この図では、駆動機構を構成するロールやギアなどの各部材が透過的に示されている。以降、図5において本実施形態と係る要部についてのみ説明を行い、その他の部分については説明を省略する。図5において、各部材の奥行き方向の位置を表現するために、奥行きに段階を設けて、各段階の奥行き位置にある部材を、それぞれ異なる形状の線で表す。まず、搬送部13を正面側からみて一番奥に位置する部材を実線で表す。また、実線で表された部材よりも一段階手前側に位置する部材を破線で表す。また、破線で表された部材よりもさらに一段階手前側に位置する部材を一点鎖線で表す。また、一点鎖線で表された部材よりもさらに一段階手前側に位置する部材を二点鎖線で表す。これらそれぞれの形状の線で表される駆動機構の部材は、各ローラより背面側に位置している。また、各ローラを、駆動機構の部材よりも太い実線で表す。なお、図3で説明済みである部分については説明を省略する。
搬送部13は、駆動機構として、モータ140、大径ギア141、小径ギア142、電磁クラッチ143及びギア144、145、146を備える。なお、図に示すモータ140は、実際にはモータの駆動軸に直結されたギアを表現している。大径ギア141及び小径ギア142は、同一の回転軸を有しており、例えば2段ギアである。また、電磁クラッチ143及びギア144は、同一の回転軸を有しており、例えば2段ギアである。電磁クラッチ143は、電磁石の作用で駆動側と接離するギアを有しており、このギアが、各ギアと噛み合うようになっている。ギア146は、フィードローラ112の回転軸と接続されている。ギア146は、接続されたフィードローラ112に対し、モータ140が発生させた駆動力を伝達する
モータ140は、例えばステッピングモータであり、正転方向と、正転方向と逆方向の逆転方向とに選択的に回転して駆動力を発生する。ここで、モータ140が正転方向に回転する場合を例に、各ローラ及びギア間における駆動力の伝達を説明する。モータ140が正転方向に回転するとき、モータ140の駆動軸に直結されたギアが、図示する矢印R1方向に回転する。これにより、モータ140のギアと噛み合う大径ギア141が矢印R2方向に回転し、これに伴い小径ギア142も同じ方向であるR3方向に回転する。小径ギア142は、電磁クラッチ143のギアと噛み合っている。これにより、電磁クラッチ143の駆動側歯車は、矢印R4方向に回転する。電磁クラッチ143は、ギア144への駆動力の伝達を制御する。すなわち、電磁クラッチ143の駆動側歯車が被駆動側と離れている状態(つまり非接続状態)にあるとき、駆動力はギア144に伝達されない。一方、電磁クラッチ143の駆動側歯車が被駆動側と接続されている状態(つまり接続状態)にあるとき、駆動力はギア144に伝達され、ギア144は矢印R5方向に回転する。ギア144はギア145と噛み合い、ギア145は、ギア146と噛み合っている。これにより、ギア145が矢印R6方向に回転し、ギア146が図示する矢印R7方向に回転する。ギア146は、駆動力をフィードローラ112に伝達し、フィードローラ112は、矢印R8方向であって、原稿を搬送する方向に回転する。
図6は、駆動機構を正面側からみた斜視図である。一方、図7は、フィードローラ112及びピックアップローラ111を鉛直方向にみた平面図である。図6では、見やすいように一部のギアの歯を省略して表している。ギア146に接続された回転軸151aと、フィードローラ112に接続された回転軸151bとは、ギア146とフィードローラ112とに挟まれる位置に設けられたトルクリミッタ152の位置において、同軸の回転軸151として接続されている。トルクリミッタ152は、回転軸151aのトルクが予め決められた設定値を超える場合に、そのトルクの回転軸151bへの伝達を制限又は遮断する装置である。これにより、モータ140からフィードローラ112に伝達される駆動力が制御される。また、トルクリミッタ152とフィードローラ112とに挟まれる位置において、フィードローラ112の回転軸151bとピックアップローラ111の回転軸153とを覆うように、箱型で中空状のベルト収納フレーム154が設けられている。ベルト収納フレーム154の内部において、フィードローラ112の回転軸151bとピックアップローラ111の回転軸153とには、ベルト155が掛け渡されている。これにより、回転軸151bの回転に伴う駆動力がベルト155を介して回転軸153に伝達されて、ピックアップローラ111がフィードローラ112と同じ方向に回転する。
ピックアップローラ111は、モータ140が正転方向に回転するときに、フィードローラ112の回転軸151bを中心した支持フレーム156の回転に伴って、回転軸151bを中心として矢印Rk方向に円運動(後述)を行うことで、鉛直方向に下降して原稿と接触する位置に移動する。さらに、このとき、ピックアップローラ111は、フィードローラ112の回転が伝達されて回転することで、接触している原稿の搬送を行う。また、ピックアップローラ111は、モータ140が逆転方向に回転するときに、フィードローラ112の回転軸151bを中心した支持フレーム156の回転に伴って、回転軸151bを中心として矢印Rj方向に円運動を行うことで、鉛直方向に対して上昇して、原稿と接触しない位置に移動する。以降において、ピックアップローラ111が、回転軸151bを中心にして円運動を行った結果、鉛直方向に下降して原稿と接触する位置にあることを、ピックアップローラ111が下がった状態という。下がった状態におけるピックアップローラ111の位置は、本発明における第2の位置の一例である。また、以降において、ピックアップローラ111が、回転軸151bを中心にして円運動を行った結果、鉛直方向に対して上昇して原稿と接触しない位置にあることを、ピックアップローラ111が上がった状態という。上がった状態におけるピックアップローラ111の位置は、本発明における第1の位置の一例である。
ギア146から遠い側の端部において、フィードローラ112の回転軸151bとピックアップローラ111の回転軸153とには、ピックアップローラ111を回転可能に支持するとともに、フィードローラ112の回転軸151bを中心として回転可能な支持フレーム156が設けられている。支持フレーム156は、本発明に係る支持部材の一例である。フィードローラ112の回転に伴って、支持フレーム156もフィードローラ112の回転軸151bを中心として回転し、これにより、回転軸151bを中心として円運動する力がピックアップローラ111に働く。これにより、支持フレーム156は、上述した第1の位置から第2の位置までを往復移動可能となっている。このように、大径ギア141、小径ギア142、電磁クラッチ143及びギア144、145、146により構成される移動機構が、モータ140の逆転方向の回転に応じて支持フレーム156を第2の位置から第1の位置へと移動させる。支持フレーム156において回転軸153に近い側の端部には、後述するゲートロック部材が引っ掛かるためのストッパ157が設けられている。また、支持フレーム156において、フィードローラ112とピックアップローラ111とに挟まれる位置には、鉤状部材160が設けられている。鉤状部材160は、鉛直方向に対して上側に延伸した先端に、鉤状の突起部161を有する。鉤状部材160は、上部搬送ガイド135に取り付けられたロック部材170と引っ掛かりあうことで、ピックアップローラ111が鉛直方向に対して持ち上がった状態を維持するものである。
図8は、ロック部材170及び鉤状部材160を表す側面図である。ロック部材170は、上部搬送ガイド135に取り付けられた端部から鉛直方向に延伸する。また、ロック部材170の延伸する部分において、鉤状部材160に向かって折れ曲がった箇所を溝部176という。ロック部材170における溝部176に、鉤状部材160の突起部161が引っ掛かるようになっている。
原稿の搬送が開始される前であってユーザが原稿を原稿積載部11にセットするタイミングにおいて、ピックアップローラ111が所定の位置より下がった状態にあると、原稿先端がピックアップローラ111に接触し適切な位置に原稿をセットできないことがある。そこで、本実施形態では、原稿の搬送が行われていない期間は、ロック部材170と鉤状部材160とが引っ掛かりあうことにより、ピックアップローラ111は所定の位置まで上がった状態を維持する。これにより、ピックアップローラ111の下方に原稿上面が設置されるようにユーザが原稿を原稿積載部11に正しくセットしやすいようになっている。
ロック部材170は、鉤状部材160と引っ掛かりあう側と反対側の端部において、回転軸151及び回転軸153に沿った方向に延びる軸171を有する。軸171の両端は、上部搬送ガイド135に設けられた軸受けに対して回転可能に取り付けられている。また、軸171には、コイルバネ172が巻きつけられている。コイルバネ172の一端部は軸171と直交する方向へ延伸しており、そのバネ先端173は、上部搬送ガイド135に向かって鉤状に曲がって、上部搬送ガイド135と接触している。ロック部材170に矢印Ra1方向の力が加えられると、軸171が回転し、それに伴い軸171に巻きつけられたコイルバネ172にも矢印Ra1方向の力が作用する。そして、この矢印Ra1方向の力によって、コイルバネ172のバネ先端173が上部搬送ガイド135に押し付けられることで、バネ先端173は上部搬送ガイド135から反作用の力を受ける。その結果、コイルバネ172が巻きつけられた軸171及び軸171に接続して設けられたロック部材170には、矢印Ra2方向の力が作用することになる。つまり、コイルバネ172は、ロック部材170を、搬送方向下流側の方向であって、上部搬送ガイド135に近づける方向に作用する力に対して、反対方向に抵抗する力を生じさせる。このように、鉤状部材160とロック部材170とが引っ掛かりあったときに、ロック部材170について矢印Ra1方向に働く力に対して、矢印Ra2方向に反作用の力が働くことで、鉤状部材160とロック部材170とがお互いを押し付け合うこととなる。
このように、鉤状部材160が、ロック部材170と引っ掛かりあうことで、ピックアップローラ111が原稿から離れた状態で支持フレーム156が保持される。鉤状部材160、突起部161、ロック部材170、軸171、コイルバネ172、バネ先端173及び溝部176は、本発明に係る保持手段の一例である。保持手段は、支持フレーム156に作用する重力に抗って、この支持フレーム156を第1の位置で保持するものである。以降において、鉤状部材160及びロック部材170の双方を指してロック機構という。また、以降において、鉤状部材160及びロック部材170が引っ掛かりあった状態のことを、ロック機構がロックされた状態という。また、以降において、鉤状部材160及びロック部材170が引っ掛かりあっていない状態のことを、ロック機構が解除された状態という。
図9は、ロック機構がロックされている状態を表す断面図である。制御部101は、初期動作、または、原稿の搬送が終了した後における次の原稿の搬送に向けた動作として、ピックアップローラ111が上がった状態となるように、モータ140の回転方向を逆転方向に変更する。ここで、初期動作とは、例えば画像形成装置100の電源が投入された直後や、紙詰まりなどのエラーが解消された直後に行われる動作である。モータ140の回転方向が逆転方向に変更されることにより、フィードローラ112が矢印Rb1方向に回転し、これに伴い、支持フレーム156が矢印Rb1方向回転することで、支持フレーム156に支持されたピックアップローラ111が矢印Rc1方向に円運動を行う。この結果、鉤状部材160が矢印Rc1方向に移動して、鉤状部材160の突起部161が、ロック部材170において鉤状部材160と相対する面に設けられた溝部176と引っ掛かりあうことで、ロック機構がロックされて、ピックアップローラが上がった状態となる。図9に示すような、上がった状態におけるピックアップローラ111の位置は、本発明における第1の位置の一例である。溝部176を形成する一方の斜面と他方の斜面とがなす二面角は、直角よりも大きな角度となるように設計されている。また、突起部161は、正面側からみて三角形となる形状を有しており、その下面162が溝部176に引っ掛かるようになっている。このように、ロック機構がロックされる瞬間またはロックが解除される瞬間における溝部176および突起部161の接触面が、ピックアップローラ111の円運動の方向に対して垂直でないことにより、突起部161が溝部176に引っ掛かるときに、抵抗が少なく引っ掛かりやすいとともに、突起部161が溝部176から外れるときにも、抵抗が少なく外れやすいものとなっている。
また、ロック部材170は、溝部176から鉛直方向の成分を持つ方向に延伸する部位である側面部177を有する。この側面部177の長さは、突起部161の下面162が、側面部177に接触して滑って溝部176に向かって移動することで、突起部161が溝部176に引っ掛かりやすくなるような長さに決められている。また、ロック機構においてロックを行う側である鉤状部材160に対して、ロックされる側であるロック部材170が、ピックアップローラ111の円運動における回転中心側に位置する。これにより、ロック機構が解除されるとき、すなわち、ピックアップローラ111が矢印Rc2方向に円運動するときに、鉤状部材160からロック部材170にかかる力の向きが回転方向に沿うようになるため、この力に対する抵抗が生じず、スムーズにロックが解除されることになる。
また、下部搬送ガイド136においてフィードローラ112よりも用紙搬送方向上流側であってピックアップローラ111よりも用紙搬送方向下流側には、原稿積載部11に原稿を適切な位置にセットできるように、原稿先端のセット位置の基準となるゲート部材200が設けられている。ゲート部材200は、図示しないバネを有しており、用紙搬送方向の力を受けると、用紙搬送方向に倒れて用紙搬送路が開かれた状態とする。また、ゲート部材200は、用紙搬送方向の力を受けていないときには、バネの力を受けて水平方向に対して立ち上がった状態となる。この立ち上がった状態において、ゲート部材200が、後述するゲートロック部材190と引っ掛かりあうことで、用紙搬送、つまり原稿をセットする時にかかる力が働いても倒れない構成となっている。
ゲート部材200におけるゲート部材先端201は、用紙搬送方向に向かって鉤状に折れ曲がっている。ゲートロック部材190は、棒状の部材であり、フィードローラ112に近い側の一端に第1の鉤部191を有するとともに、フィードローラ112から遠い側の他端に第2の鉤部192を有する。ゲートロック部材190は、その長手方向の中ほどに回転軸151及び回転軸153と沿った方向に延びる軸193を有している。軸193は、上部搬送ガイド135に設けられた軸受け139に嵌められており、ゲートロック部材190は上部搬送ガイド135に対して回転可能となっている。
鉤状部材160の突起部161とロック部材170の溝部176とが引っ掛かりあった状態を保持する際の保持力は、ピックアップローラ111等がその自重により鉛直方向に引っ張られることで鉤状部材160の突起部161とロック部材170の溝部176とを離そうとする力よりも大きい。一方、この保持力は、モータ140が正転方向(図示する矢印Rb2方向)に回転して、ピックアップローラ111が矢印Rc2方向に円運動を行うことで、鉤状部材160の突起部161とロック部材170の溝部176とを離そうとする力よりも小さい。換言すれば、この保持力は、支持フレーム156が保持手段によって保持された状態から保持されない状態へと移ろうとするときの力よりも小さい。従って、例えば初期動作時等に、モータ140が逆転方向に回転することでピックアップローラ111が上がった状態となって、鉤状部材160とロック部材170によるロック機構がロックされたときに、ピックアップローラ111の自重によりロックが解除されることがない。一方、原稿の搬送が行われるときには、モータ140が正転方向に回転することで、回転軸151bにかかるトルクによりロック機構のロックが解除されて、ピックアップローラ111が下がった状態となる。
図10は、ロック機構が解除されている状態を表す側面図である。例えば、ユーザが、コピー開始やスキャン開始のボタンを押下して、原稿の搬送が開始されるときに、上述したように、モータ140が正転方向に回転することで、回転軸151bにかかるトルクによってロック機構のロックが解除されて、ピックアップローラ111が下がった状態となる。図10に示すような、下がった状態におけるピックアップローラ111の位置は、本発明における第2の位置の一例である。このとき、ピックアップローラ111の円運動に伴って、支持フレーム156におけるストッパ157が、ゲートロック部材190の第2の鉤部192に引っ掛かってこれを押し下げることにより、ゲートロック部材190が軸193を中心にして矢印Rd1方向に回転する。この結果、ゲートロック部材190の第1の鉤部191が、ゲート部材200のゲート部材先端201から外れる。この状態で、ゲート部材200が搬送される原稿から搬送方向の力を受けると、第1の鉤部191とゲート部材先端201との引っ掛かりが解消されているため、ゲート部材200が用紙搬送方向に倒れ原稿の搬送が妨げられることはない。
ここで、本実施形態においては、ロック機構の保持力は、ピックアップローラ111の自重には耐え得る設計となっているが、ピックアップローラ111を下がった状態とするときにロックが解除されやすいように構成している都合上、外部からの衝撃や振動により望ましくないタイミングでロック機構が解除されることがある。例えば、上述したように、シート搬送装置10は、画像読取部40の画像読取面410に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能に支持されているが、シート搬送装置10が画像読取面410に近づいて、その画像読取面410を塞いだときの衝撃で、ロック機構が解除されてしまうことがある。このときの衝撃によりピックアップローラ111を鉛直方向に円運動させようとする力は、ロック機能の保持力よりも強い外力の一例である。シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだときの状態は、ユーザの指示により原稿の搬送が開始され得る状態であるため、ピックアップローラ111は所定の位置まで上がった状態であることが望ましい。これに対して、ロックが解除されてしまうと、原稿積載部11に原稿をセットする際にユーザが手作業でピックアップローラ111を上げる手間が生じる場合がある。そこで、画像形成装置100は次のような構成および動作になっている。
図11は、シート搬送装置10が画像読取面410から離れた状態を表す側面図である。この図では、X軸正方向側から負方向側へと画像形成装置100を観察している。シート搬送装置10は、画像形成装置100の背面側、すなわちY軸正方向側の端部において、支持手段300によって、画像読取面410に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能に支持されている。支持手段300は、ここでは、例えばヒンジである。また、画像読取部40の上面である画像読取面410のうち、支持手段300に近い位置には、スイッチ310が設けられている。スイッチ310は、画像読取面410よりも上方に突出している状態から下方に押下されることで、シート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐ直前の状態を検知する。シート搬送装置10が画像読取面410に近づいてその画像読取面410を塞ごうとするときには、シート搬送装置10の下面が、画像読取面410に近づいてスイッチ310の上端と接触する。そしてシート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐ直前のときに、シート搬送装置10の下面がスイッチ310を押下して、スイッチがオンとなる。このとき、スイッチ310は、制御信号を制御部101に供給する。この制御信号が制御部101に供給されたとき、シート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐ直前の状態にあることを意味している。つまり、スイッチ310は、シート搬送装置10が画像読取面410に近づく方向に移動していることを検知する検知手段の一例である。以降において、スイッチ310が、押下されてオン状態となることで、シート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐ直前の状態にあることを検知することを、「Close直前の状態を検知する」という。
図12は、シート搬送装置10が画像読取面410に近づく方向に移動するときに制御部101が行う処理の手順を示すフローチャートである。スイッチ310は、予め決められた周期で、Close直前の状態となっていないかを判定する。ここで、上記予め決められた周期とは、例えば2msec(ミリ秒)毎である。スイッチ310によりClose直前検知の通知を受けていない間は(ステップS10:NO)、制御部101は待機する。一方、ユーザが、シート搬送装置10を画像読取面410に対して近づけるときに、シート搬送装置10の下面がスイッチ310に接触してこれを押下して、Close直前の状態が検知されると、スイッチ310は、制御信号を制御部101に供給する(ステップS10;Yes)。制御部101は、この制御信号を受け取ると、計時部に時刻の計測を開始させる(ステップS20)。
ステップS20の次に、制御部101は、モータ140を定格電流(1.2A/相)で励磁させて通電状態にするとともに、電磁クラッチ143を接続状態にさせる(ステップS30)。モータ140が通電状態になると、モータ140に最大静止トルクが発生して、モータ140から大径ギア141、小径ギア142、電磁クラッチ143及びギア144、145を介して、ギア146に接続されたフィードローラ112が静止する。また、これにより、フィードローラ112との間でその回転軸どうしにベルト155が掛け渡されたピックアップローラ111も静止する。このように、最大静止トルクが働いている状態では、モータ140に接続された駆動系が静止し続けようとする力が働く。従って、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだときに両者の接触による衝撃が発生しても、その衝撃によりピックアップローラ111にかかる力よりも、最大静止トルクによりピックアップローラ111を静止し続けようとする力の方が大きければ、静止する状態が保たれて、ロック機構のロックが解除されることがない。ステップS30の処理は、ステップS10でClose直前の状態が検知されてから、例えば10〜30msec以内の予め決められた期間が経過したときに行われる。
ここで、例えば、ユーザが、再びシート搬送装置10を画像読取面410に対して離れた状態とすると、スイッチ310は押下された状態から押下されていない状態へ変化し、これに伴い、スイッチ310は、上述した制御信号の供給を停止する。ステップS30の次に、制御部101は、スイッチ310から制御信号の供給が停止されると(ステップS40;Yes)、処理をステップS60へ移し、モータ140の励磁を停止させるとともに、電磁クラッチ143を非接続状態にさせて処理をステップS10へ戻す。これにより、最大静止トルクが消失して、ピックアップローラ111を静止させる力が働かなくなる。
一方、ステップS30の次に、制御部101は、スイッチ310から制御信号が供給された状態で(ステップS40;No)、計時部によって予め決められた時間の経過が計測されると(ステップS50;Yes)、モータ140の励磁を停止させるとともに、電磁クラッチ143を非接続状態にさせる(ステップS60)。ここで、上記予め決められた時間が長くなり過ぎると、励磁電流が流れ続けることで、いわゆるモータ140が焼き切れるなどの事態が発生し、モータ140が駆動しなくなることがある。従って、上記予め決められた時間は、Close直前の状態が検知されてからシート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐまでにかかると予想される時間よりは長い時間であって、モータ140が焼き切れてしまうような事態が発生しないような出来るだけ短い時間であることが望ましい。上記予め決められた時間は、ここでは、例えば3,000msecである。この3,000msecが経過する間に、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いで、両者が接触する際の衝撃が発生しても、フィードローラ112及びピックアップローラ111は静止した状態となっているため、ロック機構が解除されることはない。また、ステップS40でNoと判定された後に、計時部によって予め決められた時間の経過が計測されない間は(ステップS50;No)、制御部101は、ステップS40の判定を繰り返す。
このように、本実施形態によれば、シート搬送装置10が画像読取面410に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能に支持された構成において、シート搬送装置10が画像読取面410を塞ぐ直前に、制御部101が、モータ140に励磁電流を流して最大静止トルクを発生させて、複数のギアを介して接続されたフィードローラ112を静止させる。これに伴い、フィードローラ112に対してその回転軸どうしにベルト155を掛け渡されたピックアップローラ111も静止する。このような状態であれば、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いで、両者が接触することで衝撃が発生しても、モータ140に生じた最大静止トルクによってフィードローラ112及びピックアップローラ111は静止しているため、ロック機構が解除されてピックアップローラ111が下がった状態となることがない。このように、本実施形態によれば、シート搬送装置10が画像読取面410に近づいてその画像読取面410を塞いだときの衝撃で、シートを送り出すピックアップローラ111が鉛直方向に下がった状態とならないようになる。また、このとき、予め決められた時間が経過した後に確実にモータ140を再び回転させることで、通電状態が長すぎることによりモータ140が焼き切れたりして駆動しなくなることが抑制される。
(変形例)
上述した実施形態は、以下のように変形可能である。
図13は、変形例に係るシート搬送装置10が画像読取面410から離れた状態を表す側面図である。変形例においても、実施形態と同様に、画像読取面410のうち、支持手段300に近い位置にスイッチ310が設けられている。シート搬送装置10において支持手段300と遠い側の端部のうち、画像読取部40と相対する面の内部には、磁石320が埋め込まれている。また、画像読取部40のうち支持手段300と遠い側の端部には、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだときに磁石320と相対する位置に、磁気センサ330が設けられている。磁気センサ330の感度は、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだときに、相対する磁石320の磁気を閾値以上の大きさで検出する程度の強さに設定されている。磁気センサ330は、磁石320を検出すると、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだ旨を制御部101へ通知する。磁石320及び磁気センサ330は、本発明に係る塞ぎ状態検知手段の一例である。
この変形例においては、図11におけるステップS50の判定の内容が、予め決められた時間が経過したか否かに代えて、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだ旨の通知を受けたか否か(ステップS50a)、となる。このようにすれば、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだことを磁気センサ330が検知して、検知内容を制御部101に通知し(ステップS50a;Yes)、シート搬送装置10及び画像読取面410の接触による衝撃が収まった後に、制御部101が、モータ140の励磁を停止させて、電磁クラッチ143を非接続の状態とする(ステップS60)。従って、このようにしても、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだときの衝撃によってロック機構が解除されてピックアップローラ111が下がった状態となることがない。また、このようにすれば、シート搬送装置10が画像読取面410を塞いだことが検知されたときに、モータ140の励磁が確実に停止されるので、通電状態が長すぎてモータ140が焼き切れたりして駆動しなくなることが抑制される。