JP5891777B2 - 鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造 - Google Patents
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Description
このような用途に用いられる容器の耐火物ライニング構造は、一般的に、外側から順に、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層を有するライニング構造である(例えば、特許文献1,2を参照)。
これらの容器を用いて溶銑を搬送する場合等に、その経過時間(リードタイムともいう)が長くなると、耐火物層を伝達して鉄皮や開口部から放出する熱量が増大し、溶銑の温度降下量が増大する問題が発生する。この問題は、転炉でのスクラップ使用量を低下させて、CO2排出量増大を招くばかりでなく、転炉での熱源使用量を増大させ、コスト増大にも影響を及ぼす。
この問題を解決する手段の一つとしては、容器のライニング構造を変更することによる熱ロス低減化が考えられる。
例えば、特許文献1,2に記載のライニング構造においては、断熱効果を得る観点から、鉄皮と永久耐火物層との間に、熱伝導率が0.1W/(m・K)以下の断熱材が施工されている(特許文献1,2の[特許請求の範囲]を参照)。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、従来よりも条件が緩和された断熱材を施工できる、鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造を提供することを目的とする。
(1)溶銑を受銑して保持するための鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、上記容器の外側から順に、鉄皮、断熱材、永久耐火物層およびワーク耐火物層を有し、上記ワーク耐火物層が、受銑して保持する溶銑上に不可避的に存在するスラグ表面位置よりも上記容器の上面開口部側の領域である上部領域と、上記スラグ表面位置を含む上記容器の底部側の領域である下部領域とに区分され、上記上部領域を構成するワーク耐火物として、Al2O3およびSiO2を含有し、かつ、炭素含有量が3質量%未満である定形煉瓦を用い、上記下部領域を構成するワーク耐火物として、Al2O3、SiCおよびMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種と、6〜12質量%の炭素とを含有し、かつ、下記式(I)の値が1.5以上を満たす定形煉瓦を用いる、鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
溶銑鍋1の耐火物ライニング構造は、外側から順に、鉄皮2、永久耐火物層3およびワーク耐火物層4を有する構造であり、鉄皮2と永久耐火物層3との間には、断熱材5が施工されている。
また、永久耐火物層とは、後述するワーク耐火物層(の一部)がすべて損傷、抜け落ちたときでも、溶銑が漏洩しないよう、安全を確保するために施工される煉瓦層であり、セーフティライニングとも呼ばれる。永久耐火物層は、成形煉瓦(定形耐火物)または不定形耐火物で構成され、成形煉瓦で構成されるときには、永久煉瓦層とも呼ばれる。永久耐火物層を構成する耐火物は、永久耐火物または永久煉瓦と呼ばれ、例えば、ろう石煉瓦が用いられる。図5に示す永久耐火物層3は、2層の永久耐火物3aで構成されている。
つまり、図5に示すワーク耐火物層4については、図5中に示す破線Lよりも上側を構成するのが「上部領域」であり、破線L以下を構成するのが「下部領域」である。溶銑鍋1の全高を3分割すると、「上部領域」は、上側約1/3の領域であり、「下部領域」は下側約2/3の領域である。
また、スラグ表面位置は、操業条件等によって変動する場合もあり得るが、本発明においては、通常の操業条件でスラグ表面が到達する位置を意味するものとする。
Al2O3−SiO2煉瓦においては、酸化防止の観点から、炭素含有量は少ないほど好ましく、3.0質量%未満がより好ましく、実質的に含有してない態様がさらに好ましい。
このような定形煉瓦としては、例えば、Al2O3−SiC−C煉瓦、MgO−C煉瓦、Al2O3−C煉瓦などが挙げられ、含有する炭素は、例えば、黒鉛であり、具体的には鱗状黒鉛である。
ここで、動的弾性率Eは、材料中に音波を照射し、その応答時間より算出する方法により測定される。
圧縮破壊強度Sは、材料試験片(直方体、立方体、もしくは円筒体)に圧縮荷重を負荷し、試験片が破壊したときの荷重を荷重負荷面積で除することにより導出される。
ポアソン比νは、材料試験片(直方体、立方体、もしくは円筒体)に圧縮荷重を負荷したときに、荷重負荷方向とそれに直角な方向のひずみ量をひずみゲージを用いて測定し、両者の比(荷重負荷方向に直角な方向のひずみ量/荷重負荷方向のひずみ量)をとることによって導出される。
まず、例えば溶銑鍋は、受洗した溶銑からの受熱と空鍋時の放熱とを繰り返し行なうため、稼働面の温度変動が大きく、発生熱応力の差も大きくなる。溶銑鍋に代表される鍋型製鉄用容器におけるワーク耐火物の損傷要因の1つは、この発生熱応力の繰り返しによって亀裂が進展して破壊に至る、いわゆる熱応力損傷であると考えられる。この熱応力変動に対するワーク耐火物の抵抗力を示す指標の1つとして、下記式(1)で表される熱衝撃損傷抵抗係数(R'''')がある。
図1は、熱衝撃損傷抵抗係数と、剥離発生までのサイクル数との関係を示すグラフである。図1に示すグラフを見ると、上記式(I)で表される係数が1.5未満の場合は、剥離発生までのサイクル数が少なく、亀裂が容易に発生して剥離が短期間で起こりやすいことが分かった。
これに対して、係数が1.5以上の場合は、剥離発生までのサイクル数が大きく増加しており、剥離が起こりにくいことが分かった。これにより、ワーク耐火物として、熱衝撃損傷抵抗係数が1.5以上を満たす定形煉瓦を用いることによって、鍋型製鉄用容器の耐用回数がより安定的に向上することが見出された。
炭素含有量が12質量%を超えると、熱伝導率が大きく上昇する。熱伝導率が上昇すると、溶銑や溶鋼を鍋型製鉄用容器に収容したときにワーク耐火物を通じて外部へと放出される熱量が増大するため、適切とはいえない。
一方、炭素含有量が6質量%未満になると、熱衝撃損傷抵抗係数が低下する。これは、炭素含有による靱性向上の効果が薄れるためと考えられる。ワーク耐火物内への亀裂の発生量や進展量が多くなるために、割れや剥離に対して弱くなる。
これに対して、黒鉛含有量が上記範囲であれば、外部へと放出される熱量も低減され、熱衝撃損傷抵抗係数も適切となる。
もっとも、ワーク耐火物の施工性の観点からは、5mm以下の厚さで施工するのが好ましい。
図4に示すように、鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工した場合、稼働面とワーク耐火物層の背面との温度差が小さくなるため、それに応じて、発生する熱応力の勾配も緩和される。そのため、割れや剥離の可能性もより低減される。
図5に示すような溶銑鍋(開口部の面積:17m2、ヒートサイズ:300t)において、永久耐火物層およびワーク耐火物層を施工した。各例に共通して、永久耐火物層を構成する永久耐火物として、ろう石煉瓦を使用し、ワーク耐火物層の上部領域を構成するワーク耐火物として、Al2O3−SiO2煉瓦(炭素含有量:0.1質量%)を使用した。
さらに、一部の例では、鉄皮と永久耐火物層との間にシート状の断熱材を施工し、その熱伝導率および厚さを、各例において、異ならせた。
まず、発明例1では、下部領域を構成するワーク耐火物として、黒鉛含有量が10質量%であって上記式(I)で表される係数が1.6であるASC煉瓦を使用した。さらに、熱伝導率が0.05W/(m・K)であるシート状の断熱材を厚さ5mmで施工した。
また、発明例4では、下部領域を構成するワーク耐火物として、黒鉛含有量が7.5質量%であって上記式(I)で表される係数が2.1であるASC煉瓦を使用した。さらに、熱伝導率が0.15W/(m・K)であるシート状の断熱材を厚さ5mmで施工した。
また、発明例5では、下部領域を構成するワーク耐火物として、黒鉛含有量が7.5質量%であって上記式(I)で表される係数が2.5であるASC煉瓦を使用した。さらに、熱伝導率が0.3W/(m・K)であるシート状の断熱材を厚さ5mmで施工した。
したがって、ワーク耐火物層の上部領域を構成するワーク耐火物として、特定の定形煉瓦を用いることで、耐用回数が向上し、長期間にわたって断熱効果が維持でき、従来よりも条件が緩和された断熱材を使用しても、効果が得られることが分かった。そのため、コスト低減効果が期待できる。
1a 上面開口部
1b 底部
2 鉄皮
3 永久耐火物層
3a 永久耐火物
4 ワーク耐火物層
5 断熱材
11 溶銑
12 スラグ
L 破線
Claims (3)
- 溶銑を受銑して保持するための鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、
前記容器の外側から順に、鉄皮、断熱材、永久耐火物層およびワーク耐火物層を有し、
前記ワーク耐火物層が、受銑して保持する溶銑上に不可避的に存在するスラグ表面位置よりも前記容器の上面開口部側の領域である上部領域と、前記スラグ表面位置を含む前記容器の底部側の領域である下部領域とに区分され、
前記上部領域を構成するワーク耐火物として、Al2O3およびSiO2を含有し、かつ、炭素含有量が3質量%未満である定形煉瓦を用い、
前記下部領域を構成するワーク耐火物として、Al2O3、SiCおよびMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種と、6〜12質量%の炭素とを含有し、かつ、下記式(I)の値が1.5以上を満たす定形煉瓦を用いる、
鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
上記式(I)中、Eは動的弾性率(単位:GPa)を示し、Sは圧縮破壊強度(単位:MPa)を示し、νはポアソン比を示す。 - 前記断熱材の熱伝導率が、0.1W/(m・K)超、1.0W/(m・K)以下である、請求項1に記載の鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
- 前記断熱材の厚さが、5mm超、10mm以下である、請求項1または2に記載の鍋型製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
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