JP5890145B2 - ねじ軸及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、回転運動を直線運動に変換する機械要素として、自動車や工作機械などの各種機械装置の送り機構や位置決め機構などに用いられるすべりねじやボールねじ等のねじ装置に用いられるねじ軸と、その製造方法に関するものである。
以下、ねじ装置の代表例として、ボールねじについて主に説明するが、すべりねじは、ねじ軸とナットの間にボールが介在しないこと以外、ボールねじとよく似た構造を備えており、そのねじ軸についても、ボールねじの場合と基本的に同様の寸法精度に関する問題を有している。
ボールねじは、ねじ軸と、このねじ軸の外周に嵌装された円筒状のナットを備え、ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝(ボール転走溝)と、ナットの内周面にねじ軸のねじ溝に対向して形成されたねじ溝との間に、複数のボールが組み込まれた構造を有している。
ボールねじにおけるねじ軸やナットには、耐摩耗性や疲労寿命の向上を目的に、浸炭焼入れや高周波焼入れなどによる表面硬化処理が施されるが、特に、ねじ軸においては、長さ寸法が大きいことから、焼入れ時の加熱、冷却に伴う熱変形によって、寸法や形状が変化しやすく、寸法精度を確保することが難しい。
このようなボールねじの寸法精度については、JIS B1191、1192においてC0,C1,C3,C5,C7,C10の6等級に区分されており、このうちC0,C1,C3,C5の4等級を精密ボールねじ、C7,C10の2等級を一般用ボールねじと規定している。
ボールねじは、ねじ軸のねじ溝を研削加工によって仕上げる研削ボールねじと、ねじ溝を転造加工によって成形する転造ボールねじとに大別され、一般に、研削ボールねじは精密ボールねじ(精度等級C0,C1,C3,C5)に相当し、転造ボールねじは一般用ボールねじ(精度等級C7,C10)に相当するとされている。
研削加工によるねじ軸の製造工程(研削ボールねじ)と、転造加工によるねじ軸の製造工程(転造ボールねじ)を図9(a)及び(b)にそれぞれ示す。
すなわち、研削によるねじ軸加工においては、ねじ溝を切削した素材に高周波焼入れや浸炭焼入れ処理を施した後、研削加工を施すことによって、精密ボールねじ相当品(精度等級C0,C1,C3,C5)を得ることができるが、転造ボールねじに較べて加工コストが嵩み、高価で、しかも長納期とならざるを得ない。
したがって、このような研削ボールねじは、高い送り精度が要求されるNC工作機械に代表される各種の自動機、半導体製造関連装置、測定機器、検査装置などに適用されることになる。
一方、転造加工によるねじ軸加工においては、研削加工に較べて生産性が高く、納期も短くて済むものの、転造による加工応力が残った状態で焼入れ処理が施されるため、廉価である反面、寸法精度に劣り、一般用ボールねじ(精度等級C7,C10)に相当するものしか得られない。
したがって、転造ボールねじは、さほど精度を必要としない産業用ロボットや搬送機、木工機械などに多く使用される。
このように、従来のボールねじの製造方法では、研削ボールねじは高価格・高精度である一方、転造ボールねじは低価格・低精度であり、それぞれ一長一短で、精度と価格の両立が難しい。
そこで、転造加工によるねじ軸の寸法精度を向上させることについては、従来から種々の検討がなされており、例えば、引用文献1あるいは2に開示されている。
特開2003−119518号公報 特開2005−066608号公報
しかしながら、これら公報に記載の方法によれば、多少の改善効果は認められるにしても、高周波焼入れが伴う以上、高温加熱や急冷、変態による膨張・収縮による変形を回避することは本質的に不可能であって、焼入れによる表面硬化処理を施したねじ軸の精度向上は極めて困難であった。
本発明は、従来のボールねじやすべりねじにおけるこのような課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、強度や耐摩耗性など、本来の機械的性能と共に寸法精度に優れた安価なねじ軸と、このようなねじ軸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、焼入れに替えて、焼準(焼ならし)と浸硫窒化処理との組合せ処理に置き換えることにより、浸硫窒化処理による均一な硬化層と焼準による高い内部硬度を形成することによって上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明のねじ軸は、外周面に螺旋状のねじ溝を備え、その表面に浸硫窒化層を有していることを特徴としている。
そして、本発明のねじ軸製造方法においては、このようなねじ軸を製造するに際して、焼準を施した素材鋼の外周面にねじ溝を転造し、得られたねじ軸素材に浸硫窒化処理を施すことを特徴とする。
また、本発明のねじ軸においては、上記浸硫窒化層の表面にさらに炭素膜を形成することができる。
そして、このようなねじ軸の製造に際しては、焼準を施した素材鋼の外周面にねじ溝を転造することによって得られたねじ軸素材に、浸硫窒化処理を施した後、大気圧下で400〜650℃に無酸化加熱し、鎖式不飽和炭化水素ガスを加熱状態のねじ軸素材に接触させることによって、浸硫窒化層の表面に、炭素膜を形成するようにしている。
あるいは、焼準を施した素材鋼の外周面にねじ溝を転造することによって得られたねじ軸素材を大気圧下で400〜650℃に無酸化加熱し、鎖式不飽和炭化水素ガスと共に、窒素源ガスと硫黄源ガスを加熱状態のねじ軸素材に接触させることにより、当該素材の表面に浸硫窒化層と、そのさらに上に炭素膜を形成するようにしている。
本発明によれば、焼準による高い素材硬度と外周面に窒化層あるいは浸硫窒化層を備えたねじ軸としたため、高温加熱、急冷を伴う焼入れ処理を施すことなく、十分な内部硬度と表面硬度を確保することができ、耐摩耗性や疲労寿命に優れ、しかも寸法精度の高いボールねじとすることができる。
本発明のねじ軸の製造手順を示す工程図である。 本発明において素材鋼に施す焼準処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 参考例1における窒化処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 参考例2における浸硫窒化処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 本発明の第の実施例における炭素膜処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 参考例3における炭素膜複合窒化処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 本発明の第の実施例における炭素膜複合浸硫窒化処理の温度と供給ガスの時間的関係を示すタイムチャートである。 実施例により得られた炭素膜複合浸硫窒化処理を施したねじ軸の表面近傍部の断面組織を示す顕微鏡写真である。 研削加工(a)及び転造加工(b)による従来のねじ軸の製造手順を示す工程図である。[発明を実施するための形態]
以下に、ボールねじやすべりねじに用いられる本発明のねじ軸について、その製造方法と共に、さらに具体的かつ詳細に説明する。
ボールねじは、一般に、外周面に形成された螺旋状のねじ溝を備えたねじ軸と、ねじ軸に外嵌されたナットと、これらねじ軸及びナットのねじ溝間に介在する複数のボールを備えたものであり、すべりねじは、同様のねじ軸とナットを備えたものであって、本発明のねじ軸は、その表面に窒化層あるいは浸硫窒化層を備えている。
したがって、高温加熱、急冷、変態を伴う焼入れ処理を施すことなく、すなわち寸法精度を損なうことなく、ねじ軸の表面に表面硬化層が形成されており、このようなねじ軸を備えたボールねじやすべりねじの精度品質、耐久性をコストを高めることなく、飛躍的に向上させることができる。
本発明のねじ軸は、上記窒化層又は浸硫窒化層の表面に、必要に応じて炭素膜をさらに設けることができる。
このような炭素膜は、摩擦係数が小さく(無潤滑状態で摩擦係数μ=0.2程度)、潤滑性があり、耐食性、制振性を向上し、油切れやグリース切れを生じ難くする機能を発揮し、転造ボールねじの弱点である騒音や振動を抑えることができる。また、炭素膜は砲金や黄銅などの銅系材料との親和性に乏しいことから、これら銅系材料から成るナットを用いたすべりねじにおけるねじ軸とナットの焼き付きを防止することができる。
図1は、本発明のねじ軸の製造手順を示す工程図であって、本発明のねじ軸は、このような要領で製造することができる。
図1に示すように、素材は、先ず所定長さの棒状に切断され、次いで焼準が施される。
本発明のねじ軸に適用される素材鋼種としては、焼準によってHv400〜450の硬度が得られるSCM435,SCM440等の機械構造用クロムモリブデン鋼(JIS G4052)や、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼(JIS G4805)、さらに適用部位によっては、SUS440C(マルテンサイト系)やSUS304(オーステナイト系)などのステンレス鋼(JIS G4303)などを用いることができる。
このような素材鋼は、所定長さに切断された後、焼準(焼ならし)が施される。この焼準は、鋼をオーステナイト状態に加熱した後、急速ガス冷却あるいは大気放冷する熱処理であって、加工の影響を除き、組織を微細化・均一化し、加工性を改善する目的で行われる。また、焼準により転造可能な最高硬度Hv400〜450を素材に付与することができる。
オーステナイト化温度での保持時間は、丸棒の場合、直径25mm当たり、30〜60分程度で行われる。焼準処理のヒートパターンの一例を図2に示す(後述する実施例に適用)。但し、これは標準的なものであって、ワークのサイズや処理量に応じて調整が必要であることは言うまでもない。
次いで、外径研削によって、素材表面の酸化物を除去して、所定の外径寸法に仕上げた後、素材の外周面に転造ロールダイスを転接させ、ねじ溝を転造する。
従来の焼入れ処理、特に高周波焼入れにおいては、ねじ軸の一端側から他端側に向けて焼入れが順次進行する、すなわち焼入れによる加熱・急冷が局所的なものとなることから、熱処理歪みが全体的に大きいことに加えて、収縮・膨張が部位によって不均一にばらつくことになる。
これに対し、本発明においては、窒化処理や浸硫窒化処理を施し、高温加熱、急冷を必要としないことから、歪み量が一桁小さいばかりでなく、収縮・膨張があったとしても、ばらつきのない均一な変形となることから、変形を見込んだ転造も可能となり、より寸法精度の高いねじ軸が得られることになる。
また、研削ボールねじにおける焼入れ後の研削加工も不要になることから、これまでは研削ボールねじの領分とされていた精密ボールねじ(例えば、C5等級)まで転造加工によって製造することが可能になり、ボールねじとしての需要が最も多い精度等級のボールねじを極めて安価に提供することができるようになる。
転造後のねじ軸素材には、表面硬化処理が施されることになる。
本発明のねじ軸製造方法において、表面硬化処理としては、先ず第1に窒化処理を施して、素材表面に窒化層を形成することができる。窒化処理は、鋼の表面に窒素化合物層と窒素拡散層を形成させて硬化させるものであって、比較的低い温度で、変形を伴うことなくねじ軸に表面硬化層を形成することができる。
窒化処理方法としては、特に限定されず、例えばガス窒化法、液体窒化法、イオン窒化法など、従来公知の方法を適宜採用することができるが、その簡便性や、処理コストの点で、ガス窒化法を適用することが望ましい。
すなわち、図3は窒化処理におけるヒートパターンの一例(後述する実施例に適用)を示すものである。すなわち、ワーク(ねじ溝転造後のねじ軸素材)を装入した雰囲気炉内をNガスで置換した後、昇温を開始し、昇温開始時点から、あるいは400〜650℃の処理温度に到達した状態で、NH(アンモニア)ガスのような窒素源ガスを供給することによって、ワーク表面に窒化層を生成することができる。
また、上記した窒化処理に替えて、浸硫窒化処理を施し、ねじ軸素材の表面に、浸硫窒化層を形成することができる。浸硫窒化処理は、鋼の表面に硬い窒化層と潤滑性に富む浸硫層の2層構造を形成することによって、鋼の耐摩耗性や耐焼付性の改善を図るものであって、比較的低い温度で、変形を伴うことなくねじ軸に、潤滑性に富む表面硬化層を形成することができる。
浸硫窒化処理方法としては、例えばガス浸硫窒化法、塩浴法など、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用することができるが、その作業性や、コストの点で、ガス浸硫窒化法を適用することが望ましい。
すなわち、図4は浸硫窒化処理におけるヒートパターンの一例(後述する実施例に適用)を示すものである。ワークを装入した雰囲気炉内をNガスで置換した後、昇温を開始し、昇温開始時点から、あるいは400〜650℃の処理温度に到達した状態で、窒素源ガスとしてのNHガスと共に、HS(硫化水素)ガスのような硫黄源ガスを供給することによって、ワーク表面に浸硫窒化層を生成することができる。なお、硫化水素は鋼材の表面に吸着しやすく、炉内に空気が僅かに残留していたとしても、残留空気による表面酸化を防止する効果を発揮することから、HS(硫化水素)ガスは昇温開始と同時に供給するようにすることが望ましい。
本発明のねじ軸は、潤滑性や耐食性、制振性を向上し、運転時の騒音や振動を抑える観点から、上記窒化層又は浸硫窒化層の表面に、さらに炭素膜を備えていることが望ましい。
このような炭素膜は、上記方法によって窒化層あるいは浸硫窒化層を形成させたねじ軸に、さらに炭素膜処理を施すことによって得ることができる。
図5は、このような炭素膜処理の一例(後述する実施例に適用)を示すヒートパターンである。
すなわち、雰囲気炉に窒化層又は浸硫窒化層を備えたワークを装入したのち、当該炉内をNガスで置換した後、昇温を開始し、昇温開始時から、あるいは400〜650℃の処理温度に到達した状態で、アセチレン(C)ガスのような鎖式不飽和炭化水素ガスを水素(H)又は少量のアンモニア(NH)ガスと共に供給することによって、ワーク表面の窒化層又は浸硫窒化層のさらに表層部に炭素膜を形成することができる。
なお、このような炭素膜を形成するには、窒化層あるいは浸硫窒化層と炭素膜を同時に形成することができる複合処理を採用することが、作業効率や熱効率を高め、コストを低減させる観点からより望ましい。
図6は、窒化層と炭素膜を同時に形成する炭素膜複合窒化処理におけるヒートパターンの一例(後述する実施例に適用)を示すものである。
すなわち、ねじ溝転造後のねじ軸素材(ワーク)を雰囲気炉内に装入した状態で、炉内をNガスにより置換して、昇温を開始し、昇温開始時点から、あるいは400〜650℃の処理温度に到達した時点で、NHガスのような窒素源ガスと共に、Cガスのような鎖式不飽和炭化水素ガスを炉内に供給して、ワークに接触させることによって、ワーク表面に窒化層と炭素膜を形成することができる。なお、図6においては、Cガスを処理温度に到達した後、10時間経過した時から供給するようにしているが、処理開始当初から供給したとしても、何ら差し支えない。
一方、図7は、浸硫窒化層と炭素膜を同時に形成する炭素膜複合浸硫窒化処理におけるヒートパターンの一例(後述する実施例に適用)を示すものである。
すなわち、ねじ溝転造後のワークを雰囲気炉内に装入した後、炉内をNガスで置換して、この状態で昇温を開始する。そして、昇温開始時点から、あるいは400〜650℃の処理温度に到達した時点で、NHガスのような窒素源ガス及びHSガスのような硫黄源ガスと共に、Cガスのような鎖式不飽和炭化水素ガスを炉内に供給して、ワークに接触させることによって、ワーク表面に浸硫窒化層と炭素膜を形成することができる。なお、図7においては、HSガスの供給を処理の前半で終了させているが、供給を最後まで継続させても、特に支障はない。Cガスについても、図6の場合と同様に、処理開始当初から供給したとしても支障はない。
上記のような表面硬化処理と、必要に応じて炭素膜処理を終えたねじ軸素材は、次に完成検査がなされ、合格したものは軸端加工の後、洗浄されてねじ軸の完成品となる。
そして、完成したねじ軸は、ボールねじ、あるいはすべりねじの組み立て工程に搬送されて、ナット及びボール(ボールねじの場合)が組み込まれ、ボールねじあるいはすべりねじとなって出荷されることになる。
本発明においては、浸炭焼入れや高周波焼入れを行うことなく、図3〜図7に示したように、400〜650℃、具体例としては480℃程度の低温で、窒化層や浸硫窒化層から成る表面硬化層を形成することができ、焼入れに伴う変形を防止して、寸法精度に優れたねじ軸を得ることができる。
そして、上記表面硬化層の表面に、炭素膜をさらに形成することによって、耐食性や潤滑性、制振性をも向上させることができるようになり、ボールねじやすべりねじの運転時における騒音や振動を低減することが可能になる。
以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明するが、本発明はこのような実施例によって何ら限定されるものではない。
参考例1〕
まず、JIS G4805に規定される高炭素クロム軸受鋼SUJ2から成る径10.3mmの棒鋼を300mmの長さに切断した後、図2に示すように、920℃の真空炉中で、1時間保持した後、窒素中で急速ガス冷却することによる焼準処理を施した。
次いで、外径研削としてセンタレス研削を行い、素材表面の酸化物や表面傷を除去し、9.95mmの外径寸法に仕上げた。そして、所定のロールダイスを用いてねじ溝を転造加工し、呼び外径10mm、リード3mm、ボール径2mm、有効長さ300mmのねじ部を備えたボールねじ用のねじ軸素材を作製した。
次に、上記によって得られたねじ軸素材に、図3に示すようなガス窒化処理を施し、その表面に窒化層を形成した。
すなわち、ねじ溝を転造したねじ軸素材を雰囲気炉に装入し、一旦真空に排気した後、炉内にNガスを供給して雰囲気置換した状態で昇温を開始し、480℃に12時間保持した。そして、毎分15NLのNガスを流しながら、昇温開始時からNHガスを降温開始の時点まで毎分15NL供給するようにした。なお、これらの熱処理には、炉内有効寸法:450mm径×600mm高さ、処理重量:150kgのピット型多目的ガス窒化炉を使用した。
このようにして得られたねじ軸は、JIS B1192に基づいて、変動許容値e300を測定して、寸法精度を評価した。その後、同様の表面硬化処理を施したナットと、径2mmのボールとを組み合わせて、ボールねじを組み立て、得られたボールねじの作動時の騒音について、顕著な物を「×」、ほとんど気にならないものを「○」、その中間のものを「△」と評価した。
そして、騒音試験の終了後にボールねじを解体し、ねじ軸の中央部を切断して、表面硬さと共に、窒化層の厚さを測定した。これらの結果を表1に示す。
参考例2
上記参考例1と同じ素材鋼を用いて、同様の焼準、外径研削、ねじ溝転造を施すことによって得られた同様のねじ軸素材に、図4に示すようなガス浸硫窒化処理を施し、その表面に浸硫窒化層を形成した。
すなわち、ねじ溝転造後のねじ軸素材を雰囲気炉に装入し、炉内をNガスにより置換した状態で昇温を開始し、毎分15NLのNガスを流しながら、昇温開始時からNHガスと共にHSガスを炉内に供給し、480℃に12時間保持した。なお、NHガス及びHSガスの供給量は、それぞれ毎分30NL及び毎時0.6NLとし、HSガスについては、昇温後2時間経過した時点で供給を停止する一方、NHガスについては、昇温後12時間が経過して降温が開始されるまで供給を継続するようにした。また、HSガスについては、少量であることから、Nガスによって希釈(N:HS=97:3)した状態で供給するようにした。
そして、得られたねじ軸について、寸法精度、騒音、硬さ、浸硫窒化層の厚さを上記同様の要領で調査した。これらの結果は、表1にまとめて示す。
〔実施例
上記参考例2で得られたねじ軸に、図5に示すような炭素膜処理を施すことによって、浸硫窒化層の上にさらに炭素膜を形成した。
具体的には、上記参考例2と同様の方法によって、ねじ軸素材に浸硫窒化層を形成した後、これを雰囲気炉に装入し、炉内をN2ガスにより置換した状態で、毎分25NLのNガスと毎分7NLのHガスを流しながら、480℃までの昇温を開始した。そして、480℃に2時間保持している間、毎分0.2NLのCガスを供給した。
そして、得られたねじ軸の寸法精度、騒音、硬さ等について、上記同様の要領で調査し、これらの結果を表1にまとめて示す。
参考例3
上記参考例1と同じ手順によって転造したねじ溝を有するねじ軸素材に、図6に示すような炭素膜複合窒化処理を施し、その表面に窒化層と共に炭素膜を形成した。
すなわち、ねじ溝転造後のねじ軸素材を雰囲気炉に装入し、炉内をNガスにより置換した状態で、毎分15NLのNガスを流しながら昇温を開始し、昇温開始時から毎分30NLのNHガスを炉内に供給し、480℃に12時間保持した。そして、480℃の保持温度に昇温後10時間が経過した時点で、毎分0.2NLのCガスを供給した。
なお、12時間の処理を終えた後は、NHガス及びCガスの供給を停止すると共に、Nガスの供給量を毎分25NLに増加し、炉内に残存するNHガスやCガスの排出を促進するようにした。
そして、得られたねじ軸について、寸法精度、騒音、硬さ、窒化層、炭素膜の厚さ等を上記同様の要領で調査し、これらの結果を表1に併せて示す。
〔実施例
上記参考例1と同じ手順によってねじ溝を転造したねじ軸素材に、図7に示すような炭素膜複合浸硫窒化処理を施し、その表面に浸硫窒化層と共に炭素膜を形成した。
すなわち、ねじ溝転造後のねじ軸素材を雰囲気炉に装入し、炉内をNガスにより置換した状態で、毎分15NLのNガスを流しながら480℃への昇温を開始し、昇温開始時から毎分30NLのNHガスと毎時5NLのHSガスとを炉内に供給し、480℃に12時間保持した。そして、480℃に昇温後2時間経過した時点でHSガスの供給を停止すると共に、10時間が経過した時点で、毎分0.2NLのCガスの供給を開始した。なお、都合12時間の処理を終えた後は、上記炭素膜複合窒化処理と同様に、NHガス及びCガスの供給を停止すると共に、Nガスの供給量を毎分25NLに増加した。
そして、得られたねじ軸について、寸法精度、騒音、硬さ等を上記同様の要領で調査し、これらの結果を表1にまとめて示す。
また、硬化組織の代表例として、当該実施例5により得られたねじ軸表面における断面組織写真を図8に示す。
〔比較例〕
上記参考例1に用いた棒鋼を同様に切断した後、焼準処理を施すことなく、同様の外径研削を行い、上記同様に9.95mmの外径寸法に仕上げた。そして、所定のロールダイスを用いてねじ溝を転造加工することによって、同様のねじ軸素材を作製した。
次に、得られたねじ軸素材を高周波焼入装置(100kW、100Hz)の加熱コイルに挿入し、当該コイルに10kV、8Aの条件で高周波電流を流しながら、25mm/秒の送り速度で移動焼入れすることによって、表面に硬化層を形成した。
そして、得られたねじ軸について、寸法精度、騒音、硬さ、硬化層厚さを上記同様の要領で調査し、その結果を表1に併せて示す。
Figure 0005890145
以上の結果、高周波焼入れによる表面硬化処理を行ったねじ軸においては、寸法精度が劣り、一般用ボールねじに当たる精度等級C10の評価であり、作動時の騒音も大きいのに対し、焼入れによらない表面硬化処理を施した本発明のねじ軸においては、何れもC5の規格を満足し、精密ボールねじに相当することが確認された。また、騒音については、高周波焼入れによるものよりも少なく、特に、炭素膜を備えた本発明の実施例1,2及び参考例3のねじ軸を用いたボールねじについては、炭素膜のない窒化層又は浸硫窒化層のみの参考例1、参考例2に較べて、運転時の騒音が少ないことも確認された。

Claims (8)

  1. 外周面に螺旋状のねじ溝を備えたねじ軸であって、その内部は硬度Hv400〜450の焼準組織を有し、その表面には浸硫窒化層を有し、
    上記浸硫窒化層の上に炭素膜を備えていることを特徴とするねじ軸。
  2. 請求項に記載のねじ軸を製造するに際して、
    焼準を施した素材鋼の外周面にねじ溝を転造して成るねじ軸素材に、浸硫窒化処理を施した後、大気圧下で400〜650℃に無酸化加熱し、鎖式不飽和炭化水素ガスを加熱状態のねじ軸素材に接触させて、当該素材の表面に浸硫窒化層と、炭素膜を形成することを特徴とするねじ軸の製造方法。
  3. 請求項に記載のねじ軸を製造するに際して、
    焼準を施した素材鋼の外周面にねじ溝を転造して成るねじ軸素材を大気圧下で400〜650℃に無酸化加熱し、鎖式不飽和炭化水素ガスと窒素源ガスと硫黄源ガスを加熱状態のねじ軸素材に接触させて、当該素材の表面に浸硫窒化層と炭素膜を形成することを特徴とするねじ軸の製造方法。
  4. 上記硫黄源ガスが硫化水素ガスであることを特徴とする請求項に記載のねじ軸の製造方法。
  5. 上記窒素源ガスがアンモニアガスであることを特徴とする請求項3又は4に記載のねじ軸の製造方法。
  6. 上記鎖式不飽和炭化水素ガスがアセチレンガスであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つの項に記載のねじ軸の製造方法。
  7. 請求項に記載のねじ軸を備えていることを特徴とするボールねじ。
  8. 請求項に記載のねじ軸を備えていることを特徴とするすべりねじ。
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