以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。ここでは移動体の一例として複数のダンプトラック(以下、車両)の運行管理を行うシステムについて説明する。ダンプトラックは、予め定められた走行経路を複数回走行することが多く、有人及び無人のいずれの方法で運行されても良い。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る一の車両に搭載された運行管理装置の概略構成図である。ここでは、簡略のため、本実施の形態に係る運行管理システムに含まれる複数の車両うち一の車両に搭載される運行管理装置の構成について説明するが、他の車両についても同様の構成を備えているものとする。
図1に示す車両は、当該車両の位置を検出するための手段(位置検出手段)として、GPS衛星(Global Positioning System 衛星)からの信号を受信して当該車両の位置情報を計測するためのGPS受信機101と、当該車両の加速度や角速度などを計測するための慣性センサ102と、当該車両の速度を計測するための速度センサ103を備えている。また、運行管理対象である各車両の走行経路に係る地図データ(地図情報)が記憶された地図データベース(地図記憶手段)104と、位置検出手段101,102,103からの位置情報と地図データベース104の地図データに基づいて地図上での当該車両の位置(地図上位置)を推定する処理を実行する位置推定部(位置推定手段)105と、当該車両の現在及び過去(例えば、数ステップ分)における地図上位置、進行方位、速度、角速度及び加速度等を含む走行状態データ(走行状態情報)が時系列で記憶される(すなわち、走行状態データの履歴が記憶される)走行状態記憶部(走行状態記憶手段)106と、走行経路上の或る位置から或る位置まで当該車両が移動する確率(位置遷移確率(遷移確率))を計算する処理を実行する位置遷移確率計算部(第1確率計算手段)107と、位置遷移確率計算部107で計算された位置遷移確率を記憶する遷移確率記憶部108と、管制局及び他車両等と通信し、各種データ(例えば、他車両の位置データや走行状態データ等)の授受を行うための通信部(通信手段)109と、走行経路上の所定の位置で当該車両と他車両が同時に存在する確率(衝突確率)を遷移確率記憶部108の位置遷移確率に基づいて算出し、当該確率が設定値を超える領域を「他車両と衝突する位置」として推定する処理を実行する衝突位置推定部110と、当該衝突する位置および当該位置における確率が記憶される衝突確率記憶部(衝突確率記憶手段)111と、衝突位置推定部110で他車両と衝突する位置として計算された位置等を地図上に表示するための表示装置(表示手段)112と、衝突位置推定部110の計算結果に基づいて当該車両のステアリング,ブレーキ,アクセルなどに指令を出す車両制御部113を備えている。
なお、図1に示した構成をハードウェア的に説明すると、位置推定部105、位置遷移確率計算部107、衝突位置推定部108及び車両制御部113は、各種プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)に該当する。また、地図データベース104、走行状態記憶部106及び遷移確率記憶部110は、プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)に該当する。また、図1に示した位置推定部105、位置遷移確率計算部107、衝突位置推定部108及び車両制御部113は、それらの一部又は全部をハードウェアロジック(例えば集積回路)で構成しても良い。また、これらの各構成は、当該各構成の機能を実現するプログラムを演算処理装置が実行することにより実現されるソフトウェアで構成してもよい。
位置推定部105は定期的に自車の現在位置を推定している。ここで位置推定部105による自車位置の推定方法を以下に示す。GPS受信機101、慣性センサ102および速度センサ103からは、それぞれのセンサの出力周期毎に情報が出力され、GPS受信機101からは位置、慣性センサ102からは角速度と加速度、速度センサ103からは速度の情報が出力され、位置推定部105に入力される。位置推定部105では、入力された各センサの情報と地図データベース104から地図上における車両の位置、進行方位、速度、角速度、加速度を算出する。
図2は位置推定部105が実行する処理フローを示す図である。図2に示すように、位置推定部105は周期的に起動する(ステップ201)。ステップ202では、慣性センサ102および速度センサ103から得られる情報から、車両の進行方位θ、走行路勾配φ、速度v、加速度α、角速度ωを計算する。角速度ωは慣性センサ102のジャイロセンサから、速度vは速度センサ103からそれぞれ時々刻々得られ、進行方位θおよび加速度αは次式で求めることができる。各式におけるtはステップ数(位置推定部105の起動周期ごとに1ずつ増加する数(時系列番号))である。
また、走行路勾配φは上記で計算した加速度αと、慣性センサ102における車両前後方向の加速度センサの出力ACCとから、下記式により求めることができる。ただし、gは重力加速度である。
なお、車両に搭載する装置では、慣性センサ102や速度センサ103が存在しない場合が有る。この場合には下記の方法で角速度、加速度、速度を算出することで慣性センサ102や速度センサ103に代えても良い。
慣性センサ102が存在しない場合には、角速度および加速度を以下の方法で算出し、慣性センサ102に代えることができる。まず、角速度の算出方法としては、GPS方位の差分をGPS取得周期で除した値を角速度とするものがある。また、加速度の算出方法としては、(1)GPS速度の差分をGPS取得周期で除した値を加速度とするもの、(2)速度センサの差分を速度センサの取得周期で除した値を加速度とするもの、(3)今回のGPS位置と1GPS取得周期分の前のGPS位置間の距離をGPS取得周期で除した値を速度とし、更に1周期前の速度との差分をGPS周期で除した値を加速度とするものがある。
また、速度センサが存在しない場合、速度を以下の方法で算出し、速度センサに代えることができる。速度の算出方法としては、(1)GPS速度を速度センサの代わりに入力するもの、(2)今回のGPS位置と1GPS取得周期分の前のGPS位置間の距離をGPS取得周期で除した値を速度とするもの、(3)加速度センサから得られた値を加速度と仮定し、積分することで速度を算出するものがある。なお、上記の方法以外でも、加速度、角速度、速度が算出可能であれば良い。
ステップ202で計算された進行方位、速度、加速度、角速度は、当該起動周期(当該時系列番号)における車両の走行状態データとして走行状態記憶部106(図10参照)に保存され、ステップ203へ移行する。ステップ203では、GPS位置情報がGPS受信機101から出力されているかを判断する。GPS受信機101の出力周期の場合は、ステップ204へ移行する。GPS受信機101の出力周期で無い場合は、ステップ205へ移行する。
ステップ204では、ある位置を原点としたローカル座標系にGPS位置情報を変換し、自車位置として設定し、ステップ206へ移行する。
ステップ205では、GPS位置情報がセンサから出力されていないため、ローカル座標系におけるデッドレコニングによる位置推定結果を自車位置として設定し、ステップ206へ移行する。デッドレコニングによる位置推定はステップ202で算出された値を用いて次式に従って求めることができる。
ステップ206では、自車位置周辺の地図データを地図データベース104から取得する。本実施の形態に係る地図データベース104には、地図データとして、各車両の走行経路(道路)を線状に規定し、当該線状の走行経路の形状を点(以下、「ノード」と称することがある)と線(以下、「リンク」と称することがある)で表わしたもの(トポロジカル地図データ)が記憶されている。各リンクは線状の走行経路を分割して得られる複数の線分であり、各ノードは各線分の端点となる。
図3は地図データベース104のデータ構造を示す図である。この図に示すように、地図データベース104には、走行経路内に含まれるリンクを一意に表わすリンクID301と、リンクID301で表わされるリンクの始点座標を表わすリンク始点302と、リンクID301で表わされるリンクの終点座標を表わすリンク終点303と、リンク始点302が接続する他のリンクのIDを示す接続ID304と、リンク終点303が接続する他のリンクのIDを示す接続ID305と、リンクID301で表わされるリンクをさらに複数の範囲(サブリンク)に分割したサブリンクの数を表わすリンク分割数306と、リンクID301で表わされるリンクを分割したサブリンクのそれぞれを一意に表わすサブリンクID307と、リンク始点302からサブリンク始点までの距離308と、サブリンクID307で表されるサブリンクの始点座標を表わすサブリンク始点309と、その存在範囲であるサブリンク始点半径310と、サブリンクID307で表されるサブリンクの終点座標を表わすサブリンク終点311、その存在範囲であるサブリンク終点半径312が保存されている。なお、サブリンクID307はリンク始点302からリンク終点303の方向に順番に番号が振られているものとする。
ステップ206において、位置推定部105は、自車位置周辺の地図データとして、始点もしくは終点が自車位置からある範囲内に存在するリンクID301に紐付くデータを全て取得する。自車位置周辺の地図データを取得できればステップ207に移行する。
ステップ207では、自車両が走行する予定のルート(走行経路)を管制局に設置されたコンピュータと通信することで取得する。なお、走行経路は、管制局から出力されるものに代えて、自車で決定したものを利用しても良い。
ここでは、自車両の走行する予定のルート(走行経路)を、地図データベース104内の各サブリンクに対して設定されるルートフラグ716(図7参照)の項目で規定しており、本実施の形態では各サブリンクに係るルートフラグは遷移確率記憶部108に記憶されている。ルートフラグ716としては、“ルート上”、“ルート外”及び“未設定”の3値があり、これらのいずれか1つが全てのサブリンクに対して設定される。例えば、フラグ値“未設定”は、ルートが設定されていない状態を示し、この場合は全てのサブリンクに対するルートフラグが“未設定”に設定される。一方で、ルートが設定されている場合は、全てのサブリンクに対するルートフラグルートが“ルート上”又は“ルート外”のいずれかに設定される。
もし、ルートが設定されていない場合は、管制局へルートを問合わせ、ルートに係るリンクID列の送付を受ける。そして、遷移確率記憶部108において、管制局から送付された各リンクIDに含まれる全サブリンクに対してルートフラグを“ルート上”と設定し、それ以外のサブリンクを“ルート外”と設定する。
一方、ルートが既に設定されている場合は、通信部109から管制局に対して自車両が走行する予定のルートの変更の有無を確認する。そして、ルートの変更が有る場合は、変更後の全リンクID列を取得し、送付された各リンクIDに含まれる全サブリンクに対してルートフラグを“ルート上”に、それ以外を“ルート外”として遷移確率記憶部108へ設定する。
ステップ208では、位置推定部105は、走行状態記憶部106に1ステップ前の地図上自車位置が存在し、前回の地図上位置の計算した位置から走行距離が規定の値以下であるか否かを判断する。走行距離が規定の値以下である場合はステップ209へ移行する。走行距離が規定の値より大きい場合はステップ210へ移行する。
ステップ209では、1ステップ前の地図上自車位置からリンク上を速度分だけ進行した位置を地図上位置として設定し、ステップ211へ移行する。ステップ210では、自車位置から地図上自車位置を算出・設定し、ステップ211へ移行する。次にステップ209およびステップ210の地図上自車位置の算出方法を示す。
地図上位置は、トポロジカル地図上のどこに自車位置が存在するかを表わすものであり、ステップ206で取得した自車位置周辺のトポロジカル地図に含まれるリンクID301、サブリンクID305、リンク始点302からの距離の3つの変数(linkID,slinkID,leng)によって一意に表わされる。入力はステップ204もしくはステップ205で設定されたローカル座標系の自車位置である。
ステップ209の場合、走行状態記憶部106に1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))が存在するので、ステップ202で計算した速度v(t)から地図上位置を図4の処理フローに従って計算する。図4におけるステップ401では、1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))を走行状態記憶部106より取得し、今回の地図上自車位置(linkID(t),slinkID(t),leng(t))に設定し、ステップ402へ移行する。ステップ402では、ステップ202で取得した速度v(t)に位置推定部105の起動する周期を乗じて車両の進行距離を計算・設定し、ステップ403へ移行する。ステップ403ではlinkID(t)に対応するリンク終点の座標303を地図データから検索し、今回の地図上自車位置(linkID(t),slinkID(t),leng(t))からリンク終点303までの距離を計算する。計算したリンク終点303までの距離と、進行距離を比較し、進行距離が小さい場合はステップ404へ移行し、進行距離が大きい場合はステップ405へ移行する。ステップ404では、linkID(t)の終点から接続するリンクID305を検索し、linkID(t)を変更する。また、進行距離からステップ403で計算したリンク終点までの距離を減じた値を新しい進行距離として更新し、ステップ403へ戻る。ステップ405では、slinkID(t)に対応するサブリンクID307をステップ206で取得した地図データから検索し、そのサブリンク終点311までの長さを計算する。計算したサブリンク終点311までの長さと進行距離を比較し、進行距離よりも大きい場合はステップ406へ移行し、小さい場合はステップ407へ移行する。ステップ406では、slinkID(t)の次のサブリンクID307にslinkID(t)を変更する。また、進行距離からステップ405で計算したサブリンク終点までの距離を減じた値を新しい進行距離として更新し、ステップ405へ戻る。ステップ407では、進行距離をサブリンク始点からの距離legn(t)に設定し、ステップ211へ移行する。
一方、ステップ210の場合、地図上自車位置をステップ204もしくはステップ205で設定された自車位置から計算することになる。図5は自車位置から地図上自車位置を算出する処理フローを示す図であり、図6は自車位置と地図データの関係を示す概略図である。
図5におけるステップ501では、ステップ206で取得した自車位置周辺の地図データからリンクID301およびサブリンクID307を先頭から順番に選択し、ステップ502に移行する。ステップ502では、「選択したサブリンクID307から自車位置よりも後方かつ進行方位の延長線上にサブリンクの始点が存在するという事象u」が起こる確率P(u)を計算し、ステップ503へ移行する。ここで図6を用いて確率P(u)の計算方法について説明する。
まず、図6に示すように、自車位置601と、ステップ501で選択されたサブリンクID307に対応するサブリンク602と、サブリンク602の始点603と、サブリンク602の始点603の存在範囲604とを地図データから取得する。サブリンクの始点603は正規分布でその存在確率が規定され、存在範囲604は3σの位置とすると、サブリンクの始点603からある点(x,y)にサブリンクの始点603が存在する確率P(x、y|u)は下記のように計算できる。ただし、下記式におけるruは存在範囲604の値である。
よって、サブリンクの始点603がステップ202で計算した進行方向の延長線605上に存在し、かつ自車位置よりも後方に存在する確率P(u)は下記の式で計算できる。ただし、下記式におけるxの積分範囲は、進行方向のx軸成分が正の場合には(-∞,自車位置のx座標)、負の場合には(自車位置のx座標,∞)となる。また、yの積分範囲は、進行方向のy軸成分が正の場合には(-∞,自車位置のy座標)、負の場合には(自車位置のy座標,∞)となる。
次にステップ503では、「選択したサブリンクID307から自車位置よりも前方かつ進行方位の延長線上にサブリンクの始点が存在するという事象v」が起こる確率P(v)を計算し、ステップ504へ移行する。再び図6を用いて確率P(v)の計算方法について説明する。
図6に示すように、自車位置601と、ステップ501で選択されたサブリンクID307に対応するサブリンク602と、サブリンク602の終点607と、終点607の存在範囲606とを地図データから取得する。サブリンク602の終点607は正規分布でその存在確率が規定され、存在範囲606は3σの位置とすると、サブリンク602の終点607からある点(x、y)にサブリンク602の終点607が存在する確率P(x、y|v)は下記式により計算できる。ただし、下記式におけるrvは存在範囲606の値である。
よって、サブリンク602の終点607がステップ202で計算した進行方向の延長線605上に存在し、かつ自車位置よりも前方に存在する確率P(v)は下記の式で計算できる。ただし、下記式において、yは進行方位を傾きとしたxの一次関数として表わされ、xの積分範囲は、進行方向のx軸成分が正の場合には(自車位置のx座標,∞)、負の場合には(-∞,自車位置のx座標)となる。また、yの積分範囲は、進行方向のy軸成分が正の場合には(自車位置のy座標,∞)、負の場合には(-∞,自車位置のy座標)となる。
ステップ504では、自車位置が選択したサブリンク上に存在する確率P(u,v)を計算し、ステップ509へ移行する。P(u,v)は下記の式で計算できる。
ステップ505では、1ステップ前の地図上自車位置が存在するかどうかを判断し、存在しない場合はステップ506へ移行し、存在する場合はステップ507へ移行する。
ステップ506では、ステップ501で選択したサブリンクに地図上自車位置が存在する確率であるサブリンク候補確率P(L)としてP(u,v)を設定し、ステップ509へ移行する。
ステップ507では、遷移確率記憶部108から1ステップ前の地図上自車位置を取得後、対応する遷移確率を取得する。ここで、遷移確率とは、走行経路上における或る地点から或る地点へ自車が遷移する確率を示すものとし、本実施の形態では遷移元の或るサブリンクから遷移先の或るサブリンクへ地図上自車位置が遷移する確率としている。
図7は本実施の形態における遷移確率記憶部108のデータ構造を示す図である。図7において、遷移元リンクID701は1ステップ前の地図上自車位置のリンクIDであるlinked(t-1)に当たり、遷移元サブリンクID702は1ステップ前の地図上自車位置のサブリンクIDであるslinked(t-1)に当たる。遷移先サブリンク数703は、遷移元のサブリンクから地図上自車位置が遷移する可能性のあるサブリンク数が入力されている。なお、本実施の形態に係るサブリンク数は車両の最大速度に基づいて決定されている。遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705は、遷移元から地図上自車位置が遷移する可能性のあるリンクおよびサブリンクのIDが入力されている。遷移確率706には、「遷移元リンクID701および遷移元サブリンクID702により一意に決定されるサブリンクから、遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705で一意に決定されるサブリンクに、地図上自車位置が遷移するという事象s」が起こる確率(遷移確率)が入力されている。また、平均速度707、速度分散708、平均加速度709、加速度分散710、平均進行方位711、進行方位分散712、平均角速度713、角速度分散714は、事象sが起こった際に観測される各走行状態の平均値と分散値が入力されている。また、観測回数715は観測される走行状態の分散値および平均値(707〜714)の母集団の数で0より大きな値が入力されている。
ステップ507では、1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))を取得し、linkID(t-1)、slinkID(t-1)の組み合わせに対応する遷移元リンクID701、遷移元サブリンクID702を検索し、遷移元サブリンクID702に連なる遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705からステップ501で選択したリンクID301、サブリンクID307の組み合わせに対応する箇所を検索し、その遷移確率706および観測される走行状態の分散値および平均値(707〜714)を取得し、ステップ202で計算された走行状態である事象oと事象sが同時に起こる観測時遷移確率P(s、o)を計算する。観測時遷移確率P(s、o)は下記式に基づいて計算される。ただし、下記式におけるa(*)、σ(*)は各走行状態の平均と分散である。
ステップ508にて、ステップ501で選択したサブリンクに地図上自車位置が存在する確率(サブリンク候補確率)P(L)を計算する。P(L)は以下のように、確率P(s、o)と確率P(u、v)から求めることができる。
ここで、W(L)はルートフラグ716による重みである。対象とするサブリンク候補が“ルート上”か“ルート外”かにより重みを設定する。“ルート外”のサブリンクに地図上自車位置が存在しないとする場合は、“ルート外”の重みに0を設定する。
ステップ509では、サブリンク候補テーブルの尤度にP(L)を設定する。図8はサブリンク候補テーブルの構造を示す図である。この図に示すように、サブリンク候補テーブルには、ステップ501で選択されたサブリンクの存在するリンクID801と、サブリンクID802と、各サブリンクIDに対応する尤度803が記憶される。
ステップ510では、ステップ206で取得した自車位置周辺のトポロジカル地図に含まれるサブリンクID305の全てが選択されたかを判断し、まだ選択していないサブリンクが存在している場合、ステップ501へ戻り、ステップ501からステップ510の処理を繰り返す。全てのサブリンクを選択し終えている場合は、ステップ511へ移行する。
ステップ511では、サブリンク候補テーブルから最も尤度の高いサブリンクIDを選び出し、当該サブリンクIDに基づいて決定した地図上自車位置を走行状態記憶部106に設定する。ここにおける地図上自車位置(linkID(t),slinkID(t),leng(t))におけるlinkID(t)およびslinkID(t)には、サブリンク候補テーブルの最大尤度となる行のリンクID801、サブリンクID802をそれぞれ設定すれば良い。また、サブリンク始点からの距離leng(t)としては、自車位置から決定したサブリンクへ下ろした垂線の足とサブリンク始点との距離を設定する。垂線が下ろせない場合は、サブリンク始点もしくはサブリンク終点で自車位置に近い方を設定する。
上記のようにステップ209又はステップ210が終了したら、位置推定部105は、ステップ211において、地図上自車位置の設定が完了したメッセージを位置遷移確率計算部107へ送信して位置推定部105の処理を終了する。
ここで図1に戻る。位置遷移確率計算部107は、位置推定部105の起動周期とは別の起動周期を持つ。位置遷移確率計算部107は、自車両の現在及び過去の位置情報及び走行状態情報に基づいて、自車両の走行経路における所定の位置(ここでは「サブリンク」)に自車両が将来存在する確率(遷移確率)を算出する処理を実行する部分である。
図9は位置遷移確率計算部107が実行する処理フローを示す図である。本実施の形態における位置遷移確率計算部107は、地図データベース104、走行状態記憶部106および遷移確率記憶部108に記憶されたデータに基づいて、地図上自車位置が或るサブリンクから別の或るサブリンクへ遷移する確率(遷移確率)を計算している。図9におけるステップ901では、位置遷移確率計算部107は、位置推定部105からの地図上自車位置設定完了のメッセージ(ステップ211)の受信を待ち、ステップ902に移行する。ステップ902では、位置推定部105から地図上自車位置設定完了のメッセージが送信されているか否かを判断し、メッセージが送信されていない場合、ステップ901に戻り、メッセージが送信されてくるまで待機する。メッセージが送信されている場合、ステップ903へ移行する。なお、位置遷移確率計算部107は起動周期以外では、位置推定部105からの位置計算完了のメッセージを無視するものとする。
ステップ903では、1ステップ前の地図上自車位置が存在するか否かを判断し、存在しない場合はステップ910へ移行する。存在する場合は、ステップ904へ移行する。
ステップ904では、時系列順に記憶されている速度、加速度、進行方位、角速度および地図上自車位置(走行状態情報)を走行状態記憶部106から全て取得する。
図10は走行状態記憶部106に記憶されている走行状態テーブルを示す図である。遷移元と遷移先は時系列番号が隣り合っており、遷移元は時系列番号が小さい。図10では、遷移元が時系列番号iの地図上自車位置1001であり、遷移先が地図上自車位置1002となる。この時のサブリンクの組み合わせは、遷移元リンクID701:linkID(i)、遷移元サブリンクID702:slinkID(i)、遷移先リンクID704:linkID(i+1)、遷移先サブリンクID705:slinkID(i+1))となる。
ステップ905では、ステップ904で得られた地図上自車位置から時系列順に遷移元のリンクおよびサブリンクと遷移先のリンクおよびサブリンクの組み合わせを選択する。ここでは、当該時系列順のデータにおける或るステップでの地図上自車位置を「遷移元」として設定し、当該遷移元よりも1ステップ後の地図上自車位置を「遷移先」として設定し、遷移するサブリンクの組み合わせを決定する。遷移先と遷移元は1方向の遷移であり、逆は等しくはならない。
ステップ906では、位置遷移確率計算部107は、1対のサブリンクの遷移する組み合わせから、速度、加速度、進行方位、角速度の平均値、分散値を更新する。ここにおける速度、加速度、進行方位、角速度の平均値、分散値の更新は、走行状態記憶部106から時系列で取得した第i番目の速度v(i)、加速度α(i)、進行方位θ(i)、角速度ω(i)と、遷移確率記憶部108から取得した平均速度707、速度分散708、平均加速度709、加速度分散710、平均進行方位711、進行方位分散712、平均角速度713、角速度分散714、観測回数715と、以下の式を利用する。ただし、下記式におけるa(*)、σ(*)は各走行状態の平均と分散であり、nは観測回数715である。
更新した各値は、位置遷移確率計算部107に選択されたサブリンクの組み合わせに対応する各走行状態の平均、分散(707−714)および観測回数715を書きかえる。
ステップ907では、ステップ905で選択された遷移元と遷移先のリンクおよびサブリンクの組み合わせについて位置遷移確率P(s)を計算する。位置遷移確率P(s)は、下記式から計算される。ただし、下記式におけるP’(s)は遷移確率記憶部108に記録されている遷移確率706であり、nは観測回数715、Nは遷移先サブリンク数703である。
上記式によって計算された位置遷移確率P(s)は、ステップ905で遷移確率計算部107に選択されたサブリンクの組み合わせに対応する遷移確率706として設定・更新される。
ステップ908では、走行状態記憶部106に保存されている全ての時系列に係るサブリンクの組合せが選択済みであるか否かを判断する。全てのサブリンクの組合せ(時系列)が選択済みである場合、ステップ909に移行する。一方、まだ選択していない組合せ(時系列)が残っている場合にはステップ905に戻り、ステップ905からステップ908の処理を繰り返す。
ステップ909では、走行状態記憶部106に記憶されている情報を全て消去する。ステップ910では、遷移確率設定完了のメッセージを衝突位置計算部110に送信し、位置遷移確率計算部107の処理を終了する。
図1に示した衝突位置推定部110は、位置遷移確率計算部107で算出された自車両の遷移確率に基づいて、自車両の走行経路における所定の位置(サブリンク)に自車両と他車両が同時に存在する確率(衝突確率)を算出する処理を実行する部分である。
図11は衝突位置推定部110が実行する処理フローを示す図である。この図に示すように、本実施の形態における衝突位置推定部110は、位置遷移確率計算部107からの遷移確率計算完了メッセージをトリガに起動し、他車両と衝突する確率をサブリンク毎で計算する処理を実行する。
衝突位置推定部110は、まず、ステップ1101において、位置遷移確率計算部107からの遷移確率計算完了のメッセージの受信を待ち、ステップ1102に移行する。ステップ1102では、位置遷移確率計算部107から遷移確率計算完了のメッセージが送信されているかを判断し、メッセージが送信されていない場合、ステップ1101に戻り、メッセージが送信されてくるまで待機する。メッセージが送信されている場合、ステップ1103へ移行する。
ステップ1103では、衝突確率記憶部111に記憶された衝突確率テーブルを初期化する。図12は衝突確率テーブルのデータ構造を示す図である。この図に示すように、衝突確率テーブルには、自車両の遷移先サブリンクID705に対応する他車両毎の衝突確率1201が並び、自車両の遷移先サブリンクID705において衝突確率が最も高い車両IDとその衝突確率1202が抽出されている。なお、初期化時には衝突確率テーブルの全ての値が0に設定される。
ステップ1104では、通信部109を介して、図1と同じ構成の他車両及び/又は管制局より他車両の地図上の位置(現在位置)を受信しつつ、さらに、他車両の遷移確率記憶部108から、他車両の現在位置に関連する遷移先リンクID、遷移先サブリンクID、および当該遷移先サブリンクIDに係る遷移確率を受信する。そして受信した他車両の位置及び遷移確率を衝突確率記憶部111に記憶する。ステップ1105では、ステップ1104で複数台の他車両から位置および遷移確率を受信している場合、後続する衝突確率算出処理(ステップ1107)の対象としてそのうちの1台を車両ID順に選ぶ。ステップ1104で位置および遷移確率を受信した他車両が一台の場合には当該車両を選択する。ステップ1106では、後続する衝突確率算出処理(ステップ1107)の対象として、自車両の遷移確率記憶部108に記憶された遷移先リンクID704と遷移先サブリンクID705の組み合わせの中から1つをデータの記録順に選択する。
ステップ1107では、自車両及びステップ1105で選択された他車両の遷移確率のうち、ステップ1106で選択された遷移先リンクID704及び遷移先サブリンクID705に係るものに基づいて、衝突確率を計算する。図13は他車両の遷移確率記憶部108から受信したサブリンク毎の遷移確率のデータ構造を示す図である。
ここで、ステップ1107における衝突確率の計算の一例について説明する。まず、ステップ1106で選択した遷移先サブリンクID705に係る自車両の遷移確率706を「自車両がそのサブリンク上に存在するという事象q」の確率P(q)として設定する。すなわち、地図上自車位置(自車両の現在位置)に係るlinkIDおよびslinkIDとIDが等しい遷移元リンクID701および遷移元サブリンクID702を抽出し、当該遷移元リンクID701および遷移元サブリンクID702から遷移する遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705の組合せの1つを自車両の遷移確率記憶部108から選び、その組合せに係る遷移確率706を確率P(q)として設定する。
次に、ステップ1105で選択した他車両から受信したサブリンク毎の遷移確率のデータから、ステップ1106で選択した自車両の遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705と等しい遷移先リンクID1305および遷移先サブリンクID1306を検索する。そして、その検索した組み合わせに係る遷移確率1307を「ステップ1106で選択したサブリンク上に他車両が存在するという事象w」の確率P(w)として設定する。なお、検索したサブリンクIDが他車両の遷移確率のデータに存在しない場合には、P(w)には0を設定する。
ここでは、「他車両Dと衝突するという事象D」の起こる確率P(D)(衝突確率)は、自車両と他車両が同じサブリンク上に同時に存在する場合に起こるものとし、確率P(q)及びP(w)に基づいて下記式により計算できる。ただし、下記式におけるW(q),W(w)は、事象q,wそれぞれに対応するサブリンクが“ルート上”か否かによる重みを示す。ルート上のみを対象として確率を計算する場合は、“ルート外”の値を0と設定すれば良い。
ステップ1108では、ステップ1107で計算した衝突確率を衝突確率記憶部111の衝突確率テーブルに記憶する。衝突確率テーブルでは、ステップ1108で記憶した値が最大衝突確率1202(ステップ1106で選択した遷移先のリンク及びサブリンクの組合せに係る衝突確率を算出したもののうち最大のもの)よりも大きいかを常に監視し、最大衝突確率1202よりも大きい場合には、ステップ1108の値を新たな最大衝突確率として保存し、その衝突確率に係る車両IDも保存する。
ステップ1109では、自車両の遷移確率記憶部108における全ての遷移先リンクと遷移先サブリンクの組み合わせが選択されたか否かを判断し、残りが有ればステップ1106へ戻り、ステップ1106からステップ1109の処理を繰り返す。全ての組み合わせが選択された場合、ステップ1110へ移行する。
ステップ1110では、ステップ1104で受信した全ての他車両について衝突確率を計算したかを判断する。ここで残りの車両が有れば、ステップ1105へ戻り、ステップ1105からステップ1110までの処理を繰り返す。一方、全ての他車両が選択済みの場合には、ステップ1111へ移行する。
ステップ1111では、衝突確率テーブル設定完了のメッセージを表示装置112へ送信し、衝突位置推定部110の処理を終了する。
表示装置112では、衝突確率テーブル設定完了メッセージを受信すると、衝突の可能性が有る位置を画面に表示し、車両のドライバーへ通知する。次に、自車両の走行経路上において他車両と衝突可能性が高い位置の表示装置112における表示方法を示す。
図14は他車両と衝突可能性が高い位置を表示装置112に表示した第1の例を示す図である。ここでは、表示装置112に表示される全てのトポロジカル地図をサブリンク毎に分け、各サブリンクを衝突確率によって色分け表示する例を示す。図14の画面内には、自車両及び他車両の走行経路の一部がリンク1403、リンク端点1402、サブリンク1404によって表示されており、当該走行経路上には自車位置1401が表示されている。画面上に含まれるサブリンク1404は、衝突確率の大きさに応じて色分けされている。
図15は図14に示した画面を表示するために表示装置112が実行する処理フローを示す図である。この図に示すように、表示装置112は、まず、衝突位置推定部110からの衝突確率テーブル設定完了のメッセージの受信を待ち(ステップ1501)、衝突位置推定部110から衝突確率テーブル設定完了のメッセージが送信されているかを判断する(ステップ1502)。メッセージが送信されていない場合には、ステップ1501に戻り、メッセージが送信されてくるまで待機する。メッセージが送信されている場合、ステップ1503へ移行する。
ステップ1503では、画面の表示範囲に含まれるリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを地図データベース104から全て取得する。ステップ1504では、ステップ1503で取得したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを取得順に選択する。ステップ1505では、ステップ1504で選択したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111で検索する。そして、対象とするリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111に存在する場合は、その組合せに係る最大衝突確率1202を取得する。
図16は表示装置112に記憶された表示設定テーブルのデータ構造を示す図である。この図に示すように表示設定テーブルには、衝突確率Pと表示色との関係が1対1の関係で予め設定されている。この図の例では、衝突確率Pが0.3(設定値)を超える領域について、当該設定値0.3との偏差の大きさに応じて表示色が設定されており、表示色に基づいて衝突確率Pの大きさが判別可能になっている。なお、図16中の「表示設定」(表示色)に係るセルには有彩色の名称(赤、黄、緑)が入力されているが、ここではグレースケールで表示するものとし、赤、黄、緑の順で黒が薄くなっている。表示設定テーブルの衝突確率1601は1段階より多く分けることが好ましく、表示設定は色以外にもマークや特定の色の濃淡等で分けても良い。また、ここでは衝突確率Pが0.3を超える領域について色等を付して表示するものとしたが、これに代えて衝突確率Pが0.3以上の領域について色等を付して表示しても良い。さらに、ここでは設定値を0.3としたが、その他の値を設定値としても良いことは言うまでも無い。
ステップ1506では、ステップ1505で取得した衝突確率(最大衝突確率1202)の大きさに対応する色を図16の表示設定テーブルを参照して決定する。これにより衝突確率Pが設定値(0.3)を超えるリンクID及びサブリンクIDの組合せ(サブリンク)が特定される。ステップ1507では、ステップ1504で選択したリンクID及びサブリンクIDの組合せに対応する場所(サブリンク)を、ステップ1506で決定した表示設定に従って画面に表示する。
ステップ1508では、ステップ1503で取得した全ての表示対象のリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが選択されたか否か(すなわち、表示されたか否か)を判断する。ここで残りが有る場合はステップ1504へ戻り、ステップ1504からステップ1508の処理を繰り返す。一方、全ての表示対象のリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが選択されている場合には、ステップ1509へ移行する。ステップ1509では、表示画面において、地図上自車位置に対応する場所に自車位置を表示し、表示装置112の処理を終了する。
図17は他車両と衝突可能性が高い位置を表示装置112に表示した第2の例を示す図である。この図に示した例では、特定の他車両との衝突確率を表示している。図17の画面内には、自車の現在位置1701と、他車の現在位置1702と、リンク1703と、衝突可能性の高さごとに色分けされたサブリンク1704が表示されている。
図18は図17に示した画面を表示するために表示装置112が実行する処理フローを示す図である。この図に示すように、表示装置112は、まず、衝突位置推定部110からの衝突確率テーブル設定完了のメッセージの受信を待ち(ステップ1801)、衝突位置推定部110から衝突確率テーブル設定完了のメッセージが送信されているかを判断する(ステップ1802)。メッセージが送信されていない場合には、ステップ1801に戻り、メッセージが送信されてくるまで待機する。メッセージが送信されている場合には、ステップ1803へ移行する。
ステップ1803では、画面の表示範囲に含まれるリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを地図データベース104から全て取得する。ステップ1804では、画面上に衝突確率を表示する他車両をそのIDに基づいて選択する。ここでの他車両の選択は、自車両内に設置された入力装置を介したドライバーの入力操作に基づいて行っても良いし、管制局からの入力に基づいて行っても良いし、予め設定(例えば、自車両に最も近い他車両を選択する)しておいても良い。ステップ1805では、ステップ1803で取得したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを取得順に選択する。ステップ1806では、ステップ1805で選択したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111で検索する。そして、対象とするリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111に存在する場合は、その組合せに係る最大衝突確率1202を取得する。
ステップ1807では、ステップ1806で取得した衝突確率(最大衝突確率1202)の大きさに対応する色を図16の表示設定テーブルを参照して決定する。ステップ1808では、ステップ1805で選択したリンクID及びサブリンクIDの組合せに対応する場所(サブリンク)を、ステップ1807で決定した表示設定に従って画面に表示する。
ステップ1809では、ステップ1803で取得した全ての表示対象のリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが選択されたか否か(すなわち、表示されたか否か)を判断する。ここで残りが有る場合には、ステップ1805へ戻り、ステップ1805からステップ1809の処理を繰り返す。一方、全ての表示対象のリンクIDおよびサブリンクIDの組合せが選択されている場合には、ステップ1810へ移行する。ステップ1810では、表示画面において、地図上自車位置に対応する場所に自車位置および他車両位置を表示し、表示装置112の処理を終了する。なお、他車両の位置は、ステップ1804で選択した他車両のIDに対応する位置を衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111における他車両の位置より取得すればよい。
図19は他車両と衝突可能性が高い位置を表示装置112に表示した第3の例を示す図である。この図に示した例では、特定の他車両との衝突確率が最も高い場所をピンポイントで表示し、さらに、その場所に特定の他車両がどの方向から近づくか(進入方向)を表示している。図19の画面内には、自車位置1901と、他車位置1902と、当該他車両との衝突確率が最大となる位置に付される衝突マーク1903と、衝突マーク1903が付される位置への他車両の進入方向を示すマーク1904が表示されている。
図20は図19に示した画面を表示するために表示装置112が実行する処理フローを示す図である。この図に示すように、表示装置112は、まず、衝突位置推定部110からの衝突確率テーブル設定完了のメッセージの受信を待ち(ステップ2001)、衝突位置推定部110から衝突確率テーブル設定完了のメッセージが送信されているかを判断する(ステップ2002)。メッセージが送信されていない場合には、ステップ2001に戻り、メッセージが送信されてくるまで待機する。一方、メッセージが送信されている場合には、ステップ2003へ移行する。
ステップ2003では、画面の表示範囲に含まれるリンクIDおよびサブリンクIDの組合せを地図データベース104から全て取得する。ステップ2004では、ステップ1804と同様に、画面上に衝突確率を表示する他車両をそのIDに基づいて選択する。ステップ2005では、ステップ2003で取得したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せの中からステップ2004で選択した他車両と最も衝突する確率の高いものを衝突確率記憶部(衝突確率テーブル)111から取得する。ステップ2006では、ステップ2005で選択したリンクIDおよびサブリンクIDの組合せに係るサブリンクに衝突マーク1903を表示する。これにより衝突マーク1903を表示したサブリンクが他のサブリンクと判別可能になる。他車両と最も衝突する確率の高い位置の表示は、衝突マーク1903以外にも、色を付けたり、色の濃淡等で表わしても良い。
ステップ2007では、ステップ2004で選択した他車両の位置からステップ2005で取得した位置までの経路を探索する。ここにおける経路の探索は、例えばダイクストラ法等の公知の方法により計算できる。ステップ2008では、ステップ2007で計算した経路から、衝突確率が最大となる位置における他車両の進入方向を計算する。ここにおける他車両の進入方向は、例えば次のように計算できる。
まず、衝突確率が最大となる位置の座標oから所定距離離れたサブリンクの始点又は終点の座標tを地図データベース104から取得する。また、衝突確率が最大となる位置が含まれるリンクの始点座標sと終点座標eを地図データベース104から取得する。これらの座標から、他車両の進入方向Θを下記式により求めることができる。
図21は表示装置112に記憶された他の表示設定テーブルのデータ構造を示す図である。この図に示したテーブルには、自車両の走行経路に対する他車両の進入方向Θと、各進入方向Θに係る表示マーク(表示画像)との関係が、1対1の関係で予め設定されている。この図において、表示設定1は自車両の前方から他車両が直進してくる場合を示し、表示設定2は自車両の前方の交差点を他車両が右折してくる場合を示し、表示設定3は自車両の前方の交差点を他車両が左折してくる場合を示し、表示設定4は自車両の後方から他車両が直進してくる場合を示す。
ステップ2009では、ステップ2008で求めた他車両の進入方向Θに対応する表示マークを図21の表示設定テーブルに基づいて決定し、当該表示マークを表示装置112の画面上に表示する。その際の画面上での表示マーク1904の表示位置は特に限定しない。ステップ2010では、表示画面において、地図上自車位置に対応する場所に自車位置を表示するとともに、他車両位置を表示し、表示装置112の処理を終了する。
上記のように構成した本実施の形態に係る運行管理システムによれば、走行経路上における各車両の遷移確率に基づいて、その時刻における他車両との衝突可能性の高低が判断されるので、衝突の可能性が相対的に低い場所(相対的に衝突確率の低い場所)で車両運行が阻害されることが抑制され、車両の運行効率を向上できる。また、車両の走行経路を分割して得られる各領域(上記の例ではサブリンク)について衝突確率を算出しているので、ドライバーが走行経路上のどの辺りで衝突確率が高いのかを容易に予測することができる。さらに、各領域についての衝突確率の大小も表示されるので、その中で特に注意すべき領域を容易に特定できる。
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、位置遷移確率の計算および衝突位置の推定を車両では無く、管制局に設置したコンピュータ(以下、単に「管制局」と称することがある)において行うものである。
図22は本発明の第2の実施の形態に係る運行管理システムの概略構成図である。なお、先の実施の形態と同じ部分には同じ符号を付して説明を適宜省略することがある。この図に示す車両に設置された運行管理装置には、GPS受信機101と、慣性センサ102と、速度センサ103と、位置推定部105と、表示装置112と、車両制御部113と、通信部109Aと、車両用地図データベース104Aと、位置記憶部2207が備えられている。また、管制局に設置したコンピュータには、位置遷移確率計算部107と、衝突位置推定部108と、通信部109Bと、管理局用地図データベース104Bと、走行状態記憶部106と、遷移確率記憶部110と、ルートデータベース2211が備えられている。なお、図中に1台の車両のみを示したが、同様の構成を備えた複数の車両が当該システムに含まれているものとする。
位置記憶部2207は、位置推定部105が算出する情報を記憶する部分であり、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置を利用することが好ましい。また、ルートデータベース(ルート記憶手段)2211は、管理対象である各車両の走行経路を記憶する部分である。
車両用地図データベース104Aと管制局用地図データベース104Bは、第1の実施の形態における地図データベース104に相当する。なお、管制局用地図データベース104Bに管理対象となる全車両の走行経路に係る地図データを記憶し、各車両の地図データベース104Aには自車両の走行経路に係る地図データのみを記憶する構成としても良い。通信部109Aは各車両が管制局と各種データの授受を行うためのものであり、通信部109Bは管制局が各車両と各種データの授受を行うためのものである。
図23は第2の実施の形態に係る位置推定部105が実行する処理フローを示す図である。この図に示すように、位置推定部105は、周期的に起動し(ステップ2301)、慣性センサ102および速度センサ103から得られた情報から、車両の進行方位θ、走行路勾配φ、速度v、加速度α、角速度ωを計算し、各車両の走行状態を位置記憶部2207に保存する(ステップ2302)。各車両の走行状態の計算の方法は第1の実施の形態と同様である。
ステップ2303では、GPS位置情報がGPS受信機101から出力されているかを判断する。ここで、GPS受信機101の出力周期の場合には、ステップ2304へ移行する。一方、GPS受信機101の出力周期でない場合には、ステップ2305へ移行する。ステップ2304では、GPS位置情報が取得できるので、GPS位置情報をある位置を原点としたローカル座標系に変換し、自車位置として設定し、ステップ2306へ移行する。一方、ステップ2305では、GPS位置情報が出力されていないため、ローカル座標系におけるデッドレコニングによる位置推定結果を自車位置として設定し、ステップ2306へ移行する。デッドレコニングによる位置推定は第1の実施の形態と同様なので説明は省略する。
ステップ2306では、自車位置周辺の地図データを車両用地図データベース104Aから取得する。図24は車両用地図データベース2204のデータ構造を示す図である。この図において、リンクID2401からサブリンク終点半径2412までは、第1の実施の形態における地図データベース104の構造301から312と同じである。ルートフラグ2413は、第1の実施の形態における図7のルートフラグ716と同じである。自車位置周辺の地図データは、自車位置から始点もしくは終点がある範囲内に存在するリンクID2401に紐付くデータを全て取得する。自車位置周辺の地図データを取得できればステップ2307に移行する。
ステップ2307では、自車両が走行する予定のルートを管制局と通信することで取得する。自車両の走行する予定のルートは車両用地図データベース104Aに含まれるルートフラグの項目で規定される。ルートフラグの設定は第1の実施の形態と同じである。もし、ルートが設定されていない場合は、管制局へルートを問合わせ、ルートであるリンクID列の送付を受け、送付された各リンクIDに含まれる全サブリンクに対してルートフラグを“ルート上”、それ以外を“ルート外”として車両用地図データベース104Aへ設定する。ルートが既に設定されている場合は、通信部109Aから管制局に対して自車両が走行する予定のルートの変更の有無を確認する。ルートの変更が有る場合には、変更後の全リンクID列を取得し、送付された各リンクIDに含まれる全サブリンクに対してルートフラグを“ルート上”に、それ以外を“ルート外”として車両用地図データベース104Aへ設定する。
ステップ2308では、位置記憶部2207に1ステップ前の地図上自車位置が存在し、前回の地図上位置の計算した位置から走行距離が規定の値以下であるかを判断する。走行距離が規定の値以下である場合にはステップ2309へ移行する。走行距離が規定の値より大きい場合にはステップ2310へ移行する。
ステップ2309では、1ステップ前の地図上自車位置から速度分だけリンク上を進行した位置を地図上位置として設定し、ステップ2311へ移行する。ステップ2310では、自車位置から地図上自車位置を算出、設定し、ステップ2311へ移行する。ステップ2309およびステップ2310の地図上自車位置の算出方法を以下に示す。
地図上自車位置は、ステップ2306で取得した自車位置周辺のトポロジカル地図に含まれるリンクID2401、サブリンクID2405、リンク始点2402からの距離の3つの変数(linkID,slinkID,leng)で一意に表わされる。入力はステップ2304もしくはステップ2305で設定されたローカル座標系の自車位置である。
ステップ2309の場合、位置記憶部2207に1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))が存在するので、ステップ2302で計算した速度v(t)から図4の処理フローに従って地図上位置を計算する。
ステップ401では、1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))を位置記憶部2207より取得し、今回の地図上自車位置(linkID(t),slinkID(t),leng(t))として設定する。ステップ402では、ステップ2302で取得した速度v(t)に位置推定部105の起動する周期を乗じて車両の進行距離を計算、設定する。ステップ403ではlinkID(t)に対応するリンク終点の座標2403を地図データから検索し、今回の地図上自車位置(linkID(t),slinkID(t),leng(t))からリンク終点2403までの距離を計算する。計算したリンク終点2403までの距離と、進行距離とを比較し、進行距離が小さい場合はステップ404へ移行し、進行距離が大きい場合はステップ405へ移行する。ステップ404では、linkID(t)の終点から接続するリンクID2405を検索し、linkID(t)を変更する。また、進行距離からステップ403で計算したリンク終点までの距離引いた値を新しい進行距離として更新し、ステップ403へ戻る。ステップ405では、slinkID(t)に対応するサブリンクID2407をステップ2306で取得した地図データから検索し、そのサブリンク終点2411までの長さを計算する。計算したサブリンク終点2411までの長さと進行距離を比較し、進行距離よりも大きい場合はステップ406へ移行し、小さい場合はステップ407へ移行する。ステップ406では、slinkID(t)の次のサブリンクID2407にslinkID(t)を変更する。また、進行距離からステップ405で計算したサブリンク終点までの距離引いた値を新しい進行距離として更新し、ステップ405へ戻る。ステップ407では、進行距離をサブリンク始点からの距離legn(t)に設定し、ステップ2311へ移行する。
一方、ステップ2310の場合、ステップ2304もしくはステップ2305で設定された自車位置から図5の処理フローに従って地図上自車位置を計算する。
ステップ501では、ステップ2306で取得した自車位置周辺の地図データからリンクID2401およびサブリンクID2407を先頭から順番に選択する。ステップ502では、「選択したサブリンクID2407から自車位置よりも後方かつ進行方位の延長線上にサブリンクの始点が存在するという事象u」が起こる確率P(u)を計算する。確率P(u)の計算方法は第1の実施形態と同様である。ステップ503では、「選択したサブリンクID2407から自車位置よりも前方かつ進行方位の延長線上にサブリンクの始点が存在するという事象v」が起こる確率P(v)を計算する。確率P(v)の計算方法は第1の実施形態と同様である。ステップ504では、自車位置が選択したサブリンク上に存在する確率P(u,v)を計算する。P(u,v)の計算は第1の実施形態と同様である。ステップ505では、1ステップ前の地図上自車位置が存在するかどうかを判断し、存在しない場合にはステップ506へ移行し、存在する場合にはステップ507へ移行する。ステップ506では、ステップ501で選択したサブリンクに地図上自車位置が存在する確率である、サブリンク候補確率P(L)にP(u,v)を設定し、ステップ509へ移行する。ステップ507では、位置記憶部2207から1ステップ前の地図上自車位置を取得後、対応する遷移確率を管制局より取得する。管制局より得られた遷移確率は位置記憶部2207に一次保存される。保存されるデータ構造は図7と同じデータ構造を持つ。1ステップ前の地図上自車位置(linkID(t-1),slinkID(t-1),leng(t-1))を取得し、linkID(t-1)、slinkID(t-1)の組み合わせに対応する遷移元リンクID701、遷移元サブリンクID702を検索し、遷移元サブリンクID702に連なる遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705からステップ501で選択したリンクID2401、サブリンクID2407の組み合わせに対応する箇所を検索し、その遷移確率706および観測される走行状態の分散値および平均値(707〜714)を取得し、ステップ2302で計算された走行状態である事象oと事象sが同時に起こる観測時遷移確率P(s、o)を計算する。観測時遷移確率P(s、o)の計算は第1の実施形態と同様である。ステップ508では、ステップ501で選択したサブリンクに地図上自車位置が存在する確率(サブリンク候補確率)P(L)を計算する。P(L)は、第1の実施形態と同様にして求めることができる。ステップ509では、サブリンク候補テーブルの尤度にP(L)を設定する。サブリンク候補テーブルは図8に示すような構造であり、ステップ501で選択されたサブリンクの存在するリンクID801と、サブリンクID802と、各サブリンクIDに対応する尤度803が記憶される。ステップ510では、ステップ206で取得した自車位置周辺のトポロジカル地図に含まれるサブリンクID305の全てが選択されたかを判断し、選択していないサブリンクが存在している場合には、ステップ501へ戻り、ステップ501からステップ510の処理を繰り返す。全てのサブリンクを選択し終えている場合には、ステップ511へ移行する。ステップ511では、サブリンク候補テーブルから最も尤度の高いサブリンクIDを選び出し、地図上自車位置を位置記憶部2207に設定する。
ステップ2311では、位置記憶部2207に保存されている地図上自車位置および自車状態を通信部109Aから管制局へ送信する。ステップ2312では、地図上自車位置の設定が完了したメッセージを表示装置112へ送信して位置推定部105の処理を終了する。表示装置112は地図上自車位置の設定が完了したメッセージを受け取り、車両制御や表示画面への情報表示を実行する。
次に管制局のおける衝突位置推定の方法について述べる。管制局では、管理する複数台の車両の位置が通信部109Bを介して不定期に得られる。ステップ2302で各車両の位置推定部105で計算された進行方位、速度、加速度、角速度などの車両状態は、通信部109Bで受信された後、走行状態記憶部106に保存される。走行状態記憶部106における走行状態テーブルは、基本的に図10のデータ構造を持つが、本実施の形態ではさらに、どの車両に係る走行状態情報であるかを判別可能にするために各データには車両IDが付されている点に特徴がある。
位置遷移確率計算部107は、所定の周期で起動し、ルートDB2211、管制局用地図データベース104B、走行状態記憶部106および遷移確率記憶部110のデータに基づいて遷移確率を計算し、当該遷移確率を遷移確率記憶部110へ記憶すると共に衝突位置推定部108へ遷移確率計算完了のメッセージを送る。
図25は位置遷移確率計算部107で実行される処理フローを示す図である。この図に示すように位置遷移確率計算部107は、一定周期で起動し(ステップ2501)、管制局で管理する車両のIDを小さい順に一つ選ぶ(ステップ2502)。
ステップ2503では、ステップ2502で選択した車両IDの1ステップ前の地図上自車位置が走行状態記憶部106に存在するかを判断する。地図上自車位置が存在しない場合には、ステップ2502へ戻り、他の車両IDの選択をする。地図上自車位置が存在する場合には、ステップ2504へ移行する。
ステップ2504では、ステップ2502で選択した車両IDに対応する速度、加速度、進行方位、角速度および地図上自車位置であって時系列順に記憶されているものを走行状態記憶部106から全て取得する。ステップ2505では、ステップ2504で得られた地図上自車位置を時系列順に第1の実施の形態と同じ組み合わせで選択する。
次に、ステップ2506では、1対のサブリンクの遷移する組み合わせから、速度、加速度、進行方位、角速度の平均値、分散値を更新し、ステップ2507へ移行する。更新方法は第1の実施の形態と同様である。ステップ2507では、位置遷移確率を計算し、遷移確率記憶部110へ設定する。位置遷移確率は第1の実施の形態と同様の方法で計算される。
次に、ステップ2508では、走行状態記憶部106に保存されている全ての時系列を選択済みであるかを判断する。全ての時系列を選択済みである場合には、ステップ2509に移行する。まだ選択していない時系列が残っている場合には、ステップ2505に戻り、ステップ2505からステップ2508の処理を繰り返す。
ステップ2509では、走行状態記憶部106の走行状態テーブルに記憶されている情報を全て消去する。ステップ2510では、全ての車両IDが選択済みかどうかを判断する。全て選択済みの場合には、ステップ2511へ移行する。選択されていない車両IDが残っている場合には、ステップ2502へ戻り、上記の処理を繰り返す。ステップ2511では、遷移確率設定完了のメッセージを衝突位置推定部108に送信し、位置遷移確率計算部107の処理を終了する。
衝突位置推定部108は、位置遷移確率計算部107からの遷移確率計算完了メッセージをトリガに起動し、管理対象となっている複数の車両のうち2つが衝突する確率をサブリンク毎に計算する。ここでは、説明を簡略化するため、図22に構成を示した車両が他車両と衝突する確率を計算するものとする。衝突位置推定部108の処理方法は第1の実施の形態と同様である。衝突確率の算出が完了したら、衝突位置推定部108は、車両の表示装置112に対して通信部109Bを介して衝突確率テーブル設定完了のメッセージを送信して処理を終了する。表示装置112における表示処理については第1の実施の形態と同じなので説明は省略する。
以上のように構成した運行管理システムによっても、第1の実施の形態と同様に各車両の遷移確率に基づいて衝突確率が算出されるので、各車両の運行効率を向上することができる。特に、本実施の形態では、システムに係る構成を車両と管制局に分散できるので、第1の実施の形態と比較して各車両の構成を簡略化することができる。
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に各車両の表示装置112に衝突確率を表示することとしたが、当該車両が無人走行している場合等には管制局側に表示装置112を設置し、当該表示装置112に衝突確率を表示するように構成しても良い。また、衝突確率が所定の値を超える無人車両の車両制御装置113に対して、管制局から制御信号を出力し、当該信号に基づいて当該無人車両の速度を変化することで衝突確率を低減する処理を実行しても良い。
ところで、上記の各実施の形態では、線状に表した走行経路を線分に分割し、各線分に係る遷移確率を算出したが、走行経路を他の方法で複数に分割したものに係る遷移確率を算出して衝突確率を算出しても良い。この種の方法としては、走行経路を面状に定義し、その面状の走行経路を複数の領域に分割して得られる各領域について遷移確率を算出するものがある。また、上記の各実施の形態では、遷移先リンクID704および遷移先サブリンクID705の組合せに係る遷移確率に基づいて衝突確率を算出したが、各サブリンクに固有のIDを付することができれば遷移先サブリンクIDに係る遷移確率から衝突確率を算出しても良い。
また、上記の各実施の形態では、移動体としてダンプトラックを例に挙げて説明した。ダンプトラックは、一般的な乗用車と比較して同じ走行経路を同じような走行状態で複数回往復することが多く、遷移確率に基づく衝突予測をする観点からは非常に好ましいことが指摘できる。しかし、上記発明は、ダンプトラックに限られず、その他の建設機械を含む種々の移動体にも適用可能である。
また、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。