図1は本発明の実施例の概略全体図を示している。図1を参照すると、DCはデータセンタを、Vは移動体をそれぞれ示している。図1に示される例では移動体Vは車両である。別の実施例では、移動体は移動ロボットである。データセンタDCは移動体の推奨ルート決定システム10を備える。一方、車両は制御システム30をそれぞれ備える。図1に示されるように、データセンタDCと複数の複数の車両Vとは、インターネットのような通信網NWを介して相互に通信可能になっている。
図2はデータセンタDCに設置された推奨ルート決定システム10のブロック図を示している。図2を参照すると、推奨ルート決定システム10は、道路地図記憶装置11、環境地図記憶装置12、通信装置13、及び、電子制御ユニット(ECU,Electronic Computer Unit)20を備える。
道路地図記憶装置11は、道路地図情報を記憶するように構成されている。道路地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば、道路の幅、カーブと直線部の種別、カーブの曲率、交差点、合流点及び分岐点の位置など)などが含まれる。道路地図記憶装置11に記憶されている道路地図情報は電子制御ユニット20からの要求に応じて電子制御ユニット20に送信される。なお、道路には、移動体が移動可能な、屋内の通路なども含まれる。
環境地図記憶装置12は、環境地図情報を記憶するように構成されている。環境地図情報については後述する。環境地図情報は電子制御ユニット20からの要求に応じて電子制御ユニット20に送信される。
通信装置13は、電子制御ユニット20が通信網NWを介して外部と通信できるようにするように構成されている。
電子制御ユニット20は、CPU(Central Processing Unit)などを備えたコンピュータである。本発明による実施例では、電子制御ユニット20は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶部21、獲得部22、一次候補決定部23、算出部24、判断部25、推奨ルート決定部26、及び、環境地図作成・更新部27を備える。
獲得部22は、車両Vの出発地の位置情報及び目的地の位置情報を獲得するように構成されている。一方、一次候補決定部23は、道路地図情報、並びに、車両Vの出発地の位置情報及び目的地の位置情報を用いて、車両Vのルートの一次候補を複数決定するように構成されている。算出部24は、環境地図情報を用いて、一次候補の推奨ルート状態量変化性をそれぞれ算出するように構成されている。判断部25は、一次候補のうちルート状態量変化性が最小の一次候補上を走行する他車両の数があらかじめ定められた設定数よりも少ないか否かを判断するように構成されている。推奨ルート決定部26は、他車両の数が設定数よりも少ないと判断されたときには、ルート状態量変化性が最小の一次候補を車両Vの推奨ルートに決定し、他車両の数が設定数よりも多いと判断されたときには、ルート状態量変化性があらかじめ定められたしきい値よりも小さい一次候補のうちのいずれか1つを車両Vの推奨ルートに決定する、ように構成されている。環境地図作成・更新部27は、環境地図情報を作成して環境地図記憶装置12に記憶するとともに、環境地図記憶装置12に記憶されている環境地図情報を更新するように構成されている。
一方、図3は車両Vに搭載された制御システム30のブロック図を示している。図3を参照すると、車両Vの制御システム30は、外部センサ31、GPS受信機32、内部センサ33、道路地図記憶装置34、記憶装置35、通信装置36、HMI(Human Machine Interface)37、アクチュエータ38、及び、電子制御ユニット40を備える。
外部センサ31は自車両Vの外部又は周囲の情報を検出するように構成されている。外部センサ31はライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダー(Radar)、及びカメラのうち少なくとも1つを備える。本発明による実施例では図4に示されるように、外部センサ31はライダー31a、レーダー31b、及びカメラ31cを備える。
ライダー31aはレーザー光を利用して自車両が走行している道路や外部の障害物を検出する装置である。図4に示される例では、4つのライダー31aが車両Vの四隅においてバンパーにそれぞれ取り付けられる。ライダー31aは、自車両Vの全周囲に向けてレーザー光を順次照射し、その反射光から道路上及び道路周辺の障害物までの距離を計測し、自車両Vの全周囲における道路及び障害物を三次元画像の形で検出する。ライダー31aにより検出された道路及び障害物の三次元画像は電子制御ユニット40へ送信される。一方、レーダー31bは、電波を利用して自車両Vの外部の障害物を検出する装置である。図4に示される例では4つのレーダー31bが車両Vの四隅においてバンパーにそれぞれ取り付けられる。レーダー31bは、レーダー31bから自車両Vの周囲に電波を発射し、その反射波から自車両Vの周囲の障害物までの距離を計測する。レーダー31bにより検出された障害物情報は電子制御ユニット40へ送信される。カメラ31cは図4に示される例では、車両Vのフロントガラスの内側に設けられた前方カメラを備える。前方カメラ31cは自車両Vの前方をカラー又はモノクロ撮影し、前方カメラ31cによるカラー又はモノクロ撮影情報は電子制御ユニット40へ送信される。
GPS受信機32は、3個以上のGPS衛星からの信号を受信し、それにより自車両Vの絶対位置(例えば自車両Vの緯度及び経度)を検出するように構成されている。GPS受信機32により検出された自車両Vの絶対位置情報は電子制御ユニット40へ送信される。
内部センサ33は、自車両Vの走行状態を検出するように構成されている。自車両Vの走行状態は、自車両の速度、加速度、及び姿勢のうち少なくとも1つにより表される。内部センサ33は、車速センサ及びIMU(Inertial Measurement Unit)の一方又は両方を備える。本発明による実施例では内部センサ33は車速センサ及びIMUを備える。車速センサは、自車両Vの速度を検出する。IMUは例えば3軸のジャイロ及び3方向の加速度センサを備え、自車両Vの3次元の角速度及び加速度を検出し、それらに基づいて自車両Vの加速度及び姿勢を検出する。内部センサ33により検出された自車両Vの走行状態情報は電子制御ユニット40へ送信される。
道路地図記憶装置34は、上述した道路地図記憶装置11と同様に、道路地図情報を記憶するように構成されている。道路地図記憶装置34に記憶されている道路地図情報は電子制御ユニット40からの要求に応じて電子制御ユニット20に送信される。
記憶装置35は、ライダー31aにより検出された障害物の三次元画像及びライダー31aの検出結果に基づき作成された自動運転専用の道路地図を記憶するように構成されている。これら障害物の三次元画像及び道路地図は常時又は定期的に更新される。
通信装置36は、電子制御ユニット40が通信網NWを介して外部と通信できるようにするように構成されている。
HMI37は、自車両Vの乗員と制御システム30との間で情報をやりとりするように構成されている。HMI37は、例えば、乗員に文字情報及び画像情報の少なくとも1つを提供するディスプレイ、乗員に音情報を提供するスピーカ、及び、乗員が操作する操作装置(例えば、ボタン、レバー、ダイアル、タッチパネルなど)を備える。
アクチュエータ38は、電子制御ユニット40からの制御信号に応じて自車両Vの走行操作を制御するように構成されている。車両Vの走行操作には車両Vの駆動、制動及び操舵が含まれる。アクチュエータ38は、駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ、及び操舵アクチュエータのうちの少なくとも1つを備える。本発明による実施例ではアクチュエータ38は駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ、及び操舵アクチュエータを備える。駆動アクチュエータは、車両Vの駆動力を提供するエンジン又は電気モータの出力を制御し、それにより車両Vの駆動操作を制御する。制動アクチュエータは、車両Vの制動装置を操作し、それにより車両Vの制動操作を制御する。操舵アクチュエータは、車両Vの操舵装置を操作し、それにより車両Vの操舵操作を制御する。
電子制御ユニット40は、上述した電子制御ユニット20と同様に、コンピュータである。本発明による実施例では、電子制御ユニット40は、ROM及びRAMを含む記憶部41、運転制御部42、及び、目標ルート設定部43を備える。
運転制御部42は、車両運転を制御するように構成されている。一方、目標ルート設定部43は、車両Vの目標ルートを設定するように構成されている。
次に、本発明による実施例の環境地図情報を説明する。本発明による実施例の環境地図情報は、空間内の複数の位置をそれぞれ表す位置情報と、それぞれ対応する位置情報と関連付けられた状態量変化性と、を有する。本発明による実施例では、位置情報は経度及び緯度により表される。したがって、図5に示されるように、環境地図情報Mは二次元地図の形をなす。図5に示される例では、互いに同一形状の複数の区画SCが設けられており、複数の区画SCにそれぞれおいて、当該区画SCの位置情報に対応する状態量変化性が関連付けられている。すなわち、任意の位置の位置情報が入力されると、当該位置が属する区画SCが特定され、特定された区画SCに関連付けられた状態量変化性が出力される。なお、図5において、LGは経度、LTは緯度をそれぞれ表している。別の実施例(図示しない)では、位置情報は経度、緯度及び高度により表される。この場合、環境地図情報Mは三次元地図の形をなす。
或る位置の状態量変化性は、当該或る位置の状態量に基づいて算出される。本発明による実施例では、或る位置の状態量は、当該或る位置に物体が存在する確率により表される。この場合、状態量は例えば、ゼロから1までの連続値の形で算出される。別の実施例(図示しない)では、状態量は離散値の形で算出される。
或る位置の状態量変化性は、当該或る位置の状態量の時間に対する変化のしやすさを表す数値である。具体的には、或る位置の状態量変化性は、当該或る位置の状態量の時間に対する変化が小さいときには当該変化が大きいときに比べて、小さい。本発明による実施例では、状態量変化性は連続値の形で算出される。別の実施例(図示しない)では、状態量変化性は離散値の形で算出される。次に、図6A、図6B、及び図6Cを参照して、状態量変化性を更に説明する。なお、図6A、図6B、及び図6Cには、同一の位置において種々の時間に検出された状態量がそれぞれプロットされている。
状態量変化性は、例えば、時間に対する状態量の変化の頻度や変化の程度などによって表される。図6Aに示される例の状態量は、図6Bに示される例の状態量に比べて、変化の頻度が低い。したがって、図6Aに示される例の状態量変化性は、図6Bに示される例の状態量変化性よりも小さい。一方、図6Aに示される例の状態量は、図6Cに示される例の状態量に比べて、変化の程度が小さい。したがって、図6Aに示される例の状態量変化性は、図6Cに示される例の状態量変化性よりも小さい。
本発明による実施例では、上述したように、或る位置の状態量は当該或る位置に物体が存在する確率により表される。したがって、状態量変化性が比較的大きい位置においては、当該位置を物体(例えば、他車両、歩行者など)が通過する頻度が比較的高く、当該位置の状態は比較的不安定であるということがわかる。これに対し、状態量変化性が比較的小さい位置においては、当該位置を物体が通過する頻度が比較的低く、当該位置の状態は比較的安定しているということがわかる。このように、或る位置の状態量変化性は、当該或る位置の状態の安定性を表している。
別の実施例(図示しない)では、或る位置の状態量は、或る位置に存在する物体の色又は輝度値により表される。状態量が物体の色により表わされる場合には、物体の色は、外部センサ31のカラーカメラ31cにより検出される。この場合、状態量は、例えばRGBモデルを用いて数値化される。一方、状態量が物体の輝度値により表わされる場合には、物体の輝度値は、外部センサ31のライダー31a、レーダー31b、及び、カラー又はモノクロカメラ31cのうちの少なくとも1つにより検出される。例えば、ライダー31aから発射されたレーザー光が物体に反射したときに得られる反射光の強度は当該物体の輝度値を表している。同様に、レーダー31bの反射波強度は物体の輝度値を表している。したがって、反射光強度又は反射波強度を検出することにより、物体の輝度値が検出される。
本発明による実施例では、例えば次のようにして環境地図情報Mが作成される。すなわち、まず、車両Vの外部センサ31、例えばライダー31aを用いて、空間内の複数の位置のそれぞれについて、当該位置を表す位置情報と、互いに異なる時刻における当該位置の状態量とが検出される。このことを、図7を参照して説明する。
図7は、車両Vのライダー31aから照射されたレーザー光が物体OBJで反射した場合を示している。この場合、図7に黒丸で示されるように、位置PXに反射点が形成される。ライダー31aは、反射光から、ライダー31aに対する位置PXの相対位置情報を計測する。この計測結果から、位置PXに物体OBJが存在するということがわかる。本発明による実施例では状態量は上述したように物体存在確率により表わされるので、位置PXの状態量は1となる。また、ライダー31aに対する位置PXの相対位置情報と、車両Vの自己位置情報(絶対位置)とから、位置PXの絶対位置情報が算出される。更に、図7に白丸で示される反射点でない位置PYに物体が存在しないということがわかり、したがって位置PYの状態量すなわち物体存在確率はゼロとなる。また、位置PYの絶対位置情報が算出される。このようにして、位置PX,PYの絶対位置情報及び状態量が算出される。
本発明による実施例では、ライダー31aは物体情報を例えば数十msのインターバルで繰り返し検出する。言い換えると、ライダー31aは、互いに異なる複数の時刻における物体情報を検出する。したがって、互いに異なる複数の時刻における物体情報から、互いに異なる複数の時刻における状態量が算出される。あるいは、車両Vが一定の場所を複数回走行した場合にも、互いに異なる複数の時刻における物体情報が検出され、したがって互いに異なる複数の時刻における状態量が算出される。
次いで、検出された位置情報及び状態量がデータセンサDCに送信される。次いで、データセンサDCの環境地図作成・更新部27により、環境地図情報Mが作成される。具体的には、複数の区画SC(図5)のそれぞれの状態量変化性が算出される。本発明による実施例では、状態量の単位時間当たりの変化量が算出され、状態量の単位時間当たりの変化量に基づいて状態量変化性が算出される。このことを、図8を参照して説明する。
図8には、同一の区画SCに属する位置の状態量であって、互いに異なる複数の時刻に検出された複数の状態量が、時間の関数としてプロットされている。この場合、まず時間幅dt1における状態量の変化量dSQ1(絶対値)、時間幅dt2における状態量の変化量dSQ2(絶対値),…が順次算出される。次いで、状態量の単位時間当たりの変化量dSQ1/dt1、dSQ2/dt2,…が順次算出される。次いで、状態量の単位時間当たりの変化量dSQ1/dt1,dSQ2/dt2,…を単純平均又は加重平均することにより、状態量変化性が算出される。加重平均が用いられる場合、一例では、検出時期がより新しい状態量の単位時間当たりの変化量dSQ/dtがより大きく重み付けされ、検出時期がより古い状態量の単位時間当たりの変化量dSQ/dtがより小さく重み付けされる。別の例では、検出時期がより新しい状態量の単位時間当たりの変化量dSQ/dtがより小さく重み付けされ、検出時期がより古い状態量の単位時間当たりの変化量dSQ/dtがより大きく重み付けされる。このような状態量変化性の算出が複数の区画SCについてそれぞれ行われる。なお、図8に示される例では、時間幅dt1,dt2,…は互いに等しい。別の実施例(図示しない)では、時間幅dt1,dt2,…は必ずしも互いに等しくない。
別の実施例(図示しない)では、時間の関数としての複数の状態量がフーリエ変換され、その結果から状態量変化性が算出される。具体的には、一例では、あらかじめ定められたスペクトル(周波数)の強度が状態量変化性として算出される。別の例では、種々のスペクトルの強度を単純平均又は加重平均することにより状態量変化性が算出される。
次いで、区画SCの位置情報と、対応する状態量変化性とが、関連付けられて環境地図記憶装置12内に記憶される。このようにして環境地図情報Mが作成される。
別の実施例(図示しない)では、複数の位置のそれぞれについて状態量変化性が算出される。次いで、区画SCに属する位置の状態量変化性を単純平均又は加重平均することにより、当該区画SCの状態量変化性が算出される。
本発明による実施例では更に、環境地図作成・更新部27により、環境地図情報Mが更新される。すなわち、まず、車両Vにより、位置情報及び状態量が新たに検出され、データセンサDCに送信される。データセンタDCでは次いで、新たに検出された位置が属する区画SCが特定される。次いで、特定された区画SCに関連付けられている状態量変化性、すなわち環境地図情報Mの状態量変化性と、新たに検出された状態量とが例えば加重平均され、それによって状態量変化性が更新される。
本発明による実施例では、このような環境地図情報Mの更新は例えば、一定時間ごとに繰り返される。その結果、環境地図情報Mがより正確な状態に維持される。また、本発明による実施例では、位置情報及び状態量の検出及びデータセンタDCへの送信は複数の車両Vによって行われる。その結果、環境地図情報Mの作成及び更新がより高い精度でもって行われる。
別の実施例(図示しない)では、環境地図作成・更新部27が車両Vに搭載される。更に別の実施例(図示しない)では、環境地図作成・更新部27及び環境地図記憶装置12が車両Vに搭載される。
ところで、本発明による実施例では、車両Vにおいて、運転制御部42は、マニュアル運転又は自動運転を行う。具体的には、運転制御部42は、マニュアル運転中に、自動運転が可能であるか否かを判断する。次いで、運転制御部42は、自動運転が可能であると判断したときには、例えばHMI37を介し、自動運転が可能であるとの情報をドライバに提示する。次いで、ドライバがHMI37を介し自動運転を開始するための入力を行うと、運転制御部42は自動運転を開始する。すなわち、車両Vの走行操作である駆動、制動及び操舵がアクチュエータ38により制御される。もう少し詳しく説明すると、運転制御部42は自動運転時に、外部センサ31からの情報、GPS受信機32からの情報、内部センサ33からの情報、道路地図記憶装置34内の道路地図情報、記憶装置35内の自動運転専用の道路地図、目標ルートなどを用いて、例えば、自己位置を特定し、車両Vの周囲の障害物を特定し、位置及び時間の関数である進路を決定し、車両Vが進路に従って走行するようアクチュエータ38を制御する。一方、自動運転中に、ドライバがHMI37を介し自動運転を終了するための入力を行うと、運転制御部42は自動運転を終了する。すなわち、車両運転が自動運転からマニュアル運転に切り換えられる。この場合、車両Vの走行操作である駆動、制動及び操舵がドライバによって行われる。なお、自動運転時にドライバがオーバーライドを行ったとき、すなわちドライバがステアリングをあらかじめ定められたしきい量以上操作したとき、アクセルペダルをあらかじめ定められたしきい量以上踏み込んだとき、又は、ブレーキペダルをあらかじめ定められたしきい量以上踏み込んだときにも、自動運転が終了される。
また、本発明による実施例では、目標ルート設定部43により目標ルートが設定されると、運転制御部42は、自動運転時には、車両Vが目標ルートに沿って走行するように車両Vの走行操作を制御する。これに対し、マニュアル運転時には、運転制御部42は、HMI37を用いて、目標ルートに沿ってドライバを案内する。
さて、本発明による実施例の推奨ルート決定システム10は、車両Vの推奨ルートを決定するように構成されている。おおまかに説明すると、車両Vから出発地の位置情報及び目的地の位置情報が推奨ルート決定システム10に送信されると、推奨ルート決定システム10は推奨ルートを決定し、推奨ルートの情報を車両Vに送信する。このような推奨ルートの決定及び送信が、複数の車両に対して行われる。
具体的に説明すると、推奨ルートを必要とする車両VのドライバはHMI37を介し出発地及び目的地を入力する。その結果、出発地の位置情報及び目的地の位置情報が推奨ルート決定システム10に送信される。別の実施例(図示しない)では、車両VのドライバがHMI37を介しルートの目的地を入力すると、出発地としての車両Vの現在地の位置情報及び目的地の位置情報が推奨ルート決定システム10に送信される。
送信された出発地の位置情報及び目的地の位置情報は、推奨ルート決定システム10の獲得部22によって獲得される。次いで、推奨ルート決定システム10の一次候補決定部23が、道路地図記憶装置11の道路地図情報並びに出発地の位置情報及び目的地の位置情報を用いて、推奨ルートの一次候補を複数決定する。具体的には、出発地から目的地までのルートには無数の候補が存在しうる。そこで、一次候補決定部23は、これら無数の候補のなかから、例えば、走行距離、走行時間、道路の幅、などに基づいて、ルートの一次候補を複数決定する。
図9には、一次候補の一例が示される。図9に示される例では、互いに異なる3つの一次候補RC(1),RC(2),RC(3)が示されている。なお、図9においてSLは出発地を、DSTは目的地を、それぞれ示している。
次いで、推奨ルート決定システム10の算出部24が、環境地図情報Mを用いて、一次候補のルート状態量変化性をそれぞれ算出する。ルート状態量変化性は、ルート上の複数の中間点の状態量変化性を用いて算出される数値である。本発明による実施例では、これら中間点の状態量変化性を合計することにより、ルート状態量変化性が算出される。なお、一例では、一次候補の距離をそれぞれ(N+1)等分することにより、N個の中間点が形成される。別の例では、出発地から一次候補に沿って一定距離だけ進むごとに中間点が形成される。
次いで、推奨ルート決定システム10の判断部25が、一次候補のうちルート状態量変化性が最小の一次候補を特定する。ルート状態量変化性が最小の一次候補を第1順位候補と称すると、次いで判断部25は、第1順位候補上を走行する他車両の数があらかじめ定められた設定数よりも少ないか否かを判断する。本発明による実施例では、判断部25はまず、第1順位候補上を走行する他車両の数を算出し、次いで第1順位候補上を走行する他車両の数と設定数とを比較する。第1順位候補上を走行する他車両の数は例えば次のようにして算出される。すなわち、推奨ルート決定システム10から他車両に送信された推奨ルートが第1順位候補と少なくとも部分的に重なっているときには、当該他車両は第1順位候補上を走行すると考えることができる。したがって、第1順位候補と少なくとも部分的に重なっている推奨ルートが送信された他車両の数をカウントすれば、当該他車両の数は第1順位候補上を走行する他車両の数を表している。
次いで、推奨ルート決定システム10の推奨ルート決定部26が推奨ルートを決定する。本発明による実施例では、第1順位候補上を走行する他車両の数が設定数よりも少ないと判断されたときには、推奨ルート決定部26は第1順位候補を推奨ルートに決定する。これに対し、第1順位候補上を走行する他車両の数が設定数よりも多いと判断されたときには、推奨ルート決定部26はまず、一次候補のルート状態量変化性に基づいて、一次候補のなかから少なくとも1つの二次候補を決定する。具体的には、ルート状態量変化性があらかじめ定められたしきい値よりも小さい一次候補が二次候補に決定される。次いで、推奨ルート決定部26は、二次候補のうちのいずれか1つを推奨ルートに決定する。本発明による実施例では、二次候補のなかからランダムに選択された1つが推奨ルートに決定される。
或るルートのルート状態量変化性は、当該ルートの安定性を表している。具体的には、ルート状態量変化性が小さいルートは、ルート状態量変化性が大きいルートに比べて、より安定している。すなわち、車両運転により適している。そうすると、ルート状態量変化性が最小の第1位順位候補は一次候補のなかで最も安定しており、車両運転に最も適しているということになる。したがって、第1順位候補を推奨ルートに決定するのが好ましい。
ところが、或る車両のための第1順位候補は、当該車両のための一次候補のなかで最も安定したルートであるので、別の車両のための第1順位候補と重なる可能性が高い。このため、第1順位候補上を走行する他車両の数が過度に多くなるおそれがある。第1候補上を走行する他車両の数が過度に多くなると、第1候補の安定性が低下する。
そこで本発明による実施例では、第1順位候補上を走行する他車両の数が少ないときには、第1順位候補を推奨ルートに決定している。その結果、最も安定したルートに沿った車両走行を確保することができる。一方、第1順位候補上を走行する他車両の数が多いときには、二次候補のうちのいずれか1つを推奨ルートに決定している。二次候補のルート状態量変化性は上述したしきい値よりも小さいので、二次候補は比較的安定している。その結果、第1順位候補を走行する車両の数を増大させることなく、安定したルートに沿った車両走行を確保することができる。
しかも本発明による実施例では、ルート状態量変化性又は状態量変化性に基づいて、推奨ルートが決定されるので、より適切な推奨ルートをより簡単に決定することができる。
次いで、推奨ルート決定部26はこのようにして決定された推奨ルートの情報を、出発地の位置情報及び目的地の位置情報が送信された車両Vに送信する。この車両Vが推奨ルートの情報を受信すると、車両Vの目標ルート設定部43は推奨ルートを目標ルートに設定する。
なお、単位走行距離当たりのオーバーライドの回数をオーバーライド率(例えば、回/km)と称すると、図10に示されるように、ルート状態量変化性が小さくなるにつれてオーバーライド率は低くなる。本発明による実施例では、オーバーライド率があらかじめ定められたしきい率のときに、ルート状態量変化性が上述のしきい値となる。したがって、本発明による実施例では、オーバーライド率がしきい率よりも低い一次候補が二次候補に決定されるということになる。その結果、自動運転の観点から見て安定したルートが二次候補に決定される。
図11は本発明による実施例の推奨ルート決定制御を実行するためのルーチンを示している。このルーチンは推奨ルート決定システム10においてあらかじめ定められた設定時間ごとの割り込みによって実行される。図11を参照すると、ステップ100では、車両Vの制御システム30から出発地の位置情報及び目的地の位置情報を受信したか否かが判別される。当該位置情報を受信していないときには処理サイクルを終了する。当該位置情報を受信したときには次いでステップ101に進み、一次候補が決定される。続くステップ102では、一次候補のルート状態量変化性がそれぞれ算出される。続くステップ103では、第1順位候補が決定される。続くステップ104では、第1順位候補上を走行する他車両の数NOVが算出される。続くステップ105では、他車両数NOVがあらかじめ定められたしきい値NOVXよりも大きいか否かが判別される。NOV≦NOVXのときには次いでステップ106に進み、第1順位候補が推奨ルートに決定される。次いでステップ109に進む。これに対し、NOV>NOVXのときには次いでステップ107に進み、二次候補が決定される。続くステップ108では、二次候補のうちのいずれか1つが推奨ルートに決定される。次いでステップ109に進む。ステップ109では、推奨ルートが車両Vの制御システム30に送信される。
図12は本発明による実施例の目標ルート設定制御を実行するためのルーチンを示している。このルーチンは車両Vの制御システム30においてあらかじめ定められた設定時間ごとの割り込みによって実行される。図12を参照すると、ステップ200では、ドライバによる出発地及び目的地の入力が行われたか否かが判別される。当該入力が行われていないときには処理サイクルを終了する。これに対し、当該入力が行われたときには次いでステップ201に進み、入力された出発地の位置情報及び目的地の位置情報が推奨ルート決定システム10に送信される。続くステップ202では、推奨ルート決定システム10から推奨ルートの情報を受信したか否かが判別される。推奨ルートの情報を受信していないときにはステップ202に戻る。推奨ルートの情報を受信したときには次いでステップ203に進み、推奨ルートが目標ルートに設定される。
別の実施例(図示しない)では、推奨ルート決定システム10の少なくとも一部が車両Vに搭載される。一例では、獲得部22、一次候補決定部23、算出部24、判断部25、及び、推奨ルート決定部26が車両Vに設けられる。この場合、一次候補決定部23は車両Vの道路地図記憶装置11の道路地図情報を用いて一次候補を決定する。